説明

孔版原紙製版装置

【課題】通常の製版幅よりも幅広な製版幅で孔版原紙を製版できる孔版原紙製版装置において、穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【解決手段】孔版原紙Mの主走査方向Yの製版幅が所定の幅である製版を行う通常製版モードと孔版原紙の主走査方向Yの製版幅が所定の幅より広い幅の製版を行う幅広製版モードとのいずれかを選択的に設定する。幅広製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーを通常製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーよりも大きくなるように、サーマルヘッド2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は孔版原紙製版装置に関する。より詳しくは、主走査方向に複数の発熱素子が列設されたサーマルヘッドで孔版原紙を穿孔して製版を行う孔版原紙製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナやコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、各画素に対応する穿孔データを作成し、サーマルヘッドの各発熱素子を制御することにより、孔版原紙に穿孔を施す孔版原紙穿孔装置が利用されている。
【0003】
このような孔版原紙製版装置は、A3幅以下の製版幅で孔版原紙を製版するものが主流である。しかしながら、A3幅を越える製版幅で製版を行いたいとする要求も存在する。たとえば、特許文献1には、A0、A1といった幅広の孔版原紙をサーマルヘッドにより穿孔する孔版原紙製版装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−225319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、孔版原紙上の穿孔の不発や、穿孔径のバラツキを回避して良好な穿孔を施すには、サーマルヘッドと孔版原紙との接触状態が均一であることが要求される。しかしながら、幅広用のサーマルヘッドは、通常用のサーマルヘッドよりも主走査方向に多くの発熱素子を列設する必要があるため、幅広用のサーマルヘッドの平坦度は、図9に示すように通常用のサーマルヘッドの平坦度よりも、中央部がより凸となる傾向がある。
【0006】
これに対し、サーマルヘッドの両端部を中央部よりも孔版原紙に強く押し付けて製版することも考えられるが、接触圧にむらが生じて孔版原紙の搬送が困難となる。
【0007】
したがって、孔版原紙と各発熱素子との接触状態にバラツキが生じ、各発熱素子が孔版原紙に必要な発熱エネルギーを十分に供給することができず、穿孔の不発や、穿孔径にバラツキが発生する虞がある。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、通常の製版幅よりも幅広な製版幅で孔版原紙に製版する場合であっても、穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる孔版原紙製版装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の孔版原紙製版装置は、主走査方向に複数の発熱素子が列設されたサーマルヘッドと、サーマルヘッドに対して孔版原紙を副走査方向に相対移動させる相対移動手段と、サーマルヘッドを制御するサーマルヘッド制御手段とを備えた孔版原紙製版装置において、孔版原紙の主走査方向の製版幅が所定の幅以内である製版を行う通常製版モードと孔版原紙の主走査方向の製版幅が所定の幅より広い幅の製版を行う幅広製版モードとのいずれかを選択的に設定する製版モード設定手段を備え、サーマルヘッド制御手段が、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーを通常製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーよりも大きくなるように、サーマルヘッドを制御することを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明の孔版原紙製版装置における「製版幅」とは、孔版原紙上で製版を行う幅寸法を意味する。上記「所定の幅」とは、A3幅(297mm)程度を意味する。また、上記「発熱素子の発熱エネルギー」とは、発熱素子1個あたりの発熱エネルギーを意味するものであり、発熱エネルギーは発熱電力と発熱時間との積によって決定されるものである。
【0011】
また、上記「幅広製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーを通常製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーよりも大きくなる」とは、周辺画素が同じ状態の画素を幅広製版モードおよび通常製版モードで穿孔する際、幅広製版モードでの発熱素子の発熱エネルギーが、通常製版モードでの発熱素子の発熱エネルギーよりも大きいことを意味する。
【0012】
また、本発明の孔版原紙製版装置は、サーマルヘッド制御手段が、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱電力を通常製版モードにおける発熱素子の発熱電力よりも小さくするとともに、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱時間を通常製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも長くするものであってもよい。
【0013】
ここで、本発明の本発明の孔版原紙製版装置における「発熱素子の発熱電力」および「発熱素子の発熱時間」とは、発熱素子1個あたりの発熱電力および発熱時間を意味する。また、上記「幅広製版モードにおける発熱素子の発熱電力を通常製版モードにおける発熱素子の発熱電力よりも小さくする」とは、周辺画素が同じ状態の画素を幅広製版モードおよび通常製版モードで穿孔する際、幅広製版モードでの発熱素子の発熱電力が、通常製版モードでの発熱素子の発熱電力よりも小さいことを意味する。
【0014】
また、上記「幅広製版モードにおける発熱素子の発熱時間を通常製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも長くする」とは、周辺画素が同じ状態の画素を幅広製版モードおよび通常製版モードで穿孔する際、幅広製版モードでの発熱素子の発熱時間が、通常製版モードでの発熱素子の発熱時間よりも長いことを意味する。
【0015】
また、本発明の孔版原紙製版装置は、相対移動手段が、幅広製版モードにおける孔版原紙の相対移動速度を通常製版モードにおける孔版原紙の相対移動速度よりも遅くするものであってもよい。
【0016】
また、本発明の孔版原紙製版装置は、サーマルヘッド制御手段が、主走査方向および副走査方向に並ぶ各画素のそれぞれに対応する穿孔データに基づいてサーマルヘッドを制御するものであり、穿孔データに主走査方向に並ぶ画素を連続して穿孔するとともに、穿孔する画素に対して副走査方向に前後する画素を全て非穿孔にする主走査方向細線データが含まれている場合の幅広製版モードにおける、連続して穿孔する画素を含む走査ラインでの発熱時間を、連続して穿孔する画素を含まない走査ラインでの幅広製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも短くするものであってもよい。
【0017】
ここで、本発明の孔版原紙製版装置における「主走査方向に並ぶ画素を連続して穿孔する」とは、主走査方向に互いに隣接する孔版原紙上の画素を連続して穿孔する意味であり、連続して穿孔とは、たとえば、10個以上連続する穿孔する場合である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の孔版原紙製版装置によれば、孔版原紙の主走査方向の製版幅が所定の幅である製版を行う通常製版モードと孔版原紙の主走査方向の製版幅が所定の幅より広い幅の製版を行う幅広製版モードとのいずれかを選択的に設定し、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーを通常製版モードにおける発熱素子の発熱エネルギーよりも大きくなるように、サーマルヘッドを制御することにより、孔版原紙に供給される発熱ネルギーが大きくなり、良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0019】
また、本発明の孔版原紙製版装置によれば、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱電力を通常製版モードにおける発熱素子の発熱電力よりも小さくするとともに、幅広製版モードにおける発熱素子の発熱時間を通常製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも長くすることにより、発熱素子のピーク温度が高くなり過ぎることが回避されるとともに、穿孔する時間を長くなり、良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0020】
また、本発明の孔版原紙製版装置によれば、幅広製版モードにおける孔版原紙の相対移動速度を通常製版モードにおける孔版原紙の相対移動速度よりも遅くすることにより、孔版原紙との発熱素子との接触時間が長くなり、良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0021】
また、本発明の孔版原紙製版装置によれば、主走査方向および副走査方向に並ぶ各画素のそれぞれに対応する穿孔データに基づいてサーマルヘッドを制御する際、穿孔データに主走査方向に並ぶ画素を連続して穿孔するとともに、穿孔する画素に対して副走査方向に前後する画素を全て非穿孔にする主走査方向細線データが含まれている場合の幅広製版モードにおける、連続して穿孔する画素を含む走査ラインでの発熱時間を、連続して穿孔する画素を含まない走査ラインでの幅広製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも短くする。
【0022】
したがって、幅広製版モードにおいて主走査方向の細線を穿孔する場合であっても、主走査方向に互い隣接する発熱素子からの発熱エネルギーの影響を受けて穿孔径が正常な径よりも大きくなることを防止しつつ、良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】孔版原紙穿孔システムの概略構成図
【図2】サーマルヘッドの構成図
【図3】各信号のタイミングチャート
【図4】発熱素子の発熱時間の経時変化を示す図
【図5】通常製版モードで縦細線および横細線に熱履歴制御を行う穿孔状態図
【図6】幅広製版モードで縦細線および横細線に熱履歴制御を行う穿孔状態図
【図7】幅広製版モードで横細線に熱履歴制御を行わない穿孔状態図(その1)
【図8】幅広製版モードで横細線に熱履歴制御を行わない穿孔状態図(その2)
【図9】通常用および幅広用のサーマルヘッドの平坦度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態である孔版原紙穿孔装置を含む孔版原紙穿孔システムの概略構成図、図2はサーマルヘッドの構成図である。なお、本実施形態においては、主走査方向をY方向、副走査方向をX方向として説明する。
【0025】
孔版原紙穿孔システム100は、A1幅(594mm)以内の製版幅で孔版原紙Mに製版できる孔版原稿穿孔システムである。この孔版原稿穿孔システム100は、画像データ生成装置50と、画像データ生成装置50に接続された孔版原紙穿孔装置1とから構成される。孔版原紙穿孔システム100は、画像データ生成装置50が生成した原稿Gの画像データGDを用いて、孔版原稿穿孔装置1が、各画素の穿孔データDを作成して穿孔データDに基づいて、孔版原紙Mを製版するものである。
【0026】
画像データ生成装置50は、A1サイズ以内の原稿Gを読み取って二値化処理することにより、原稿Gの全画素について1または0の二値で示す画像データGDを生成するものである。
【0027】
孔版原紙穿孔装置1は、A1サイズ以内の孔版原紙MにA1幅以内の製版幅で穿孔できるものであり、図1に示すように、サーマルヘッド2、孔版原紙MをX方向に搬送する、相対移動手段としての原紙搬送手段3およびサーマルヘッド2および原紙搬送手段3の制御を行う制御装置4から構成されている。
【0028】
サーマルヘッド2は、1792個の発熱素子21がY方向に列設した8個の発熱ブロック22および駆動回路23から構成されている。各発熱素子21には、電圧VHが印加されている。駆動回路23は、AND回路24、ラッチ回路25およびシフトレジスタ26から構成される。なお、各回路の動作については後述する。
【0029】
原紙搬送手段3は、孔版原紙Mを1走査ライン毎にX方向に搬送するものであり、孔版原紙Mを搬送するプラテンローラ31、このプラテンローラ31を回転駆動させる駆動モータ32、プラテンローラ31と駆動モータ32との間のギア33から構成される。原紙搬送手段3は、サーマルヘッド2のY方向の中心が孔版原紙Mの長尺方向の略中心線上に位置するように搬送するものである。
【0030】
制御装置4は、画像データGDを用いて穿孔データDを生成する穿孔データ生成手段41、孔版原紙Mを通常の製版幅で製版する通常製版モードと孔版原紙Mを通常よりも幅広の製版幅で製版する幅広製版モードとを選択的に設定する製版モード設定手段42と、原紙搬送手段3を制御する搬送制御手段43と、サーマルヘッド2を制御するサーマルヘッド制御手段44とから構成されている。
【0031】
穿孔データ生成手段41は穿孔データDを生成するものである。穿孔データDは、穿孔するか否かを示す黒白データD1と、熱履歴制御を行うか否かを示す熱履歴データD2とから構成される。
【0032】
また、穿孔データDは、Y方向に並ぶ各画素の穿孔データDを画素順に連続的に並べた穿孔データ群DAT1〜8を構成する。すなわち穿孔データ群DAT1〜8は、一走査ライン上の全画素の穿孔データDである。なお、熱履歴制御とは、前後左右の隣接する発熱素子からの発熱を考慮して、発熱素子の発熱エネルギーを制御する公知技術である。
【0033】
穿孔データ生成手段41は、画像データGDの値が1の画素は穿孔、0の画素は非穿孔にする黒白データD1を生成する。なお、穿孔データ生成手段41による熱履歴データD2の生成は公知技術であるため、その説明を省略する。
【0034】
製版モード設定手段42は、孔版原紙MのY方向の製版幅が所定幅以内の場合は通常製版モードまたは製版幅が所定幅を越える場合は幅広製版モードのいずれかを選択的に設定するものである。たとえば、製版モード設定手段42は、製版幅がA3幅(297mm)以内の場合は通常製版モード、越える場合は幅広製版モードに設定する。また、製版モード設定手段42は、不図示の入力手段からユーザからの製版幅の指示を受け付けてモード設定するものでもよく、画像データGDに基づいて、自ら判断して設定するものであってもよい。
【0035】
搬送制御手段43は、モード設定に応じて孔版原紙MをX方向に搬送するように原紙搬送手段3を制御するものである。搬送制御手段43は、搬送速度vが通常製版モードでは相対的に速く、幅広製版モードでは相対的に遅くなるように、原紙搬送手段3を制御する。たとえば、搬送制御手段43は、解像度が600dpiの場合、通常製版モードでの搬送速度vを20.67(mm/sec)、幅広製版モードでの搬送速度vを13.78(mm/sec)程度としてもよい。
【0036】
サーマルヘッド制御手段44は、穿孔データ生成手段41から各穿孔データDを受け取るとともに、製版モード設定手段42が設定した製版モードに基づいて、サーマルヘッド2を制御するものである。
【0037】
サーマルヘッド制御手段44は、穿孔データ群DAT1〜8およびクロック信号CLK1〜8をシフトレジスタ26、ラッチ信号LAT1〜8をラッチ回路25、ストローブ信号STB1〜8をAND回路24に出力してサーマルヘッド2を制御する。
【0038】
クロック信号CLK1〜8は、穿孔データ群DAT1〜8が各発熱素子21に対応するように並列化してラッチ回路25に出力するためのパルス信号である。また、ラッチ信号LAT1〜8は、穿孔データ群DAT1〜8をラッチ回路25にラッチさせる信号であり、黒白データD1、熱履歴データD2の順にラッチするパルス信号を順次出力する。AND回路24の一方の入力は、黒白データD1が穿孔の場合、熱履歴データD2が熱履歴制御を行う場合にそれぞれオン(High)となる。ストローブ信号STB1〜8は、発熱素子21の発熱時間を制御するパルス信号であり、AND回路24の他方の入力は、このストローブ信号STB1〜8がオン(Low)の場合に全てオン(High)となる。
【0039】
図3は、発熱ブロック22を駆動させるための、各信号のタイミングチャートである。図3は、穿孔データ群DAT4、クロック信号CLK4、ラッチ信号LAT4およびストローブ信号STB4のタイミングチャートである。図3の上図は通常製版モード、図3の下図は幅広製版モードのタイミングチャートであり、両図において、熱履歴制御を行わない場合と熱履歴制御を行う場合の両方を示している。なお、穿孔データ群DAT4、クロック信号CLK4、ラッチ信号LAT4およびストローブ信号STB4は、通常製版モードおよび幅広製版モードの両方で駆動する略中央の発熱ブロック22に対する信号である。
【0040】
サーマルヘッド制御手段44は、図3に示すように、各信号を所定の印字周期LSTで出力し、通常製版モードでは、図3の上図のように、印字周期LSTを相対的に短くし、幅広製版モードでは、図3の下図のように、印字周期LSTを相対的に長くする。たとえば、通常製版モードにおける印字周期LSTは2msec、幅広製版モードにおける印字周期LSTは3msecであってもよい。
【0041】
再び図2を用いて説明する。シフトレジスタ26に、クロック信号CLK1〜8および穿孔データ群DAT1〜8が入力されると、クロック信号CLK1〜8に同期して穿孔データ群DAT1〜8を穿孔データD毎に並列化してラッチ回路25に出力する。なお、穿孔データ群DAT1〜8は、黒白データD1、熱履歴データD2の順で入力される。
【0042】
ラッチ回路25は、ラッチ信号LAT1〜8が入力されると、黒白データD1、熱履歴データD2の順にラッチしてAND回路24に出力する。AND回路24は、穿孔データ群DAT1〜8とストローブ信号STB1〜8に基づいて、発熱素子21を発熱させる。
【0043】
発熱素子の発熱エネルギーEは、発熱電力P×発熱時間tで決定される。ここで、発熱エネルギーEは1個の発熱素子21が1つの孔を穿孔する際のエネルギーである。孔版原紙穿孔装置1は、周辺画素が同じ状態の画素を穿孔する際、幅広製版モードにおける発熱エネルギーEを通常製版モードにおける発熱エネルギーEよりも大きくする。
【0044】
また、孔版原紙穿孔装置1は、幅広製版モードにおける発熱電力Pを通常製版モードにおける発熱電力Pよりも小さくする。たとえば、発熱素子21の抵抗値を4371(Ω)として、通常製版モードでは、電圧VHを17.33(V)として発熱電力Pを0.0687(W/dot)、幅広製版モードでは、電圧VHを16.44(V)として発熱電力を0.0618(W/dot)としてもよい。これらの値は特に限定されるものではない。なお、電圧VHはモード設定に応じて自動的に変更される。具体的に、2つの電源を駆動し、左右の各4個の発熱ブロック22に平均抵抗値を設けて電圧VHを印加してもよく、たとえば、左側の4個の発熱ブロック22の平均抵抗値を4500(Ω)、電圧VHを17.58(V)、右側の4個の発熱ブロック22の平均抵抗値を4250(Ω)、電圧VHを17.09(V)としてもよい。なお、電圧VHはモード設定に応じて自動的に変更される。
【0045】
再び図3を参照する。サーマルヘッド制御手段44は、熱履歴制御の際に、発熱素子21の発熱時間を相対的に短くする場合と、相対的に長くする場合とを選択して出力する。サーマルヘッド制御手段44は、熱履歴制御を行わない場合、ストローブ信号STB1〜8を出力して発熱素子21を黒白データD1のみに基づいて、発熱時間t1だけ発熱させる。すなわち発熱時間t1が経過した後、熱履歴制御を行わない熱履歴データD2がラッチされ、AND回路24の一方の入力がオフ(Low)となって発熱が終了する。
【0046】
また、サーマルヘッド制御手段44は、熱履歴制御を行う場合、ストローブ信号STB1〜8を出力して発熱素子21を黒白データD1および熱履歴データD2の両方に基づいて、発熱時間t2だけ発熱させる。すなわち発熱時間t1が経過しても熱履歴制御を行う熱履歴データD2がラッチされ、AND回路24の一方の入力がオン(High)であるため、発熱時間t2が経過した後、ストローブ信号STB1〜8がオフ(High)になり、AND回路24の他方の入力がオフ(Low)となって発熱が終了する。
【0047】
サーマルヘッド制御手段44は、製版モード設定手段42のモード設定に応じて、発熱時間t1,t2が異なるように、ストローブ信号STB1〜STB8を出力する。たとえば、通常製版モードにおける発熱時間t1が0.40(msec)、発熱時間t2が0.50(msec)、幅広製版モードにおける発熱時間t1が0.56(msec)、発熱時間t2が0.73(msec)となるように、ストローブ信号STB1〜STB8を出力する。
【0048】
これにより、発熱素子21の発熱エネルギーPは、通常製版モードにおいては、短パルス信号のストローブ信号STB1〜8では0.0275(mJ)、長パルス信号のストローブ信号STB1〜8では0.0344(mJ)、幅広製版モードにおいては、短パルス信号のストローブ信号STB1〜8では0.0346(mJ)、長パルス信号のストローブ信号STB1〜8では0.04571(mJ)となる。
【0049】
孔版原紙穿孔装置1の作用について説明する。図4は、1印字周期LSTにおける発熱素子21の発熱温度の経時変化を示すグラフである。図4において縦軸は発熱温度(°C)、横軸は時間(msec)を示す。
【0050】
図4に示すように、幅広製版モードでのガラス転移温度以上となる面積は、通常製版モードでのガラス転移温度以上となる面積よりも大きくなる。すなわち孔版原紙穿孔装置1は、孔版原紙Mを穿孔する際に必要な発熱エネルギーPについて、通常製版モードよりも幅広製版モードで大きくしている。
【0051】
また、幅広製版モードでのガラス転移温度以上となる時間0.9msec程度であり、通常製版モードでのガラス転移温度以上となる時間0.5msec程度よりも長くなる。すなわち孔版原紙穿孔装置1は、幅広製版モードでは通常製版モードよりも長い時間で孔版原紙Mを穿孔している。
【0052】
また、幅広製版モードでのピーク温度270(°C)程度であり、通常製版モードでのピーク温度330(°C)程度よりも低くなる。すなわち孔版原紙穿孔装置1は、幅広製版モードでは通常製版モードよりも低くい温度で孔版原紙Mを穿孔している。
【0053】
次に熱履歴制御について説明する。孔版原紙穿孔装置1は、通常製版モードにおいて、孔版原紙M上の各画素に、X方向またはY方向に、たとえば、10個以上連続して穿孔する画素、いわゆる縦細線や横細線が含まれる場合や、穿孔する画素の周辺の8個の画素を非穿孔にする、いわゆる孤立点が含まれる場合は縦細線、横細線および孤立点となる画素は熱履歴制御を行い、ベタ等となる画素は熱履歴制御を行わない。
【0054】
図5は、通常製版モードにおいて、熱履歴制御を行った縦細線および横細線の穿孔状態図である。図5に示すように、縦細線および横細線は正常な径で略均一に穿孔されている。これに対し、孔版原紙穿孔装置1は、幅広製版モードにおいて、通常製版モードと同様に、孔版原紙M上の各画素に縦細線が含まれる場合や、孤立点が含まれる場合は縦細線および孤立点となる画素は熱履歴制御を行い、ベタ等となる画素は熱履歴制御を行わないが、横細線が含まれる場合については、通常製版モードと異なり、横細線に含まれる画素は熱履歴制御を行わない。
【0055】
図6は、幅広製版モードにおいて、縦細線および横細線の両方について熱履歴制御を行った穿孔状態図である。図6に示すように、縦細線は正常な径で略均一に穿孔されているが、横細線は正常な径よりも大きく穿孔されている。
【0056】
すなわち孔版原紙穿孔装置1は、幅広製版モードにおいて、穿孔データDにX方向に並ぶ、たとえば、10個以上の画素を連続して穿孔するとともに、穿孔する画素に対してY方向に前後する画素を全て非穿孔にする横細線データが含まれている、横細線を含む走査ラインでの発熱素子21の発熱時間(msec)を、横細線を含まない走査ラインでの発熱素子21の発熱時間(msec)よりも短くしている。
【0057】
図7は、幅広製版モードにおいて、横細線に熱履歴制御を行わない縦細線および横細線の穿孔状態図である。図7に示すように、縦細線および横細線は正常な径で略均一に穿孔されている。
【0058】
図8は、幅広製版モードについて、印字周期LSTを4msec、搬送速度vを10.34(mm/sec)、発熱電力Pを0.0584(W/dot)、電圧VHを15.98(V)、短パルス信号のストローブ信号ST0〜ST8を0.64(msec)、短パルス信号適用の発熱エネルギーEを0.0374(mJ)、長パルス信号のストローブ信号ST0〜ST8を0.80(msec)、長パルス信号適用の発熱エネルギーEを0.0467(mJ)として、横細線に熱履歴制御を行わない縦細線および横細線の穿孔状態図である。
【0059】
上記の実施形態によれば、製版モード設定手段42が通常製版モードと幅広製版モードとのいずれかを選択的に設定し、サーマルヘッド制御手段44が、幅広製版モードにおける発熱素子21の発熱エネルギー(mJ)を通常製版モードにおける発熱素子21の発熱エネルギー(mJ)よりも大きくなるように、サーマルヘッド2を制御することにより、孔版原紙Mを穿孔する際に必要な発熱エネルギー(mJ)が通常製版モードよりも幅広製版モードで大きくなり、孔版原紙Mを良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、サーマルヘッド制御手段44が、幅広製版モードにおける発熱素子21の発熱電力を通常製版モードにおける発熱素子21の発熱電力よりも小さくするとともに、幅広製版モードにおける発熱素子21の発熱時間(msec)を通常製版モードにおける発熱素子の発熱時間よりも長くすることにより、幅広製版モードでのピーク温度を通常製版モードのピーク温度よりも低くし、長い時間を掛けて孔版原紙Mをで穿孔するため、孔版原紙Mと発熱素子21との接触状態が良好な場合であっても径が大きくなり過ぎるのを回避しつつ、穿孔する時間が長くなることで良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、幅広製版モードにおける孔版原紙Mの搬送速度(mm/sec)を通常製版モードにおける孔版原紙の搬送速度(mm/sec)よりも遅くすることにより、孔版原紙Mと発熱素子21とが接触している時間を長くすることで良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0062】
上記の実施形態によれば、幅広製版モードにおいて、穿孔データDに横細線データが含まれている場合、横細線を含む走査ラインでの発熱素子21の発熱時間(msec)を、横細線を含まない走査ラインでの発熱素子21の発熱時間(msec)よりも短くすることにより、横細線を穿孔する場合であっても、互いに隣接する発熱素子21からの発熱エネルギー(mJ)によって正常な径よりも大きな穿孔となることを回避しつつ、横細線以外についても良好に穿孔できる確率を高くして穿孔の不発や穿孔径のバラツキを抑制できる。
【0063】
なお、本実施形態においては、孔版原紙穿孔装置1は、画像データGDを画像データ生成装置50から受け取るものとして説明したが、孔版原紙穿孔装置1は、画像データ生成装置50を内蔵するものであってもよい。
【0064】
なお、本実施形態においては、相対移動手段として孔版原紙MをX方向に搬送する原紙搬送手段3を用いて説明したが、特に限定されるものでなく、相対移動手段として孔版原紙Mを固定してサーマルヘッド2をX方向に移動させるサーマルヘッド移動手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
M 孔版原紙
X 副走査方向
Y 主走査方向
1 孔版原紙製版装置
2 サーマルヘッド
3 原紙搬送手段
44 サーマルヘッド制御手段
100 孔版原紙製版システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に複数の発熱素子が列設されたサーマルヘッドと、該サーマルヘッドに対して孔版原紙を副走査方向に相対移動させる相対移動手段と、前記サーマルヘッドを制御するサーマルヘッド制御手段とを備えた孔版原紙製版装置において、
前記孔版原紙の主走査方向の製版幅が所定の幅以内である製版を行う通常製版モードと前記孔版原紙の主走査方向の製版幅が前記所定の幅より広い幅の製版を行う幅広製版モードとのいずれかを選択的に設定する製版モード設定手段を備え、
前記サーマルヘッド制御手段が、前記幅広製版モードにおける前記発熱素子の発熱エネルギーを前記通常製版モードにおける前記発熱素子の発熱エネルギーよりも大きくなるように、前記サーマルヘッドを制御することを特徴とする孔版原紙製版装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッド制御手段が、前記幅広製版モードにおける前記発熱素子の発熱電力を前記通常製版モードにおける前記発熱素子の発熱電力よりも小さくするとともに、前記幅広製版モードにおける前記発熱素子の発熱時間を前記通常製版モードにおける前記発熱素子の発熱時間よりも長くすることを特徴とする請求項1に記載の孔版原紙製版装置。
【請求項3】
前記相対移動手段が、前記幅広製版モードにおける前記孔版原紙の相対移動速度を前記通常製版モードにおける前記孔版原紙の相対移動速度よりも遅くすることを特徴とする請求項2に記載の孔版原紙製版装置。
【請求項4】
前記サーマルヘッド制御手段が、主走査方向および副走査方向に並ぶ各画素のそれぞれに対応する穿孔データに基づいて前記サーマルヘッドを制御するものであり、
前記穿孔データに主走査方向に並ぶ画素を連続して穿孔するとともに、該穿孔する画素に対して副走査方向に前後する画素を全て非穿孔にする主走査方向細線データが含まれている場合の前記幅広製版モードにおける、前記連続して穿孔する画素を含む走査ラインでの発熱時間を、前記連続して穿孔する画素を含まない走査ラインでの前記幅広製版モードにおける前記発熱素子の発熱時間よりも短くすることを特徴とする請求項2または3に記載の孔版原紙製版装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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