説明

太陽電池

【課題】光電変換部材において、光電変換に寄与しない波長の光による加熱を防止することである。
【解決手段】位相差フィルムとコレステリック液晶フィルムを含む反射シートを備え、光電変換に寄与する波長を透過し、当該反射シートにより特定波長の入射光を反射するように構成された光電変換部材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び当該光電変換素子を含む太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、火力或いは水力の代替エネルギとして太陽光エネルギを用いることが提唱されている。このため、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子によって構成された太陽電池に対する期待は、非常に大きくなっている。
【0003】
このような状況の下に、シリコン系、化合物系、及び有機物系のもの等、種々の太陽電池或いは光電変換素子が提案されている。
【0004】
更に、この種の太陽電池のうちでも、シリコン系の太陽電池は、地球上の資源として大量に存在しているシリコンを原料としているため、他の化合物系及び有機物系太陽電池に比較して、資源の枯渇等の問題は生じないものと考えられる。
【0005】
また、シリコン系太陽電池のうち、非晶質型シリコン太陽電池は、非晶質シリコン膜の膜厚を他の単結晶型及び多結晶型シリコン太陽電池に比較して1/100以下にすることができるため、大電力及び大面積の太陽電池を現実的に低コストで製造するのに適している。
【0006】
しかしながら、非晶質型シリコン太陽電池のエネルギ変換効率が6%程度と、20%程度のエネルギ変換効率を有する単結晶型及び多結晶型シリコン太陽電池に比較して著しく低く、更に、非晶質型シリコン太陽電池のエネルギ変換効率は、大面積になるほど低下すると云う欠点が指摘されている。
【0007】
本発明者等は、先に、特許文献1において、6%を超えるエネルギ変換効率を有する非晶質型シリコン太陽電池或いは光電変換素子を提案した。提案された非晶質型シリコン太陽電池或いは光電変換素子は、透明電極によって形成された第1の電極層、第2の電極層、第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた1つ又は複数の発電積層体を含み、発電積層体は、第1の電極層に接触して形成されたn型非晶質半導体層(特に、n型非晶質シリコン層)、第2の電極層に接触して形成されたp型非晶質半導体層(特に、p型非晶質シリコン層)、及び、n型非晶質半導体層とp型半導体層との間に設けられたi型半導体層(i型シリコン層)を備えた所謂nip構造を有している。
【0008】
変換効率を上げるために、シリコン消費量の比較的少ない微結晶シリコンによるnip構造の発光積層体を非晶質シリコンの発光積層体に積層して用いることも提案されている。
【0009】
更に、上記した非晶質型太陽電池或いは光電変換素子は、n型非晶質半導体層であるn型非晶質シリコン層と接触する第1の電極層として、エネルギ障壁の低いn+型ZnOを使用した透明電極を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願2008−315888号公報
【特許文献2】特開2007−103813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示された非晶質型太陽電池或いは光電変換素子は、量産性に富むと共に、10%以上のエネルギ変換効率を達成することができる。更に、資源的に枯渇等の問題のないシリコン及び亜鉛材料によって構成しているため、今後、太陽電池を大規模にかつ大量に生産することも可能であると期待されている。以下では、説明の簡略化のために、太陽電池及び/又は光電変換素子を集合的に光電変換部材と総称するものとする。
【0012】
ここで、光電変換部材は、一般に温度が高くなるほど発電効率が低くなると云う特性を有している。また、特許文献1に示された非晶質光電変換部材は、入射する太陽光のうち、700nm以上の波長を有する光を透過できず、このため、700nm以上の波長を有する入射光によって加熱されることが判明した。一方、700nm以上の波長の光を吸収してエネルギ変換を行なう材料は非常に限定され、かつ、その材料の資源を長期に亘って安定的に確保することは困難な状況にある。
【0013】
上記したように、非晶質シリコンを用いた光電変換部材は、700nm以上の波長の光を吸収できないため、700nm以上の波長の光によって加熱される可能性がある。
【0014】
また、微結晶シリコンnip積層体を非晶質シリコンnip積層体に積層した構造では、1,100nm以上の波長の光を吸収できないため、1,100nm以上の波長の光によって加熱される可能性がある。
【0015】
一方、特許文献2には、熱可塑性樹脂に、赤外線反射特性を有する無機顔料を添加することによって形成された低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物からなる太陽電池バックシートが開示されている。ここで、特許文献2に記載された太陽電池バックシートは、赤外線領域に感度特性を有する太陽電池素子を前提としている。このため、特許文献2は、波長1000〜1200nmの範囲の赤外線に対して反射効率の良い太陽電池バックシートを太陽光の受光面とは反対の面に設置し、反射した赤外線を太陽電池に再入射させている。
【0016】
本発明は、太陽電池の受光面に赤外線反射シートを設置し、太陽電池に有害な赤外線を発電積層体に入射させないようにした構成を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、入射光のエネルギを光電変換素子で電気エネルギに変換する光電変換部材において、前記入射光の入射側に、前記入射光を選択的に反射する透明シートを備え、当該透明シートは700〜1900nmの波長領域に入射光の40%以上を反射する帯域を有することを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体とを含み、前記発電積層体は、p型半導体層と、当該p型半導体層に接触して形成されたi型半導体層と、前記i型半導体層に接触して形成されたn型半導体層とを含み、前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第1の電極側の発電積層体の前記n型半導体層は前記第1の電極層に接触し、前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第2の電極側の発電積層体の前記p型半導体層は前記第2の電極層に接触し、前記第1の電極層を搭載する第1のガラス板を含み、前記透明シートは前記第1のガラス板の少なくとも一方の面側に設けられていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様において、前記透明シートは、前記第1のガラス板の前記第1の電極層とは反対側の面に接触するように設けられていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、第2の態様において、前記透明シートは、前記第1のガラス板と前記第1の電極層との間に設けられていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、第1〜4の態様のいずれかにおいて、前記第1の電極層は透明電極であることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0022】
本発明の第6の態様によれば、第2の態様において、前記発電積層体の少なくとも一つにおける前記i型半導体層は、結晶シリコン、微結晶非晶質シリコン、及び、非晶質シリコンのいずれかによって形成されていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、第2の態様において、前記第1の電極層は、n型のZnOであり、前記第1の電極層に接触する前記n型半導体層は非晶質シリコンによって形成されていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、第2の態様において、前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第1の電極側の発電積層体は、非晶質シリコンによって形成されていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、第2の態様において、前記第2の電極層に接触する前記p型半導体層は非晶質シリコンによって形成されており、前記第2の電極層のうち少なくとも前記p型半導体層が接触する部分は、Se又はPtで形成されていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0026】
本発明の第10の態様によれば、第2の態様において、前記第2の電極層に接触する前記p型半導体層は微結晶シリコンによって形成されており、前記第2の電極層のうち少なくとも前記p型半導体層が接触する部分は、Niを含んで形成されていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0027】
本発明の第11の態様によれば、第1の態様において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体と、前記第1の電極層の前記発電積層体とは反対側に設けられた透明基板を含み、前記第1の電極層は透明電極層によって構成され、更に、前記第1の電極層と前記透明基板との間に、前記透明シートを備えていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0028】
本発明の第12の態様によれば、第1の態様において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体と、前記第1の電極層の前記発電積層体とは反対側に設けられた透明基板を含み、前記第1の電極層は透明電極層によって構成され、更に、前記透明基板の前記第1の電極層とは反対側に、前記透明シートを備えていることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0029】
本発明の第13の態様によれば、第1〜12の態様のいずれかにおいて、更に、前記入射光の入射側の表面に、透明保護板を有していることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0030】
本発明の第14の態様によれば、第1〜13の態様のいずれかにおいて、前記透明シートはコレステリック液晶層を含んでいることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0031】
本発明の第15の態様によれば、第14の態様において、前記透明シートは、更に、配向膜層を含んでいることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0032】
本発明の第16の態様によれば、第14〜15の態様のいずれかにおいて、前記透明シートは、複数のコレステリック液晶層を含むことを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0033】
本発明の第17の態様によれば、第16の態様において、前記透明シートは、更に、1/2波長の位相差を有する位相差層を含むことを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0034】
本発明の第18の態様によれば、第14〜17の態様のいずれかにおいて、前記透明シートは、前記コレステリック液晶層が透明樹脂基材上に形成された構成を有することを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0035】
本発明の第19の態様によれば、第14〜18の態様のいずれかにおいて、前記コレステリック液晶層が、化1式で表される化合物を含有するコレステリック液晶組成物から形成されたものであることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0036】
【化1】

【0037】
本発明の第20の態様によれば、第1〜19の態様のいずれかにおいて、前記透明シートは、700〜1900nmの波長領域に入射光の40%以上を反射する帯域を200nm以上有することを特徴とする光電変換部材が得られる。
【0038】
本発明の第21の態様によれば、第1〜20の態様のいずれかにおいて、前記透明シートは、420〜700nmの波長領域における入射光の平均透過率が50%以上であることを特徴とする光電変換部材が得られる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、エネルギ変換に寄与しない入射光を選択的に反射することによって、温度の上昇を低減し、この結果、高いエネルギ変換効率を長期間に亘って維持できる太陽電池或いは光電変換部材が得られる。本発明では、赤外光の波長領域の少なくとも一部の波長の入射光を選択的に反射でき、かつ、可視光に対して透明なシートが得られる。非晶質シリコンを主体とする材料によって発電積層体を形成した光電変換部材に透明なシートを使用することにより、光電変換部材の加熱による温度上昇を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光電変換部材を説明する断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光電変換部材を説明する断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る光電変換部材を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る透明シートを示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る透明シートの他の例を示す断面図である。
【図6】図5に示された透明シートの配置の一例を示す図である。
【図7】図5に示された透明シートの配置の他の例を示す図である。
【図8】(A)は図4に示された透明シートの特性を示す図であり、(B)は図5に示された透明シートの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光電変換部材を説明する。図示された光電変換部材は、光電変換素子10を含み、これら光電変換素子10を接続することによって太陽電池を構成している。図示された光電変換素子10は、透明保護板として機能するガードガラス12及び当該カードガラス12上に設置されるガラス基板14を含む基体を備えている。図示された光電変換素子10は、ガードガラス12とガラス基板14との間に、後述する本発明に係る透明シート50が設けられていることを特徴としている。尚、透明シート50は、可視光に対して透明なシートであることを意味している。
【0042】
この例では、ガラス基板14はNaを含む安価なソーダガラスによって形成されており、このソーダガラスからNaが拡散して素子を汚染するのを防止する目的で、ガラス基板14上には、ナトリウムバリア層16が形成されている。ナトリウムバリア層16は、例えば、表面平坦化塗布液を塗布し乾燥・焼結することで形成される。また、図からも明らかな通り、単位セルとなる光電変換素子10は、基体上において、隣接する他の光電変換素子(セル)と電気的に直列に接続され、太陽電池を構成している。
【0043】
具体的に説明すると、本発明の一実施形態に係る光電変換素子10は第1の電極層20、a−Si(非晶質シリコン)によって形成されたnip構造を備えた単一の発電積層体22、及び、当該発電積層体22上に、セレン層24を介して成膜されたAlの第2の電極層26を有している。
【0044】
光電変換素子10を構成する第1の電極20は、透明導電体電極(Transparent Conductive Oxide(TCO)層)であり、ここでは、1μmの膜厚を有するZnO層によって形成されている。このZnO層20はGaがドープされたn+型ZnO層である。また、第1の電極20を構成するn+型ZnO層には、所定の間隔毎に絶縁膜201(ここでは、SiCN)が設けられ、セル単位に区画、区分されている。
【0045】
当該第1の電極20上には、発電積層体22の一部を構成するn+型a−Si層221が設けられ、n+型a−Si層221は第1の電極20を構成する透明電極と接触している。図示されたn+型a−Si層221は10nmの膜厚を有している。n+型a−Si層221上には、発電積層体22を形成するi型a−Si222及びp型a−Si層223が順次形成されている。図示されたi型a−Si222及びp型a−Si層223の膜厚はそれぞれ480nm及び10nmの膜厚を有している。
【0046】
この例では、発電積層体22を構成するn+型a−Si層221、i型a−Si層222、及びp+型a−Si層223には、第1の電極20の絶縁層201の位置とは異なる位置に、ビアホール224が設けられており、当該ビアホールの内壁にはSiO層が形成されている。
【0047】
nip構造の発電積層体22は全体で500nmの厚さを有しており、単結晶または多結晶シリコンによって形成された光電変換素子に比較して、100分の1以下の厚さを有している。
【0048】
次に、p型a−Si層223上には、セレン(Se)層24を介して第2の電極層26が形成され、当該第2の電極層26を形成するAlは発電積層体22のビアホール224(内壁はSiO2で絶縁されている)内にも形成されている。ビアホール224内のAlは、隣接する光電変換素子の第1の電極20と電気的に接続されている。尚、第2の電極のp型a−Si層との接触部を構成するセレン(Se)層24は、Seの仕事関数(−6.0eV)がp型a−Si層の仕事関数に近いために使用するもので、同様に仕事関数の近いPt(−5.7eV)に置き換えても良い。
【0049】
更に、第2の電極26上にはSiCNによるパッシベーション膜28が形成される。パッシベーション膜28を形成する絶縁材料(ここでは、SiCN)は、第2の電極26、セレン層24、p型a−Si層223、を経てi型a−Si層222に達する穴225内にも埋設されている。パッシベーション膜28上には、熱伝導性の良い材料によって形成された接着剤層29を介してヒートシンク30(たとえばAlによって形成)が取り付けられている。
【0050】
尚、第1の電極層20を形成するn+ZnO層は、Gaの代わりにAl、In等をドープすることによっても形成することができる。
【0051】
図1に示された光電変換素子10は、当該光電変換素子10のセル単体で約20%のエネルギ変換効率が得られた。また、これら光電変換素子10を接続して1.15m×1.40mの太陽電池モジュールを構成した場合、307Wの電力が得られ、モジュールにおけるエネルギ変換効率は18.9%であった。
【0052】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る光電変換部材を示し、ここでは、光電変換素子10aと、当該光電変換素子10aを接続することによって構成された太陽電池が示されている。
【0053】
図示された光電変換素子10aは、ガラス基板14上に形成されたナトリウムバリア層16と、透明導電体電極によって構成された第1の電極20との間に、本発明に係る透明シート50aが設けられている点で、図1に示された光電変換素子10とは異なっていること以外、図1に示された光電変換素子10と同様な構成を備えている。
【0054】
図3を参照すると、本発明の第3の実施形態に係る光電変換部材が示されており、ここでは、光電変換素子10bと、当該光電変換素子10bを接続することによって構成された太陽電池が示されている。図3に示された光電変換素子10bは、本発明に係る透明シート50bがガードガラス12とガラス基板14との間に設けられているが、当該透明シート50bは、図2と同様に、第1の電極20とナトリウムバリア層16との間に配置されても良い。
【0055】
図3に示された光電変換素子10bはNaを含む安価なソーダガラスによって形成されたガラス基板14上にナトリウムバリア層16および1μmの膜厚を有するn+型ZnO層20を介して、a−Siによって形成されたnip構造を備えた第1の発電積層体22を有している。
【0056】
図3では、発電積層体22の上に、微結晶シリコン(μC−Si)によって形成されたpin構造を備えた第2の発電積層体42を設け、当該第2の発電積層体42上に、ニッケル層44を介して成膜されたAlの第2の電極層26を有している。
【0057】
具体的には、第1の発電積層体22の上に、第2の発電積層体42の一部を構成するn+型μC−Si層421が設けられ、p+型a−Si層223と接触している。図示されたn+型μC−Si層421は20nmの膜厚を有している。n+型μC−Si層421上には、第2の発電積層体42を形成するi型μC−Si422及びp型μC−Si層423が順次形成されている。それぞれの膜厚は、i型μC−Si422は1.86μm、p型μC−Si層423は20nmである。発電積層体22を構成するn+型a−Si層221、i型a−Si層222、p+型a−Si層223、および第2の発電積層体42を構成するn+型μC−Si層421、i型μC−Si422及びp型μC−Si層423、ならびにNi層44を貫いて、Al層26から第1の電極20に達するビアホール244が設けられており、当該ビアホールの内壁はSiO層で覆われており、その中にAl層が設けられて、一つの光変換素子を隣接する他の光電変換素子に直列接続している。
【0058】
微結晶シリコンによる第2の発電積層体42は全体で2.26μmの厚さを有しており、非結晶シリコンによる発電積層体22では吸収できなかった波長の太陽光を吸収し、全体の発電効率を高めている。この構造では発電効率は30%に達した。
【0059】
尚、第2の電極のp型μC−Si層423との接触部を構成するニッケル(Ni)層44は、仕事関数がp型μC−Si層の仕事関数に近いために採用されたものである。また、SiCNによる絶縁穴245は、第2の電極26・44、p+型μC−Si層423、i型μC−Si422、n型μC−Si層421、p型a−Si層223、を経てi型a−Si層222に達するようにしているが、μC−Siは高抵抗なので、i型μC−Si422に達したところで止めた構造でも良い。
【0060】
図4を参照して、図1〜3に示された透明シート50、50a、及び50bとして使用可能な本発明の第1の実施例に係る透明シート55aを説明する。図示された透明シート55aは、シクロオレフィンポリマー(COP)によって形成された透明樹脂基材56、該透明樹脂基材56上に形成された配向膜層57およびコレステリック液晶層(Ch−LC)58によって構成されている。ここで、コレステリック液晶層58は特定波長領域の左回りまたは右回りの何れかの円偏光を反射するように配向されている。
【0061】
この構成の透明シート55aは、420nm〜700nmの波長を有する入射光を85%程度透過し、700nm〜1900nmの波長領域において入射光を336nmの帯域にわたり選択的に40%以上反射することができた。即ち、透明シート55aは、700nmより短い波長の可視光に対して透明であり、700nm以上の波長を有する光を反射する特性を有している。
【0062】
図5を参照して、本発明の第2の実施例に係る透明シート55bを説明する。図5に示された透明シート55bは、図4に示された透明樹脂基材56、配向膜層57及びコレステリック液晶層58を含むと共に、更に、当該コレステリック液晶層58上に、透明粘着層60、レターデーション550nmの位相差フィルムによって形成された位相差層62、透明粘着層64、コレステリック液晶層66、配向膜層67及び透明樹脂基材68を順次積層した構成を備えている。ここで、位相差層62は入射光を180°偏光させるためのものである。かかる構成により、入射光の特定波長領域の何れか(例えば、左回り)の円偏光はコレステリック液晶層58で反射される。コレステリック液晶層58を透過した他方(例えば、右回り)の円偏光は位相差層62で180°偏光されて回転方向が逆(例えば、左回り)の円偏光となり、コレステリック液晶層66で反射される。
【0063】
このように、位相差層62を挟んで、2枚のコレステリック液晶層58及び66と、2枚の透明樹脂基材56及び68を備えた透明シート55bは、700nm〜1900nmの波長領域において入射光を412nmの帯域にわたり40%以上反射することができた。
【0064】
次に、図6を参照すると、図1及び図3と同様に、図5に示された透明シート55bが、透明シート50又は50bとして、ガードガラス12とガラス基板14との間に、配置された例が示されている。ここでは、図5に示された透明シート55bが、ガードガラス12及びガラス基板14に対して、透明粘着層70及び72によってそれぞれ接着されている。
【0065】
図6に示された透明シート55bは、1.53の屈折率を有する厚さ100μmの透明樹脂基材56、厚さ0.1μmの配向膜層57、屈折率が1で厚さ10μmのコレステリック液晶層58、屈折率が1.47で厚さ20μmの透明粘着層60、屈折率が1.53で厚さ40μmの位相差層62、屈折率が1.47で厚さ20μmの透明粘着層64、屈折率が1で厚さ10μmのコレステリック液晶フィルム66、厚さ0.1μmの配向膜層67、及び屈折率が1.53で厚さ100μmの透明樹脂基材68を順次積層した構成を有している。
【0066】
また、図示された透明シート55bをガードガラス12及びガラス基板14に接着する透明粘着層70及び72は、1.47の屈折率、20μmの厚さを有している。
【0067】
図6からも明らかなように、透明シート55bは、ガラス基板14の外側に配置されているから、ここでは、この構成を透明シート外側型光電変換部材と呼ぶものとする。
【0068】
図7を参照すると、図5に示された透明シート55bが、図2に示された透明シート50aと同様に、ガラス基板14と透明電極によって形成される第1の電極20との間に、透明粘着層70及び72によって接着されている。図示された第1の電極20は2.12の屈折率、1μmの厚さを有している。透明シート55bを構成するフィルム等の膜厚、屈折率は図6と同様である。
【0069】
この構成は、ガラス基板14の内側に透明シート55bが設けられているから、ここではこの構成を透明シート内側型光電変換部材と呼ぶものとする。
【0070】
図8(A)及び(B)を参照すると、図4及び図5に示された透明シートの透過率と波長(nm)との関係が、それぞれ示されている。図8(A)から明らかな通り、コレステリック液晶層を1層有する図4に示された透明シート55aは、700nm以下の波長の入射光に対して、85%以上の透過率を持ち、700〜1900nmの波長の入射光に対して40%以上の反射率を示す帯域を有している。また図8(B)から明らかな通り、コレステリック液晶層を2層有する図5に示された透明シート55bは、700nm以下の波長の入射光に対して、65%以上の透過率を持ち、700〜1900nmの波長の入射光に対してより広い帯域で40%以上の反射率を示す。
【0071】
本発明は、透明シートによって入射光の波長を選択することができ、これによって、光電変換に寄与しない入射光をカットすることが可能である。したがって、本発明は、nip構造の光電変換素子或いは太陽電池に限定されることなく、他の形式の光電変換素子或いは太陽電池にも適用できる。
【0072】
次に、本発明において使用される透明シートの製造方法についてより具体的に説明する。
【0073】
まず、本発明に使用される透明シートは、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有する。700nm〜1900nmの波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域は、200nm以上の帯域幅を有することが好ましい。
【0074】
このような透明シートは、コレステリック液晶層を用いることによって実現できる。即ち、コレステリック液晶層のコレステリック規則性を調整することで、入射光の40%以上を反射する波長及び反射する帯域を調整することができる。
【0075】
更に、当該透明シートは、より高い発電効率を得るために、可視光線の領域である420nm〜700nmの波長領域における入射光の平均透過率が、高いことが望ましい。具体的には、透明シートの可視光領域における平均透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0076】
尚、「コレステリック規則性」とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、該平面の法線方向に分子軸の角度が次々にずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造はカイラルな構造と呼ばれる。該平面の法線(カイラル軸)はコレステリック液晶層の厚さ方向に略平行になっていることが好ましい。
【0077】
コレステリック規則性を持つコレステリック液晶層に光が入射すると、特定波長領域の左回りまたは右回りの何れかの円偏光のみが反射される。反射された円偏光以外の光は透過する。この円偏光が反射される特定波長領域が選択反射帯域である。
【0078】
カイラル構造において分子軸が捩れる時の回転軸を表す螺旋軸と、コレステリック液晶層の法線とが平行である場合、カイラル構造のピッチ長Pと反射される円偏光の波長λとは次式(A)および式(B)の関係を有する。
【0079】
λ=n×P×cosθ (A)
×P×cosθ≦λ≦n×P×cosθ (B)
式中、nは棒状液晶化合物の短軸方向の屈折率を表し、nは棒状液晶化合物の長軸方向の屈折率を表し、nは(n+n)/2であり、Pはカイラル構造のピッチ長を表し、θは光の入射角(面の法線からの角度)を表す。
【0080】
すなわち、選択反射帯域の中心波長λは、コレステリック樹脂層におけるカイラル構造のピッチ長Pに依存する。このカイラル構造のピッチ長を変えることによって、選択波長帯域を変えることができる。
【0081】
本発明に係るコレステリック液晶層は、液晶ポリマー溶液、又は重合性液晶組成物を、基材上に塗布・乾燥することにより形成することができる。
【0082】
より具体的には、例えば、(a)液晶ポリマー、必要に応じてカイラル剤、界面活性剤、配向調整剤等を溶剤に溶解させた液晶ポリマー溶液(塗布液)を基材上に膜状に塗布し、乾燥させ、得られた塗膜について、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するようにコレステリック規則性を調整する方法、或いは、(b)重合性液晶化合物、重合開始剤およびカイラル剤、さらに必要に応じて界面活性剤、配向調整剤等を溶剤に溶解させた重合性液晶組成物(塗布液)を得、これを基材上に膜状に塗布し、乾燥させ、得られた塗膜を重合した後、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するようにコレステリック規則性を調整する方法によって形成することができる。
【0083】
(a)、(b)いずれの方法においても、得られるコレステリック液晶層の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、1μm〜10μmが特に好ましい。
【0084】
ここで、(a)の方法で用いられる液晶ポリマーとしては、低分子カイラル剤含有のネマチック液晶ポリマー;カイラル成分導入の液晶ポリマー;ネマチック液晶ポリマーとコレステリック液晶ポリマーの混合物;等が挙げられる。
【0085】
カイラル成分導入の液晶ポリマーとは、それ自体がカイラル剤の機能を果たす液晶ポリマーである。一方、ネマチック液晶ポリマーとコレステリック液晶ポリマーの混合物は、それらの混合比率を変えることによって、ネマチック液晶ポリマーのカイラル構造のピッチを調整することができるものである。
【0086】
また、アゾメチン形、アゾ形、アゾキシ形、エステル形、ビフェニル形、フェニルシクロヘキサン形、およびビシクロヘキサン形のようなパラ置換芳香族単位やパラ置換シクロヘキシル単位等からなるネマチック配向性を付与するパラ置換環状化合物を有するものに、不斉炭素を有する化合物等からなる適宜なカイラル成分や低分子カイラル剤等を導入する方法等により、コレステリック規則性を付与したもの(特開昭55−21479号公報、米国特許第5332522号公報等を参照)も用いることができる。なお、パラ置換環状化合物におけるパラ位の末端置換基としては、シアノ基やアルキル基、アルコキシル基等が挙げられる。
【0087】
本発明に適用できる液晶ポリマーはその製法によって制限されない。液晶ポリマーは、例えば、メソゲン構造を有するモノマーをラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合することによって得られる。メソゲン構造を有するモノマーは、例えばアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのようなビニル系モノマーに、直接にまたはスペーサー部を介してメソゲン基を公知の方法で導入することによって得ることができる。また、液晶ポリマーは、ポリオキシメチルシリレンのSi−H結合を介し白金系触媒の存在下にビニル置換メソゲンモノマーを付加反応させることによって;主鎖ポリマーに付与した官能基を介して相間移動触媒を用いたエステル化反応によりメソゲン基を導入することによって;マロン酸の一部に必要に応じスペーサー部を介してメソゲン基を導入したモノマーとジオールとを重縮合反応させることによって得ることができる。
【0088】
次に、上記した液晶ポリマーに導入又は含有させるカイラル剤について説明する。このような液晶ポリマーに導入または含有させるカイラル剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、特開平6−281814号公報に記載されたカイラルモノマー、特開平8−209127号公報に記載されたカイラル剤、特開2003−131187号公報に記載の光反応型カイラル化合物等が挙げられる。
【0089】
また、カイラル剤としては、カイラル剤の添加によって意図しない相転移温度の変化が生じることを避けるために、カイラル剤自身が液晶性を示すものが好ましい。さらに、経済性の観点からは、液晶ポリマーを捩じる効率を表す指標であるHTP(=1/P・c)の大きなものが好ましい。ここで、Pはカイラル構造のピッチ長を表し、cはカイラル剤の濃度を表す。カイラル構造のピッチ長とは、カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでのカイラル軸方向の距離のことである。
【0090】
基材としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質のものを使用することができるが、透明樹脂基材が好ましい。透明樹脂基材の材質としては、例えば、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0091】
また、用いる基材は、単層のものであっても、積層体であってもよい。
【0092】
本発明に係るコレステリック液晶層は、(a)及び(b)の方法と同様にして他の基材に形成したものを転写して用いることもできる。この場合、他の基材としては、前述した基材と同様のものが使用できるが、透明基材が好ましく、透明樹脂基材がより好ましい。
【0093】
本発明に係るコレステリック液晶層を形成するために、配向膜を用いることが好ましい。配向膜は、コレステリック規則性を持つコレステリック液晶層を面内で一方向に配向規制するために透明基材の表面に形成することによって得られる。
【0094】
配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのポリマーを含有するものである。配向膜は、このようなポリマーを含有する溶液(配向膜用組成物)を基材上に膜状に塗布し、乾燥させ、そして一方向にラビング処理等することで、得ることができる。
【0095】
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0096】
また、本発明ではコレステリック液晶層を形成する際に、配向膜あるいは基材にラビング処理を施すことができる。ラビング処理の方法は、特に制限されないが、例えば、ナイロンなどの合成繊維、木綿などの天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に配向膜をイソプロピルアルコールなどによって洗浄することが好ましい。
【0097】
また、ラビング処理する方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向膜にコレステリック規則性を持つコレステリック液晶層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
【0098】
上記した(a)の方法において、液晶ポリマーを基材上に膜状に積層するには、前記液晶ポリマーの有機溶媒溶液を、基材上に公知の塗工方法により塗工し、乾燥すればよい。(a)の方法において、基材上に膜状に形成した液晶ポリマー層を、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するようにコレステリック規則性を調整するには、液晶ポリマーに含有させるカイラル剤の種類、添加量を適宜設定することにより、あるいは、導入するカイラル成分として適宜なものを選定することにより、行うことができる。また、ネマチック液晶ポリマーとコレステリック液晶ポリマーの混合物は、それらの混合比率を変えることによって、ネマチック液晶ポリマーのカイラル構造のピッチを調整することができる。
【0099】
他方、上記した(b)の方法に用いる重合性液晶化合物としては、特に制約はなく、例えば、特開平11−130729号公報、特開平8−104870号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特表2001−519317号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開昭62−070406号公報、特開平11−100575号公報、特開2008-291218号公報、特開2008−242349号公報、WO2009/133290号パンフレット、特願2008−170835号等に記載のものを用いることができる。
【0100】
これらの中でも、本発明においては、化2式で表される化合物が好ましく、化3式で表される化合物がより好ましい。
【0101】
【化2】

【化3】

【0102】
式(1)中、Rは、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−へプチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;−OR;−O−C(=O)−R;−C(=O)−OR;を表す。
【0103】
ここで、Rは、水素原子;又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。置換基としては、ハロゲン原子;炭素数1〜6のアルコキシル基;等が挙げられる。
【0104】
また、Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。
【0105】
は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0106】
また、nは2〜12の整数を表し、6であることが好ましい。
【0107】
なかでも、Rは、−C(=O)−ORで表される基であるのが好ましい。ここで、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。Rとしては、メチル基が好ましい。
【0108】
前記式(1)で表される化合物は、有機合成化学における公知の方法を組み合わせることによって、例えば、特開2008−291218号公報に記載の方法により製造することができる。
【0109】
(b)の方法による場合、重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子としては、重合性液晶化合物の単独重合体、重合性液晶化合物の2種以上からなる共重合体、又は、重合性液晶化合物と他の共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0110】
前記他の共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−メトキシフェニル、4−(6−メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸ビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−3’,4’−ジフルオロフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸ナフチル、4−アクリロイルオキシ−4’−デシルビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−シアノビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−メトキシビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−(4”−フルオロベンジルオキシ)−ビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−プロピルシクロヘキシルフェニル、4−メタクリロイル−4’−ブチルビシクロヘキシル、4−アクリロイル−4’−アミルトラン、4−アクリロイル−4’−(3,4−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−アミルフェニル)、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−(4’−プロピルシクロヘキシル)フェニル)等が挙げられる。
【0111】
他の共重合可能な単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、全単量体の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。かかる範囲にあると、ガラス転移温度(Tg)が高く、高い膜硬度を有する液晶性高分子を得ることができる。
【0112】
(b)の方法に用いる重合性液晶組成物に含有させる重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれでもよいが、より容易且つ効率よくコレステリック規則が調整されたコレステリック液晶層を形成できることから、光重合開始剤が好ましい。
【0113】
光重合開始剤としては、多核キノン化合物、オキサジアゾール化合物、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ、アクリジンおよびフェナジン化合物などが挙げられる。
【0114】
重合開始剤の配合量は、全重合性単量体100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがさらに好ましい。
【0115】
また、光重合開始剤を用いたときには、照射光として紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギは、0.1mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、0.1mJ/cm〜800mJ/cmであることがさらに好ましい。
【0116】
紫外線の照射方法は、特に制限されない。また、紫外線照射エネルギは、重合性液晶化合物の種類によって適宜選択される。
【0117】
次に、重合性液晶組成物に含有させるカイラル剤としては、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、米国特許第6468444号公報、WO第98/00428号公報等に掲載されるものを適宜使用することが出来るが、液晶化合物を捩じる効率を表す指標であるHTPの大きなものが経済性の観点から好ましい。HTPは、式:HTP=1/(P・c)で表される。ここで、Pはカイラル構造のピッチ長を表し、cはカイラル剤の濃度を表す。また、カイラル剤の添加による意図しない相転移温度の変化を避けるために、カイラル剤自身が液晶性を示すものを用いることが好ましい。
【0118】
更に、重合性液晶組成物に含有させるその他の配合剤としては、他の配合剤としては、界面活性剤、配向調整剤などが挙げられる。
【0119】
界面活性剤は、重合性液晶組成物の塗膜の表面張力を調整するために用いられる。界面活性剤としては、ノニオン系の界面活性剤が好ましく、分子量が数千程度のオリゴマーであることが好ましい。
【0120】
配向調整剤は、基材上に形成されたコレステリック液晶層の空気側表面の配向状態を制御するためのものである。配向調整剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、あるいはこれらの変性物が挙げられる。
【0121】
このように、重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、重合開始剤およびカイラル剤、さらに必要に応じて界面活性剤、配向調整剤等を溶媒に溶解させることにより調製することができる。
【0122】
用いる溶媒としては、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類などの有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。また、二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0123】
重合性液晶組成物を膜状に積層するには、基材上に、重合性液晶組成物を公知の塗工法により塗工し、得られた塗膜を乾燥させればよい。乾燥温度は、40〜150℃の範囲である。
【0124】
上述のように、(b)の方法において、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するように、コレステリック規則性を調整する工程は、WO2008/007782号に開示されている方法と同様に行うことが好ましい。
【0125】
すなわち、重合性液晶化合物、光重合開始剤およびカイラル剤、さらに必要に応じて界面活性剤、配向調整剤等を溶剤に溶解させた重合性液晶組成物を基材上に膜状に塗布し、乾燥させることで光重合性塗膜を形成する工程(塗膜形成工程(I))、得られた塗膜に、20〜40℃の温度下で、0.1mW/cm以上10mW/cm未満の照度の選択紫外線を、0.1〜6秒間、照射し、重合性液晶組成物を重合する工程(選択紫外線照射工程(II))、前記塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させる工程(コレステリック規則性調整工程(III))、及び、前記塗膜を硬化させる工程(塗膜硬化工程(IV))により、700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するように、コレステリック規則性が調整されたコレステリック液晶層を好適に形成することができる。
【0126】
また、前記選択紫外線照射工程(II)及び前記コレステリック規則性調整工程(III)を複数回繰り返すことが好ましい。
【0127】
選択紫外線照射工程(II)として、前記光重合性塗膜に、20〜40℃の温度下で、0.1mW/cm以上10mW/cm未満の照度の選択紫外線を、0.1〜6秒間照射する。照度は、基材面において、選択紫外線の波長にピーク感度を持つ(具体的には、例えば360nmにピーク感度を持つ)照度計を使用して測定する。
【0128】
ここで、選択紫外線(広帯域化用紫外線ともいう)とは、先に説明した光重合性塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることが可能な波長範囲もしくは照度を選択的に制御した紫外線を意味する。なお、この選択紫外線の照射によって、光重合性塗膜が完全に硬化(100%重合)することはない。
【0129】
選択紫外線の照射により、塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることが可能となり、入射光の40%以上を反射する帯域を200nm以上有するように、コレステリック規則性を調整することが容易となる。
【0130】
前記選択紫外線照射工程に用いる選択紫外線としては、波長範囲の幅を100nm以内とした紫外線を用いることが好ましい。具体的には、300nm以上400nm未満の波長のみを有する紫外線を用いることが好ましい。
【0131】
光源としては、水銀ランプ光源、メタルハライドランプ光源等を用いることができる。
【0132】
このように、紫外線を、照度0.1mW/cm以上10mW/cm未満、照射時間0.1〜6秒間の照射条件にて、バンドパスフィルターを用いる等により波長範囲の幅を100nm以内とし、選択紫外線照射工程(II)において用いることが好ましい。また、条件によっては波長範囲の幅を制御せずに用いることも可能である。なお、前記波長範囲の幅は、半値幅(透過率のピーク値の半分の値の幅)とする。
【0133】
なお、前記波長範囲の制御は、具体的には、例えば中心波長365nmのバンドパスフィルターを用いる方法、塗膜に含まれる重合開始剤が最大の吸収を示す波長を中心とした、波長範囲の幅を100nm以内とする方法等が挙げられる。
【0134】
また、選択紫外線は、塗膜側から照射しても、基材側から照射しても、あるいは塗膜側、基材側の両側から照射して良いが、酸素による重合阻害を小さくする点で、基材側から照射することが好ましい。
【0135】
塗膜側から照射する湯合は、照度・照射時間安定度をよりシビアに制御する必要がある(具体的には±3%以下)ので、生産性の面からも、基材側から照射するのが好ましい。
【0136】
更に基材側から照射する場合、前記選択紫外線照射工程の前に、基材上の光重合性塗膜を冷却して塗膜の温度を20℃〜40℃とする工程を有することが好ましい。20℃〜40℃に維持された光重合性塗膜に上述の選択紫外線を照射することにより、塗膜の厚さ方向に光の強度分布が生じ、その結果、膜の厚さ方向に架橋度が異なるコレステリック液晶層を形成することができる。塗膜を冷却する方法としては、冷風給気による冷却、冷却ロールによる冷却等を挙げることができる。
【0137】
次に、前記塗膜のコレステリック規則性のピッチを変化させる(コレステリック規則性調整工程(III))。
【0138】
「塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させる」とは、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチを厚さ方向に変化させるということである。
【0139】
コレステリック規則性の周期を変化させる方法としては、(i)塗膜を液晶相を示す温度以上で加熱処理を行う方法、(ii)前記塗膜にさらに液晶化合物を塗布する方法、(iii)前記塗膜に、さらに非液晶化合物を塗布する方法などが挙げられる。これらの方法は1種類であってもよいし、それぞれを繰り返してもよいし、あるいは2種以上の方法を組み合わせてもよい。
【0140】
これらの中で、操作が簡単で、かつ効果の点から、前記(i)の方法が好ましい。
【0141】
加熱処理条件としては、広帯域化の効果と共に生産性を考慮すると、通常50〜115℃の温度で0.001〜20分間程度、好ましくは65〜115℃の温度で0.001〜10分間、より好ましくは65〜115℃の温度で0.01〜5分間である。ただし、光重合性塗膜を形成する液晶性化合物の種類により、液晶相を発現する温度領域が変わるので、それに伴い処理温度・処理時間も異なる。
【0142】
また、上記選択紫外線照射工程(II)及びコレステリック規則性調整工程(III)を複数回繰り返すのが好ましい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、コレステリック規則性を有する樹脂層のピッチをより大きく変化させることが可能である。選択紫外線照射、コレステリック規則性調整の条件は、反射帯域を調整するために、回数毎にそれぞれ適宜調整される。繰り返しの回数に制限はないが、生産性、設備上の観点から2回以上であることが好ましい。なお、2回以上に分けて行うと、照射時間を短くすることができるので、重合度が大きくなり難く、従って分子が動き易くなるため、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチを制御し易くなる。
【0143】
ここで、工程(II)及び(III)を「繰り返す」とは、工程(II)の実施とそれに続く工程(III)の実施を含むシーケンスを繰り返すことをいう。即ち、工程(II)及び(III)を2回繰り返すと、工程(II)−(III)−(II)−(III)の順で行われることになる。これらの工程の間には、前記冷却等の他の工程を行ってもよい。
【0144】
次いで、前記塗膜を硬化させる(塗膜硬化工程(IV))。
【0145】
硬化方法としては、前記塗膜が硬化してコレステリック規則性を有するような方法であれば特に制限されないが、本硬化紫外線を積算光量が10mJ/cm以上となるように照射する方法であることが好ましい。ここで、本硬化紫外線とは、塗膜を完全に硬化させることのできる波長範囲もしくは照度に設定した紫外線を意味する。なお、本硬化紫外線では、塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることは難しい。
【0146】
本紫外線の積算光量は、好ましくは10〜1000mJ/cm、より好ましくは50〜800mJ/cmの範囲で選定される。積算光量は基材面において、紫外線光量計を使用して測定、または照度計を使用して照度を測定し、積算光量=照度×時間で算出することにより選定する。
【0147】
本硬化紫外線の照射方向は、塗膜側と基材側のどちらからでも良いが、紫外線の照射効率が良い点から、塗膜側から照射することが好ましい。
【0148】
また、上記本硬化紫外線照射を窒素ガス雰囲気下などの酸素ガスの存在量の少ない雰囲気下で行うことが好ましい。このような雰囲気下で行うことにより、酸素による重合阻害の影響を低減することが可能である。本硬化紫外線照射時の酸素ガス濃度は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0149】
さらに、前記塗膜硬化工程(IV)の前に、基材上の光重合性塗膜を20℃〜40℃に冷却する工程を有することが好ましい。20℃〜40℃に維持された光重合性塗膜に上述の本紫外線を照射することにより、コレステリック規則性調整工程後のコレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチの状態を維持することができる。
【0150】
この塗膜硬化工程(IV)により、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層の機械的特性を、その広帯域化を維持しつつ、向上させることができる。
【0151】
コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層の厚みは、配向の乱れや透過率低下の防止、選択反射の波長範囲(反射波長域)の広さなどの観点から、通常、1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmである。また、基材を含めた合計厚み、すなわち円偏光分離シートの厚みは、通常20〜300μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0152】
700nm〜1900nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域を有するようにコレステリック規則性が調整されたコレステリック液晶層(以下、「調整コレステリック液晶層」ということがある。)の形成に好適な塗膜形成装置としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、前記透明基材を連続的に送り出す繰り出し装置と、この繰り出し装置から送り出された基材上に光重合性組成物を塗布し塗膜を形成する塗工ヘッドとを備えるとともに、前記塗膜が形成された基材を冷却する手段、波長範囲および/または照度が選択された選択紫外線を前記塗膜に照射する選択紫外線照射装置、および前記基材を加熱する手段を、2系統以上備えている塗膜形成装置が挙げられる。
【0153】
前記の塗膜形成装置において、前記繰り出し装置や塗工ヘッドとしては、特に制限されず、公知のもの等を用いることができる。
【0154】
また、前記の塗膜形成装置に用いられる塗膜が形成された基材を冷却する手段としては、冷却ゾーン装置、冷却ロール等により構成することができ、冷却ゾーン装置から構成することが好ましい。当該冷却手段は、基材の搬送経路の一部分を囲み、その中の温度を、光重合性組成物の硬化に適した一定の温度に保つ装置とすることができる。
【0155】
また、本発明においては、前記冷却手段すべてを、後述する選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれよりも前に備えることが好ましく、選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれの直前に備えるのがより好ましい。
【0156】
一方、1/2波長の位相差を有する位相差層は従来公知の1/2波長板を用いて形成することができる。1/2波長板は、例えば、透明樹脂からなるフィルムを延伸して得られるものであって、幅方向に対して15°±7°、又は−15°±7°の方向に遅相軸を有するものである。
【0157】
1/2波長板を構成する透明樹脂としては、1mm厚で全光線透過率が80%以上のものであれば特に制限されず、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、鎖状ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート系樹脂又は脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましい。
【0158】
使用する透明樹脂からなる未延伸フィルムは、透明な樹脂からなるが、前記樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤や熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。これらの添加剤の添加量は、透明樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部である。
【0159】
1/2波長板は、透明樹脂からなる未延伸フィルムを延伸して、その延伸の倍率を調整することにより得られる。透明な樹脂からなる未延伸フィルムを得る方法としては特に制約されず、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法などの加熱溶融成形法;溶液流延法などの公知の成形法を採用することができる。
【0160】
各々の成形条件は、使用する透明な樹脂のガラス転移温度や溶剤などに応じて適宜調整すればよい。
【0161】
1/2波長板の厚みは、通常10〜300μm、好ましくは30〜200μmである。
【0162】
更に、上記した形態で使用される粘着剤層の形成に用いる粘着剤又は接着剤としては、透明なものであれば特に制限されない。例えば、熱可塑性樹脂系のものや熱硬化性樹脂系のものが挙げられる。熱可塑性樹脂系の粘着剤又は接着剤としては、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエチレン系、セルロース系などが挙げられる。中でも、アクリル系粘着剤又は接着剤が好ましい。アクリル系粘着剤又は接着剤における主成分としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等と、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等との共重合体が、好適である。
【0163】
熱硬化性樹脂系の粘着剤又は接着剤としては、メラミン系、フェノール系、レゾルシノール系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ポリアロマティック系のものが挙げられる。中でも、ポリウレタン系粘着剤若しくは接着剤、又はエポキシ系粘着剤若しくは接着剤が好ましい。ポリウレタン系粘着剤若しくは接着剤は、イソシアネートとアルコールとをアルコール過剰で反応させたポリマーを主成分とし、ホットメルトとして又は溶剤溶解型として好適に使用される。ポリウレタン系粘着剤若しくは接着剤は、アミン硬化剤等の硬化剤を用いて常温下で、又は加熱により容易に硬化する。これら粘着剤または接着剤は、その使用形態としてフィルム、水溶液、エマルジョン等であってもよい。
【0164】
粘着剤層の厚みは、適宜調節すればよいが、通常1〜200μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは50〜150μmの範囲である。
【0165】
以下、本発明に係る透明シートの製造例を実施例として説明する。
【0166】
製造例1
(1−1)配向膜を有する透明樹脂基材の調製
厚み100μmのポリシクロオレフィンからなるフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノアフィルムZF14-100」)の両面をコロナ放電処理した。ポリビニルアルコールの5%水溶液を当該フィルムの片面に♯2のワイヤーバーを使用して塗布して塗膜を形成し、乾燥後の膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材を調製した。
【0167】
(1−2)コレステリック液晶層の形成
下記表1に示す配合割合で各成分を混合し、固形分40重量%(溶媒であるシクロペンタノンを除いた割合)のコレステリック液晶組成物を調製した。なお、化合物(1)は特開2008−291218号公報に記載された方法により合成した。
【0168】
調製したコレステリック液晶組成物を♯20のワイヤーバーを使用して、上記(1−1)で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の、配向膜を有する面に塗布し、100℃で5分間配向処理し、膜厚10μmのコレステリック液晶層を形成した。
【0169】
【表1】

【0170】
なお、表1中、化合物(1)は、下記化4式
【化4】

で表される化合物を示し、化合物(2)は、下記化5式
【化5】

で表される化合物を示す。
【0171】
また、カイラル剤:LC756は、下記化6式の化合物である。
【0172】
【化6】

【0173】
(1−3)コレステリック規則性の調整による透明シートの作製
(1−2)で得られた透明樹脂基材に形成したコレステリック液晶層に、透明樹脂基材側から15mJ/cm2の紫外線を照射した後、100℃で1分間加温した。このものを30℃まで冷却後、再度コレステリック液晶層の透明樹脂基材側から15mJ/cm2の紫外線を照射した後、100℃で1分間加温した。さらに、コレステリック液晶層側から2000mJ/cm2の紫外線を照射して、コレステリック液晶ピッチが傾斜を有するようにコレステリック規則性を調整された透明シート55aを作製した。透明シート55aは、シクロオレフィンポリマーのフィルムからなる樹脂基材−配向膜層−コレステリック規則性を調整されたコレステリック液晶層の3層構造を有する。
【0174】
(1−4)透明シートの光線透過率の測定
(1−3)で作製した透明シート55aにつき、紫外可視近赤外分光光度計V−570型(日本分光社製)を使用して420nm〜1900nmの透過スペクトルを測定し、可視光線である420nm〜700nmの平均透過率と、反射率が40%以上となる選択反射帯域の中心波長及び帯域の幅を調べた。
【0175】
また、透明シート55aを偏光顕微鏡(ニコン社製、偏光顕微鏡ECLIPSE E600−POL)で観察したところ、配向欠陥は皆無であり、ヘイズのない透明なシートであった。
【0176】
製造例2
(1−3)で得られた透明シート55aの2枚を、コレステリック液晶層を内側にして、レターデーション550nmの位相差フィルムの両面に、透明粘着剤(綜研化学社製、SK−2057)を用いて貼り合わせ、透明シート55bを作製した。製造例1と同様にして透明シート55bの光線透過率の測定を行った。
【0177】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明に係る光電変換部材は、太陽電池を構成するのに好適である。
【符号の説明】
【0179】
10 光電変換素子
12 ガードガラス
14 ソーダガラス基板
16 ナトリウムバリア膜
20 第1の電極(n+型ZnO層)
22 発電積層体(第1の発電積層体)
24 セレン層
26 第2の電極(Al層)
28 絶縁層(SiCN層)
30 ヒートシンク
42 第2の発電積層体
44 ニッケル層
50、50a、50b 透明シート
56、68 透明樹脂基材
57、67 配向膜層
58、66 コレステリック液晶フィルム
60、64、70、72 透明粘着層
62 位相差層
201 絶縁層(SiCN層)
221 n+型a−Si層
222 i型a−Si層
223 p+型a−Si層
224 SiO
421 n+型μC−Si層
422 i型μC−Si
423 p型μC−Si層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光のエネルギを光電変換素子で電気エネルギに変換する光電変換部材において、前記入射光の入射側に、前記入射光を選択的に反射する透明シートを備え、当該透明シートは700〜1900nmの波長領域に入射光の40%以上を反射する帯域を有することを特徴とする光電変換部材。
【請求項2】
請求項1において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体とを含み、
前記発電積層体は、p型半導体層と、当該p型半導体層に接触して形成されたi型半導体層と、前記i型半導体層に接触して形成されたn型半導体層とを含み、
前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第1の電極側の発電積層体の前記n型半導体層は前記第1の電極層に接触し、前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第2の電極側の発電積層体の前記p型半導体層は前記第2の電極層に接触し、
前記第1の電極層を搭載する第1のガラス板を含み、
前記透明シートは前記第1のガラス板の少なくとも一方の面側に設けられていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項3】
請求項2において、前記透明シートは、前記第1のガラス板の前記第1の電極層とは反対側の面に接触するように設けられていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項4】
請求項2において、前記透明シートは、前記第1のガラス板と前記第1の電極層との間に設けられていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記第1の電極層は透明電極であることを特徴とする光電変換部材。
【請求項6】
請求項2において、前記発電積層体の少なくとも一つにおける前記i型半導体層は、結晶シリコン、微結晶非晶質シリコン、及び、非晶質シリコンのいずれかによって形成されていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項7】
請求項2において、前記第1の電極層は、n型のZnOであり、前記第1の電極層に接触する前記n型半導体層は非晶質シリコンによって形成されていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項8】
請求項2において、前記1つの発電積層体または前記複数の発電積層体のうちの前記第1の電極側の発電積層体は、非晶質シリコンによって形成されていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項9】
請求項2において、前記第2の電極層に接触する前記p型半導体層は非晶質シリコンによって形成されており、前記第2の電極層のうち少なくとも前記p型半導体層が接触する部分は、Se又はPtで形成されていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項10】
請求項2において、前記第2の電極層に接触する前記p型半導体層は微結晶シリコンによって形成されており、前記第2の電極層のうち少なくとも前記p型半導体層が接触する部分は、Niを含んで形成されていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項11】
請求項1において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体と、前記第1の電極層の前記発電積層体とは反対側に設けられた透明基板を含み、
前記第1の電極層は透明電極層によって構成され、更に、前記第1の電極層と前記透明基板との間に、前記透明シートを備えていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項12】
請求項1において、前記光電変換素子は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1および第2の電極層の間に設けられた1つまたは複数の発電積層体と、前記第1の電極層の前記発電積層体とは反対側に設けられた透明基板を含み、
前記第1の電極層は透明電極層によって構成され、更に、前記透明基板の前記第1の電極層とは反対側に、前記透明シートを備えていることを特徴とする光電変換部材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項において、更に、前記入射光の入射側の表面に、透明保護板を有していることを特徴とする光電変換部材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項において、前記透明シートはコレステリック液晶層を含んでいることを特徴とする光電変換部材。
【請求項15】
請求項14において、前記透明シートは、更に、配向膜層を含んでいることを特徴とする光電変換部材。
【請求項16】
請求項14〜15のいずれか1項において、前記透明シートは、複数のコレステリック液晶層を含むことを特徴とする光電変換部材。
【請求項17】
請求項16において、前記透明シートは、更に、1/2波長の位相差を有する位相差層を含むことを特徴とする光電変換部材。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項において、前記透明シートは、前記コレステリック液晶層が透明樹脂基材上に形成された構成を有することを特徴とする光電変換部材。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項において、前記コレステリック液晶層が、化1式で表される化合物を含有するコレステリック液晶組成物から形成されたものであることを特徴とする光電変換部材。
【化1】

【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項において、前記透明シートは、700〜1900nmの波長領域に入射光の40%以上を反射する帯域を200nm以上有することを特徴とする光電変換部材。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項において、前記透明シートは、420〜700nmの波長領域における入射光の平均透過率が50%以上であることを特徴とする光電変換部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−272646(P2010−272646A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122419(P2009−122419)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】