説明

孔性電極、固形酸化物燃料電池及び同製造方法

本発明は、一般的には、酸化物固形燃料電池における使用のための孔性電極に関し、当該電極は主にセラミック材料と電子導電性材料からなる。当該電極は、孔性セラミック材料を電子導電性材料に含浸することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、固形酸化物燃料電池(SOFC)及びそれらの製造方法に関する。特定すれば、発明は、孔性電極及びそれらを製造する方法に関し、電極は電子導電性材料を浸潤させた孔性マトリックスから形成されて孔性電極を形成することによる。電極は、例えばマトリックスを形成するために使用される酸化物と電子導電材料の酸化物の間の固体状態の反応を回避するのに十分低い温度にて製造することができる。
【0002】
関連技術の記載
固形酸化物燃料電池は、実行可能な高温燃料電池技術としての認識において成長してきた。液体電解質の使用に通常関連する金属の腐食の問題と電解質の管理の問題を排除する、液体の電解質は存在しない。むしろ、電池の電解質は、固形酸化物燃料電池の操作の間に通常は遭遇する高温環境を生き抜くことができる固形セラミック材料から主に作られる。約600℃より高い操作温度は、内部の改質を許容し、高価ではない材料による迅速なキネティクスを促進し、そして廃熱発電のため又はボトミングサイクルにおける使用のための高質な副産物の熱を生じる。固形酸化物燃料電池の高温は、しかしながら、その構成材料に対して厳格な要求を突き付ける。慣用の固形酸化物燃料電池の高い操作温度のため(約600から1000℃)、各々の電池コンポーネントを構成するのに使用される材料は、環境を参加して還元することにおける化学的安定性、接触材料の化学的安定性、導電性、及び熱機械的適合性により制限される。
【0003】
固形酸化物燃料電池(SOFC)中の電極は、通常、電解質酸化物を伴う電子導電性材料の複合物から製造される。例えば、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)から作られた電解質を用いると、慣用のアノードはNi−YSZ、セラミック−金属(サーメット)複合物である(Herle,J.V.,et al.,Eur.Ceram.Soc.,21(10−11),1855(2001);Li,Y.,et al.,Materials Science and Engineering B−Solid State Materials for Advanced Technology,86(2),119(2001);Lee,J.H.,et al.,Solid State Ionics,148(1−2),15(2002))。アノードにおいて孔性を保持すること及び電解質とのCTE(熱膨張(thermal expansion)の定数)適合性を提供することに加え、サーメット中のYSZはイオンが拡散する領域を膨張させ、三相の境界(TPB)の長さを増加させる。
【0004】
銅を含むアノードは、以前には、アノード製造において用いられる慣用の焼結温度よりも低い温度において、孔性YSZ層に銅の塩を浸潤させることにより製造されていた。CuOとCuOは、それぞれ1235℃及び1326℃において溶解するが、YSZ電解質の緻密化に必要な温度よりも低いので、CuOとYSZの混合された粉末の高温焼結によりCu−YSZサーメットを製造することは不可能であり、Ni−YSZサーメットを生産するための第1工程として通常は使用されるのと類似の方法である。Cu−YSZサーメットの製造のための別の方法は、よって、孔性YSZマトリックスを最初に製造して、次のプロセシング工程においてCuと酸化触媒の添加を行うように開発された(R.J.Gorte,et al.,Adv.Materials,12,1465(2000);S.Park,et al.,J.Electrochem.Soc.,148,A443(2001))。最終サーメット中のCu相が高度に結合されて(connected)いなければならないため、高金属負荷(high metal loadings)が必要であり;そして、それでさえも、アノード構造中の全てのCu粒子間の導電性は保証されない。
【0005】
SOFCカソードのために共通に使用される材料は、Sr−ドープされたLaMnO(LSM)の複合物である(Yan,J.W.,et al.,J.Electrochem.Soc.,149(9),A1132(2002);Koh,J.H.,et al.,Solid State Ionics,149(3−4),157(2002);Jiang,S.P.,et al.,Journal of Power Sources,110(1),201(2002);Barbucci,A.,et al.,Electrochimica Acta,47(13−14),2183(2002);Hart,N.T.,et al.,J.Power Sources,106(1−2),42(2002))。ちょうどNiサーメットを用いたときのように、LSM−YSZ複合物中のYSZは、カソード内でTPB領域を伸長させるために、イオンの移動のための経路を提供する。
【0006】
LSMやYSZの製造のように、酸化物の複合物の製造においては、絶縁相を導く固形状態の反応を避けるために、多大な注意を払わなければならない(Kindermann,L.,et al.,J.Electrochem.Soc.144,717(1997);Kamata,H.et al.,Mater.Res.Bull.30,679(1995);Stochniol,G.,et al.,J.Am.Ceram.Soc.78,929(1995);及びKostogloudis,G.C.,et al.,Solid State Ionics,135(1−4),529(2000))。一般に、2つの酸化物の相は別々に製作され、物理的に混合され、そして次に焼成される(Kim,J.D.,et al.,Solid State Ionics,143(3−4)379(2001);Choi,J.H.,et al.,Electrochimica Acta,46,867(2001))。
【0007】
焼成温度は、電極中のイオン導電成分を焼結させて電解質にするのに十分に高くなければならないが、この温度は固形状態の反応を妨ぐにのに十分に低くなければならない。LSM−YSZ複合物の場合、1250℃を超える焼成がLaZrを導くものとして認識されている(Takeda,Y.,et al.,Electrochemistry,68(10),764(2000);Mitterdorfer,A.,et al.,Solid State Ionics,111(3−4)185,(1998);Murata,K.,et al.,Ceram.Soc.Japan,110(7)618,(2002))。YSZ粉末は1100℃未満においてはかなり顕著な程度までに焼結しないので、酸化物複合物から最高の電極特性を達成するための条件は、むしろ限定される。事実、2つの酸化物の間に固形状態の反応が生じる温度よりも、YSZに関して焼結する温度が高いという事実のため、いくつかの酸化物複合物を製造することができない。
【0008】
他の刊行物に開示された様々な特徴、態様、方法、及び装置の利点及び欠点の本明細書における記載は、本発明を限定することを如何なる意味においても意図しない。事実、発明の特定の特徴は、本明細書に開示された特徴、態様、方法及び装置の何れか又は全てを保持したまま、特定の欠点を克服することができるかもしれない。
【0009】
発明の開示
高い燃料効率、高い電極電気導電性、高出力を保持し、且つ炭化水素を直接酸化することができる、固形酸化物燃料電池を提供することが望まれている。電極材料及びカソード材料、及び固形酸化物燃料電池内での使用のための電極材料及びカソード材料を製造する方法であって、当該材料が固形状態の反応を回避するように低い温度において製作できる方法を提供することも望まれている。
【0010】
よって、発明の一つの態様の一つの特徴は、高い燃料効率、高い電極電気導電性、高出力を保持し、且つ炭化水素を酸化することができる、固形酸化物燃料電池を提供することである。発明の態様の別の特徴は、孔性電極材料、電極材料を製造する方法、及び固形酸化物燃料電池を製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の様々な態様のこれらの特徴及び別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードであって、但し、孔性セラミックマトリックスは少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する孔を多数含むカソードが提供される。本発明の一つの態様の別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードであって、但し、約10%から約75%の範囲内の孔性を有するカソードが提供される。
【0012】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードであって、但し、孔性セラミックマトリックスが内部の孔壁により規定される多数の孔により規定され、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁が電子導電材料により被覆されている、カソードが提供される。
【0013】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックス及びSr−ドープされたLaCrO(LSC)を含む電極であって、但し、当該電極は本明細書に開示された方法により製造されて、本明細書に開示された物理特性を有する(例えば、孔サイズ、孔度、孔壁の被覆等)、電極が提供される。発明の一つの態様は、上記電極を含む固形酸化物燃料電池、当該電極を作成する方法、及び上記固形酸化物燃料電池を作成する方法も含む。
【0014】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードであって、但し、孔性セラミックマトリックス材料に、電子導電材料に対する前駆体を含浸し、そして、導電相が形成されるのに十分高い温度であるがセラミックマトリックスと電子導電材料の間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて上記混合物を加熱することにより上記カソードが製造された、カソードが提供される。
【0015】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、孔性セラミックマトリックスを形成すること、孔性セラミックマトリックス材料に、電子導電材料に対する前駆体を含む溶液を含浸し、そしてセラミックマトリックスと電子導電材料の間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて上記混合物を加熱することを含む、孔性カソードを作成する方法が提供される。
【0016】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、固形電解質、アノード材料、及び孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードを含む固形酸化物燃料電池が提供されるが、但し、孔性セラミックマトリックスは少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する孔を多数含む、固形酸化物燃料電池が提供される。
【0017】
本発明の一つの態様の別の特徴によれば、固形電解質、アノード材料、及び孔性セラミックマトリックス及び当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料を含むカソードを含む固形酸化物燃料電池が提供されるが、但し、約10%から約75%の範囲内の孔性を有する、固形酸化物燃料電池が提供される。
【0018】
本発明の一つの態様のさらに別の特徴によれば、少なくとも2つの向かい合わせの表面を有する孔性セラミックマトリックス材料を形成させ、当該表面の一つを、アノード材料に対する前駆体に接触させ、そして向かい合った表面を、カソード材料に対する前駆体に接触させることを含む、固形酸化物燃料電池を作成する方法が提供される。カソード材料は、イオン導電材料を含み、そして導電相が形成されるのに十分高い温度であるがセラミックマトリックスと電子導電材料の間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて、孔性イオン導電材料内のカソード前駆体を加熱することにより形成される。
【0019】
好ましい態様のこれら及び他の特徴及び利点は、付属する図面との関連において好ましい態様の詳細な説明が読まれたときに、より容易に明らかになる。
好ましい態様の詳細な説明
本明細書にて使用される用語は、特定の態様を記載するためのみのものであり、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。この開示を通して使用されるとおり、単数形の「a」、「an」及び「the」は、他に明確に文脈が指図しない限り、多数のレファレンスを含む。即ち、例えば、「固形酸化物燃料電池」に対する言及は、スタック中の多数のそのような固形酸化物燃料電池並びに単一の電池を含み、そして「カソード」に対する言及は、一つ又は多数のカソード及び当業者に知られているその均等物等に対する言及である。
【0020】
他に規定しない限り、本明細書にて使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者の一人により共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書にて記載されたのと類似又は均等なあらゆる方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用できるが、好ましい方法、装置、及び材料は今記載される。本明細書にて言及された全ての刊行物は、刊行物に報告されて且つ発明との本発明との関連において使用されるかもしれない様々なアノード、電解質、カソード及び他の燃料電池成分を記載し且つ開示する目的で引用される。以前の発明によるそのような開示より本発明が先であるとする権利を与えられないという許可として、本明細書中の何事も解釈されない。
【0021】
一般に、SOFCは、空気電極(カソード)、燃料電極(アノード)、及びこれらの2つの電極の間に提供される固形酸化物電解質から構成される。SOFCにおいては、電解質は固形形態にある。典型的には、電解質は、非金属セラミック、例えば密なイットリウム安定化されたジルコニア(YSZ)セラミックから作成され、電子の非導電体であって、有用な働きを実行するための外部回路を電子が通過するに違いないことを保証する。そうして、電解質は、電解質の反対側で電圧のビルドアップを提供する一方で、燃料とオキシダントガスを他方から単離する。アノードとカソードは一般に孔性であり、カソードはしばしばドープされた亜マンガン酸ランタン(例えば、LSM)、ドープされた鉄酸ランタン(LSF)か、又はドープされたコバルト酸ランタン(LSCo)である。固形酸化物燃料電池中では、水素又は炭化水素が共通に燃料として使用され、そして酸素又は空気がオキシダントとして使用される。
【0022】
本発明のSOFCは、当業界で開示された技術を用いて作成されたあらゆる固形電解質及びあらゆるアノードを含むことができる。本発明は、電解質又はアノードのために使用される何ら特定の材料に限定されないし、それらの各々の製造方法にも特に限定されない。本発明における使用のための特に好ましいアノードは、米国特許出願公開番号20010053471及び20010029231に記載されており、それらの開示はそれらの全体に関して本明細書にて引用により編入される。本発明における使用のための別の特に好ましいアノードは、発明により従い製造されるLSC/YSZ複合物アノードであり、より詳細に本明細書に記載される。
【0023】
類似の様式において、本発明は、SOFCの如何なるデザインにも特に限定されない。固形酸化物燃料電池のためのいくつかの異なるデザインが開発され、例えば、サポートされた管状のデザイン、セグメント化された直列電池(cell-in-series)のデザイン、モノリシックなデザイン、及び平坦なプレートのデザインを含む。これらのデザインの全ては刊行物に記録されており、例えば、Minh,”High−Temperature Fuel Cells Part 2:The Solid Oxide Cell,”Chemtech.,21:120−126(1991)に記載されたものである。
【0024】
管状のデザインは、通常、電極及び電解質層により外部を被覆された閉じた末端を有する(closed-end)孔性ジルコニアチューブを含む。このデザインの性能は、孔性チューブを通してオキシダントを拡散させる要求によりいくらか制限される。ウエスチングハウスは、ジルコニア電解質の膜及びジルコニア電解質の厚さを貫通するクロム酸ランタンの内部連絡を有する孔性のマンガン酸ジルコニア又はランタンストロンチウムのカソード支持体チューブを有する燃料電池エレメントを記載する多数の米国特許を有する。上記アノードは、作用性の(working)燃料電池3層を形成するように電解質上に被覆され、孔性ジルコニア支持体上の、完全な孔性カソード支持体又は孔性カソードのトップの上の、電解質膜を含む。セグメント化されたデザインは1960年代初期から提案されている(Minh et al.,Science and Technology od Ceramic Fuel Cells,Elsevier,p.255(1995))、支持体上の薄いバンド化された構造の中に配置された電池からなるか、又はベルアンドスピゴットデザインとしての自己支持構造としてなる。
【0025】
平坦デザインの多くは、自立構造で立つ電解質膜を利用するものが記載されてきた。電池は典型的には、電極−電解質−電極ラミネートを提供するように、電解質シートの各側面に一つの電極を適用することにより、形成される。典型的には、これらの単一の電池が次に連続してスタックされて接続されることにより、電圧をつくる。モノリシックなデザインは、複数電池(multi-celled)か又は「ハニカム」タイプの構造を特徴的に有し、高い電池密度及び高い酸素導電性の利点を表す。当該セルは、様々な電極、導電性の内部連絡及び電解質層を取り込む波形のシート及び平坦なシートの組み合わせにより規定され、ガス送達チャンネルのために1−2mmの電池空間を典型的には有する。米国特許番号5,273,837は、熱ショック耐性燃料電池のための薄いシートフォーム中の焼結された電解質組成物を記載する。従順な(compliant)電解質構造を作成する方法は、粉末化セラミック及び結合剤を含む前駆体シートを予め焼結することにより、薄くて柔軟な焼結された多結晶の電解質シートを提供することを含む。燃料電池回路のさらなる成分は、シートに直接結合された金属、セラミック、又はセラミック電流導電体を含む予め焼結されたシート上に結合され、米国特許第5,089,455号に記載されたとおりである。米国特許第5,273,837号は、電解質の隣のシートのカソードとアノードが互いに向き合い、そして電池が燃料電池集合体のホットゾーン内の厚い内部連絡/分離機に接続していないデザインを記載する。これらの薄くて柔軟な焼結された電解質を含む装置は、薄い電解質を通しての低い電気抵抗損失のため、並びに焼結された状態におけるそれらの柔軟性及び丈夫さのため、優れている。電気化学電池の構築に対する別のアプローチは、米国特許第5,190,834号Kendallに開示されている。その特許の中の電極−電解質集合体は、電解質材料の平行バンドに結合された内部連絡材料の閉口な層紋又はストライプの形成された複合物電解質膜上に配置された電極を含む。イットリウム安定化された電解質に結合させたコバルト酸ランタン又は亜クロム酸ランタンの内部連絡が示唆される。本発明のSOFCは、管状の電池、モノリシック電池、平坦プレート電池等であるにもかかわらず、所望のデザインを提供する。本明細書に提供されたガイドラインを用いると、当業者は、あらゆる所望のデザイン構造を有する発明のカソードを含むSOFCを組み立てることができる。
【0026】
発明は、好ましくは、孔性カソード、当該カソードを製造する方法、及び当該カソードを含む固形酸化物燃料電池を含む。発明のカソードは、イオン導電体である孔性セラミックマトリックスを含み、しばしば電解質と同じ材料であり、電子導電性材料が孔性マトリックス内の少なくとも一部の中に分散する。孔性セラミックマトリックスは、少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する孔を多数含む。発明は、カソードが約10%から約75%の範囲の孔度を有するようなカソードも含む。発明は、さらに、孔性セラミックマトリックス及び孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電性材料を含むカソードを含み、孔性セラミックマトリックスは内部の孔壁により規定される多数の孔により規定され、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁は電子導電性材料により被覆されている。
【0027】
発明は、好ましくは、孔性電極、当該電極を作成する方法、及び電極を含む固形酸化物燃料電池も含む。発明の電極は、イオン導電体である孔性セラミックマトリックスを含み、電解質のために使用されるのと同じ材料であり、そしてLSCが孔性マトリックス内の少なくとも一部に分散される。孔性セラミックマトリックスは、少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する多数の孔を含む。発明は、約10%から約75%の範囲の孔度を有する上記電極も含む。発明は、さらに、孔性セラミックマトリックス及び孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散したLSCを含む電極を含み、孔性セラミックマトリックスは内部の孔壁により規定される多数の孔により規定され、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁はLSCにより被覆されている。
【0028】
発明は、孔性セラミックマトリックスを形成することにおける使用のためのセラミック材料の何らかの種類に特別に制限されない。カソードは、カソード電子導電性材料に含浸された安定化YSZからなるのが好ましい。発明における使用のための好ましいセラミックは、限定ではないが、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及び他の電解質材料を含む。発明のカソードにおける使用のための電子導電性材料は、あらゆる公知のカソード材料、並びにあとに発見されるあらゆるカソード材料を含む。発明における使用に好ましく適したカソード材料は、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,LaCrO又は金属例えばAgを含む複合体を含む。特に好ましいカソード材料は、Sr−ドープされたLaMnO(LSM)である。カソード中へ孔性YSZと共に製剤化される場合、これらの電子導電性材料は、好ましくは、式La0.7Sr0.3CrO3−δ/YSZ、La0.8Sr0.2MnO3−δ/YSZ、La0.8Sr0.2FeO3−δ/YSZ、及びLa0.8Sr0.2CoO3−δ/YSZを有する。
【0029】
発明は、アノードに有用な如何なる特定の材料にも限定されない。例えば、ニッケル、セリア、Sr−ドープされたLaCrO,(LSC)ドープされたSrTiO,銅、コバルト、鉄、銀、又はマグネシウムを、セラミック材料、例えば発明のカソードを組み立てることにおける使用のための上記のセラミック材料の何れかと共に使用してよい。特に好ましいアノードは、銅/セリア/YSZアノードであり、炭化水素の改質なしに直接に炭化水素を酸化できる。
【0030】
カソード、アノード及び又は両方を組み立てた後に、アノードは、電極を炭化水素に暴露することにより形成される炭素様被覆をそれが含むように、処理されてよい。好ましくは、アノードをブタン又は大きな炭化水素に暴露し、メタンへの暴露に比較して優れた増強を提供する。アノード材料は、好ましくは、約500から約900℃、より好ましくは約600から約800℃の範囲内の温度にて炭化水素に暴露される。炭化水素への暴露は、概して、約1分から約24時間、より好ましくは約5分から約3時間、そしてもっとも好ましくは約10分から約1時間30分、継続することができる。アノード材料は1回又は数回炭化水素に暴露することができる。
【0031】
アノード上に形成された炭素の量は、平衡に達し、そして結果的に、形成された炭素は電極を完全に被覆しないため、それを無効にする。如何なる理論にも拘束されることを意図しないが、少量の炭化水素残基は、アノードの表面上に被覆され、そして金属酸化物又は導電性酸化物が電極複合物の中に含まれる場合に電子導電性粒子間のギャップを満たすか、又はこれらの他の成分の不在下では導電性フィルムを提供すると、本発明者らは信じる。図9(b)に示されるとおり、導電性粒子と電極表面の間にはギャップが存在するかもしれず、低下した導電性を導くかもしれない。炭化水素、例えば、メタン、ブタン等による処理の後に、形成される炭化水素残基はギャップを埋めて、導電性を改善することにより、電極表面からの電子の導電性粒子への流れを許容する。
【0032】
電極上に任意に形成され得る炭素様被覆は、好ましくは、多環芳香族化合物であるか、より好ましくはおよそ2から6の融合したベンゼン環を含む融合したベンゼン環である。これらの多環芳香族化合物は、Ni,Co及びFeをカソード中で使用するときに概して形成されるグラファイト炭素繊維とは異なる(Toebes,M.L.,et al.,Catalysis Today,2002)。多環芳香族化合物は、700℃において、低いが限定された蒸気圧を有する。
【0033】
ほんの少量の炭素様残基は、見かけ上は、導電性を実質増加させるのに十分である。発明者らは、残基の化学的形態が何であるかもしれないかは正確に知らないが、性能を顕著に増強するのに必要な量は、電極の全重量の、約10重量%未満か、好ましくは約5重量%未満か、そしてもっとも好ましくは約2重量未満に相当するらしい。残基に関する密度が炭化水素に関して典型的な値である約1g/cmと推定されるなら、この残基の容量画分(volume fraction)は、電極の体積の5%未満である。残基に関する密度がグラファイトのそれに類似であると推定されるなら、残基のにより占められる体積はさらに低くなるはずである。
【0034】
炭素様被覆を形成させるように電極を炭化水素で処理することの別の利点は、さらに低い量のイオン又は電子導電材料しか必要ないことである。比較すると、金属含有サーメットアノード及びカソードに関しての最小金属含有量は、約30体積%であると報告されている(Dees,D.W.,et al.,J.Electrochem.Soc.,134,2141(1987))。
【0035】
発明において好ましくは、電極中の電子導電性材料の量が、電極の全体積の約1重量%から約60重量%、より好ましくは約5重量%から約50重量%、そしてもっとも好ましくは約15重量%から約50重量%である。本発明においてもっとも好ましくは、LSCを電極(好ましくはアノード)中の電子導電性材料として用いる場合、量は、カソードの全体積の、約20から約40重量%、さらにより好ましくは約35重量%である。また、本発明においてもっとも好ましいのは、LSMを電子導電性材料として用いる場合、量は、カソードの全体積の、約20から約55重量%、さらにより好ましくは約48重量%である。
【0036】
本発明の電極は、慣用の電極と比較して、はるかに低い濃度の電子導電性材料において、電気導電性を増加させた。さらに、発明の電極は、慣用の電極と比較して、はるかに低い濃度において濾過性挙動を呈するが、導電相がランダムではないが酸化物マトリックスの孔をコートするという事実によると信じられる。慣用の方法に従い製造されたLSC/YSZ(例えば、粉末を共に混合して焼結させる−方法a)、及び本発明に従い製造されたLSC/YSZ(例えば、孔性YSZ層を形成させ、当該層にカソード材料の溶液を浸し、そして次に加熱する−方法b)の破断面の微小構造を、図8及び9(b)に示す。YSZとLSCの粒子は、慣用の方法aに関して互いに完全に分散した。これらの電極に関しては、導電性は低イオン導電粒子負荷においてほとんどYSZのそれと同一であり、そして濾過性挙動は相対的に高い濃度のイオン導電性材料においてのみ生じることになる。
【0037】
如何なる理論にも拘束されることを意図しないが、発明者らは、濾過性挙動が複合物の電極を通した2つの導電性機構:(i)アノードとしてのLSCを通した電気回路、又はカソードとしてのLSMを通した電子パス;及び(ii)YSZとLSC又はLSMの両方を通したイオンパス、の存在により説明できると信じる。濾過閾値以下では、複合物の導電性はYSZのそれと類似していることから、YSZ相を通してイオン導電パスのみを示す。濾過閾値以上では、導電性は多大に増強され、LSC又はLSMペロブスカイトを通したイオン導電性から電子導電性への機構における変化に対応する。発明の電極(方法b)に関しては、LSC又はLSM溶液を、孔性YSZの面を通して吸収させることができる。導電相のナノメーター粒子層又は薄層フィルムが焼結後にYSZの表面に沿って相対的に均質に形成できることから、低濃度においてさえも、改善されたLSC又はLSM粒子対粒子接触をもたらす。よって、連続する導電性ペロブスカイト相は導電性を増加させることができ、そして導電性に関する濾過閾値が低負荷において見いだすことができる。慣用の電極(方法a)に関しては、そのYSZとの混合のために、濾過閾値ははるかに高い濃度のイオン導電性材料においてである。
【0038】
発明の電極は、好ましくは、約0.5μmよりも大きな孔サイズを有する多数の孔を有する孔性構造を有する。全ての孔が約0.5μmより大きな孔サイズを有する必要はないが、50%を超えるか、好ましくは60%を超えるか、そしてもっとも好ましくは75%を超える孔が約0.5μmの孔サイズを有することが好ましい。孔サイズは、孔の長い方の寸法(dimension)の距離を測定することにより決定される。本発明において好ましいのは、多数の孔が約0.75μmより大きな、より好ましくは約1μmより大きな、そしてさらにより好ましくは約1.5μmより大きな孔サイズを有することである。
【0039】
イオン導電性材料を分散させる前の電極の孔度は、一般に、約55から約75%である。孔度は、水中に焼結産物を浸し、そして浸す前の重量と浸した後の重量を比較することにより測定され、Kim,H.,et al.,J.Am.Ceram.Soc.,85,1473(2002)に記載されているとおりである。違いが孔中に分散した水の重量を明らかにし、密度で割ると、孔の体積が明らかになる。次に、孔の体積を焼結された産物の全体積により割ることで、孔度が簡単に測定することができる。もっとも好ましくは、電子導電性材料を分散させる前の焼結された電解質産物の孔度が、約60%である。
【0040】
イオン導電性材料を分散させた後の電極の孔度は、概して約10%から約75%、より好ましくは約10%から約40%、そしてもっとも好ましくは約12%から約30%であり得る。電極の孔度は、一部には、使用された電子導電性材料の量に依存し、図1に示されるとおりである。
【0041】
発明は、さらに、上記の電極を作成する方法を含む。当該方法によれば、電解質材料、もっとも好ましくはイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)の粉末を形成させ、そして、鋳型にテープを巻く(tape casting)ことにより、2つの層の、YSZの緑のテープ(一方の層がカソード、そして他方が電解質)が形成されることが第一に好ましい。粉末は、分散剤、結合剤、孔形成剤、及び水と混合することができる。2層の緑のテープを、次に、好ましくは、約1,200から約1,800℃、好ましくは約1,350から約1,650℃、そしてもっとも好ましくは約1,500から約1,550℃濃度の範囲の温度において焼結させることにより、第1の層の表面近くにYSZの孔性マトリックスを、そして第2層からYSZの緻密層を形成させる。この様式において2つの層のテープを焼結させることは、約400μmから約800μm厚、より好ましくは約600μm厚の孔性層により支持された約5から約200μm厚の緻密側面を有するYSZウエハース(wafer)をもたらす。好ましい方法においては、3層のYSZ構造が上記の方法を用いて組み立てられ、孔性の、緻密な孔性マトリックスが形成される。緻密な電極層は、好ましくは可能な限り薄く組み立てられるが、何故ならば、電解質の厚さが制限し得るからである。外部孔性電極層(カソードとアノード)の最良の厚さは、約40から約50ミクロンの範囲内であってよい。
【0042】
電極は、好ましくは、電子導電性材料に対する前駆体を含む水溶液に上記ウエハースの孔性YSZ部分を浸すことにより形成される。例えば、孔性YSZ部分を、La,Sr,及びMn(カソードのためのLSM)又はCr(アノードのためのLSC)の何れかの硝酸塩を適切な濃度で含む水溶液に浸すことができる。例えば、孔性カソードを形成させるために有用な好ましい塩は、La(NO,Sr(NO及びMn(酢酸)の飽和した水溶液である。浸潤させた孔性セラミック材料を、次に、硝酸イオン及を分解して導電性のペロブスカイト相を形成させるのに十分な温度において焼成させる。焼成温度は、好ましくは、イオン導電性材料の酸化物と孔性セラミック材料の間に固形状態の反応が生じる温度よりも低い。好ましくは、LSFがカソード材料のとき、温度は1100℃以下であり、そしてLSCo(コバルト塩)がカソード材料のとき、温度は1000℃以下である。LSCを電極、好ましくは、アノード材料として使用するとき、好ましくは、約800から約1200℃、より好ましくは約1,100から約1,200℃の範囲、そしてもっとも好ましくは約1,100℃の温度において焼成を実施する。好ましくは、LSMをカソード材料として使用するとき、好ましくは、約700から約1300℃、より好ましくは約800から約1,300℃の範囲、そしてもっとも好ましくは約1,200℃の温度において焼成を実施する。発明のカソードの導電性相は、よって、相対的に低い温度において形成され得て;固形状態反応が生じる温度よりも低い。事実、LSMをカソードとして用いる場合、カソード材料は800℃付近で導電性である。即ち、孔性セラミック材料を上記の硝酸塩溶液に浸してよく、そして次に燃料電池をその操作温度に加熱したときに、導電性相が形成される。これは、明確な利点と製造コストにおける顕著な節約を提供する。これらの低い温度は、二次相の出現を回避するが、慣用的には高温において焼結を必要とする導電性相を有するカソードも提供する。
【0043】
発明の一つの態様の別の特徴は、発明の複合物電極、たとえカソードであっても、あるいはLSCを含むアノードを含むSOFCである。好ましくは、当該SOFCは、空気電極(カソード)、燃料電極(アノード)、任意に発明のLSC/YSZ複合物電極、及びこれらの2つの電極間の少なくとも一部に分散した固形酸化物電解質を含む。SOFC中では、電解質は固形の形態である。今公知であるか又は後に発見されるあらゆる材料を、アノード材料として、及び電解質材料として使用可能である。典型的には、電解質を非金属セラミック、例えば緻密なイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)セラミックから作成し、そしてアノードをニッケルサーメット、銅酸化物及びセリア、又はLSCから作成する。固形酸化物燃料電池においては、水素又は炭化水素が普通には燃料として使用され、そして酸素又は空気がオキシダントとして使用される。発明において有用な他の電解質材料は、Sc−ドープされたZrO,Gd−及びSm−ドープされたCeO及びLaGaMnOxを含む。
【0044】
アノードは、好ましくは、カソードを形成するために飢えで記載された方法に従い形成される。或いは、アノードは、アノード組成物(例えば、YSZとNiOの混合物)をペーストとしてウエファーの緻密な側に塗布して、次に約1,000から約1,300℃の範囲、より好ましくは約1,100から約1,200℃の範囲、そしてもっとも好ましくは約1,130℃の温度においてアノードを焼成することにより形成できる。好ましくは、アノードは、本明細書において記載されたLSC/YSZ複合物を形成させることにより製造される。
【0045】
本明細書において記載された方法に従い製造された発明の創意に富む孔性カソードは、SOFC中でカソード材料として使用できる。発明は、出力源を形成するように内部接続された(interconnected)多数のSOFCも含む。個々のSOFCを接続するのに有効なあらゆる成分を発明において使用できる。
【0046】
実施例
電極を作成する
LSC−YSZ及びLSM−YSZ複合物電極の各々は、2つの方法:(a)酸化物粉末の慣用的な物理的混合を含む方法A;及び(b)孔性YSZマトリックスの金属塩への含浸を含む方法Bにより製造した。
【0047】
比較のための方法(a)
慣用の複合物に関しては、YSZとLSM(La0.8Sr0.2MnO,プラクスエアサーフェステクノロジーズ)を市販物として使用した。LSMはプラクスエアサーフェステクノロジーズ、ダンベリー、コネチカットから購入し、そしてYSZはトーソーコーポレーション、東京、日本から購入した。LSC(La0.7Sr0.3CrO3−δ)は、La,Sr及びCrの硝酸塩から合成した。La,Sr及びCrの塩を蒸留水に溶解した後に、当該混合物を乾燥し、そして800℃において空気中で一晩焼成させた。この粉末を、次に、イソプロパノール存在下でモルタルと乳棒の中ですりつぶし、1400℃にて空気中で4時間焼結し、そして次に再びすりつぶした。結果の粉末は、x線回折(XRD)測定により正確なペロブスカイト構造を有することが示された。最後に、以下で詳細に記載されるとおり、上記酸化物粉末を機械的に混合し、それらをウエファー中に一軸応力により圧縮し、そして当該ウエファーを様々な温度に焼成することにより、LSM−YSZ及びLSC−YSZ複合物を製造した。
【0048】
発明の方法(b)
含浸により複合物を製造するため、方法Bは孔性YSZマトリックスを最初に、記載された方法、例えば、Gorte,R.J.,et al.,Adv.Materials,12,1465(2000),及びPark,S.,et al.,J.Electrochem.Soc.,148,A443(2001)に記載された方法を用いて製造した。YSZ粉末(8mol%のYを有するZrO,トーソー TZ−84)を、一般に認められるように使用し、そして蒸留水、分散剤(Duramax 3005,ロームアンドハース)、結合剤(HA12及びB1000,ロームアンドハース)、及び孔形成剤(グラファイトとポリメチルメタクリレート)と共に混合した。コノスラリーを600μm厚の孔性セラミックウエファーをもたらすテープに型に入れるか、又は2mm x 2mm x 10mmの長方形の小片に形成させた。1550℃への焼成の後に、YSZウエファーと長方形の小片が60%の孔度を有することが、水分含浸の後のサンプルの重量変化により示されることがわかった。Kim,H.,et al.,J.Am.Ceram.Soc.,85,1473(2002)。LSM又はLSCを、次に、La,Sr及びCr又はMnの可溶性塩を適度な濃度で含む水溶液へのYSZの含浸により、孔性YSZへ加えた。約30から約40体積%の範囲内のLSCとLSMの濃度を有する複合物を製造するのに十分な量のLa(NO,Sr(NO,Cr(NO,及びMn(酢酸)
【0049】
標準の4プローブDC法を用いて、電気導電性を測定した。この方法においては、サンプルをホルダーに入れて、外部のプラチナフォイルを両方の末端に装着した。1286ソーラトロン電気化学接続器(interface)からの電流をサンプルに通し、その間Tenma72−410Aマルチメーターを用いてサンプルを横切る電圧を監視した。導電性は、概して、空気中又は加湿Hの何れかにおいて測定した。LSM−YSZ複合物に関しては、ほとんどのサンプルを長方形小片から作成し、LSC−YSZ複合物に関する結果は600−μmウエファーにて得た。選択されたサンプルの相及びミクロ構造も、XRD及び走査電子顕微鏡(SEM,JEOL JSM−6300LV)により測定した。
【0050】
実施例1
一連の孔性複合物を上記の方法bに従い製造して、電子導電性酸化物材料が孔性マトリックス中に分散したか否かを測定した。LSM又はLSCの量をしだいに増加させた一連の材料の孔度を測定し、結果を図1に示す。この図のLSC−YSZ複合物は、1,100℃まで焼かれ(calcined)、そしてLSM−YSZ複合物は1,250℃まで焼かれた。これらのデータに関しては、導電性酸化物の体積をその質量と塊の密度から測定した。図面の中の線は、第2の酸化物が孔をふさいだと仮定しての、複合物の孔度の予測される変化である。孔度が予測されたとおりに低下するという事実は、電子導電性酸化物材料が焼成処理の後の孔構造の中に存在することを証明する。
【0051】
図1に示されるとおり、LSC−YSZ複合物の孔度は、0%LSCにおいて60体積%(例えば、YSZマトリックスの孔度)から約64体積%LSCにおいて0%に低下する。もっとも好ましいのは、複合物中のLSCの濃度を約30−35体積%の桁にして、約30−35%において電極の孔度を残すことである。LSM−YSZ複合物の孔度は、本質的には同じトレンドに従う。しかしながら、好ましいのは、複合物中のLSMの濃度を約48体積%の桁にすることにより、約15%の孔度を残すことである。電子導電性材料の濃度は約40体積%の桁であることが好ましい。
【0052】
LSC−YSZ複合物
実施例2
アノード材料として好ましくは使用できるLSC−YSZ複合物を上記の方法bに従い製造した。最適の焼成温度を決定するため、方法bを異なる温度において繰り返し、その結果を図2に示す。図2は、ますます高温に焼成させた後、約30体積重量(vol wt)%のLSCに相当するはずの増量剤(a loading)への、La,Sr,及びCr塩を含む孔性YSZの含浸の後のXRDパターンを示す。LSC、ペロブスカイト相に相当するピーク(注目に値するのは、41、46、58、68、及び78度2θにおけるそれら)は、約800℃において明確に始まる。これらのピークは1,100℃への焼成の後に鋭くなるが、新たな相がさらに高い焼成温度において出現する。1,200℃においてはピークが31度において出現し、SrZrOの形成に帰すると信じられる。1,400℃より下の焼成温度に関しては、41度に近い領域においていくつかのオーバーラップするピークも存在し、おそらくは、クロム化合物、例えばCrO,CrO(OH)及びCr(OH)に関連する。複合物の性能に逆佐用を有するかもしれない不所望の化合物の形成を阻害するためには、固形状態の反応が生じる焼成温度よりも低い焼成温度にて複合物を製造することが好ましい。この場合、約1,200℃より低い焼成温度において複合物を製造することがもっとも好ましい。
【0053】
実施例3
この実施例の目的は、複合物の電子導電性に対する焼成温度の効果を研究することであり、結果を図3に示す。2つのLSC−YSZ複合物を製造し、両者は30体積%のLSCを有したが、一方は方法aを用いて製造し、そして他方は上記の方法bを用いて製造された。空気中及び加湿Hの両方において700℃において導電性を測定する前に、サンプルを空気中で2時間さまざまな温度において焼成した。方法bに従い製造された複合物に関しては、導電性が温度と共に約1,100℃において最大値まで増加し、そしてよりさらに高い焼成温度においては低下したことがわかった。これは、1,100℃におけるLSCの形成、続くより高温における二次相の形成に一致する。もっとも高温において形成された複合物の導電性はガス相の組成物に感受性であり、一方1,100℃において形成された複合物はそうでないことも興味を引く。LSCは広い範囲のP(O)にわたって導電性を残すため、この観察は高温相がLSCではないことのさらなる証拠となる。
【0054】
方法aを用いて製造された複合物に関しては、導電性が温度の増加と共に1,400℃までは全面的に増加し、そして空気中とH中で測定された導電性の間に大きな差異はない。焼成温度に伴う導電性の増加の理由はこの場合には極めて異なるが、導電性LSCの相が初期サンプル製造に使用されたからである。これらのサンプルに関しては、初期の密度は低く、そして焼成はサンプル内の接続性(connectivity)を増強させた。1,100℃において加熱されたサンプルと1,400℃において加熱されたサンプルとの間に観察された導電性におけるより小さな増加は、中和性効果によるらしく、導電性を低下させる二次相及び導電性を増加させる緻密化(densification)の形成を伴う。
【0055】
実施例4
この実施例の目的は、電子導電性に対するLSCの濃度の効果を研究することであり、結果を図4に示す。2つのLSC−YSZ複合物を製造し、両者を1,100℃において2時間焼成したが、一方を方法aを用いて製造し、そして他方を上記の方法bを用いて製造した。体積%により与えられたLSCの量は0から約100%まで変化させた(方法aに従い製造されたLSC−YSZに関しては100%)。導電性を、次に、空気中及び加湿H中の両方において700℃において測定した。方法bにより製造されたサンプルは、LSCの相対的に低い体積フラクションにおいて妥当な高い導電性を呈した。これは、規定されたマトリックスに含浸させた材料がランダムな媒質であるとは考えられない事実に一部基づくと信じられる。十中八九、LSCはYSZ孔の壁に被覆を形成すると信じられる。
【0056】
方法Aの、混合された粉末から製造された非各様サンプルに関しては、LSCの重量フラクションが約80%に達するまで、導電性が低かった。濾過の概念に基づいて予測されるはずの重量フラクションよりもはるかに高い、そのような高い重量フラクションのLSCが要求される事実は、低い製造温度におけるそれらの粉末の不完全な焼結及び結果の低い密度によると信じられる。LSCの体積フラクションが約80%になって初めて材料は緻密になって、それにより、導電性が増加した。
【0057】
LSM−YSZ複合物
実施例5
LSM−YSZ複合物を上記の方法bに従い製造した。最適焼成温度を決定するため、方法bを異なる温度において繰り返し、結果を図5に示す。図5は、ますます高温に焼成させた後、約40体積%のLSCに相当するはずの増量剤(a loading)への、La,Sr,及びMn塩を含む孔性YSZの含浸の後のXRDパターンを示す。ペロブスカイト相に付随する、23、33、40、47及び58度2θにおけるピークは、約800℃において既に出現する。LaZr(31度)が約1250℃において観察され、これは焼成温度の増加と共に増加する。
【0058】
実施例6
この実施例の目的は、複合物に対する焼成温度の効果を研究することであり、結果を図6に示す。図6は、含浸により製造されて40体積%のLSMの複合物を有するLSM−YSZの空気中における973Kにての導電性を、焼成温度の函数として示す。LSC−YSZ複合物により生じたのと類似して、導電性は、焼成温度において最大に達した;しかしながら、最大の導電性は、約1,250℃にて今達成される。導電性の絶対的変化はこの場合に相対的に小さく、複合物の導電性は800℃において既に高いことから、妥当な性能が低温において達成されるべきであることが興味深い。また、最適温度1,250℃は慣用の方法により製造されるLSM−YSZ複合物を焼成するための推奨される温度であることも興味深い。
【0059】
実施例7
この実施例の目的は、電子導電性に対するLSMの濃度の効果を研究することであり、結果を図7に示す。3つのLSM−YSZ複合物を製造し、2つは1,250℃において2時間焼成し、そして一つは800℃において焼成した。1,250℃において焼成された1セットのサンプルを方法aを用いて製造し、そして他の2つのセットのサンプル(ひとつが1,250℃において焼成され、そして他方が800℃において焼成)を、上記の方法bを用いて製造した。体積%により与えられたLSMの量は、0から約100%(方法aに従い製造されるLSM−YSZ複合物に関して100%)に変動させた。次に、導電性を空気中及び加湿H中で700℃において測定した。
【0060】
方法aにより製造されたLSM−YSZ複合物は、妥当なLSM含有量にて、約30体積%の桁にて高い導電性を呈した。事実、導電性は、30体積%のLSM濃度にて素早く上昇し、ランダム媒体における濾過に関しての予測された値である。LSC−YSZ複合物を用いて上で観察されたとおり、方法bに従い製造されたサンプルの導電性は低LSM濃度において極めて高く、それが存在する構造の中に浸透するとすれば、LSM相がランダムではない可能性が高い。最後に、方法bにより形成されたLSM−YSZ複合物の導電性は、約30体積%までの濃度に関して、たった800℃の焼成の後に等しく高かったことが興味深い。よって、LSMの濃度が約30体積%を下回る場合には、1,250℃より低い温度においてLSM−YSZ複合物を加熱することが好ましい。
【0061】
実施例8
この実施例の目的は、方法aに従い製造された酸化物複合物と方法bに従い製造された酸化物複合物の間のミクロ構造の変化を研究することである。図8は、1100℃に焼成後の、混合された粉末、50体積%LSCを示す。材料は、約0.2mの直径で、約25%の孔度の、相対的に均一な粒子である。このサンプルにおいて、YSZとLSCの粒子は、同じサイズであり、識別不可能である。図9は、Lの40体積%のレベルまでの添加の前と後の、La,Sr,及びCr塩を含む孔性YSZの含浸及び1100℃における焼成による、孔性YSZを示す。孔性のYSZマトリックス、図9aは、相対的に均一な約1から2μmのサイズの孔からなる。含浸後に、0.2μm]のLSC粒子が、YSZ壁を被覆して観察され、図9bに示すとおりである。これらの結果は、含浸により添加された酸化物がYSZの壁を被覆することを確証する。
【0062】
本発明の他の態様、使用、及び利点は、本明細書において開示された発明の明確化と実行を考慮すれば、当業者に明らかである。明細書は、例示のためと考えられるべきであり、発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることを従って意図する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、電子導電材料を濃度を変えて含む、本発明に従い製造された複合物の孔度を示すグラフである。
【図2】図2は、異なる焼成温度におけるLSC/YSZ複合物のXRDパターンを例示する。
【図3】図3は、焼成温度によるLSC/YSZ複合物の電気導電性の変化を示すグラフである。
【図4】図4は、LSC濃度によるLSC/YSZ複合物の電気導電性の変化を示すグラフである。
【図5】図5は、異なる焼成温度におけるLSM/YSZ複合物のXRDパターンを例示する。
【図6】図6は、焼成温度によるLSM/YSZ複合物の電気導電性の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、LSC濃度によるLSM/YSZ複合物の電気導電性の変化を示すグラフである。
【図8】図8は、慣用の方法(a)を用いて製造されたLSC/YSZ複合物のSEM微小構造である。
【図9】図9aは、孔性YSZセラミックマトリックスのSEM微小構造であり、そして図9(b)は本発明の方法(b)によるLSC/YSZ複合物製造物のSEM微小構造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料
を含むカソードであって、
但し、孔性セラミックマトリックスは少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する孔を多数含むカソード。
【請求項2】
孔性セラミックマトリックスが、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のカソード。
【請求項3】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項2記載のカソード。
【請求項4】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のカソード。
【請求項5】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項4記載のカソード。
【請求項6】
多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項1記載のカソード。
【請求項7】
多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項1記載のカソード。
【請求項8】
電子導電性材料が、電極の全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項1記載のカソード。
【請求項9】
電子導電性材料が、電極の全体積の約20重量%から約55重量%の量にて存在する、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項1記載のカソード。
【請求項10】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項1記載のカソード。
【請求項11】
孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックス内の少なくとも一部に分散した電子導電材料
を含むカソードであって、
但し、約10%から約75%の範囲内の孔性を有するカソード。
【請求項12】
孔性セラミックマトリックスが、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載のカソード。
【請求項13】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項12記載のカソード。
【請求項14】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載のカソード。
【請求項15】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項14記載のカソード。
【請求項16】
多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項11記載のカソード。
【請求項17】
多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項16記載のカソード。
【請求項18】
電子導電性材料が、電極の全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項12記載のカソード。
【請求項19】
電子導電性材料が、電極の全体積の約20重量%から約55重量%の量にて存在する、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項11記載のカソード。
【請求項20】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項11記載のカソード。
【請求項21】
内部の孔壁により規定される多数の孔により規定された孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックスの孔内の少なくとも一部に分散した少なくとも一つの電子導電材料
を含み、それにより、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁が電子導電材料により被覆されているカソード。
【請求項22】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項21記載のカソード。
【請求項23】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21記載のカソード。
【請求項24】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項23記載のカソード。
【請求項25】
カソードの多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項21記載のカソード。
【請求項26】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項21記載のカソード。
【請求項27】
孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックスの孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、
但し、孔性セラミックマトリックスが少なくとも約0.5μmの平均孔サイズを有する多数の孔を含む電極。
【請求項28】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項27記載の電極。
【請求項29】
孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックスの孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、
但し、カソードが約10%から約75%の範囲内の孔性を有する電極。
【請求項30】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項29記載の電極。
【請求項31】
内部の孔壁により規定される多数の孔により規定された孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックスの孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、
それにより、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁が電子導電材料により被覆されている電極。
【請求項32】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項31記載の電極。
【請求項33】
孔性セラミックマトリックスを形成し;
孔性セラミックマトリックスに、少なくとも一つの電子導電性材料を加え、
;そして
セラミックマトリックスと電子導電材料の間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて孔性セラミックマトリックスと電子導電性材料を加熱すること
を含む、孔性カソードを作成する方法。
【請求項34】
孔性セラミックマトリックスが、
YSZを含む2層の緑のテープを形成させ;そして
約1,350から約1,650℃の範囲内の温度にて緑のテープを焼結すること
により製造される、請求項35記載の方法。
【請求項35】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
孔性セラミックマトリックスと電子導電性材料を約700から約1,300℃の範囲内の温度に加熱する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
孔性セラミックマトリックスと電子導電性材料を約1,200から約1,300℃の範囲内の温度に加熱する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項33記載の方法により製造されたカソード。
【請求項40】
孔性セラミックマトリックスを形成し;
孔性セラミックマトリックスに、Sr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を含浸し;そして
孔性セラミックマトリックスとLaCrOの間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて孔性セラミックマトリックスとLaCrOを加熱すること
を含む、カソードを作成する方法。
【請求項41】
孔性セラミックマトリックスとSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を約800から約1,200℃の間の温度に加熱する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
孔性セラミックマトリックスとSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を約1,000から約1,200℃の間の温度に加熱する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
請求項1記載のカソード;
アノード;及び
カソードとアノードの間の少なくとも一部に被覆された電解質
を含む固形酸化物燃料電池。
【請求項44】
カソードが、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される材料により構成される、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項45】
電解質が、YSZ、Sc−ドープされたZrOGd−及びSm−ドープされたCeO,LaGaMnO及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項46】
孔性セラミックマトリックスが、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項47】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項46記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項48】
カソードの電子導電性材料がSr−ドープされたLaMnOである、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項49】
カソード中に存在する多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項50】
カソード中に存在する多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項51】
カソードの電子導電性材料が、カソードの全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項1記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項52】
カソードの電子導電性材料がSr−ドープされたLaMnOであり、カソードの全体積の約40重量%から約55重量%の量にて存在する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項53】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項54】
カソード;
孔性セラミックマトリックス;及び
当該孔性セラミックマトリックスの孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、但し、孔性セラミックマトリックスが少なくとも約0.5μmの平均孔サイズを有する多数の孔を含むアノード;及び
カソードとアノードの間の少なくとも一部に被覆された電解質
を含む固形酸化物燃料電池。
【請求項55】
電解質材料を含む2層の緑のテープを少なくとも一つ形成し;
緑のテープを約1,350から約1,650℃の範囲の温度にて焼結させることにより少なくとも一つの緻密な層と一つの孔性層を有する電解質材料の孔性マトリックスを形成させ;
アノード組成物に対する前駆体を上記の層に塗布することにより、緻密層上又は任意に電解質材料の少なくとも一つの孔性層上にアノードを形成し;
電解質材料の孔性マトリックスの少なくとも一つの孔性層を電子導電性材料の前駆体に含浸することによりカソードを形成し、そして焼成すること
を含む固形酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項56】
アノード又はカソード材料の焼成が約800から約1,300℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
緑のテープを約1,500から約1,550℃の間の範囲の温度にて焼結させる、請求項55記載の方法。
【請求項58】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項55記載の方法。
【請求項59】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項55記載の方法。
【請求項60】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
アノード組成物がSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を含む、請求項55記載の方法。
【請求項62】
カソードの焼成が約1,200から約1,300℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項63】
カソードの焼成が約1,000から約1,200℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項64】
請求項55記載の方法により製造された固形酸化物燃料電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料内の少なくとも一部に分散した電子導電材料
を含むカソードであって、
但し、
孔性セラミック材料は少なくとも約0.5μmの孔サイズを有する孔を多数含み、
当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料を電子導電性材料の酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料と電子導電性材料の両者を焼成して製造されたカソードに比較した場合に、より低い濃度の電子導電性材料にて高い電気導電性を有する
カソード。
【請求項2】
孔性セラミック材料が、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のカソード。
【請求項3】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項2記載のカソード。
【請求項4】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のカソード。
【請求項5】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項4記載のカソード。
【請求項6】
多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項1記載のカソード。
【請求項7】
多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項1記載のカソード。
【請求項8】
電子導電性材料が、電極の全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項1記載のカソード。
【請求項9】
電子導電性材料が、電極の全体積の約20重量%から約55重量%の量にて存在する、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項1記載のカソード。
【請求項10】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項1記載のカソード。
【請求項11】
孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料内の少なくとも一部に分散した電子導電材料
を含むカソードであって、
但し、約10%から約75%の範囲内の孔性を有し、
当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料を電子導電性材料の酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料と電子導電性材料の両者を焼成して製造されたカソードに比較した場合に、より低い濃度の電子導電性材料にて高い電気導電性を有する
カソード。
【請求項12】
孔性セラミック材料が、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載のカソード。
【請求項13】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項12記載のカソード。
【請求項14】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載のカソード。
【請求項15】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項14記載のカソード。
【請求項16】
多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項11記載のカソード。
【請求項17】
多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項16記載のカソード。
【請求項18】
電子導電性材料が、電極の全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項12記載のカソード。
【請求項19】
電子導電性材料が、電極の全体積の約20重量%から約55重量%の量にて存在する、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項11記載のカソード。
【請求項20】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項11記載のカソード。
【請求項21】
内部の孔壁により規定される多数の孔により規定された孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料の孔内の少なくとも一部に分散した少なくとも一つの電子導電材料
を含み、それにより、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁が電子導電材料により被覆されているカソードであって、
但し、当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料を電子導電性材料の酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該カソードは、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料と電子導電性材料の両者を焼成して製造されたカソードに比較した場合に、より低い濃度の電子導電性材料にて高い電気導電性を有する
カソード。
【請求項22】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項21記載のカソード。
【請求項23】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21記載のカソード。
【請求項24】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項23記載のカソード。
【請求項25】
カソードの多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項21記載のカソード。
【請求項26】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項21記載のカソード。
【請求項27】
孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料の孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含む電極であって、
但し、孔性セラミック材料が少なくとも約0.5μmの平均孔サイズを有する多数の孔を含み、
当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料をSr−ドープされたLaCrOの酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOの両者を焼成して製造された電極に比較した場合に、より低い濃度のSr−ドープされたLaCrOにて高い電気導電性を有する
電極。
【請求項28】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項27記載の電極。
【請求項29】
孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料の孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含む電極であって、
但し、電極が約10%から約75%の範囲内の孔性を有し、
当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料をSr−ドープされたLaCrOの酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOの両者を焼成して製造された電極に比較した場合に、より低い濃度のSr−ドープされたLaCrOにて高い電気導電性を有する
電極。
【請求項30】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項29記載の電極。
【請求項31】
内部の孔壁により規定される多数の孔により規定された孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料の孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、
それにより、多数の孔の少なくとも一部の内部孔壁が電子導電材料により被覆されており、
当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料をSr−ドープされたLaCrOの酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該電極は、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOの両者を焼成して製造された電極に比較した場合に、より低い濃度のSr−ドープされたLaCrOにて高い電気導電性を有する
電極。
【請求項32】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項31記載の電極。
【請求項33】
孔性セラミック材料を形成し;
孔性セラミック材料に、少なくとも一つの電子導電性材料を加え、
;そして
セラミック材料と電子導電材料の間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて孔性セラミック材料と電子導電性材料を加熱すること
を含む、孔性カソードを作成する方法。
【請求項34】
孔性セラミック材料が、
YSZを含む2層の緑のテープを形成させ;そして
約1,350から約1,650℃の範囲内の温度にて緑のテープを焼結すること
により製造される、請求項35記載の方法。
【請求項35】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
孔性セラミック材料と電子導電性材料を約700から約1,300℃の範囲内の温度に加熱する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
孔性セラミック材料と電子導電性材料を約1,200から約1,300℃の範囲内の温度に加熱する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項33記載の方法により製造されたカソード。
【請求項40】
孔性セラミック材料を形成し;
孔性セラミック材料に、Sr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を含浸し;そして
孔性セラミック材料とLaCrOの間に固形状態の反応が生じることを防ぐのに十分低い温度にて孔性セラミック材料とLaCrOを加熱すること
を含む、カソードを作成する方法。
【請求項41】
孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を約800から約1,200℃の間の温度に加熱する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を約1,000から約1,200℃の間の温度に加熱する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
請求項1記載のカソード;
アノード;及び
カソードとアノードの間の少なくとも一部に被覆された電解質
を含む固形酸化物燃料電池。
【請求項44】
カソードが、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される材料により構成される、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項45】
電解質が、YSZ、Sc−ドープされたZrOGd−及びSm−ドープされたCeO,LaGaMnO及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項46】
孔性セラミック材料が、YSZ,Gd−及びSm−ドープされたセリア(10から100重量%)、Sc−ドープされたZrO(100重量%まで)、ドープされたLaGaMnO,及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項47】
孔性セラミック材料がYSZである、請求項46記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項48】
カソードの電子導電性材料がSr−ドープされたLaMnOである、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項49】
カソード中に存在する多数の孔が約1.0μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項50】
カソード中に存在する多数の孔が約1.5μmよりも大きい平均孔サイズを有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項51】
カソードの電子導電性材料が、カソードの全体積の約5重量%から約50重量%の量にて存在する、請求項1記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項52】
カソードの電子導電性材料がSr−ドープされたLaMnOであり、カソードの全体積の約40重量%から約55重量%の量にて存在する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項53】
カソードが約12%から約30%の範囲の孔度を有する、請求項43記載の固形酸化物燃料電池。
【請求項54】
カソード;
孔性セラミック材料;及び
当該孔性セラミック材料の孔内の少なくとも一部に分散したSr−ドープされたLaMnOを含み、但し、孔性セラミック材料が少なくとも約0.5μmの平均孔サイズを有する多数の孔を含むアノード;及び
カソードとアノードの間の少なくとも一部に被覆された電解質
を含む固形酸化物燃料電池であって、
但し、当該アノードは、孔性セラミック材料を最初に焼結し、そして焼結された孔性セラミック材料をSr−ドープされたLaCrOの酸化物を含む溶液と接触させることにより製造され、
そして、当該アノードは、孔性セラミック材料を最初に焼成せずに孔性セラミック材料とSr−ドープされたLaCrOの両者を焼成して製造された電極に比較した場合に、より低い濃度のSr−ドープされたLaCrOにて高い電気導電性を有する
固形酸化物燃料電池
【請求項55】
電解質材料を含む2層の緑のテープを少なくとも一つ形成し;
緑のテープを約1,350から約1,650℃の範囲の温度にて焼結させることにより少なくとも一つの緻密な層と一つの孔性層を有する電解質材料の孔性マトリックスを形成させ;
アノード組成物に対する前駆体を上記の層に塗布することにより、緻密層上又は任意に電解質材料の少なくとも一つの孔性層上にアノードを形成し;
電解質材料の孔性材料の少なくとも一つの孔性層を電子導電性材料の前駆体に含浸することによりカソードを形成し、そして焼成すること
を含む固形酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項56】
アノード又はカソード材料の焼成が約800から約1,300℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
緑のテープを約1,500から約1,550℃の間の範囲の温度にて焼結させる、請求項55記載の方法。
【請求項58】
孔性セラミックマトリックスがYSZである、請求項55記載の方法。
【請求項59】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnO,LaFeO,及びLaCoO,Ag及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項55記載の方法。
【請求項60】
電子導電性材料が、Sr−ドープされたLaMnOである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
アノード組成物がSr−ドープされたLaCrOに対する前駆体を含む、請求項55記載の方法。
【請求項62】
カソードの焼成が約1,200から約1,300℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項63】
カソードの焼成が約1,000から約1,200℃の間の温度にて生じる、請求項55記載の方法。
【請求項64】
請求項55記載の方法により製造された固形酸化物燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−518919(P2006−518919A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503798(P2006−503798)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/005285
【国際公開番号】WO2004/077597
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】