説明

嫌気性加水分解によるバイオガス生産設備

本発明は、有機性廃棄物を、バイオガス、すなわちメタン含有ガスにより効果的かつ経済的に変換する方法とシステムに関する。該システムは、消化によるバイオガスの産生のための、有機性廃棄物を保持しかつ消化された廃棄物の放出口を有するリアクター(3)と、消化された廃棄物の嫌気性加水分解のための、リアクター(3)の放出口に接続されかつ加水分解された物質の放出口を有する嫌気性タンク(6)とを含み、該加水分解された物質の放出口はリアクターに前記加水分解された物質を加えるためのリアクターの投入口に接続されている。嫌気性加水分解プロセスは、リアクター内で消化されていない物質のエネルギー含量を細菌の消化に可能なようにし、よって加水分解された物質はリアクターに戻され、バイオガスにさらに変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、バイオガス、すなわちメタン含有ガスに有機性廃棄物をより効果的かつ経済的に変換する方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
今日のバイオガス生産設備は、通常、経済的に実行可能な油脂を含有する産業廃棄物に依存している。重量比のエネルギー密度が高い油脂は、バイオガス生産設備に有用な投入物となる。この目的のため、産業廃棄物に対する需要は高く、このことがそれをむしろ高価で限られた原料にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、産業廃棄物を他の廃棄物などの他の物質で代替することを可能にするバイオガス生産設備が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明によると、消化(digestion)によるバイオガス生産のための、有機性廃棄物を保持しかつ消化された廃棄物の放出口を有する第1リアクターと、消化された廃棄物の嫌気性加水分解のための、第1リアクターの放出口に接続されかつ加水分解された物質の放出口を有する嫌気性タンク(加水分解された物質の放出口は、リアクターに加水分解された物質を加えるための第2リアクターの投入口に接続されている)とを備えるバイオガス生産設備により、上記のそして他の目的が達成される。
【0005】
本発明のある実施形態において、第1リアクターが第2リアクターをも構成する。
リアクター内で消化されなかったエネルギー含有物質は、嫌気性加水分解処理により、細菌で消化できるようになるので、加水分解された物質は、第2リアクターに供給されるか、第1リアクターに再度供給され、細菌によりバイオガスにさらに変換される。
【0006】
嫌気性加水分解処理は、加水分解処理を行わない類似の設備に比べ、バイオガスの生産量を著しく増やす。
第1リアクターで消化された後に嫌気性加水分解を行うことは、物質の消化され得る部分がリアクター内で既に消化されているので、嫌気性加水分解タンク内で処理される物質量を最小限に抑えられる点で優位である。これによって、必要とされる嫌気性タンクの容量や、関連する接続システムを縮小し、設備投資や運営費が削減される。
【0007】
さらに、消化後の嫌気性加水分解は、消化前の加水分解よりも多くのエネルギーを供給する。これは、揮発性物質の含有量が高いバイオマスや、消化及び反応しやすい揮発性物質の加水分解処理によって、リアクターで消化され得ない有機性物質の誘導体に加水分解される間、有機物質の構成成分が変性又は凝縮されやすいという事実によっておこると考えられる。従って、そのような物質は、加水分解前にリアクターで有利に消化され得る。
【0008】
嫌気性タンク内での嫌気性加水分解は、飽和蒸気圧と同じか、より高い圧力で行われるのが好ましい。
【0009】
本発明のさらなる優位点は、嫌気性加水分解処理を補助するために化学物質を一切使用しないことである。
【0010】
驚くべきことに、嫌気性加水分解の産出物は無臭である。
【0011】
加水分解処理は、藁、繊維及び類似の繊維含有物質などの植物資源、下水処理プラントからの生物汚泥などの汚泥、細菌性物質、動物飼料の残渣、動物遺骸など、さまざまな物質に効果的に行われる。
【0012】
リアクターは、運営費が低いので嫌気性リアクターが好ましい。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、バイオガス生産設備は、予め設定されたしきい値サイズより大きい粒子を消化された廃棄物から選択的に分離するための、第1リアクターの放出口に接続されかつ分離された粒子の放出口を有する分離器をさらに備え、該分離された粒子の放出口は、分離された大粒子の加水分解のための嫌気性タンクに接続される。
【0014】
大粒子の多くは生物性物質(biological substance)であり、有用な生物性物質は、加水分解タンクでのさらなる処理のために、第1リアクターで消化された物質から分離される。これによって、必要とされる嫌気性タンクの容量や、関連する接続システムが縮小され、設備投資やコストが削減される。
【0015】
小粒子は、リグニン様物質やリン塩などの消化され得ない生物性乾燥物質を多く含んでおり、加水分解タンクに供給するのは好ましくない。従って、続いて加水分解される乾燥物質は、リンの含有率が低い。
本発明によると、分離効率は、沈殿剤や重合体を加えることで高めることができ、分離ユニットの上流粒子サイズを増大させ、下流の加水分解のための固体の保持を改善できる。
【0016】
廃水処理プラントからの汚泥の加水分解について、しきい値サイズは1.0mmが好ましく、2.0mmがより好ましい。
藁や類似の物質の加水分解について、しきい値サイズは0.2cmが好ましく、より好ましくは0.5cmであり、さらに好ましくは1.0cmであり、さらにより好ましくは1.5cmであり、最も好ましくは2.0cmである。
【0017】
分離器は、分離された粒子を脱水するための脱水器をさらに備える。
【0018】
加水分解タンクに入る物質量は、設備に供給される総物質量の50%未満が好ましい。
【0019】
加水分解は、飽和蒸気圧と実質的に同じか、より高い圧力で行われるのが好ましい。
圧力は、単純で安価な加水分解システムを提供するために、大気圧、すなわち約1気圧に実質的に等しくてよい。
物質によっては、周囲より高い圧力、例えば125℃や190℃の温度での飽和蒸気圧で加水分解したほうが、バイオガス生産設備の効率性と経済性を最適にし得る。温度を上げることで加水分解時間を短縮できる。加水分解は、例えば50℃〜75℃の温度範囲で0.25〜24時間、70℃〜100℃の温度範囲で0.25〜16時間、例えば4〜10時間、100℃〜125℃の温度範囲で0.25〜8時間、例えば3〜6時間、125℃〜150℃の温度範囲で0.25〜6時間、例えば2〜4時間、150℃〜175℃の温度範囲で0.25〜4時間、例えば1〜2時間、175℃〜200℃の温度範囲で0.25〜2時間、例えば0.25〜1時間行うことができる。
【0020】
バイオガス生産設備は、分画した廃棄物をリアクターへ供給するための放出口を有する、有機性廃棄物を分画するための分画器をさらに備える。
【0021】
本発明に基づくバイオガス生産設備により、穀草、草、乾燥した草、藁、牧草、動物遺骸などの有機性廃棄物を、産業廃棄物の代わりに利用できる。例えば、藁は、新鮮な藁又は乾燥した藁、あるいは家畜の汚物や寝藁に含まれている藁でもよい。従って、好適な実施形態では、藁と混合された家畜の汚物がリアクターに供給される。藁は、90〜95%の乾燥物質含有量であり、藁の油脂分が非常に低いにもかかわらず、著しいエネルギー量を有する。混合された汚物と藁は、リアクターで消化される。消化後、残った藁は分離器で分離され、嫌気性タンクに入り、加水分解される。
【0022】
第1リアクターで消化された物質を加水分解することで、生産されるガス量は、後処理の嫌気性加水分解を行わない第1リアクターで生産されるガス量に比べて、20%〜80%増加する。本発明にもとづいて生産されるガス量は、通常、25〜50%増加することが期待される。
【0023】
一般的なバイオマスポンプで物質を移送するためには、ポンピングされる物質の乾燥物質の含有量が、約15%より低く保たれなければならない。ウォームコンベヤーを使用すれば、コストはかかるが、乾燥物質の含有量が約25〜30%までの物質をポンピングすることができる。乾燥物質の含有量が高い廃棄物を設備に供給する場合、藁のようなさらなる廃棄物は第1リアクターではなく、加水分解タンクの内容物に加えることができる。驚くべきことに、切断された藁を嫌気性加水分解タンクに直接供給すると、タンク内で藁と液体との実質的に均質な混合物が得られ、下流の処理で藁の層が浮遊するのを大幅に抑える傾向がある。
【0024】
乾燥物質の含有量に応じて、加水分解タンクからの産出物は、加水分解された物質の消化を行うために、第1リアクターへ戻されるか、別の第2リアクターへ供給されてよい。
本発明の実施形態では、加水分解タンクで生産されたガスは、バイオガス生産処理工程をさらに改善するために、第1又は第2リアクターへ供給されるか、あるいはバイオガス操作処理システムに供給される。
【0025】
リアクターで廃棄物を消化する間、硫化水素やアンモニア/アンモニウムなど、種々のガスと合成物が生成される。
硫化水素は、硫酸塩とタンパク質から発生し、ここではアミノ酸が還元された硫黄をある程度の量で含有する。生物性物質の消化は、中性のpHで行われ、生成された硫化水素は、それが生成された液体中や生産されたバイオガス中に存在する。
【0026】
尿は、還元された窒素の含有量が高く、アミノ酸は、通常、還元されたN基、すなわちアミノ基を含んでいるので、尿やタンパク質を消化することによってアンモニア/アンモニウムが生成される。
【0027】
中性のpHの水では、アンモニアや硫化水素が部分的に溶け、以下のように反応する。:
NH3 + H2O => NH4+ + OH-
H2S + H2O => HS- + H+ + H2O (H3O+)
NH4+の正電荷とHS-の負電荷がこれらを一緒にする。
NH4+ + HS- => (NH4+HS-)0
この塩は、塩が生成された液体の上のガスの分圧が2種類のガスについて低い場合、対応するガスに容易に分解される。これらのガスの分圧が高い場合、塩は液体中に残る。
【0028】
加水分解に関連して生物性物質が加熱される過程で、有機酸、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素などのいくらかの揮発性物質が蒸発する。これらのガスは、リアクター、又はバイオガス操作処理システムに供給されることにより、バイオガス全体の温度を上昇させる。従って、蒸発したアンモニアなどは、タンクの頭隙を含む嫌気性タンク内に蓄積されず、タンクから放出されるので、一定の高圧力を容易に維持しやすい。
【0029】
ガスから蒸発したアンモニアを液体に再度吸収することによる圧力の低下により、前記の反応に従ってアンモニウムが生成される。
さらに、加水分解された物質のその後の消化によりアンモニア/アンモニウムの含有量を著しく低減することができ、バイオガスの生産がおこる温度をより高くすることが可能になる。
【0030】
家畜の汚物によるバイオガス生産設備では、通常、硫化水素の含有量が高いガスが生産され、これはバイオガスを電気やガスに変換するガスモーターなどの損傷を防ぐために減少させる必要がある。加水分解タンクから供給されたガスは、高温で、蒸発した水分やイオン化したアンモニウム(NH4+)を含んでいるので、前記の反応が起こり、硫化水素を硫化アンモニウムに変える。従って、加水分解タンクで生成されたガスは、リアクターで生産されたバイオガスを浄化する。
【0031】
図面の簡単な説明
図1 乾燥物質の含有量が低い廃棄物に適した本発明に基づくバイオガス生産設備を模式的に示す。
図2 乾燥物質の含有量が高い廃棄物に適した本発明に基づくバイオガス生産設備を模式的に示す。
図3 乾燥物質の含有量が高い廃棄物に適した本発明に基づく別のバイオガス生産設備を模式的に示す。
図4 本発明に基づくバイオガス生産設備の加水分解タンクを模式的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明の詳細な説明
図1は、穀草、草、乾燥した草、新鮮な藁や乾燥した藁、家畜の汚物や寝藁に含まれる藁、牧草、動物残骸などの有機性廃棄物と混合された家畜の汚物からバイオガスを生産するためのバイオガス生産設備10を模式的に示す。図中の実施形態では、汚物の乾燥物質の含有量が少ないので、大量の藁が汚物に加えられる。分画器1は、藁を約5cm〜10cmの平均長さの藁部分に切断する。切断された藁と家畜の汚物はタンク2で混合され、混合物は、タンク3aにおいて、通常、70℃〜75℃で加熱して不要な細菌を殺菌する。熱処理された物質を第1リアクター3に供給し、細菌による消化によってバイオガスが生成される。物質は、リアクターの温度によって、通常、約15〜30日間消化される。リアクターの温度は、通常、30℃〜55℃の範囲である。分離器4は、0.2cm〜2cmより大きい粒子を分離し、分離された粒子は、第2分離器5で脱水され、乾燥物質の含有量を10〜15%乾燥物質にする。分離された物質は、嫌気性加水分解のために嫌気性加水分解タンク6に入る。
【0033】
分離器4からの産出物は、任意に、熱交換器16を経由して、嫌気性加水分解タンク6に入る。次いで、加水分解タンクからの産出物は、熱交換器16の他の媒体を構成するので、加水分解タンクからの産出物は、第1リアクター3に入る前に、熱交換器16により冷却される。
【0034】
また、任意に、分離器4からの産出物は、嫌気性加水分解タンク6に入る前に、熱交換器18で温水、例えば高圧温水により加熱され得る。
これも任意であるが、穀草、草、乾燥した草、新鮮な藁や乾燥した藁、家畜の汚物や寝藁に含まれる藁、牧草などの有機性廃棄物は、嫌気性加水分解タンク6に直接供給することができるか、又は有機性廃棄物は、嫌気性加水分解タンク6に入る前に、第1リアクター3の産出物の少なくともいくらかとタンクで混合され得る。
例えば、切断された藁を、嫌気性加水分解タンク6に直接供給することができる。
驚くべきことに、タンク6で藁と液体との実質的に均質な混合物が生成されることが見出された。
【0035】
嫌気性タンク6は、以下で図4を参照してさらに説明されるように、蒸気で直接、又はマントルの上から圧力をかけるか、あるいは嫌気性加水分解タンク6に物質を供給する供給ポンプで圧力を高めることができる。
【0036】
加水分解された物質は、液体に溶けるか、又は小粒子の形をとる。
【0037】
産業廃棄物や分別された家庭ごみなどの他の生物性物質2aは、設備10に供給することができる。これらの他の生物性物質は、第1リアクタータンク3に直接供給されるので、システムの他の部分に影響を及ぼさない。
【0038】
図2は、藁と混合された家畜の汚物からバイオガスを生産するためのバイオガス生産設備10を模式的に示す。汚物と藁の混合物は、乾燥物質の含有量が高い。分画器1は、藁を約5cm〜10cmの平均長さの藁部分に切断する。切断された藁と加水分解された物質は、タンク2bで混合され、第1リアクター3に供給された混合物は、細菌で消化され、バイオガスを生成する。
代替又は追加として、切断された藁は、嫌気性タンク6に直接入ることができる。驚くべきことに、タンク6で藁と液体との実質的に均質な混合物が生成されることが見出された。
【0039】
家畜の汚物は、2で混合され、3aで熱処理される。熱処理された物質は、第1リアクター3に供給され、細菌による消化によって、バイオガスを生成する。物質は、リアクターの温度によって、通常、約15〜30日間消化される。リアクターの温度は、通常、30℃〜55℃の範囲である。分離器4は、0.2cm〜2cmより大きい粒子を分離し、分離された粒子は、第2分離器5で脱水され得、乾燥物質の含有量が10〜15%乾燥物質となる。分離された物質は、加水分解タンク6に入り、加水分解される。
【0040】
分離器4からの産出物は、任意に、熱交換器16を経由して、嫌気性加水分解タンク6に入る。次いで、加水分解タンクからの産出物は、熱交換器16の他の媒体を構成するので、加水分解タンクからの産出物は、第1リアクター3に入る前に冷却される。
また、任意であるが、分離器4からの産出物は、嫌気性加水分解タンク6に入る前に、熱交換器18で温水、例えば高圧温水により加熱され得る。
【0041】
嫌気性タンク6は、以下で図4を参照してさらに説明するように、蒸気で直接、又はマントルの上から圧力をかけるか、あるいは嫌気性加水分解タンク6に物質を供給する供給ポンプで圧力を高めることができる。
【0042】
加水分解された物質は、液体に溶けるか、又は小粒子の形をとる。
乾燥物質の含有量が高い家畜の汚物の場合、分離された粒子を脱水する必要はないかもしれない。破線は、第2分離器5の迂回路を示す。
【0043】
産業廃棄物や分別された家庭ごみなどの他の生物性物質2aは、設備10に供給することができる。これらの他の生物性物質は、第1リアクタータンク3に直接供給されるので、システムの他の部分に影響を及ぼさない。
【0044】
図3は、藁と混合された家畜の汚物からバイオガスを生産するための別のバイオガス生産設備10を模式的に示す。汚物と藁の混合物は、乾燥物質の含有量が高い。家畜の汚物は、2で混合され、3aで約70℃〜75℃の温度で熱処理を施される。熱処理された物質は、第1リアクター3に供給され、細菌による消化によって、バイオガスを生成する。物質は、リアクターの温度によって、通常、約15〜30日間消化される。リアクターの温度は、通常、30℃〜55℃の範囲である。分離器4は、0.2cm〜2cmより大きい粒子を分離し、分離された粒子は、第2分離器5で脱水され得、乾燥物質の含有量が10〜15%乾燥物質となる。分離された物質は、加水分解タンク6に入り、加水分解される。
【0045】
嫌気性タンク6は、以下で図4を参照してさらに説明するように、蒸気によって直接、又はマントルの上から圧力をかけるか、あるいは嫌気性加水分解タンク6に物質を供給する供給ポンプで圧力を高めることができる。
【0046】
加水分解された物質は、液体に溶けるか、又は小粒子の形をとる。
【0047】
分画器1は、藁を約5cm〜10cmの平均長さの藁部分に切断する。切断された藁とタンク6で加水分解された物質は、タンク2bで混合される。混合物は、第2リアクター3bで消化される。分離器4bは、0.2cm〜2cmより大きい粒子を分離し、分離された粒子は、別の分離器5bで脱水され得、乾燥物質の含有量が10〜15%乾燥物質となる。分離された物質は、加水分解タンク6に入り、第1リアクター3からの産出物とあわせて加水分解される。
【0048】
代替又は追加として、切断された藁は、嫌気性タンク6に直接入ることができる。驚くべきことに、タンク6で藁と液体との実質的に均質な混合物が生成されることが見出された。
【0049】
加水分解された物質は、液体に溶けるか、又は小粒子の形をとる。
【0050】
分離器4からの産出物と分離器4bからの産出物は、任意に、熱交換器16を経由して、嫌気性加水分解タンク6に入る。次いで、加水分解タンク6からの産出物は、熱交換器16の他の媒体を構成するので、加水分解タンク6からの産出物は、第1リアクター3に入る前に冷却される。
【0051】
また、任意であるが、分離器4からの産出物は、嫌気性加水分解タンク6に入る前に、熱交換器18で温水、例えば高圧温水により加熱され得る。
乾燥物質の含有量が高い家畜の汚物の場合、分離された粒子を脱水する必要はないかもしれない。破線は、第2分離器5bの迂回路を示す。
【0052】
産業廃棄物や分別された家庭ごみなどの他の生物性物質2aは、設備10に供給することができる。これらの生物性物質は、第1リアクタータンク3に直接供給されるので、システムの他の部分に影響を及ぼさない。
【0053】
図4は、本発明の実施形態である加水分解タンクを示しており、ここでは加水分解中に生成されたガスは、リアクターやバイオガス操作処理システムに放出される。従って、前記の通り、消化によって生産されたバイオガスは浄化され、システム内のガス温度が上昇するので、生物学的浄化プロセスや類似のプロセスの効率性を高めることができる。
【0054】
図に示す実施形態では、加水分解される生物性物質は、加水分解タンク12への投入物である。所望の加水分解温度によって、図4bのように、タンクに直接蒸気を注入して嫌気性タンクを加熱するか、又は図4aのように、タンク周辺のマントルやパイプを加熱して、嫌気性タンクを加熱する。代替又は追加として、投入物は、熱交換器(図示せず)を経由して嫌気性加水分解タンク12に入る。次いで、加水分解タンクからの産出物は、熱交換器の他の媒体を構成するので、加水分解タンクからの産出物はリアクターに入る前に、熱交換器により冷却される。また、任意であるが、タンク12への投入物は、嫌気性加水分解タンク12へ入る前に、温水、例えば高圧温水などによる第2熱交換機(図示せず)で、さらに加熱することができる。
【0055】
タンク内で温度が上昇する間、加水分解ガス放出バルブ14を開くので、加水分解処理によって生物性物質の上の頭隙に生成されたガスは、リアクター(図示せず)で消化されることにより生成されたガスと通じる。生物性液体が設定温度に達すると、少なくともある特定の期間中は、リアクター内で生産されたガスとの交流が持続され得る。圧力を上げるべき場合は、バルブ14を閉ざし、望ましい圧力に達すると、バルブと熱供給が操作され、タンク内で実質的に一定の圧力が維持される。圧力下で加水分解を行う間、有機性物質の自動酸化によりCO2や他のガスが生成され、液体や液体中の細菌に溶ける。圧力を解除すると、細菌に含まれる溶存ガスの圧力が細菌膜を破壊し、殺菌する。
【0056】
加水分解が終了すると、頭隙のバルブ14を再度開いて、嫌気性タンク内での低圧力(真空)を防ぐ。リアクターガスやガス操作システムへ蒸気を放出することにより、嫌気性タンクの温度を下げることができるか、又は熱交換や熱回復を利用することにより冷却し得る。
【0057】
加水分解によって生産されたガスは、アンモニアや硫化水素、二酸化炭素、揮発性脂肪酸(VFA)、蒸発した水分などを含む。リアクターの頭隙やバイオガス操作処理システム内のバイオガス温度では、これらのガスが凝縮し、前記の通り、イオン化物質が生成される。イオン化物質は互いに反応し合い、塩を生成する。ガスは冷却され、蒸発した水分で実質的に飽和するので、生産されたバイオガスに必要とされない著しい量のガスが、凝縮された液体に吸収される。
【0058】
図1〜3の実施形態では、分離器4及び4bが、リアクターで消化された物質の種類に応じて、しきい値より大きい粒子を分離する。例えば、廃水処理プラントからの汚泥の加水分解について、しきい値サイズは約1.0mm〜約2.0mmの範囲であり、藁などの繊維を含む物質の加水分解では、しきい値サイズは約0.2cm〜約2.0cmの範囲である。小粒子は、微生物による消化ができない物質や、加水分解処理に望ましくないリン塩や窒素塩を多く含んでいる。
【0059】
分離器は、沈降作用によって稼動し得る。しかし、沈降は、リンを分離するには効果的でないので、薄膜分離器や振動スクリーンなどを用いるのが好ましい。
【0060】
分離器の産出物は、分離器の投入物の約15〜30容量%の液体粒子画分を構成し、分離器投入物の約20〜50%の乾燥物質を含み、乾燥物質含有量が約8〜15%である。
【0061】
バイオ生産設備が、乾燥物質の含有量が少ない家畜の汚物用であるか、又は乾燥物質の含有量が多い家畜の汚物用であるかによって、必要であれば、第2分離器5及び5bは、10〜15%程度に乾燥物質の含有量を増加させる。分離器5及び5bは、遠心分離機かスクリュープレスなどであり得る。
【0062】
分離器5及び5bの産出物は、分離器投入物の60〜70容量%の液体粒子画分を構成し、分離器投入物の70〜80%の乾燥物質を含み、乾燥物質含有量が12〜15%である。
【0063】
図に示す実施形態では、分離効率は、沈殿剤や重合体を加えることで上昇させることができ、分離ユニットの上流で粒子サイズを増大させ、それにより下流の加水分解のための固体の保持量を増やすことができる。
【0064】
廃水処理プラントの超過生物性汚泥による実験では、嫌気性消化とそれに続く嫌気性加水分解を用いるバイオガス生産が、嫌気性加水分解を行わない類似の嫌気性消化による生産に比べ、バイオガスの生産量の50〜70%の増加をもたらすことを示す。藁を混合した動物肥料による類似の実験では、嫌気性消化とそれに続く嫌気性加水分解を用いるバイオガス生産が、嫌気性加水分解を行わない類似の嫌気性消化による生産に比べ、バイオガスの生産量の20〜80%の増加をもたらすことを示す。乾燥物質を減少させれば、バイオガスの生産量も当然減る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】乾燥物質の含有量が低い廃棄物に適した本発明に基づくバイオガス生産設備を模式的に示す。
【図2】乾燥物質の含有量が高い廃棄物に適した本発明に基づくバイオガス生産設備を模式的に示す。
【図3】乾燥物質の含有量が高い廃棄物に適した本発明に基づく別のバイオガス生産設備を模式的に示す。
【図4】本発明に基づくバイオガス生産設備の加水分解タンクを模式的に示す。
【符号の説明】
【0066】
1 分画器
2 タンク
2a 他の生物性物質
2b タンク
3 第1リアクター
3a タンク
3b 第2リアクター
4 分離器
4b 分離器
5 第2分離器
5b 分離器
6 嫌気性加水分解タンク
10 バイオガス生産設備
12 嫌気性加水分解タンク
14 加水分解ガス放出バルブ
16 熱交換器
18 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化によるバイオガス生産のための、有機性廃棄物を保持しかつ消化された廃棄物の放出口を有する第1リアクターと、
消化された廃棄物の嫌気性加水分解のための、第1リアクターの放出口に接続されかつ加水分解された物質を第2リアクターに加えるための第2リアクターの投入口に接続されている加水分解された物質の放出口を有する嫌気性タンク
とを備えるバイオガス生産設備。
【請求項2】
嫌気性加水分解は、嫌気性加水分解中、飽和蒸気圧と実質的に同じ圧力で行われる請求項1に記載のバイオガス生産設備。
【請求項3】
消化によるバイオガス生産のための、有機性廃棄物を保持しかつ消化された廃棄物の放出口を有する第1リアクターと、
予め設定されたしきい値サイズより大きい粒子を消化された廃棄物から選択的に分離するための、第1リアクターの放出口に接続されかつ分離された大粒子の放出口を有する分離器と、
分離された粒子の嫌気性加水分解を行うための、分離器の放出口に接続されかつ加水分解された物質を第2リアクターに加えるための第2リアクターの投入口に接続されている加水分解された物質の放出口を有する嫌気性タンク
とを備えるバイオガス生産設備。
【請求項4】
第1リアクターが第2リアクターをも構成する請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオガス生産設備。
【請求項5】
分離効率が、分離器の上流に沈殿剤又は重合体を加えることで高められ、それにより分離器の上流の粒子サイズを増大させ、下流の加水分解のために固体の保持の改善を導く請求項4に記載の設備。
【請求項6】
嫌気性タンクが、第1リアクターからの消化された物質とあわせて嫌気性加水分解を行うために該タンク内に有機性廃棄物質を受容するための投入口をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の設備。
【請求項7】
加水分解が、50℃〜75℃の範囲の温度で0.25〜24時間行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項8】
加水分解が、70℃〜100℃の範囲の温度で0.25〜16時間行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項9】
加水分解が、100℃〜125℃の範囲で0.25〜8時間行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項10】
加水分解が、125℃〜150℃の範囲で0.25〜6時間行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項11】
加水分解が、150℃〜175℃の範囲で0.25〜4時間行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。加水分解が、175℃〜200℃の範囲で0.25〜2時間行われる請求項1又は2に記載の設備。
【請求項12】
しきい値サイズが、0.1cmより大きいか又は0.1cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項13】
しきい値サイズが、0.2cmより大きいか又は0.2cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項14】
しきい値サイズが、0.5cmより大きいか又は0.5cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項15】
しきい値サイズが、1.0cmより大きいか又は1.0cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項16】
しきい値サイズが、1.5cmより大きいか又は1.5cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項17】
しきい値サイズが、2.0cmより大きいか又は2.0cmに等しい請求項4〜11のいずれか1項に記載の設備。
【請求項18】
嫌気性タンクが、嫌気性タンク内の圧力を1気圧より高くするための圧力源にさらに接続されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の設備。
【請求項19】
分離器が、分離された粒子の脱水のための脱水器をさらに備える請求項4〜182〜16のいずれか1項に記載の設備。
【請求項20】
有機性廃棄物を分画するための、分画した廃棄物をリアクターへ供給するための放出口を備える分画器をさらに備える請求項1〜19のいずれか1項に記載の設備。
【請求項21】
乾燥物質の含有量が高い第一廃棄物が家畜の汚物と混合され、混合物がバイオガス生産のためにリアクターに投入される請求項1〜20のいずれか1項に記載の設備。
【請求項22】
第一廃棄物が藁である請求項21に記載の設備。
【請求項23】
乾燥物質の含有量が高い第一廃棄物が、嫌気性タンクからの加水分解された物質と混合され、混合物がリアクターに投入される請求項1〜22のいずれか1項に記載の設備。
【請求項24】
第一廃棄物が藁である請求項23に記載の設備。
【請求項25】
乾燥物質の含有量が高い第一廃棄物が、嫌気性タンクからの加水分解された物質と混合され、混合物が該混合物の消化のための第2リアクターに投入される請求項1〜22のいずれか1項に記載の設備。
【請求項26】
予め設定されたしきい値サイズより大きい粒子を消化された廃棄物から選択的に分離するための、第2リアクター放出口に接続されかつ分離された大粒子用の放出口を備える第2分離器をさらに備え、分離された粒子の加水分解のための嫌気性タンクが第2分離器の放出口に接続されている請求項25に記載の設備。
【請求項27】
第2分離器が、分離された粒子の脱水を行うための第2脱水器をさらに備える請求項26に記載の設備。
【請求項28】
第一廃棄物が藁である請求項25〜27のいずれか1項に記載の設備。
【請求項29】
嫌気性タンクが、リアクターで生産されたバイオガスと混合される、加水分解中に生産されたガスを供給するためのガス放出口を備える請求項1〜28のいずれか1項に記載の設備。
【請求項30】
以下の工程:
リアクターで有機性廃棄物を消化することによりバイオガスを生産する工程と、
続いて、消化された廃棄物を嫌気性加水分解タンクで嫌気性加水分解する工程と、
さらなる消化とガス生産のために、加水分解された物質をリアクターへ戻す工程
とを含むバイオガスの生産方法。
【請求項31】
嫌気性加水分解を行う前に、予め設定されたしきい値サイズより大きい粒子を消化された廃棄物から選択的に分離する工程をさらに含む請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506536(P2007−506536A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515736(P2006−515736)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000462
【国際公開番号】WO2005/000748
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505477028)バイオ−サーキット エーピーエス (2)
【氏名又は名称原語表記】BIO−CIRCUIT ApS
【住所又は居所原語表記】c/o Niels Ostergaard,Vegavej 8,Soften,DK−8382 Hinnerup,Denmark
【Fターム(参考)】