説明

安定した高内相エマルジョンおよびその組成物

高内相エマルジョンおよびこれらから作製された最終用途の組成物が記載されている。この高内相エマルジョンは、優れた安定性および感覚的特性を有し、20重量%未満の、エラストマー、乳化剤およびポリエーテルおよび/またはポリグリセリン架橋エラストマーとして特徴付けられる立体安定剤と共に調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した高内相エマルジョン(HIPE)およびこの高内相エマルジョンを含む組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、様々な最終用途のスキンケア組成物のためのベース組成物としての機能を果たすのに適した安定した高内相エマルジョンを対象とする。本発明のHIPEは、驚くべきことに、油溶性マイクロスフェアと共に配合された場合優れたウィッキング能を示す。このHIPEはまた、優れた安定性および感覚的特性を示す。さらに、本発明のHIPEは、20重量%未満のエラストマーと共に場合によって配合し得る。
【背景技術】
【0002】
有機エステルおよび炭化水素、特にペトロラタムを含む皮膚軟化剤は、皮膚コンディショニング剤として長期間医薬に使用されてきた。これらの物質は、水に次いで2番目の最適な保湿成分である。これらは、主として密閉性バリアとして機能する。ヒトの皮膚角質層外層の含水量は、乾燥した皮膚症状の外観を支配する要因である。角質層が10から20%の範囲内の十分な水分量を含む場合、皮膚は柔軟であり続けている。しかし、含水量が10%未満に低下すると、角質層は脆く、ざらざらになることが多く、落屑およびひび割れを示し得る。
【0003】
角質層は、その水を、表皮の深層から拡散によって、または水と直接接触させた場合に受け取る。この拡散工程は、皮膚の含水量および濃度勾配によって制御される。非常に乾燥した環境では、外部皮膚層からの水の喪失は著しく、拡散による補充速度を超えることが多い。皮膚の表面に置かれた密閉性または半密閉性バリア物質は、環境への水の喪失を遅延させる役割を果たす。バリア物質は、皮膚表面が、例えば拡散メカニズムを介して潤いを取り戻すことも可能にする。
【0004】
多くの有効なおよび経済的な皮膚コンディショニング剤が存在するが、それにもかかわらず、これらはある種の欠点を持つ。
【0005】
皮膚軟化剤タイプは、油中水型エマルジョンとして供給されることが多い。これは、長期の貯蔵安定性を保証するのに十分な程度に、油相と水相の間の限界配合バランスを達成することが困難である。この限界バランスの一部は、内相容積である。限界容積は、この系を生成し、安定化させる化学的および物理的相互作用を最大化するように得られなければならない。この限界容積が適切に平衡を保っていないと、この製品は粘度変化および最終的には相分離を受け得る。通常、この最適容積は極めて大きく、これが外相の容積サイズを制限し、この系は長引く好ましくない緩除な破壊特性を示す。この限界内相容積の制約が機能を低下させ、好ましくない感触特性を加え得る。
【0006】
他方、無水系はエマルジョンの安定性に関連するこの問題を回避させる。残念ながら、無水系ではその他の審美的問題が生じる。例えば、すべての油性相材料は高濃度において相溶性であるとは限らない。さらに、ペトロラタムなどの密閉剤は、比較的べとつく。該密閉剤は、衣類上に転移するおよび石鹸で洗浄することによって皮膚から容易に除去されないという欠点がある。あるいは、該密閉剤は表皮中への十分な浸透を可能にしない。
【0007】
上記の点からみて、非常に安定であり、優れた感覚的特性を示す組成物を開発する重要な必要性がある。したがって、本発明は、例えば、スキンケア組成物のための基剤に使用された場合、安定であり、望ましい特性を有するHIPEを対象とする。本発明のHIPEは、45℃で貯蔵された場合、少なくとも3カ月(好ましくは少なくとも4カ月)間安定である。さらに、本発明のHIPEは、油溶性マイクロスフェアと共に配合された場合、優れたウィッキング特性を示し、拡がることが容易であり、優れた保湿能を有する。特に、本発明のHIPEは、非乳化型エラストマー、乳化剤および立体安定剤を含む。
【0008】
追加情報
スキンケア組成物を作製するための試みが開示されている。米国特許第5833973号明細書において、架橋非乳化型シロキサンエラストマーを有する皮膚トリートメント組成物が記載されている。
【0009】
スキンケア組成物を作製するための他の試みが開示されている。米国特許第5908707号明細書において、高内相逆エマルジョンを有する洗浄物品が記載されている。
【0010】
スキンケア組成物を作製するためのさらに他の試みが開示されている。米国特許第6696049号明細書において、乳化型架橋シロキサンエラストマーを有する化粧品組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5833973号明細書
【特許文献2】米国特許第5908707号明細書
【特許文献3】米国特許第6696049号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の追加の情報の中で、HIPEが非乳化型エラストマー、乳化剤および立体安定剤を含む場合、45℃で貯蔵されたときに少なくとも3カ月間安定したHIPEを記載しているものはない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
第1の態様において、本発明は、
(a)非乳化型エラストマー;
(b)水;
(c)油;
(d)乳化剤;および
(e)立体安定剤(この立体安定剤は、高内相エマルジョンの最終粘度、Vに寄与するエラストマーであり、ここで、立体安定剤が存在しない高内相エマルジョンは、無安定剤粘度、Vを有し、さらにここで、Vは少なくともほぼVに等しいからV+(V×0.075)以下である。)
を含む高内相エマルジョンを対象とする。
【0014】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の高内相エマルジョンを含むスキンケア組成物を対象とする。
【0015】
本発明のすべての他の態様は、以下の詳細な説明および実施例を考慮するとより容易に明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、スキンケア組成物とは、本発明のHIPEを含み、ヒトに使用するのに適し、皮膚の特性を高めるのに適した最終用途の化粧品組成物を含むことを意味する。このような組成物は、洗い流さないまたは洗い流すものとして一般に分類することができ、例えば、石鹸;シャンプー、コンディショナーもしくはトニックのようなヘアケア組成物;口紅;洗い流さない皮膚向上剤;または着色化粧品であってもよい最終用途の組成物を含むことを意味する。しかし、本発明のスキンケア組成物の好ましい形態は、油溶性マイクロスフェアと共に配合された場合優れたウィッキング特性を示すことに加えて、従来の油中水型エマルジョンに通常伴う重く粘着性のべとつく感触を示さない洗い流さない組成物である。
【0017】
本明細書で使用される場合、皮膚とは、顔面、頚部、胸、背中、腕、手、脚および頭皮上の皮膚を含むことを意味する。本明細書で使用される場合、優れたウィッキングとは、皮脂の均一な分布および吸収を意味するものと定義される。優れた感覚的特性とは、重くなく、粘着性でなく、べとつかず、加えて優れた保湿能がある快適なおよびすっきりとした/パウダー感覚を得ることを意味する。本明細書で使用される場合、立体安定剤とは、水の合体を防止して、HIPEを安定化するエラストマーのような成分を意味する。
【0018】
明確に別段の指示がなければ、本明細書に記載のすべて範囲は、この中に包含されるすべての範囲を含むものとする。含むという用語は、実質的にからなる(consisting essentially of)およびからなる(consisting of)という用語を包含するものとする。さらに、別段の定義がなければ、使用されるエラストマーの量とは、架橋ポリマーと混合物として添加された担体油(これによって、架橋ポリマーが混合物の10から35重量%を占める。)の量を意味する。
【0019】
本発明で使用することができる非乳化型エラストマーのタイプに関しては、局所的に適用し得る組成物に使用するのに適したエラストマーであること以外には制限は存在しない。本発明に使用することができる非乳化型エラストマーのタイプの例示的で非限定的な例には、2,000を超え、好ましくは5,000を超え、最も好ましくは10,000から2千万の範囲(この範囲に取り込まれるすべての範囲を含む。)の数平均(Mn)分子量を有するものが含まれる。「非乳化型」という用語は、ポリオキシアルキレン単位が存在しないシロキサンを定義づける。このエラストマーは、少なくとも2つの遊離のビニル基を有するジビニル化合物から、ポリシロキサン骨格のSi−H結合と反応して形成されることが多い。このようなエラストマー組成物は、提唱されたCTFA名、シクロメチコンおよびビニルジメチコンメチコンクロスポリマーを有し、シクロメチコン担体中の20−35%のエラストマーとして供給される、製品名General Electricシリコーン1229としてGeneral Electric社から市販されている。CTFA名、架橋ステアリルメチルジメチルシロキサンコポリマーとして、同類のエラストマー組成物が、Gransil SR−CYC(シクロメチコン担体中の25−35%エラストマー)としてGrant Industries,Inc.、Elmwood Park、NJから入手可能である。このGeneral ElectricおよびGrant Industriesからの市販品は、Sonolator中で10から60回通しで再循環して高圧(およそ5,000psi)処理にかけることによって通常さらに処理される。ソノレーションは、0.2から10ミクロン、好ましくは0.5から5ミクロンの範囲のエラストマー平均粒径を有する生成流体を達成する。粘度は、Brookfield LV粘度計(サイズ4バー、60rpm、15秒)で測定して、25℃で300から20,000cpsの間の範囲の場合好ましいことが多い。特に好ましい実施形態において、最も好ましい非乳化型エラストマーは、商品名DC9045としてDow Chemical、および商品名KSG−15エラストマーゲル(シクロメチコン担体中の10−25重量%シクロメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー)として信越化学工業のような供給業者によって市販されているシクロメチコン/ジメチコンクロスポリマーである。
【0020】
本発明のHIPEに使用される非乳化型エラストマー(担体を含む)の量は、HIPEおよびHIPE中に包含されるすべての範囲のものを含む総重量に対して、典型的には0.05から18重量%、好ましくは2から10重量%、最も好ましくは3から8重量%である。
【0021】
本発明で使用するのに適した油は、この油が、HIPEエマルジョンに使用することおよび局所的に適用することが可能な範囲内にのみ限定される。本発明のHIPEに使用される油は、好ましくはケイ素系、特に、D4、D5、もしくはD6シクロジメチコンに分類されるものまたはこれらの混合物である。本発明で使用するのに適したその他の好ましい油には、Ubbelohde粘度計で測定して、周囲温度で3cpsから100cpsの粘度を有するジメチコン系の油が含まれる。このような油は、単独でまたは局所用組成物に使用するのに適した他の油と組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明のHIPE中の油は、HIPEの総重量に基づいてHIPEの、典型的には0.5から25重量%、好ましくは5から20重量%、最も好ましくは10から15重量%を占め、HIPE中に包含されるすべての範囲を含む。
【0023】
特に好ましい実施形態において、本発明のHIPE中の油の総計の60重量%未満、好ましくは50重量%未満、最も好ましくは2から35重量%は、エラストマーに対する担体として提供される。
【0024】
本発明のHIPEに使用される乳化剤は、局所用組成物に使用するのに適したものであり、乳化剤は、9未満、好ましくは7未満、最も好ましくは5未満のHLBを有することが多い。本発明に使用することができる乳化剤のタイプの実例には、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG−3ジメチコン、PEG−9メチルエーテルジメチコン、PEG−10ジメチコン、これらの混合物等のポリエーテル修飾シリコーン界面活性剤として一般に分類されるものが含まれる。このような乳化剤は、信越化学工業のような供給業者から供給され、それぞれ商品名KF−6012、KF−6015、KF−6016およびKF−6017として販売されている。好ましいことが多い実施形態において、本発明に使用される乳化剤はPEG−10ジメチコンである。
【0025】
典型的には乳化剤は、HIPEの総重量に基づいてHIPEの、0.05から12重量%、好ましくは0.1から10重量%、最も好ましくは0.5から4重量%を占め、HIPE中に包含されるすべての範囲を含む。
【0026】
水の合体を防止し、本発明のHIPEを安定化するために本発明に使用することができる立体安定剤は、好ましくはエラストマーである。このような立体安定剤は、25℃で1.4超の屈折率を好ましくは有するものである。さらに、立体安定剤は、その架橋基が8から26個の炭素原子の鎖長を好ましくは有する架橋エラストマー(ポリエーテルおよび/またはポリグリセリン架橋エラストマーなど)であることが多い。
【0027】
好ましい立体安定剤は、ジメチコン中のジメチコン/PEG−10/15クロスポリマー(KSG−210)、およびジメチコン中のジメチコンポリグリセリン−3クロスポリマー(KSG−710)、これらの混合物等であることが多い。このような立体安定剤は、特に信越化学工業のような供給業者から市販されている。
【0028】
使用される立体安定剤(即ち、担体を含む。)の量は、HIPEおよびHIPE中に包含されるすべての範囲のものを含む総重量に対して、典型的には0.1から25重量%、好ましくは0.2から15重量%、最も好ましくは約0.5から8重量%である。好ましい実施形態では、本発明のHIPEに使用される立体安定剤は、KSG−210もしくはこれらの誘導体または類似物である。
【0029】
場合によるが特に好ましい実施形態において、本発明のHIPEは、架橋基が、8から26個の炭素原子の鎖長を好ましくは有するアルキル修飾架橋エラストマー(ポリエーテルおよび/またはポリグリセリン架橋エラストマーなど)をさらに含む。
【0030】
本発明で使用するのに適したアルキル修飾架橋エラストマーのタイプ実例には、鉱油中のPEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマー(KSG−310)、PEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマーおよびイソドデカン(KSG−320)、トリエチルヘキサノイン中のPEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマー(KSG−330)、スクワラン中のPEG−10/ラウリルジメチコンクロスポリマーおよびPEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマー(KSG−340)、トリエチルヘキサノイン中のラウリル/ジメチコン/ポリグリセリン−3クロスポリマー(KSG−830)、スクワレン中のラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3クロスポリマー(KSG−840)、これらの混合物等が含まれる。
【0031】
使用される場合、使用されるアルキル修飾架橋エラストマー(担体を含む)の量は、HIPEおよびHIPE中に包含されるすべての範囲のものを含む総重量に対して、典型的には0から20重量%、好ましくは0.1から15重量%、最も好ましくは0.5から5重量%である。
【0032】
水は、典型的にはHIPEの残りを占め、HIPEの少なくとも75重量%を占めるべきである。
【0033】
所望の最終用途の組成物を得るために、任意選択の添加剤を本発明のHIPEに添加してもよい。例えば、本発明のHIPEと共に調製された最終用途のスキンケア組成物は、皮膚コンディショニング剤を場合によって含んでもよい。これらの作用物質は、湿潤剤、剥離剤または皮膚軟化剤から選択してもよい。
【0034】
湿潤剤は、保湿する、落屑を軽減するおよび皮膚から蓄積した落屑の除去を刺激するための多価アルコールである。典型的な多価アルコールには、ポリアルキレングリコールおよびより好ましくはアルキレンポリオールおよびこれらの誘導体が含まれる。例示的なものには、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトキシ化グリセリン、プロポキシ化グリセリンおよびこれらの混合物がある。最も好ましくは、この湿潤剤はグリセリンである。湿潤剤の量は(使用した場合)、0.01から15重量%の程度、好ましくは0.01から10重量%、最適には0.75から5重量%の範囲であってもよい。
【0035】
本発明のHIPEと共に使用するのに適した剥離剤は、α−ヒドロキシカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸およびこれらの酸の塩から選択してもよい。
【0036】
最も好ましいものは、グリコール酸、乳酸およびサリチル酸およびこれらのアンモニウム塩である。
【0037】
各種のC−C30α−ヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。適した例には、
α−ヒドロキシエタン酸、
α−ヒドロキシプロパン酸、
α−ヒドロキシヘキサン酸、
α−ヒドロキシオクタン酸、
α−ヒドロキシデカン酸、
α−ヒドロキシドデカン酸、
α−ヒドロキシテトラデカン酸、
α−ヒドロキシヘキサデカン酸、
α−ヒドロキシオクタデカン酸、
α−ヒドロキシエイコサン酸、
α−ヒドロキシドコサン酸、
α−ヒドロキシヘキサコサン酸、および
α−ヒドロキシオクタコサン酸
が含まれる。
【0038】
コンディショニング剤が皮膚軟化剤である場合、これは、炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコールおよびエステルから選択してもよい。ペトロラタムは、皮膚軟化コンディショニング剤の最も好ましい炭化水素タイプである。使用することができるその他の炭化水素には、鉱油、ポリデセンなどのポリオレフィン、イソヘキサデカン(例えば、Permethyl 99(登録商標)およびPermethyl 101(登録商標))などのパラフィンが含まれる。
【0039】
使用するのに適した脂肪酸およびアルコールは、10から30個の炭素原子を有することが多い。この範疇の実例となるものは、ペラルゴン、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、ステアリン、イソステアリン、ヒドロキシステアリン、オレイン、リノール、リシノール、アラキジン、ベヘンおよびエルカ酸およびアルコールである。
【0040】
本発明のHIPEで作製された最終用途のスキンケア組成物に使用するのに適した油性エステル皮膚軟化剤は、1種または複数の以下のクラス
1.植物および動物脂肪および油などのトリグリセリドエステル。(例には、ヒマシ油、カカオバター、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、タラ肝油、アーモンド油、アボカド油、パーム油、ゴマ油、スクワレン、キクイ油およびダイズ油が含まれる。)
【0041】
2.アセチル化モノグリセリドなどのアセトグリセリドエステル。
【0042】
3.エトキシ化グリセリルモノステアレートなどのエトキシ化グリセリド。
【0043】
4.10から20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル。(脂肪酸のメチル、イソプロピル、およびブチルエステルが本明細書で有用である。例には、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチルおよび乳酸セチルが含まれる。)
【0044】
5.10から20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル。(これらの例には、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイルおよびオレイン酸オレイルが含まれる。)
【0045】
6.エトキシ化脂肪アルコールの脂肪酸エステルなどのエーテル−エステル。
【0046】
7.多価アルコールエステル。(エチレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200−6000)モノ−およびジ−脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレエート、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシ化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪エステル、エトキシ化グリセリルモノステアレート、1,2−ブチレングリコールモノステアレート、1,2−ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、満足のいく多価アルコールエステルである。)
【0047】
8.ミツロウ、鯨ろう、ミリスチン酸ミリスチルおよびステアリン酸ステアリルなどのワックスエステル
から選択されるものであることができる。
【0048】
本発明のスキンケア化粧品組成物は、実質的なレベルの水を含むものである。このような組成物は、50から90重量%、好ましくは55から85重量%の範囲の量で水を含むことが多い。
【0049】
HIPEのような、本発明の最終用途のスキンケア組成物は、本明細書に記載の通り高内(水)相容積エマルジョンを有する油中水型エマルジョンである。
【0050】
界面活性剤は、本発明による組成物の他の任意選択の添加剤であり得る。該界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性乳化剤から選択してもよい。該界面活性剤は、0.1から5重量%程度の量の範囲であり得る。例示的な非イオン性界面活性剤は、C10−C22の脂肪アルコールおよび酸、およびソルビタンをベースとするアルコキシ化化合物である。これらの材料は、例えば、Shell Chemical社からNeodol(商標)として入手可能である。BASF社によってPluronic(商標)として販売されているポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンのコポリマーも有用なこともある。Henkel社から入手可能なアルキルポリグリコシドも、本発明の目的のために使用してもよい。
【0051】
アニオン性タイプの界面活性剤には、脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、モノ−およびジ−アルキル酸性ホスフェートおよびナトリウム脂肪アシルイセチオネートが含まれる。
【0052】
両性界面活性剤には、ジアルキルアミンオキシドおよび様々なタイプのベタイン(ココアミドプロピルベタインなど)などの材料が含まれる。
【0053】
防腐剤は、潜在的に有害な微生物の増殖に対して防護するために、本発明の組成物中に望ましくは取り込んでもよい。微生物が増殖する傾向にあるのは水相中であるが、微生物は油性相にも存在することができる。したがって、水および油の両方に溶解度を有する防腐剤を本組成物に使用することが好ましい。適した従来の防腐剤は、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルである。最近使用され始めた他の防腐剤には、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、および様々な四級アンモニウム化合物が含まれる。化粧品の化学者は、適した防腐剤に精通しており、防腐剤検証試験を満たして、製品の安定性を提供するためにこれらを日常的に選択している。特に好ましい防腐剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ナトリウムデヒドロキシアセテート(Sodium dehydroxyacetate)およびベンジルアルコールである。防腐剤は、組成物の使用およびエマルジョン中の防腐剤と他の成分の間の起こり得る不適合性を考慮して選択するべきである。防腐剤は、組成物の0.01重量%から2重量%の範囲の量で好ましくは使用される。
【0054】
本発明のHIPEと共に作製されたスキンケア組成物に使用するのに適したさらに他の任意選択の添加剤には、増粘剤が含まれる。このような増粘剤は、カルボン酸ポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー等に通常分類されることが多い。典型的な増粘剤には、架橋アクリレート(例えば、Carbopol 982)、疎水性変性アクリレート(例えば、Carbopol 1382)、セルロース誘導体および天然ガムが含まれる。有用なセルロース誘導体の中には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、増粘剤(Sepigel(商標)305のような)を含むポリアクリルアミドおよびヒドロキシメチルセルロースがある。本発明に適しているガムには、グアー、キサンタン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum)、スクレロティウム(sclerotium)、カラゲナン、ペクチンおよびこれらのガムの組合せが含まれる。増粘剤の量は、スキンケア組成物および組成物中に包含されるすべての範囲のものを含む総重量に対して、0.0001から5重量%、通常0.001から1重量%、最適には0.01から0.5重量%の範囲であり得る。
【0055】
このスキンケア組成物にサンスクリーン剤を使用してもよく(任意の望ましい組合せで)、該サンスクリーン剤には、紫外光をブロックするために通常使用される材料が含まれる。例示的な化合物は、PABA、シンナメートおよびサリチレートである。例えば、アボベンゾフェノン(Parsol 1789(登録商標))、メトキシ桂皮酸オクチルおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシルベンゾフェノン(オキシベンゾンとしても知られている。)を使用することができる。メトキシ桂皮酸オクチル、p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、および2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンは、すべて市販されている。使用することができるその他のものには、オクトクリレン、ブチルメトキシジベンゾイルメタンおよびフェニルベンズイミダゾールスルホン酸が含まれる。組成物中で使用されるサンスクリーン剤の正確な量は、日光のUV線からの所望の保護の程度に応じて変わり得る。
【0056】
本発明のスキンケア組成物で使用することができるさらに他の任意選択の添加剤には、物理的散乱体(TiOおよび/またはZnOのような)、スキンケアキレート剤(EDTAのような)、マイクロスフェア(例えば、商品名CL−2080として販売されているポリエチレンベースのスフェロイド;Kobo Industriesによって供給される、商品名SPCAT−12およびDSPCS−I2として販売されている、それぞれ、エチレンおよびメタクリレートベースのスフェロイド)、抗炎症薬(標準的なステロイドおよび非ステロイドタイプを含む)、ナイアシンアミドのようなビタミン、酸化防止剤、分散剤(例えば、ステアリン酸PEG−100および/またはNaCl)、レゾルシノールおよびレチノイン酸を含むレチノイド、レチナールおよびレチニルエステルが含まれる。
【0057】
典型的には、本発明の最終用途のスキンケア組成物を作製するのに使用される任意選択の添加剤は、スキンケア組成物の総重量に基づいてスキンケア組成物の合計で20重量%未満、好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満を占め、スキンケア組成物に包含されるすべての範囲を含む。
【0058】
芳香剤、消泡剤、および着色剤などの少量の補助成分はまた、それぞれが個々の機能を果たす有効量で含まれてもよい。
【0059】
本発明の組成物を作製する場合、所望の成分は、通常周囲温度から65℃で大気圧下、特定の順序なく混合することができる。しかし、好ましい実施形態では、水は油に加えられる。
【0060】
本発明のHIPEで作製した最終用途のスキンケア組成物は、スキンケア組成物およびこの組成物中に包含されるすべての範囲のものを含む総重量に対して、典型的には50から92重量%、好ましくは60から88重量%、最も好ましくは70から80重量%のHIPEを含む。
【0061】
HIPE(およびそれから調製された最終用途のスキンケア組成物)の粘度は、ひずみ制御平行プレートレオメータ(商品名AresとしてT.A.Instrumentsによって販売されているもののような)で、周囲温度下、1秒−1のせん断速度で使用して、典型的には5,000から400,000cps、好ましくは10,000から300,000cps、最も好ましくは15,000から225,000cpsである。
【0062】
特に好ましい実施形態において、本発明のHIPEは、18重量%未満の総エラストマーを有する。最も特に好ましい実施形態において、本発明のHIPEは、エラストマーの総重量に基づいて5から13重量%のエラストマーを有し、エラストマーに包含されるすべての範囲を含む。
【0063】
本発明の組成物のための包装は、ビン、チューブ、ロールボールアプリケーター、スクイーズ容器またはふた付き広口ビンであることができる。
【0064】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されたものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0065】
以下の成分を周囲温度下、中位のせん断で混合することによってHIPEを作製した。
【0066】
【表1】

【0067】
本発明により作製した4種のHIPEを45℃で4カ月間貯蔵した。貯蔵後のHIPEの目視検査により、驚くべきことには相分離がないことが判明した。局所使用に適しており、約26重量%の非乳化型エラストマーと共に作製した、対照および従来の(即ち、非HIPE)油中水型エマルジョンも同じ条件で貯蔵した。このエマルジョンの目視検査により相分離が判明した。
【実施例2】
【0068】
実施例1に記載されたものと同様のHIPEを作製した。このHIPEに10重量%のポリエチレンベースのマイクロスフェア(CL−2080)を添加した。また、実施例1に記載されたもの同様の対照および従来のエマルジョンを作製し、5重量%のヒュームドシリカを対照および従来のエマルジョンのそれぞれに添加した。パネリストは、このエマルジョンをつけて比較した。すべてのパネリストは、本発明により作製したHIPEは、従来のエマルジョンより、つける/広げるのがより容易であると結論づけた。さらにすべてのパネリストは、本発明により作製したHIPEは、対照よりべとつきが少なく、粘着性が低く、保湿効果を含む優れた感覚的利益を得ることにより優れていると結論づけた。
【0069】
最後に、この実施例に記述されたHIPEおよび対照および従来のエマルジョンの皮脂ウィッキング能を比較した(Dussaudらによる、「Liquid Transport in the Networked Microchannels of the Skin Surface」、Langmuir 2003、19、7341−7345頁に記載された試験を用いて)。この実験により、本実施例により作製したHIPEは、対照より驚くべきことに少なくとも2倍は優れた皮脂ウィッキング能を有することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非乳化型エラストマー;
(b)水;
(c)油;
(d)乳化剤;および
(e)立体安定剤(立体安定剤は、高内相エマルジョンの最終粘度、Vに寄与するエラストマーであり、ここで、立体安定剤が存在しない高内相エマルジョンは、無安定剤粘度、Vを有し、さらにここで、Vは少なくともほぼVに等しいからV+(V×0.075)以下である。)
を含む高内相エマルジョン。
【請求項2】
非乳化型エラストマーが、シクロメチコン、ジメチコンまたは両方を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
非乳化型エラストマーが、シクロメチコンおよびジメチコンを含むクロスポリマーである、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
非乳化型エラストマーが、エマルジョンの0.05から18重量%を占める、請求項1から3のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項5】
油がケイ素系である、請求項1から4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
油が、エマルジョンの0.5から25重量%を占める、請求項1から5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
油の60重量%未満が、エラストマーのための担体として提供される、請求項6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
乳化剤が9未満のHLBを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項9】
乳化剤が、ポリエーテル修飾シリコーンである、請求項1から8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
乳化剤が、エマルジョンの0.05から12重量%を占める、請求項1から9のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項11】
立体安定剤が、25℃で1.4超の屈折率を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項12】
立体安定剤が、ポリエーテルおよび/またはポリグリセリンで架橋された架橋エラストマーである、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
立体安定剤がジメチコンを含む、請求項12に記載のエマルジョン。
【請求項14】
立体安定剤が、エマルジョンの0.1から25重量%を占める、請求項1から13のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
少なくとも75重量%の水を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項16】
20重量%未満、好ましくは18重量%未満のエラストマー、最も好ましくは5から13重量%のエラストマーを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項17】
皮膚への局所適用に適している、請求項1から16のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の高内相エマルジョンを含むスキンケア組成物。
【請求項19】
50から90重量%の水を含む、請求項18に記載のスキンケア組成物。
【請求項20】
50から92重量%の高内相エマルジョンを含む、請求項18または19に記載のスキンケア組成物。
【請求項21】
ビタミン、酸化防止剤、分散剤、サンスクリーン剤、防腐剤、皮膚軟化剤、剥離剤、湿潤剤またはこれらの混合物をさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項に記載のスキンケア組成物を適用するステップを含む、皮膚を保湿し、皮膚上のしわを軽減し、皮膚上の油を調節しおよび/または皮膚を明色化する美容方法。

【公表番号】特表2010−530456(P2010−530456A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512629(P2010−512629)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056973
【国際公開番号】WO2008/155228
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】