説明

安定化された水性懸濁製剤

【課題】長期保管後の懸垂性に優れ、粒子凝集の抑制された水性懸濁製剤を提供すること。
【解決手段】本発明の水性懸濁製剤はa)農薬活性成分、b)グアニジンまたはグアニジンの水溶性塩、を含有することおよび前記グアニジンまたはグアニジンの水溶性塩の農薬活性成分に対する添加量が重量%比で0.1倍〜2.5倍であることを特徴とする。本発明の水性懸濁製剤は、長期保管後も懸垂性に優れ、粒子凝集が抑制されるため沈降分離による製品価値の喪失等の問題が生じない。さらに構成が単純なため、コスト面でも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性成分、グアニジンまたはグアニジンの水溶性塩(以下「水溶性グアニジン類」と称する)、を必須成分として含有することにより、長期保管後でも懸垂性に優れ、粒子凝集が抑制されたことを特徴とする、安定化された水性懸濁農薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性懸濁製剤は、使用時に粉立ちを発生せず、また、引火性や臭いが少ないことから、安全面および環境衛生面で優れた製剤であり、広く一般的に利用されている製剤形態である。しかしながら、製造後の長期にわたって保管している間に、水中に分散している農薬活性成分や補助成分からなる分散質の沈降分離といった問題点がある。
【0003】
このような水性懸濁製剤の懸垂性及び粒子凝集の改良を目的として分散剤や増粘剤等の構成成分に関する研究、また、分散粒子の粒子径や製剤粘度等の製剤物理性について数多くの研究がなされており、水性懸濁製剤の長期保管における懸垂性や粒子凝集を改良するための研究例としては以下にあげる研究がなされている。
【0004】
特開平6−316502号公報(特許文献1)において、HLBが1〜9の非イオン性界面活性剤およびHLBが10〜20の非イオン性界面活性剤の共存下に、水難溶性の固状生理活性成分を液体媒体中に分散させることにより、懸濁安定性および自己分散性にすぐれた懸濁状組成物が提案されている。
【0005】
特開平9−175904号公報(特許文献2)において、常温で固体かつ水難溶性又は水不溶性の農薬有効成分に軟化点が60℃以上100℃以下である天然又は合成樹脂類を被覆させることにより、粒子成長を抑制した農薬水性懸濁剤組成物が提案されている。
特開2007−77044号公報(特許文献3)において、液状農薬成分、固体農薬成分、油脂および非イオン性界面活性剤を含有させることにより、含有成分の分解、沈殿および凝集が抑制され、良好な懸濁・分散が確保された水中懸濁性農薬製剤が提案されている。
【0006】
上記した特許文献において、特許文献1は水性懸濁製剤の懸垂性を改良した例であるが、粒子凝集についての抑制効果が不充分である。また、特許文献2は水性懸濁製剤の粒子凝集を改良した例であるが、懸垂性の維持効果が不充分である。このように懸垂性と粒子凝集の両物理性を改良するためには懸垂性改良のための資材と粒子凝集改良のための資材を添加するが、両者の相性が悪い場合は懸垂性改良、粒子凝集改良の両効果が打ち消されてしまうなどの問題があった。さらに、特許文献3は懸垂性および粒子凝集を改良した例であるが、懸垂性の維持効果、粒子凝集の抑制効果に対して改良の余地が残る。
【0007】
このため、長期保管後も懸垂性の維持および粒子凝集の抑制効果の両物理性が高水準で維持された水性懸濁製剤が期待されている。
一方で、水溶性グアニジン類を含有する水性懸濁製剤についての研究は全くなされておらず、該成分が水性懸濁製剤の長期保管における懸垂性および分散性を非常に高い水準で維持し続ける知見については全く見出されていなかった。また、水性懸濁製剤以外の農薬製剤に水溶性グアニジン類を使用した研究例としては以下にあげる研究がなされている。
【0008】
特開平1−238506号公報(特許文献4)では、抗土壌植物ウイルス性を有する尿素アルデヒド縮合物と、2−オキソ−6−ウレイド−ヘキサハイドロピリミジン、2−オキソ−4−メチル−6−ヒドロキシ−ヘキサハイドロピリミジン、4−メチル−ヒドロウラシル、β−ウラシル酪酸、グアニルウレア、グアニジンから選ばれる1以上の化合物を有効成分とした、肥料効果とウイルス病の予防効果を併せ持つ粉状の抗土壌植物ウイルス性肥料組成物が提案されている。
【0009】
特開平11−92310号公報(特許文献5)では2−メトキシカルボニル−4−クロロトリフルオロメタンスルホアニリドとN−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドを有効成分とした、各種害虫、特に屋内生息のダニ防除に対してきわめて有効であり、くん煙剤、加熱蒸散用マット製剤、シート製剤等の形態にて使用される、殺虫、殺ダニ組成物が提案されている。
【0010】
上記した特許文献において、特許文献4ではグアニジンが尿素アルデヒド縮合物の抗土壌植物ウイルス性を向上させる添加剤として使用されており、特許文献5では該文献中の殺虫、殺ダニ組成物を燃焼型くん煙剤として使用する場合に発熱調整剤としてスルファミン酸グアニジンおよび硝酸グアニジンが使用されているが、何れの特許文献においても液状製剤に適用したわけではなく、該成分の水性懸濁製剤の長期保管における懸垂性および分散性への寄与効果に対して記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−316502号公報
【特許文献2】特開平9−175904号公報
【特許文献3】特開2007−77044号公報
【特許文献4】特開平1−238506号公報
【特許文献5】特開平11−92310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、長期保管後の懸垂性にすぐれ、粒子凝集の抑制された水性懸濁製剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、農薬活性成分、水溶性グアニジン類を必須成分として含有する水性懸濁製剤が長期保存安定性にすぐれること、すなわち長期保管後も懸垂性が維持され、粒子凝集が抑制されることを見出した。
さらに検討したところ、上記水性懸濁製剤において、水溶性グアニジン類の農薬活性成分に対する添加量が重量%比で0.1倍〜2.5倍であり、また、水溶性グアニジン類が塩酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンである場合がより好ましいことを見出し、発明を完成させたものである。
【0014】
したがって、本発明の要旨は、次のとおりに要約される。
〔1〕a)農薬活性成分、b)グアニジンまたはグアニジンの水溶性塩、を含有することを特徴とする水性懸濁製剤。
〔2〕前記のグアニジンの水溶性塩が、式(I)
【化1】

〔式(I)中、 nは1〜3の整数を示し、n=1のとき、XはHClあるいは、HNO、NHSO3のいずれかを示し、n=2のとき、XはHCOを示し、n=3のとき、XはHPOを示す。〕で表されることを特徴とする〔1〕に記載の水性懸濁製剤。
〔3〕前記のグアニジンの水溶性塩が塩酸グアニジンもしくはスルファミン酸グアニジンであることを特徴とする〔1〕に記載の水性懸濁製剤。
〔4〕前記のグアニジンまたはグアニジンの水溶性塩の農薬活性成分に対する添加量が重量%比で0.1倍〜2.5倍であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水性懸濁製剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性懸濁製剤は、長期保管後も懸垂性に優れ、粒子凝集が抑制されるため沈降分離による製品価値の喪失等の問題が生じない。さらに構成が単純なため、コスト面でも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の水性懸濁製剤について具体的に説明する。
<構成成分>
(a)農薬活性成分
本発明で、水性懸濁製剤の調製の際に用いられる農薬活性成分(a)は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤などの一般的に農薬の活性成分として使用されるものであれば特に限定されず、このような農薬活性成分(a)としては次のものがあげられる。
【0017】
例えば、殺虫剤として有機リン系〔MEP(O,O−ジメチル−O−4−ニトロ−m−トリル−6−メチルピリミジン−4−イルチオホスフェート)など〕、カーバメート系〔BPMC(2−セコンダリーブチルフェニル−N−メチルカーバメート)など〕、ピレスロイド系〔ペルメトリン((R,S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3SR)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)など〕、ベンゾイルヒドラジド系、ネオニコチノイド系、トリアジン系、チオウレア系、オキサダイアジン系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、昆虫成長制御剤〔テブフェノジド(2’−tert−ブチル−N’−(4−エチルベンゾイル)−3,5−ジメチルベンゾヒドラジド)、ブプロフェジン(2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−1,3,5−チアジアジナン−4−オン)など〕、天然殺虫剤、生物農薬、殺ダニ剤および殺線虫剤などがあげられる。
【0018】
殺菌剤としては、例えば、無機銅類、有機銅類、無機硫黄剤、有機硫黄剤や、有機リン系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系〔フルトラニル(α,α,α−トリフルオロ−3’−イソプロポキシ−o−トルアニリド)など〕、トリアゾール系〔テトラコナゾール((±)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル=1,1,2,2−テトラフルオロエチル=エーテル)、イミベンコナゾール(4−クロロベンジル=N−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2、4−トリアゾール−1−イル)チオアセトイミダート)など〕、イミダゾール系、ピペラジン系、メトキシアクリレート系、オキサゾリジンジオン系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系、フタリド系〔フサライド(4,5,6,7−テトラクロロフタリド)など〕の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤〔カスガマイシン([5−アミノ−2−メチル−6−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−シクロへキシロキシ)テトラヒドロピラン−3−イル]アミノ−α−イミノ酢酸)など〕、天然物殺菌剤および生物農薬などがあげられる。
【0019】
除草剤としては、例えば、フェノキシ酸系〔MCPAチオエチル(S−エチル=2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)チオアセタート)など〕、カーバメート系、酸アミド系〔テニルクロール(2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2’,6’−ジメチルアセトアニリド)、ブタクロール(2−クロロ−2’,6’−ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド)など〕、アセトアニリド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系〔シメトリン(2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−S−トリアジン)など〕、ダイアジン系、ダイアゾール系〔ピラゾレート(4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イル−トルエン−4−スルホネート)など〕、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、イミダゾリノン系、脂肪酸系、有機リン系、アミノ酸系、ジフェニルエーテル系〔ビフェノックス(5−(2,4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロ安息香酸メチル)など〕、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、トリアゾリノン系、無機除草剤、生物農薬などがあげられる。
【0020】
植物生長調節剤としては、例えば、エチレン系、オーキシン系、サイトカイニン系、ジベレリン系などがあげられる。
上記農薬活性成分(a)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもかまわない。
【0021】
なお、これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2005年版」(社団法人 日本植物防疫協会、平成17年10月11日発行)、「SHIBUYA INDEX 12th Edition」(SHIBUYA INDEX研究会、平成19年6月25日発行)、「The Pesticide Manual Fourteenth Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されている。
【0022】
また、本発明において使用される農薬活性成分(a)としては、本発明と同様の目的を果たし、水性懸濁製剤として適用されるものであるならば、上記以外の従来公知の農薬活性成分も適用することができる。
上記農薬活性成分の添加量は、水性懸濁製剤の全量に対して、通常0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。
【0023】
(b)水溶性グアニジン類
本発明の水性懸濁製剤において、水溶性グアニジン類が含有されることが必須である。
水溶性グアニジン類の水性懸濁製剤の分散安定性への寄与効果については、以下の様に推論される。
【0024】
水溶性グアニジン類を水性懸濁製剤に使用した場合、分散質粒子の周囲にグアニジン分子が配向し、このグアニジン分子が分散媒である水と水素結合を形成する。この様な水素結合が幾重にも相互作用することにより、水を介した分散質粒子間の水素結合ネットワークを形成し、粘度を上げることなく懸濁安定性を向上させる。さらに、グアニジン分子の立体効果や電子反発効果により分散質粒子の合一、凝集を防止することにより分散安定性を向上させることで粒子凝集を抑制する。
【0025】
また、水溶性グアニジン類による懸垂性および粒子凝集の改良効果は分散質が固体、液体にかかわらず発揮される。従来は懸垂性と粒子凝集の両物理性を改良するためには懸垂性改良のための資材と粒子凝集改良のための資材を添加しなければならず、両者の相性が悪い場合は懸垂性改良、粒子凝集改良の両効果が打ち消されてしまう場合がある。水溶性グアニジン類は懸垂性の維持および粒子凝集抑制の両効果を有するため、この不利な点を考慮する必要がない。
【0026】
なお、本発明に使用される水溶性グアニジン類は一般的に以下の用途で産業的に利用されているが、農薬水性懸濁製剤に使用された例は皆無であり、本発明により該成分が水性懸濁製剤の分散安定性、懸濁安定性に寄与する知見を初めて見出した。
(1)タンパク質の変性剤、可溶化剤(塩酸グアニジン)
(2)医薬、農薬等の有機合成原料(グアニジン、塩酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン)
(3)繊維の帯電防止剤(塩酸グアニジン)
(4)難燃剤、消火薬剤(スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン)
(5)ロケットの推進剤(硝酸グアニジン)
(6)酸化防止剤(炭酸グアニジン)
(7)pH調整剤(炭酸グアニジン)
【0027】
本発明で使用できる水溶性グアニジン類として以下に例示されるものがあげられるが、水に溶解した際にグアニジン分子として存在しうる水溶性化合物であればこれらに限られるものではなく、1種または2種以上を併用しても何らかまわない。例えば、グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジンなどがあげられるが、特に塩酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンが好ましい。
【0028】
水溶性グアニジン類の水性懸濁製剤中の含有量は、0.1〜50重量%、好ましくは1〜25重量%である。
また、水溶性グアニジン類の農薬活性成分に対する添加量は重量%比で0.1倍〜10倍の範囲であることが好ましい。添加量が0.1倍を下回る場合、分散質である農薬活性成分粒子の分散安定化効果が弱まる傾向にあり、2.5倍を上回ると分散安定化効果が頭打ち傾向になる。
【0029】
(c)その他補助剤
本発明の水性懸濁製剤は、上記した必須成分の他に補助剤として、本発明の効果を失わない程度であれば以下のような成分を添加してもかまわない。
例えば、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤などがあげられる。
【0030】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどがあげられる。
【0031】
また、陰イオン性界面活性剤としては、アルキルアリルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ラウリル硫酸塩などがあげられる。
【0032】
また、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などがあげられる。
また、両性界面活性剤としては、ジアルキルアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタインなどがあげられる。
【0033】
本発明で使用できる界面活性剤としては、これらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用してもかまわない。水性懸濁製剤中の界面活性剤の含有量は0.1〜20重量%が好ましい。
【0034】
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ウエランガム、ラムザンガムなどのヘテロポリサッカライド、デキストリン、リン酸デンプンなどのデンプン誘導体、トラガントガム、カゼイン、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、二酸化ケイ素などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。水性懸濁製剤中の増粘剤の含有量は0.1〜10重量%が好ましい。
【0035】
消泡剤としては、シリコーン系、脂肪酸系物質など、凍結防止剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど、防腐防バイ剤としては、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−m−キシレノール、p−オキシ安息香酸ブチルなど、pH調整剤としては、クエン酸、リン酸、炭酸マグネシウムなど、農薬活性成分の安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤などを添加してもよいが、ここに例示した補助剤に限定されるものではない。
【0036】
<水性懸濁製剤の調製方法>
本発明の水性懸濁製剤の調製方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって調製できる。
(1)固体農薬活性成分を使用する場合
水溶性グアニジン類(b)を水に添加後、あらかじめJet粉砕機などで微粉砕化した農薬活性成分(a)及び必要に応じてその他の補助剤(c)を溶解もしくは分散させて調製する方法、または、水溶性グアニジン類(b)、農薬活性成分(a)及び必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕することにより水性懸濁製剤を調製する方法、あるいは、農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズ等を用いて湿式粉砕した分散液に水溶性グアニジン類(b)を添加することにより水性懸濁製剤を調製する方法の何れを採用してもよい。
【0037】
(2)液体農薬活性成分を使用する場合
水溶性グアニジン類(b)、農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、乳化することにより水性懸濁製剤を調製する方法、農薬活性成分および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、乳化した液に水溶性グアニジン類(b)を添加、混合することにより水性懸濁製剤を調製する方法としてもよい。
【0038】
(3)固体及び液体農薬活性成分を併用する場合
液体農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加し、乳化液(i)とする。
また、水溶性グアニジン類(b)をあらかじめ水に溶解させたところに液体農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を添加し、乳化して用いてもかまわない(乳化液(ii))。
【0039】
この乳化液(i)を用いて調製を行う場合、乳化液(i)に、あらかじめJet粉砕機などで微粉砕化した固体農薬活性成分(a)、水溶性グアニジン類(b)ならびにその他の補助剤(c)を溶解もしくは分散させて水性懸濁製剤を調製する方法、また、乳化液(i)に固体農薬活性成分(a)、水溶性グアニジン類(b)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕することにより水性懸濁製剤を調製する方法、あるいは、固体農薬活性成分(a)、水溶性グアニジン類(b)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕した分散液と、あらかじめ調製しておいた乳化液(i)または(ii)を混合することにより水性懸濁製剤を調製する方法、固体農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕した分散液と、あらかじめ調製しておいた乳化液(i)と水溶性グアニジン類(b)を混合することにより水性懸濁製剤を調製する方法の何れを採用してもよい。
【0040】
また、乳化液(ii)を用いて調製を行う場合、乳化液(ii)にあらかじめJet粉砕機などで微粉砕化した固体農薬活性成分(a)ならびにその他の補助剤(c)を溶解もしくは分散させて水性懸濁製剤を調製する方法、また、乳化液(ii)に、固体農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕することにより水性懸濁製剤を調製する方法、あるいは、固体農薬活性成分(a)および必要に応じてその他の補助剤(c)を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕した分散液と、あらかじめ調製しておいた乳化液(ii)を混合することにより水性懸濁製剤を調製する方法の何れを採用してもよい。
【0041】
<水性懸濁製剤の使用形態>
上記方法により調製した水性懸濁製剤は、例えば、原液もしくは水で1.5〜5倍程度に希釈して水田に直接散布する方法、あるいは、原液もしくは水で50〜5000倍程度に希釈した液を、噴霧機などを用いて作物や雑草に茎葉散布する方法、あるいは空中からヘリコプターなどを使用して、原液のまま、または水で2〜100倍程度に希釈して散布する方法で適用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明の長期保存安定性が改良された水性懸濁製剤を得る方法を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」とあるのは、すべて重量部を示す。
【実施例1】
【0043】
水67.7部に塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)8部を溶解後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を添加し、この中にJet−O−mizer(セイシン企業株式会社製)を用い平均粒子径2.5μmに微粉砕したフサライド(フタリド系殺菌剤)10部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて5000rpmで10分間攪拌混合する。この混合液に2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)8部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度520mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例2】
【0044】
製剤組成をフサライド(フタリド系殺菌剤)10部、塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)26部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水48.7部とした以外は実施例1と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例3】
【0045】
製剤組成をフサライド(フタリド系殺菌剤)10部、スルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.5部、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロックポリマー(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)8部、水75.2部とした以外は実施例1と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度510mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例4】
【0046】
製剤組成をフサライド(フタリド系殺菌剤)10部、リン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水56.7部とした以外は実施例1と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度520mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例5】
【0047】
水56.6部に塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)10部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)2部を溶解後、ブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部を添加し、ダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)にて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。
なお、粉砕用メディアとしては直径0.7〜1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液6部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例6】
【0048】
製剤組成をブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、スルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)1.6部、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロックポリマー(界面活性剤)3部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)7部、水63部とした以外は実施例5と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度560mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例7】
【0049】
製剤組成をブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部、ポリアクリル酸ナトリウム(界面活性剤)3部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)6部、水47.6部とした以外は実施例5と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度530mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例8】
【0050】
製剤組成をブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、グアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(界面活性剤)5部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)6部、水63部とした以外は実施例5と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度550mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例9】
【0051】
水63.6部にスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)2部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(界面活性剤)5部を溶解後、この中にMEP(有機リン系殺虫剤)10部、コロイド系含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて乳化液の平均粒子径が2.5μmになるように乳化した。この乳化液に2%キサンタンガム水溶液14部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度520mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例10】
【0052】
製剤組成をMEP(有機リン系殺虫剤)10部、塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェート(界面活性剤)8部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)14部、水62部とした以外は実施例9と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例11】
【0053】
製剤組成をMEP(有機リン系殺虫剤)10部、硝酸グアニジン(水溶性グアニジン類)5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)13部、水60.6部とした以外は実施例9と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例12】
【0054】
製剤組成をMEP(有機リン系殺虫剤)10部、リン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルホスフェート(界面活性剤)6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)13部、水65.1部とした以外は実施例9と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度530mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例13】
【0055】
水53.6部に塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)20部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート(界面活性剤)2部を溶解後、イミベンコナゾール(トリアゾール系殺菌剤)10部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部を添加し、ダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)にて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。
なお、粉砕用メディアとしては直径0.7〜1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液9部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例14】
【0056】
製剤組成をイミベンコナゾール(トリアゾール系殺菌剤)10部、スルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.4部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)2部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水73.2部とした以外は実施例13と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度530mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例15】
【0057】
製剤組成をイミベンコナゾール(トリアゾール系殺菌剤)10部、炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)27部、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロックポリマー(界面活性剤)3部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム(増粘剤)0.4部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水45.6部とした以外は実施例13と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度520mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例16】
【0058】
水66.7部にプロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)1部、テニルクロール(酸アミド系除草剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部を添加し、ダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)にて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。
なお、粉砕用メディアとしては直径0.7〜1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液にスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)12部を添加後、2%キサンタンガム水溶液10部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度520mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例17】
【0059】
製剤組成をテニルクロール(酸アミド系除草剤)5部、塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)15部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)10部、水63.7部とした以外は実施例16と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度550mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例18】
【0060】
製剤組成をテニルクロール(酸アミド系除草剤)5部、炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)20部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)0.5部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)10部、水59.2部とした以外は実施例16と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度560mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例19】
【0061】
製剤組成をシメトリン(トリアジン系除草剤)5部、グアニジン(水溶性グアニジン類)0.45部、ポリカルボン酸ナトリウム(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水79.25部とした以外は実施例1と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度540mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例20】
【0062】
製剤組成をシメトリン(トリアジン系除草剤)5部、塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.45部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート(界面活性剤)0.5部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9部、水79.75部とした以外は実施例1と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度510mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例21】
【0063】
水48.7部にプロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(界面活性剤)4部を添加し、この中にブタクロール(酸アミド系除草剤)12部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて乳化液の平均粒子径が2.5μmになるように乳化した。この乳化液に塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部を添加後、2%キサンタンガム水溶液12部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度550mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例22】
【0064】
製剤組成をブタクロール(酸アミド系除草剤)12部、スルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)3部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)12部、水67.1部とした以外は実施例21と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度560mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例23】
【0065】
製剤組成をブタクロール(酸アミド系除草剤)12部、硝酸グアニジン(水溶性グアニジン類)33.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェート(界面活性剤)4部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部、2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)12部、水33.1部とした以外は実施例21と同様に調製し、分散粒子径2.5μm、粘度570mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例24】
【0066】
水55.7部とコロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.8部を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて6000rpmで20分間攪拌混合した後、塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)16.8部、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)1.2部、イミベンコナゾール(トリアゾール系殺菌剤)10部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を添加し混合する。次にこれら混合物をダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)を用いて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。次いで、これらの分散液に2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)9.5部をスリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度590mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例25】
【0067】
水35部とコロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.5部を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて6000rpmで20分間攪拌混合した後、スルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)17.5部、フサライド(フタリド系殺菌剤)15部、ブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)2部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を添加し混合する。次にこれら混合物をダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)を用いて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。次いで、これらの分散液に2%キサンタンガム水溶液(増粘剤)4部をスリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度600mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例26】
【0068】
水41.5部にスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)4部、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル(界面活性剤)4部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)0.5部、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)0.6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を溶解した。この溶液中に、MEP原体(有機リン系殺虫剤)25部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、Jet−O−mizer(セイシン企業株式会社製)を用い平均粒子径2.5μmに微粉砕したフサライド原体(フタリド系殺菌剤)10部、を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて平均粒子径が2.5μmになるように攪拌混合した。次いで、これら混合液に2%キサンタンガム水溶液9部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度590mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【実施例27】
【0069】
水34部に塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)8部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(界面活性剤)8部、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)0.6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を溶解した。この溶液中に、MEP原体(有機リン系殺虫剤)25部とドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(界面活性剤)1部を混合したプレミックス、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、Jet−O−mizer(セイシン企業株式会社製)を用い平均粒子径2.5μmに微粉砕したフサライド原体(フタリド系殺菌剤)10部、を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて平均粒子径が2.5μmになるように攪拌混合した。次いで、これら混合液に2%キサンタンガム水溶液8部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度610mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【0070】
[比較例1]
製剤組成を実施例1から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)8部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液11部、水72.7部とした以外は実施例1と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度670mPa・s(20℃)だった。
【0071】
[比較例2]
製剤組成を実施例2から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)26部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液16部、水67.7部とした以外は実施例1と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度690mPa・s(20℃)だった。
【0072】
[比較例3]
製剤組成を実施例3からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.5部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液8部、水75.7部とした以外は実施例3と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度660mPa・s(20℃)だった。
【0073】
[比較例4]
製剤組成を実施例4からリン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液14部、水69.7部とした以外は実施例4と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度700mPa・s(20℃)だった。
【0074】
[比較例5]
製剤組成を実施例5から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)10部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液10部、水62.6部とした以外は実施例5と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度640mPa・s(20℃)だった。
【0075】
[比較例6]
製剤組成を実施例6からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)1.6部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液7.6部、水64部とした以外は実施例6と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度660mPa・s(20℃)だった。
【0076】
[比較例7]
製剤組成を実施例7から炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液13部、水58.6部とした以外は実施例7と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度690mPa・s(20℃)だった。
【0077】
[比較例8]
製剤組成を実施例8からグアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液6.6部、水63部とした以外は実施例8と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度630mPa・s(20℃)だった。
【0078】
[比較例9]
製剤組成を実施例9からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)2部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液15部、水64.6部とした以外は実施例9と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度670mPa・s(20℃)だった。
【0079】
[比較例10]
製剤組成を実施例10から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液15部、水61.6部とした以外は実施例10と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度650mPa・s(20℃)だった。
【0080】
[比較例11]
製剤組成を実施例11から硝酸グアニジン(水溶性グアニジン類)5部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液15部、水63.6部とした以外は実施例11と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度690mPa・s(20℃)だった。
【0081】
[比較例12]
製剤組成を実施例12からリン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.5部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液14部、水64.6部とした以外は実施例12と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度700mPa・s(20℃)だった。
【0082】
[比較例13]
製剤組成を実施例13から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)20部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液12部、水70.6部とした以外は実施例13と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度670mPa・s(20℃)だった。
【0083】
[比較例14]
製剤組成を実施例14からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.4部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液9部、水73.6部とした以外は実施例14と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度630mPa・s(20℃)だった。
【0084】
[比較例15]
製剤組成を実施例15から炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)27部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液12部、水69.6部とした以外は実施例15と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度660mPa・s(20℃)だった。
【0085】
[比較例16]
製剤組成を実施例16からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)12部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液14部、水74.7部とした以外は実施例16と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度630mPa・s(20℃)だった。
【0086】
[比較例17]
製剤組成を実施例17から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)15部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液15部、水73.7部とした以外は実施例17と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度650mPa・s(20℃)だった。
【0087】
[比較例18]
製剤組成を実施例18から炭酸グアニジン(水溶性グアニジン類)20部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液16部、水73.2部とした以外は実施例18と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度680mPa・s(20℃)だった。
【0088】
[比較例19]
製剤組成を実施例19からグアニジン(水溶性グアニジン類)0.45部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液9部、水79.7部とした以外は実施例19と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度680mPa・s(20℃)だった。
【0089】
[比較例20]
製剤組成を実施例20から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.45部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液9部、水80.2部とした以外は実施例20と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度690mPa・s(20℃)だった。
【0090】
[比較例21]
製剤組成を実施例21から塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)18部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液14部、水64.7部とした以外は実施例21と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度650mPa・s(20℃)だった。
【0091】
[比較例22]
製剤組成を実施例22からスルファミン酸グアニジン(水溶性グアニジン類)0.6部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液12部、水67.7部とした以外は実施例22と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度670mPa・s(20℃)だった。
【0092】
[比較例23]
製剤組成を実施例23から硝酸グアニジン(水溶性グアニジン類)33.6部を差し引き、2%キサンタンガム水溶液15部、水63.7部とした以外は実施例23と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度680mPa・s(20℃)だった。
【0093】
[比較例24]
水81部とコロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.8部を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて6000rpmで20分間攪拌混合した後、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)、1.2部、イミベンコナゾール(トリアゾール系殺菌剤)10部、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB17)(界面活性剤)1部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB5.7)(界面活性剤)1部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を添加し混合する。次にこれら混合物をダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)を用いて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。得られた水性懸濁製剤の物理性は分散粒子径2.5μm、粘度190mPa・s(20℃)であった。
【0094】
[比較例25]
水55部とコロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)1.0部を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて6000rpmで20分間攪拌混合した後、フサライド(フタリド系殺菌剤)15部、ブプロフェジン(昆虫成長制御剤)20部、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB17)(界面活性剤)2部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB5.7)(界面活性剤)2部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部を添加し混合する。次にこれら混合物をダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)を用いて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。得られた水性懸濁製剤の物理性は分散粒子径2.5μm、粘度195mPa・s(20℃)であった。
【0095】
[比較例26]
水77.6部にプロピレングリコール(凍結防止剤)5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(界面活性剤)1部、テニルクロール(酸アミド系除草剤)5部、ロジン(軟化点80℃)(凝集抑制剤)0.1部、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.3部を添加し、ダイノミルKDL型(Willy A.Bachofen AG製)にて粉砕液の平均粒子径が2.5μmになるように微粉砕した。このとき粉砕液の温度が20℃を超えないように冷却しながら粉砕を行った。
なお、粉採用メディアとしては直径0.7〜1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液11部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度620mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【0096】
[比較例27]
水37部にポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー(界面活性剤)4部を溶解した。この溶液中に、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)0.6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、MEP原体(有機リン系殺虫剤)25部と大豆油(油脂)10部を混合溶解したプレミックス、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、Jet−O−mizer(セイシン企業株式会社製)を用い平均粒子径2.5μmに微粉砕したフサライド原体(フタリド系殺菌剤)10部、を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて平均粒子径が2.5μmになるように攪拌混合した。次いで、これら混合液に2%キサンタンガム水溶液8部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度610mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【0097】
[比較例28]
水38部にポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(界面活性剤)6部を溶解した。この溶液中に、カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)0.6部、プロピレングリコール(凍結防止剤)5部、MEP原体(有機リン系殺虫剤)25部と流動パラフィン(油脂)8部を混合溶解したプレミックス、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム(増粘剤)0.4部、Jet−O−mizer(セイシン企業株式会社製)を用い平均粒子径2.5μmに微粉砕したフサライド原体(フタリド系殺菌剤)10部、を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて平均粒子径が2.5μmになるように攪拌混合した。次いで、これら混合液に2%キサンタンガム水溶液7部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON社製)で均一に混合することにより分散粒子径2.5μm、粘度620mPa・s(20℃)の水性懸濁製剤を得た。
【0098】
[比較例29]
製剤組成を実施例27の塩酸グアニジン(水溶性グアニジン類)8部から尿素8部へと変更した以外は実施例27と同様に調製した。分散粒子径は2.5μm、粘度590mPa・s(20℃)だった。
【0099】
〔試験例1(粘度測定)〕
調製直後の水性懸濁状農薬の粘度をB型粘度計[(株)トキメック製]を用いてローターNo2、回転数12r.p.m 、温度20℃ 条件にて測定した。
結果を表1、2に記載した。
【0100】
〔試験例2(懸垂性試験)〕
調製した水性懸濁製剤を容量30mL(φ17mm×長さ180mm)の試験管に30mL入れ、密栓をして、20℃90日、40℃90日条件に静置保管する。保管試験後、試験管中の該製剤が下層に沈降し、上層に生じた水層(上スキ層)と全層の高さ(cm)を測定し、下式により算出した。
【0101】
【数1】

【0102】
また、試験後のサンプルを試験管から取り出し、サンプルについては分散粒子径(μm)を島津製作所製SALD−2000J(レーザー回折式粒度分布測定装置)にて測定し、粒子凝集について評価を行った。
結果を表1〜3に記載した。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
(表の説明)
表1〜3に記載された試験結果は、20℃90日、40℃90日保管条件における長期保存安定性(懸垂性、粒子凝集の有無)において、実施例1〜27は比較例1〜29と比較して明らかにすぐれていることを示している。
実施例1〜27は、懸垂性、粒子凝集性のいずれの面においても良好な結果を示した。
【0107】
水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジンを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で0.1〜2.5倍の範囲にある実施例1、5、9、13、16、21、24〜27については、20℃、40℃条件において非常に高い懸垂性を維持しただけでなく、粒子凝集も認められなかった。さらには、数多くの農薬活性成分に適応でき、実施例24〜27に認められるように2種以上を併用しても、水溶性農薬活性成分を用いても、良好な懸垂性および粒子凝集抑制効果を示した。
【0108】
水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジンを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で2.5倍を上回る実施例2、17についてもまた、20℃、40℃条件において非常に高い懸垂性を維持しただけでなく、粒子凝集も認められなかったが水溶性グアニジン類の添加量に対する分散安定化効果としては頭打ちだった。
【0109】
水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジンを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で0.1倍を下回る実施例3、6、10、14、20、22については、20℃条件においては非常に高い懸垂性を維持し、40℃条件においては若干落ちるものの実用上問題のない高い懸垂性を維持した。また、粒子凝集が若干認められたが実用上問題のないレベルであった。
【0110】
また、水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジン以外のものを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で0.1〜10倍の範囲にある実施例4、7、11については、20℃条件においては非常に高い懸垂性を維持し、40℃条件においては若干落ちるものの実用上問題のない高い懸垂性を維持した。また、粒子凝集については、20℃条件においては凝集が認められず、40℃条件においては若干凝集が認められたが実用上問題のないレベルであった。
【0111】
水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジン以外のものを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で10倍を上回る実施例15、18、23についてもまた、20℃条件においては非常に高い懸垂性を維持し、40℃条件においては若干落ちるものの実用上問題のない高い懸垂性を維持した。また、粒子凝集については、20℃条件においては凝集が認められず、40℃条件においては若干凝集が認められたが実用上問題のないレベルであった。
【0112】
水溶性グアニジン類として塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジン以外のものを含有し、その添加比が農薬活性成分に対して重量%比で0.1倍を下回る実施例8、12、19については、20℃条件、40℃条件において若干落ちるものの実用上問題のない高い懸垂性を維持した。また、粒子凝集については、20℃条件においては凝集が認められず、40℃条件においては若干凝集が認められたが実用上問題のないレベルであった。
【0113】
一方、実施例1〜23における水溶性グアニジン類を他の組成物で置き換えた製剤組成である比較例1〜23では実施例1〜23と比較して製剤粘度が100〜180mPa・sほど高いにも関わらず懸垂性が著しく低下し、また、顕著な粒子凝集が認められた。
【0114】
比較例1〜23において、懸垂性の面では20℃、40℃両条件ともに明らかな上スキが生じ、粒子凝集の面においては、20℃、40℃の両条件で明瞭な粒子凝集が確認され、特に40℃条件では粒子凝集が顕著であり、懸垂性、粒子凝集性の何れの面において実用上の問題を生じる結果となった。
【0115】
比較例1〜23はいずれも実施例1〜23から水溶性グアニジン類を除いた製剤組成であり、実施例と比較例の間にある懸垂性および粒子凝集性の明確な差がこれら水溶性グアニジン類に由来していることは明らかである。
【0116】
なお、特開平6−316502号公報(特許文献1)に従い調製した比較例24、25については、懸垂性では20℃ではやや良好な値を示し、40℃条件では沈降と上澄み部分の分離が大きくなり、粒子凝集性については20℃、40℃両条件共に明瞭な凝集が認められた。
【0117】
また、特開平9−175904号公報(特許文献2)に従い調製した比較例26については、懸垂性では20℃、40℃両条件共に懸垂性が顕著に低下し、粒子凝集性については20℃、40℃両条件共に抑制効果が認められた。
【0118】
特開2007−77044号公報(特許文献3)に従い調製した比較例27、28については懸垂性の維持効果、粒子凝集の抑制効果が共に認められた。
しかしながら、比較例24〜28のいずれの製剤についても、同一の農薬活性成分を用いた実施例24〜27と比較すると懸垂性の維持効果、粒子凝集の抑制効果ともに劣る結果であった。
【0119】
また、水溶性グアニジン類の代替としてグアニジンと類似した化学構造を有する尿素を用いた比較例29についてはある程度の懸垂性の維持効果、粒子凝集の抑制効果が共に認められたものの、塩酸グアニジンを使用した実施例27と比べ懸垂性維持、粒子凝集抑制のいずれの面においてもやや劣る結果を示した。
【0120】
試験例1、2の結果より、長期保管に耐えうる懸垂性の維持、粒子凝集の抑制には水溶性グアニジン類を含有することが必須条件であり、さらには農薬活性成分に対する水溶性グアニジン類の添加比が重量%比で0.1〜2.5倍であること、水溶性グアニジン類が塩酸グアニジンまたはスルファミン酸グアニジンであることがコストおよび効果面で有利な条件であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)農薬活性成分、b)グアニジンまたはグアニジンの水溶性塩、を含有することを特徴とする水性懸濁製剤。
【請求項2】
前記のグアニジンの水溶性塩が、式(I)
【化2】

〔式(I)中、 nは1〜3の整数を示し、n=1のとき、XはHClあるいは、HNO、NHSOのいずれかを示し、n=2のとき、XはHCOを示し、n=3のとき、XはHPOで示す。〕で表されることを特徴とする請求項1に記載の水性懸濁製剤。
【請求項3】
前記のグアニジンの水溶性塩が塩酸グアニジンもしくはスルファミン酸グアニジンであることを特徴とする請求項1に記載の水性懸濁製剤。
【請求項4】
前記のグアニジンまたはグアニジンの水溶性塩の農薬活性成分に対する添加量が重量%比で0.1倍〜2.5倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性懸濁製剤。

【公開番号】特開2010−163402(P2010−163402A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8622(P2009−8622)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】