説明

安否確認システム

【課題】被保護者の生活リズムが変わった場合に、誤報を防ぎ異常発生からその通知までの時間を短く維持するための廉価な安否確認システムを提供できない。
【解決手段】検出部10はトイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する。処理部14は、トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する。異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安否確認システムに関し、特に、被保護者の行動を感知して被保護者の安否を保護者に自動的に通知する安否確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の一人暮らしが増えており、離れて住む家族が高齢者の安否を確認したいという要望が高まっている。そこで、高齢者が専用の装置を操作することなく、日常の生活で行なわれる居室の扉の開閉や家電製品の使用の状況をセンサで感知し、高齢者の安否を家族に知らせるシステムが提案されている。
【0003】
しかし、扉の開閉等は被保護者に異常がなくとも行われない場合(開いた状態で放置等)があり、その場合にも異常状態を検出してしまう可能性があるので精度は高くない。精度を高めるために開閉センサの設置箇所を増やすと、コストアップに繋がると共に、扉開閉が行われないことによる誤検出の可能性は残る。
【0004】
これに対して、トイレは毎日必ず使用するものであるから、その使用状況を感知することにより高齢者の安否を確認する方法は優れている。例えば、トイレを使った後でロータンクに注がれる水の流れを流水センサが感知することとし、水の流れが予め設定された時間感知されない場合に被保護者へ異常発生を通知するようにした技術が知られている。
【0005】
この方法は、ライフラインである水道を異常検出のために使用しているため、高い精度で異常を検出できるが、専用の水道メータへ切り替える必要があり、コストが高くなってしまう。また、トイレが使用されず異常発生と判断する時間を6,12,24時間の中から選択ようにしているが、これらの時間は個人によって異なるトイレの使用間隔には必ずしも一致せず、異常発生までの時間が長くなってしまったり、逆に誤報が通知されたりする可能性がある。更に、体調不良や来客等で使用間隔が短くなることもあるが、一定の判断時間では、このような不慮の事態に対して適切に対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-185315号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】見守りトーヨーくん(http://www.sabi.jp/sensor.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、被保護者の生活リズムが変わった場合に、誤報を防ぎ異常発生からその通知までの時間を短く維持するための廉価な安否確認システムを提供できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被保護者の生活リズムに追随した安否確認を安価に実現するため、異常判定閾値の算出に対する前平均使用間隔と最新使用間隔の寄与割合を定める重み係数を導入したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の安否確認システムは、異常判定閾値の算出に、前平均使用間隔と最新使用間隔の寄与割合を定める重み係数を導入したため、生活リズムに変化があって最新使用間隔が変化した場合にも、その異常判定閾値に及ぼす程度を緩和できるので、誤報を防ぎ、異常発生から通知までの時間を短くすることが可能になるという利点がある。
【0011】
また、トイレの水道管の蛇口に装着可能な検出装置を用いるため、専用の給水管や水道メータの交換が不要となるので、安価に安否確認装置を提供できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の安否確認システムの動作を示したフローチャートである。
【図3】本発明における異常判定閾値算出時のマージン算出方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、被保護者の生活リズムに追随した安否確認を安価に実現するという目的を、トイレの水道管の蛇口に装着可能な検出装置を用い、異常を検出するための異常判定閾値の算出に、前平均使用間隔と最新使用間隔の算出寄与割合を定める重み係数を導入した。以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の安否確認システムの一実施を示すブロック図である。このシステムは、被保護者の居宅トイレの水道管に水が流れたことを検出しトイレ使用情報を出力する検出部10と、トイレ使用情報によりトイレの未使用時間が異常判定閾値を超えると異常通知を出力する情報処理部11と、情報処理部11からの異常通知を送信する送信部15と、異常通知を受信する受信部16とから構成されている。異常判定閾値は、前回のトイレ使用情報までの平均トイレ使用間隔を、この平均トイレ使用間隔と最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新し、それにマージンが加算して求める。
【0015】
情報処理部11および送信部15は被保護者の居宅毎に設けてもよいし、複数の被保護者の居宅に対応して設けてもよい。受信部16は保護者の居宅または保護者の居宅へ異常通知を中継する総合センターや販売店等に設置される。検出部10と情報処理部11の間、および送信部15と受信部16の間は無線または有線で接続される。
【0016】
検出部10は、トイレの水道管の蛇口に取り付けられ、例えば検出部10内に水車を設け、水流によって水車が回転することで水が流れていることを検出する構成や、水道管の径を挟んで2つの電極を設け、水道管に水が流れると電極の間に電流が流れることで水が流れていることを検出する構成が考えられる。検出部10は、水が流れていることを検出すると、そのことをトイレ使用情報として出力する。
【0017】
情報処理部11は、記憶部12、時計部13および処理部14から成る。時計部13は時刻を示している。情報処理部11は、検出部10からトイレ使用情報を受け取る毎に、時計部13が示しているその時刻(トイレ使用時刻)を記憶部12に記憶する。そして、現在のトイレ使用時刻から前回のトイレ使用時刻を減算することで最新のトイレ使用間隔(最新使用間隔) T を求め、前回までの平均トイレ使用間隔(前平均使用間隔) Sn-1 と最新使用間隔 T とから平均使用間隔 Sn を下記の式により算出する。算出された平均使用間隔 Sn は、次回の算出時に前平均使用間隔 Sn-1 として使用するため記憶部12に記憶しておく。

【0018】
ここで、n は平均使用間隔 Sn の算出に供された使用間隔のサンプル数、x は最新使用間隔 T が平均使用間隔 Sn の算出に及ぼす影響度を変更するための重み係数である。上記の式から明らかなように、例えば、重み係数 x =0.9とすると、最新使用間隔 T の10%だけが平均使用間隔 Sn の算出に組み込まれる。重み係数 x の技術的な意義は次のとおりである。
【0019】
トイレの使用間隔は、ある程度の大まかな生活リズムではあるが、例えば、被保護者が一時的に体調を崩したり、来客等のためトイレが頻繁に使用されて最新使用間隔 T が短くなる場合が想定される。それらを含めて、単純に場合に平均使用間隔 Sn を算出すると、正常な生活リズムにおける値と異なる小さい値となる。
【0020】
しかし、体調不良や来客等を自動的に判別して、平均使用間隔 Sn の算出サンプルから除外することは困難である。そこで、最新使用間隔 T に重み係数 x を乗算することで、、最新使用間隔 T が平均使用間隔 Sn の算出に及ぼす影響を緩和する。これによって、
イレギュラーな最新使用間隔 T のために、平均使用間隔 Sn が大きく変動することはなく、通常はサンプル数 n は大きいので、平均使用間隔 Sn は徐々にレギュラーな使用間隔 T による平均値に収束していく。
【0021】
情報処理部11は、上記の式によって算出した平均使用間隔 Sn にマージンを加算して異常判定閾値とする。これは、平均使用間隔 Sn を異常判定閾値とすると、通常の使用間隔時間を少し超えただけでも異常発生と判断してしまうことを回避するためである。マージンは、最近の所定数のサンプルに対する最新使用間隔 T と、その最新使用間隔 T を算出したとき迄の平均使用間隔 Sn との差分の内の最大の差分と定める。
【0022】
次に、以上のように構成された本安否確認システムの動作について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。サンプル数 n と重み係数 x とマージンを求めるためのサンプル所定数Nは予め処理部14に設定しておく。
【0023】
被保護者がトイレを使用しトイレの水道管に水が流れると(図2のステップA1)、検出部10がトイレ使用情報を情報処理部11へ通知する(ステップA2)。情報処理部11が検出部10からのトイレ使用情報を受けると、処理部14は使用時刻を記憶部12へ保持し(ステップA3)、最新使用間隔を算出・記憶する(ステップA4)。処理部14は、最新使用間隔と前平均使用間隔とから平均使用間隔を算出し、算出した平均使用間隔は記憶部12に記憶しておく(ステップA5)。
【0024】
そして、平均使用間隔にマージンを加算して異常判定閾値を算出し(ステップA6)、現在時刻から日中か夜間かを判断して(ステップA7)、対応する異常判定閾値を更新する(ステップA8、A9)。この時のマージン算出の詳細は後述する。異常判定閾値を日中用と夜間用の2種類を設けることにより、被保護者の日中と夜間の生活リズムの違いに追従した異常通知を実現することができる。
【0025】
一方、トイレの使用が無い場合(ステップA1)、処理部14は、現在時刻から日中か夜間かを判断して(ステップA10)、対応する異常判定閾値と未使用時間(現在時刻−前回使用時刻)を比較する(ステップA11、A12)。この結果、未使用時間が異常判定閾値を超えている場合は、異常が発生したと判断して、送信部15へ通知し、送信部15は受信部16へ異常発生通知を無線または有線にて行う(ステップA13)。保護者等は受信部16に通知された異常発生通知にて被保護者に異常が発生したことを知ることができる。
【0026】
図3は、異常判定閾値を求めるに当たり平均使用間隔に加算するマージン算出のフローチャートを示す。処理部14は、最新使用間隔(ステップA4)と平均使用間隔(ステップA5)を比較し(図3のステップB1)、最新使用間隔が平均使用間隔より大きい場合にその差分Yを算出する(ステップB2)。差分Yと過去最大の差分Ymaxを比較し(ステップB3)、差分Yの方が大きい場合は、差分YをYmaxとして保持する(ステップB4)。
【0027】
以上のステップB1〜B4をサンプル所定数Nまで繰り返す(ステップB5、B6)。図3の例では、サンプル所定数Nは100としている。次いで、サンプル所定数N満了時のYmaxを時間単位で切り上げ(ステップB7)、切り上げ後のYmaxをマージンとして設定して(ステップB8)、サンプル所定数NおよびYmaxに0を設定する(ステップB9)。なお、時間単位の切上げとは、0[min]≦Ymax≦59[min]の場合は1[h]、60[min]≦Ymax≦119[min]の場合は2[h]等)とすることを意味する。
【0028】
以上に説明した実施例では、検出部10は水道管に水が流れたことを検出してトイレ使用情報を出力しているが、この代りに、水道の蛇口を捻る動作を検出する構成としてもよい。
【0029】
また、送信部15に電子メール送信機能と無線LANまたは有線LANのインターフェースを設けるようにしてもよい。送信部15は、無線LANまたは有線LANケーブルにてルーターと接続し、異常発生時に予め設定された宛先に対して、インターネット回線を使用して異常発生の電子メールを送付する。
【0030】
保護者は、受信部16に通知される情報を元に被保護者の安否を確認することができる。受信部16は、例えば、携帯電話やPCの一部とすれば、送信部15との間の通信を既存のインフラを使用して行うことができので、安価にシステムを構築することができる。
【0031】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0032】
(付記1)トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する検出部と、前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する情報処理部とを有し、前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認システム。
【0033】
(付記2)前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする付記1に記載の安否確認システム。
【0034】
(付記3)トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する段階と、前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する段階とを有し、前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認方法。
【0035】
(付記4)前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする付記3に記載の安否確認方法。
【0036】
(付記5)トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する手順と、前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する手順とをコンピュータに実行させ、
前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認プログラム。
【0037】
(付記6)前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする付記5に記載の安否確認プログラム。
【符号の説明】
【0038】
10 検出部
11 情報処理部
12 記憶部
13 時計部
14 処理部
15 送信部
16 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する検出部と、
前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する情報処理部とを有し、
前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認システム。
【請求項2】
前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする請求項1に記載の安否確認システム。
【請求項3】
トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する段階と、
前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する段階とを有し、
前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認方法。
【請求項4】
前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする請求項3に記載の安否確認方法。
【請求項5】
トイレの水道管に水が流れたことを検出するとトイレ使用情報を出力する手順と、
前記トイレ使用情報を受け取る毎に、異常判定閾値を求め、トイレの未使用時間が該異常判定閾値を超えると異常通知を出力する手順とをコンピュータに実行させ、
前記異常判定閾値は、最近の所定数のトイレ使用情報に基づく平均トイレ使用間隔が該平均トイレ使用間隔および最新のトイレ使用間隔に重み係数を相補的に乗算することを通じて更新され、それにマージンを加算された値であることを特徴とする安否確認プログラム。
【請求項6】
前記マージンは、最近の所定数のトイレ使用情報それぞれに対する最新のトイレ使用間隔と、該最新のトイレ使用間隔を算出したとき迄の平均トイレ使用間隔との差分の内の最大の差分とすることを特徴とする請求項5に記載の安否確認プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4062(P2013−4062A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138190(P2011−138190)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】