説明

太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム

【課題】耐久性に優れ、かつ透明性と加工性に優れた太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】最外層と中心層を有する3層からなる積層ポリエステルフィルムであり、前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、ヘーズは5%以下、全光線透過率は85%以上であり、カルボキシル末端濃度がポリエステルに対して25eq/ton以下であり、固有粘度が0.60〜0.90dl/gであり、前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り10個以上100個以下である、太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性に優れ、太陽電池表面保護シートに用いた際に優れた透明性と耐久性を有する太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わる、エネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムであり、その心臓部は半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年以上)に亘って素子を保護するため種々パーケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる充填材で間隙を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などのバックシートと呼ばれる複数の層構成を有する保護シートで保護された構成になっている。
【0003】
従来、太陽電池モジュールの表面保護部材としてはガラスを用いることが一般的であった。近年、耐衝撃性や軽量化の点で可とう性を有したポリエステルなどのプラスチックフィルムへの関心が高まっている(特許文献1、2、3)。しかし、プラスチックフィルムのみではガラスに対応した性能が保持することは難しいため、金属蒸着による防湿層や耐久層、紫外線吸収層といった機能層を積層することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010―186932号公報
【特許文献2】特開2007―253463号公報
【特許文献3】特開2006−261287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池の変換効率を向上するためには、太陽電池素子に到達する光線量が多い方が有利である。そのため、表面保護シートは高い透明性を保持することが望ましい。しかしながら、生産性の点から高いライン速度に対応するためにはフィルム中に滑剤粒子を添加し、所定の滑り性を奏することが必要となる。そのため、太陽電池表面保護シート用フィルムとしてこれらを高度に両立することが求められる。
【0006】
また、太陽電池表面保護シートとして長期間屋外で使用される場合、ポリエステルの加水分解が進行しやすい。従来は、フッ素樹脂層などの耐久層を積層することが行なわれてきたが、このような対応では太陽電池の変換効率を維持するために高い透明性を保持することは困難であった。
【0007】
さらに、太陽電池表面保護シート用フィルムには種々の機能層、例えば金属蒸着層などのバリア層が設けられる場合があるが、長期にわたり高度な防湿性を保持するためには、ポリエステルフィルム表面の突起形状を制御することが必要となる。つまり、バックシートに用いるポリエステルフィルムに高さ1μm以上の突起が存在すると金属系薄膜層や耐久層にキズや凹みを生じる。そのため、局所的に耐防湿性が低下し、太陽電池の寿命に大きな影響を与えることが分かった。
【0008】
すなわち、本発明は、加工性に優れ、太陽電池表面保護シートに用いた際に優れた透明性と耐久性を有するポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
本発明の第1の発明は、最外層と中心層を有する3層からなる積層ポリエステルフィルムであり、前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、ヘーズは5%以下、全光線透過率は85%以上であり、カルボキシル末端濃度がポリエステルに対して25eq/ton以下であり、固有粘度が0.60〜0.90dl/gであり、前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り10個以上100個以下である、太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第2の発明は、前記最外層に含まれる粒子が、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機粒子であり、前記粒子の平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、前記最外層における粒子の含有量が0.01〜0.20質量%である、前記太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第3の発明は、前記粒子が多孔質シリカである、前記太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第4の発明は、前記中心層に紫外線吸収剤を含有する、前記太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第5の発明は、前記太陽電池用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を有する被覆層付き太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムは、耐久性、透明性、加工性に優れ、且つ、高さ1μm以上の突起が100個/1000cm2以下であり、太陽電池表面保護シートに用いた際、防湿性の維持に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層ポリエステルフィルム表面において、1μm以上の高さを有する突起の数は、1000cmあたり100個以下である。前記突起の数が100個を超える場合は、防湿層などの機能層を積層して太陽電池表面保護シートに用いた場合、長期の使用により防湿性が低下する場合がある。上記突起の数の上限は小さい方が好ましく、より好ましくは95個以下、さらに好ましくは80個以下、よりさらに好ましくは70個以下である。また、上記突起の下限は10個であることが望ましい。10個未満である場合は、好適な滑り性が得られず、高い生産性に適したライン速度に対応することが困難な場合がある。
【0012】
フィルム表面の突起高さを制御するためには、後述のようにフィルム中の不活性粒子の添加量や平均粒子径を所定範囲で設定することが望ましいが、それ以外にも高さ1μm以上の突起の形成要因について検討した結果、本発明者は以下のような知見を得た。
【0013】
従来、ポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを重縮合触媒の主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に三酸化アンチモンが還元され、10μm以下の金属アンチモン粒子が生成する。そして、フィルム製造時の溶融押出し工程で金属アンチモン粒子が凝集し、20〜50μmの異物としてフィルム中に存在するようになり、これが高さ1μm以上の突起となる場合がある。 特に金属アンチモンはポリエステルの結晶核となりやすく、変型しにくい凝集体を生成しやすいため、この傾向が顕著である。
【0014】
尚、フィルムの原料であるポリエステルの製造時の重縮合触媒として、ゲルマニウム化合物を用いた場合は高価であり工業的規模で生産する上で好ましくない。さらにチタン化合物を用いた場合は、耐熱性が不良なため、後述の固相重合の際に黄変し、表面保護シートに適した高い透明性を有するフィルムを得ることは困難な場合がある。
【0015】
さらに、ポリエステルフィルムには滑り性を付与するために、例えば粒径0.1〜10μm程度の滑剤が添加されるが、これらの滑剤は凝集体を生成しやすいため、滑剤の添加により高さ1μm以上の突起を形成しやすい。
【0016】
そこで、本発明者は、表面突起の要因である、酸化アンチモンによる金属アンチモン粒子の凝集と滑剤の凝集と抑制すべく鋭意検討を行なった。その結果、下記のような特定の触媒により重合されたポリエステルを用い、さらに特定の層構成とすることにより、表面突起を好適な範囲に抑制しうることを見出し、本発明に至った。そこで、以下に本発明の態様を詳述する。
【0017】
本発明のフィルムの主たる構成成分であるポリエステルを重合する際に使用する重縮合触媒は、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒である。
【0018】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物として、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を限定なく使用することができる。
【0019】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0020】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜0.05モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.02モル%である。添加量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、添加量が0.05モル%以上になると、熱安定性や熱酸化安定性の低下、触媒に起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果、熱安定性や熱酸化安定性が優れ、触媒に起因する異物や着色を低減することができる。特に、耐加水分解性を保持するために、ポリエステルに固相重合を施す場合があるが、上記触媒により重合したポリエステルは熱安定性が高く、黄変しにくいため、高い透明性を維持する上で好適である。
【0021】
前記重縮合触媒を構成するフェノール系化合物としては、フェノール構造を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-2-エチル-6-tert-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-tert-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール−ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4,4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル−2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n−オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ビス[(3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチリックアシッド)グリコールエステル、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル−2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル2-{β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス-[-3-(3'-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)]プロピオネート、1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-tert-ブチルフェニル]ブタンなどを挙げることができる。
【0022】
これらは、同時に二種以上を併用することもできる。これらのうち、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0023】
これらのフェノール系化合物をポリエステルの重合時に添加することによって、アルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0024】
前記フェノール系化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。また、本発明では、フェノール系化合物にさらにリン化合物をともに用いても良い。
【0025】
前記重縮合触媒を構成するリン化合物としては特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0026】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
【0027】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
【0028】
前記のリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。
【0029】
前記の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリエステルは、ポリエステル重合触媒として前記の特定の触媒を用いる以外は、従来公知の製造方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応させた後重縮合する方法、もしくはテレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を行った後重縮合する方法、のいずれの方法でも行うことができる。また、重合装置は、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0031】
本発明で用いるポリエステルの触媒は、重合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて本発明の請求項に記載の触媒を用いることもできる。また、前記の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルフィルムを製造に適したポリエステルを製造することが可能である。
【0032】
かくして得られたポリエステルは金属アンチモンの凝集物を含まず、太陽電池用積層ポリエステルフィルムの製造原料として好適なものとなる。
【0033】
太陽電池用部材としての高度な耐加水分解性を得るために、本発明のポリエステルフィルムは、カルボキシル末端濃度がポリエステルに対し25eq/ton以下であることが望ましい。ポリエステルフィルムは、カルボキシル末端濃度がポリエステルに対して20eq/ton以下であることが好ましく、18eq/ton以下であることがさらに好ましく、15eq/ton以下であることがよりさらに好ましく、13eq/ton以下であることが特に好ましく、10eq/ton以下であることがより特に好ましい。この値が25eq/tonより大きい場合は、対加水分解性が低下し、太陽電池表面保護シートとしての耐久性が発揮できす、早期の劣化が生じやすくなる。なお、ポリエステルのカルボキシル末端濃度の測定は、後述する滴定法、もしくはNMR法により測定することができる。
【0034】
特に、本発明のポリエステルは特定の触媒種を用いるため、ポリエステルのカルボキシル末端をより好適に低減することができる。従来、ポリエステルの重合触媒として用いられているアンチモン化合物などは、重合反応には高い触媒能を有するものの、エステル化反応については殆ど活性を示さない。ところが、本発明で用いるアルミニウム化合物は重合反応について高い触媒能を有しつつ、エステル化反応も高い活性を有している。そのため、エステル結合によりカルボキシル末端の消費が顕著であり、好適にカルボキシル末端濃度を低減することができる。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、固有粘度の値が0.60〜0.90dl/gであることが高度な耐熱性、耐加水分解性を得るためには好ましく、より好ましくは0.62〜0.85dl/g、更に好ましくは0.65〜0.8dl/gである。固有粘度の値が0.60dl/gより低い場合は、耐加水分解性や耐熱性が十分でなく、また、0.90dl/gより高い場合は、溶融工程の背圧が高くなるために生産性を低下させたり、せん断発熱により熱劣化が促進したりするために好ましくない。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムはカルボキシル末端濃度および固有粘度を上記範囲とするため、フッ素樹脂層などの耐久層を別途設ける必要がなく、高い透明性を保持する上で好適である。カルボキシル末端濃度および固有粘度を上記範囲とするには、樹脂の重合条件を適宜選択することにより行いことができる。例えば、エステル化反応装置の構造等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間等のエステル化反応条件もしくは固層重合条件等を適宜設定することにより行えばよい。特に固相重合により高分子量化、低酸価のポリエステルを用いることは好ましい。さらに、エポキシ化合物やカルボジイミド化合物などによりポリエステルのカルボキシル末端を封鎖することも好ましい方法である。
【0037】
本発明のフィルムは全光線透過率が85%以上であることが好ましく、86%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましい。また、本発明のフィルムはヘーズが5%以下であることが好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがよりさらに好ましい。このように高い透明性を有するため、太陽電池表面保護シートとして用いた場合も光の利用度を高くすることができる。
【0038】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、最外層と中心層を有する、3層からなる積層ポリエステルフィルムである。3層構成における層構成として、表裏の最外層の構成は同組成であっても異組成であっても構わないが、2種3層(A層/B層/A層)が生産性の点から好適である。
【0039】
高い透明性と加工特性を両立させるために、本発明では最外層(上記2種3層の場合はA層)に粒子を含有し、中心層(上記2種3層の場合はB層)には実質的に粒子を含まない。A層に粒子を含有させる理由は、1000cmあたり10個以上とすることで、高いライン速度に対応しうる加工性を付与するためである。本発明の積層フィルムのハンドリング性は、積層フィルム面同士の動摩擦係数(μd)により評価することができる。この場合、加工性の点から動摩擦係数(μd)が0.7以下であることが好ましい。
【0040】
また、B層には実質的に粒子を含まないとした理由は、高い透明性を保持する為である。また、滑剤粒子、特に無機粒子の凝集体による1μm以上の突起の生成確率を1000cmあたり10個以下に制御する上でも好適である。
【0041】
なお、「不活性粒子が実質上含有されていない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm未満、好ましくは10ppm未満、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0042】
最外層に含まれる粒子の種類及び含有量は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記の粒子は、平均粒子径が0.1〜3.5μmであることが好ましい。前記平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、0.8μmがさらに好ましく、1.0μmがよりさらに好ましい。また、前記平均粒子の上限は、3.0μmであることがより好ましく、2.8μmであることがよりさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm未満では十分なハンドリング性が得られない。3.5μmを越えると透明性が低下する場合がある。
【0044】
また、これらの粒子は多孔質粒子、特に多孔質シリカが好ましい。多孔質粒子はフィルム製膜工程での延伸時に扁平型に変型しやすく、高さ1μm以上の突起を生成しにくいためである。
【0045】
最外層の無機粒子の含有量は最外層を構成するポリエステルに対し、0.01〜0.20質量%であることが好ましい。前記濃度の下限は、0.02質量%がより好ましく、0.03質量%がさらに好ましい。また前記濃度の上限は、0.15質量%がより好ましく、0.10質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満では十分なハンドリング性が得られない。0.2質量%を越えると透明性が低下する場合がある。
【0046】
前記粒子の平均粒子径の測定は下記方法によって求めることができる。
粒子を電子顕微鏡または光学顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(多孔質シリカの場合は凝集体の粒径)を測定し、その平均値を平均粒子径とする。また、積層フィルムの被覆層中の粒子の平均粒子径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、被覆層の断面に存在する粒子の最大径を求めることができる。
【0047】
ポリエステルに上記粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0048】
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出し等する方法(マスターバッチ法)により、更に滑剤凝集物を低減することができ、表面の粗大突起数も少なくすることができるため好適である。
【0049】
これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0050】
特に、紫外線に対する劣化を防止するために、中心層に紫外線吸収剤を添加することは好ましい。これにより、別途紫外線吸収層を設ける必要がなくなり、高い透明性を保持しやすくなる。
【0051】
耐候性を付与するためには、フィルムの波長380nmの光線透過率が20%以下とすることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下がよりさらに好ましい。なお、本発明における透過率は、フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。耐候性を奏するためには、波長380nmの光線透過率は低いことが好ましいが、大量に紫外線吸収剤を添加すると、紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトする場合がある。そのため、波長380nmの光線透過率の下限は0.001%が下限であると考える。
【0052】
本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
【0053】
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために1〜30質量%の濃度にするのが好ましく、特にブリードアウトの点からは添加剤濃度は低いことが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し温度1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
【0054】
本発明で用いる積層フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜300μmの範囲で、使用する規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、コスト高となる。
【0055】
本発明で用いる積層フィルムとしては、前記ポリエステルを溶融押出し、または溶液押出して得た未配向シートを、必要に応じ、長手方向または幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸し、熱固定処理を施した、二軸配向ポリエステルフィルムが好適である。
【0056】
ポリエステルペレットを十分に真空乾燥した後、最外層、および中心層を構成する各ポリエステルを共押出し機に供給し、270〜295℃でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向のキャストフィルムを得る。得られたキャストフィルムを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0057】
その後、フィルムの両端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き220〜240℃の熱処理ゾーンに導き、熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0058】
また、本発明のフィルム製造する際には、高い透明性を維持するために、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合のSi、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物、及び高融点有機物が除去性能に優れ好適である。
【0059】
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は、25μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが25μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、突起の少ないフィルムを得るには極めて重要である。
【0060】
また、積層フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記の積層フィルムに、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0061】
本発明においては本発明の積層フィルムの片側、又は両側に積層する各種機能層やエチレンビニルアルコールなどの太陽電池素子の封入剤に対する接着性改良のために積層フィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を形成してもよい。塗布層を形成する工程は未延伸シート上であっても、一軸延伸フィルム上であっても二軸延伸フィルム上であってもよい。なお、ここで「主成分」とは、非複層を固形成分のうち50質量%以上を占める成分をいう。
【0062】
被覆層を形成する場合に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好適である。これらの塗布液としては例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル溶液、アクリル溶液、ポリウレタン溶液等が挙げられる。被覆層はこれら塗布液を縦方向の一軸延伸ポリエステルフィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な被覆層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる積層フィルムと機能層との密着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。基材フィルムの両面に被覆層を設ける場合は、両面の被覆層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、積層フィルムの用途に応じて、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。被覆層には易滑性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒子径は0.1μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなるばかりでなく、凝集体を生成し、高さ1μm以上の突起を発生しやすくなる。
【0063】
被覆層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、被覆層の樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高い透明性を有するフィルムを得やすいという点から、シリカ粒子が好適である。また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0064】
本発明でいう太陽電池とは、太陽光、室内光等の入射光を取り込んで電気に変換し、当該電気を蓄えるシステムをいい、表面保護シート、高光線透過材、太陽電池モジュール、充填剤層およびバックシートなどから構成される。用途によりフレキシブルな性状のものがある。
【0065】
太陽電池表面保護シートとしては、上記積層ポリエステルフィルムに、アクリル樹脂などによるハードコート層、金属蒸着層などによるバリア層や、熱接着層・難燃層・反射防止層などの機能層を設けた複合シートとすることが好適である。太陽電池表面保護シートは太陽電池素子を封入したエチレンビニルアルコールなどの封入剤と接し、プレス加工等により貼り付けられる。この際、封入剤と接する面に上記易接着処理を施すことで、より好適な密着性を得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
【0067】
(突起の検出)
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの幅1mの製品フィルムロール表層から10mの部分を取り除き、続く長さ1m以上のフィルムを抜き出し、垂直方向に垂らした。次いでフィルムの背面に三波長昼白色蛍光灯(FL20SS EX−N/18P:ナショナル社製)を配置し前面からフィルム面に対し約10°から45°の範囲で角度を変えながら周囲と比べ、輝く点または、白っぽく見える点、または黒っぽく見える点をマーキングした。
【0068】
(突起高さの測定)
前記マーキングした試料を非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定し、断面プロファイルモードから突起の最高点高さを求めた。尚、埃付着由来の突起は除外した。
なお、被覆層を有する試料の場合は溶剤(メチルエチルケトン)を含浸させたキムワイプ(WIPRS S200:クレシア社製)を用いてマーキングした箇所をキズが付かないように擦り、被覆層を除去した後、突起高さを求めた。(この場合の溶剤は、被覆層を溶解し得るものであれば特に限定されない。)
【0069】
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積:938×696μm
測定は試料の両面について行った。マーキング部の突起は、両面で測定した高さに基づきいずれか高い方を、その面の突起としてカウントした。こうして、フィルム表面1000cm当たりの突起数を求めた。
【0070】
(ハンドリング性)
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に積層フィルムを固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ積層フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板上に長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製 RTM−100を用い、動摩擦係数(μd)はJIS K−7125に準拠して算出し求めた。
動摩擦係数(μd)が0.7以下の場合をハンドリング性良好、0.7を越える場合をハンドリング性不良とした。
【0071】
(平均粒子径)
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも300個の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。
【0072】
(ポリエステルの固有粘度)
ポリエステルをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
【0073】
(カルボキシル末端濃度)
A.試料の調整
ポリエステルを粉砕し、70℃で24時間真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量する。そのときの重量をW(g)とする。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したベンジルアルコール浴に浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解する。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとする。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみ入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとする。
B.滴定
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定する。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求める。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とする。サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とする。
C.カルボキシル末端濃度の算出
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求める。同様にXa,Xb,Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求める。次いで、次式に従いカルボキシル末端濃度を求めた。
カルボキシル末端濃度(eq/ton)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
【0074】
(ヘーズ、全光線透過率)
積層フィルム試験片のヘーズ(曇価)および全光線透過率はJIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。フィルム試験片のフィルム長手方向を鉛直方向にして光源側に向けて設置し、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いて測定した。
【0075】
(耐加水分解性)
耐加水分解性評価として、JIS−60068−2−66で規格化されているHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。機器はエスペック社製EHS−221を用い、105℃、100%RH、0.03MPa下の条件で行った。
積層フィルムを70mm×190mmにカットし、治具を用いてフィルムを設置した。各フィルムは各々が接触しない距離を保ち設置した。105℃、100%RH、0.03MPaの条件下で192時間処理を行った。処理前、処理後の破断伸度をJIS−C−2318−1997 5.3.31(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定し、下記式に従い破断伸度保持率を算出し、70%以上のものを○、70%未満のものを×とした。
破断伸度保持率(%)=[(処理後の破断伸度(MPa))/(処理前の破断伸度(MPa))]×100
【0076】
(380nm以下の波長での光線透過率)
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として波長300〜500nm領域の光線透過率を測定して、波長380nmにおける透過率を求めた。
【0077】
(1)ポリエステル(A)の重合
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%を加えて、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステル(A)を得た。 この際溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。
【0078】
(2)ポリエステル(B)の重合
平均粒子径が2.5μmの多孔質シリカ粒子をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、多孔質シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを得た。
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%と前記シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(B)を得た。
【0079】
(3)ポリエステル(C)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は5μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(C)を得た。
【0080】
(4)ポリエステル(D)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部と前記多孔質シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(D)を得た。
【0081】
(5)ポリエステル(E)の重合
平均粒子径が2.5μmの多孔質シリカ粒子の代わりに平均粒子径が1.8μmの炭酸カルシウム粒子を用いた以外はポリエステル(B)と同様の方法でポリエステル(E)を得た。
【0082】
(6)ポリエステル(F)の重合
固相重合条件を変更し、固有粘度0.85dl/gとした以外はポリエステル(A)と同様の方法でポリエステル(F)を得た。
【0083】
(7)ポリエステル(G)の重合
ポリエステル(A)に対して紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)を1質量%添加し、ポリエステル(G)を得た。
【0084】
(8)ポリエステル(H)の重合
ポリエステル(A)に対して紫外線吸収剤2−(5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 TINUVIN 326)を1質量%添加し、ポリエステル(H)を得た。
【0085】
(実施例1)
基材フィルム中間層用原料としてポリエステル(A)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に、ポリエステル(A)とポリエステル(B)を多孔質シリカ濃度0.06質量%になるように配合し、押出機1(外層A層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、A層、B層、C層の厚さの比は1.5:7:1.5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。次にこの未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0086】
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、最高温度230℃の熱固定ゾーンで処理し、幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0087】
(実施例2)
ポリエステル(B)の代わりにポリエステル(E)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0088】
(実施例3)
A層の多孔質シリカ濃度が0.1質量%になるようにポリエステル(A)とポリエステル(B)を配合した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
(実施例4)
A層の多孔質シリカ濃度が0.03質量%になるようにポリエステル(A)とポリエステル(B)を配合した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
(実施例5)
実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0091】
次いで、下記に示す塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、ロールコート法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。なお、塗布液のウェット塗布量は5g/mとした。また、前記の塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、ロールコート法で一軸配向PETフィルムの反対面に塗布した。なお、塗布液は塗布厚みが乾燥時に60nmになるように塗布した。
【0092】
その後、最高温度135℃の乾燥炉で6.8秒間乾燥させた。
引き続き、実施例1と同様にして被覆層を有したフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
(塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステルを調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル液を得た。さらに、多孔質シリカ粒子(平均粒子径1.1μm)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル液99.46質量部に前記多孔質シリカ粒子水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液を得た。
【0094】
(実施例6)
ポリエステルAの代わりにポリエステルFを用いた以外はは実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0095】
(実施例7)
ポリエステルAの代わりにポリエステルGを用いた以外はは実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
(実施例8)
ポリエステルAの代わりにポリエステルHを用いた以外はは実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
(比較例1)
ポリエステル(A)の代わりにポリエステル(C)、ポリエステル(B)の代わりにポリエステル(D)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0098】
(比較例2)
ポリエステル(A)とポリエステル(B)を多孔質シリカ濃度0.06質量%になるように配合し、押し出し機1及び2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0099】
(比較例3)
ポリエステル(B)のみを押し出し機2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0100】
(比較例4)
ポリエステル(A)を押し出し機1及び2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0101】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルムは、耐久性に優れ、かつ透明性と加工性に優れる。そのため、太陽電池表面保護シートの構成部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層と中心層を有する3層からなる積層ポリエステルフィルムであり、
前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、
前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、
ヘーズは5%以下、全光線透過率は85%以上であり、
カルボキシル末端濃度がポリエステルに対して25eq/ton以下であり、
固有粘度が0.60〜0.90dl/gであり、
前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り10個以上100個以下である、
太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記最外層に含まれる粒子が、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機粒子であり、
前記粒子の平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、
前記最外層における粒子の含有量が0.01〜0.20質量%である、請求項1の太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記粒子が多孔質シリカである、請求項1または2の太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記中心層に紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を有する被覆層付き太陽電池表面保護シート用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−84719(P2012−84719A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230354(P2010−230354)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】