説明

安定かつ活性なヒトOBタンパク質と抗体Fc鎖とのコンジュゲートを含む組成物および方法

【課題】(a)体重の調節、(b)脂肪症の調節、(c)糖尿病軽減治療、(d)血中脂質レベルの調節、(e)脂肪除外体重の増加、または(f)インスリン感受性の増加を行うことにより治療するための生理的pHで安定かつ活性であるOBタンパク質懸濁液の提供。
【解決手段】免疫グロブリンのFc領域をOBタンパク質部分のN末端に結合させることにより誘導体化されているヒトOBタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度における及び生理的pHまたはその付近における安定かつ活性なヒトOBタンパク質組成物に関する。また、そのような組成物の関連組成物、製造方法および使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
肥満の分子的基礎はほとんど知られていないが、「OB遺伝子」およびコードされたタンパク質(「OBタンパク質」)の同定により、身体の脂肪沈着を調節するために身体が用いているメカニズムが、ある程度解明されてきている(Zhangら, Nature 372: 425−432 (1994); またNature 374: 479 (1995)の訂正も参照されたい)。1996年2月22日付け公開のPCT公開WO 96/05309(発明の名称“Modulators of Body Weight, Corresponding Nucleic Acids and Proteins, and Diagnostic and Therapeutic Uses Thereof”)は、OBタンパク質および関連組成物および方法を十分に記載しており、これを参照により本明細書に組み入れることとする。ヒトOBタンパク質のアミノ酸配列は、WO 96/05309(これを参照により本明細書に組み入れることとする)の配列番号4および6(その公開の第172および174頁)に記載されており、該成熟タンパク質の第1アミノ酸残基は、22位に位置し、バリン残基である。該成熟タンパク質は、146残基(あるいは、49位のグルタミンが存在しない場合には、145残基(配列番号6))である。
【0003】
OBタンパク質は、ob/ob突然変異マウス(OB遺伝子産物の産生の欠損により肥満したマウス)および正常な野生型マウスの両方においてインビボで活性である。その生物活性は、とりわけ、体重減少を示す。一般的には、Barinaga, “Obese” Protein Slims Mice, Science 269: 475−456 (1995)およびFriedman, “The Alphabet of Weight Control”, Nature 385:119−120 (1997)を参照されたい。ob/ob突然変異マウスにおいてOBタンパク質を投与すると、例えば、血清インスリンレベルおよび血清グルコースレベルが減少することが公知である。また、OBタンパク質を投与すると、体脂肪が減少することが公知である。これは、ob/ob突然変異マウスおよび非肥満正常マウスの両方で認められた[Pelleymounterら, Science 269: 540−543 (1995); Halaasら, Science 269: 543−546 (1995), また、Campfieldら, Science 269: 546−549 (1995)(マイクログラム用量のOBタンパク質の末梢および中枢投与により、ob/obおよび食餌誘導肥満マウスでは食物摂取および体重が減少したが、db/db肥満マウスでは減少しなかった)も参照されたい]。これらの報告ではいずれも、最高用量においても毒性は認められていない。
【0004】
ヒトに注射するための医薬組成物の調製(物)に関しては、該ヒトアミノ酸配列は、比較的高濃度(例えば、液体1ml当たり活性タンパク質約2mg以上)においては生理的pHで不溶性であることが認められている。治療的に有効な量を大型哺乳動物(例えば、ヒト)に注射するには、ミリグラム(タンパク質)/kg体重の範囲の用量(例えば、0.5または1.0mg/kg/日以下)が望ましい。患者に不快感または恐らくは痛みを与えうる大容量の注射を避けるためには、タンパク質濃度を増加させる必要がある。
【0005】
組換えDNA技術の進歩に伴い、治療用組換えタンパク質が入手可能になったことは、タンパク質の製剤化における進歩をもたらした。タンパク質の修飾および融合タンパク質を記載している概説としては、Francis, Focus on Growth Factors : 4−10 (1992)が挙げられる。
【0006】
そのような1つの修飾は、免疫グロブリンのFc領域の使用である。抗体は、機能的に独立した2つの部分、すなわち、抗原に結合する「Fab」として公知の可変ドメインと、エフェクター機能(例えば、補体または食細胞)に対する結合をもたらす「Fc」として公知の定常ドメインとからなる。免疫グロブリンのFc部分は長い血漿半減期を有し、一方、Fabは短命である(Caponら, Nature 337:525−531 (1989))。
【0007】
より長い半減期を付与したり、あるいはFc受容体結合、プロテインA結合、補体結合、胎盤通過などの機能(これらはすべて、免疫グロブリンのFcタンパク質に存在する)を付与するために、Fcドメインを使用して、治療用タンパク質が構築されている(前掲誌)。例えば、IgG1抗体のFc領域が、ホジキン病腫瘍細胞、未分化リンパ腫細胞、T細胞白血病細胞および他の悪性細胞型上で発現されるCD30受容体に結合する分子であるCD30−LのN末端に融合されている(米国特許第5,480,981号を参照されたい)。抗炎症および抗拒絶物質であるIL−10をマウスFcγ2aに融合させて、該サイトカインの短い循環半減期を増加させる試みが行なわれている(Zheng, X.ら, The Journal of Immunology, 154: 5590−5600 (1995))。また、敗血症性ショックの患者を治療するために、ヒトIgG1のFcタンパク質に結合させた腫瘍壊死因子受容体を使用することが、研究により評価されている(Fisher, C.ら, N. Eng. J. Med., 334: 1697−1702 (1996); Van Zee, K.ら, The Journal of Immunology, 156: 2221−2230 (1996))。また、エイズ治療用タンパク質を製造するために、FcがCD4受容体と融合されている(Caponら, Nature, 337:525−531 (1989)を参照されたい)。また、インターロイキン2の短い半減期およびその全身毒性を克服するために、インターロイキン2のN末端がIgG1またはIgG3のFc部分に融合されている(Harvillら, Immunotechnology, : 95−105 (1995)を参照されたい)。
【0008】
インスリンに関しては、懸濁製剤が報告されている。しかしながら、インスリンに適用可能な条件は、OBタンパク質を含む他のいずれかのタンパク質の適用可能な条件を予測させるものではない。インスリンは、特定の物理的および化学的特性を有する非常に小さなタンパク質であり、これらの特性は、製剤化条件の決定に重要である。Brange, Galenics of Insulin, Springer−Verlag 1987は、インスリン懸濁剤を記載している(p. 36)。また、Hassellblattら, Handbook of Experimental Pharmacology New Series, Vol. XXXII−1/2 Springer−Verlag Berlin, Heidelburg, New York (1975)中のSchlichtkrullら. Insulin Preparations with Prolonged Effect, pp. 729−777も参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在のところ、生理的pHで少なくとも約2mg/mlの濃度のヒトOBタンパク質の安定な製剤の報告はなく、さらに、少なくとも約50mg/ml以上の安定な濃度の活性ヒトOBタンパク質の報告はない。さらに、保存安定性を改善するために、凍結または凍結乾燥形態を用いることが可能であるが、そのような形態は、本明細書に記載の、そのまま使用できる懸濁液形態ほどは望ましくない。凍結形態は、一定の凍結温度での保存を要するが、これは、一般消費者用の冷蔵庫および冷凍庫の除霜サイクルのため不可能な場合がある。さらに、凍結乾燥形態は希釈および混合を要するが、これは不便であり、患者の遵守を妨げる可能性がある。製造者の観点から見ると、凍結液の製造、保存および出荷は、高い経費を要し、そのまま使用できる製剤の配給より一層厳重な監督を要する。また、凍結乾燥製剤用の適当な希釈剤を製造し又は入手可能にすることは、そのような希釈剤が必要でない場合より高い経費を要し、より低効率である。小容量の注射により運搬されうる活性なOBタンパク質を含有するヒト用医薬組成物の濃縮形態が必要とされている。本発明は、これらの要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一定の懸濁製剤が、生理的pHで少なくとも約2mg/mlの濃度の安定なOBタンパク質の製剤化を可能にするという観察に由来するものである。本発明で用いる「生理的pH」なる語は、約6.0〜約8.0のpHを意味する。そのような組成物の使用は、比較的小容量のOBタンパク質治療薬の送達を可能にする。本明細書中で更に詳しく開示するとおり、沈殿剤の使用により、以下の特性を有するヒトOBタンパク質の懸濁液の製造が可能となる:
1.溶液形態の同じヒトOBタンパク質と比較した場合の、生理的pHにおける改善された安定性。後記実施例において、10mg/ml以上の濃度およびpH7のヒトOBタンパク質懸濁液を示すが、これは、溶解を可能にする最高pH(ヒトOBタンパク質の天然形態に関してはpH4であり、生理的pHにも満たない)における溶液中の同じ濃度のものと比べると、より良好なHPLC(高速液体クロマトグラフィー)プロフィールを有する。また、後記において、pH約7で5mg/mlの濃度のFc−OB融合タンパク質懸濁液を例示するが、これは、比較しうるFc−OB融合タンパク質溶液より少ない分解産物を保存に際して示す。
【0011】
2.溶液形態の同じヒトOBタンパク質と比較した場合の、持続的な注射時間放出プロフィール。後記実施例において、本発明の高濃縮ヒトOBタンパク質懸濁液を使用した場合の徐放効果を示す。物質の活性が比較的長時間維持され、したがって比較的高い効力が得られ、より少ない回数の注射しか必要とされない点で、そのような徐放効果は有利である。
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、少なくとも約2mg(タンパク質)/mlの濃度を有する生理的pHの活性ヒトOBタンパク質の安定製剤である。例えば、少なくとも2.0mg/mlの濃度およびpH7.0の活性ヒトOBタンパク質の安定製剤を提供する。濃度の上限は、ヒトへの投与に利用可能な懸濁液形態であり、後記のとおり、実施例には、生理的pH(例えば、pH6.0〜pH8.0)で100mg/mlもの濃度が示されている。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、少なくとも約10mg/mlの濃度を有する約6.0〜約8.0のpH範囲内の活性ヒトOBタンパク質の安定製剤に関する。
【0014】
さらにもう1つの態様において、本発明は、少なくとも約0.5mg/mlの濃度および約6.0〜約8.0のpHの、免疫グロブリンのFc領域の結合により誘導体化された活性ヒトOBタンパク質の安定製剤に関する。より詳しくは、pH約7.5で5mg/ml〜50mg/mlの濃度の活性Fc−OB融合タンパク質の安定製剤を提供する。
【0015】
さらに他の態様において、本発明は、pH6.5〜pH7.5で2mg(タンパク質)/ml以上の濃度の安定かつ活性なヒトOBタンパク質のための製剤を提供する。より詳しくは、pH7.0で20mg/ml〜100mg/mlの濃度の安定かつ活性なヒトOBタンパク質のための製剤を提供する。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、5.0〜8.0のpHで10mg/ml以上の濃度の安定かつ活性なヒトOBタンパク質のための製剤を提供する。
【0017】
さらにもう1つの態様において、本発明は、0.5mg/ml以上の濃度および約6.0〜約8.0のpHの、免疫グロブリンのFc領域の結合により誘導体化された安定かつ活性なヒトOBタンパク質のための製剤を提供する。より詳しくは、pH約7.5で5mg/ml〜50mg/mlの濃度の、安定かつ活性なFc−OB融合タンパク質のための製剤を提供する。
【0018】
本発明のその他の態様には、前記の医薬組成物、そのような組成物の製造方法、および本組成物を使用する治療方法、およびそのような治療のための本組成物を含有する医薬の製造方法が含まれる。
【0019】
図面の簡単な説明
図1Aおよび1Bは、(1A)実施例1の本発明ヒトOB懸濁液および(1B)実施例1に記載の対照ヒトOBタンパク質溶液に関する、マウスにおける用量反応曲線である。
【0020】
図2は、本発明OBタンパク質懸濁液および対照ヒトOBタンパク質溶液(実施例1に記載のとおり)に関する、イヌにおけるOBの血清レベルを示すグラフである。
【0021】
図3は、37℃で7週間のヒトOBタンパク質製剤の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のトレースである。実施例1のヒトOBタンパク質亜鉛懸濁液は中央のトレース、実施例1のヒトOBタンパク質溶液対照は上側の線、−80℃で56日間維持したヒトOBタンパク質懸濁液は下側の線である。
【0022】
図4は、19℃で56日間のヒトOBタンパク質製剤のRP−HPLCのトレースである。実施例1のヒトOB溶液は上側の線、実施例2のヒトOB結晶懸濁液は中央の線、−80℃で56日間の実施例2のヒトOB結晶懸濁液は下側の線である。
【0023】
図5A〜5Cは、ヒトmetFc−OBタンパク質のDNA配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)である。
【0024】
図6A〜6Cは、ヒトmetFc−OBタンパク質変異体のDNA配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)である。
【0025】
図7は、組換えメチオニルヒトFc−OBタンパク質に関する、逆相HPLCで測定した場合のasp 108(配列番号4の番号付けを使用するとasp 335)におけるイソaspの生成速度を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の安定かつ活性なOBタンパク質組成物は、該タンパク質部分が沈殿し液体部分中に懸濁しているため、一般に、懸濁液(懸濁剤)として分類される。該組成物は、活性なOBタンパク質部分、沈殿剤、pH調節剤および液体担体を含有する。このOBタンパク質は、無定形(アモルファス)または結晶形態である。
【0027】
好ましくは、ヒトにおいて治療用または美容用組成物として使用するためには、細菌発現に付随するN末端メチオニル残基を所望により有する天然ヒトOBタンパク質(Zhangら, Nature, 前掲を参照されたい)のアミノ酸配列を有するOBタンパク質を使用する。使用可能なこのOBタンパク質を製造するための組換えDNA手段に関しては、参照により本明細書に組み入れるPCT公開WO96/05309を参照されたい。選択されたアミノ酸の変更が可能であるが、そのような変更は、該タンパク質の全体的なフォールディングまたは活性が維持される場合に限られる。以下の表1は、特定の特性(塩基性、酸性、極性、疎水性、芳香性およびサイズ(小型))に関する、使用可能な同類アミノ酸置換を記載する。一般的には、参照により本明細書に組み入れるFordら, Protein Expression and Purification : 95−107, 1991を参照されたい。また、小さなアミノ末端伸長、例えばアミノ末端メチオニン残基、約20〜25残基までの小さなリンカーペプチドまたは精製を容易にする小さな伸長、例えばポリヒスチジン領域、抗原エピトープまたは結合ドメインが存在することが可能である。
【0028】
【表1】

【0029】
一般に、本懸濁液において増加した安定性を示すヒトOBタンパク質は、生理的pHにさらされると、溶液中において、露出した疎水性領域を有するヒトOBタンパク質である。また、免疫グロブリンのFc領域を該OBタンパク質部分に結合させることにより誘導体化されたヒトOBタンパク質は、本懸濁液において増加した安定性を示す。
【0030】
一般に、免疫グロブリンのFc領域は、ヒトOBタンパク質に対して遺伝的または化学的に融合させることが可能である。好ましくは、該Fc領域を、該OBタンパク質のN末端において融合させる。好ましいFc−OB融合タンパク質に関しては、参照により本明細書に組み入れる1996年12月20日付けの同時係属米国特許出願第08/770,973号を参照されたい。
【0031】
好ましくは、ヒト免疫グロブリンIgG−1重鎖のアミノ酸配列(Ellison, J. W.ら, Nucleic Acids Res. 10:4071−4079 (1982)を参照されたい)を有するFc領域を使用する。好ましいFc領域を、配列番号2(図5を参照されたい)に記載する。配列番号2の組換えFc−OB配列は、378アミノ酸のFc−OBタンパク質である(メチオニン残基は数えていない)。図5のFc−OBタンパク質の最初のアミノ酸であるグルタミン酸を+1とし、この場合、該メチオニンは−1位である。Fc部分の変異体または類似体を、例えば、アミノ酸残基または塩基対の種々の置換の作製により構築することができる。
【0032】
Fc配列のジスルフィド架橋の形成を妨げるために、システイン残基を欠失させたり又は他のアミノ酸で置換することが可能である。特に、配列番号2の5位のアミノ酸はシステイン残基である。その5位のシステイン残基を除去したり、あるいはそれを1以上のアミノ酸で置換することが可能である。例えば、5位のシステイン残基をアラニン残基で置換して、変異アミノ酸配列を得ることが可能である。同様に、配列番号2の5位のシステインを、セリンまたは他のアミノ酸残基で置換したり、あるいは欠失させることが可能である。
【0033】
また、1、2、3、4および5位のアミノ酸を欠失させて、373アミノ酸のFc−OBタンパク質を得ることにより(メチオニン残基は数えていない)、変異体または類似体を調製することができる。この配列は配列番号4(図6を参照されたい)に記載されている。また、これらの位置での置換も可能であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
また、Fc受容体結合部位および補体(C1q)結合部位を除去するために、4個のアミノ酸の置換を導入する修飾を行なうことも可能である。配列番号4の番号付けによれば、これらの変異体修飾には、15位のロイシンからグルタミン酸への置換、98位のグルタミン酸からアラニンへの置換、ならびに100位および102位のリシンからアラニンへの置換が含まれる。
【0035】
同様に、1以上のチロシン残基をフェニルアラニン残基で置換することも可能である。前記のとおり、選択されたアミノ酸の変更が可能であるが、そのような変更は、該融合タンパク質の全体的なフォールディングまたは活性が維持される場合に限られる。
【0036】
さらに、該Fc領域を、化学的な又は種々の長さのアミノ酸の「リンカー」部分により該Fc−OB融合タンパク質のヒトOBタンパク質に結合させることができる。そのような化学的リンカーは当技術分野でよく知られている。アミノ酸リンカー配列には、以下のものを含めることが可能であるが、それらに限定されるものではない:
(a)ala、ala、ala;
(b)ala、ala、ala、ala;
(c)ala、ala、ala、ala、ala;
(d)gly、gly;
(e)gly、gly、gly;
(f)gly、gly、gly、gly、gly;
(g)gly、gly、gly、gly、gly、gly、gly;
(h)gly−pro−gly;
(i)gly、gly、pro、gly、gly;および
(j)(a)〜(i)項の任意の組合せ。
【0037】
本沈殿剤は、カチオン成分を有する塩であることが可能であり、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、鉄、コバルト、マンガン、カリウムおよびニッケルから選択することができる。好ましくは、該塩は、医薬組成物中での使用に適したものである。
【0038】
あるいは、沈殿剤は、タンパク質を沈殿させることが公知の医薬上許容される物質、例えば、ポリエチレングリコールまたは次の段落に記載する他の水溶性重合体から選択することができる。有用な沈殿剤は、中性pHでOBタンパク質の沈殿を誘発するが、それは、生理的に適合する溶媒での希釈に際して可逆的または再溶解可能である。適当な沈殿剤の不存在下では、OBタンパク質は中性pHで沈殿して、生理的に適合する溶媒での希釈により可逆的でない形態になる。
【0039】
該pH範囲は、好ましくは、pH約4.0〜pH約8.0、より好ましくは、約6.5〜約7.5である。医薬組成物に最も好ましいpHは、使用するOBタンパク質に、選ばれたタンパク質濃度においてその最高の生物活性を保有させるpHである。非生理的pHにおいても、本発明OBタンパク質懸濁液は利点を有する場合がある。5.0未満のpHでは、本発明OBタンパク質懸濁液は、等しいpHおよび等しい濃度のOBタンパク質溶液より安定(保存寿命に関して)である可能性がある。例えば、pH4.0および50mg/mlの濃度では、本懸濁液は、インビボで投与されると、同等の溶液より大きな生物学的活性を有する可能性がある。
【0040】
該バッファーは、該組成物の沈殿特性を改変することなく所望のpHを与えるバッファーから選択することができる。好ましくは、バッファーは、医薬製剤に許容されるものである。トリス、MESおよびPIPESは、無定形形態および結晶形態の両方に許容される。リン酸塩は、結晶形態に好ましいバッファーである。
【0041】
該最終懸濁液は、治療投与の容易さの点で、好ましくは、5mg/ml〜100mg/mlの濃度を有する。
【0042】
使用方法
治療剤
治療用途には、体重の調節、糖尿病の治療または予防、血中脂質の減少(および関連状態の治療)、脂肪除外体重の増加、およびインスリン感受性の増加が含まれる。また、本組成物は、前記状態の治療または改善のための1以上の医薬の製造に使用することができる。投与方法は、典型的には、注射であるが、他の手段、例えば肺運搬を用いることができる。例えば、参照により本明細書に組み入れるPCT WO 96/05309(83頁以降)を参照されたい。本懸濁液を噴霧乾燥して、10ミクロン未満、より好ましくは0.5〜5ミクロンの平均サイズを有する粒子にすることが可能である。
【0043】
体重の調節
本組成物および方法は、体重の減少のために使用することができる。別の見方をすると、本組成物は、所望の体重または脂質症(肥満)レベルの維持のために使用することができる。マウスモデルにおいて示されているとおり(前掲を参照されたい)、本OBタンパク質の投与は体重減少をもたらす。失われた体重は、主として、脂肪組織または脂肪の重量である。そのような体重減少は、付随する状態(例えば、後記のもの)の治療に結びつく可能性があり、したがって治療用途を構成する。また、体重の調節が専ら容姿の改善のためである場合には、本発明は美容用途を提供する。
【0044】
糖尿病の治療
本組成物および方法は、II型糖尿病の予防または治療において使用することができる。II型糖尿病は肥満と相関しうるため、体重を減少させる(または所望の体重を維持する、または脂肪症レベルを減少もしくは維持する)ための本発明の使用はまた、糖尿病の発生を軽減または予防しうる。さらに、体重減少を引き起こすのに十分な用量の不存在下であっても、本組成物を使用して糖尿病を予防または改善することが可能である。
【0045】
血中脂質の調節
本組成物および方法は、血中脂質レベルの調節において使用することができる。理論的には、血中脂質レベルの減少のみを望む場合、または血中脂質レベルの維持を望む場合には、その用量は、体重減少を引き起こすには不十分であろう。したがって、肥満患者の初期治療経過中は、体重の減少およびそれに伴う血中脂質レベルの減少が達成される用量を投与することが可能である。十分な体重減少が達成されたら、体重が再び増加するのを防ぐのに十分で、かつ、所望の血中脂質レベルまたは例えば本明細書に記載の他の状態を維持するのに十分な用量を投与することができる。OBタンパク質の効果は可逆的であるため(例えば、Campfieldら, Science 269: 546−549 (1995) p. 547)、これらの用量は実験的に決定することができる。したがって、体重減少を望まない場合に、ある用量で体重減少が生じることが認められたら、所望の血中脂質レベルを得、かつ、所望の体重を維持するために、より低い用量を投与することになる。例えば、参照により本明細書に組み入れるPCT公開WO 97/06816を参照されたい。
【0046】
脂肪除外体重またはインスリン感受性の増加
理論的には、脂肪除外体重の増加のみを望む場合には、その用量は、体重減少を引き起こすには不十分であろう。したがって、肥満者の初期治療経過中は、体重の減少およびそれに伴う脂肪組織の減少/脂肪除外体重の増加が達成される用量を投与することが可能である。十分な体重減少が達成されたら、体重が再び増加するのを防ぐのに十分で、かつ、所望の脂肪除外重の増加(または脂肪除外体重の減少(depletion)の予防)を維持するのに十分な用量を投与することができる。インスリンに対する個体の感受性を増加させるためには、投与に関する同様の考慮事項を考慮することができる。糖尿病の治療のために個体に投与するインスリン(または、潜在的には、アミリン、アミリンアンタゴニストもしくはアゴニスト、またはチアゾリジンジオン、または他の潜在的な糖尿病治療薬)の量を減少させるのに十分な、体重減少を伴わない脂肪除外体重の増加を達成することが可能である。全身的(overall)強度を増加するためには、投与に関する同様の考慮事項を考慮することが可能である。全身的強度の増加を伴う脂肪除外体重の増加は、体重減少を引き起こすには不十分な用量で達成することが可能である。赤血球(および血中の酸素化)の増加、骨吸収または骨粗鬆症の軽減などの他の利点も、体重減少を伴うことなく達成することが可能である。例えば、参照により本明細書に組み入れるPCT公開WO 97/18833を参照されたい。
【0047】
組合せ療法
本組成物および方法は、改変された食事および運動などの他の療法と共に用いることができる。他の医薬、例えば、糖尿病の治療に有用な薬(例えば、インスリンおよび恐らくはアミリン、そのアンタゴニストもしくはアゴニスト、チアゾリジンジオン(例えば、参照により本明細書に組み入れるPCT公開WO 98/08512を参照されたい)、または他の潜在的糖尿病治療薬)、コレステロールおよび血圧降下薬(例えば、血中脂質レベルを減少させる薬物または他の心臓血管薬)、活動亢進薬(例えば、アンフェタミン)、利尿薬(液体の排泄のためのもの)、および食欲抑制剤(例えば、神経ペプチドγ受容体に作用する物質またはセロトニン再取込み抑制剤)を使用することができる。そのような投与は、同時にまたは連続的に行なうことができる。さらに、本方法は、身体の全体的な外観を変えるよう意図された整容手術(例えば、体重を減少させるよう意図された脂肪吸引またはレーザー手術、または体の外観上のかさを増加させるよう意図されたインプラント手術)などの外科的方法と共に用いることができる。動脈斑などの脂肪沈着による血管の遮断阻害により引き起こされる有害な状態を軽減するよう意図された心臓手術(バイパス手術その他の手術)から得られる健康上の利益は、本組成物および方法の併用により増強される可能性がある。また、超音波またはレーザー法などの胆石除去方法を、一連の本治療方法の前、間または後のいずれかで使用することができる。さらに、本方法は、骨折、筋肉損傷の手術または療法、または脂肪除外組織量の増加により改善される他の療法の補助手段として用いることができる。
【0048】
以下の実施例は、本発明をより完全に例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1には、pH7.0で100mg/mlの濃度の無定形(後記の結晶性のものと対比させるため)ヒトOBタンパク質懸濁液の製造を記載する。実施例2には、結晶性OBタンパク質懸濁液の製造を記載する。実施例3では、OBタンパク質溶液と比較した場合のOBタンパク質懸濁液に関する改善された用量反応を示す。実施例4では、イヌモデルにおける本懸濁液の遅延時間(delayed time)作用プロフィールを示す。実施例5には、無定形Fc−OBタンパク質懸濁液の製造を記載する。実施例6および7では、本懸濁液の改善された安定性を示す。
【実施例】
【0049】
実施例1:無定形OBタンパク質懸濁液の製造
本実施例は、本発明のヒトOBタンパク質懸濁液の1つの製造を例示する。亜鉛塩での沈殿により、無定形ヒトOBタンパク質懸濁液を製造した。最終pHである6.0〜pH8.0において、100mg(タンパク質)/ml(液体)の濃度が得られた。また、ヒトOBタンパク質溶液に関するpH4.0の対照組成物を記載する。
【0050】
組成物
タンパク質部分:アミノ酸番号22(Val)から開始し、アミノ酸番号167で終結し、N末端にメチオニル残基を有する、PCT公開WO 96/05309の配列番号4に記載の組換えメチオニルヒトOBタンパク質(「rmetHu−レプチン」)。
沈殿剤:塩化亜鉛
バッファー:トリス、MES、ピペス
最終pH:6.0〜8.0
製造プロトコール:組換えメチオニルヒトOBタンパク質(「rmetHu−レプチン」)溶液を、注射用水中で約40mg/mlにまで濃縮し、HClでpH3.0にまで酸性化した。塩化亜鉛を加え、適当なバッファーを加えることによりpHを中性付近(約pH7.0)に調節することにより、懸濁液を得た。トリス、MESおよびPIPESバッファーが成功裡に使用されている。該最終条件は、典型的には、10〜15mMバッファー、20〜1000μM亜鉛、pH6.0〜8.0、および10mg/mlのrmetHu−レプチンであった。該粒子を4℃で数時間沈降させ、該上清を除去することにより、該懸濁液が濃縮されている。最高濃度が得られるまで、この手順を数回繰返すことが可能であり、約100mg/mlの懸濁液を得るためにそれを用いた。
【0051】
対照組成物:10mM酢酸塩および5% w/vソルビトールを含有する20mg/ml、pH4.0の組換えメチオニルヒトOBタンパク質(前記)溶液を、対照組成物として使用した。
【0052】
実施例2:結晶性OBタンパク質懸濁液の製造
本実施例は、本発明の結晶性OBタンパク質懸濁液の製造を例示する。
【0053】
タンパク質部分:前記実施例1と同じ組換えメチオニルヒトOBタンパク質を使用した。
【0054】
方法:1mM HCl中15mg/mlの濃度のrmetHu−レプチンを、4M NaCl、100mMトリス(pH8.5)、2% v/vエタノールと1:1の比で4℃で混合した。ゆっくり数時間かけて温度を14℃〜25℃に調節し、その温度を、最終温度への加温の持続時間に応じて少なくとも2時間維持することにより、結晶が自然に生成した。遠心分離および再懸濁(適当な結晶安定化溶媒中)により該結晶を収穫することにより、該「母液」(すなわち、該結晶が成長する場となった液体)を、より適当な注射用溶媒で置換した。適当な置換溶媒は、20〜25%ポリエチレングリコール[約4000ダルトン〜約20,000ダルトンの分子量を有するもの(この「約」なる語は、市販のPEG調製物に関する分子量のおよその平均を意味する)]、適当な中性pHバッファー、好ましくはpH約6.0〜pH約8.0のもの、および、好ましくは、pH6.0〜pH7.5の10mMリン酸塩バッファー、および2%エタノールv/vである。典型的な調製物においては、ある程度の残留塩(通常、0.25M未満)が残存しうる。
【0055】
実施例3:OBタンパク質溶液と比較した場合のOBタンパク質懸濁液に関する改善された用量反応
本実施例では、本OBタンパク質懸濁液が、OBタンパク質溶液より有効であることを示す。正常な痩せたマウスに、1、10および50mg(タンパク質)/kg体重の本懸濁液または同じ用量のOBタンパク質溶液を、5日間、毎日注射した。該懸濁液を与えたマウスは、与えたOBタンパク質の質量単位当たり、等しい用量の該溶液製剤を与えたマウスより、大きな体重減少を示した。これを図1Aおよび図1Bに示す。図1Aは、実施例1の懸濁液を与えた場合の体重変化率(%)を示す。図1Bは、実施例1の対照溶液を与えた場合の体重変化率(%)を示す。
【0056】
これは、同じ用量の本懸濁液が、溶液形態で与えられた場合より有効であることを示している。理論に束縛されることを望むものではないが、これは、該懸濁液が該溶液より遅い吸収速度を有することによる可能性がある。該懸濁液は、血中に進入する前に溶解される必要があり、したがってこの徐放効果は、より高い効力をもたらす。質量の点では、該タンパク質の必要投与量は、懸濁液においては溶液の場合より少なくてすむ。さらに、溶液においては、5日(投与の最終日)の時点で、10mg/kgの用量と50mg/kgの用量との間で差がない(以下の表2を参照されたい)。該懸濁液は、該溶液製剤より決定的な用量反応曲線を与える。
【0057】
【表2】

【0058】
方法:
動物:正常なCD−1マウスを使用した。
基礎体重:約20グラム。
投与:動物の同一部位に、5日間毎日、皮下注射した。
取扱い:動物は集団で収容し、それらの動物には任意量の食餌を与えた。
【0059】
組成物:
溶液:実施例1のrmetHu−レプチン溶液を20mg/mlの濃度で使用した。
懸濁液:実施例1のrmetHu−レプチン懸濁液をpH7.0、10mM MESバッファー、500mM Zn、20mg/mlで使用した。
PBS:リン酸緩衝食塩水をプラシーボとして使用した。(タンパク質の不存在下で懸濁液の液体または溶液の液体のみを使用する対照に関する用量反応は、PBSの場合に類似していた。データは示していない)。
【0060】
実施例4:イヌにおけるOBタンパク質血清レベル
本実施例は、本懸濁液の遅延時間作用プロフィールを示す。
方法:rmetHu−レプチンの懸濁液または溶液をビーグル犬に投与した。血清を採取し、OBタンパク質レベルを、図2に示されている時点で測定した。
【0061】
【表3】

【0062】
使用した組成物:
溶液:実施例1に記載の溶液を5mg/kg/日の用量で使用した。
懸濁液:実施例2に記載の懸濁液を使用した。表を参照されたい。
【0063】
動物:表3に示すデータは、3匹の動物の平均である。動物は正常なビーグル犬であった。
取扱い:動物は1匹ずつ収容し、それらの動物には任意量の食餌を与えた。優良動物取扱い規範(good animal handling practices)を遵守した。
【0064】
アッセイ:Hottaら, J. Biol. Chem 271:255327−25331 (1996)に記載されているとおりに、抗体アッセイを用いた。
結果:図2から認められるとおり、該溶液の濃度は、タンパク質の投与後1〜2時間で最大になり、一方、該懸濁液の濃度は、それよりはるかに後の10〜12時間後に最大になる。このことは、該懸濁液が、より長時間、最小有効量を維持することを示している。
【0065】
実施例5:無定形Fc−OBタンパク質懸濁液の製造
本実施例は、本発明のヒトFc−OBタンパク質懸濁液の1つの製造を例示する。亜鉛塩での沈殿により、無定形ヒトFc−OBタンパク質懸濁液を製造した。また、ヒトFc−OBタンパク質溶液に関するpH7.5の対照組成物を記載する。
【0066】
組成物:
タンパク質部分:配列番号4に記載の組換えメチオニルヒトFc−OBタンパク質(「rmetHu−Fc−レプチン」)(これは、373アミノ酸の融合タンパク質であり、該タンパク質のFc部分はアミノ酸1〜227であり、該タンパク質のヒトOBタンパク質部分はアミノ酸228〜373であり、そのN末端にメチオニル残基を有する)。
沈殿剤:塩化亜鉛
バッファー:100mMトリス
最終pH:7.5
製造プロトコール:rmetHu−Fc−レプチン溶液を、100mMトリスバッファー(pH7.5)中、約5mg/mlまで濃縮した。塩化亜鉛を加えて、該懸濁液を得た。
【0067】
対照組成物:100mMトリスを含有する5mg/ml、pH7.5のrmetHu−Fc−レプチン溶液(前記)を、対照組成物として使用した。
【0068】
実施例6:本ヒトOBタンパク質懸濁液の安定性
本実施例では、本懸濁液の無定形形態および結晶形態の両方が、促進(accelerated)安定性アッセイ条件下で、溶液中の物質より安定であることを示す。
【0069】
図3は、亜鉛無定形形態の本懸濁液(実施例1のとおり)を溶液形態(同様に実施例1のとおり)と37℃で7週間比較した場合のRP−HPLCのトレースを示す。図から認められるとおり、本懸濁液(中央の線)は、該溶液形態(上側の線)より少数のピーク(より少数の分解産物を示す)を有する。比較として、下側の線は、−80℃で7週間保存されていた亜鉛無定形形態を示す。
【0070】
図4は、実施例2の結晶懸濁液形態を溶液形態(実施例1のもの)と比較した場合のRP−HPLCのトレースを示す。該物質は、19℃で56日間保存した。(37℃での保存は適当な条件ではない。なぜなら、該結晶形態はその結晶構造を37℃で失うからである)。図4は、該溶液形態(主ピーク=86%)では、該懸濁液形態(主ピーク=94%)の場合より多数のピーク(より多数の分解を示す)が存在することを示している。下側の線の対照は、−80℃で56日間保存した結晶形態であった。4℃では、分解がより遅く生じたものの、同様の結果が認められた。
【0071】
該主分解産物は、アミノ酸108位(「Val」残基を1位として使用するPCT WO 96/05309の配列番号4に従う場合)のアスパルタートであるらしかった。該分子の安定性を増加させるために、この位置における、より安定な化学的部分(例えば、別のアミノ酸)を、実験的に選択することが可能である。全体的に見て、本発明の懸濁液は、OBタンパク質溶液より安定である。
【0072】
実施例7:本ヒトFc−OBタンパク質懸濁液の安定性
本実施例では、本Fc−OBタンパク質懸濁液の無定形形態が、促進安定性アッセイ条件下で、溶液中の物質より安定であることを示す。
【0073】
本懸濁液の亜鉛無定形形態(実施例5のとおり)および溶液形態(同様に実施例5のとおり)を、該懸濁液および溶液の両形態を4℃、29℃および37℃で2週間保存することにより、安定性試験に付した。図7に示すとおり、29℃および37℃で保存したFc−レプチン懸濁液は、それぞれ同じ温度で保存したFc−レプチン溶液より低い割合の分解産物(該OBタンパク質のアミノ酸108位のアスパルタートに関連しているもの)を示している。
【0074】
以上、本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、変更および修飾が当業者に見出されると理解される。したがって、添付の請求の範囲は、特許請求されている本発明の範囲内に含まれる同等なすべての変更を含むと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】実施例1の本発明ヒトOB懸濁液に関する、マウスにおける用量反応曲線である。
【図1B】実施例1に記載の対照ヒトOBタンパク質溶液に関する、マウスにおける用量反応曲線である。
【図2】本発明OBタンパク質懸濁液および対照ヒトOBタンパク質溶液(実施例1に記載のとおり)に関する、イヌにおけるOBの血清レベルを示すグラフである。
【図3】37℃で7週間のヒトOBタンパク質製剤の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のトレースである。実施例1のヒトOBタンパク質亜鉛懸濁液は中央のトレース、実施例1のヒトOBタンパク質溶液対照は上側の線、−80℃で56日間維持したヒトOBタンパク質懸濁液は下側の線である。
【図4】19℃で56日間のヒトOBタンパク質製剤のRP−HPLCのトレースである。実施例1のヒトOB溶液は上側の線、実施例2のヒトOB結晶懸濁液は中央の線、−80℃で56日間の実施例2のヒトOB結晶懸濁液は下側の線である。
【図5A】ヒトmetFc−OBタンパク質のDNA配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)である。
【図5B】ヒトmetFc−OBタンパク質のDNA配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)である。
【図5C】ヒトmetFc−OBタンパク質のDNA配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)である。
【図6A】ヒトmetFc−OBタンパク質変異体のDNA配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)である。
【図6B】ヒトmetFc−OBタンパク質変異体のDNA配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)である。
【図6C】ヒトmetFc−OBタンパク質変異体のDNA配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)である。
【図7】組換えメチオニルヒトFc−OBタンパク質に関する、逆相HPLCで測定した場合のasp 108(配列番号4の番号付けを使用するとasp 335)におけるイソaspの生成速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約6.0〜約8.0のpHおよび少なくとも0.5mg/mlの濃度を有するヒトOBタンパク質懸濁液であって、該OBタンパク質が、免疫グロブリンのFc領域を該OBタンパク質部分のN末端に結合させることにより誘導体化されていることを特徴とするヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項2】
該ヒトFc−OBタンパク質のFc部分が、
(a)配列番号2および4に記載のFcアミノ酸配列;
(b)以下の位置(配列番号2の番号付けを使用している)の1以上において置換された異なるアミノ酸を有するか又は欠失している(a)項のアミノ酸配列:
(i)アラニンまたはセリン残基で置換された1以上のシステイン残基;
(ii)フェニルアラニン残基で置換された1以上のチロシン残基;
(iii)アラニンで置換された5位のアミノ酸;
(iv)グルタミン酸で置換された20位のアミノ酸;
(v)アラニンで置換された103位のアミノ酸;
(vi)アラニンで置換された105位のアミノ酸;
(vii)アラニンで置換された107位のアミノ酸;
(viii)欠失している1、2、3、4または5位のアミノ酸;
(ix)Fc受容体結合部位を除去するために置換された又は欠失している1以上の残基;
(x)補体(C1q)結合部位を除去するために置換された又は欠失している1以上の残基;および
(xi)i〜x項の組合せ;および
(c)N末端にメチオニル残基を有する(a)または(b)項のアミノ酸配列;
よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項3】
該濃度が少なくとも5mg/mlである、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項4】
該濃度が5mg/ml〜50mg/mlである、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項5】
該pHがpH7.0である、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項6】
該ヒトOBタンパク質がrmetHu−Fc−レプチンである、請求項2に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項7】
医薬上許容される沈殿剤を含有する、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項8】
塩および水溶性重合体から選ばれる沈殿剤を含有する、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項9】
カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、鉄、コバルト、マンガン、カリウムおよびニッケルから選ばれる沈殿剤を含有する、請求項1に記載のヒトOBタンパク質懸濁液。
【請求項10】
請求項1に記載のヒトOB懸濁液の有効量を投与することにより、
(a)体重の調節、
(b)脂肪症の調節、
(c)糖尿病、
(d)血中脂質レベルの調節、
(e)脂肪除外体重の増加、および
(f)インスリン感受性の増加
から選ばれる状態に関して個体を治療する方法。
【請求項11】
沈殿剤と溶液中のヒトOBタンパク質(該OBタンパク質は、免疫グロブリンのFc領域を該OBタンパク質部分のN末端に結合させることにより誘導体化されている)とを適当な条件下で一緒にし、該ヒトOBタンパク質を沈殿させ、前記の沈殿したヒトOBタンパク質を集め、所望により該ヒトOBタンパク質を希釈剤中に再懸濁させることを含んでなる、ヒトOBタンパク質懸濁液の製造方法。
【請求項12】
該ヒトOBタンパク質を、6.0〜8.0のpHを有する希釈剤中に再懸濁させる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
該ヒトOBタンパク質がrmetHu−Fc−レプチンである、請求項11に記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−150369(P2008−150369A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317951(P2007−317951)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【分割の表示】特願平10−544338の分割
【原出願日】平成10年4月16日(1998.4.16)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】