説明

媒体処理装置および媒体処理方法

【課題】主にATM装置やCD機などの装置・機器に装備される媒体処理装置において、犯罪者による媒体の不正使用を防ぐ。
【解決手段】搬送手段7、8によって媒体21が挿入方向に搬送される際に、媒体21に記録されている媒体情報を媒体情報読取手段6で読み取ってメモリに記憶して保持するように制御する。搬送手段7、8によって媒体21を排出方向に搬送することにより、媒体21が排出可能であるか否かを判定する。媒体21が排出可能でないと判定された場合に、メモリに保持された媒体情報を破棄するように制御する。これにより、媒体21が排出可能であることが確認されない限り、媒体21に記録されている媒体情報が上位装置に出力されることがない。そのため、他人に暗証番号を盗み見られる事態を回避し、犯罪者による媒体21の不正使用を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録された媒体に対して媒体情報の読取り又は書込みを行う媒体処理装置と、この媒体処理装置に適用される媒体処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、情報が記録された媒体に対して媒体情報の読取り又は書込みを行う媒体処理装置としては、磁気ストライプやICチップなどの情報記録部(情報記録手段)を備えたカード状媒体の媒体情報を読み取る又は情報を書き込むカードリーダがある。このようなカードリーダは、主にATM装置(現金自動預け払い機)やCD機(現金自動支払い機)などの装置・機器に装備されている。
【0003】
近年、カード状媒体所有者以外の第三者が窃取し、さらに、窃取したカード状媒体に記録された個人認識情報を読み取って本人認証を行うように不正に使用し、またカード状媒体を偽造等して不正に使用する犯罪が急増し、大きな社会問題になっている。
【0004】
従来、この種のカードリーダとしては、犯罪者によるカード状媒体の不正使用を防ぐことを目的に、引き抜き防止ロック機構が設けられたカードロック装置を備えたもの(以下、公知技術1という。)が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この公知技術1では、犯罪者がカードリーダにこっそり取り付けた仕掛けによってカード状媒体の排出を妨害し、私用者が立ち去ったすきに、犯罪者がカード状媒体を引き抜こうとしても、引き抜き防止ロック機構が作動してロック歯がカード状媒体に食い込む形でカード状媒体を滞留位置にロックする。こうして、カードリーダ内のカード状媒体は、動かないようにロックされるので、犯罪者によって不正に抜き取られる事態を防ぐことができる。その結果、犯罪者によるカード状媒体の不正使用を未然に防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2006−155567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、公知技術1では次のような課題があった。
【0008】
第1に、引き抜き防止ロック機構はカード状媒体の不正な抜き取りを確実に抑止する効果が有るが、ロック歯によりカード状媒体が損傷するため、カード状媒体の再発行が必要となる。
【0009】
第2に、引き抜き防止ロック機構の分だけ、必然的にカードリーダの部品点数が増え、大型化となり、さらに、その構造が複雑化するため、カードリーダの製造コストが高騰する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、媒体を損傷することなく、犯罪者による媒体の不正使用を防ぐことが可能な媒体処理装置および媒体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、媒体を挿入方向および排出方向に搬送する搬送手段と、前記媒体に記録されている媒体情報を読み取る媒体情報読取手段と、前記媒体情報読取手段が読み取る媒体情報を記憶するメモリと、前記搬送手段、前記媒体情報読取手段および前記メモリを制御する制御手段とを備えた媒体処理装置であって、前記制御手段は、前記搬送手段によって前記媒体が挿入方向に搬送される際に、当該媒体に記録されている媒体情報を前記媒体情報読取手段で読み取って前記メモリに記憶して保持するように制御する媒体情報読取り制御部と、前記搬送手段によって前記媒体を排出方向に搬送することにより、当該媒体が排出可能であるか否かを判定する排出可否判定部と、前記媒体が排出可能でないと判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を破棄するように制御する媒体情報破棄制御部とを有する媒体処理装置としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記制御手段は、前記媒体が排出可能であるか否かが判定された後、前記搬送手段によって当該媒体を挿入方向に搬送するように制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記制御手段は、前記媒体が排出可能であると判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を上位装置に出力するように制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記制御手段は、前記媒体から出力される媒体情報読取り信号に基づき、前記媒体が排出可能であるか否かを判定することを特徴とすることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記制御手段は、前記搬送手段の駆動状況に基づき、前記媒体が排出可能であるか否かを判定することを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明は、媒体を挿入方向および排出方向に搬送する搬送手段と、前記媒体に記録されている媒体情報を読み取る媒体情報読取手段と、前記媒体情報読取手段が読み取る媒体情報を記憶するメモリとを備えた媒体処理装置に適用される媒体処理方法であって、前記搬送手段によって前記媒体が挿入方向に搬送される際に、当該媒体に記録されている媒体情報を前記媒体情報読取手段で読み取って前記メモリに記憶して保持するように制御する媒体情報読取り制御工程と、前記搬送手段によって前記媒体を排出方向に搬送することにより、当該媒体が排出可能であるか否かを判定する排出可否判定工程と、前記排出可否判定工程において前記媒体が排出可能でないと判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を破棄するように制御する媒体情報破棄工程と、前記排出可否判定工程において前記媒体が排出可能であると判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を上位装置に出力するように制御する媒体情報出力工程とを含む媒体処理方法としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、媒体処理装置および媒体処理方法は、媒体を損傷することなく、犯罪者による媒体の不正使用を防ぐことができる。さらに、異常時(媒体の排出阻害時)においても媒体が損傷を受ける事態は生じないので、媒体の再発行コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係るカードリーダを示す図であって、(a)はその断面図、(b)はその内部機能を示す制御ブロック図である。
【図2】同実施の形態1に係るカードリーダの使用状態を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態1に係るカードリーダにファームウェアとして組み込まれたカード処理プログラムのフローチャートである。
【図4】同実施の形態1に係るカードリーダの挿入口にカードが挿入された状態を示す断面図である。
【図5】同実施の形態1に係るカードリーダにカードが取り込まれた状態を示す断面図である。
【図6】同実施の形態1に係るカードリーダに取り込まれたカードが少し排出された状態を示す断面図である。
【図7】同実施の形態1に係るカードリーダに取り込まれたカードが排出を阻害された状態を示す断面図である。
【図8】同実施の形態1に係るカードリーダにおける正常時(カード排出非阻害時)の磁気情報読取り信号の出力状況を示すタイムチャートである。
【図9】同実施の形態1に係るカードリーダにおける異常時(カード排出阻害時)の磁気情報読取り信号の出力状況を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2に係るカードリーダにおける異常時(カード排出阻害時)のモータエンコーダ出力信号の出力状況を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0020】
図1乃至図9には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、媒体としてカード21を用いることを前提に、媒体処理装置としてカードリーダ1を用い、搬送手段として一対の搬送ローラ7および押圧ローラ8を用い、制御手段としてCPU11を用いている。また、カード21は、媒体情報としての磁気情報が記録された磁気ストライプを有しており、この磁気情報を読み取る情報読取手段として磁気ヘッド6を用いている。
【0021】
本発明では、カード21を取り込むときにその磁気情報の読取り動作を実行するものの、この磁気情報を上位装置23に出力することなくカードリーダ1が有するメモリ18に一時的に保持し、その後、カード21が排出不可であると判明した場合(ジャムエラー等の異常時)には、この磁気情報を破棄することに着目した。そこで、具体的な説明を次に行なう。
【0022】
まず、構成を説明する。
【0023】
この実施の形態1に係る小型のカードリーダ1は、図1(a)に示すように、内部にカードを完全に取り込めるサイズの直方体のケーシング2を有しており、このケーシング2の長さL1は、カード長より少し長くなっている。ケーシング2の前面(図1(a)左側面)には挿入口3が形成されており、挿入口3からケーシング2の後面(図1(a)右側面)の近傍に至る形で搬送路4が水平に形成されている。ケーシング2の内部には、光学式のカードセンサ5が挿入口3の近傍に設置されている。カードセンサ5は、発光ダイオードなどの発光素子5aおよびフォトセンサなどの受光素子5bから構成されており、これらの発光素子5a、受光素子5bは、互いに搬送路4を挟んで対向するように設けられている。また、ケーシング2の内部には、磁気ヘッド6がカードセンサ5のやや後方(図1(a)右方)で下側に設置されている。より詳細には、磁気ヘッド6は、搬送されるカード21に形成された磁気ストライプが通過する位置に配置されている。さらに、この磁気ヘッド6に対向して搬送路4の上方に、図示しないパッドローラが配置され、搬送されるカード21を磁気ヘッド6とこのパッドローラで挟持している。より具体的には、磁気ヘッド6とパッドローラとは、搬送されるカード21を所定の押圧力で挟持するように、図示しないバネによってパッドローラか磁気ヘッド6の何れか一方を他方側に付勢している。
【0024】
さらに、本実施の形態では、磁気ヘッド6の近傍には、1つの搬送ローラ7が配置され、挿入口3から搬送路4に挿入されたカード21を搬送するようになっている。すなわち、搬送ローラ7は、搬送路4の幅方向において磁気ヘッド6と隣り合い、且つ、搬送路4の幅方向における略中央に配置されている。この搬送ローラ7に対向する位置には、押圧ローラ8が設けられている。この押圧ローラ8は、その軸心が搬送ローラ7の軸心と略平行で、且つ、押圧ローラ8の外周面が搬送ローラ7の外周面に対向するように配置されており、挿入口3から搬送路4に挿入されたカード21は、1対の搬送ローラ7と押圧ローラ8とで挟持されるようになっている。
【0025】
この搬送ローラ7は、図1(a)に示すように、矢印M、N方向に回転自在に設置されている。すなわち、搬送ローラ7は、モータ9の出力軸9aとは、図示しない歯車列(ギヤトレイン)またはベルトを介して連結されており、搬送ローラ7はモータ9の駆動力を受けて回動する。このような構成により、モータ9に通電して出力軸9aを正逆方向に回転させることにより、搬送ローラ7をカードを挿入する挿入方向(図1(a)矢印M方向)、または、カードを排出する排出方向(図1(a)矢印N方向)に回転させることができる。また、モータ9にはエンコーダ10が、出力軸9aの回転速度に比例した周波数の信号をエンコーダ信号として出力し得るように取り付けられている。
【0026】
また、カードリーダ1は、図1(b)に示すように、CPU(中央処理装置)11を備えており、CPU11には、センサ検知部12、復号処理部13、磁気信号検出部15、モータ回転速度検出部16、モータサーボ制御部17およびメモリ18が接続されている。ここで、センサ検知部12はカードセンサ5の受光素子5bに接続されている。復号処理部13および磁気信号検出部15は、復調回路19を介して磁気ヘッド6に接続されている。モータ回転速度検出部16はエンコーダ10に接続されている。モータサーボ制御部17は、モータ駆動回路20を介してモータ9に接続されている。
【0027】
なお、このカードリーダ1は、その使用時には、図2に示すように、上位装置23(例えば、パーソナルコンピュータ)にケーブル接続される。この上位装置23は、キーパッドなどの暗証番号入力装置26がケーブル接続されているとともに、金融機関のセンターに設置されたホストコンピュータ25と通信回線を介してオンライン接続されている。
【0028】
次に、以上のような構成を有するカードリーダ1によるカード21の読取り動作について説明する。この読取り動作は、CPU11が、図3に示すカード処理プログラムPRGに基づき、センサ検知部12、復号処理部13、磁気信号検出部15、モータ回転速度検出部16およびモータサーボ制御部17を適宜制御する形で実行する。
【0029】
すなわち、図4に示すように、カード21が挿入口3からケーシング2内に向けて挿入方向(矢印A方向)に挿入されると、カードセンサ5は、発光素子5aから受光素子5bへの光がカード21で遮光されたことにより、カード21が挿入されたことを認識し、その旨のセンサ信号をセンサ検知部12に対して出力する。これを受けてセンサ検知部12は、カード21が挿入口3に挿入されたことをCPU11に伝える。
【0030】
すると、CPU11は、このカード21をカードリーダ1内(図4右方)へ取り込むべく、モータサーボ制御部17に対して、モータ9の出力軸9aを正回転させるように指令する。これを受けてモータサーボ制御部17は、モータ駆動回路20をONして、モータ9の出力軸9aを正方向に一定の回転速度で回転させる。その結果、搬送ローラ7が矢印M方向に回転し、カード21が搬送路4に沿って一定の速度でカードリーダ1内に搬送されていく(カード処理プログラムPRGのステップS1)。
【0031】
このとき、モータ回転速度検出部16は、エンコーダ10からのエンコーダ信号に基づき、モータ9の出力軸9aの実際の回転速度をリアルタイムで検出し、これをモータサーボ制御部17に出力する。これを受けてモータサーボ制御部17は、モータ駆動回路20への回転速度が目標速度より早い場合はモータ駆動力を低減し、遅い場合は増強するよう、指示を適宜増減させる。その結果、搬送ローラ7が一定の回転速度で回転し、カード21が一定の速度で搬送されることになる。
【0032】
また、このカード21の取込と同時に、磁気ヘッド6は、カード21に記録されている磁気情報の読み取りを開始する。すなわち、磁気ヘッド6は、カード21の磁気ストライプ上に記録されている磁気情報をアナログ信号に変換し読み取り(再生し)、このアナログ信号を復調回路19に出力する。これを受けて復調回路19は、このアナログ信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号を復号処理部13に出力する。これを受けて復号処理部13は、このデジタル信号を文字情報に変換し、この文字情報に基づき、カード21に記録されている磁気情報を復元する。
【0033】
こうしてカード21の取込および磁気情報の読み取りが実行され、図5に示すように、カード21が取込完了位置(ケーシング2内の最奥部)に達したところで、カード21の取込が完了するとともに、カード21の磁気情報の読み取りが完了する(カード処理プログラムPRGのステップS2)。そして、カードリーダ1内のCPU11は、この磁気情報をメモリ18に記憶して保持する(カード処理プログラムPRGのステップS3)。
【0034】
その後、CPU11は、カード21の排出を阻害する仕掛け27がカードリーダ1に取り付けられていないことを確認するため、以下に述べるとおり、カード21の排出動作を試みることにより、カード21が排出可能であるか否かを判定する(カード処理プログラムPRGのステップS4)。なお、この仕掛け27は、カード21の取込に対しては障害とならず、カード21の排出に対して、これを阻害する構造を備えている。
【0035】
まず、CPU11は、モータサーボ制御部17に対して、モータ9の出力軸9aを逆回転させるように指令する。これを受けてモータサーボ制御部17は、モータ駆動回路20をONして、モータ9の出力軸9aを逆方向に一定の回転速度で回転させる。その結果、図6に示すように、搬送ローラ7が矢印N方向に回転し、カード21が搬送路4に沿って一定の速度でカードリーダ1から排出する方向(矢印B方向)へ搬送されていく。
【0036】
次に、CPU11は、カードセンサ5からのセンサ信号(遮光/受光)に基づき、カード21がカードセンサ5を通過したか否かを判定する(カード処理プログラムPRGのステップS5)。そして、カード21がカードセンサ5を通過した時点で、CPU11は、磁気ヘッド6から出力される磁気情報読み取り信号の出力期間の測定を開始する(カード処理プログラムPRGのステップS6)。この測定を開始してから規定出力期間が経過するまで、CPU11は、所定の時間ごとに磁気情報読み取り信号が出力されているか否かを繰り返しチェックする(カード処理プログラムPRGのステップS7、S8)。
【0037】
そして、図8に示すように、規定出力期間が経過するまで継続的に磁気情報読み取り信号が出力された場合、CPU11は、カード21が排出可能であり、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないと判定する(カード処理プログラムPRGのステップS9)。
【0038】
次いで、カード取引の実行中に使用者がカードリーダ1からカード21を抜き取ってしまう不都合を避けるべく、CPU11は、カード21の再取込を行う(カード処理プログラムPRGのステップS9)。それには、CPU11は、モータサーボ制御部17に対して、モータ9の出力軸9aを正回転させるように指令する。これを受けてモータサーボ制御部17は、モータ駆動回路20をONして、モータ9の出力軸9aを正方向に一定の回転速度で回転させる。その結果、搬送ローラ7が矢印M方向に回転し、カード21が搬送路4に沿って一定の速度でカードリーダ1内に搬送されていく。
【0039】
そして、カード21の再取込が完了した時点で、カードリーダ1のCPU11は、カード21の取込が正常に完了した旨を上位装置23に通知するとともに、上位装置23からの磁気情報送信コマンドに応じて、メモリ18に保持された磁気情報を上位装置23に送信する(カード処理プログラムPRGのステップS10)。
【0040】
こうして上位装置23に磁気情報が送信されると、上位装置23と通常の処理が実行される。例えば、上位装置23は使用者に暗証番号の入力を促し、使用者は暗証番号入力装置26を操作して暗証番号を入力する。すると、上位装置23は、ホストコンピュータ25との通信を通じて暗証番号を照合する手続きに進む。
【0041】
一方、図9に示すように、規定出力期間が経過する前に磁気情報読み取り信号の出力が停止した場合(ステップS7において、NO)、CPU11は、カード21が排出不能であり、図7に示すように、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられている恐れがあると判定する(カード処理プログラムPRGのステップS11)。
【0042】
次いで、CPU11は、メモリ18に保持された磁気情報を上位装置23に送信することなく破棄する(カード処理プログラムPRGのステップS11)。さらに、CPU11は、異常時であることを上位装置23に通知する。本実施の形態では、CPU11は、ジャムエラー(カード21が搬送路4内で滞留するエラー)を上位装置23に通知する(カード処理プログラムPRGのステップS12)。
【0043】
そのため、上位装置23は、次の処理に進むことなく、例えば、使用者に暗証番号の入力を促す手続きに進むことはない。したがって、ここで他人に個人認証情報、例えば、暗証番号や手指や手のひらの静脈パターン、虹彩、指紋等の生体情報を盗み見られる事態を回避することができる。
【0044】
ここで、カードリーダ1によるカード21の読み取り動作が終了する。
(本実施の形態の主な効果)
【0045】
以上説明したように、本形態では、カードリーダ1は、カード21が排出可能であることが確認されない限り、カード21に記録されている磁気情報が上位装置23に出力されることがない。そのため、カード21が排出不能の場合は磁気情報が出力されないため犯罪者による媒体の不正使用を防ぐことができる。
【0046】
具体的には、このカードリーダ1では、仕掛け27によるジャムエラーが発生しない正常時には、上位装置23とのやり取りを含む通常の処理を遂行することができる。また、仕掛け27によるジャムエラーが発生した異常時でも、カード21がカードリーダ1から排出可能であることが確認されない限り、カード21に記録されている情報が上位装置23に出力されることがない。そのため、カード21が排出不能の場合は情報が出力されないため上位装置23の処理が暗証番号等入力要求まで進まず、他人に個人認証情報、例えば、暗証番号や手指や手のひらの静脈パターン、虹彩、指紋等の生体情報を盗み見られる心配がない。したがって、たとえカード21を盗まれたとしても、暗証番号等の個人認証情報が知られていないので、犯罪者によるカード21の不正使用を未然に防ぐことが可能となる。また、暗証番号等の個人認証情報が盗み見られる心配がないので、従来に比べてセキュリティ性が向上する。
【0047】
さらに、上述したとおり、カードリーダ1のプログラムを変更することで対応できるので、上位装置23はプログラムを変更することがないので、低コストで対応することが可能となる。
【0048】
また、このような動作を行っているカードリーダ1は、犯罪行為の対象とされない効果が有るため、カード21を窃取する行為そのものを抑止することが期待できる。
【0049】
しかも、異常時(カード排出阻害時)にロック歯でカード21をロックする公知技術1と異なり、カード21が損傷を受ける不具合は生じないので、犯罪者によってカード21が窃取されなかった場合はカード21の再発行コストを削減することができる。また、引き抜き防止ロック機構を備えた公知技術1と比べて、部品点数の増大および構造の複雑化を避けることができるため、カードリーダ1の製造コストの高騰を抑制することができる。さらに、公知技術1と違って、引き抜き防止ロック機構等のハードウェアをカードリーダ1の内部に追加して組み込む必要がないことに加えて、カード21に記録されている磁気情報の読み取りがカード21の最初の取込時に完了していることから、カードリーダ1の内部スペースが小さい小型のカードリーダ1にも適用することが可能となる。
【0050】
また、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないことを確認する際に、磁気ヘッド6から出力される磁気情報読み取り信号を利用するため、搬送ローラ7のスリップに伴う誤判定を避けることができる。すなわち、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないことを確認する際に、例えば、エンコーダ10から出力されるエンコーダ信号を利用することも考えられるが、このエンコーダ信号は、搬送ローラ7が何らかの理由でカード21に対してスリップした場合に、カード21の動きと対応しなくなる。その結果、実際にはカード21が停止しているにもかかわらず、カード21が正常に排出されていると誤判定してしまう危険性がある。これに対して、磁気ヘッド6から出力される磁気読取り信号は、搬送ローラ7のスリップの有無とは関係なく常にカード21の動きと対応する。したがって、カード21が正常に排出されたか否か、ひいては、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないか否かを正しく判定することが可能となる。
【0051】
さらに、この磁気情報読み取り信号の出力期間の測定に際しては、その測定開始時点をカードセンサ5の通過時に設定しているため、測定精度を高めることができる。すなわち、磁気情報読み取り信号の出力期間の測定に際しては、例えば、磁気ヘッド6の通過時を測定開始時点とすることも考えられるが、この場合、測定距離が長くなるため、必然的に誤差量が増大してしまう。これに対して、カードセンサ5の通過時を測定開始時点とすれば、測定距離が短くなるため、誤差量を減らして測定精度を高めることが可能となる。
[発明の実施の形態2]
【0052】
図10には、本発明の実施の形態2を示す。
【0053】
上述した実施の形態1では、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないことを確認する際に、搬送ローラ7のスリップに伴う誤判定を避けるべく、磁気ヘッド6から出力される磁気情報読取り信号を利用する場合について説明した。しかし、ローラ7の摩擦係数が高くモータ9の駆動力に勝る場合などのように、搬送ローラ7のスリップを防止する対策が講じられている場合は、磁気ヘッド6から出力される磁気情報読み取り信号の代わりに、エンコーダ10から出力されるエンコーダ信号を利用することもできる。以下、こうしたカードリーダ1について、実施の形態2として説明する。
【0054】
すなわち、この実施の形態2では、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないことを確認する際に、エンコーダ10から出力されるエンコーダ信号の周期の変化に着目する。規定出力期間が経過するまでエンコーダ信号の周期が一定であれば、カード21が排出可能であり、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられていないと判定される。一方、図10に示すように、規定出力期間が経過する前にエンコーダ信号の周期が制御目標とする周期から外れている場合は、カード21が排出不能であり、カードリーダ1に仕掛け27が取り付けられている恐れがあると判定される。なお、その他の動作手順およびカードリーダ1の構成ほかについては、上述した実施の形態1と同様である。
【0055】
このように、この実施の形態2では、磁気ヘッド6から出力される磁気情報読み取り信号を利用する必要がないので、磁気ストライプのないICカードにも適用することができる。より詳細に説明すれば、表面に配置されたIC端子とIC接点とが接触することで情報の読み取りや書き込みを行なう接触式ICカード、または、非接触で無線通信によって情報の読み取りや書き込みを行う非接触式ICカードに適用することができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0056】
なお、上述した実施の形態1、2では、光学式のカードセンサ5が組み込まれたカードリーダ1について説明したが、光学式以外の方式、例えば、カード21の幅を検知する機械式のカードセンサ5を代用または併用することもできる。
【0057】
また、上述した実施の形態1、2では、搬送ローラ7を有するカードリーダ1について説明したが、搬送ローラ7以外の搬送手段、例えば、ベルトを用いた搬送手段を代用または併用することも可能である。
【0058】
また、上述した実施の形態1、2では、制御手段としてCPU11を用いたカードリーダ1について説明したが、CPU11以外の制御手段、例えば、カードリーダ1のカードセンサ5やモータ9を直接制御する形態の上位装置を代用することもできる。
【0059】
さらに、上述した実施の形態1、2では、一対の搬送ローラ7および押圧ローラ8で構成された小型のカードリーダ1について説明したが、搬送路内に複数の搬送ローラ対が配置された通常サイズのカードリーダ1に本発明を同様に適用することも勿論できる。
【0060】
さらにまた、上述した実施の形態1、2では、媒体としてカード21を用いることを前提に、媒体処理装置としてカードリーダ1を用いる場合について説明した。しかし、カード21以外の媒体、例えば、金融機関などで扱われる通帳等や小切手等を処理する装置に本発明を同様に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ATM装置(現金自動預け払い機)やCD機(現金自動支払い機)、自動販売機、券売機など各種の装置・機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1……カードリーダ(媒体処理装置)
2……ケーシング
3……挿入口
4……搬送路
5……カードセンサ
5a……発光素子
5b……受光素子
6……磁気ヘッド(媒体情報読取手段)
7……搬送ローラ(搬送手段)
8……押圧ローラ(搬送手段)
9……モータ
9a……出力軸
10……エンコーダ
11……CPU(制御手段)
12……センサ検知部
13……復号処理部
15……磁気信号検出部
16……モータ回転速度検出部
17……モータサーボ制御部
18……メモリ
19……復調回路
20……モータ駆動回路
21……カード(媒体)
23……上位装置
25……ホストコンピュータ
26……暗証番号入力装置
27……仕掛け
L1……ケーシングの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を挿入方向および排出方向に搬送する搬送手段と、
前記媒体に記録されている媒体情報を読み取る媒体情報読取手段と、
前記媒体情報読取手段が読み取る媒体情報を記憶するメモリと、
前記搬送手段、前記媒体情報読取手段および前記メモリを制御する制御手段とを備えた媒体処理装置であって、
前記制御手段は、
前記搬送手段によって前記媒体が挿入方向に搬送される際に、当該媒体に記録されている媒体情報を前記媒体情報読取手段で読み取って前記メモリに記憶して保持するように制御する媒体情報読取り制御部と、
前記搬送手段によって前記媒体を排出方向に搬送することにより、当該媒体が排出可能であるか否かを判定する排出可否判定部と、
前記媒体が排出可能でないと判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を破棄するように制御する媒体情報破棄制御部とを有することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記媒体が排出可能であるか否かが判定された後、前記搬送手段によって当該媒体を挿入方向に搬送するように制御することを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記媒体が排出可能であると判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を上位装置に出力するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記媒体から出力される媒体情報読取り信号に基づき、前記媒体が排出可能であるか否かを判定することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記搬送手段の駆動状況に基づき、前記媒体が排出可能であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
媒体を挿入方向および排出方向に搬送する搬送手段と、
前記媒体に記録されている媒体情報を読み取る媒体情報読取手段と、
前記媒体情報読取手段が読み取る媒体情報を記憶するメモリとを備えた媒体処理装置に適用される媒体処理方法であって、
前記搬送手段によって前記媒体が挿入方向に搬送される際に、当該媒体に記録されている媒体情報を前記媒体情報読取手段で読み取って前記メモリに記憶して保持するように制御する媒体情報読取り制御工程と、
前記搬送手段によって前記媒体を排出方向に搬送することにより、当該媒体が排出可能であるか否かを判定する排出可否判定工程と、
前記排出可否判定工程において前記媒体が排出可能でないと判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を破棄するように制御する媒体情報破棄工程と、
前記排出可否判定工程において前記媒体が排出可能であると判定された場合に、前記メモリに保持された媒体情報を上位装置に出力するように制御する媒体情報出力工程とを含むことを特徴とする媒体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−22670(P2011−22670A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164992(P2009−164992)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】