子宮体癌の検出方法
【課題】未だ見出されていない子宮体癌の特異的腫瘍マーカーとなり得る生体要素を見出し、これを基とする子宮体癌を検出する手段を提供すること。
【解決手段】被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出する検出方法を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【解決手段】被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出する検出方法を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出手段、より詳細には、子宮体癌に対する特異的腫瘍マーカーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
子宮癌は、女性では、胃癌、乳癌に次いで多い癌であり、子宮頸癌と子宮体癌に大別される。本発明に直接的に関連する子宮体癌は、子宮癌の中でも比較的発症頻度の低い癌として知られていたが、近年、その頻度が急激に高くなっていることが問題視されている。
【0003】
子宮体癌は、子宮体部に発生する癌で、広義には、子宮内膜に発生する子宮内膜癌と、子宮筋に発生する子宮肉腫の両者を含むが、一般的には子宮内膜癌を意味するものである。本発明では、子宮内膜癌を子宮体癌として定義する。
【0004】
子宮体癌の初期症状は、不正性器出血(特に閉経期後)が挙げられるものの、比較的緩慢であり、早期発見が難しい癌の一つである。
【0005】
子宮体癌の診断としては、子宮内膜細胞診検査、子宮内膜組織検査、子宮内膜全面掻爬・子宮鏡検査、超音波・CT・MRI等による画像診断が、必要に応じて組み合わせて行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌の診断手段のうち、近年極めて有力な手段となりつつあるものとして、いわゆる腫瘍マーカーが挙げられる。腫瘍マーカーは、特定の腫瘍の存在に対応して、血液中や尿中において特徴的な挙動を示す生体物質である。腫瘍マーカーの定量を行い、その定量値を指標とすることにより、特定の腫瘍の存在を検出することができるので、腫瘍マーカーは、その簡便性から、当該特定腫瘍の早期発見に大いに貢献するものである。例えば、子宮頸癌等の腫瘍マーカーとして、SCC等が知られている。また、卵巣癌の腫瘍マーカーとして、CA125、α−フェトプロテイン、LDH、CEA、CA72-4、CA19-9等が知られている。
【0007】
しかしながら、子宮体癌に対する特異的な腫瘍マーカーは、現在のところ知られておらず、上述したように、既存の子宮体癌に対する検査手段は手軽とはいえない。このことが、子宮体癌の早期発見を妨げる原因の一つであることは明らかである。
【0008】
子宮体癌の早期発見は、患者の命を救うことになるのみならず、出産の望みをつなぐことになる。すなわち、子宮体癌の治療の原則は手術療法であることから、かつ、子宮全摘出+付属器(卵巣・卵管)切除+骨盤及び傍大動脈リンパ節郭清が原則であり、特に、閉経前の女性の場合、治療と同時に出産の望みが絶たれることになる。しかしながら、ごく初期段階(異型子宮内膜腺癌(Grade I)の臨床進行期Ia)であれば、子宮温存療法を選択することも可能であるが、この段階の子宮体癌を発見するためには、鋭敏な腫瘍マーカーによる診断の助けを借りることが必要となる。
【0009】
よって、本発明の課題は、未だ見出されていない子宮体癌の特異的腫瘍マーカーとなり得る生体要素を見出し、これを基とする子宮体癌を検出する手段を提供することにある。
【0010】
本発明者は、この課題の解決に向けて検討を重ねた結果、驚くべきことに、特定の血中タンパク質を指標とすることにより、被験者の子宮体癌を、極めて高い精度で検出することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌(本発明では子宮内膜癌を意味するものである)を検出する、検出方法(以下、本検出方法ともいう)を提供する発明である。
【0012】
上述したように、現在のところ子宮体癌に対する特異的な腫瘍マーカーは未だ見出されておらず、本発明は、子宮体癌の早期発見に大いなる貢献をすることが期待される。
【0013】
血液検体とは、被験者から採取された血液又はその処理物のことを意味するものであり、動脈血であっても、静脈血であってもよいが、通常は、静脈血、特に、末梢静脈血を用いる。また、本発明にて用いる血液検体は、真空採血又はシリンジ採血等により、常法により全血を採取することができる。本検出方法においては、全血、血漿、及び、血清のうち、血清を用いることが好適である。また、通常の血清に対してさらに前分画を行い、これを試料として用いることにより、いっそう検出感度を上げることができる。かかる前分画は、例えば、陰イオン交換固相担体で血清を処理することにより行われる。
【0014】
上記質量分布の測定には、タンパク質の質量分析が可能な装置又はシステムであれば、特に制限なく使用できる。例えば、四重極型質量分析計、飛行時間型質量分析計、四重極イオントラップ質量分析計、フーリエ変換型イオンサイクロトロン型質量分析計等の装置や、プロテインチップと飛行時間型質量分析計及び測定・解析に使用するソフトウエアがインストールされたコンピュータが一体となったプロテインチップシステム等を用いることができる。好適には、飛行時間型質量分析計やプロテインチップシステムを用いることが可能であり、特に好適には、Ciphergen社製のプロテインチップシステムを使用することができる。当該社製のプロテインチップシステムは、固相担体に捕捉された血中タンパク質に対してレーザー光線を照射することにより、当該血中タンパク質をイオン化した状態で当該固相担体から脱離させ、当該脱離タンパク質を、飛行時間型質量分析計にて検出することが可能である。
【0015】
上記質量分布の測定の前提として、血液検体を固相担体と接触させて、血中タンパクを当該固相担体に捕捉させることが必要である場合が多い。例えば、上記各プロテインチップシステムでは、タンパク質の解析に適した様々な性質を有する固相担体を主要な構成要素とするプロテインチップに血中タンパク質を捕捉させて、当該捕捉タンパク質に対して、各々特有の原理による質量分析を行うことにより、所望の測定を行うことができる。ここで用いられる固相担体としては、疎水性固相担体、陽イオン交換型固相担体、陰イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体、順相型固相担体、逆相型固相担体等の発現解析に適した担体を挙げることができる。また、特定の結合分子、例えば、活性化型分子、抗体、レセプタータンパク質、核酸等を固相化したアフィニティー担体を、特異的な結合の解析を行うために用いることもできる。これらの中でも、発現解析用の固相担体、すなわち、疎水性固相担体、陽イオン交換型固相担体、陰イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体、順相型固相担体、又は、逆相型固相担体を用いることが、本発明においては好適であり、これらの中でも、陽イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体として銅イオン修飾固相担体、又は、逆相型固相担体が、特に好適である。
【0016】
特に、分子量1000〜200000Daの範囲で連続したパターンを得るためには、これらの固相化担体に捕捉させた捕捉タンパク質は、イオン化させることによって当該固相化担体から分離した状態でピークパターンとして提供される。かかるイオン化方法としては、上述したレーザー光線照射によるイオン化法(例えば、matrix-assisted laser desorption ionization(MALDI)法)の他に、電子衝撃イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、フィールドデソープション(FD)法、高速原子衝突(FAB)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法等が挙げられる。
【0017】
本検出方法では、分子量1000〜200000Daの範囲において、血中タンパク質のピークを連続的に解析して、この連続的な解析により得られたピークパターンを、子宮体癌罹患型のパターンと、健常人(少なくとも、子宮体癌には罹患していないことを意味する)型のパターンに分けて、被験者のピークパターンが子宮体癌罹患型のパターンに分類される場合に、子宮体癌陽性として検出を行うことができる。また、特に、解析の対象となる血中タンパク質の分子量の範囲を1000〜20000Da程度とすることも可能である。
【0018】
上記の分子量1000〜200000Daの範囲に存在する血中タンパク質のピークパターン全体に対して解析を行い、その結果により被験者の子宮体癌を検出することも可能であるが、子宮体癌の罹患者において特徴的な特定の血中タンパク質のピークに着目して解析を行うこともできる。着目すべき血中タンパク質の選択は、可能な限り子宮体癌罹患の検出精度が維持される組み合わせにて行うことが好適である。
【0019】
具体的には、下記(1)及び/又は(2)を行うことが、本検出方法の好適な態様として挙げられる。
【0020】
(1)被験者の血液検体中において、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも増加している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【0021】
これらの(1)の群にて表された質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質は、陽イオン交換型固相担体に血液検体を捕捉させて、当該捕捉タンパク質について質量分布解析を行うことにより測定することが好適である。
【0022】
(2)被験者の血液検体中において、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも減少している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【0023】
これらの(2)の群にて表された質量中心分布を実質的に有する血中タンパク質は、金属イオン修飾固相担体に血液検体を捕捉させて、当該捕捉タンパク質について質量分布解析を行うことで測定することが好適である。当該金属イオン修飾固相担体における修飾金属イオンは銅イオンであることが好適である。
【0024】
上記の特定の血中タンパク質の質量分布中心を規定する用語である「実質的に」とは、最大の測定誤差を考慮して規定するという意味を有している。具体的には、当該最大誤差は±0.2%である。本明細書において、特定の血中タンパク質を質量分布中心で示した場合、特に断らない限り、ここでいう「実質的」な数値を意味するものである。
【0025】
上記のように、特定の分子量範囲の血中タンパク質のピークパターン全体、又は、上記の個々のピークパターンに着目して解析する場合(シングルマーカー解析)、例えば、上述した機器(例えば、Ciphergen社製のプロテインチップシステム)を用いて、特定質量範囲の血中タンパク質の質量分布として総括的に把握することが可能である。また、同様に、上記の個々の血中タンパク質の存在、非存在、増加又は減少を把握することが可能である。特に、当該質量分布と子宮体癌の罹患の関係を関連付けたアルゴリズムを有するソフトウエアを介して、被験者の血液検体における血中タンパク質の質量分布情報を処理することにより、非常に簡便かつ正確に、被験者における子宮体癌の検出を行うことができる。この場合のデータ処理方法としては、例えば、単変量解析あるいは多変量解析(階層的クラスター解析、主成分解析又はClassification解析等)を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、特定の血中タンパク質を腫瘍マーカーとして、子宮体癌を高精度で検出し得る、子宮体癌の検出方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な形態を実施例として記載するが、かかる記載により本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
(1)血液検体
初期の被験者候補として、子宮体癌群26例(ステージI〜IV)と、健常人群25例について採血を行い、目視によるチェックとプロテインチップ[陽イオン交換チップ(CM10)]にてヘモグロビンピークを指標とした溶血チェックを行った(100 mM Sodium Acetate, pH4)。
【0029】
子宮体癌群は、再発・ケモ中の3例とステージIVの2例、そして健常人群との年齢の差を考慮し、最高齢の1例の計6例を除いた20例を選択した。健常人サンプルは40代の中からヘモグロビンの影響が認められた2例と、子宮体癌群サンプルとの年齢の差を減少させるため、若年齢の方から3例の計5例を除いた20例を選択した。
【0030】
このようにして選択された子宮体癌群と健常人群のそれぞれ20例の腕末梢静脈血管からの採血を行い、常法により血清検体とした。当該血清検体は、一旦、凍結状態として、氷上で融解し、20000xgにて10分間遠心した後、上清を回収した。前分画は96ウェルフォーマットフィルタープレート上で処理し、全ての上清の回収工程を、DPC Micromix 5 shakerを搭載したBiomek2000 Laboratory Work Station(Beckman)を用いて行った。このようにして、上清として得られた血清サンプルに、20μLに変性バッファー、U9(9M urea, 2%CHAPS, 50mM Tris-HCl, pH9)30μLを加え、4℃で20分間振とうした。次いで、Bio Sepra Q Ceramic HyperDF(陰イオン交換樹脂)は50mM Tris-HCl,pH9にて前もって平衡化し、50% slurryに調製した。このレジン180μLを、フィルタープレートの各ウェルに加え、U1バッファー(U9バッファーを50mM Tris-HCl, pH9にて9倍希釈したもの)200μLで3回、平衡化を行った。上記のU9で変性させた血清サンプルをレジンに加え、サンプルウェルをΜLバッファー50μLで共洗いし、併せてレジンに加え、4℃にて30分間振とうした後、非吸着画分を回収し、50mM Tris-HCl, pH9, 0.1%OGP 100μLをレジンに加えた。この洗浄液を回収し、非吸着画分と合わせ、Fraction1とした。この後、pH7,5,4,3の段階的なpH勾配によってタンパク質を溶出させた(各溶出バッファー, 100μL×2)。なお、この段階的なタンパク質溶出工程のうち、pH7における溶出は、溶出バッファー(50mM HEPES with 0.1% OGP pH7)にて行い、pH5における溶出は、溶出バッファー(100mM NaAcetate with 0.1% OGP pH5)にて行い、pH4における溶出は、溶出バッファー(100mM NaAcetate with 0.1% OGP pH4)にて行い、pH3における溶出は、溶出バッファー(50mM NaCitrate with 0.1% OGP pH3)にて行った。最後に、レジンに強固に結合したタンパク質を有機溶媒(33.3% isopropanol/16.7% acetonitrile/0.1% trifluoracetic acid)で溶出した。
【0031】
(2)プロテインチップへの試料の吸着
プロテインチップに搭載された固相担体としては、陽イオン交換樹脂(CM10)(結合・洗浄バッファー:100mM NaAcetate pH4)、同(結合・洗浄バッファー:50mM HEPES pH7)、銅イオン修飾担体(IMAC30)(結合・洗浄バッファー:50mM NaPhosphate, pH7.0, 0.5M NaCl)、及び、逆相担体(H50)(結合・洗浄バッファー:50mM HEPES pH7)を用いた。すべての条件で、シナピン酸 (sinapinic acid:SPA)とCHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)の2種をマトリクス分子として使用した。また、分注等の操作は、全てBiomek2000(Beckman)を用いて行った。
【0032】
陽イオン交換チップ(CM10)
陽イオン交換基(Carboxymethyl基)を有するCM10チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、結合・洗浄バッファー(100mM Sodium Acetate, pH4と100mM Sodium Acetate, pH7の2種類を使用)を150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。この操作を2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、チップ表面を洗浄した。これを3回繰り返して非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で2回脱塩処理を行った。チップは風乾した後に50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)、あるいは、50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)を、1μL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0033】
銅イオン修飾チップ(IMAC30)
銅イオンをチップ表面に固定化するため、nitrilotriacetic acid基を有するIMAC30チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、100mM CuSO4を50μL/spot添加し、10分間室温にて振とうした後に、200μL/spotのMilliQ水で2分間・2回洗浄、さらに0.1M Sodium Acetate, pH4を50μL/spot添加し、5分間室温にて振とうした後に、200μL/spotのMilliQ水で2分間洗浄を行った。
【0034】
次に、結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。この操作を2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを、結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。
【0035】
結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、チップ表面を洗浄した。これを3回繰り返して非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で脱塩処理を行った。チップは風乾した後に、50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)、あるいは、50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)を、1μL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0036】
逆相チップ(H50)
炭素原子数6〜12のアルキル基を有するH50チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。これを2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを、結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、チップ表面を洗浄、非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で脱塩処理を2回行った。チップは風乾した後に50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)あるいは50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)をlμL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0037】
(3)測定・データ解析
プロテインチップは、サイファージェン社のプロテインチップリーダーModelPBSIICにより測定を行った。データ取得はProteinChip Software version3.2およびCiphergenExpressTMData Manager version3.0により行った。照準測定範囲は、低分子領域データとして3000-10000m/z、高分子領域データとして10000-30000m/z、最高測定分子量は、低分子領域データとして100000m/z・高分子領域データとして200000m/zとした。1サンプルあたり2点アッセイを行い、ピーク強度の平均値で解析を行った。
【0038】
データ解析は、CiphergenExpressTMDataManager version3.0より行った。測定されたスペクトルからベースライン補正を行った後、分子量校正を行った。分子量校正に用いたタンパク質は表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、Total Ion Current(TIC)Normalizatioにより正規化処理を行った。解析対象はSignal/Noise(S/N)が2より大きいピークとし、サンプル間でのピークパターン比較、群間でのピーク強度の値を用いたu-検定(p値による解析)を行った。
【0041】
マルチマーカー解析としては、階層的クラスター解析、主成分解析(CiphergenExpressTMDataManager version3.0)、Biomarker Patterns Software version5.0を用いたClassification解析をおこなった。
【0042】
(4)結果
(A)シングルマーカー解析
データ解析の流れを図1に示した。まず、上述のように、S/N>2を示した9175ピークを対象にして単変量解析(Mann-Whitney u-test)を行い、p値<0.05の1436ピークを選択した。次に、これらの中からノイズや個体差によるピークを取り除き、マーカー候補とした。
【0043】
子宮体癌群サンプルで強度が増加しているピーク
子宮体癌群サンプルで、健常人群サンプルに比べて強度が増加しているピークとして、陽イオン交換チップにて捕捉され得る、質量中心が、6493Da(6493Da#1:pH7の緩衝液で平衡化した陽イオン交換チップにて捕捉されたもの。6493Da#2:pH4の緩衝液で平衡化した陽イオン交換チップにて捕捉されたもの。以下、#1と#2は同様の意味で用いる。)6487Da(#1,#2)、3244Da、6691Da(#1,#2)、6684Da(#1,#2)、3343Da(#1,#2)、及び、19318Da、のピークに該当する強度の増加が認められた。
【0044】
(a)6493Daタンパク質(図2〜3)
図2は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6493Daのタンパク質(6493Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図3は、図2に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6493Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6493Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0045】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6493Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0046】
(b)6487Daタンパク質(図4〜5)
図4は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6487Daのタンパク質(6487Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図5は、図4に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6487Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6487Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0047】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6487Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0048】
(c)3244Daタンパク質(図6)
図6は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が3244Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、3244Daタンパク質が有意に増加していることが、当該図面において明確に示されている。
【0049】
よって、pH7の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る3244Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
(d)6691Daタンパク質(図7〜8)
図7は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6691Daのタンパク質(6691Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図8は、図7に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6691Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6691Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0050】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6691Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0051】
(e)6684Daタンパク質(図9〜10)
図9は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6684Daのタンパク質6684Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図10は、図9に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6684Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plot とROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6684Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0052】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6684Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0053】
(f)3343Daタンパク質(図11〜12)
図11は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が3343Daのタンパク質(3343#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図12は、図11に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(3343Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、3343Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0054】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る3343Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0055】
(g)19318Daタンパク質(図13)
図13は、上記のpH7のバッファーを用いて調製した画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(HIGH)]とpH5の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が19318Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、19318Daタンパク質が有意に増加していることが、当該図面において明確に示されている。
【0056】
よって、pH5の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る19318Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0057】
以上、図2〜13に示したように、子宮体癌群における、陽イオン交換チップにて捕捉され得る、質量中心が、6493Da(#1,#2)、6487Da(#1,#2)、3244Da、6691Da(#1,#2)、6684Da(#1,#2)、3343Da(#1,#2)、及び、19318Da、のピークは、それぞれ有意差をもって、コントロール群よりも強いピークとして認められた。この結果より、これらのピークに相当する血中タンパク質のうち1種以上を選んで、そのピーク(血中存在量)の増大を、標準値(健常人におけるピーク値)との比較において検出指標とすることにより、極めて鋭敏に子宮体癌を検出することが可能であることが判明した。これらのうち、3343Daタンパク質と、6684Daタンパク質と、6691Daタンパク質では、#1と#2の双方とも、P値<0.000001と極めて高い有意差を示した。
【0058】
子宮体癌群サンプルで強度が減少しているピーク
子宮体癌群サンプルで、健常人群サンプルに比べて強度が減少しているピークとして、質量中心が、5625Da、9370Da、及び、28165Daのピークに、該当する強度の減少が認められた。
【0059】
(a)5625Daタンパク質(図14)
図14は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が5625Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、5625Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0060】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る5625Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0061】
(b)9370Daタンパク質(図15)
図15は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が9370Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、9370Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0062】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る9370Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0063】
(c)28165Daタンパク質(図16)
図16は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が28165Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、28165Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0064】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る28165Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0065】
以上図14〜16に示したように、子宮体癌群における、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る、質量中心が、5625Da、9370Da、及び、28165Daのピークは、それぞれ有意差をもって、コントロール群よりも弱いピークとして認められた。この結果より、これらのピークに相当する血中タンパク質のうち1種以上を選んで、そのピーク(血中存在量)の減少を、標準値(健常人におけるピーク値)との比較において検出指標とすることにより、極めて鋭敏に子宮体癌を検出することが可能であることが判明した。
【0066】
(B)マルチマーカー解析
階層的クラスター解析
階層的クラスター解析とは、未だ分類されていない対象を特定の基準にて分類する方法であり、通常、対象間の類似度により分類される。本実施例においては、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)を基準として、コントロール群と子宮体癌群からなる上述した全40検体を2群解析した。その結果、コントロール群と子宮体癌群が明確に分類分けされた。よって、血液検体における特定分子量間のタンパク質の質量分布のパターンについて、階層的クラスター解析を行うことにより、子宮体癌を検出可能であることが示された。
【0067】
主成分解析
主成分解析は、複数変数のデータのばらつき傾向から少数の合成された新たな変数(主成分)を求め、これらの主成分を用いて、未だ分類されていない対象を分類する方法である。本実施例の場合、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)から、表2に示すPercent varianceの高い上位3つの主成分1(PCAcomp1)、主成分2(PCAcomp2)、主成分3(PCAcomp3)が新たに合成され、これらを組み合わせて解析を行った。各主成分において寄与率(Importance)の高いピークを上位10までリストアップした(表2)。その結果、PCAcomp1と3の組み合わせ、PCAcomp2と3の組み合わせ、およびPCAcomp1,2,3の組み合わせで、コントロール群と子宮体癌群を分類することができた。よって、血液検体における特定分子量間のタンパク質の質量分布のパターンについて、主成分解析を行うことにより、子宮体癌を検出可能であることが示された。
【0068】
【表2】
【0069】
また、上述した15種類のピーク群[6493Da(#1,2)、6487Da(#1,2)、3244Da、6691Da(#1,2)、6684Da(#1,2)、3343Da(#1,2)、19318Da、5625Da、9370Da、及び、28165Daの分子量分布中心を示すピーク群]のみを使用して、上記と同様の主成分解析を行った。その結果、この場合においても、コントロール群と子宮体癌群を分類することができた。
【0070】
Classification解析
Classification解析は、すでに分類されている対象を新しい基準を用いて分類する方法であり、一般的には、分類されている対象によりルールを構築するステップと、分類されていない対象を当該ルールに照合して分類するステップに分かれる。本実施例の場合は、Biomarker Patterns Software version5.0を用いてClassification解析を行った。具体的には、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)を基準として、コントロール群と子宮体癌群とを分類するルールを構築した。
【0071】
1)コントロール群と子宮体癌群の2群解析によるP値が0.05以下のピークからノイズピークを除いたCHCA条件のみを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークは、シングルマーカー解析時にCandidate Peakに選ばれているMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0072】
2)コントロール群と子宮体癌群の2群解析によるP値が0.05以下のピークでノイズピークを除いた全試験条件の701ピークを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークは、シングルマーカー解析時にCandidate Peakに選ばれているMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0073】
3)上記の15種類のCandidate Peakのみを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークはMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0074】
まとめ
上述したシングルマーカー解析及びマルチマーカー解析を行うことにより、子宮体癌群とコントロール群を分類分け可能であることが示された。これらの解析により、血液検体中のタンパク質における分子量1000〜30000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出することが可能であることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】シングルマーカー解析におけるデータ解析の流れを図式化して示した図面である。
【図2】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6493Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図3】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6493Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図4】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6487Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図5】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6487Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図6】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3244Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図7】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6691Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図8】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6691Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図9】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6684Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図10】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6684Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図11】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3343Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図12】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3343Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図13】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(HIGH)]とpH5の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の19318Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図14】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の5625Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図15】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の9370Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図16】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の28165Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出手段、より詳細には、子宮体癌に対する特異的腫瘍マーカーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
子宮癌は、女性では、胃癌、乳癌に次いで多い癌であり、子宮頸癌と子宮体癌に大別される。本発明に直接的に関連する子宮体癌は、子宮癌の中でも比較的発症頻度の低い癌として知られていたが、近年、その頻度が急激に高くなっていることが問題視されている。
【0003】
子宮体癌は、子宮体部に発生する癌で、広義には、子宮内膜に発生する子宮内膜癌と、子宮筋に発生する子宮肉腫の両者を含むが、一般的には子宮内膜癌を意味するものである。本発明では、子宮内膜癌を子宮体癌として定義する。
【0004】
子宮体癌の初期症状は、不正性器出血(特に閉経期後)が挙げられるものの、比較的緩慢であり、早期発見が難しい癌の一つである。
【0005】
子宮体癌の診断としては、子宮内膜細胞診検査、子宮内膜組織検査、子宮内膜全面掻爬・子宮鏡検査、超音波・CT・MRI等による画像診断が、必要に応じて組み合わせて行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌の診断手段のうち、近年極めて有力な手段となりつつあるものとして、いわゆる腫瘍マーカーが挙げられる。腫瘍マーカーは、特定の腫瘍の存在に対応して、血液中や尿中において特徴的な挙動を示す生体物質である。腫瘍マーカーの定量を行い、その定量値を指標とすることにより、特定の腫瘍の存在を検出することができるので、腫瘍マーカーは、その簡便性から、当該特定腫瘍の早期発見に大いに貢献するものである。例えば、子宮頸癌等の腫瘍マーカーとして、SCC等が知られている。また、卵巣癌の腫瘍マーカーとして、CA125、α−フェトプロテイン、LDH、CEA、CA72-4、CA19-9等が知られている。
【0007】
しかしながら、子宮体癌に対する特異的な腫瘍マーカーは、現在のところ知られておらず、上述したように、既存の子宮体癌に対する検査手段は手軽とはいえない。このことが、子宮体癌の早期発見を妨げる原因の一つであることは明らかである。
【0008】
子宮体癌の早期発見は、患者の命を救うことになるのみならず、出産の望みをつなぐことになる。すなわち、子宮体癌の治療の原則は手術療法であることから、かつ、子宮全摘出+付属器(卵巣・卵管)切除+骨盤及び傍大動脈リンパ節郭清が原則であり、特に、閉経前の女性の場合、治療と同時に出産の望みが絶たれることになる。しかしながら、ごく初期段階(異型子宮内膜腺癌(Grade I)の臨床進行期Ia)であれば、子宮温存療法を選択することも可能であるが、この段階の子宮体癌を発見するためには、鋭敏な腫瘍マーカーによる診断の助けを借りることが必要となる。
【0009】
よって、本発明の課題は、未だ見出されていない子宮体癌の特異的腫瘍マーカーとなり得る生体要素を見出し、これを基とする子宮体癌を検出する手段を提供することにある。
【0010】
本発明者は、この課題の解決に向けて検討を重ねた結果、驚くべきことに、特定の血中タンパク質を指標とすることにより、被験者の子宮体癌を、極めて高い精度で検出することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌(本発明では子宮内膜癌を意味するものである)を検出する、検出方法(以下、本検出方法ともいう)を提供する発明である。
【0012】
上述したように、現在のところ子宮体癌に対する特異的な腫瘍マーカーは未だ見出されておらず、本発明は、子宮体癌の早期発見に大いなる貢献をすることが期待される。
【0013】
血液検体とは、被験者から採取された血液又はその処理物のことを意味するものであり、動脈血であっても、静脈血であってもよいが、通常は、静脈血、特に、末梢静脈血を用いる。また、本発明にて用いる血液検体は、真空採血又はシリンジ採血等により、常法により全血を採取することができる。本検出方法においては、全血、血漿、及び、血清のうち、血清を用いることが好適である。また、通常の血清に対してさらに前分画を行い、これを試料として用いることにより、いっそう検出感度を上げることができる。かかる前分画は、例えば、陰イオン交換固相担体で血清を処理することにより行われる。
【0014】
上記質量分布の測定には、タンパク質の質量分析が可能な装置又はシステムであれば、特に制限なく使用できる。例えば、四重極型質量分析計、飛行時間型質量分析計、四重極イオントラップ質量分析計、フーリエ変換型イオンサイクロトロン型質量分析計等の装置や、プロテインチップと飛行時間型質量分析計及び測定・解析に使用するソフトウエアがインストールされたコンピュータが一体となったプロテインチップシステム等を用いることができる。好適には、飛行時間型質量分析計やプロテインチップシステムを用いることが可能であり、特に好適には、Ciphergen社製のプロテインチップシステムを使用することができる。当該社製のプロテインチップシステムは、固相担体に捕捉された血中タンパク質に対してレーザー光線を照射することにより、当該血中タンパク質をイオン化した状態で当該固相担体から脱離させ、当該脱離タンパク質を、飛行時間型質量分析計にて検出することが可能である。
【0015】
上記質量分布の測定の前提として、血液検体を固相担体と接触させて、血中タンパクを当該固相担体に捕捉させることが必要である場合が多い。例えば、上記各プロテインチップシステムでは、タンパク質の解析に適した様々な性質を有する固相担体を主要な構成要素とするプロテインチップに血中タンパク質を捕捉させて、当該捕捉タンパク質に対して、各々特有の原理による質量分析を行うことにより、所望の測定を行うことができる。ここで用いられる固相担体としては、疎水性固相担体、陽イオン交換型固相担体、陰イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体、順相型固相担体、逆相型固相担体等の発現解析に適した担体を挙げることができる。また、特定の結合分子、例えば、活性化型分子、抗体、レセプタータンパク質、核酸等を固相化したアフィニティー担体を、特異的な結合の解析を行うために用いることもできる。これらの中でも、発現解析用の固相担体、すなわち、疎水性固相担体、陽イオン交換型固相担体、陰イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体、順相型固相担体、又は、逆相型固相担体を用いることが、本発明においては好適であり、これらの中でも、陽イオン交換型固相担体、金属イオン修飾固相担体として銅イオン修飾固相担体、又は、逆相型固相担体が、特に好適である。
【0016】
特に、分子量1000〜200000Daの範囲で連続したパターンを得るためには、これらの固相化担体に捕捉させた捕捉タンパク質は、イオン化させることによって当該固相化担体から分離した状態でピークパターンとして提供される。かかるイオン化方法としては、上述したレーザー光線照射によるイオン化法(例えば、matrix-assisted laser desorption ionization(MALDI)法)の他に、電子衝撃イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、フィールドデソープション(FD)法、高速原子衝突(FAB)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法等が挙げられる。
【0017】
本検出方法では、分子量1000〜200000Daの範囲において、血中タンパク質のピークを連続的に解析して、この連続的な解析により得られたピークパターンを、子宮体癌罹患型のパターンと、健常人(少なくとも、子宮体癌には罹患していないことを意味する)型のパターンに分けて、被験者のピークパターンが子宮体癌罹患型のパターンに分類される場合に、子宮体癌陽性として検出を行うことができる。また、特に、解析の対象となる血中タンパク質の分子量の範囲を1000〜20000Da程度とすることも可能である。
【0018】
上記の分子量1000〜200000Daの範囲に存在する血中タンパク質のピークパターン全体に対して解析を行い、その結果により被験者の子宮体癌を検出することも可能であるが、子宮体癌の罹患者において特徴的な特定の血中タンパク質のピークに着目して解析を行うこともできる。着目すべき血中タンパク質の選択は、可能な限り子宮体癌罹患の検出精度が維持される組み合わせにて行うことが好適である。
【0019】
具体的には、下記(1)及び/又は(2)を行うことが、本検出方法の好適な態様として挙げられる。
【0020】
(1)被験者の血液検体中において、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも増加している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【0021】
これらの(1)の群にて表された質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質は、陽イオン交換型固相担体に血液検体を捕捉させて、当該捕捉タンパク質について質量分布解析を行うことにより測定することが好適である。
【0022】
(2)被験者の血液検体中において、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも減少している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【0023】
これらの(2)の群にて表された質量中心分布を実質的に有する血中タンパク質は、金属イオン修飾固相担体に血液検体を捕捉させて、当該捕捉タンパク質について質量分布解析を行うことで測定することが好適である。当該金属イオン修飾固相担体における修飾金属イオンは銅イオンであることが好適である。
【0024】
上記の特定の血中タンパク質の質量分布中心を規定する用語である「実質的に」とは、最大の測定誤差を考慮して規定するという意味を有している。具体的には、当該最大誤差は±0.2%である。本明細書において、特定の血中タンパク質を質量分布中心で示した場合、特に断らない限り、ここでいう「実質的」な数値を意味するものである。
【0025】
上記のように、特定の分子量範囲の血中タンパク質のピークパターン全体、又は、上記の個々のピークパターンに着目して解析する場合(シングルマーカー解析)、例えば、上述した機器(例えば、Ciphergen社製のプロテインチップシステム)を用いて、特定質量範囲の血中タンパク質の質量分布として総括的に把握することが可能である。また、同様に、上記の個々の血中タンパク質の存在、非存在、増加又は減少を把握することが可能である。特に、当該質量分布と子宮体癌の罹患の関係を関連付けたアルゴリズムを有するソフトウエアを介して、被験者の血液検体における血中タンパク質の質量分布情報を処理することにより、非常に簡便かつ正確に、被験者における子宮体癌の検出を行うことができる。この場合のデータ処理方法としては、例えば、単変量解析あるいは多変量解析(階層的クラスター解析、主成分解析又はClassification解析等)を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、特定の血中タンパク質を腫瘍マーカーとして、子宮体癌を高精度で検出し得る、子宮体癌の検出方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な形態を実施例として記載するが、かかる記載により本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
(1)血液検体
初期の被験者候補として、子宮体癌群26例(ステージI〜IV)と、健常人群25例について採血を行い、目視によるチェックとプロテインチップ[陽イオン交換チップ(CM10)]にてヘモグロビンピークを指標とした溶血チェックを行った(100 mM Sodium Acetate, pH4)。
【0029】
子宮体癌群は、再発・ケモ中の3例とステージIVの2例、そして健常人群との年齢の差を考慮し、最高齢の1例の計6例を除いた20例を選択した。健常人サンプルは40代の中からヘモグロビンの影響が認められた2例と、子宮体癌群サンプルとの年齢の差を減少させるため、若年齢の方から3例の計5例を除いた20例を選択した。
【0030】
このようにして選択された子宮体癌群と健常人群のそれぞれ20例の腕末梢静脈血管からの採血を行い、常法により血清検体とした。当該血清検体は、一旦、凍結状態として、氷上で融解し、20000xgにて10分間遠心した後、上清を回収した。前分画は96ウェルフォーマットフィルタープレート上で処理し、全ての上清の回収工程を、DPC Micromix 5 shakerを搭載したBiomek2000 Laboratory Work Station(Beckman)を用いて行った。このようにして、上清として得られた血清サンプルに、20μLに変性バッファー、U9(9M urea, 2%CHAPS, 50mM Tris-HCl, pH9)30μLを加え、4℃で20分間振とうした。次いで、Bio Sepra Q Ceramic HyperDF(陰イオン交換樹脂)は50mM Tris-HCl,pH9にて前もって平衡化し、50% slurryに調製した。このレジン180μLを、フィルタープレートの各ウェルに加え、U1バッファー(U9バッファーを50mM Tris-HCl, pH9にて9倍希釈したもの)200μLで3回、平衡化を行った。上記のU9で変性させた血清サンプルをレジンに加え、サンプルウェルをΜLバッファー50μLで共洗いし、併せてレジンに加え、4℃にて30分間振とうした後、非吸着画分を回収し、50mM Tris-HCl, pH9, 0.1%OGP 100μLをレジンに加えた。この洗浄液を回収し、非吸着画分と合わせ、Fraction1とした。この後、pH7,5,4,3の段階的なpH勾配によってタンパク質を溶出させた(各溶出バッファー, 100μL×2)。なお、この段階的なタンパク質溶出工程のうち、pH7における溶出は、溶出バッファー(50mM HEPES with 0.1% OGP pH7)にて行い、pH5における溶出は、溶出バッファー(100mM NaAcetate with 0.1% OGP pH5)にて行い、pH4における溶出は、溶出バッファー(100mM NaAcetate with 0.1% OGP pH4)にて行い、pH3における溶出は、溶出バッファー(50mM NaCitrate with 0.1% OGP pH3)にて行った。最後に、レジンに強固に結合したタンパク質を有機溶媒(33.3% isopropanol/16.7% acetonitrile/0.1% trifluoracetic acid)で溶出した。
【0031】
(2)プロテインチップへの試料の吸着
プロテインチップに搭載された固相担体としては、陽イオン交換樹脂(CM10)(結合・洗浄バッファー:100mM NaAcetate pH4)、同(結合・洗浄バッファー:50mM HEPES pH7)、銅イオン修飾担体(IMAC30)(結合・洗浄バッファー:50mM NaPhosphate, pH7.0, 0.5M NaCl)、及び、逆相担体(H50)(結合・洗浄バッファー:50mM HEPES pH7)を用いた。すべての条件で、シナピン酸 (sinapinic acid:SPA)とCHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)の2種をマトリクス分子として使用した。また、分注等の操作は、全てBiomek2000(Beckman)を用いて行った。
【0032】
陽イオン交換チップ(CM10)
陽イオン交換基(Carboxymethyl基)を有するCM10チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、結合・洗浄バッファー(100mM Sodium Acetate, pH4と100mM Sodium Acetate, pH7の2種類を使用)を150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。この操作を2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、チップ表面を洗浄した。これを3回繰り返して非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で2回脱塩処理を行った。チップは風乾した後に50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)、あるいは、50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)を、1μL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0033】
銅イオン修飾チップ(IMAC30)
銅イオンをチップ表面に固定化するため、nitrilotriacetic acid基を有するIMAC30チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、100mM CuSO4を50μL/spot添加し、10分間室温にて振とうした後に、200μL/spotのMilliQ水で2分間・2回洗浄、さらに0.1M Sodium Acetate, pH4を50μL/spot添加し、5分間室温にて振とうした後に、200μL/spotのMilliQ水で2分間洗浄を行った。
【0034】
次に、結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。この操作を2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを、結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。
【0035】
結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、チップ表面を洗浄した。これを3回繰り返して非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で脱塩処理を行った。チップは風乾した後に、50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)、あるいは、50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)を、1μL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0036】
逆相チップ(H50)
炭素原子数6〜12のアルキル基を有するH50チップ(サイファージェン・バイオシステムズ社)に、結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、5分間室温にて振とうし、当該バッファーを取り除いた。これを2回繰り返し、チップ表面を平衡化させた。次に、各フラクション10μLを、結合・洗浄バッファー90μLに加え(10倍希釈)、30分間室温にて振とうしながらサンプル中のタンパク質をチップ表面に吸着させた。結合・洗浄バッファーを150μL/spot添加して、チップ表面を洗浄、非吸着成分を取り除いた後に、200μL/spotのMilliQ水で脱塩処理を2回行った。チップは風乾した後に50%飽和シナピン酸(sinapinic acid:SPA)あるいは50%飽和CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)をlμL/spot添加後、風乾を行った。この添加・風乾の操作を2回繰り返した。
【0037】
(3)測定・データ解析
プロテインチップは、サイファージェン社のプロテインチップリーダーModelPBSIICにより測定を行った。データ取得はProteinChip Software version3.2およびCiphergenExpressTMData Manager version3.0により行った。照準測定範囲は、低分子領域データとして3000-10000m/z、高分子領域データとして10000-30000m/z、最高測定分子量は、低分子領域データとして100000m/z・高分子領域データとして200000m/zとした。1サンプルあたり2点アッセイを行い、ピーク強度の平均値で解析を行った。
【0038】
データ解析は、CiphergenExpressTMDataManager version3.0より行った。測定されたスペクトルからベースライン補正を行った後、分子量校正を行った。分子量校正に用いたタンパク質は表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、Total Ion Current(TIC)Normalizatioにより正規化処理を行った。解析対象はSignal/Noise(S/N)が2より大きいピークとし、サンプル間でのピークパターン比較、群間でのピーク強度の値を用いたu-検定(p値による解析)を行った。
【0041】
マルチマーカー解析としては、階層的クラスター解析、主成分解析(CiphergenExpressTMDataManager version3.0)、Biomarker Patterns Software version5.0を用いたClassification解析をおこなった。
【0042】
(4)結果
(A)シングルマーカー解析
データ解析の流れを図1に示した。まず、上述のように、S/N>2を示した9175ピークを対象にして単変量解析(Mann-Whitney u-test)を行い、p値<0.05の1436ピークを選択した。次に、これらの中からノイズや個体差によるピークを取り除き、マーカー候補とした。
【0043】
子宮体癌群サンプルで強度が増加しているピーク
子宮体癌群サンプルで、健常人群サンプルに比べて強度が増加しているピークとして、陽イオン交換チップにて捕捉され得る、質量中心が、6493Da(6493Da#1:pH7の緩衝液で平衡化した陽イオン交換チップにて捕捉されたもの。6493Da#2:pH4の緩衝液で平衡化した陽イオン交換チップにて捕捉されたもの。以下、#1と#2は同様の意味で用いる。)6487Da(#1,#2)、3244Da、6691Da(#1,#2)、6684Da(#1,#2)、3343Da(#1,#2)、及び、19318Da、のピークに該当する強度の増加が認められた。
【0044】
(a)6493Daタンパク質(図2〜3)
図2は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6493Daのタンパク質(6493Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図3は、図2に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6493Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6493Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0045】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6493Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0046】
(b)6487Daタンパク質(図4〜5)
図4は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6487Daのタンパク質(6487Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図5は、図4に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6487Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6487Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0047】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6487Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0048】
(c)3244Daタンパク質(図6)
図6は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が3244Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、3244Daタンパク質が有意に増加していることが、当該図面において明確に示されている。
【0049】
よって、pH7の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る3244Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
(d)6691Daタンパク質(図7〜8)
図7は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6691Daのタンパク質(6691Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図8は、図7に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6691Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6691Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0050】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6691Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0051】
(e)6684Daタンパク質(図9〜10)
図9は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が6684Daのタンパク質6684Da#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図10は、図9に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(6684Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plot とROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、6684Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0052】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る6684Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0053】
(f)3343Daタンパク質(図11〜12)
図11は、上記のpH9のバッファーを用いて調製したFr1画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が3343Daのタンパク質(3343#1)量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。また、図12は、図11に示した系において、結合・洗浄バッファーをpH4の結合・洗浄バッファーに代えて捕捉されたタンパク質(3343Da#2)についての結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。両系とも、子宮体癌群において、3343Daタンパク質が有意に増加していることが、これらの図面において明確に示されている。
【0054】
よって、pH7又はpH4の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る3343Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0055】
(g)19318Daタンパク質(図13)
図13は、上記のpH7のバッファーを用いて調製した画分を、陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(HIGH)]とpH5の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が19318Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、19318Daタンパク質が有意に増加していることが、当該図面において明確に示されている。
【0056】
よって、pH5の緩衝液で平衡化された陽イオン交換チップに捕捉され得る19318Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが、明らかになった。
【0057】
以上、図2〜13に示したように、子宮体癌群における、陽イオン交換チップにて捕捉され得る、質量中心が、6493Da(#1,#2)、6487Da(#1,#2)、3244Da、6691Da(#1,#2)、6684Da(#1,#2)、3343Da(#1,#2)、及び、19318Da、のピークは、それぞれ有意差をもって、コントロール群よりも強いピークとして認められた。この結果より、これらのピークに相当する血中タンパク質のうち1種以上を選んで、そのピーク(血中存在量)の増大を、標準値(健常人におけるピーク値)との比較において検出指標とすることにより、極めて鋭敏に子宮体癌を検出することが可能であることが判明した。これらのうち、3343Daタンパク質と、6684Daタンパク質と、6691Daタンパク質では、#1と#2の双方とも、P値<0.000001と極めて高い有意差を示した。
【0058】
子宮体癌群サンプルで強度が減少しているピーク
子宮体癌群サンプルで、健常人群サンプルに比べて強度が減少しているピークとして、質量中心が、5625Da、9370Da、及び、28165Daのピークに、該当する強度の減少が認められた。
【0059】
(a)5625Daタンパク質(図14)
図14は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が5625Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、5625Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0060】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る5625Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0061】
(b)9370Daタンパク質(図15)
図15は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が9370Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、9370Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0062】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る9370Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0063】
(c)28165Daタンパク質(図16)
図16は、銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の質量分布中心が28165Daのタンパク質量の分布を、コントロール(健常人)群と子宮体癌群との間で比較した結果を示した図面(Group box and whiskers plotとROC plot)である。子宮体癌群において、28165Daタンパク質が有意に減少していることが、当該図面において明確に示されている。
【0064】
よって、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る28165Daタンパク質は、本検出方法において子宮体癌のマーカーとして用いることが可能であることが明らかになった。
【0065】
以上図14〜16に示したように、子宮体癌群における、銅イオン修飾チップにて捕捉され得る、質量中心が、5625Da、9370Da、及び、28165Daのピークは、それぞれ有意差をもって、コントロール群よりも弱いピークとして認められた。この結果より、これらのピークに相当する血中タンパク質のうち1種以上を選んで、そのピーク(血中存在量)の減少を、標準値(健常人におけるピーク値)との比較において検出指標とすることにより、極めて鋭敏に子宮体癌を検出することが可能であることが判明した。
【0066】
(B)マルチマーカー解析
階層的クラスター解析
階層的クラスター解析とは、未だ分類されていない対象を特定の基準にて分類する方法であり、通常、対象間の類似度により分類される。本実施例においては、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)を基準として、コントロール群と子宮体癌群からなる上述した全40検体を2群解析した。その結果、コントロール群と子宮体癌群が明確に分類分けされた。よって、血液検体における特定分子量間のタンパク質の質量分布のパターンについて、階層的クラスター解析を行うことにより、子宮体癌を検出可能であることが示された。
【0067】
主成分解析
主成分解析は、複数変数のデータのばらつき傾向から少数の合成された新たな変数(主成分)を求め、これらの主成分を用いて、未だ分類されていない対象を分類する方法である。本実施例の場合、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)から、表2に示すPercent varianceの高い上位3つの主成分1(PCAcomp1)、主成分2(PCAcomp2)、主成分3(PCAcomp3)が新たに合成され、これらを組み合わせて解析を行った。各主成分において寄与率(Importance)の高いピークを上位10までリストアップした(表2)。その結果、PCAcomp1と3の組み合わせ、PCAcomp2と3の組み合わせ、およびPCAcomp1,2,3の組み合わせで、コントロール群と子宮体癌群を分類することができた。よって、血液検体における特定分子量間のタンパク質の質量分布のパターンについて、主成分解析を行うことにより、子宮体癌を検出可能であることが示された。
【0068】
【表2】
【0069】
また、上述した15種類のピーク群[6493Da(#1,2)、6487Da(#1,2)、3244Da、6691Da(#1,2)、6684Da(#1,2)、3343Da(#1,2)、19318Da、5625Da、9370Da、及び、28165Daの分子量分布中心を示すピーク群]のみを使用して、上記と同様の主成分解析を行った。その結果、この場合においても、コントロール群と子宮体癌群を分類することができた。
【0070】
Classification解析
Classification解析は、すでに分類されている対象を新しい基準を用いて分類する方法であり、一般的には、分類されている対象によりルールを構築するステップと、分類されていない対象を当該ルールに照合して分類するステップに分かれる。本実施例の場合は、Biomarker Patterns Software version5.0を用いてClassification解析を行った。具体的には、P値が0.05以下のピークのうちノイズピークを除いた全試験条件の701ピークの高さ(当該ピークに相当するタンパク質の存在量)を基準として、コントロール群と子宮体癌群とを分類するルールを構築した。
【0071】
1)コントロール群と子宮体癌群の2群解析によるP値が0.05以下のピークからノイズピークを除いたCHCA条件のみを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークは、シングルマーカー解析時にCandidate Peakに選ばれているMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0072】
2)コントロール群と子宮体癌群の2群解析によるP値が0.05以下のピークでノイズピークを除いた全試験条件の701ピークを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークは、シングルマーカー解析時にCandidate Peakに選ばれているMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0073】
3)上記の15種類のCandidate Peakのみを使用してClassification解析を行った。最初の分類分けに使用されたピークはMW3343であった。このピークを用いて分類した結果、Specificity90%、Sensitivity95%の精度で診断可能であることが判明した。
【0074】
まとめ
上述したシングルマーカー解析及びマルチマーカー解析を行うことにより、子宮体癌群とコントロール群を分類分け可能であることが示された。これらの解析により、血液検体中のタンパク質における分子量1000〜30000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出することが可能であることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】シングルマーカー解析におけるデータ解析の流れを図式化して示した図面である。
【図2】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6493Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図3】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6493Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図4】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6487Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図5】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6487Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図6】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3244Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図7】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6691Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図8】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(LOW)]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6691Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図9】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6684Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図10】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の6684Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図11】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH7の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3343Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図12】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の3343Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図13】陽イオン交換チップ[CM10:マトリクス分子はSPA(HIGH)]とpH5の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の19318Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図14】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の5625Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図15】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の9370Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【図16】銅イオン修飾チップ[IMAC30:マトリクス分子はCHCA]とpH4の結合・洗浄バッファーで処理して測定を行った場合の28165Daのタンパク質を示すピークについて解析した結果を示す図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出する、検出方法。
【請求項2】
前記検出方法において、被験者の血液検体中のタンパク質における分子量の測定範囲が、1000〜20000Daである、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記検出方法において、前記質量分布のパターンの差異の検出手段として、単変量解析、あるいは、階層的クラスター解析、主成分解析及びclassification解析から選ばれる1種以上の多変量解析、を用いる、請求項1又は2記載の検出方法。
【請求項4】
前記検出方法において、下記(1)及び/又は(2)を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の検出方法。
(1)被験者の血液検体中において、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも増加している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
(2)被験者の血液検体中において、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも減少している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【請求項5】
前記検出方法において、項目(1)に係わる、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、陽イオン交換型固相担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項4記載の検出方法。
【請求項6】
前記検出方法において、6493Da、6487Da、6691Da、6684Da、及び、3343Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、pH4又はpH7の緩衝液にて平衡化された陽イオン交換型固相担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項5記載の検出方法。
【請求項7】
前記検出方法において、項目(1)に係わる血中タンパク質が、3343Da、6684Da、及び、6691Daからなる群の質量分布中心を実質的に有するタンパク質から選ばれる1種以上である、請求項4〜6のいずれかに記載の検出方法。
【請求項8】
前記検出方法において、項目(2)に係わる、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、金属イオン修飾担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項4〜7のいずれかに記載の検出方法。
【請求項9】
前記検出方法において、金属イオン修飾担体の金属イオンが銅イオンである、請求項8記載の検出方法。
【請求項10】
前記検出方法が、固相担体に捕捉された血中タンパク質に対してレーザー光線を照射することにより、当該血中タンパク質をイオン化した状態で当該固相担体から脱離させ、当該脱離タンパク質を、飛行時間型質量分析計にて検出することにより行われる、請求項1〜9のいずれかに記載の検出方法。
【請求項11】
前記検出方法において、血液検体が血清検体である、請求項1〜10のいずれかに記載の検出方法。
【請求項12】
前記検出方法において、血清検体が、陰イオン交換固相担体に対する接触処理がなされた血清検体である、請求項11記載の検出方法。
【請求項1】
被験者の血液検体中のタンパク質における分子量1000〜200000Daの範囲の質量分布と発現強度を測定し、当該質量分布と相対発現強度のパターンを、健常人におけるパターンと比較して見出される差異を指標として、当該被験者における子宮体癌を検出する、検出方法。
【請求項2】
前記検出方法において、被験者の血液検体中のタンパク質における分子量の測定範囲が、1000〜20000Daである、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記検出方法において、前記質量分布のパターンの差異の検出手段として、単変量解析、あるいは、階層的クラスター解析、主成分解析及びclassification解析から選ばれる1種以上の多変量解析、を用いる、請求項1又は2記載の検出方法。
【請求項4】
前記検出方法において、下記(1)及び/又は(2)を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の検出方法。
(1)被験者の血液検体中において、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも増加している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
(2)被験者の血液検体中において、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上を検出し、当該1種以上の血中タンパク質の量が健常人よりも減少している場合、これを当該被験者における子宮体癌の指標とする。
【請求項5】
前記検出方法において、項目(1)に係わる、6493Da、6487Da、3244Da、6691Da、6684Da、3343Da、及び、19318Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、陽イオン交換型固相担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項4記載の検出方法。
【請求項6】
前記検出方法において、6493Da、6487Da、6691Da、6684Da、及び、3343Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、pH4又はpH7の緩衝液にて平衡化された陽イオン交換型固相担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項5記載の検出方法。
【請求項7】
前記検出方法において、項目(1)に係わる血中タンパク質が、3343Da、6684Da、及び、6691Daからなる群の質量分布中心を実質的に有するタンパク質から選ばれる1種以上である、請求項4〜6のいずれかに記載の検出方法。
【請求項8】
前記検出方法において、項目(2)に係わる、5625Da、9370Da、及び、28165Daからなる群の質量分布中心を実質的に有する血中タンパク質から選ばれる1種以上が、金属イオン修飾担体に捕捉される性質を有するタンパク質である、請求項4〜7のいずれかに記載の検出方法。
【請求項9】
前記検出方法において、金属イオン修飾担体の金属イオンが銅イオンである、請求項8記載の検出方法。
【請求項10】
前記検出方法が、固相担体に捕捉された血中タンパク質に対してレーザー光線を照射することにより、当該血中タンパク質をイオン化した状態で当該固相担体から脱離させ、当該脱離タンパク質を、飛行時間型質量分析計にて検出することにより行われる、請求項1〜9のいずれかに記載の検出方法。
【請求項11】
前記検出方法において、血液検体が血清検体である、請求項1〜10のいずれかに記載の検出方法。
【請求項12】
前記検出方法において、血清検体が、陰イオン交換固相担体に対する接触処理がなされた血清検体である、請求項11記載の検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−57309(P2007−57309A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241114(P2005−241114)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(505317540)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(505317540)
【Fターム(参考)】
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