説明

太陽電池

【課題】太陽電池全体を薄型化しつつ、太陽電池本体の内部空間に補充するための電解液を備えた太陽電池を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池10は、対向する第一基板11および第二基板12と、これらの基板の間に形成され、光電変換層13を有する発電領域14と、を備え、第一基板11および第二基板12の間における発電領域14の周辺領域に、第一基板11と第二基板12を接着する強接着部18,21および弱接着部19,22を介して、発電領域14と隔離され、電解液を貯蔵する第一貯蔵部15と第二貯蔵部16が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)工法への適合性に優れている点、材料コストが低い点、フレキシブル性に優れている点などから、有機樹脂基板を用いたフィルム型有機系太陽電池の開発が盛んに行われている。
フィルム型有機系太陽電池の代表例としては、色素増感型太陽電池が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
色素増感型太陽電池は、有機樹脂基板の間に収容された電解液を完全に封止することが難しい。そのため、時間の経過に伴って、蒸発や液漏れなどにより電解液が減少し、太陽電池の性能が低下することがある。
【0004】
電解液の量を一定に保つための手段としては、太陽電池本体の内部空間の電解液の減少を防止するために、太陽電池本体の外部に、内部空間に供給するための電解液を貯蔵したタンクが設けられた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、太陽電池本体の外部に電解液貯留部が設けられ、太陽電池本体に開閉可能な液体成分の出し入れ口が設けられた構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、対向する一対の基板の間に、電解液が充填された密閉容器を備えた構成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−99409号公報
【特許文献2】特開2002−280085号公報
【特許文献3】特開2010−80276号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tsutomu Miyasaka,Masashi Ikegami,Journal of Photopolymer science and technology Volume23,Number2(2010)269−277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の太陽電池では、基板とは別体にタンクを設ける必要があるため、タンクを配置するための空間が必要となり、太陽電池全体を薄型化できないばかりでなく、コストが増加するという問題があった。
また、特許文献2に記載の太陽電池では、基板とは別体に電解液貯留部および液体成分の出し入れ口を設ける必要があるため、電解液貯留部および出し入れ口を配置するための空間が必要となり、太陽電池全体を薄型化できないばかりでなく、コストが増加するという問題があった。
さらに、特許文献3に記載の太陽電池では、対向する一対の基板の間に、密閉容器を収容しているため、発電領域が小さくなり、発電効率が悪くなるばかりでなく、電解液が充填された密閉容器を別途作製する必要があり、コストが増加するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、太陽電池全体を薄型化しつつ、太陽電池本体の内部空間に補充するための電解液を備えた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池は、対向する一対の基板と、これらの基板の間に形成され、光電変換層を有する発電領域と、を備えた太陽電池であって、前記一対の基板の間における前記発電領域の周辺領域に、前記一対の基板を接着する強接着部および弱接着部を介して、前記発電領域と隔離され、電解液を貯蔵する貯蔵部が少なくとも1つ設けられたことを特徴とする。
【0010】
前記強接着部の接着力は、前記弱接着部の接着力よりも大きいことが好ましい。
【0011】
前記弱接着部は、前記貯蔵部を押圧することによって剥離し、当該剥離した弱接着部を介して、前記貯蔵部と前記発電領域が連通することが好ましい。
【0012】
前記貯蔵部の外縁部、および、前記発電領域の外縁部における前記貯蔵部が設けられていない部分は、前記強接着部で封止されていることが好ましい。
【0013】
予め前記発電領域内に電解液が注入されていることが好ましい。
【0014】
前記貯蔵部内の電解液に含まれるヨウ素の濃度は、予め前記発電領域内に注入されている電解液に含まれるヨウ素の濃度よりも高いことが好ましい。
【0015】
前記貯蔵部を押圧して、前記発電領域内に電解液を注入することにより、発電可能となることが好ましい。
【0016】
前記貯蔵部が2つ以上設けられたことが好ましい。
【0017】
前記2つ以上の貯蔵部に貯蔵された電解液はそれぞれ組成が異なることが好ましい。
【0018】
前記2つ以上の貯蔵部に貯蔵された電解液に含まれるヨウ素の濃度は、前記発電領域が受光する光の照度に応じて調整されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の太陽電池によれば、一対の基板の間における発電領域の周辺領域に、一対の基板を接着する強接着部および弱接着部を介して、発電領域と隔離され、電解液を貯蔵する貯蔵部が少なくとも1つ設けられているので、蒸発や液漏れなどにより電解液が減少した場合、あるいは、電解液が劣化した場合に、貯蔵部から発電領域内に容易に電解液を注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の太陽電池の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態として太陽電池について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
「太陽電池」
図1は、本発明の太陽電池の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
本実施形態の太陽電池10は、対向する一対の第一基板11および第二基板12と、これらの基板の間に形成され、光電変換層13を有する発電領域14と、第一基板11および第二基板12の間における発電領域14の周辺領域に、発電領域14と隔離されて設けられた第一貯蔵部15および第二貯蔵部16とから概略構成されている。
太陽電池10は、色素増感型太陽電池である。
【0023】
第一基板11は、第二基板12と対向する面(以下、「一方の面」と言う。)11aに透明電極膜(図示略)が設けられている。
第二基板12は、第一基板11と対向する面(以下、「一方の面」と言う。)12aに対向電極膜(図示略)が設けられている。
【0024】
発電領域14は、第一基板11の一方の面11aに設けられた光電変換層13と、第一基板11と第二基板12の間に設けられ、電解液(電解質溶液)が充填される空間17を含む領域である。
【0025】
第一貯蔵部15は、第一基板11と第二基板12を接着する強接着部18および弱接着部19を介して、発電領域14と隔離されるとともに、強接着部18および弱接着部19と所定の間隔を隔てて、かつ、強接着部18および弱接着部19と略平行になるように、第一基板11と第二基板12の外縁部が強接着部20で封止されることによって形成された空間である。
また、第一貯蔵部15は、第一基板11および第二基板12の一辺に沿って延在している。さらに、第一貯蔵部15には、発電領域14内に注入するための電解液が充填されている。
【0026】
第二貯蔵部16は、第一基板11と第二基板12を接着する強接着部21および弱接着部22を介して、発電領域14と隔離されるとともに、強接着部21および弱接着部22と所定の間隔を隔てて、かつ、強接着部21および弱接着部22と略平行になるように、第一基板11と第二基板12の外縁部が強接着部23で封止されることによって形成された空間である。
また、第二貯蔵部16は、第一基板11および第二基板12の第一貯蔵部15が延在する辺とは異なる辺に沿って延在している。さらに、第二貯蔵部16には、発電領域14内に注入するための電解液が充填されている。
なお、本実施形態では、弱接着部19と弱接着部22が隣接して設けられた(同じ角部に設けられた)場合を例示したが、耐衝撃性を考慮すると、弱接着部19と弱接着部22は、離隔して設けられていることが好ましい。すなわち、弱接着部19と弱接着部22は、それぞれ別々の部位に設けられていることが好ましい。
【0027】
発電領域14の外縁部において、第一貯蔵部15および第二貯蔵部16が設けられていない部分は、強接着部24,25で封止されている。
また、強接着部18と、強接着部24と、強接着部25と、強接着部21とは連接している。さらに、強接着部20と、強接着部23とは連接している。
【0028】
第一貯蔵部15は、弱接着部19が設けられた位置から離隔した位置に、電解液を充填するための注入口26が設けられている。具体的には、注入口26は、弱接着部19から離隔した位置で、かつ、第一基板11と第二基板12の一端面に開口するように設けられている。そして、第一貯蔵部15に電解液が充填された後、注入口26は、エンドシール27によって封止される。
【0029】
第二貯蔵部16は、弱接着部22が設けられた位置から離隔した位置に、電解液を充填するための注入口28が設けられている。具体的には、注入口28は、弱接着部22から離隔した位置で、かつ、第一基板11と第二基板12の一端面に開口するように設けられている。そして、第二貯蔵部16に電解液が充填された後、注入口28は、エンドシール29によって封止される。
【0030】
強接着部18,20,21,23,24,25の接着力(第一基板11と第二基板12を接着する力)は、弱接着部19,22の接着力(第一基板11と第二基板12を接着する力)よりも大きくなっている。
したがって、電解液が充填された状態で第一貯蔵部15を、例えば、指などで押圧すると、弱接着部19が容易に剥離して、剥離した弱接着部19を介して、第一貯蔵部15と発電領域14が連通するとともに、発電領域14の空間17内に、第一貯蔵部15内の電解液が注入される。
同様に、電解液が充填された状態で第二貯蔵部16を、例えば、指などで押圧すると、弱接着部22が容易に剥離して、剥離した弱接着部22を介して、第二貯蔵部16と発電領域14が連通するとともに、発電領域14の空間17内に、第二貯蔵部16内の電解液が注入される。
【0031】
第一貯蔵部15に充填された電解液と、第二貯蔵部16に充填された電解液とは、組成が同一であっても異なっていてもよい。
第一貯蔵部15の電解液と、第二貯蔵部16の電解液との組成が異なる場合には、例えば、それぞれの電解液に含まれるヨウ素の濃度が、太陽電池10の発電領域14が受光する光の照度に応じて調整されていることが好ましい。照度が低い場合、移動する物質が少ないため、電解液に含まれるヨウ素の濃度は低くてもよい。一方、照度が高い場合、移動する物質が多いため、電解液に含まれるヨウ素の濃度は高い方がよい。
【0032】
第一基板11、第二基板12としては、光の透過率が高いものが用いられ、例えば、透明ガラス板、ポリエチレンテフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドなどの透明の樹脂材料からなる、硬質の平板状または可撓性のあるフィルム状のものが挙げられる。
【0033】
第一基板11に設けられる透明電極膜としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電材からなり、スパッタリングや印刷法により、第一基板11の一方の面11aに成膜されたものが挙げられる。
【0034】
第二基板12に設けられる対向電極膜としては、例えば、白金、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、カーボンなどの導電材からなり、スパッタリングや印刷法により、第二基板12の一方の面12aに成膜されたものが挙げられる。
【0035】
光電変換層13としては、後述する増感色素から電子を受け取り輸送する機能を有し、金属酸化物からなる多孔質の半導体からなり、第一基板11の一方の面11aに略矩形に形成されたものが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などが用いられる。
【0036】
光電変換層13には、増感色素が担持されている。
増感色素は、有機色素または金属錯体色素で構成されている。
有機色素として、例えば、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系などの各種有機色素が用いられる。
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム錯体などが好適に用いられる。
【0037】
電解液を構成する電解質としては、アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどの非水系電解質溶剤、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムまたはヨウ化ブチルメチルイミダゾリウムなどのイオン液体などの液体成分に、ヨウ化リチウムなどの支持電解質と、ヨウ素とが混合された溶液などが挙げられる。また、これらの電解質溶液は、t−ブチルピリジンを含んでいてもよい。また、太陽電池の耐久性を向上させるために、電解質としては、イオン液体電解質または固体電解質が用いられることもある。
【0038】
強接着部18,20,21,23,24,25を形成する樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが用いられる。これらの中でも、接着強度、バリア性能の点から、アイオノマー熱硬化性樹脂が好ましい。アイオノマー熱硬化性樹脂としては、例えば、デュポン社製のハイミラン(商品名)が用いられる。
弱接着部19,22を形成する樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが用いられる。これらの中でも、弱接着性の点から、熱硬化性エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂としては、例えば、ダイセル化学社製のCELVENUS(商品名)が用いられる。
強接着部18,20,21,23,24,25の厚さ、および、弱接着部19,22の厚さは、特に限定されないが、第一基板11と第二基板12が所定の間隔を置いて離隔し、かつ、空間17内に注入された電解液によって形成される電解質層が必要とされる厚さとなるように適宜調整される。
【0039】
次に、太陽電池10の使用方法を説明する。
太陽電池10の使用方法としては、主に下記の3つの使用方法が挙げられる。
【0040】
(1)第一の使用方法
第一の使用方法では、発電領域14の空間17内に、予め電解液が充填されていない場合の使用方法について説明する。
この使用方法では、太陽電池10を所定の場所に設置した後、電解液が充填された第一貯蔵部15を、例えば、指などで押圧して、弱接着部19を剥離し、発電領域14の空間17内に、第一貯蔵部15内の電解液を注入する。あるいは、電解液が充填された第二貯蔵部16を、例えば、指などで押圧して、弱接着部22を剥離し、発電領域14の空間17内に、第二貯蔵部16内の電解液を注入する。
このように、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入することによって、太陽電池10は発電可能となる。
【0041】
また、例えば、第一貯蔵部15から、発電領域14の空間17内に電解液を注入することによって、太陽電池10が発電可能となった後、長期間使用されると、電解液が劣化して、発電性能が低下することがある。その場合、第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入することによって、既に発電領域14の空間17内に存在していた電解液が第一貯蔵部15へ押し出されるように移動し、発電領域14の空間17内には新しい電解液が存在することになるので、太陽電池10の発電性能を回復することもできる。
なお、第一貯蔵部15の電解液または第二貯蔵部16の電解液のいずれを先に使用するかは任意である。
【0042】
(2)第二の使用方法
第二の使用方法では、発電領域14の空間17内に、予め電解液が充填されている場合の使用方法について説明する。
この使用方法では、発電領域14の空間17内の電解液が、蒸発や液漏れなどにより減少し、太陽電池10の発電性能が低下した場合、電解液が充填された第一貯蔵部15を、例えば、指などで押圧して、弱接着部19を剥離し、発電領域14の空間17内に、第一貯蔵部15内の電解液を注入する。あるいは、電解液が充填された第二貯蔵部16を、例えば、指などで押圧して、弱接着部22を剥離し、発電領域14の空間17内に、第二貯蔵部16内の電解液を注入する。
このように、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入し、減少した電解液を補充することによって、太陽電池10の発電性能を回復することができる。
【0043】
この場合、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16に充填された電解液に含まれるヨウ素の濃度は、予め発電領域14の空間17内に充填された電解液に含まれるヨウ素の濃度と同じでもよいが、予め発電領域14の空間17内に充填された電解液に含まれるヨウ素の濃度よりも高いことが好ましい。
ヨウ素が揮発により減少したものの、電解液を構成する溶媒が発電領域14の空間17内に残留していることがある。そこで、その溶媒と、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16に充填された電解液とを混合した際、ヨウ素の濃度が発電に適した濃度よりも低くならないようにするために、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16に充填された電解液に含まれるヨウ素の濃度は、予め発電領域14の空間17内に充填された電解液に含まれるヨウ素の濃度よりも高いことが好ましい。
【0044】
また、例えば、第一貯蔵部15から、発電領域14の空間17内に電解液を注入することによって、電解液を補充しても、太陽電池10は、長期間使用されると、電解液が劣化して、発電性能が低下することがある。その場合、発電領域14の空間17内に存在する電解液を、第一貯蔵部15へ排出した後、第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入することによって、太陽電池10の発電性能を回復することもできる。
なお、第一貯蔵部15の電解液または第二貯蔵部16の電解液のいずれを先に使用するかは任意である。
【0045】
(3)第三の使用方法
第三の使用方法では、発電領域14の空間17内に、予め電解液が充填されていても、充填されていなくてもよい。
この使用方法では、太陽電池10の発電領域14が受光する光の照度に応じて、第一貯蔵部15または第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入して、発電領域14の空間17内の電解液に含まれるヨウ素の濃度を調整する。
この場合、例えば、第一貯蔵部15の電解液に含まれるヨウ素の濃度を低く、第二貯蔵部16の電解液に含まれるヨウ素の濃度を高くしておく。そして、太陽電池10の発電領域14が受光する光の照度が低い場合、第一貯蔵部15から、発電領域14の空間17内に電解液を注入し、一方、太陽電池10の発電領域14が受光する光の照度が高い場合、第二貯蔵部16から、発電領域14の空間17内に電解液を注入する。
【0046】
「太陽電池の製造方法」
本実施形態の太陽電池の製造方法は、(I)第一基板と第二基板とを形成する基板形成工程と、(II)基板形成工程により形成された第一基板と第二基板とを貼り合せる基板貼合工程と、(III)第一貯蔵部と第二貯蔵部に電解液を充填する電解液充填工程と、を備えている。
【0047】
(I)基板形成工程
第一基板(光電極基板)11を作製する。
まず、スパッタリング法や印刷法などにより、第一基板11の一方の面11aに、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズ、酸化亜鉛などからなる透明電極膜を成膜する。
【0048】
次いで、フォトリソグラフィ法や印刷法などにより、透明電極膜の第一基板と接している面とは反対側の面に、焼成が可能な酸化チタンなどの金属酸化物を含有したペーストを塗布し、必要に応じて焼結して、多孔質の半導体からなる光電変換層13を形成する。
また、エアロゾルデポジション法(AD法)により、光電変換層13を形成してもよい。
【0049】
次いで、溶剤に増感色素を溶解してなる増感色素溶液に光電変換層13を浸漬し、光電変換層13に増感色素を担持させ、光電極基板としての第一基板11を得る。
なお、光電変換層13に増感色素を担持させる方法としては、増感色素溶液に光電変換層13を浸漬する方法に限定されず、光電変換層13を移動させながら、連続的に増感色素溶液中に光電変換層13を投入・浸漬・引き上げを行う方法なども採用される。
また、光電変換層13に増感色素を担持させた後、光電変換層13の表面を無水アルコールなどで洗浄してもよい。
【0050】
次いで、光電変換層13と所定の間隔を置いて、かつ、光電変換層13を囲繞するように、インクジェット法などにより、第一基板11の一方の面11aに、強接着部18,21,24,25および弱接着部19,22を形成する。
ここでは、光電極基板と対極基板を貼り合せた際、第一基板11と第二基板12とが所定の間隔を置いて離隔し、かつ、空間17内に注入された電解液によって形成される電解質層が必要とされる厚さとなるように、強接着部18,21,24,25および弱接着部19,22の厚さを調整する。
さらに、強接着部18および弱接着部19と所定の間隔を隔てて、かつ、強接着部18および弱接着部19と略平行になるように、インクジェット法などにより、第一基板11の一方の面11aの外縁部に、強接着部20を形成する。同様に、強接着部21および弱接着部22と所定の間隔を隔てて、かつ、強接着部21および弱接着部22と略平行になるように、インクジェット法などにより、第一基板11の一方の面11aの外縁部に、強接着部23を形成する。
【0051】
第二基板(対極基板)12を作製する。
スパッタリング法や印刷法などにより、第二基板12の一方の面12aに、白金、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、カーボンなどからなる対向電極膜を成膜し、対極基板としての第二基板12を得る。
【0052】
(II)基板貼合工程
第一基板11に形成された強接着部18,20,21,23,24,25および弱接着部19,22を介して、第一基板11に第二基板12を貼り合わせ、強接着部18,20,21,23,24,25および弱接着部19,22によって、第一基板11と第二基板12とを接着、固定する。
この基板貼合工程により、第一基板11と第二基板12の間に空間17、第一貯蔵部15および第二貯蔵部16が形成される。
【0053】
(III)電解液充填工程
次いで、予め第一貯蔵部15に形成しておいた注入口26から、第一貯蔵部15に電解液を注入した後、注入口26をエンドシール27で封止する。
同様に、予め第二貯蔵部16に形成しておいた注入口28から、第二貯蔵部16に電解液を注入した後、注入口28をエンドシール29で封止する。
以上の工程により、図1に示すような太陽電池10を得る。
【0054】
なお、本実施形態の太陽電池の製造方法では、予め第一基板11または第二基板12に形成しておいた注入口(図示略)から、第一基板11と第二基板12の間の間隙に電解液を注入して、第一基板11と第二基板12の間に電解質層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 太陽電池
11 第一基板
12 第二基板
13 光電変換層
14 発電領域
15 第一貯蔵部
16 第二貯蔵部
17 空間
18,20,21,23,24,25 強接着部
19,22 弱接着部
26,28 注入口
27,29 エンドシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の基板と、これらの基板の間に形成され、光電変換層を有する発電領域と、を備えた太陽電池であって、
前記一対の基板の間における前記発電領域の周辺領域に、前記一対の基板を接着する強接着部および弱接着部を介して、前記発電領域と隔離され、電解液を貯蔵する貯蔵部が少なくとも1つ設けられたことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記強接着部の接着力は、前記弱接着部の接着力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記弱接着部は、前記貯蔵部を押圧することによって剥離し、当該剥離した弱接着部を介して、前記貯蔵部と前記発電領域が連通することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記貯蔵部の外縁部、および、前記発電領域の外縁部における前記貯蔵部が設けられていない部分は、前記強接着部で封止されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
予め前記発電領域内に電解液が注入されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記貯蔵部内の電解液に含まれるヨウ素の濃度は、予め前記発電領域内に注入されている電解液に含まれるヨウ素の濃度よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記貯蔵部を押圧して、前記発電領域内に電解液を注入することにより、発電可能となることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記貯蔵部が2つ以上設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記2つ以上の貯蔵部に貯蔵された電解液はそれぞれ組成が異なることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記2つ以上の貯蔵部に貯蔵された電解液に含まれるヨウ素の濃度は、前記発電領域が受光する光の照度に応じて調整されたことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池。


【図1】
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【公開番号】特開2013−69624(P2013−69624A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208996(P2011−208996)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】