説明

太陽電池用封止材及びその製造方法

【課題】製造時の安全性が高く、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の架橋密度を十分に向上、かつ発泡を抑制できる太陽電池用封止材を提供する。
【解決手段】酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、有機過酸化物(I)及び有機過酸化物(II)からなる混合有機過酸化物(B)と、を含む太陽電池用封止材であって、前記混合有機過酸化物(B)の含有量が、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、前記混合有機過酸化物(B)中の、有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)との重量比(I:II)が、100:30〜150である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池のセルを封止する太陽電池用封止材に関連し、特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称す場合がある)を有機過酸化物(架橋剤)によって架橋する太陽電池用封止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水力・風力・原子力発電や太陽光・熱発電、バイオマス発電などの二次エネルギーが、化石燃料の代替エネルギー源として注目されており、中でも無尽蔵の太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換することのできる太陽電池による発電方式が注目され、開発が進められている。
【0003】
一般的に太陽電池モジュールは、上部透明保護基材(1)と下部保護基材(2)との間において、有機過酸化物を含んだEVA封止材(3)により、シリコン発電素子等の太陽電池用セル(4)が封止された構造となっている。このような太陽電池モジュールは、上記各部材を(1)−(3)−(4)−(3)−(2)の順で積層させた後に、真空ラミネーターで135〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.2kg/cm、プレス時間5〜15分の条件で加熱・加圧することにより、EVAの融解と、有機過酸化物の分解による架橋とを同時に行い、全ての部材を一体化することにより製造される。
【0004】
太陽電池モジュールに用いられるEVA封止材は、EVAと有機過酸化物を含む組成物を押出成形、もしくはカレンダー成形によりシート状に成形したものである。EVAに加えられた有機過酸化物が熱により分解してEVAを架橋させると、架橋密度の指標となるゲル分率が向上される。EVAのゲル分率を向上することによりEVA封止材の耐熱性及び強度を向上することができ、屋外等の環境下で使用される太陽電池にはゲル分率が80%以上であるEVAが必要である。したがって、屋外等で使用される太陽電池を提供するためには、有機過酸化物をEVA中に含有させてEVAを架橋することが不可欠となっている。
【0005】
しかし、一般的な有機過酸化物による架橋においては、有機過酸化物が熱分解することによりガスが発生する。このガスは太陽電池モジュール内部の前記した各部材(1)−(3)−(4)−(3)−(2)の各界面に滞留し、これにより太陽電池モジュール内部に発泡が生じるという問題を引き起こす。この発泡は、EVA封止材の密着性を低下させる要因となり、封止性能が低下することになる。そのため、太陽電池の寿命と発電効率が低下する問題が生じる。したがって、発泡の抑制のためには、ガス発生量が少ない有機過酸化物を用いなくてはならない。
【0006】
特許文献1には、下記式(I)で表される有機過酸化物(I)(1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)がEVA封止材用の有機過酸化物として使用可能であることが開示されており、有機過酸化物(I)の熱分解によるEVAの架橋においては、ガスの発生が少なく、気泡が生じないことが見出された。しかし、この有機過酸化物(I)は自己反応性が非常に高いために消防法第5類第1種に分類されており、取り扱い時の危険性が極めて高いことが知られている。
【化1】

【0007】
一般に、有機過酸化物は、自己反応性という性質を有するために取り扱い時の危険性が非常に高い。そのため、安全性を確保するために、希釈剤無しでは消防法第5類2種に該当する有機過酸化物しか工業的には使用されない。有機過酸化物(I)のような消防法第5類第1種に該当する有機過酸化物を用いる場合には、当該有機過酸化物に希釈剤を加えることにより、第5類2種に該当する混合物にして使用される。
【0008】
有機過酸化物の希釈剤としては、一般にトルエン、エチルベンゼン、キシレン、炭化水素溶剤、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが用いられるが、希釈剤を添加した場合、EVA封止材中の希釈剤が気化して、発泡を生じてしまう。そのため、有機過酸化物(I)を工業的に用いる場合、有機過酸化物(I)の熱分解により発生するガスは少ないものの、希釈剤の気化による発泡が起こる問題がある。
【0009】
一方、特許文献2には、消防法第5類2種に該当し、有機過酸化物(I)よりも安全に使用できる有機過酸化物(II)(1−(t−ブチルパーオキシ)−1−メトキシシクロヘキサン、下記式(II)参照)が重合開始剤および不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化剤として利用可能であることが開示されている。しかし、有機過酸化物(II)によるEVAの架橋効率は有機過酸化物(I)よりも低いため、有機過酸化物(II)のみを用いてEVAのゲル分率を80%以上にすることは困難である。
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−177412号公報
【特許文献2】特開平1−228957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有機過酸化物(I)に関しては、安全性を確保するために希釈剤を含まざるを得なく、その希釈剤により発泡が引き起こされるため、太陽電池用封止材の製造においては、工業的な使用が困難となっている。
【0012】
そこで、本発明の目的は、安全性の高められた有機過酸化物(I)を含み、発泡が抑制される太陽電池用封止材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、有機過酸化物(I)の合成反応時において、ガスが生成し難く、かつ安全性の高い構造をもつ有機過酸化物(II)を所定の重量比で同時に副生させた混合有機過酸化物(B)を架橋剤として用いることにより、上記目的を達成し得ることを見出した。つまり、希釈剤非存在下において、有機過酸化物(I)及び(II)を所定の重量比で使用することにより、有機過酸化物(I)の安全性を向上するとともに、太陽電池用封止材に要求される架橋密度と発泡の抑制とが同時に達成されることが明らかとなった。
【0014】
すなわち、本発明の太陽電池用封止材は、酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、下記式(I)に示す有機過酸化物(I)及び下記式(II)に示す有機過酸化物(II)からなる混合有機過酸化物(B)と、を含み、前記混合有機過酸化物(B)の含有量が、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、前記混合有機過酸化物(B)中の、有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)との重量比(I:II)が、100:30〜150であることを特徴とする。
【化3】


【化4】

【0015】
また、本発明の太陽電池用封止材の製造方法は、
(a)シクロヘキサノンに、1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールとを混合し、下記式(I)に示す有機過酸化物(I)及び下記式(II)に示す有機過酸化物(II)からなる混合有機過酸化物(B)を合成する段階、及び
(b)酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に前記混合有機過酸化物(B)を0.1〜3.0重量部混合して得られた組成物を成形する段階
を有し、
【化5】


【化6】


1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールのモル比が1.0:3.5〜10.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池用封止材によれば、ガスの生成が少ない有機過酸化物(I)及び有機過酸化物(II)が用いられており且つ希釈剤を含んでいないために、太陽電池内部の発泡が抑制される。また、有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)を所定の割合で含むことにより、混合有機過酸化物の安全性が高められているとともに、架橋によりEVAのゲル分率を十分に向上することができる。一方、本発明の太陽電池用封止材の製造方法によれば、希釈剤を用いることなく有機過酸化物(I)を含む太陽電池用封止材を安全に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の太陽電池用封止材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(A)と、混合有機過酸化物(B)とを含んでおり、太陽電池モジュールにおいて太陽電池用セルを封止するために用いられる。以下において、その構成を説明する。
【0018】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(A)>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)はエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であり、本発明で用いられるEVA(A)は、酢酸ビニルを構造単位で25〜35重量%含んでいる。この酢酸ビニル含有率が35重量%を超えると、粘着性が増大して取り扱いが困難になる。一方、酢酸ビニル含有率が25重量%未満になると、封止材が硬くなるため加工性が低下し、また、封止材は硬化に伴い緩衝材としての機能が低下するため、封止材で保護されている太陽電池用セルが衝撃により割れやすくなるので好ましくない。
【0019】
<混合有機過酸化物(B)>
混合有機過酸化物は、下記式(I)で表される有機過酸化物(I)、すなわち、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンと、下記式(II)で表される有機過酸化物(II)、すなわち1−(t−ブチルパーオキシ)−1−メトキシシクロヘキサンの混合物である。上述したように、有機過酸化物(I)は、熱分解時におけるガスの発生が少なく、ゲル分率が80%以上になるようEVAを架橋することができるが、自己反応性が非常に高いために取り扱い時の危険性が高く、工業的に使用するためには一般に希釈剤を添加することにより安全性を高める必要がある。一方、有機過酸化物(II)は、熱分解時におけるガスの発生が少なく、有機過酸化物(I)よりも自己反応性が低いためより安全に使用できるが、EVAのゲル分率を80%以上にすることができない。
【化7】


【化8】

【0020】
混合有機過酸化物(B)中の、有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)との重量比(I:II)は、100:30〜150(すなわち、100:30〜100:150)である。有機過酸化物(I)100重量部に対して、有機過酸化物(II)が30重量部より少ないと、混合有機過酸化物(B)の自己反応性が高く、消防法第5類第1種に該当するため、取り扱い時の危険性が高く、工業的な使用が困難となる。一方、混合有機過酸化物(I)100重量部に対して、有機過酸化物(II)が150重量部より多くなると、架橋後のEVAの架橋密度(ゲル分率)が80%より低くなる、又は架橋時間が長くなるため好ましくない。このように有機過酸化物(I)を有機過酸化物(II)と所定の割合で混合することにより、希釈剤を用いることなく有機過酸化物(I)を安全に使用することができるとともに、ゲル分率が80%以上になるようEVAを架橋することができる。
【0021】
<混合有機過酸化物(B)の製造方法>
有機過酸化物(I)は、シクロヘキサノンと1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとを反応させることにより合成される。有機過酸化物(I)の合成時にメタノールを添加し、1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールを競合させることで、有機過酸化物(I)及び有機過酸化物(II)を含む混合有機過酸化物(B)が合成される。この反応においては、添加させるメタノールの増加に伴い合成される有機過酸化物(II)の割合が増加するため、メタノールの添加量を変更することにより、混合有機過酸化物(B)中の有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)の重量比を調節することができる。具体的には、競合させる1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールのモル比を1.0:3.5〜10.0(すなわち、1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイド:メタノール=1.0:3.5〜1.0:10.0)とすることにより、得られる混合有機過酸化物(B)中の有機化酸化物(I)と有機化酸化物(II)との重量比(I:II)を100:30〜150とすることができる。また、有機過酸化物(I)100重量部に対して、有機過酸化物(II)が30重量部より多くなるようにメタノールの量を調節することによって、安全に有機過酸化物(B)を合成することができる。
【0022】
有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)を混合し、混合有機過酸化物(B)を得ることも可能であるが、希釈剤を含まない有機過酸化物(I)は消防法第5類1種に該当する自己反応性の高い化合物であるため、そのような方法は安全性に問題があるため避けることが好ましい。
【0023】
また、有機過酸化物(I)の合成時に、メタノールに加えて、メタノールよりも反応性の低いエタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコールが不純物として少量混入しても、有機過酸化物(I)と(II)との重量比(I:II)を変えることなく合成可能である。
【0024】
<太陽電池用封止材>
太陽電池用封止材は、上記EVA(A)と混合有機過酸化物(B)とを含有する組成物を成形することにより作成される。太陽電池用封止材は、押出成形又はカレンダー成形などにより、通常は0.2mm〜0.8mm厚のシート状に成形されるが、太陽電池用封止材の形状は用いられる太陽電池モジュールの形状などに合わせて適宜変更可能であり、上記形状に限定されない。
【0025】
太陽電池用封止材において、前記混合有機過酸化物(B)の含有量は、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜3.0重量部である。混合有機過酸化物(B)の含有量が0.1重量部未満であると、架橋反応後のEVAのゲル分率が低い、若しくは架橋時間が長くなるため、実用に適さない。混合有機過酸化物(B)の含有量が3.0重量部より多いと、EVAの架橋が速く、太陽電池モジュール製造時の使い勝手が著しく悪くなり、さらには混合有機過酸化物の残存を引き起こす。この混合有機過酸化物(B)の残存は封止材の着色等を引き起こし、封止材の光透過性を低下させるため、封止材の間に配置される太陽電池用セルの受光量が低減し、結果的に太陽電池モジュールにおける光電変換効率が低下する。
【0026】
本発明の太陽電池用封止材には上記EVA(A)および混合有機過酸化物(B)以外にも、従来公知のEVA封止材に用いられる添加剤、さらに封止材の性能(機械的強度、透明性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の向上に供する各種添加剤を含んでも良い。添加剤としては、例えばシランカップリング剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で添加可能である。
【0027】
<太陽電池モジュール>
太陽電池モジュールにおいては、光電変換素子である太陽電池用セルの上下両側に太陽電池用封止材が配置されて太陽電池用セルを封止しており、その上下両側に保護基板が配置されている。本発明の太陽電池用封止材は、このように太陽電池モジュール内において太陽電池用セルを封止するためのものであるから、その他の太陽電池モジュール用部材については、従来公知の太陽電池モジュールと同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0029】
<混合有機過酸化物(B)の合成>
実施例および比較例に使用した混合有機過酸化物(B)の合成に関しては、以下の手順で行った。
【0030】
(合成例1)
シクロヘキサノン(1mol)とメタノール(6.5mol)を7℃で混合撹拌し、さらに1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイド(1.7mol)を加えて撹拌した(1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイド:メタノール=1.0mol:3.8mol)。温度を7℃に保ったまま、70%硫酸(1.2mol)を滴下した。滴下終了後、温度を7℃に保ったまま、約1時間撹拌・反応を続けた。反応終了後、水層を分離し、有機層を6%水酸化ナトリウム水溶液で撹拌・洗浄を行った。その後、水層を分離し、再度6%水酸化ナトリウム水溶液で撹拌・洗浄を行った。水層を分離後、少量の酢酸でpH=5〜7程度に中和し、有機層と等量の水を加え、撹拌・分離した。pH=6〜7になるまで、水で洗浄し、硫酸マグネシウム等の脱水剤で脱水し、ろ過し、混合有機過酸化物(B)を得た。その収率は79%であり、有機過酸化物(I)及び(II)の重量比(I:II)は100:37であった。得られた混合有機過酸化物(B)を用いて下記消防法判定による判定を行った。判定結果を下記表1に示す。
【0031】
(合成例2〜7)
合成例1と同様に、表1に示される量のメタノールを用いて、合成例2〜7の混合有機有機過酸化物(B)を合成し、有機過酸化物(I)及び(II)の重量比を算出すると共に消防法判定による判定を行った。重量比及び判定結果を表1に示す。
【0032】
<消防法判定>
各合成例において合成された有機過酸化物(B)について、消防法で規定された圧力容器試験を行い、消防法判定を行った。細孔径9.0mm、および1.0mmのオリフィス板での破裂回数を求めた。9.0mmのオリフィス板で5回以上破裂した場合、消防法の第5類第1種に分類した。9.0mmのオリフィス板で4回以下、かつ1.0mmのオリフィス板で5回以上破裂した場合を、消防法の第5類2種に分類した。
【表1】

【0033】
(実施例1)
酢酸ビニル含有量が28重量%のEVA(A)100重量部に対し、合成例1の混合有機過酸化物(B)を1.0重量部混合した組成物を用いて、80℃で押出成型により加熱圧延することにより0.5mm厚のEVA封止材を成形した。このEVA封止材を用いて下記発泡試験及びゲル分率の測定を行った。その結果を下記表2に示す。
【0034】
(実施例2〜7及び比較例1〜5)
下記表2の組成で配合された組成物を用いて、実施例1と同様にしてEVA封止材を作成した。それぞれのEVA封止材を用いた試験結果を表2に示す。なお、希釈剤としては、炭化水素溶剤であるShell sol TK(シェルケミカルズジャパン(株)製)を使用した。
【0035】
<発泡試験>
各実施例および比較例において作製されたEVA封止材を縦3cm、横6cmに切り出し、MSパウチフィルム(株式会社明光商会製)に挟み、加熱してラミネート加工したものを135℃で15分間加熱し、その際に発生するガスによるフィルムの膨れを目視で観察し、評価した。比較例3と同等レベルの膨らみであった場合を○、比較例3よりも膨らみが顕著に大きい場合を×として評価した。
【0036】
<ゲル分率の測定>
各実施例および比較例において作製されたEVA封止材を用いて、JSRトレーディング(株)製キュラストメーターにより、135℃で15分架橋を行った。架橋後のEVA封止材を秤量し(Xg)、これを110℃のキシレン中に12時間浸漬して、110℃のキシレン中で洗浄・乾燥させた200メッシュの金網で不溶解分をろ過し、金網上の残渣を真空乾燥して乾燥残渣の重量を測定し(Yg)、ゲル分率を算出した(ゲル分率(重量%)=(Y/X)×100)。
【表2】

【0037】
実施例1〜7においては、発泡が少なく、ゲル分率が80%以上のEVA封止材が得られた。また、これらの実施例で用いた混合有機過酸化物(B)は、有機過酸化物(I)100重量部に対して有機過酸化物(II)を30重量部以上含んでいるため、自己反応性が低く、より安全な使用が可能であった。一方、比較例1及び2のEVA封止材は、希釈剤を含んでいるため多くの発泡が生じた。比較例3及び4のEVA封止材は、混合有機過酸化物(B)における有機過酸化物(II)の割合が低すぎるため、混合有機過酸化物(B)が消防法第5類第1種に該当してしまい、取り扱い時の危険性が高かった。比較例5のEVA封止材は、混合有機過酸化物(B)における有機過酸化物(II)の割合が高すぎるため、EVAを十分に架橋することが出来ず、必要な架橋密度(ゲル分率80%)に達しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)と、下記式(I)に示す有機過酸化物(I)及び下記式(II)に示す有機過酸化物(II)からなる混合有機過酸化物(B)と、を含む太陽電池用封止材であって、
前記混合有機過酸化物(B)の含有量が、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、
前記混合有機過酸化物(B)中の、有機過酸化物(I)と有機過酸化物(II)との重量比(I:II)が、100:30〜150であることを特徴とする太陽電池用封止材。
【化1】


【化2】

【請求項2】
太陽電池用封止材の製造方法であって、
(a)シクロヘキサノンに、1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールとを混合し、下記式(I)に示す有機過酸化物(I)及び下記式(II)に示す有機過酸化物(II)からなる混合有機過酸化物(B)を合成する段階、及び
(b)酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に前記混合有機過酸化物(B)を0.1〜3.0重量部混合して得られた組成物を成形する段階
を有し、
【化3】


【化4】


1,1−ジメチルエチルハイドロパーオキサイドとメタノールのモル比が、1.0:3.5〜10.0であることを特徴とする製造方法。


【公開番号】特開2012−238685(P2012−238685A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105948(P2011−105948)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】