説明

安定化ウイルス様粒子及びエピトープディスプレー系

以下を含むキメラポリペプチドが開示される:i)自己集合して、少なくとも約9つのサブユニットを含む、組織化された反復性超分子構造物を形成する第一の部分、前記構造物と共有結合されるii)長さが少なくとも約15から約80アミノ酸残基のペプチドを含む第二のポリペプチド。前記第二の部分のペプチドは自己集合してパラレルマルチマーを形成する。意図されるキメラポリペプチドは、第二のポリペプチド部分の共有結合された自己結合配列を欠くがそれ以外は同一の配列である第一のポリペプチドから形成された粒子よりも安定な粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学及びポリペプチド工学分野の交差領域、特に免疫原性エピトープの核酸結合の減少、安定性強化及びディスプレーのために操作されたキメラポリペプチド及びその超分子(supramolecule)集合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス粒子はしばしば1つ又はいくつかの異なるポリペプチドから成るが、それらは単離された成分よりもはるかに強い免疫応答を始動させることができる。B細胞応答の場合、ウイルス粒子の免疫原性にとって重要な要件は表面エピトープの反復性及び順序でありえることが知られている。ほとんどのウイルス粒子の表面は、規則的で対称性の結晶類似態様で配列されたポリペプチドを含み、前記結晶類似態様は、B細胞上のエピトープ特異的免疫グロブリンが効率的に交差結合できるように、規則的に並んだエピトープを提示する(Bachmann et al. (1996) Immunol Today 17:553-558)。B細胞上の表面免疫グロブリンのこの交差結合は、細胞周期の進行及びIgM抗体の産生を直接誘発する強力な活性化シグナルである。更にまた、そのような始動B細胞はTヘルパー細胞を活性化することができ、前記は適宜、B細胞におけるIgMからIgG抗体産生への切り替え及び長期持続B細胞メモリーの生成(全てのワクチン接種の最終目標)を誘発する(Bachmann et al. (1997) Ann Rev Immuno 15:235-270)。ウイルスの構造は、自己免疫疾患における抗抗体の生成にも、更に病原体に対する天然の応答の一部分としても関係がある(Fehr et al. (1997) J Exp Med 185:1785-1792)。したがって、整頓され反復性を有するアレーとして組織化されたウイルス粒子上の抗原は、それらは直接B細胞を活性化することができるので高度に免疫原性である。
【0003】
強力なB細胞応答に加えて、ウイルス粒子はまた、細胞傷害性T細胞応答(免疫系のもう1つの重要な兵器)を誘発する。細胞傷害性T細胞は、非細胞病変性ウイルス(例えばHIV又はB型肝炎ウイルス)の排除のために、及び腫瘍の根絶のために特に重要である。細胞傷害性T細胞は天然の抗原を認識するのではなく、MHCクラスI分子と結合したそれらの分解産物を認識する(Townsend et al. (1998) Ann Rev Immunol 7:601-624)。マクロファージ及び樹状細胞は、外因性ウイルス粒子(それらの可溶性の単離成分ではなく)を取り込んで処理し、分解生成物を細胞傷害性T細胞に提示してそれらT細胞の活性化及び増殖をもたらす(Kovacsovics-Bankowski et al. (1993) Proc Natl Acad Sci 90:4942-4946;Bachmann et al. (1996) Eur J Immunol 26:2592-2600)。
いくつかの新しいワクチンでは、ウイルスの固有の免疫原性が利用されている。これらのアプローチのいくつかは、ウイルス粒子の粒子状の性質に焦点を合わせている。例えば以下を参照されたい:Harding et al. (1994) J Immunol 153:4925-33(前記は抗原を被覆したラテックス粒子から成るワクチンを開示している);Kovacsovics-Bankowski et al. (1993) Proc Natl Acad Sci 90:4942-4946(前記は酸化鉄ビーズ及び抗原から成るワクチンを開示している);米国特許5,334,394号(Kossovsky et al.)(前記は抗原被覆粒子を開示している);米国特許5,871,747号(Gengoux-Sedlic)(その表面に共有結合させた1つ以上のポリペプチドを保有する合成ポリマー粒子、非共有結合被覆(前記は少なくとも部分的に前記粒子の表面を覆う)及び前記被覆された粒子と接触する少なくとも1つの生物学的に活性な物質を有する粒子を開示している(例えばWO94/15585を参照されたい))。
【0004】
ウイルス様粒子(VLP)は、1つ以上のタイプの多くのポリペプチドから、組織化され幾何学的に規則的な態様で構築された構造物である。2つ以上の分子を含むので、VLPは超分子と称することができる。VLPはウイルスゲノムを欠き、したがって非感染性である。VLPは異種発現によって大量生産することができ、更に容易に精製することができる。VLPの幾何学は、典型的には供給源のウイルス粒子の幾何学に類似し、下記で考察するほとんどの事例で正二十面体又は擬似正二十面体対称性を有する。VLPは、その構造的特性、大量生産及び精製の容易さ、並びにその非感染性の性質のためにワクチン製造分野で利用されている。
VLPの例には、B型肝炎ウイルス(WO92/11291;Ulrich et al, (1998) Virus Res 50:141-182)、麻疹ウイルス(Warnes et al. (1995) Gene 160:173-178)、シンドビスウイルス(Tellinghuisen et al. (1999) J Virol 73:5309-5319)、C型肝炎ウイルス(Baumbert (1998) J Virol 72:3827-3836)、ロタウイルス(米国特許5,071,651号(Sabara)及び5,374,426号(Sabara et al))口蹄疫ウイルス(Twomey et al. (1995) Vaccine 13:1603-1601)、ノーウォークウイルス(Jiang et al. Science (1990) 250:1580-1583;Matsui et al. (1991) J Clin Invest 87:1456-1461)、レトロウイルス(WO96/30523;米国特許6,602,705号(Barnett et al.))、レトロトランスポゾン(例えばTyポリペプチドpl(Al-Khayat et al. (1999) J Mol Biol 292:65-73及び米国特許6,060,064号(Adams et al.))、及びヒトパピローマウイルス(WO98/15631)のキャプシド又はヌクレオキャプシドポリペプチドの自己集合が含まれる。植物感染性ウイルスキャプシドポリペプチドもまたin vitro及びin vivoで自己集合してVLPを形成する。(例えば以下を参照されたい:ポティウイルス(Jagadish et al. (1991) J Gen Virol 72:1543-1550);アルファルファモザイクウイルス(Yusibov et al. (1996) J Gen Virol 77:567-573)。ウイルス粒子及びそれらの同族の構造サブユニットは以下では“キャプシド”ポリペプチドと称される。
【0005】
キャプシドポリペプチドが自己集合して通常のビリオン構造以外の構造を形成する例は多数存在する。例えば、ロタウイルス(Lepault et al. (2001) EMBO J 20:1498-1507)、パピローマウイルス及びポリオーマウイルス(Schwartz et al. (2000) Virology 268:461-470)のキャプシドポリペプチドは、それぞれ種々の粒子及び管状構造を形成し、いくつかのキャプシドポリペプチドは、アッセンブリー条件に応じて集合して組織化された二次元アレーさえ形成する(Lane (1998) Handbook of Plant Virus Infections and Comparative Diagnosis, ed. E. Kurstak (Elesvier/North-Holland, Amsterdam) pages 334-376)。それにもかかわらず、これら集合物の各々は、キャプシドポリペプチドの編成において、x-線回折によって容易に認めることができる幾何学的な規則性を示す。ウイルスキャプシドポリペプチドのこれらの集合物は典型的には約30より多いサブユニットを含むが、より小さなVLP集合物はマイナス鎖のRNAウイルスから誘導される。インフルエンザAウイルスのヌクレオキャプシドタンパク質の約9コピーを含むリング型VLPが報告され(Portela (2002) J Gen Virol 83:723-734)、更に狂犬病ウイルスのヌクレオプロテインの10±1コピーを含むリング型VLPも報告された(Iseni (2002) J Gen Virol 79:2909-2919)。プラスセンスのRNAタバコモザイクウイルスは、自己集合してVLPを形成する。前記VLPは、キャプシドポリペプチドの34コピーを含む2層の円板である(17コピー/層)(Bhyravbhatla (1998) Biophys J 74:604-615)。
異種エピトープを保有するVLPを形成する、前記エピトープとポリペプチドキャプシドとの融合は上記に記載され、当分野では周知である。エピトープを展示する他の超分子マルチマー構造もまた報告されたが、これらもまたワクチンとしての使用が意図されている。例えば、WO00/69907(Hill et al.)には、シャペロニンヘプタマー及びダブルヘプタマー(例えば大腸菌のGroES及びGroEL及びホモローグ)のタンパク質骨組み(その中に異種ポリペプチドを挿入することができる)としての使用が記載されている。前記の系は、挿入されたポリペプチドの多価提示のためにまた別の超分子構造物を提供するが、より高次の構造も安定化の特色も開示されておらず、天然のサブユニットの相互作用及び編成を超える提案も為されていない。
【0006】
棍棒型ウイルス(例えばタバコモザイクウイルス)、屈曲ウイルス(例えばジャガイモウイルスX及びY;エボラウイルス)及び屈曲ウイルスの下位構造物(例えばHIV、インフルエンザA及び狂犬病ウイルスのヌクレオキャプシド)は螺旋形であり、それぞれ放射状対称性を有する。したがって、球形でも正二十面体でもない幾何学的に規則的な集合物及び構造が“ウイルス様粒子”とい用語には明瞭に含まれる。実際のところ、正二十面体構造のような管状構造が、in vivoにおいて有効で防御能力のある免疫原であることが示された(Ghosh et al. (2002) Virology 302:383-392)。
完全長ウイルス由来のキャプシドポリペプチドは、典型的には、キャプシドポリペプチドを発現している細胞に存在する核酸と結合する。このことは、ウイルスゲノムのパッケージ及びデリバリーに密接に関連するキャプシドポリペプチドの天然の生物学的機能性を反映している。自己集合に続いて、未改変キャプシドポリペプチドから成るVLPは、典型的には前記キャプシドポリペプチドが発現される細胞内に存在する核酸を含む。前記核酸にはキャプシドポリペプチドのメッセンジャーRNA以外に他の細胞性核酸も含まれる(例えば以下を参照されたい:Iseni et al. (1998) J Gen Virol, 79:2909-2919;Krol et al. (1999) Proc Natl Acad Sci 96:13650-13655;及びYu et al. (2001)J Virol 75:2753-2764)。
核酸の結合は、VLPがワクチンとして用いられるときには好ましくない(遺伝子デリバリー系(米国特許5,869,287号(Price et al.)で開示)として用いる場合とは反対である)。なぜならば外来DNA又はRNAを免疫される動物又は人間に導入することを誰も望まないからである。そのような外来核酸はしばしばその後に続く異種発現を伴う。
【0007】
核酸の結合はしばしば個々に分断されたキャプシドポリペプチドセグメントに付随する(前記セグメントは、核酸が減少した又は実質的に全く核酸が存在しないキャプシドポリペプチドを生成させるために欠失させることができる)(例えば、Choi et al. (2000) Virology 270:377-385)。いくつかの事例では、しかしながら、キャプシドポリペプチドの核酸結合ドメインの欠失は、コア-核酸相互作用が粒子の安定性に寄与しているために、粒子の不安定性を生じるか、又は粒子のアッセンブリーを妨げる(Schmitz et al. (1998) Virology 248:323-331;全般的には以下を参照されたい:Harrison (2001) “Principles of Virus Structure” in Fields' Virology, ed. Lippincot, Philadelphia, pages 53-86、及び前記の引用文献)。実際のところ、核酸のウイルス粒子に対する構造的寄与は特例ではなくむしろ原則であり、したがって核酸の非存在下では代償となる特質がしばしばVLPの安定化に要求される。
免疫原性エピトープを展示するように設計されたVLPが当分野で知られており、多くのタイプのウイルスの構造性ポリペプチドから設計されている。前記ウイルスには、細菌(バクテリオファージ)、植物及び動物(ヒト感染性ウイルスを含む)に感染するウイルスが含まれる。Wolfら(WO96/30523)は、免疫学的に重要なエピトープの提示を目的とする非感染性レトロウイルス様の粒子状担体として機能する、HIV-1の改変pr55 Gagの使用を記載している。Nageshaらは、エピトープの担体としてカリシウイルスの使用を調査した(Arch Virol (1999) 144:2429-2439)。Portaらは、エピトープの担体として植物感染ウイルス由来のVLPの使用を概説している(Rev Med Virol (1998) 8:25-41)。Brownらは、エピトープの担体として細菌感染ウイルスの使用を記載している(Intervirology (2002) 45:371-380)。例示的ペプチドエピトープの非包括的リスト以下の表1で提供される。
【0008】
しかしながら、そのような操作された又は改変されたキャプシドポリペプチドは自己アッセンブリーのための能力が低下しえる(例えば以下を参照されたい:Schmitz et al. Virology (1998) 248:323-331)。内部挿入物を保有するキメラB型肝炎(HB)キャプシドポリペプチドを含むVLPは、電子顕微鏡で分析し、挿入された異種エピトープを欠くVLPと比較したときしばしば組織化が低下した構造を有するように見える(Schodel et al. (1994) J Exp Med 180:1037-1046)。いくつかの事例では、異種エピトープのC-末端短縮HBキャプシドポリペプチドへの結合は、キャプシドポリペプチド発現に続いてハイブリッドVLPが回収できないほど劇的な脱安定化の影響を与える(Schodel et al. (1994) Infect Immunol 62:1696-1676)。したがって、操作された多くのHB VLPは、VLPが形成されないか又は精製中に分離するほど不安定であり、その程度は、VLPが回収不能であるか、又は非常に貧弱な安定性特性を有するもので、それらのワクチン開発を困難にした。この不安定性はまた、バクテリオファージQ-ベータについてFehrらによって示された(Proc Natl Acad Sci (1998) 95:9477-9481)。前記文献では、粒子のアッセンブリーを妨げる粒子状エピトープの挿入物はまた、挿入されたエピトープの免疫原性認識を妨げ、ワクチン設計におけるVLP安定性の重要性を知らしめた。
Ulrichら(Adv Virus Res (1998) Academic Press, (New York)pages 141-182)は、C-末端短縮及びB型肝炎キャプシドポリペプチド(HBc)の外来配列の挿入における粒子の安定性の低下を報告している。結果として、完全長キャプシドポリペプチドの核酸結合能力を停止させ、かつ異種エピトープの結合に耐性を示しながら、VLP安定性を促進し、又はVLPを再構成する構造的特徴は、ワクチンの開発において極めて有益であろう。このことは、B型肝炎及び他のヘパドナウイルスのキャプシドポリペプチドを使用する例示的抗原デリバリー形についてはよく理解されている。同じ論文で、Ulrichらは、ヒトのワクチンでこれらキメラを使用するために解決されねばらない3つの潜在的な問題を記載している。第一の潜在的な問題は、免疫される宿主へのキメラワクチン中の核酸の偶然の移入である。第二の潜在的な問題は、HBに対する既存免疫による干渉である。第三の可能な問題は、長期保存にも耐えることができる無傷のキメラ粒子の再生可能な調製物の要求に関連する。
【0009】
Pumpensら(Intervirology (1995) 38:63-74)は、C-末端短縮HBキャプシドポリペプチドから形成されたVLPは完全長タンパク質から形成されたVLPよりも安定性が低いことを報告した。HBcへの挿入物を含むC-末端短縮HBcキメラは、しばしば組織化が低下した構造を有するようであり、電子顕微鏡で分析して異種エピトープを欠く粒子と比較したときしばしば組織化が低下した構造を有するように見える(Schodel et al. (1994) J Exp Med 180:1037-1046)。いくつかの事例では、異種エピトープのC-末端短縮HBc粒子への挿入は、異種発現に続いてハイブリッド粒子を回収できないほど劇的な脱安定化の影響を与える(Schodel et al. (1994) Infect Immunol 62:1696-1676)。したがって、多くのキメラHBc粒子は、それら粒子が精製中に分離するほど不安定で、その程度は、前記粒子が回収不能であるか、又は非常に貧弱な安定性特性を有するもので、それらのワクチン開発を困難にした。
安定性の低下は、操作されたVLPをワクチンとして実際に使用するための主要な障害として一般的によく理解されており、解決方法が探索されてきた。例えば、Peabody(Arch Biochem Biophys (1997) 347:85-92)は、挿入ペプチドを保有するバクテリオファージMS2キャプシドポリペプチドの自己アッセンブリーは不完全であることを示した。しかしながら前記の特別な例では、2つのそのようなキャプシドポリペプチドを遺伝的に(したがって共融結合により)結合させることによって自己アッセンブリーを回復させることができたので、2つの改変キャプシドポリペプチドの融合は、ダイマー内のキャプシド相互作用を安定化させた。この解決法は、VLP構造の多様性及びタンパク質相互作用のために一般化することはできない。即ち全てのVLPがダイマーを構築しているわけではなく、したがってそこで必要とされるキャプシドポリペプチド間の相互作用は、そのようなタンパク質-タンパク質融合によって破壊されるであろう。VLPがダイマーから構築される場合であっても、そのような頭対尾の共有結合によって強制される構造的制限が適切なアッセンブリーを妨げるであろう。
【0010】
自己結合ペプチド配列がいわゆるロイシンジッパータンパク質に存在する。例示的なロイシンジッパー配列は、GCN4、jun、fos、c-Myc、及びC/EBPとして知られているタンパク質に存在する。これらの配列のうちで、GCN4配列はよく研究されており、パラレルダイマーを形成することが示され、一方、GCN4の変異形はパラレルダイマー、トリマー及びテトラマーを形成することが示された(Harbury et al. (1993) Science 262:1401-1407)。そのようなペプチドは、それらの自己アッセンブリーを介して、天然の自己相互作用タンパク質ドメイン及び/又はタンパク質間相互作用を機能的に代替するために用いられた。
ある事例では、高度に保存された細胞質ドメインのイオンチャネルアッセンブリーにおける役割が、前記がロイシンジッパーによって機能的に置き換えられているために識別された(Zerangue et al. (2000) Pro Nat Acad Sci 97:3591-3595)。別の事例では、ロイシンジッパーペプチドは、HIV p55(gag)構造ポリペプチドの欠失変種で、ヌクレオキャプシド及びキャプシドタンパク質とその相互作用に付随するアッセンブリー活性(即ち、外部キャプシドタンパク質が内部ヌクレオキャプシドタンパク質によって組織化される相互作用)を代替することができた(例えば以下を参照されたい:Accola et al. (2002) J Virol 74:5395-5420;及びZhang et al. (1998) J Virol 72:1782-1789)。より最近では、シンドビスヌクレオキャプシドタンパク質のN-末端ヘリックスドメインが、生ウイルスでダイマー形成(トリマー形成ではなく)ロイシンジッパーによって機能的に代替された(Perera et al. (2003) J Virol 77:8345-8353)。
上記の報告のいずれも、ロイシンジッパーを、それらが代替するドメインの活性を機能的に範囲を限定するためのツールとして用いた。これらの論文は、VLPを安定させるために自己結合ペプチドを使用することを開示も提案もしておらず、そのようにして安定化されたVLPがエピトープデリバリー及び/又は免疫のために有用でありえるとの開示も提案もしていない。
【0011】
比較的小さい人工的な超分子構造物の生成のために他の自己結合ペプチドを使用することもまた当分野では公知である。したがって、Thogersonら(WO98/56906)は、テトラネクチンタンパク質ファミリー由来の構造的成分を保持する融合ポリペプチドのトリマー生成用の系を開示している。この系は、安定なホモ-又はヘテロ-ダイマー及びトリマーを生成するが、より高次の構造物は生成しない。更にまた、テトラネクチントリマー化ドメインは、核酸結合を低下させるよりもむしろ高めえるリジンが豊富である。
WO96/37621で、Packらは、一般的な構造(機能的ドメイン1)−(マルチマー化ドメイン)−(機能的ドメイン2)との融合ポリペプチドの新規なホモ-及びヘテロテトラマー及びペンタマーを作成するために、哺乳動物p53、血小板因子4、COMP、又はヒストン由来マルチマー化ドメインを使用することを開示している。しかしながら、前記文献は、高次の又は既存の構造を安定化するためにマルチマー化ドメインを使用することは提案していない。更にまた、これらの構造(COMPを除く)は抗パラレル編成を有する。即ち、マルチマー化ドメインは、前記マルチマーにおいて互いに頭対尾の態様で存在する。
WO02/74795で、De Filetteらは、インフルエンザの抗原性ポリペプチドと融合させたロイシンジッパー自己アッセンブリードメインからなる組換え多価インフルエンザワクチンを開示している。前記文献では、抗原(天然に存在するオリゴマータンパク質複合体に由来する)はオリゴマー化ドメインに融合されている。そのようなオリゴマー化ドメインは、根源タンパク質複合体又はいずれかの高次の超分子構造(例えばVLP)を安定化させるために有用でありえるという提案は為されなかったし、テトラマーより大きな構造物も考察されていない。むしろ、オリゴマー化ドメインは、オリゴマー化を誘導し、更にオリゴマー化の程度を制御すると記載されている。前記はまた、本明細書で考察するその他の開示の各々に関する事例である。
【0012】
別の例示的自己結合ペプチドはインフルエンザAウイルスのM2タンパク質である。M2タンパク質は小さなイオンチャネルタンパク質であり、前記は自己凝集して膜表面にホモ-テトラマーを形成する。前記テトラマーは、17位及び19位のシステイン間で形成される非本質的分子間ジスルフィド結合によって安定化される(Holsinger et al. (1991) Virology 183:32-43)。M2タンパク質のこの領域は、VLP又は自己結合ペプチドと結合したときは、多様な組換えインフルエンザワクチンの抗原として有用であったが(例えば以下を参照されたい:Neirynck et al. (1999) Nat Med 5(10):1157-1163;並びにWO99/07839及びWO02/74795(De Filette et al.)及びその中の引用文献)、前記は、VLPを安定化するために有用であると以前に報告されたことはなく、更に全く予想に反することには、この安定化は17位及び19位に対応する位置でジスルフィド結合を要求しなかった。
自己結合ペプチドは既知の又は天然のタンパク質に由来する必要はないが、de novoで特定することができる(Zhang et al. (1999) Curr Biol 9:417-420)。自己集合ペプチドはまた、適切な金属イオンが導入されるときには、溶液中で集合するように設計することができる(Ghadiri et al. (1992) J Am Chem Soc 114:4000-4002)。例えば一文字を用いて表したとき、以下の配列を有するN-アシル化(下記の配列では“Ac-”で表示される)ペプチドは、適切な金属イオンの存在下で自己集合してパラレルテトラヘリックスを形成する:
Ac-G-L-A-Q-K-L-L-E-A-L-Q-K-A-L-A-CONH2(配列番号:1)
以下の配列を有するN-アシル化ペプチドは、自己集合してパラレルトリヘリックスを形成する(米国特許5,408,036号(Ghadiri)):
Ac-G-E-L-A-E-Q-K-L-E-Q-A-L-Q-K-L-A-CONH2(配列番号:2)
当分野で周知の他の自己結合ペプチドは、それらの固有の特性(予想される免疫原性、供給生物、好ましいマルチマーの状態、及び結合強度を含む)について選択することができる。例えば、ヒトのタンパク質由来の自己結合ペプチドは、ヒトにワクチンを投与したとき(又は他の取り付けられたエピトープを提示するとき)、前記自己結合ペプチドに対し、免疫反応を最小限にすることができる。
以下で開示されるように、本発明は、VLP-由来ワクチンに付随する問題に対して1つの解決を提供し、更に偶発的な核酸の結合及び不安定性から実質的に開放され、一方でVLP使用の利点(例えば製造の容易さ及び融通性、アジュバント様の免疫原性強化)を保持しているワクチンを提供する。
【発明の開示】
【0013】
発明の要旨
超分子集合物(例えばウイルス様粒子(VLP))の安定性、したがって材料の例えばワクチンとしての有用性は、自己結合ペプチドをウイルスタンパク質(ポリペプチド)鎖サブユニットに取り付けることによって実質的に改善することができる。VLPの不安定性から安定性へのこの解決法は一般化することが可能であり、動物、植物、菌類及び細菌に感染するウイルスに由来する多様なVLPを安定化させるために用いることができる。
VLPを安定化させるために意図されるこの解決法はまた、他の大型の反復性で対称性の超分子集合物を安定化させるためにも有用である。安定化することができる非ウイルス性VLP(超分子集合物)の例には、真核生物及び原核生物のピルビン酸デヒドロゲナーゼの既知の60-サブユニットの正二十面体酵素複合体(Lessard et al. (1998) EMBO J 258:491-501;Stoops et al. (1997) J Biol Chem 272:5757-5764;Wagenknecht et al. (1991) J Biol Chem 266:24650-24656)、及び原核生物のルマジンシンターゼが含まれる(Fischer et al. (2003) Eur J Biochem 270:1025-1032;Mortl et al. (1996) J Biol Chem 271:33201-33207)。ウイルス由来VLPのように、これらの正二十面体粒子は、エピトープの提示及びワクチン又は他の免疫原におけるデリバリーのために有用である。
“超分子(supramolecule)集合物(assemblage)”という語句は、ウイルス関連(又はウイルス由来)VLP(即ちウイルスゲノム又は人間が改変したウイルスゲノムによってコードされるVLP)及び非ウイルス起源の類似の粒子の両方を包含するために本明細書では用いられる。“VLP”という用語は、ウイルス遺伝子又は人間が改変したウイルス遺伝子から形成される粒子について通常用いられるが、また超分子集合物に関してもその類似性及び使用の容易さのために相互に用いられる。
【0014】
本発明は、取り付けた自己集合ペプチド配列を含む、複数のポリペプチドサブユニットで構成されるキメラ超分子集合物(又はVLP)を意図する。したがって、意図されるキメラは、(i)自己集合して、少なくとも約9つのサブユニットを含む、組織化された反復性超分子構造を形成する第一のポリペプチド、前記に共有結合された(ii)約15から約80アミノ酸残基の長さを有する異種ペプチドを含む第二のペプチド部分を含む。前記第二の部分のペプチドは、第一の部分と共有結合していないときは、以下で考察するように、自己集合してパラレルマルチマーを形成する。意図されるキメラポリペプチドは、共有結合された第二のポリペプチド部分の自己結合ペプチド配列を欠くがそれ以外は配列が同一である第一のポリペプチドから形成された粒子よりも安定な粒子を形成する。その安定性は、分析用サイズ排除クロマトグラフィー溶出を用いてアッセイすることができる。意図されるキメラ超分子集合物(VLP)は、哺乳動物宿主での免疫に際して、好ましくは超分子集合物のポリペプチド配列、超分子集合物ポリペプチド配列に融合された異種ポリペプチド、又は取り付けたハプテンの1つ以上に対して免疫原性を誘発する。
より具体的には、本発明は、それ自体以下の(i)及び(ii)を含むキメラポリペプチドで構成される超分子集合物を意図する:(i)自己集合して、少なくとも約9つのポリペプチドサブユニットを含む、組織化された反復性超分子構造物を形成する第一のポリペプチド部分、及び(ii)長さが約15から約80アミノ酸残基のポリペプチド(前記は好ましくは第一の部分のポリペプチドに対して異種である)を含む共有結合された第二のポリペプチド部分。前記第二の部分のペプチドは、(a)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、自己集合してpH7.0で約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成するか、又は(b)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するとき自己集合してパラレルマルチマーを形成するか、又は(c)前記第二の部分のペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインであるが、ただし前記第二の部分が、HBcポリペプチドである第一の部分とN-末端で結合した、0、1又は2個のシステインを含む細胞外M2ドメイン以外であることを条件とする。したがって、好ましい実施態様では、第二の部分のペプチドは、(a)又は(b)又は(c)のうちの1つ又は他のもので定義されるものである。(a)及び(c)で定義された第二の部分のペプチドが特に好ましい。有効な量で哺乳動物に投与されたとき、前記キメラポリペプチドは、好ましくはVLPポリペプチド配列、VLPポリペプチド配列に対して異種のポリペプチド、又は取り付けたハプテンの1つ以上に対して免疫応答を誘引する。
【0015】
好ましい実施態様では、本発明は以下を含むキメラポリペプチドを意図する:(i)ウイルスキャプシドタンパク質の全部又は一部分の配列を有するか、又はウイルスキャプシドタンパク質(以下で定義される)の誘導体である第一の部分、前記第一の部分は、(ii)約15から約80アミノ酸残基を有するペプチドを含む第二の部分と共有結合されてある。前記第二の部分のペプチドは、(a)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、自己集合して、pH7.0で約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成するか、又は(b)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するときは自己集合するか、又は(c)前記第二の部分のペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインであるが、ただし前記第二の部分が、HBcポリペプチドである第一の部分のN-末端と結合した、0、1又は2個のシステインを含む細胞外M2ドメイン以外であることを条件とする。有効な量で哺乳動物に投与されたとき、前記キメラポリペプチドは、好ましくは免疫応答を誘引する。いくつかの実施態様では、第一の部分は、ウイルス群(動物感染性ウイルス、植物感染性ウイルス、菌類感染性ウイルス及び細菌感染性ウイルスを含む)のキャプシドポリペプチドに由来するか、又は前記と類似する。
いくつかの実施態様では、本発明は、第一のポリペプチド部分に含まれるリンカー残基、異種エピトープ又はその両方を有するキメラポリペプチドを含む。他の実施態様では、本発明は、前記キメラポリペプチドから形成される、組織化された自己集合超分子粒子を目的とする。
【0016】
本発明はいくつかの利益及び利点を有する。
本発明の利点の1つは、自己結合ペプチド部分を含むキメラキャプシドポリペプチドから形成されるウイルス様粒子は、自己結合ペプチド部分を欠く類似の粒子よりも水性組成物中での保存時により安定であるということである。
本発明のある種の実施態様の利点は、いくつかのキメラキャプシドポリペプチドは、天然のウイルス様粒子の自己集合の特徴を示し、更にこれら天然の粒子の核酸結合をほんの部分的から実質的に全く示さないということである。正二十面体の酵素複合体はウイルスゲノムの被包化に順応しないので、正二十面体の酵素複合体サブユニットに由来するVLPは、特別な改変を必要としないで核酸の結合を欠く。
本発明の有用性は、少なくともダイマー、トリマー及びペンタマー形成自己結合ペプチドの利用可能性によって高められる。正二十面体ウイルス及びVLPは2-、3-、及び5-回対称を有し、したがってVLPの安定化は、キャプシドポリペプチドの相互作用を2倍(ダイマー)、3倍(トリマー)及び/又は5倍(ペンタマー)強化することによって最適化することができる。テトラマーは2回対称を有し、ヘキサマーは2回及び3回対称の両方をもつことを記載しておく。理論に拘束されないが、しかしながら、正二十面体の2-、3-、及び5-回対称は、内部キャプシドポリペプチドの相互作用を2倍、3倍又は5倍安定化させることを実験者が選択することを容易にし、逆もまた同様である。例示的な自己結合ペプチドの非包括的リストは以下の表2で提供される。
本発明の別の利点は、キメラキャプシドポリペプチドから形成されたウイルス様粒子は、優れたB細胞及びT細胞免疫原性を示すということである。
また別の利点は、本発明のVLPは、自己結合ペプチド部分を欠く類似の粒子よりも高い収量で製造することができるということである。
本発明の更に別の利点は、取り付けられたエピトープを保持する本発明のVLPは、自己結合ペプチド部分を欠く類似のコンジュゲートよりもしばしばはるかに強い免疫原性を有するということである。この強化免疫原性は、免疫原として動物に導入した後でより長期間にわたってそれらの粒状の性質を維持する安定化粒子に帰することができる。
本発明の更なる利点は、広範囲のウイルスに由来するキャプシドポリペプチドを用いることができるということである。本発明の更に別の利点は、自己結合ペプチド部分のVLP配列との結合は、VLPの不安定性の問題に対する普遍的解決法を提供するということである。
本発明の更に別の利益及び利点は以下の開示から当業者には明白となろう。
【0017】
定義
エピトープ:エピトープは、例えば免疫学分野でハプテンとして一般的に知られているような小分子(例えばジニトロフェノール、例えばニコチン又はコカインのような薬剤)の他にB-細胞エピトープ、T-細胞エピトープ、抗原、抗原決定基、モノクローナル抗体のための結合部位、ペプチド、オリゴ糖、核酸、並びに、他の化学的及び生物学的実体であり、典型的には抗体のパラトープ又はT細胞レセプターと結合することによって免疫認識の対象であることが当分野で知られているものである。エピトープは、キャプシドポリペプチド及び自己結合ペプチドとは全く異なるものである。
キメラポリペプチド:キメラポリペプチドは、天然には存在しないポリペプチドであり、典型的には1つ以上の取り付け部分(例えば他のポリペプチド、ペプチド、リンカー残基又は部分、及び/又は他の分子)を含む。ほとんどの文脈では、本用語は、共有結合によって結合させた第一及び第二のポリペプチド部分を含むポリペプチドを意味する。多くの文脈では、本用語は更に、遺伝的に操作されたタンパク質コード配列の発現を介してペプチド結合によって結合された、1つの供給源又は遺伝的継承物に由来するポリペプチドと結合したまた別の供給源又は遺伝的継承物由来のあるポリペプチドを意味する。しかしながら、また別の箇所に示すように、当業者は、キメラポリペプチドを完全に非生物学的なin vitroの化学的合成によってキメラポリペプチド全体又は部分を合成することができる。
VLP:VLPはウイルス様粒子の略称であり、通常はウイルスキャプシドポリペプチドの自己集合によって形成される、組織化された反復性の超分子構造物及び複合体を指す。いくつかの事例では、VLPはウイルスキャプシドポリペプチドに由来しない。即ち、前記はウイルスキャプシドタンパク質のアミノ酸配列を持たないが、別の自己集合ポリペプチド、例えばピルビン酸デヒドロゲナーゼE2ポリペプチド及びルマジンシンターゼポリペプチドに由来する(その配列を有する)。VLPは任意の核酸成分を含んでいてもいなくてもよい。ウイルスキャプシドポリペプチドに由来するVLPは少なくとも9つのキャプシドポリペプチドを含む。他の自己集合ポリペプチドに由来するVLPは少なくとも約30サブユニットを含む。VLPの形態には、正二十面体、正二十面体若しくは擬似二十面体対称をもつ粒子、球状、管状及び糸状構造物、及び平坦なアレーが含まれる。天然のウイルスのように、VLPは、2回、3回、5回又は放射対称を有する、少なくともいくつかの領域を示す。そのような局所的又は全体的対称は、多くの技術(X-線回折及び画像解析を追加した又は追加しない電子顕微鏡検査法を含む)によって容易に観察することができる。本明細書で定義するVLPは、ウイルス又はキャプシドポリペプチドが最終的に由来した粒子に類似しない形態及び集合物を明らかに含む。
【0018】
キャプシドポリペプチド:キャプシドポリペプチドは、自己集合を示してVLPを形成するポリペプチドである。本明細書で意図されるキャプシドポリペプチドは、ウイルス粒子の天然のポリペプチドサブユニットであっても、(下記で考察するように)非ウイルス粒子のポリペプチドサブユニットであっても、又は非天然の誘導体であってもよい。ウイルス粒子の構造タンパク質サブユニット及びそれらの同族VLPはキャプシドポリペプチドで構成される。キャプシドポリペプチドは、追加の部分、例えば自己結合ペプチド、リンカー配列又はエピトープを含むことができ、したがってそれらもまたキメラポリペプチドでありえる。キャプシドポリペプチドは、エピトープ及び自己結合ペプチドとは異なり、更に前記とは異種である。キャプシドポリペプチドは、異種エピトープと結合されたとき好ましくはそれ自体免疫応答を誘引しないが、それにもかかわらず免疫応答を誘引することもありえる。“キャプシドポリペプチド”という用語は、天然に存在するウイルス粒子の構造タンパク質並びにその人工類似体及び誘導体の両方を含むことを明瞭に意図する。キャプシドポリペプチドには、ヌクレオキャプシド及びコアタンパク質として当分野で公知のペプチドが含まれる。キャプシドポリペプチドは、最初のウイルス又はVLPのどちらかに存在する唯一のポリペプチドである必要はない。キャプシドポリペプチドは、ウイルス由来ではない他の自己集合ポリペプチド、例えばピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体のE2サブユニット、及びルマジンシンターゼポリペプチド(前記の各々は60のサブユニットで構成される正二十面体対称を有する粒子を形成する)を明瞭に含む。
誘導体キャプシドポリペプチドは、ウイルスキャプシドポリペプチドの配列と少なくとも約80パーセント同一のアミノ酸配列を有する。それとは違って、意図されるキャプシドポリペプチドは、誘導体が得られた天然に存在するキャプシドポリペプチドの1つ以上の相同な領域と比較して約20%までの置換アミノ酸残基を有することができる。配列が、N-又はC-末端で短縮されているか、又は配列内に1つ以上の追加の残基又は欠失を含む場合、これらの領域はパーセント置換の計算に含まれない。なぜならば、配列内の前記変化は天然のキャプシドポリペプチドの相同な配列を含まないからである。
【0019】
自己アッセンブリー:キャプシドポリペプチド及びVLPの文脈では、自己アッセンブリーは、人間の作業者を仲介した又は仲介しない、キャプシドポリペプチド(又は類似体)のin vivo又はin vitroでのビリオン又はVLPのアッセンブリーを指す。自己アッセンブリーはまた、ウイルス起源ではない他の粒子形成キメラポリペプチド(例えばルマジンシンターゼ及びピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体のE2サブユニット由来の組織化された反復性の超分子構造物のアッセンブリーも指す。自己結合ペプチド(下記で考察)の文脈では、自己アッセンブリーは、溶液中で個々のキメラポリペプチドが結合してマルチマーを形成するか、又は、溶液中に存在するとき少なくとも約9つのポリペプチドサブユニットの凝集物を形成することを意味する。キメラポリペプチドは一般的には、個々の二次及び三次タンパク質性構造をもつ球状サブユニットとして自己集合し、一緒になって少なくとも9つのサブユニットで構成された粒子状実体を形成する。
自己結合ペプチド:自己結合ペプチドはキャプシド粒子に結合されて、ペプチド間相互作用により粒子内のポリペプチド相互作用を安定化させる。自己結合ポリペプチドには、N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、pH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中で偶発的に一緒になってパラレルマルチマーを形成するペプチド;許容可能な多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下において、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するとき、自己集合してパラレルマルチマーを形成するペプチド;及びVLPを安定化することができると本明細書で確認されたインフルエンザM2タンパク質の約16から約24アミノ酸残基の細胞外ドメインが含まれる。自己結合ペプチドはキメラポリペプチド及びエピトープとは別個であり、更に前記に対して異種であるが、ただし前記ペプチドは1つ以上のエピトープを含むことができ、キメラポリペプチドの配列内に包含されえる。自己結合ペプチドは、好ましくは免疫応答を誘引しないが、それにもかかわらず免疫応答を誘引することも可能である。本明細書で意図される自己結合ペプチドは、9メンバーよりも少ないメンバーを含むパラレルマルチマーを形成し、更に典型的にはそれらがマルチマーとして保持しえるいずれの二次及び/又は三次構造も得ることができる。更にまた、自己結合ペプチドは、ペプチド間共有結合を形成することなく互いに結合する。
【0020】
ウイルス:“ウイルス”という用語の使用及びウイルスの分類学は以下にしたがう:Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses, M.H.V. van Regenmortel ed. (San Diego) Academic Press 2000。したがって、バクテリオファージのように細胞外の対応物又は水平伝搬性のない因子も明瞭に含まれる(例えば、Ty1レトロトランスポゾン及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のL-Aウイルスはそれぞれ、細胞から出て他の個体に感染することがない粒子をin vivoで形成するが、前記粒子は親から娘に伝播される。
残基及びアミノ酸残基:“残基”という用語は、アミノ酸残基という語句と相互に用いられる。本明細書で特定される全てのアミノ酸残基は、D-型であると特段の指定がなければ天然型又はL-立体配置である。標準的な命名法(J Biol Chem (1969) 243:3557-59)にしたがいアミノ酸残基の略称は下記の対応表に示したとおりである。
対応表
1文字 3文字 アミノ酸
Y Tyr L-チロシン
G Gly グリシン
F Phe L-フェニルアラニン
M Met L-メチオニン
A Ala L-アラニン
S Ser L-セリン
I Ile L-イソロイシン
L Leu L-ロイシン
T Thr L-スレオニン
V Val L-バリン
P Pro L-プロリン
K Lys L-リジン
H His L-ヒスチジン
Q Gln L-グルタミン
E Glu L-グルタミン酸
Z Glx L-グルタミン酸又はL-グルタミン
W Trp L-トリプトファン
R Arg アルギニン
D Asp L-アスパラギン酸
N Asn L-アスパラギン
B Asx L-アスパラギン酸又はL-アスパラギン
C Cys L-システイン
【0021】
安定性:超分子集合物(VLPを含む)について用いられるように、安定性は、粒子の構造的及び生化学的完全性を指す。安定性は例えば以下によって直接測定することができる:分析用サイズ排除クロマトグラフィーとそれに続く生成溶出物プロフィルの解析、電子顕微鏡検査、天然及び非天然ゲル電気泳動技術と種々の検出方法(染色および免疫的検出を含む)の組合せ、レート-ゾーン遠心、核酸キャプシド被包化超分子集合物(VLP)についてのヌクレアーゼ保護アッセイ、光散乱、又は当分野で公知の他の生物物理学的及び生化学的技術。
本発明の超分子集合物(VLP)は、超分子集合物(VLP)調製物中の未集合キメラキャプシドポリペプチドの量(全キメラポリペプチドに対する割合として)が、自己結合ペプチドは結合されていないがそれ以外では同一である超分子集合物(VLP)調製物中の未集合キャプシドポリペプチドの量(全キャプシドポリペプチドに対する割合として)と比較して少なくとも約25%減少するとき安定化されてある。例えば、分析用サイズ交換クロマトグラフィーを用いたとき、未集合キャプシドポリペプチドは、迅速に溶出するポリペプチド及びゆっくりと溶出するポリペプチドの両ペプチドの曲線下の面積の合計で割った、ゆっくりと溶出するキャプシドポリペプチドの曲線下の面積として測定される。第一の超分子集合物(VLP)の調製物総量に対する割合としての未集合キメラキャプシドポリペプチド(結合された自己結合ペプチドを有する)の量が、自己結合ペプチドが結合されていないことを除いて第一のものと同一である第二の超分子集合物(VLP)の調製物の未集合キャプシドポリペプチドよりも少なくとも約25%少ないときに、調製物は安定化された超分子集合物(VLP)であると考えられる。超分子集合物(VLP)調製物の総量に対する割合としての未集合キメラキャプシドポリペプチドの定量と同じ方法が、ほとんどの分析技術について利用可能である。
類似体:本明細書で用いられる、ペプチド又はポリペプチド類似体とは、言及のペプチド又はポリペプチドと少なくとも約50%同一を有するペプチド又はポリペプチドである。前記類似体はまた、言及のペプチド又はポリペプチドと類似であると称される。核酸配列類似体は、言及の核酸配列によってコードされるペプチド又はポリペプチドと少なくとも約50%同一であるペプチド又はポリペプチドをコードする。したがって、類似体の核酸は、周知の遺伝暗号の重複性の観点から言及の核酸と50%以上の配列同一性を有する必要はなく、コード領域を超えていかなる類似性も有する必要はない。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、2つの部分(第一の部分及び共有結合された(取り付けられた)第二の部分)を有するキメラポリペプチドで構成された超分子集合物を提供する。第一の部分は、第二の部分が存在するか否かにかかわらず自己集合して粒子を形成する。第二の部分は、約15から約80アミノ酸残基、好ましくは約15から約35残基の長さを有する自己結合ペプチド配列を含む。前記ペプチドは、a)N-アセチル化ペプチドとして存在するとき、pH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中で自己集合してパラレルマルチマーを形成するか、又はb)予め定めた多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下で、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するときは自己集合するか、又はc)前記ペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合細胞外ドメインであるが、ただし前記M2ペプチド第二部分は、第一のポリペプチド部分としてのHBcのN-末端に存在しないことを条件とする。前記キメラポリペプチドは、前記第一の部分のみから形成された構造物よりも安定な組織化された反復性の超分子構造物を形成する。
即ち、意図されるキメラポリペプチドは、共有結合された第二の自己結合ペプチド配列を欠くがそれ以外は同一であるポリペプチド(即ち第一の部分のみの配列を有するポリペプチド)から形成される粒子よりの安定である粒子(別の箇所で定義される)を形成する。いくつかの実施態様では、前記キメラポリペプチドは、核酸結合特性を実質的に持たず、一方、他の実施態様では、前記キメラポリペプチドは核酸と結合する。キメラポリペプチド又は超分子集合物(VLP)は、1つ以上の取り付けられた異種エピトープ(ハプテン又は融合ポリペプチド配列)を含むことができる。
【0023】
記載を簡単にするために、頭文字語のVLPは、使用の文脈が1つ以上の特定のウイルス関連VLPを意図するときを除いて、以下では超分子集合物のために用いられる。
開示する安定化VLP及び異種エピトープを取り付けられた安定化VLPは、抗体の産生又はT細胞の活性化の一方又は両方を目的とするワクチン又は免疫原として有用である。本発明はまた、自己結合ペプチド成分を用いてキャプシドポリペプチドに異種エピトープを取り付けることによって、安定化された規則的な反復性エピトープアレーを提供する。
好ましい実施態様では、本発明は、2つの部分(自己集合して組織化された反復性ポリペプチド、少なくとも約9ポリペプチドサブユニットを有する超分子構造物及び第二の自己結合ペプチド部分)を含むキメラポリペプチド組成物を提供し、ここでこれらの部分は少なくとも1つの共有結合によって結びつけられる(結合される)。本発明のいくつかの好ましい実施態様では、2つの部分はペプチド結合によって結びつけられる。これらの実施態様のいくつかでは、キメラポリプロテインの第一の部分の第二の部分とのペプチド結合は、第一の部分をコードするヌクレオチドの、第二の部分をコードするヌクレオチドとのインフレーム融合により、宿主細胞内で生成されるポリヌクレオチドの発現に続いて生じ、宿主細胞内で発現させた時に融合ポリペプチドが形成される。
他の実施態様では、前記2つの部分は、リンカー残基(例えばリジン及びシステイン)で機能する二官能性連結物質により結合される。適切な二官能性試薬には、ピアース・バイオテクノロジー社(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL)の2001−2002カタログに記載されているように、SMCC、MBS及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロプリオネート(SPDP)などが含まれる。二官能性試薬は、一般的には、アミン基を介して結合を形成する基及びジスルフィド又はチオエーテル結合を形成することができる基を含む。
【0024】
スルフヒドリル基は、N-末端及び/又はC-末端Cys残基として、又はアミノ官能基と2-イミノチオラン又は3-(2-ジチオピリジル)プロピオネート若しくはS-アセチルチオグリコール酸のN-ヒドロキシ-スクシンイミドエステルとの反応によって提供することができる。S-アセチルチオグリコール酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SATA)による反応後、SATAの例えばヒドロキシルアミンによる脱アセチル化によって遊離-SH基が提供される。遊離アミノ基が要求される場合は、遺伝子操作、タンパク質結合又は他の方法によってリジンを提供することができる。α-アミノ酸以外のアミノ酸、例えばβ-アラニン、γ-アミノ酪酸及びε-アミノカプロン酸もまたリンカーとして用いることができる。
ある好ましい実施態様では、前記第二の自己結合ペプチド部分は、キメラポリペプチドの第一の部分のN-末端又はC-末端に結びつけられる。更に好ましい実施態様では、キメラペプチドが第一及び第二の部分の融合物として発現され、更に第一及び第二の部分がペプチド結合によって共有結合されえるように、自己結合ペプチドは、適切な核酸配列の遺伝子融合及び同時発現によって第一の部分のN-末端又はC-末端に結びつけられる。別の好ましい実施態様では、第一の部分に対し、自己結合ペプチドの取り付けのために適合させた前記第一の部分のN-又はC-末端に又はその近くにリンカー残基が提供される。
“第一の部分”及び“第二の部分”は、単に便利さのためにそのように呼ばれるということは特記されるべきである。結果として、“第二の部分”の自己結合ペプチドは、意図されるキメラポリペプチド内の“第一の部分”のポリペプチドに先行し、前記に対しN-末端にあってもよい。
【0025】
別の実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分はウイルスキャプシドポリペプチドをその全体又は短縮形として含む。いくつかの実施態様では、異種エピトープ又は異種エピトープのためのリンカーを除いて、第一の部分に存在するアミノ酸残基配列は、ウイルスキャプシドポリペプチドに対して約50%を超える、好ましくは約75%を超える、より好ましくは約90%を超える、もっとも好ましくは約95%を超える同一性を有する。したがって、第一の部分が、ウイルスタンパク質配列、例えばB型肝炎ウイルスコア(HBc)タンパク質の残基1−149を含む場合、第一の部分に存在する配列は、ウイルスの配列に対して100%同一である。しかしながら、残基1−149は、残基150−183が存在しないので、HBcの短縮型である。少なくとも約9ポリペプチドサブユニットを含み、更にウイルスキャプシドポリペプチド配列の対立遺伝子座に対し上記に記載した同一性パーセンテージを示す、組織化された反復性の超分子構造物を自己集合により形成する第一の部分は、本明細書ではウイルスキャプシド類似体ポリペプチド配列と定義する。
本発明の更に好ましい実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分はウイルスキャプシドポリペプチドであるか、又は動物感染性ウイルス、植物感染性ウイルス、菌類感染性ウイルス、又は細菌感染性ウイルスでありえるウイルスのキャプシドポリペプチドの類似体である。好ましい実施態様では、VLPを形成するウイルスキャプシドポリペプチドは、以下のウイルス科のメンバーに由来する:ピコルナウイルス科、カリシウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、アデノウイルス科、パルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、ノダウイルス科、テトラウイルス科、トムブスウイルス科、コモウイルス科、ブロモウイルス科、ポティウイルス科、イノウイルス科、レビウイルス科、ミクロウイルス科、シュードウイルス科、及びトティウイルス科、又はその類似体。他の好ましい実施態様では、VLPを形成するウイルスキャプシドポリペプチドは、トバモウイルス属、ポテックスウイルス属、又はティモウイルス族のメンバーのウイルスキャプシドポリペプチド、又はそのようなウイルスのキャプシドの類似体である。
【0026】
他の好ましい実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分は、正二十面体の酵素複合体の自己集合性正二十面体形成ポリペプチドを含む。いくつかの好ましい特徴では、前記第一の部分は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体のE2サブユニットを含む。他の好ましい特徴では、第一の部分はルマジンシンターゼポリペプチドを含む。上記のウイルスキャプシドのアミノ酸残基配列に関していくつかの特徴では、第一の部分は正二十面体酵素複合体ポリペプチドの類似体を含み、異種エピトープ又は異種エピトープのためのリンカーを除いて、前記第一の部分は、正二十面体酵素複合体のサブユニットポリペプチドに対して約50%を超える、好ましくは約75%を超える、より好ましくは約90%を超える、もっとも好ましくは約95%を超える同一性を有する。
いくつかの好ましい実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分は、実質的に核酸結合特性を持たない。この点で、いくつかの実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分は実質的に核酸と結合せず、更に第一のアタッチメント部位を含み、このアタッチメント部位に、第二のアタッチメント部位を保持するエピトープを1つ以上の共有結合又は非共有結合を介して結びつけることができる。他の実施態様は、核酸と結合するキメラポリペプチドを含むことができ、前記はまたエピトープのために第一のアタッチメント部位を含むことができる。結合する核酸は、典型的には、タンパク質を発現させるために用いた生物の細胞内に本来存在するオリゴマー及び/又はポリマーDNA及びRNA種である。
核酸の結合及び実質的に核酸の結合がないことは、水溶液中で280及び260nmの両方で測定したキメラ粒子の吸収を比較すること(即ち280/260吸収比)によって容易に決定することができる。結合される核酸は260nmで吸収を示し、280nmでは比較的小さい吸収を示し、一方、結合核酸を含まないタンパク質は260nmで比較的小さい吸収を示し280nmではより強い吸収を有する。
【0027】
したがって、核酸を結合する例示的な組換え発現キメラB型肝炎コア又はキャプシド(HBc)粒子は、残基150−183(又は150−185)位のアルギニン富裕配列のいくらか又は全部を含み、約0.8の280nmの吸収対260nmの吸収の比(280:260吸収比)を示し、一方、天然に存在するHBcのアルギニン富裕核酸結合領域を持たない類似の粒子(例えば互いに隣接する4つ未満のアルギニン又はリジン残基又はその混合物を含む粒子、又はHBc残基の約140位から149位で終わる天然又はキメラ配列を有するモノマーポリペプチドキメラ分子が集合したHBc粒子)は、約1.2から約1.6の280:260吸収比を示す。HBc由来の自己集合するHBcポリペプチド及び粒子が本明細書ではしばしば例示的に用いられる。
本発明のキメラ粒子は、実質的に核酸と結合せず、約1.2から約1.7、より典型的には約1.4から約1.6の280:260吸収比を示す。
ある好ましい実施態様は、上記に記載したように、異種の自己結合ペプチドを含む第二の部分が取り付けられた、ウイルスキャプシドポリペプチド又はその類似体である第一の部分を有するポリペプチドを含む安定化VLPを意図する。別の好ましい実施態様では、本発明は、エピトープを結合させることができるリンカー残基を含むウイルスキャプシドポリペプチド又はその類似体である第一の部分、及び異種の自己結合ペプチドを含む第二の部分を含むキメラポリペプチドを含む安定化されたVLPを意図する。更に好ましい実施態様では、本発明は、その第一の部分が、結合された異種エピトープを含むウイルスキャプシドポリペプチド又はその類似体であるキメラポリペプチド、及び異種の自己結合ペプチドを含む安定化VLPである。
【0028】
更に好ましい実施態様は、アミノ酸約139位から約165位、好ましくは約156位、より好ましくは約149位で短縮されたHBcポリペプチドを含む第一の部分とともに、自己結合ペプチドを含む第二の部分を、上記のように及び下記で極めて詳細に記載するように有する安定化VLPを意図する。
本発明の別の好ましい実施態様では、VLPの第一の部分は、以下から成る群のウイルスに由来するキャプシドポリペプチドの類似体を含むか、又は前記類似体である:MS2バクテリオファージ、JCウイルス、Ty1レトロトラスポゾン、HIV、フロックハウスウイルス、ヌーダウレリア・カペンシス(Nudaurelia capensis)オメガウイルス、ブロムモザイクウイルス、トマトブッシイスタントウイルス、ターニップクリンクル(Turnip crinkle)ウイルス、HPV16、ノーウォークウイルス、B19ウイルス、ポテトウイルスX、シンドビスウイルス、ホオズキモットルウイルス、fdバクテリオファージ、φX174バクテリオファージ、ロタウイルス、タバコモザイクウイルス、ササゲモザイクウイルス、レオウイルス、C型肝炎ウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザAウイルス、アデノウイルス、L-Aウイルス、及びポリオウイルス。
VLPを形成する例示的及び好ましい組換えキメラは、長さが約570アミノ酸残基までのB型肝炎コア(HBc)タンパク質分子を含み、前記HBcタンパク質分子は以下を収納する:(a)HBc分子のN-末端150アミノ酸残基の少なくとも約135の配列であって、HBcイムノドミナントループに存在するペプチド結合異種エピトープ若しくはコンジュゲートされるエピトープのための異種リンカー残基を含むもの、又はN-末端の150のHBcアミノ酸残基の少なくとも約135残基の配列、(b)約15から約35残基の長さを有するアミノ酸残基のC-末端自己結合配列、及び(c)HBcの135位からC-末端の少なくとも5アミノ酸残基の配列。前記自己結合配列は、a)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、自己集合してpH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成するか、又はb)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するとき自己集合するか、又はc)前記第二の部分のペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインである。前記キメラ分子は、10%を超えない保存的置換アミノ酸残基をHBc配列内に含む。前記粒子は、C-末端自己結合配列を欠くがそれ以外では同一のHBcキメラから形成される粒子よりも安定である。前記粒子は、好ましくは自己集合して、実質的に核酸と結合しない粒子を形成する。
【0029】
0、1又は2つのシステイン残基を含む第二の部分のM2ポリペプチドが、第一の部分のHBcポリペプチドのN-末端に存在するキメラは本発明から明瞭に排除される。他方、第一部分のHBcのC-末端に結合された、0、1又は2つのシステインを含むM2第二部分を含むキメラは特に好ましい。
他の実施態様では、キメラポリペプチドの第一の部分は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の自己集合性E2ポリペプチドであるか、若しくは前記の類似体であるか、又は、ルマジンシンターゼポリペプチドであるか、若しくは前記の類似体である。
【0030】
自己結合ペプチド
意図されるキメラの第二の自己結合ペプチド部分は、長さが約15から約80、より好ましくは約15から約35アミノ酸の配列である。キメラポリペプチドの第二の自己結合ペプチドは、N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、自己集合してpH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成する。別の好ましい実施態様では、自己結合ペプチドは、N-アセチル化ペプチドとして存在し、適切な金属イオンが提供されたときは、パラレルマルチマーを形成する。更に好ましい実施態様では、自己結合ペプチドは、インフルエンザA M2タンパク質のN-末端の約24アミノ酸である。
別の好ましい実施態様では、キメラポリペプチドの第二の自己結合ペプチド部分は、GCN4-p1(O'Shea et al. (1989) Science 243:538-542)ロイシンジッパーペプチドを含む。別の実施態様では、自己結合ペプチド部分は、操作されたロイシンジッパーペプチドGCN4-II、GCN4-IL、GCN4-LI、GCN4-LV、GCN4-VL、又はGCN4-LLを含む(Harbury et al. (1993) Science 262:1401-1407)。別の好ましい実施態様では、自己結合ペプチドは軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)のペンタマー化ペプチドである(Ozbek, (2002) EMBO J 21(22):5960-5968)。別の好ましい実施態様では、自己結合ペプチドは、テトラブラキオンの右テトラマー自己結合配列である(Stetefeld (2000) Nat Struc Biol, 7:772-776)。
また別の特徴では、自己結合ペプチドはヒトのタンパク質配列に由来する。したがって例示すれば、自己結合ペプチドは、Mad、Max、c-Myc、N-Myc、L-Myc、AP4及びUSFの群から選択されるヒトタンパク質配列由来のロイシンジッパーである(Canne et al. (1995) J Am Chem Soc 117:2998;及びBlackwood et al. (1991) Science 251:1211-1217)。
第二の部分の例示的な自己結合ペプチドの例示的アミノ酸残基配列は、下記の表Iにそれらの対応するペプチド名称、配列番号、及び引用文献とともに列挙されている。
【0031】

1. O'Shea et al. (1989) Science 243:538-542.
2. Canne et al. (1995) J. Am. Chem. Soc. 117:2998.
3. Blackwood et al. (1991) Science 251:1211-1217.
4. Harbury et al. (1993) Science 262:1401-1407.
5. Ghadiri et al., (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:4000-4002.
6) Stetefeld (2000) Nat. Struc. Biol. 7:772-776.
7) Ozbek. (2002) EMBO J. 21 (22), 5960-5968.
8) Newton (1994) Genomics 24:435-439.
9) This disclosure.
【0032】
本発明のいくつかの実施態様では、前記第一の部分は、少なくとも1つの第二のアタッチメント部位を有する異種エピトープのための第一のアタッチメント部位を含む。第一及び第二のアタッチメント部位は、少なくとも1つの共有又は非共有結合によって結合される。したがって、エピトープ及びキメラポリペプチドは、第一及び第二のアタッチメント部位の結合により一緒にされる。例えば、ビオチン結合配列(以下に記載される)は、第一の部分との融合配列として同時発現させることができる。ビオチンに結合させた異種エピトープは、融合ポリペプチドから形成された安定化VLPと、ビオチン結合エピトープがVLPのビオチン結合配列と結合するように混合することができる。
第一のアタッチメント部位は、以前に考察したように、二官能性連結物質と反応するように適合させたリンカー残基で、第二のアタッチメント部位もまた同じ二官能性連結物質と反応するように適合させることができる。第二のアタッチメント部位の適合には、同じ又は異なるリンカー残基(例えばリジン又はシステイン残基)、ハプテン又は他の免疫原の遊離アミノ基若しくは遊離スルフヒドリル基を含むことができる。第一の部分の一部分としての第一のアタッチメント部位の存在は、異種エピトープ上に存在する第二のアタッチメント部位とともに図5の模式図1に示されている。米国特許6,231,864号もまた参照されたい。
【0033】
本発明の別の実施態様では、第一の部分は、エピトープ上の第二のアタッチメント部位との非共有結合反応による結合のために適合させた、異種エピトープのための第一のアタッチメント部位を含む。例には、第一のアタッチメント部位としてリジン又はシステイン残基のような操作された部位(前記部位は、ビオチン又は3-(マレイミド-プロピオニル)ビオチンのような化合物と反応して、ビオチニル化した第一のポリペプチド部分を形成する)、及び第二のアタッチメント部位として結合させたアビジン、ストレプトアビジン又は中性で低分子量のアビジン類似体(例えば文献(Marttila et al. (Feb 2000) FEBS Lett 467(1):31-36)に開示され、本明細書ではニュートラライト(NeutraLiteTM)アビジンと称されるもの)を有するキメラポリペプチドが含まれる。他の実施態様では、結合は、当分野で公知のリガンド/レセプター相互作用を介する。
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、前記エピトープはVLPにとって異種のアミノ酸残基配列である。ヒト又は動物の病原体又は癌タンパク質に通常的に存在する例示的配列が、エピトープが存在する天然に出現するタンパク質よりも長さが短い配列として、意図される安定化VLPのキメラポリペプチドに存在する。そのような短縮化ペプチド配列及び、それ自体では免疫原性をもたないがいったん担体タンパク質(例えば目的の安定化VLP)に結合されると免疫原性をもつようになる他の小分子はハプテンと称される。例示的な異種配列は、VLPにとって異種(外来性)である約245までのアミノ酸残基を含むことができる。
【0034】
ある種の実施態様では、前記エピトープは、エボラウイルス、HIV-1、HIV-2、口蹄疫ウイルス(FMDV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザAウイルス、ヒトパピローマウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、肺炎連鎖球菌、クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)、コレラ菌、ペスト菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモジウム・ヴィヴァクス(Plasmodium vivax)、プラスモジウム・ベルギー(Plasmodium berghi)、プラスモジウム・イェリー(Plasmodium yoelli)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、フレクスナー赤痢菌、炭疽菌、赤痢アメーバ、日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、及び髄膜炎菌から成る群から選択される病原体に存在するアミノ酸残基配列を含む。他のいくつかの実施態様では、前記エピトープは癌抗原に由来するペプチドである。
他の実施態様では、前記エピトープは、オリゴ糖、リポ多糖類、リポタンパク質、糖タンパク質又はプロテオグリカンハプテンである。例示的B及びT細胞ペプチドエピトープは、配列が得られた遺伝子に与えられた一般名称、発表されたエピトープについての引用文献又は特許、及び配列番号とともに下記の表A及びBに列挙されている。これらのペプチドエピトープは、以前に考察したように、第一の部分のポリペプチドの配列に融合させることができるが、また別には結合させたハプテンエピトープとしても存在できる。糖類のハプテンは以下で考察される。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
【表8】

*公表されたエピトープに対する引用文献は下記の表Bで提供される。
【0043】
配列番号:72のインフルエンザA M2ポリペプチド配列X1X2X3X4X5X6X7X8TX10X11RX13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23X24について:
残基X1からX8は存在しないか又は存在し、存在するときはM2タンパク質配列に天然に存在する残基であり、それぞれメチオニン、セリン、ロイシン、ロイシン、スレオニン又はプロリン、グルタミン酸、バリン及びグルタミン酸であるが、ただし、1つの下付き文字をもつXが存在するときは、より大きな8までの下付き文字をもつ残りの全てのXもまた存在することを条件とし、
X10は存在し、プロリン、ロイシンまたはヒスチジンであり、
X11は存在し、イソロイシン又はスレオニンであり、
X13は存在し、アスパラギン又はセリンであり、
X14は存在し、グルタミン酸又はグリシンであり、
残基X15及びX16は存在するか又は存在せず、存在するときは、それぞれトリプトファン及びグリシン又はグルタミン酸であり、
残基X17及びX19は存在するか又は存在せず、存在するときは、それぞれ別個にシステイン、セリン、又はアラニンであり、
残基X18は存在するか又は存在せず、存在するときはアルギニン又はリジンであり、更に、
残基X20からX24は存在するか又は存在せず、存在するときは、M2タンパク質配列に天然に存在する残基であり、それぞれアスパラギン又はセリン、アスパラギン酸又はグリシン、セリン、セリン及びアスパラギン酸であるが、ただし、1つの下付き文字をもつXが存在するときは、15までのより小さい下付き文字をもつ残りの全てのXもまた存在することを条件とする。
【0044】
同様に、上記配列番号:70の好ましいインフルエンザA M2配列では、
残基X1からX8は存在しないか又は存在し、存在するときはM2タンパク質配列に天然に存在する残基であり、それぞれメチオニン、セリン、ロイシン、ロイシン、スレオニン、グルタミン酸、バリン及びグルタミン酸であるが、ただし、1つの下付き文字をもつXが存在するときは、より大きな8までの下付き文字をもつ残りの全てのXもまた存在することを条件とし、
X15及びX16は存在するか又は存在せず、存在するときは、それぞれトリプトファン及びグリシンであり、
残基X17及びX19は存在するか又は存在せず、存在するときは、それぞれ別個にシステイン、セリン、又はアラニンであり、
残基X18は存在するか又は存在せず、存在するときはアルギニンであり、更に、
残基X20からX24は存在するか又は存在せず、存在するときは、M2タンパク質配列に天然に存在する残基であり、それぞれアスパラギン、アスパラギン酸、セリン、セリン及びアスパラギン酸であるが、ただし、1つの下付き文字をもつXが存在するときは、15までのより小さい下付き文字をもつ残りの全てのXもまた存在することを条件とする。
【0045】
【表9】

【0046】
【表10】

*下線を付したCは、天然の配列由来ではない。
【0047】
引用文献:
1. EPO 786 521A.
2. WO 98/07320.
3. US No. 5,639,854.
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42. Little et al., (1996) Microbiology 142:707-715.
43. Provided by Dr. Peter Hotez, George Washington University.
44. Morgan et al., (2000) Nature 408:982-985.
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48. U.S. Patent No. 6,171,591.
49. U.S. Patent No. 6,060,064.
50. U.S. Patent No. 6,110,466.
【0048】
また別の有用なT細胞エピトープは、PADREエピトープと称される合成配列である(米国特許6,413,517号(Sette et al.)参照)。ある例示的エピトープは、配列AKFVAAWTLKAAA(配列番号:275)を有する、Alxanderら(Immunity (1994) 5:751-761)によって開示されたものである。
ある種の実施態様では、エピトープはハプテン系の小薬剤分子、その誘導体又は類似体を含む。いくつかの実施態様では、エピトープは、乱用薬剤、乱用薬剤の類似体又は誘導体、例えばニコチン、エタノール、コカイン、ヘロイン、モルヒネ、フェンタニル、メチルフェンタニル、アンフェタミン、メトアンフェタミン、フェンシクリジン、メチルフェニデート及びメチレンジオキシメトアンフェタミンである。そのような物質の例は、免疫原性担体に共有結合される使用に適合させた、米国特許6,383,490号に記載されたコカイン類似体である。
他の実施態様ではエピトープは糖類である。例示的な糖類化合物には、NTHi又はM.cat.のリポオリゴ糖(LOS)が含まれる(Sun et al. (2000) Vaccine 18(13):1264-1272;及びJiao et al. (2002) Infect Immun 70(11):5982-5989)。LOSは、疎水性の脂質A部分及び親水性コアのオリゴ糖部分から成り、グラム陰性細菌の外側膜の主要成分の1つである。無毒化LOS(dLOS)分子はde-O-アシル化されてあるか、又はde-N-アシル化されてあるか、又はその両方であり、Hochstein(Clinical application of the Limulus amoebocyte lysate test, R.B. Prior, ed., CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, pages 38-49)が記載したように、アメリカカブトガニ変型細胞溶解物(LAL)アッセイで出発のLOSと比較したとき、約100から約10,000倍低い内毒素性を示す。
【0049】
担体タンパク質を多糖類に結合させるための当分野で公知の多くの方法が存在する。アルデヒド基を、オリゴ糖又は比較的小さな多糖類の還元末端(Anderson (1983) Infect Immun 39:233-238;Jennings et al. (1981) J Immunol 127:1011-1018;Poren et al. (1985) Mol Immunol 22:907-919)又は終末端(Anderson et al. (1986) J Immunol 137:1181-1186;Beuvery et al. (1986) Dev Bio Scand 65:197-204)のどちらかで調製することができる。前記を還元アミノ化により担体タンパク質に結合させることができる。更にまた、隣接するヒドロキシルの過酸化イオンによる酸化、前記に続くシアノボロハイドライドを用いるアミンの還元アルキル化は、キメラの免疫原性ループに付加されたε-アミン-供給リジン残基を有するHBcキメラ分子には特に有用である。
より大きな多糖類は、末端活性化によって(Anderson et al. (1986) J Immunol 137:1181-1186)又は多糖類鎖に沿っていくつかの官能基をランダムに活性化することによって(Chu et al. (1983 ) Infect Immun 40:245-256;Gordon, 米国特許4,619,828号(1986);Marburg, 米国特許4,882,317号(1989))結合させることができる。多糖類鎖に沿っていくつかの官能基をランダムに活性化することによって、多糖類鎖に沿って生じるランダム結合のために高度に架橋された結合物を得ることができる。多糖類対担体タンパク質の最適比は、個々の多糖類、担体タンパク質、及び使用される結合物に依存する。
糖類と担体タンパク質との結合方法に関する詳細な論評は以下で見つけることができる:Dick et al. Contributions to Microbiology and Immunology, Vol. 10, Cruse et al. eds., (S. Karger: 1989), Pages 48-114;Jennings et al. Neoglycoconjugates: Preparation and Applications, Lee et al. eds., (Academic Press: 1994), pages 325-371;Aplin et al. (1981) CRC Crit Rev Biochem 10: 259-306;及びStowell et al. (1980) Adv. Carbohydr Chem Biochem 37:225-281)。
【0050】
炭水化物それ自体は、当分野で公知の方法、例えばWitteら(J Am Chem Soc (1997) 119:2114-2118)が記載したように、酵素的糖タンパク質合成によって合成することができる。
いくつかのオリゴ糖(合成及び半合成及び天然オリゴ糖)が、本発明のHBcコンジュゲートの作成で用いることが意図されるオリゴ糖の例として以下のパラグラフで考察される。
インフルエンザ菌b型(Hib)の治療用ワクチンの製造に適したオリゴ糖ハプテンは、D-リボース-D-リビトール-ホスフェート(下記I)、D-リビトール-ホスフェート-D-リボース(下記II)、又はホスフェート-D-リボース-D-リビトール(下記III)の2から20リピートから作成される(Eduard C. Beuvery et al. EP-0276516-B1)。
【0051】
【化1】

【0052】
米国特許4,220,717号はまた、インフルエンザ菌b型のためのポリリボシルリビトールホスフェート(PRP)を開示している。
Petersonら(Infect Immun (1998) 66(8):3848-3855)は、三糖類ハプテン、αKdo(2−>8)αKdo(2−>4)αKdoを開示している。前記は、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)を防ぐ。クラミジア・ニューモニエは、咽頭炎から致死的な肺炎に及ぶヒトの呼吸器感染の原因である。Kdoは3-デオキシ-D-マンノ-オクタ-2-ウロソン酸である。
Andersonら(EP-0126043-A1)は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる細菌感染の治療、予防又は診断で用いることができる糖類を開示している。有用な糖類のあるクラスは、二糖類GlcNAcβ1−>3Galに由来する。上記のAndersonらはまた、有用なネオラクトテトラオシルセラミドを報告した(前記はGalβ1−>4GlcNAcβ1−>3Galβ1−>4Glc−Cerである)。
McKenneyら(Science (1999) 284:1523-1527)は、黄色ブドウ球菌を防ぐ多糖類、ポリ-N-スクシニル-β1−>6GlcN(PNSG)を開示している。黄色ブドウ球菌は、集団発生感染(心内膜炎、骨髄炎、敗血症性関節炎、肺炎及び膿瘍を含む)の一般的原因である。
欧州特許0157899-B1は、本発明で有用な肺炎球菌多糖類の単離を開示している。以下の表は、本発明のハプテンとして有用な莢膜多糖類を産生する肺炎球菌培養型のリストである。
多糖類ハプテンの供給源

【0053】
モラクセラ(ブランハメラ(Branhamella))・カタラーリスは、小児の中耳炎及び副鼻腔炎並びに成人の下気道感染の報告された原因である。この細菌のリポオリゴ糖表面抗原(LOS)の脂質A部分は、3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸-グルコサミン結合で切断される。切断生成物は温和なアルカリ又はヒドラジンで処理され、エステル結合脂肪酸が除去され、一方、アミド結合脂肪酸は保存されて無毒化されたリポ多糖類(dLOS)がM.カタラーリスから得られる。dLOSは、タンパク質担体に結合されるまでは免疫原性ではない(Xin-Xing Gu et al. (1998) Infect Immun 66(5):1891-1897)。
グループB連鎖球菌(GBS)は、ヒトの敗血症、髄膜炎、及び関連する神経学的異常の原因である。莢膜多糖類特異的抗体は、幼児の感染を防ぐことが知られている(Jennings et al. 米国特許5,795,580号)。GBS莢膜多糖類タイプIIの反復ユニットは、−>4)-β-D-GlcpNAc-(1−>3)-[β-G-Galp(1−>)]-ベータ-D-Galp(1−>4)-β-D-Glcp-(1−>3)-β-D-Glcp-(1−>2)-[α-D-NeupNAc(2−>3)]-β-D-Galp-(1−>であり、ここで、括弧でくくられた部分は、直後の括弧でくくられていないサブユニットとつながった分枝である。GBS莢膜多糖類タイプVの反復ユニットは、−>4)-[α-D-NeupNAc-(2−>3)-β-D-Galp-(1−>4)-β-D-GlcpNAc-(1−>6)]-α-D-Glcp-(1−>4)-[β-D-Glcp-(1−>3)]-β-D-Galp-(1−>4)-β-D-Glcp-(1−>である。
欧州特許出願EU-0641568-A1(Brade)は、トラコーマクラミジア、肺炎クラミジア、オウム病クラミジアの梯子様バンドパターン抗原を得る方法を開示している。
Slovinら(Proc Natl Acad Sci, USA (1999) 96(10):5710-5715)は、前立腺癌に対して用いられるワクチンに調製で担体としてのKLHに結合させた合成オリゴ糖、globo Hの使用を報告した。同様に、Hellingら(Cancer Res, (July 1995) 55:2783-2788)は、ミエローマを有する患者の治療用ワクチンでKLH-結合GM2の使用を報告している。後者のワクチンは、GM2のセラミド二重結合のオゾン切断、アルデヒド基の導入、及びKLHへの還元性アルキル化によって調製された。同様の方法を目的のキメラ粒子で用いることができる。
【0054】
スフィンゴリピド、例えば他の腫瘍細胞と同様に正常細胞(たとえばメラノーマ、ニューロブラストーマ及び健常な脳細胞)の表面に存在するグロボシド及びガングリオシドも、本明細書でハプテンとして同様に用いることができる。グロボシドのglobo Hのオリゴ糖部分は、Fucα-(1−>2)-Galβ(1−>3)-GalNAcβ-(1−>3)-Galα-(1−>4)-Galβ-(1−>4)Glcの構造を有し、一方、ガングリオシドGM2、GM1及びGD1aの糖部分はそれぞれ以下の構造を有する:GalNAcβ-(1−>4)-[NeuAcα-(2−>3)]-Galβ-(1->4)-Glc;Galβ-(1−>3)-GalNAcβ-(1−>4)-[NeuAcα-(2−>3)]-Galβ-(1−>4)-Glc;及びNeuAc-(2−>3)-Galβ-(1−>3)-GalNAcβ-(1−>4)-[NeuAcα-(2−>3)]-Galβ-(1−>4)-Glc。
米国特許4,356,170号は有用な多糖類の製造を開示する。前記多糖類は還元され、続いて酸化されて末端アルデヒド基を有する化合物を形成する。前記アルデヒド基を、担体タンパク質(例えば破傷風類毒素及びジフテリア類毒素)の遊離アミン基上で、顕著な架橋とともに又は架橋することなく還元的にアミノ化することができる。有用な例示的細菌多糖類にはβ-溶血性連鎖球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌及び大腸菌が含まれる。粒子を還元的にアミノ化するよりはむしろ、例えばε-アミノC2−C8アルキルカルボン酸によって提供されるようなリンカーアームを多糖類上でアミノ化し、続いて水溶性カルボジイミドを用いて粒子に結合させることができる。
B細胞エピトープでもT細胞エピトープでもない更に別の有用な配列をビオチンと結合させて、自己集合してVLPを形成するキメラポリペプチドの部分として発現させることができる。2つのそのような配列が米国特許6,380,364号に、GGGCSWAPPFKASC(配列番号:276)及びGGGRGEFTGTYITAVT(配列番号:277)として開示されている。これら2つの配列は、以前に考察したVLP形成ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして同様に同時発現させることができる。
【0055】
更に好ましい実施態様は、VLPを安定化させる方法である。VLPは、第二の部分の自己結合ペプチドを第一の部分の自己集合ポリペプチドに共有結合により結合させることによって安定化される。いくつかの実施態様では、前記結合はペプチド結合により達成される。いくつかの実施態様では、ペプチド結合による結合は、自己結合ペプチドをコードするDNAを自己集合ポリペプチド第二部分の配列をコードするDNAに遺伝的に融合させることによって達成される。ある種の実施態様では、第一及び第二部分はin vitroで、例えば二官能性結合試薬によって、又はタンパク質結合によって結びつけられる。本発明の更に別の実施態様は、異種エピトープを1つ以上の共有結合又は非共有結合によって結合させえるVLPを安定化させる方法である。
安定化VLPは医療分野以外の技術で利用することができることは当業者には理解されよう。安定化VLPに結合させたエピトープはまた医療分野以外の技術で利用することができることは当業者には理解されよう。例えば以下を参照されたい:Mao et al. Proc Natl Acad Sci (2003) 100:6946-51。更にまた以下を参照されたい:Wang (2002) Angew Chem Int Ed. 41:459-62(この文献では、操作されたビリオンが“あて先を決めることができるナノスケールの構築ブロック”として記載されている)。
【0056】
生物学的系での本発明の製造(例えば本発明の1つ以上の部分が、適切な宿主に導入された宿主適合発現ベクター中に存在するとき、前記ポリペプチドをコードする組換えDNAにより発現される)は、キメラポリペプチド、安定化ペプチド及び/又はエピトープのいずれか又は全ての部分を製造する単に1つの方法であり、簡便さのために以下の実施例で用いられることは当業者には理解されよう。in vitroでのタンパク質の結合及び当分野で公知の他の化学的技術を用いて、本発明のポリペプチド及びVLPをin vitro合成ポリペプチド及び他の前駆物質から共有結合により完全に構築することができる。例えば以下を参照されたい:半合成方法については、Muir et al. (1998) Proc Natl Acad Sci 95:6705-6701;マルチサブユニットのポリプロテインの全合成については、Canne et al. (1995) J Am Chem Soc 117:2998-3004。
いくつかの実施態様では、in vivo又は全ての細胞タイプでの構築が可能というわけではないことは当業者にはまた明白であろう。例えば、小分子は、キメラポリペプチド上のリンカー残基に、例えばCarerraら(Proc Natl Acad Sci (2000) 98:1988-1992)によって示されたようにin vitroで結合される。
キメラキャプシドポリペプチドの第一の部分へのエピトープの共有結合及び非共有結合についての上記の具体例は単なる例示であり、多くの他の結合方法が当分野で公知であり、in vivo又はin vitroでそのような結合を実施するために容易に応用できることは、当業者には理解されよう。
【0057】
意図されるキメラポリペプチド又はキメラポリペプチドの部分(“キメラ類似体”)をコードする類似体又は類似核酸(DNA又はRNA)もまた本発明の部分として意図される。キメラ類似体の核酸配列又はその相補性核酸配列は、キメラポリペプチドの第一の部分に対して少なくとも50%、より好ましくは70%、更に好ましくは80%、更に好ましくは少なくとも90%、もっとも好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸残基をコードする。そのようなDNA又はRNAは、本明細書では、ウイルスキャプシドポリペプチド又は自己集合性ポリペプチドをコードする核酸配列の“類似体”又は前記と“同族である”と称される(下記の例に列挙されているものが含まれるが、ただしこれらに限定されない)。適切なトランスフェクション及び発現に際して類似体配列をコードする核酸はまた、意図されるキメラポリペプチドの第一の部分を生成する。
例えば、同一アミノ酸配列をコードするゲノムウイルスキャプシドポリペプチドの遺伝子若しくは遺伝子フラグメント又はその相補鎖と実質的な同一性を回避する、キメラポリペプチドの第一の部分をコードするために、遺伝暗号の縮退を利用することができる。したがって、有用な類似体DNA配列は、中等度のストリンジェンシー条件下でウイルスキャプシドポリペプチドコード配列又は相補鎖のヌクレオチド配列とハイブリダイズする必要はないが、なお意図されるキメラ分子を提供することができる。即ち、多くの核酸配列が同じポリペプチドをコードすることができる。このような理由及び下記の理由により、類似性のもっとも適切な基準は、核酸配列ではなくアミノ酸配列にある。
【0058】
異なる宿主生物は異なるコドン優先性を有する。即ち、それらは優先的に特定のコドンを使用して特定のアミノ酸をコードする。そのようなコドン優先性は周知であり、所望のキメラ配列をコードするDNA配列を、例えばポリペプチドが発現されるときに宿主の好ましいコドンが利用できるように、in vitroで変異導入を用いて改変することができる。そのような改変は、最適化コード配列が、特定の発現宿主から発現されるタンパク質のより高い品質及び量をもたらすので、当分野では日常的である。
組換え核酸分子(例えばDNA分子)もまた本発明で意図されるが、前記分子は、外因性核酸セグメント(例えばDNAセグメント又は配列)(上記に記載の目的とされるキメラポリペプチドの一部分をコードする遺伝子を規定する)及び適合しえる宿主生物で前記遺伝子の発現を誘導するために適したプロモーターと機能的に連結されたベクターを含む。より具体的には、意図されるキメラポリペプチドの第一の部分のための遺伝子を規定するDNAセグメント又は前記意図されるキメラポリペプチドと少なくとも50%のアミノ酸同一を有するDNA変種と機能的に連結された、宿主生物の細胞で前記意図されたキメラポリペプチドの一部分の発現を宿主生物で誘導するプロモーターを収納するベクターを含む組換えDNA分子もまた意図される。
更に意図されるものは、意図されるキメラポリペプチドの配列の第一の部分と少なくとも50%同一、より好ましくは70%同一、更に好ましくは80%同一、更に好ましくは90%同一、もっとも好ましくは少なくとも95%同一である、第一の部分のアミノ酸残基配列をコードする類似体核酸配列であるDNAセグメントと機能的に連結された、宿主生物の細胞でキメラポリペプチド部分の発現を制御するプロモーターを収納するベクターを含む組換えDNA分子である。前記組換えDNA分子は、適切なトランスフェクション及び宿主細胞による発現時に、意図されるキメラ分子を提供する。
【0059】
本発明の第一のポリペプチド部分のいくつかの実施態様は、異種エピトープアミノ酸残基又は配列、及び/又はリンカー残基又は配列を含むことは特記される。前記異種配列及び/又はそれらのコード核酸配列及び/又はそれらの相補鎖は、上記の配列同一性のパーセンテージ及び比較には含まれない。同様に、配列が最終的に由来した例えばウイルスキャプシドポリペプチドと比較して、キメラポリペプチドの第一の部分から短縮されて核酸結合を停止させる配列、例えばN-又はC-末端配列は、同一性計算及び比較に含まれない。したがって、異種リンカー及び/又はエピトープを除くキメラ分子の第一の部分に存在する塩基又は残基のみが含まれ、同一性パーセンテージ計算及び比較においてアラインメントされる核酸又はアミノ酸残基配列と比較される。
例示的B型肝炎ウイルス由来VLPの遺伝子のコード配列は、図1の配列番号:3、4、5、6、7及び8に示されている。単離された核酸セグメント(好ましくはDNA配列、その変種及び類似体)は、当分野で周知であり、以下の文献で考察されているようにin vitro変異導入によって調製することができる:Current Protocols In Molecular Biology, Ausabel et al. eds. John Wiley & Sons(New York: 1987) p.8.1.1-8.1.6。前記は、遺伝子のためのATG開始コドンで始まり、各遺伝子のための終止コドンで又は終止コドンの直ぐ下流で終わる。したがって、所望の制限部位は、開始コドンで又は開始コドンの下流で、更に終止コドンで又は終止コドンの下流で操作して、それによって他の遺伝子の調製、切り出し及び単離を実施することができる。続いて、当分野で周知の方法を用いて、任意の核酸配列セットの遺伝的融合及び/又は外科的結合が技術的に実施可能である。
【0060】
当分野で周知のように、必要な核酸(例示すればDNA配列)が存在するかぎり(開始及び終止シグナルを含む)、追加の塩基対は、セグメントのどちらかの末端に通常存在することができ、前記セグメントはなおタンパク質の発現に利用されえる。もちろんこれは、機能的に連結されたDNA配列セグメント中に、発現を抑制するもの、所望の発現生成物を消費する更に別の生成物を発現するもの、所望の酵素によって産生される所望の反応生成物を消費する生成物を発現するもの、又はそうでなければDNAセグメントの遺伝子の発現又は機能に干渉するものが存在しないことを仮定する。
したがって、DNAセグメントがそのような干渉DNA配列を含まないかぎり、本発明のDNAセグメントは、ベクター配列を含んで長さが約500から約100,000塩基対であることができる。組換えDNA分子、特に発現ベクターの最大サイズは、複製及び発現(所望されるとき)のために必要な最小限のDNA配列の全てが存在するならば、ほぼ便利さおよび宿主細胞によって収容されえるベクターサイズによって決定される。最少発現ベクター及びそれらのサイズは周知である。長いDNAセグメント及び大きなベクターは好ましくないが、使用することは可能である。
特記したように、以前に記載したキメラポリペプチド部分又は類似体をコードするDNAセグメントは、非生物学的化学的技術、例えばホスホトリエステル法(Matteucci et al. (1981) J Am Chem Soc 103:3185)によって完全に合成することができる。もちろん、遺伝子配列を化学的に合成することによって、所望のいずれの改変も、適切な塩基を天然のアミノ酸残基配列をコードする塩基の代わりに代用することによって簡単に実施することができる。しかしながら、以前に考察した配列を含むDNAセグメントが好ましい。
【0061】
意図されるキメラポリペプチドは、多数の形質転換宿主系、典型的には宿主細胞で生産(発現)することができるが、ただし、無細胞in vitro系における発現もまた意図される。これらの宿主細胞系には、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌;酵母発現ベクターで形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、fdを含む)をトランスフェクトした、又は細菌発現ベクター(例えばTiプラスミド)を用いて形質転換した植物、動物又は細菌細胞系;又は適切に形質転換した動物細胞系(例えばCHO、VERO、又はCOS細胞)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。下記でまた特記されるように、本発明は、使用される宿主細胞系によって、又は発現を制御又は誘導する遺伝的エレメントの性質によっても制限も規定も受けない。
例えばHBキャプシドポリペプチドをコードする遺伝子を含むDNAセグメントは、好ましくは、前記遺伝子を含む組換えDNA分子(プラスミドベクター)から入手される。前記配列の転写(及びコードされるポリペプチドについてそれらのその後の翻訳)を生じるために、そのような遺伝子の発現を誘導することができるベクターは、本明細書では“発現ベクター”と称される。
【0062】
発現ベクターは、プロモーターを含む発現制御エレメントを含む。キメラポリペプチド部分をコードする配列は、発現ベクターに機能的に連結され、プロモーター配列にRNAポリメラーゼの結合及びキメラポリペプチド部分コード配列の発現を誘導させる。ポリペプチドコード遺伝子の発現で有用なプロモーターは、Poszkowskiら(EMBO J (1989) 3:2719)及びOdellら(Nature (1985) 313:810)が記載したように、誘導性、ウイルス性、合成、構成性プロモーターであり、同様に時間的に調節されるもの、位置的に調節されるもの及び時間的位置的に調節されるものもChuaら(Science (1989) 244:174-181)が記載したように有用である。
原核細胞(例えば大腸菌)で使用されるある好ましいプロモーターはRec 7であり、前記は外因的に供給されるナリジクス酸によって誘導することができる。より好ましいプロモーターはプラスミドベクターJHEX25(Promega Corp.(Madison, WI)から入手できる)に存在し、前記は外因的に供給されるイソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)によって誘導できる。更に好ましいプロモーター、tacプロモーターはプラスミドベクターpKK223-3に存在し、外因性に供給されるIPTGによってまた誘導することができる。pKK223-3プラスミドは、多数の大腸菌株、例えばXL-1、TB1、BL21及びBLRで、誘導に約25μMから約100μMのIPTGを用いて良好に発現させることができる。
驚くべきことには、約25から約50μMの濃度のIPTGは、2Lのシェーカーフラスコ及びファーメンターで最適な結果を提供することが見出された。他のプロモーター及び遺伝的調節エレメントは、当分野で周知のように、他の細胞タイプ及び生物での発現に要求されえる。
【0063】
相補的末端又は平滑端を介してDNAをベクターに機能的に連結する多様な方法が開発された。例えば、ベクターDNAに挿入されるべきDNAセグメントに相補的ホモポリマー索を付加することができる。続いて、相補的ホモポリマーテール間で水素結合により、前記ベクター及びDNAセグメントを結合させて組換えDNA分子を形成する。
また別には、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーを用いて、以前に記載されたように、DNAセグメントを発現ベクターに結合させることができる。平滑端DNA分子の連結を触媒することができる酵素(例えばバクテリオファージT4DNAリガーゼ)の存在下で、平滑端DNAセグメントを大過剰の合成リンカーとインキュベートすることによって、平滑端を有するDNAセグメントに合成リンカーを結合させる。したがって、反応の生成物は、それらの末端に合成リンカーを保持するDNAセグメントである。続いて、これらのDNAセグメントを適切な制限エンドヌクレアーゼで切断し、合成リンカーの末端と適合しえる末端を生成する酵素で切断した発現ベクターに連結する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、多数の供給元(New England BioLabs(Beverly, MA)を含む)から市場で入手できる。
所望のDNAセグメントはまたPCR技術を用いて入手することができる。PCR技術では、遺伝子をベクターに挿入することができるように、フォワード及びリバースプライマーは、増幅後に切断することができる所望の制限部位を含む。また別には、PCR生成物は、当分野で周知のように、T-オーバーハングを含むベクター(Promega Corp. A3600, Madison, WI)で直接クローニングしてもよい。
【0064】
in vitro合成、PCR増幅及び操作、位置特異的変異導入又は当分野で公知のこれら又は他の技術の組合せによって、ほぼ全ての所望の遺伝子配列を生成することができることは当分野では周知である。実際のところ、完全に合成された、注文製作の遺伝子構築物を市場で入手することができる(例えば、Aptagen(Herndon, VA, USA)、Sigma-Genosys(The Woodlands, TX, USA)、GenScript Corp.(Edison, NJ, USA)及びその他多くの業者)。更にまた、種々の宿主生物は、(上記で述べたコドン優先性の他に)遺伝子発現の制御及び誘導のために別個の遺伝的配列を使用し、したがって、本発明のキメラポリペプチド又はその部分をコードする発現ベクターを1つ以上の様々な可能な生物に順化させ、なお本発明の範囲を維持できることが意図される。
遺伝暗号の縮退、生物間における別個のコドン優先性、完全に注文製作の遺伝的構築物の市場での入手可能性、遺伝的構築物からタンパク質を発現させるための多様な系、及び天然及び非天然の両方の由来についてその他の遺伝的多様性の組合せを考えると、2つのポリペプチド又はそれらのコード遺伝子間の類似性のもっとも機能的に意味のある決定は、アミノ酸配列をコードする核酸よりもコードされるアミノ酸配列の類似性であることが分かる。
【0065】
接種物及びワクチン
本発明の更に別の実施態様では、HBcキメラ粒子又はハプテンとのHBcキメラ粒子コンジュゲートは、人間の患者又は適切な動物宿主(例えばチンパンジー、マウス、ラット、ウマ、ヒツジなど)での接種物又はワクチンの免疫原として用いられる。接種物は、B細胞又はT細胞応答(刺激)、例えば免疫原エピトープ又はハプテンと免疫反応する抗体の産生を誘発し、一方、ワクチンは、免疫原が由来した実体に対する防御をB細胞又はT細胞応答の一方又は両方を介して提供する。
T細胞活性化は多様な技術によって測定することができる。通常的な実施では、宿主動物は意図されるHBcキメラ粒子ワクチン又は接種物を接種され、末梢単核球(PMBC)がその後で採集される。続いてT細胞免疫原の存在下で、約3から5日間これらのPMBCが培養される。続いて培養PBMCを増殖又はサイトカイン(例えばIL-2、GM-CSF、又はIFN-γ)の分泌についてアッセイされる。T細胞活性化のためのアッセイは当分野では周知である。例えば、米国特許5,478,726号及び前記で引用された技術を参照されたい。
例えば抗体形成を用いたとき、意図される接種物又はワクチンは、免疫原として有効な量のHBcキメラ粒子又はHBcキメラ粒子コンジュゲートを含み、前記は、医薬的に許容できる稀釈剤組成物(典型的にまた水を含む)中に溶解又は分散されている。免疫の必要があるか、又は抗体の誘発が所望される宿主動物、例えば哺乳動物(例えばマウス、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル、尾なし猿、又はヒト)、鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル又はカモ)に投与したとき、接種物は、遺伝的に連結又はコンジュゲート(ペンダント結合)させたハプテンと免疫反応する抗体を誘発する。これらの抗体はまた、好ましくはB細胞免疫原のタンパク質又は糖類と結合する。
【0066】
各免疫で用いられる組換えHBcキメラ免疫原の量は免疫原として有効な量と称され、下記で考察するように、とりわけ組換えHBcキメラ免疫原、免疫される患者、及びワクチン中のアジュバントの存在に応じて広範囲に変動しえる。ワクチン及び接種物のために免疫原として有効な量は、上記で考察したようにそれぞれ防御又は抗体活性を提供する。
ワクチン又は接種物は、典型的には各接種(ユニットドース)当たり約1マイクログラムから約1ミリグラム、好ましくは約10マイクログラムから約50マイクログラム/ユニットドースの組換えHBcキメラ免疫原濃度を含む。“ユニットドース”という用語は、前記が本発明のワクチン又は接種物に関連するときは、動物のための単位投薬量として適切な物理的に分離されたユニットを指し、各ユニットは、要求される稀釈剤(即ち担体又はベヒクル)と一緒になって、各個体で又は集団的に所望の免疫原効果を生じるように予め定めた量の活性物質を含む。
ワクチン又は接種物は典型的には、回収した組換えHBcキメラ免疫原から、前記免疫原(好ましくは粒状形)を、生理学的に耐ええる(許容できる)稀釈剤ベヒクル(例えば水、食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、酢酸緩衝食塩水(ABS)、リンゲル液などに分散させ、水性組成物を形成することによって調製される。稀釈剤ベヒクルにはまた、以下で考察されるように油性物質、例えば落花生油、スクァラン又はスクァレンが含まれえる。
活性成分としてタンパク質性物質を含む接種物及びワクチンの調製もまた当分野ではよく理解されている。典型的には、そのような接種物又はワクチンは、非経口物(溶液又は懸濁液として)、溶液又は懸濁物に適した固体形として調製され、注射前液体もまた調製することができる。調製物はまた乳化させることができ、前記は特に好ましい。
【0067】
免疫原として活性な成分はしばしば、医薬的に許容でき更に活性成分と適合しえる賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せである。更にまた、所望される場合は、接種物又はワクチンは、組成物の免疫原としての有効性を強化する、微量の補助物質(例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤)を含むことができる。
意図されるワクチン又は接種物は有利にはまたアジュバントを含む。本発明のワクチン及び接種物のために適したアジュバントは、キメラのB細胞エピトープに対する抗体応答を強化することができるアジュバントと同様に、キメラに含まれるT細胞エピトープに対する細胞仲介応答を強化することができるアジュバントを含む。アジュバントは当分野では周知である(例えば以下を参照されたい:Vaccine Design - The Subunit and Adjubant Approach, 1995, Pharmaceutical Biotechnology, Volume 6, Eds. M.F. Powell and M.J. Newman, Plenum Press, New York and London, ISBN 0-306-44867-X)。
例示的なアジュバントには、フロイントの完全アジュバント(CFA)(前記はヒトには使えない)、フロイントの不完全アジュバント(IFA)、スクァレン、スクァラン及びアルミニウム(例えばAlhydrogelTM(Superfos, Denmark))が含まれ、前記は当分野で周知の物質であり、いくつかの供給元から市販されている。
【0068】
本発明の免疫原とともに使用される好ましいアジュバントにはアルミニウム塩又はカルシウム塩(例えば水酸化物又はリン酸塩)が含まれる。本明細書で使用される特に好ましいアジュバントは、水酸化アルミニウムゲル(例えばAlhydrogelTM)である。水酸化アルミニウムゲルの場合、キメラタンパク質は、50から800マイクログラムのアルミニウムが各ドース当たり存在するようにアジュバントと混合される。好ましくは400から600マイクログラムが存在する。また別の特に好ましいアジュバントはリン酸アルミニウムであり、前記は商標名Adju-PhosTMでスーパーフォス・バイオセクター社(Superfos Biosector, Denmark)から入手できる。一次リン酸アルミニウム粒子はプレート様形態及び約50から約100nmの直径を有し、製品中の最終的な粒子サイズは約0.5から約10μである。リン酸カルシウムナノ粒子(CAP)はバイオサンテ社(Biosante, Inc., Lincolnshire, IL)によって開発されたアジュバントである。問題の免疫原は粒子の外側にコーティングされるか又は内部の内側に被包化される(He et al. (Nov. 2000) Clin Diag Lab Immunol 7(6):899-903)。
本発明の免疫原と使用するために特に好ましいまた別のアジュバントはエマルジョンである。意図されるエマルジョンは水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンでありえる。免疫原性キメラタンパク質の他に、そのようなエマルジョンは、周知のスクァレン、スクァラン、落花生油などの油相及び分散剤を含む。非イオン性分散剤が好ましく、そのような物質には、ソルビタン及びマンニドのモノ-及びジ-C12-C14-脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート及びマンニドモノオレエート、が含まれる。免疫原含有エマルジョンはエマルジョンとして投与される。
【0069】
好ましくは、そのようなエマルジョンは油中水エマルジョンであり、スクァレン及びマンニドモノオレエート(ArlacelTM A)を含み、場合によって水相中でキメラタンパク質と乳化させたスクァランを含む。そのようなエマルジョンの周知の例には、MontanideTM ISA-720、及びMontanideTM ISA-703(Seppic, Castres, France)が含まれ、前記の各々はスクァレン及びスクァランの両方を含み、それぞれにおいてスクァレンが多いが、MontanideTM ISA-703ではその程度は低いと考えられる。もっとも好ましくは、MontanideTM ISA-720が用いられ、油対水の比は7:3(w/w)が用いられる。他の好ましい水中油エマルジョンアジュバントには、WO95/17210及びEP0399843に開示されたものが含まれる。
小分子アジュバントの使用もまた本明細書では意図される。本明細書で有用な小分子アジュバントのあるタイプは、7-置換-8-オキソ-、又は8-スルホ-グアノシン誘導体であり、前記は米国特許4,539,205号、4,643,992号、5,011,828号及び5.093,318号に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。これらの物質のうちで、7-アリル-8-オキソグアノシン(ロキソリビン)は特に好ましい。前記分子は、抗原-(免疫原-)特異的応答の誘発に特に有効であることが示された。
【0070】
有用な好ましいアジュバントには、モノホスホリル脂質A(MPL)、3-デアシルモノホスホリル脂質A(3D-MPL)(リビ・イムノケム(Ribi Immunochem, Hamilton, Montana)によって製造される周知のアジュバント)が含まれる。前記アジュバントは細菌から抽出された3つの成分を含む:2%スクァレン/トゥイーン80エマルジョン中のモノホスホリル脂質(MPL)A、トレハロースジミコレート(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)(MPL+TDM+CWS)。このアジュバントは、GB2122204Bに教示された方法によって調製することができる。3-de-O-アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい形態は、直径が0.2μm未満の小粒子サイズを有するエマルジョンの形態である(EP0689454-B1)。もっとも好ましいものは、アミノアルキルグルコサミド4-ホスフェート(APG)と称されるMPLの合成単糖類類似体であり、例えばRC-529 {2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシ-テトラデカノイル-アミノ]-エチル-2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-O-[(R)-3テトラデカノイル-オキシテトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラ-デカノイルオキシテトラ-デカノイル]-2-p-D-グルコピラノシドトリエチルアンモニウム塩}として販売されている。RC-529は、コリキサ社(Corixa Corp.)から入手可能なRC-529SEとして販売されているスクァレンエマルジョンであり、RC-529AFとしての水性処方物で入手可能である(米国特許4,987,237号及び6,113,918号を参照されたい)。これらのアジュバントは単独で、又は1つ以上の他のアジュバント(例えばAlhydrogelTM)と組み合わせて用いることができる。
【0071】
更に意図されるアジュバントには合成オリゴヌクレオチドアジュバントが含まれ、前記は、コリー・ファーマシューティカル・グループ(Coley Pharmaceutical Group)から入手可能なCpGヌクレオチドモチーフ(+フランキング配列)を1回以上含む。QS21と称されるアジュバント(アキラ・ファーマシューティカル社(Aquila Biopharmaceuticals, Inc.)から入手できる)は、南アメリカの樹木キラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来するアジュバント活性を有する、免疫原として活性なサポニン分画であり、その製造方法は米国特許5,057,540号に開示されている。キラジャ・サポナリア・モリナのサポニンの半合成及び合成誘導体、例えば米国特許5,977,081号及び6,080,725号に記載されたものもまた有用である。MF59と称される、キロン社(Chiron Corp.)から入手可能なアジュバントは、米国特許5,709,879号及び6,086,901号に記載されている。
ムラミルジペプチドアジュバントもまた意図され、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thur-MDP)、N-アセチル-nor-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、nor-MDPと称される)、及びN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン((CPG)1983A、MTP-PEと称される)を含む。いわゆるムラミルジペプチド類似体は米国特許4,767,842号に記載されている。
【0072】
好ましいアジュバント混合物には、3D-MPL及びQS21の組合せ(EP0671948-B1)、3D-MPL及びQS21を含む水中油エマルジョン(WO95/17210、PCT/EP98/05714)、他の担体とともに処方された3D-MPL(EP0689454-B1)、コレステロール含有リポソーム中で処方されたQS21(WO96/33739)、又は免疫刺激オリゴヌクレオチド(WO96/02555)が含まれる。SKB(現在はGlaxo-SmithKline)から入手できるSBAS2(今はASO2)は、水中油エマルジョン中にQS21及びMPLを含む。また別のアジュバントには、WO99/52549に記載されたもの及びUK特許出願9807805.8のポリオキシエチレンエーテルの非粒子状懸濁物が含まれる。
アジュバントは、アジュバント量(アジュバント、哺乳動物及び組換えHBcキメラ免疫原により変動しえる)で用いられる。典型的な量は、各免疫当たり約1μgから約1mgの間で変動しえる。適切な濃度又は量を容易に決定できることは、当業者には理解されよう。
接種物及びワクチンは、通常的には非経口的に注射により(例えば皮下又は筋肉内に)投与される。他の投与態様に適したまた別の処方物には、座薬及びいくつかの事例では経口処方物が含まれる。接種用の鼻内スプレーもまたNeirynckら(Nature Med (1999) 5(10):1157-1163)が考察したように意図される。座薬の場合は、伝統的な結合物質及び担体、例えばポリアルカレングリコール又はトリグリセリドが含まれえる。そのような座薬は、0.5%から10%、好ましくは1−2%の範囲で活性成分を含む混合物から形成することができる。経口処方物は、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースカルボン酸マグネシウムなどのような通常的に用いられる賦形剤を含む。
【0073】
接種物又はワクチン組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、ピル、カプセル、徐放性処方物又は散剤の形態を有し、活性成分として免疫原的に有効な量のHBcキメラ又はHBcキメラコンジュゲートを(好ましくは粒子として)含む。典型的な組成物では、好ましいHBcキメラ又はキメラコンジュゲート粒子の免疫原として有効な量は、以前に記載したように、約1μgから約1mgの活性物質/ドース、より好ましくは約5μgから約50μg/ドースである。
ワクチンは典型的には非経口投与用に処方される。例示的な免疫は、皮下(SC)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、腹腔内(IP)又は皮内(ID)で実施される。しかしながら、経口及び鼻内ルートのワクチン接種もまた意図される。
HBcキメラ粒子及びHBcキメラ粒子コンジュゲートは、中性形又は塩の形態のワクチンに処方することができる。医薬的に許容できる塩には、酸付加塩(タンパク質又はハプテンの遊離アミノ基により形成される)が含まれ、無機酸(例えば塩酸又はリン酸)、又は有機酸(例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)により生成される。遊離カルボキシル基により生成される塩もまた、無機塩基(例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄)及び有機塩基(例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導することができる。
更にまた別の実施態様では、目的のHBcキメラをコードする遺伝子が、適切に弱毒化した腸内細菌(例えば腸チフス菌、ネズミチフス菌、ネズミチフス菌-大腸菌ハイブリッド又は大腸菌)にトランスフェクトされたワクチン又は接種物が意図される。例示的な弱毒又は無毒な腸チフス菌及びネズミチフス菌及びネズミチフス菌-大腸菌ハイブリッドは、以前に提供した引用文献で考察されている。これらのワクチン及び接種物は、鼻、腸及び生殖道の粘膜を介して感染又は伝達される疾患、例えばインフルエンザ、酵母(例えばアスペルギルス及びカンジダ)、ウイルス(例えばポリオ、口蹄疫、A型肝炎)及び細菌(例えばコレラ、サルモネラ、及び大腸菌)に対する使用、及び、粘膜IgA応答がIgGの全身応答に加えて、又は前記に代わって所望される場合に特に意図される。
【0074】
腸内細菌は、凍結乾燥させ、医薬的に許容できる乾燥稀釈剤と混合し、摂取のために錠剤又はカプセルにし、通常の固相医薬のように宿主動物に投与するか又は摂取させることができる。更にまた、これら細菌ワクチンの水性調製物は、経口、鼻内、直腸又は膣投与による粘膜免疫で使用するために適合調整される。
意図されるキメラ分子の粒子を含む植物物質を用いる経口免疫は、トランスジェニックな植物組織(例えば根(例えばニンジン)又は種子(例えばコメ又はトウモロコシ))の単純な消化によって達成することができる。この事例では、口又は胃腸管の水分は免疫のために使用される通常用いられる水性媒体を提供し、周囲の植物組織は医薬的に許容できる稀釈剤を提供する。
接種物又はワクチンは、調剤処方物に適合する態様で、更に治療的に有効であり免疫を誘発する量で投与される。投与されるべき量は、処置される対象者、抗体を合成する対象者の免疫系の能力、及び所望される防御の程度に左右される。投与に要求される活性成分の正確な量は、医師の判定に左右され、各個体に固有である。しかしながら、適切な調剤の範囲は、各個体当たり数十マイクログラムの活性成分の規模である。初期投与及びブースター接種についての適切な投与計画もまた変動しえるが、典型的には、初期投与に続いて間隔(数週又は数ヶ月)を空けてその後の注射又は他の投与が実施される。
いったん免疫されたら、哺乳動物は、組換えHBcキメラ免疫原に対して十分な力価の抗体(問題の抗原(例えばマラリアワクチンの場合スポロゾイト)と結合する)の産生が誘発されるために十分な期間維持される。例示的な抗スポロゾイト抗体の産生のための維持期間は、典型的には約3週間から約12週間続き、ブースター(又はワクチンの第二回目の免疫投与)を含むことができる。所望の場合は、第三回目の免疫もまた、初回の免疫後24週から5年の時期に意図される。いったん防御レベルの抗体力価が達成されたら、前記ワクチン接種哺乳動物は、好ましくは約1年から約5年の間隔で投与される周期的なブースター免疫によって前記抗体力価で又は前記抗体力価近くで維持される。
マラリアワクチンの事例では、抗スポロゾイト又は他の抗体の産生は、免疫した哺乳動物由来の血漿又は血清を入手し、その中の抗体を適切な抗原(例えば合成サーカムスポロゾイトイムノドミナント抗原(例えば本明細書で用いられるP.ファルシパルム(P. falciparum)CSタンパク質ペプチド(NANP)5)とのそれら抗体の結合能力について、以下に記載するようにELISAアッセイで、又は別の免疫アッセイ(例えば当分野で周知のウェスタンブロット)でアッセイすることによって容易に確認できる。
【0075】
誘発された抗体(例えば抗CS抗体又は抗インフルエンザ抗体)は、接種された宿主哺乳動物の血液から周知の技術を用いて単離し、更にまた周知のように、受動免疫用の第二のワクチンに再構成することができることを記載しておく。同様な技術が、ヒトのガンマグロブリン免疫のために用いられる。例えば、1つ免疫宿主又は多数の免疫宿主由来の抗血清を硫酸アンモニウム水溶液(典型的に40−50%飽和)中で沈殿させ、前記沈殿抗体をアフィニティークロマトグラフィーの使用によりクロマトグラフィーで精製することができる。前記クロマトグラフィーでは、(NANP)5又はインフルエンザM2ポリペプチドが、クロマトグラフィーカラムに固定される抗原として利用される。したがって、例えば、接種物をウマ又はヒツジで用い、また別の動物(例えばヒト)の受動免疫での使用を目的にマラリア種に対して抗体産生を誘発することができる。
本発明のまた別の実施態様は、動物で抗体、活性化T細胞又は両方を誘発するための方法であり、前記方法は、前記動物宿主に接種物を接種する工程を含む。前記方法で用いられる接種物は、医薬的に許容できる稀釈剤中に溶解又は分散させた、以前に記載したHBcキメラ粒子又はHBcキメラ粒子コンジュゲートの免疫誘発量を含む。前記動物宿主は、抗体又は活性化T細胞を誘発させるために(周知の技術によってアッセイできる)十分な期間(典型的には数週から数ヶ月(これもまた周知である))維持される。複数回の前記のような免疫がこの維持期間の間に意図される。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は例示としてのみ提供され、本発明の制限と解されるべきではない。本技術に関する多くの変型が、本発明の範囲を逸脱することなく実施できる。免疫学的方法及び組換えDNAの方法は本明細書では系統的には記載していないが、当業者の技術範囲内である。ここで及び他の場所で引用した参考文献は本明細書にその全体が含まれる。
実施例1:M2細胞外ドメインを用いる安定化HBcポリペプチドVLPの構築
インフルエンザウイルスM2タンパク質のN-末端領域がB型肝炎ウイルスコア様粒子を非共有結合様式で安定化させる能力を示すために、M2eの細胞外ドメインをC-末端短縮HBcポリペプチドのC-末端に融合させた。固有のシステイン残基が安定化に寄与していないことを担保するために、システインがセリンに変異したM2型(CV-1895, V7.M2e(2C>2S))を用いた。発現ベクター、V7.M2e(2C>2S)を構築するために、オリゴヌクレオチド対をアニールさせ、発現ベクターV7(下記)に挿入した(前記はHBキャプシドポリペプチド遺伝子のアミノ酸V149の後ろで挿入を許容する)。
したがって、新規なベクターは、HBcキメラのC-末端への自己結合ペプチドの融合を可能にするために構築された。固有のEcoRI及びSacI制限部位を、HBcバリン-149とHindII部位との間に挿入して、EcoRI-HindIII(又はEcoRI-SacI)への合成dsDNAの方向性のある挿入を容易にした。下記のPCRプライマー対を用いて、アミノ末端にNcoI制限部位を、並びにカルボキシ末端にEcoRI、SacI及びHindIII部位を有するHBc149遺伝子を増幅させた。このPCR反応の生成物(479bp)をNcoI及びHindIIで消化し、pKK223-3NでクローニングしてベクターV7を形成した。
自己結合ペプチドを挿入するために、プラスミド(V7)をEcoRI及びHindIII(又はEcoRI及びSacI)で消化し、EcoRI/HindIII(又はEcoRI/SacI)オーバーハングを有する合成dsDNAフラグメントをV7に連結した。全てのV7構築物について、天然のHBcの最後のアミノ酸(バリン-149)と挿入された自己結合ペプチドの最初のアミノ酸は、EcoRI制限部位を形成するヌクレオチドによってコードされるグリシン-イソロイシンジペプチドによって分離させられている。EcoRI/SacIに挿入されたエピトープについては、自己結合ペプチドの後(終止コドンの前)に、SacI部位が寄与する、グルタミン酸-ロイシン残基が更に存在する。下記に示すプライマーにはまた制限部位に下線が付されている。
HBc149/NcoI-F
5'-TTGGGCCATGGACATCGACCCTTA 配列番号:278

HBc149/SacI-EcoRI-H3-R
5'-CGCAAGCTTAGAGCTCTTGAATTCCAACAACAGTAGTCTCCG 配列番号:279

単一文字コードによるM2ペプチドのC-末端挿入物の配列及びCV1895粒子[M2(2-24/C17S, C19S)]のためのコードDNA配列は以下に示されている。
I S L L T E V E T P I R N E W
AATTTCTCTGTTAACCGAAGTGGAGACGCCGATTCGTAACGAATGGG
AGAGACAATTGGCTTCACCTCTGCGGCTAAGCATTGCTTACCC

G S R S N D S S D E L 配列番号:29
GTAGCCGCTCTAATGATAGCTCTGACGAGCT 配列番号:280
CATCGGCGAGATTACTATCGAGACTGC 配列番号:281
実施例2:安定化HBキャプシドポリペプチドVLPの分析
発現及び精製の後でそれらの粒状の形態を維持する能力について、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いて粒子を分析した。C-末端安定化のない粒子(例えばCV-1048)は、この態様で分析したとき、粒状及び非粒状物質の混合物として存在する(図3)。
CV-1895粒子の同様な分析では、それらは均質な粒子構造物として溶出することが示された(図4)。これらのデータは、M2e(2-24, C17S, C19S)配列は、HBcのC-末端と融合されて存在するときは、粒子構造を安定化させる分子間相互作用を形成することを示している。これらのデータは更に、分子間安定化は、M2の17及び19位のシステイン残基が存在しなくても生じることを示している。
【0077】
実施例3:GCN4-p1ロイシンジッパーを用いた安定化HBcポリペプチドVLPの構築
酵母GCN4転写調節因子のロイシンジッパーがB型肝炎キャプシドポリペプチド粒子を非共有結合様式で安定化させる能力を調べるために、GCN4タンパク質由来の改変ロイシンジッパー、GCN4-VL(溶液中でダイマー及びトリマーの両方を形成する)を遺伝的にC-末端短縮HBc粒子のC-末端に融合させる。発現ベクターを構築するために実施例1の方法にしたがい、GCN4-VLをコードする合成オリゴヌクレオチドをアニールさせ発現ベクターV7に挿入する(前記はHBキャプシドポリペプチド遺伝子のアミノ酸V149の後に挿入物を許容する)。このようにしてHBキャプシドに取り付けられたペプチドは以下の配列を有する:
RVKQLEDKVEELLSKVYHLENEVARLKKLVGER 配列番号:282
得られた粒子は、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いた分析によれば、最初のCV-1048 VLPよりも安定で、実質的に核酸結合を示さない。
【0078】
実施例4:N-末端にリジン含有リンカー伸長を有する安定化HBc
Clarkeら(EP0385610)の教示にしたがい、適切に改変したHBcポリペプチドVLPのN-末端リジン残基にエピトープを結合させる。例えばCV-1895が、HBcキャプシドポリペプチドのN-末端に追加のリジン残基を持つように操作する。2つ以上のLys残基がN-末端伸長部に存在することができる。そのような操作されたキャプシドポリペプチドは、実施例1のように、安定化ペプチドをC-末端に有する(例えばインフルエンザAのM2タンパク質の細胞外自己集合ペプチド)。
ここでは、FMDV O1及びA12サブタイプ由来のエピトープが用いられる。これらは、VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸残基約142から約160である。これらの配列は2回繰り返すことができる。例えば有用なエピトープは以下のとおりである:
FMDV O1
(FMDV O1 VP1 AA 137-162)-(FMDV O1 VP1 AA 137-162)-Cys:
一文字コードでは、この配列は、NRNAVPNLRGDLQVLAQKVARTLPTSNRNAVPNLRGDLQVLAQKVARTLPTSC(配列番号:283)である。
FMDV A12
(FMDV A12 VP1 AA 137-162)-(FMDV A12 VP1 AA 137-162)-Cys:
一文字コードでは、この配列は、YSASGSGVRGDLGSLAPRVARQLPASYSASGSGVRGDLGSLAPRVARQLPASC(配列番号:284)である。
FMDVエピトープのより短い免疫原性配列を提示することができ、前記はまた反復させることができる。より小さな有用なペプチドは以下のとおりである:
(FMDV O1 VP1 AA 145-150)-(FMDV O1 VP1 AA 145-150)-Cys:
RGDLQVRGDLQVLAQKVARTLPC(配列番号:285)
及び
(FMDV O1 VP1 AA 145-150)-(FMDV O1 VP1 AA 145-150)-(FMDV O1 VP1 AA 145-160)-Cys:
RGDLQVRGDLQVRGDLQVLAQKVARTLPC(配列番号:286)。
【0079】
N-末端リンカー伸長部は、伸長部をもつHBcが自己集合してコア様粒子を形成することができることを条件とし、更にリンカー伸長部のLys残基がカップリングに利用できるように露出していることを条件として任意の適切な長さを有することができる。リンカー伸長部は長さが100アミノ酸残基までであることができるが、所望の場合はより長くてもよい。より短いリンカー伸長部は、長さが60まで、例えば40、20、10又は5までのアミノ酸残基である。
ある適切な伸長部は、ポリオウイルス1型(PV1)の株(例えばSabin又はMahoney株)のVP1キャプシドタンパク質の残基95から102、例えば95から104を含む:
Sabin PV1 VP1 95-102:SASTKNKD(配列番号:287);
Sabin PV1 VP1 95-104:SASTKNKDKL(配列番号:288);
Mahoney PV1 VP1 95-102:PASTTNKD(配列番号:289);
Mahoney PV1 VP1 95-104:PASTTNKDKL(配列番号:290)。
EP0385610(Clarke)によって教示されるように、HBキャプシドポリプロテインのいずれのN-末端伸長部にも、一般的に少なくとも1つのLys残基が最初のN-末端の14残基内に存在しなければならない。カップリングに用いられる選りぬかれたポリペプチドのためには、伸長部のN-末端近くにLys残基を含むN-末端伸長部を有するHBcポリペプチドを選択するのが適切であろう。更にまた、N-末端伸長部は親水性であることができる。
N-末端リンカー伸長部(Lys残基を取り込んだこれらの配列又は任意の他の配列を含む)を有する改変HBキャプシドポリペプチドは、標準的な遺伝子操作技術によって入手することができる。
【0080】
実施例5:N-末端リジン含有リンカー伸長部を有する安定化HBc VLPへの異種エピトープの化学的取り付け
コンジュゲートは、リジン残基(改変HBキャプシドVLPのN-末端リンカー伸長部アミノ酸残基の間に存在する)の側鎖アミノ基を介して、改変HBc VLPにエピトープをカップリングさせることによって調製される。このカップリングは典型的には、改変HBc VLPをアミノ基との結合及びスルフヒドリル基との連結能力を有する二官能性試薬と反応させることによって達成される。このようにして誘導した改変HBc VLPをエピトープと反応させる(前記エピトープが遊離スルフヒドリル基を持たない場合は、前記がそのような記をもつように改変されてある)。
適切な二官能性試薬には、SMCC、MBS及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)-プロプリオネート(SPDP)が含まれる。二官能性試薬は、しばしば、ペプチド結合を形成する基及びジスルフィド又はチオエーテル結合を形成することができる基を含む。
スルフヒドリル基は、アミノ官能基と2-イミノチオラン又は3-(3-ジチオピリジル)-プロピオネート若しくはS-アセチルチオ-グリコール酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によって、システイン残基を含むようにペプチドを合成することによってペプチドエピトープに添加することができる。S-アセチルチオ-グリコール酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SATA)との反応後に、SATAを例えばヒドロキシルアミンで脱アセチル化して遊離-SH基を生成する。小分子エピトープ(薬剤を含む)は化学の分野で公知のように誘導される。
スルフヒドリル改変HBc VLPは使用前にカルボキシアミドメチル化して、誘導後にVLP上の一切の未反応スルフヒドリル基をブロッキングして、相互の架橋を防ぐ。カルボキシアミドメチル化は、キャプシドポリペプチド粒子をヨードアセトアミドと反応させることによって達成される。過剰の試薬はゲルろ過又は透析によって除去される。また別には(更に好ましくは)、スルフヒドリル基は添加されるペプチド上に、二官能性架橋試薬と最初に反応するシステインメルカプタンとして存在する。精製後に、前記のように官能化させたペプチドをHBc VLPのN-末端リジンと反応させる。同様な化学的方法が米国特許6,231,864号に開示されているが、前記ではリジン残基はHBcの免疫原性ループに先ず初めに添加される。
実際には、安定化された、リンカー保有HBc VLPは一般的には緩衝液(例えばpH値が約7のリン酸緩衝液)中で提供される。不活性溶媒中のモル過剰の二官能性試薬、例えば非プロトン性有機溶媒(例えばジメチルフォルムアミド)が添加される。HBキャプシドVLPの誘導が生じる。過剰な二官能性試薬は、例えばろ過によって除去される。続いて、HBキャプシドVLPにカップリングされるエピトープを過剰に添加する。カップリングが生じ、改変HBキャプシドと結合したエピトープを含む生成コンジュゲートを、例えばろ過によって回収する。ペプチドエピトープを先ず初めに誘導し、更に前記誘導した過剰なペプチドエピトープを安定化VLPと反応させることが好ましい。
【0081】
実施例6:HBキャプシドポリペプチドのN-末端又はC-末端への自己結合ペプチドの化学的取り付け
EP0385610(Clarke)及び前出の実施例で詳細に述べた方法にしたがい、ペプチドが安定化されていないHBキャプシド(例えばCV-1048の誘導体及び他のもの、N-又はC-末端に1−6個の追加のリジンを有する)を化学的に自己結合ペプチドとカップリングさせた。実施例1のように、生成された、N-又はC-末端にカップリングした自己結合ペプチドをもつVLPは、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いたとき未改変CV-1048又は他のHBキャプシドポリペプチドを含むVLPよりも安定である。
【0082】
実施例7:FMDV VP1の残基141-160プラスC-末端Cys残基を含むペプチドの安定化N-末端リンカー伸長部保有HBキャプシドVLPへのカップリング
適切なN-末端リンカー伸長部を保有する安定化HBキャプシドVLP(例えば上記実施例4に記載した)を2度の連続シュクロースグラディエントで精製し、更に10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中で濃度5mg/mLにてセファデックス(Sephadex(商標))G100カラムに流した。これらの改変HBキャプシドポリペプチドVLP(10mMのリン酸緩衝液中で濃度2mg/mL)を、1/20の体積のSMCC(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL)(乾燥ジメチルホルムアミドに溶解)をVLP中のSMCCの最終濃度がキャプシドポリペプチドに対して50倍モル過剰となるように添加することによって誘導する。
室温で30分後に、10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中のセファデックス(Sephadex(商標))G100カラムでろ過することによってSMCCを除去する。新しく溶解したin vitro合成FMDV 141-160 Cys(配列PNLRGDLQVLAQKVARTLPC(配列番号:291)を有する)を1/10の体積で添加し、誘導HBcポリペプチドに対して10倍モル過剰のペプチドを提供する。室温で2時間攪拌した後、前記のように誘導したVLPからカップリングされなかったペプチドをセファデックス(Sephadex(商標))G200によるろ過によって分離する。ペプチドが取り付けられた安定化HBキャプシドを回収する。これらのVLPは、分析用ゲルろ過クロマトグラフィーで決定したとき、CV-1048を土台にして同一処理を施した自己結合ペプチドを欠くVLPよりも安定である。
【0083】
実施例8:安定化HBキャプシドへのHRV2ペプチドのカップリング
実施例7に記載した方法にしたがって、NIm-IIエピトープを包含し、更に配列VKAETRLNPDLQPTC(配列番号:292)を有するHRV2ペプチドを、N-末端リンカー伸長部を有する安定化HBキャプシドポリペプチドVLPにカップリングした。取り付けられたペプチドを有するVLPを回収した。これらのVLPは、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いてアッセイしたとき、以前に考察したように、自己結合ペプチドを欠きその他の点では同一のVLPよりも安定である。
【0084】
実施例9:N-末端リンカー伸長部を有する安定化HBキャプシドVLPへのHBsAg B細胞エピトープのカップリング
実施例4のN-末端リンカー伸長部を有する安定化HBキャプシドVLPを、実施例7のようにDMF中の等モル量のSMCCで誘導した。preSタンパク質(残基132-145)由来のHBsAg B-細胞エピトープ及びエキストラC-末端Cysを含む新しく合成したペプチド(配列QDPRVRGLYFPAGGC(配列番号:293)を有する)を、N-末端リンカー伸長部を有する新しくSMCCで誘導した安定化HBキャプシドVLPと実施例7の方法によって反応させた。自己結合ペプチド(例えばロイシンジッパーペプチド)を含むVLPは、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いてアッセイしたとき、自己結合ペプチドを欠きその他の点では同一のVLPよりも安定である。
【0085】
実施例10:バクテリオファージMS2のキャプシドポリペプチドから誘導した安定化VLP
バクテリオファージMS2は、レビウイルス科(Leviviridae)のウイルスの細菌感染性メンバーである。RNAバクテリオファージMS2のコートタンパク質のためのプラスミド発現ベクターを改変して、コートタンパク質遺伝子内の固有のKpnI制限部位を、Mastico(J Gen Virol (1993) 74:541-548)及びBrown(Intervirology (2002)45:371-380)が教示したように、残基15と16の間の対応する部位に導入する。この部位にペプチドコードDNAオリゴヌクレオチドを挿入することによって、外部に位置するヘアピンの中心部分として外来ペプチド配列を発現させることが可能になる。固有の制限部位もまた、キャプシドポリペプチドのC-末端をコードする、3'末端に操作して作成する。この部位にペプチドコードDNAオリゴヌクレオチドを挿入することによって、挿入されたいずれの異種エピトープからも独立して、C-末端に自己結合ペプチドを有するキメラMS2コートタンパク質の産生が可能になる。
本実施例では、ヒトパピローマウイルス16のL1タンパク質由来のエピトープ(配列PNDTFIVSTNPNTVTSSTPI(配列番号:294)のタンパク質に対応する)をコードするオリゴヌクレオチドが、MS2キャプシドポリペプチドコード配列のKpnI部位に挿入される。
自己結合ペプチドを欠くエピトープ含有キャプシドポリペプチドは自己集合して、実質的にRNAを含まないVLPを大腸菌で形成し、前記は抽出後にin vitroで容易に脱集合し更に再集合する。
GCN4タンパク質(GCN4-p1)の野生型ロイシンジッパーペプチド(配列RMKQLEDKVEELLSKNYHLENEVARLKKLVGER(配列番号:295)を有する)をコードするオリゴヌクレオチドを、キャプシドポリペプチドコード配列の3'末端の操作部位に挿入する。このようにして、大腸菌での発現時にエピトープ含有キャプシドポリペプチドのC-末端をGCN4-p1ペプチドと融合させる。得られたVLPは高度に免疫原性を有し、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いてアッセイしたとき、自己結合ペプチドを欠く同じ融合ポリペプチドから成るVLPよりも安定である。
【0086】
実施例11:サッカロミセス・セレビシエで発現されるヒトポリオーマウイルスJC VP1から誘導された安定化VLP
最初の12アミノ酸を欠くヒトパピローマJCVキャプシドポリペプチドは宿主DNAを被包化しないが、キャプシド様構造の完全性は維持する(Ou et al. (2001) J Med Virol 64:366-73)。VP1の12のアミノ末端及び16のカルボキシ末端アミノ酸はウイルス様粒子の形成には不要であり、VP1のいずれかの末端の更なる短縮はこの特性の消失をもたらす(Ou et al. (2001) J Neurovirol 7:298-301)。N-末端の12のアミノ酸はGCN4-VLペプチドによって置換され、前記は溶液中でN-アセチルペプチドとしてトリマー及びダイマーを形成する。GCN4-VLロイシンジッパーペプチドの配列は、RVKQLEDKVEELLSKVYHLENEVARLKKLVGER(配列番号:296)である。
前記置換は、N-末端の12のアミノ酸をコードするDNAセグメントを除去した後で、前記ペプチドをコードする、ハイブリダイズさせた相補性オリゴヌクレオチドをキャプシドポリペプチドコードプラスミドに、単にプラスミドを再環状化させる代わりに挿入することによって達成される。酵母で強力な誘導性pGAL1プロモーターから発現させたとき、キメラキャプシドポリペプチドから形成される空のVLPは、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いて決定したとき、自己結合ペプチドを欠きその他の点では同一のVLPよりも安定である。
【0087】
実施例12:異種エピトープを有する安定化フロックハウスウイルスVLP
米国特許6,171,591号(Hall)にしたがい、エピトープをノダウイルスフロックハウスウイルスのキャプシドタンパク質の外部ループの残基205−209の間に挿入した。対応するループは、他のノダウイルス科(Nodaviridae)のメンバー(例えばブラックビートルウイルス及びノダムラウイルス)のそれぞれの表面でもまた見出される。同様な挿入は、このウイルス群の構造的類似性のために容易に達成される。N-末端の20残基を欠失させて核酸結合能力を失わせ、GCN4-VLペプチドをコードする合成オリゴヌクレオチドをアニールして発現ベクターに挿入し、キャプシドポリペプチドのN-末端を置換する。発現されたVLPをバキュロウイルス発現系から精製し、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析したとき、前記は、自己結合ペプチド配列を含まないが他の点では同様なVLPよりも安定である。
【0088】
実施例13:ヌダウレリア・カーペンシス・オメガウイルスのキャプシドポリペプチド類似体をベースにした安定化VLP
フロックハウスウイルスのエピトープ挿入部位に対応するループはまた関連するテトラウイスル科の表面に見出すことができ、したがって、テトラウイルスのヌダウレリア・カーペンシス・オメガ(Nudaurelia capensis omega)ウイルスを実施例13の態様と類似する態様で改変した。エピトープは、キャプシドポリペプチドのIg-様ドメインの残基374から残基382に及ぶ外部ループのアミノ酸残基380から381の間に挿入する(Munshi et al. (1996) J Mol Biol 261:1-10)。テトラブラキオン(Stetefeld (2000) Nat Struc Biol 7:772-776)のテトラマー形成ペプチドをXtal構造に存在しないN-末端44残基の代用にしてVLPを安定化させ、核酸結合を低下させる。バキュロウイルス発現系から得られた粒子は、分析用サイズ排除クロマトグラフィーを用いて前記発現VLPをアッセイしたとき、テトラブラキオンテトラマーペプチドを欠く空の粒子よりも安定である。
【0089】
実施例14:ブロムモザイクウイルスキャプシドポリペプチドから誘導された安定化VLP
ブロムモザイクウイルスは植物感染ウイルスであり、ブロモウイルス科のタイプメンバーである。N-末端25残基の置換は核酸結合を停止させるが、米国特許5,869,287号(Price et al.)で示されたように、欠失BMVキャプシドポリペプチドを酵母で発現させたときVLPの安定性の低下もまたもたらされる。安定性は欠失残基をヒトAP-4タンパク質ロイシンジッパーペプチドで代替することによって回復される(核酸結合は回復されない)。前記ペプチドは、配列IFSLEQEKTRLLQQNTQLKRFIQEL(配列番号:297)を有する。
【0090】
実施例15:ターニップクリンクルウイルスキャプシドポリペプチドから誘導された安定化VLP
ターニップクリンクル(Turnip crinkle)ウイルス(TCV)はコモウイルスのメンバーである。キャプシドポリペプチドのN-末端40残基は核酸結合能力を有し、欠失させるか又はGCN-4p1自己結合ロイシンジッパーペプチドで置き換えられる。強力な誘導性GAL1プロモーターの制御下でサッカロミセス・セレビシエで発現させたとき、VLPは、VSB緩衝液(0.1MのNaCl、0.1MのNaOAc、10mMのEDTA、pH5.0)中で渦流攪拌によって抽出することができる。核酸結合ドメインを欠くTCV誘導VLPの安定性は、50mMのリン酸緩衝液(pH7.2)でインキュベートすることによって、自己結合ペプチドを有するVLPの安定性に匹敵する。実施例2にしたがって実施した分析用サイズ排除クロマトグラフィーは、N-末端ドメインの自己結合ペプチドによる置換を含むVLPは欠失のみを有するVLPよりも安定であることを示した。
【0091】
実施例16:ヒトパピローマウイルス16 L1キャプシドから誘導された安定化VLP
ヒトパピローマウイルス16はパピローマウイルス科のメンバーである。自己結合ロイシンジッパーペプチドGCN4-VL(RVKQLEDKVEELLSKVYHLENEVARLKKLVGER(配列番号:298)をHPV 16 L1のN-末端に遺伝的に融合させる。エピトープ、例えばHPV 16 L2(LVEETSFIDAGAP;配列番号:299)をイムノドミナント外部ループの残基351−355に挿入する。前記によって、集合VLPに存在するときには外来ペプチドの免疫原性が強化されることが示された(Slupetzky et al. (2001) J Gen Virol 82:2799-2804)。Kirnbauer(Proc Natl Acad Sci (1992) 89:12180-4)は、バキュロウイルス発現が最適であることを見出したのでこの系を用いる。N-末端ロイシンジッパーペプチドを有するVLPは極めて安定であり、したがって自己結合ペプチドを欠く同一のVLPよりも免疫原性が強い。
【0092】
実施例17:ノーウォークウイルスキャプシドポリペプチドから誘導した安定化VLP
ノーウォークウイルスはカルシウイルス科のウイルスメンバーである。ノーウォークウイルスキャプシドポリペプチドから誘導されるVLPはバキュロウイルス発現系を用いて産生される。そのようにして産生したとき、これらのVLPは集合してRNAを欠く粒子を形成する。それらは粒子形成には不要であるので、残基228−530(完全な外部Pドメイン)を配列から欠失させ、N-末端20残基をダイマー形成ロイシンジッパーと置換して、B及びCサブユニット間の相互作用を安定化させる。Pドメインを欠く生成粒子は、自己結合ペプチドを欠くがその他の点で同一であるVLPよりも安定である。
【0093】
実施例18:VP2ヒトB19パルボウイルス主要キャプシドから誘導された安定化VLP
ヒトB19パルボウイルスはパルボウイルス科のメンバーである。B19 VP2主要キャプシドポリペプチドから誘導した空のVLPは、昆虫細胞でバキュロウイルス発現ベクターからVP2をポリヘドロンプロモーターの制御下で発現させることによって産生される(Kajigawa et al. (1991) Proc Natl Acad Sci 88:4646-4650)。最初の25アミノ酸残基は、VLPの自己アッセンブリーを破壊することなくN-末端から欠失させえる(Kawase et al. (1995) Proc Natl Acad Sri 69:6567-6571)。VP2のN-末端の25残基がc-Mycロイシンジッパー自己結合ペプチド(YLSVQAEEQKLISEEDLLRKRREQLKHKLEQL(配列番号:300))で置き換えられた、N-末端欠失VP2の誘導体が作成される。単純な欠失のVP2ポリペプチド及び置換誘導体の両方が、バキュロウイルスベクターの発現に続いて昆虫細胞から抽出される。ロイシンジッパーを有するキメラVP2ポリペプチドを含むVLPは、単純な欠失のVP2ポリペプチドを含むVLPより安定である。
【0094】
実施例19:シンドビスウイルスキャプシドから誘導された安定化VLP
シンドビスウイルスはトガウイルス科のメンバーである。キャプシドポリペプチドのN-末端109アミノ酸残基は、ビリオンアッセンブリーとともに核酸結合に必要なキャプシド間ポリペプチド相互作用に関与する(Lin et al. (2000) J Virol 74:493-504)。核酸結合を停止させ、キメラポリペプチド参集VLPを安定化させるために、キャプシドポリペプチドのN-末端109アミノ酸をタンデムロイシンジッパー自己結合ペプチドで置換する。この構築物では、2つの自己結合ペプチドが挿入される。即ち、GCN4-p1ロイシンジッパーペプチドがN-末端にあり、その後に5つのグリシンの可撓性リンカーセグメント、その後にc-Mycロイシンジッパー自己結合ペプチドが続く。Frolov(J Virol (1997) 71:2819-2829)の方法にしたがってBHK細胞で発現させたとき、キャプシドポリペプチドVLPのN-末端109アミノ酸の置換として二重ロイシンジッパーを有するシンドビスキャプシドポリペプチドはアッセンブリー能力を有するが、一方、対応するN-末端欠失キャプシドポリペプチドはアッセンブリー能力をもたない。
【0095】
実施例20:ホオズキモットルウイルスキャプシドから誘導された安定化VLP
ホオズキモットル(Physalis Mottle)ウイルスはティモウイルス属のメンバーである。N-末端30アミノ酸残基の欠失を含むキャプシドポリペプチドを、Sastri(J M尾lBiol (1997) 272:541-52)の方法にしたがって大腸菌で発現させたとき、VLPは容易に回収できる。VLPは、大腸菌で発現されたキャプシドポリペプチド誘導体(N-末端30アミノ酸残基がGCN4-VLロイシンジッパーで置き換えられている)からもまた容易に入手される。大腸菌から抽出したとき、これらのVLPは、自己結合ペプチドを欠く粒子よりも中性pH値ではるかに安定である。
【0096】
実施例21:ロタウイルスキャプシドポリペプチドから誘導された安定化VLP
ロタウイルスはレオウイルス科のメンバーである。VP2のN-末端92アミノ酸残基の大きな置換を有するVLPを、ワクシニアベクターを用いて哺乳動物細胞で発現させることができる。そのようなVLPは核酸結合の低下を示す(Charpilliene (2001) J Biol Chem 276:29361-29367)。ロタウイルスVLPを安定化させるために、大きなN-末端融合の受け入れが可能であるので、COMPペンタマー化ドメインをVP2のN-末端に遺伝的に融合させる。抽出したとき、COMP自己結合ペプチドで置換された残基1−92を有するVP2を含むVLPは、残基1−92が欠失したVP2を含むVLPよりも安定である。
【0097】
実施例22:タバコモザイクウイルス(TMV)キャプシドから誘導した安定化VLP
タバコモザイクウイルス(TMV)はトバモウイルス属のタイプメンバーである。TMVゲノミックパッケージングシグナルを有するRNAが存在しないとき、溶液中のTMVキャプシドポリペプチドモノマーは自己集合して、二重の層をもつ中心が中空のディスクを形成する。各ディスクはほぼ17コピーのキャプシドポリペプチドを有する。アミノ酸残基89−114は内部ループを形成し、前記は、これらディスク及びビリオンの両方の中空コアで露出される。これらの残基の配列は、D TRNRIIEVENQ QSPTTAETLD ATRR(配列番号:301)を有する。
RNAを含まないディスクを安定化させるために、安定化エレメントを、それらがTMVのCPディスクの中空コア内で相互作用することができるように配置する。したがって、TMV株Lのキャプシドポリペプチド(CP)を操作して、54位及び69位のリジンをグリシンに変更し、更に100位(上記で下線を付した)のグルタミンをリジンに変更してリンカー部位として機能させる。このようにして、内部ループのCP内にはただ1つのリジンが存在する。
金属イオン補強自己結合ペプチド(例えばカルボキシル形の配列番号:1及び2のペプチド)を、前記操作したTMV CPの内部ループリジンリンカーと化学的にカップリングし、それにより生成される連結された操作TMV CPは金属イオン補強自己結合ペプチドを持つようになる。この誘導TMV CPは適切な金属イオンの存在下で自己集合して二重層をもつディスクを形成する。この安定化された二重ディスクは、分析用HPLC及び遠心によって測定したとき、野生型TMV CPから形成されたディスクよりも温度及びイオン強度の変化に対して安定である。
所望の場合は、異種エピトープを遺伝的に操作して、この操作CPのC-末端伸長部として存在させることができる。C-末端は結晶構造では秩序を持たず、集合したCPの外部表面に存在するので、エピトープの構造はTMV CP担体に影響されない。
完全なTMV LのCP配列は以下のとおりである:
1
msysitspsq fvflssvwad piellnvctn
31
slgnqfqtqq arttvqqqfs evwkpfpqst
61
vrfpgdvykv yrynavldpl itallgafdt
91
rnriievenq qspttaetld atrrvddatv
121
airsainnlv nelvrgtgly nqntfesmsg
151
Lvwtsapas 配列番号: 302
【0098】
実施例23:ササゲモザイクウイルスキャプシドから誘導された安定化VLP
ササゲモザイクウイルスはコモウイルス科のタイプメンバーである。ササゲモザイクウイルスのSキャプシドポリペプチドは、22位と23位の間への異種エピトープの挿入に対して寛容であることが示された(Porta et al. (1994) Virology 202:949-955)。本実施例では、ポリオウイルスのSabin株由来のエピトープ(配列SASTKNKDKL(配列番号:303))を有するVP1残基95−104に対応する)が前記部位に挿入される。この挿入は、pMT7-FMDV-IIのNheI/AatIIフラグメントを、前記エピトープ並びにSポリペプチドの残基18−22及び23−26(前記はそうでなければ失われていたものである)をコードする、アニールさせた相補的オリゴヌクレオチドで置き換えることによって実施される。CPMV S及びLの両方が昆虫細胞で発現されたとき、実質的にRNAを含まないVLPが得られる(Shanks (2000) J Gen Virol 81:3093-3097)。COMPペプチド(配列LKFRFRDIERSKRSVMVGHTATAA(配列番号:304)を有する)のSポリペプチドのN-末端への融合は、自己結合ペプチドを欠くキャプシドポリペプチドを含む粒子よりも安定なVLPを生じる。
【0099】
実施例24:酵母のTy1トランスポゾンキャプシドから誘導された安定化VLP
酵母Ty1トランスポゾンはシュードウイルス科のメンバーである。米国特許5,463,024号(Kingsman)の方法にしたがい、Ty1のTyAキャプシドポリペプチドを改変し、金属イオン補強トリマー形成自己結合ペプチド(配列GELAEQKLEQALQKLA(配列番号:305)を有する)を前記キャプシドポリペプチドのカルボキシ末端に遺伝的融合によって結合させる。TyAを形成する最少粒子(残基286から381に対応する)が用いられる。VLPは、Ty1を含まない酵母株、例えばサッカロミセス・セレビシエMD40-4c(urd2, trp1, leu2-3,leu2-112, his3-11, his3-15)で産生される。
Ty-VLPは以下のように精製される:酵母細胞を30℃で約8x106細胞/mLの密度まで選択的に増殖させる。続いて、細胞を低速遠心で採集し、氷冷水で1回洗浄し、TEN緩衝液(10mMトリス(pH7.4);2mMのEDTA;140mMのNaCl)中に1リットルの細胞当り1mLで再懸濁する。細胞を70%が破壊されるまで4℃でガラスビーズとともに渦流攪拌で破壊する(40メッシュ)。低速遠心でビーズを沈殿させ、続いて上清を採集し、マイクロ遠心で20分遠心してデブリーを除去する。続いて、100,000gで1時間、4℃で遠心し上清からTY-VLPを沈殿させ、TEN緩衝液に一晩(約18時間)再懸濁する。この再懸濁Ty-VLPをマイクロ遠心で15分、4℃で遠心し細胞屑を除去し、その後15−45%(w/v)のシュクロースグラディエント(10mMトリス(pH7.4);10nMのNaCl)に前記上清をロードし、76,300gにて3時間15℃で遠心する。遠心管の底から分画を採集し、分画の一部分を電気泳動したSDS-PAGEゲルのクーマシーブルー染色によってピーク分画を特定する。ピーク分画を100,000gにて1時間4℃で遠心してVLPを濃縮する。
適切な金属イオン(例えばRu(III))とともにインキュベートした後、自己結合ペプチドを有するVLPは、自己結合ペプチドを欠くVLPより安定である。
【0100】
実施例25:C型肝炎キャプシドから誘導された安定化VLP
C型肝炎ウイルスはフラビウイルス科のメンバーである。Baumbertら(J Virol (1998) 72:3827-3836)の方法にしたがって昆虫細胞で発現させたとき、キャプシドポリペプチドはVLPを形成する。このフラビウイルスキャプシドポリペプチドのC末端に、トリマー形成自己結合ロイシンジッパーペプチドGCN4-LL(配列RLKQLEDKLEELLSKLYHLENELARLKKLVGER(配列番号:306)を有する)を添加する。
前記キャプシドタンパク質+自己結合ペプチドを含むVLPの発現の後、前記キメラVLPは、未改変キャプシドポリペプチドを含むVLPよりもリン酸緩衝食塩水(0.9% NaCl、50mMのNaHPO4(pH7.3))中で安定であることが見出された。
【0101】
実施例26:ポリオウイルスのキャプシドポリペプチドから誘導された安定化VLP
ポリオウイルスはピコルナウイルス科のメンバーである。空キャプシドは、ほとんどのピコルナウイルスによる感染で天然の生成物である。天然の抗原性を有する空キャプシドは、キャプシド前駆体P1及びウイルスプロテアーゼを同時発現させ、キャプシド安定化化合物ピロダビア(pirodavir)の存在下で精製した場合のみS.セレビシエで形成される(Rombaut (1997) J Gen Virol 78:1829-1832)。P1(これは続いて3CDプロテアーゼによってin vivoで切断され、VP1から4になる)のC-末端に、金属イオン補強自己結合ペプチドが添加される。前記自己結合ペプチドの前に5つのグリシンが先行し可撓性リンカーとして機能する。得られたC-末端付加物は、配列GGGGGGLAQKLLEALQKALA(配列番号:307)を有する。酵母でキメラポリペプチドを発現させ、ピロダビアの存在下で酵母から精製した後、金属イオン補強自己結合ペプチドを有する空のポリオウイルスキャプシドが得られる。適切な金属イオン(例えばRu+3)とともにインキュベートした後、これらのキャプシドの安定性は、金属イオン無しの同じVLP又は自己結合ペプチドを欠くポリオウイルスキャプシドポリペプチドを含むVLPと比較して顕著に増加する。
【0102】
実施例27:麻疹ウイルスキャプシドから誘導された安定化VLP
麻疹ウイルスはパラミクソウイルス科のメンバーである。Warnes(Gene (1995) 160:173-178)の方法にしたがい、ヌクレオキャプシド(キャプシド)ポリペプチドをコードする麻疹ウイルス(MV)遺伝子を大腸菌で発現させる。tacプロモーターの制御下での完全なN遺伝子の発現によって正確なサイズ(60kDa)のタンパク質が生成される。前記は全細胞タンパク質の4%を占め、既知の麻疹陽性ヒト血清によって認識される。電子顕微鏡検査で調べたとき、パラミクソウイルスのヌクレオキャプシドに特徴的な“ハーリングボーン(Herringbone)”構造が砕けた細胞内で容易に確認される。金属イオン補強自己結合ペプチド配列(GGGGGGLAQKLLEALQKALA(配列番号:308))をコードする遺伝子(可撓性リンカーとして機能する5つのグリシンをコードする核酸が先行する)が、N遺伝子のC-末端にインフレームで連結される。大腸菌での前記キメラポリペプチドの発現及び大腸菌からの精製に続いて、金属イオン補強自己結合ペプチドを有する麻疹ウイルスキャプシドが得られる。適切な金属イオン(例えばRu+3)とともにインキュベートした後、これらのキャプシドの安定性は、金属イオン無しの同じVLP又は自己結合ペプチドを欠く麻疹ウイルスキャプシドポリペプチドを含むVLPと比較して顕著に増加する。
【0103】
実施例28:インフルエンザAウイルスキャプシドから誘導された安定化VLP
インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科のメンバーである。N-末端189アミノ酸がRNA結合に関与する。VLPは、バキュロウイルス発現系を用いて昆虫細胞から得られ、前記からN-末端のRNA結合ドメインが欠失したインフルエンザAヌクレオキャプシドポリペプチドが生成される。VLPを安定化させるために、N-末端RNA結合ドメインを以前に考察したGCN4-p1ロイシンジッパー自己結合ペプチドで置き換える。自己結合ペプチドを有するVLPを発現させたとき、


キメラキャプシドタンパク質構築物で使用される例示的エピトープ及びリンカー
エピトープ 参考文献

FMDVのO株、サブタイプ1の残基141-160 米国特許5,874,087号
VPNLRGDLQVLAQKVARTLP (配列番号:309)

米国特許6171591号より
B細胞エピトープ
水疱性口内炎ウイルス (VSV) Kreis (1986) EMBO J. 5:931-941
G糖タンパク質 Kolodziej (1991) Meth. Enz. 194:508-519
ウイルス株:ts-045 VSVインジアナ血清型
YTDIEMNRLGK (配列番号:310)

連続性B及びT細胞エピトープ
ウシ呼吸器系合胞体形成ウイルス(BRSV)
Walravens et. al. (1990) J. Gen Virol. 71:3009-3014
Fタンパク質 Bourgeois et al. (1991) J. Gen. Virol. 72:1051-1058
ウイルス株:RB94
DKELLPKVNNHDCQISNIATVIEFQQ (配列番号:311)

連続性B及びT細胞エピトープ
ヒト呼吸器系合胞体形成ウイルス(RSV) Fタンパク質
ウイルス株:RSS-2 (サブタイプA)
DKQLLPIVNKQSCSISNIETVIEFQQ (配列番号:312)

連続性B及びT細胞エピトープ
ヒト呼吸器系合胞体形成ウイルス(RSV) Fタンパク質
ウイルス株:18537 (サブタイプB)
DKRLLPIVNQQSCRISNIETVIEFQQ (配列番号:313)


T細胞エピトープ
ヒト呼吸器系合胞体形成ウイルス(RSV) &
ウシ呼吸器系合胞体形成ウイルス(BRSV)
Fタンパク質
ウイルス株:RSS-2 (サブタイプA) (RSV),
18537 (サブタイプB) (RSV) &
RSS-2 (サブタイプA) (BRSV)
FPSDEF [100%配列保存] (配列番号:314)

B細胞エピトープ
B型肝炎ウイルス (HBV) Neurath et al. (1986) Vaccine 4:35
preS2 残基132-145 Itoh et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. 83:9174.
QDPRVRGLYFPAGG (配列番号:315)
*下記エピトープを用いて二重キメラを作成

オーバーラップTh及びCTLエピトープ
B型肝炎ウイルス(HBV) Francoet al. (1997) J. Immunol. 159:2001-2008.

HBsAg 残基178-204 Greenstein et al. (1992) J. Immunol. 148:3970.
LQAGFFLLTRILTIPQSLDSWWTSLNF (配列番号:316)

米国特許6,174,528号(Cooper et al.)より
ストレプトコッカスA群エピトープ
ストレプトコッカスMタンパク質p145アミノ酸337-356
LRRDLDASREAKKQVEKALE (配列番号:317)

米国特許6,060,064号より
HIV-1単離株由来V3ループ

BH10:SNCTRPNNNTRKSIRIQRGPGRAFVTIGKIGNMRQAHCNISG(配列番号:318)
HXBII:NCTRPNNNTRKRIRIQRGPGRAFVTIGKIGNMRQAHCNISG (配列番号:319)
MN:SNCTRPNYNKRKRIHIGPGRAFYTTKNIIGTIRQAHCNISG (配列番号:320)
MAL:SNCTRPGNNTRRGIHFGPGQALYTTGIVDIRRAYCTING (配列番号:321)
RF:SNCTRPNNNTRKSITKGPGRVIYATGQIIGDIRAHCNLSGS (配列番号:322)
ELI:STCARPYQNTRQRTPIGLGQSLYTTRSRSIIGQAHCNISG (配列番号:323)
MAL(var):SNCTRPGNNTRRGIHFGPGQALYTTGIVDEIRRAYCNISG (配列番号:324)
RF(var):SNCTRPNNTRKSITKQRGPGRVLYATGQIIGDIRKAHCNSIG(配列番号:325)
ELI(var):STCARPYQNTRQRTPIGLGQSLYTTRGRTKIIGQAHCNISG(配列番号:326)

米国特許6,110,466号より

HIV-1 gp41のアミノ酸735-752 of
Dagleish, A.G et al., (1988) Virology 165:209-215;
Chahn, T.C. et al. (1986) EMBO J. 5:3065-3071.
DRPEGIEEEGGERDRDRSD (配列番号:327)

ヒトライノウイルス14のVP1のアミノ酸85-99
米国特許6,110,466号(Lomonossoff et al.)
PATGIDNHREAKLD (配列番号:328)

T細胞エピトープ
プラスモジウム・ファルシパルムLSA-1 T1エピトープ
Heal et al., (2000) Vaccine 18:251-258
LTMSNVKNVSQTNFKSLLRNLGVS (配列番号:329)

M2 btw G 14及びcpのT 15 への挿入
Mastico et al., 1993 Intervirology 74:541-548
HA9 YPYDVPDYA (配列番号:330)
Wilson et al. (1984) Cell 37:767-778
IgE FVFFGSKTK (配列番号:331)
Stanworth et al., (1990) Lancet 336:1279-1281
Mal (表面Ag) NANPNANPNANP (配列番号:332)
Greenwood et al., (1991) J. Mol. Biol. 220:821-827
HPV L1 PNDTFIVSTNPNTVTSSTPI (配列番号:333)
Dillner et al., (1990) Int. J. Cancer 45:529-535
HPV L2 KGSPCTNVAVNPGDCPPLDL (配列番号:334)
Javaherian et al., (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86:6768-6772
HIV gp120 NNTRKSIRIQRGPGRAFVTIGKIG (配列番号:335)

B及びT細胞エピトープ
シュードモナス・エルギノーザPAK pilin amino acods 82-104
Smartet al., (1988) Infec. Immun. 56:18-23
GTIALKPDPADGTADITLTFTM (配列番号:336)

他の挿入物
ビオチン結合ペプチド(米国特許6,380,364号より)
GGGCSWAPPFKASC (配列番号:337)
GGGRGEFTGTYITAVT (配列番号:338)
【0104】
本明細書に引用した特許及び論文の各々は参照により本明細書に含まれる。冠詞“a”及び“an”の使用は1つ以上を含むことを意図する。
前述の記載及び実施例は例示であり、限定と解してはならない。なお他の変更が本発明の範囲内で可能であり、当業者にそれらを容易に提示しえる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1A及び1Bとして2枚のパネルで示される図1は、動物のHBcタンパク質について6種のウイルスに由来する公表された6つの配列のアラインメントを提供する。第一(配列番号:3)のヒトウイルス配列はaywサブタイプであり、Galibertら(Nature (1983) 281:646-650)の文献で発表され;adwサブタイプの第二のヒトウイルス配列(配列番号:4)はOnoら(Nucleic Acids Res (1983) 11(6):1747-1757)によって発表され;第三のヒトウイルス配列(配列番号:5)はadw2サブタイプであり、Valenzuelaら(Animal Virus Genetics, Field et al. eds., Academic Press, New York (1980) pages 57-70)によって発表され;第四のヒトウイルス配列(配列番号:6)はadywサブタイプであり、前記はPasekら(Nature (1979) 282:575-579)によって発表され;第五の配列(配列番号:7)はウッドチャックのウイルスの配列であり、前記はGalibertら(J Virol, (1982) 41:51-65)によって発表され;更に六番目の哺乳動物の配列(配列番号:8)は地上性リスの配列であり、前記はSeegerら(J Virol (1984) 51:367-375)によって発表された。
【図2】図2は、インフルエンザA M2の外部ドメイン(2から24位)の1つのヴァージョンをコードするDNAを示すが、この場合、システインはセリンに変異したものを用い(CV-1895, V7M2e(2C>2S)、配列番号:9)、操作して短縮した最初の149HBc残基を含むHBc遺伝子(HBc149)のC-末端のEcoRI及びHindIII部位でクローニングされた。
【図3】図3は、CV-1048と称される粒子についての分析用サイズ排除クロマトグラフィーの溶出プロフィルを示す。集合粒子は約8mLで溶出し、一方、より低次の構造物はその後のピークで溶出する。サンプルはスーパーロース(Superrose(商標))6HR(Pharmacia)で20mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)及び0.02%アジ化ナトリウム中で泳動させた。280nmの吸収は縦座標に、ミリリットルによる体積は横座標に示されている。
【図4】図4は、図3に示したように、CV-1895粒子についての分析用サイズ排除クロマトグラフィーの溶出プロフィルを示す。ここでは、安定化粒子は約7分で溶出し、より低次の構造物は実質的に観察されなかった。
【図5】米国特許6,231,864号を応用した図5の反応模式図(模式図1)は、(I)スルホ-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)を用いてハプテンをウイルス様粒子(VLP)に懸垂結合させるために活性化担体を形成し、続いて(II)スルホヒドリル-末端(システイン-末端)をもつハプテンを前記活性化担体に結合させてコンジュゲート粒子を形成する2つの連続反応を示している。VLPは、(図を簡明にするために)ただ1つの懸垂アミノ基を有する四角として示され、一方、スルホヒドリル-末端をもつハプテンはSH基で終わる線として表されている。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラポリペプチドであって、以下の要素、
a)水溶液中で自己集合して、少なくとも約9つのサブユニットを有する組織化された反復性超分子構造物を形成する第一のポリペプチド、及び
b)約15から約80のアミノ酸残基の長さを有するペプチドを含む第二のペプチドであって、前記ペプチドが、
i)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは自己集合して、pH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成し、
ii)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するときは自己集合するか、又は
iii)前記ペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインであり、ただし、前記第二の部分は、HBcポリペプチドである第一の部分のN-末端で結合した、0、1又は2個のシステインを含む細胞外M2ドメイン以外のものである第二のペプチド、
を含み、
前記第一及び前記第二の部分は共有結合によって結合され、更に前記キメラポリペプチドが、前記第一の部分のみで形成された構造物よりも安定である、組織化された反復性の超分子構造物を形成することを特徴とするキメラポリペプチド。
【請求項2】
前記第一及び前記第二の部分が、ペプチド結合によって結合されている、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記第一の部分が、リンカー残基を含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
エピトープが、前記リンカー残基に取り付けられている、請求項3に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記第一の部分が、異種エピトープを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
宿主動物を免疫したとき、免疫応答を誘引する、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記第一の部分が、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体のE2ポリペプチドを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記第一の部分が、ルマジンシンターゼポリペプチドを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記第一の部分が、ウイルスキャプシドポリペプチド又はウイルスキャプシドポリペプチドの類似体である、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記第一の部分が、動物感染性ウイルス、植物感染性ウイルス、細菌感染性ウイルス、又は菌類感染性ウイルスのキャプシドポリペプチド若しくはウイルスキャプシドポリペプチドの類似体を含む、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記第一の部分が、ポリペプチドのN-末端部分を含み、前記第二の部分が、前記ポリペプチドのC-末端部分を含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記第一の部分が、B型肝炎ウイルスのキャプシドポリペプチド含む、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記組織化された反復性超分子構造物が、ウイルス様粒子(VLP)である、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記第一の部分が、ピコルナウイルス科、カリシウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、パルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、ノダウイルス科、テトラウイルス科、トムブスウイルス科、コモウイルス科、ジェミニウイルス科、ブロモウイルス科、ポティウイルス科、イノウイルス科、レビウイルス科、ミクロウイルス科、シュードウイルス科、トティウイルス科、メタウイルス科、及びティモウイルス科、並びにトバモウイルス、ティモウイルス、ポテックスウイルス及びソベモウイルスのウイルス属から成る群から選択されるウイルスのキャプシド由来のポリペプチド含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
前記第一の部分が、正二十面体の酵素複合体の自己集合ポリペプチドサブユニットを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
長さが約570アミノ酸残基までの組換えキメラB型肝炎コア(HBc)タンパク質分子であって、前記分子が、
(a)HBcイムノドミナントループに存在するペプチド結合異種エピトープ又は結合された異種エピトープのための異種リンカー残基を含む、HBc分子のN-末端150アミノ酸残基の少なくとも約135の配列、又はHBc分子の N-末端の150アミノ酸残基の少なくとも約135の配列を含み、
(b)長さが約15から約35残基のアミノ酸残基のC-末端自己結合配列を含み、前記自己結合配列は、N-アセチル化ペプチドとして存在するときは、pH7.0及び約10ミリモルの濃度のPBS水溶液中で自己集合パラレルマルチマーを形成し、
(c)HBc 135位からHBc C-末端までの少なくとも5アミノ酸残基を含み、
前記キメラ分子が、(i)10%を超えない保存的に置換されたアミノ酸残基をHBc配列内に含み、更に前記粒子は、前記C-末端の自己結合配列を欠くがそれ以外は同一のHBcキメラから形成された粒子よりも安定であることを特徴とする、前記組換えキメラB型肝炎コアタンパク質分子。
【請求項17】
前記ペプチド結合異種エピトープ又は結合されたエピトープのための異種リンカーが、異種エピトープである、請求項16に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項18】
前記異種エピトープが、B細胞エピトープである、請求項17に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項19】
HBcのアミノ酸残基1−4の1つとペプチド結合した第二の異種エピトープを含む、請求項18に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項20】
前記B細胞エピトープが、アミノ酸残基76から85の間のHBc配列の1つの位置でペプチド結合し、更に76位から85位までのHBc配列の少なくとも5残基が存在する、請求項18に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項21】
アミノ酸残基76から85のHBc配列は存在するが、前記B細胞エピトープによって中断される、請求項20に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項22】
更にペプチド結合した異種T細胞エピトープを含む、請求項17に記載の組換えHBcキメラタンパク質分子。
【請求項23】
第一のポリペプチド部分に第二の自己結合ペプチド部分を取り付けることを含む、超分子構造物を安定化させる方法であって、
前記第一のポリペプチド部分が自己集合して、少なくとも約9つのサブユニットを有する組織化された反復性超分子構造物を形成し、更に前記第二のペプチド部分が、約15から約80のアミノ酸残基の長さを有するペプチドを含み、前記第二のペプチドが、
a)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは自己集合して、pH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成し、
b)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するときは自己集合するか、又は
c)前記ペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインであることを特徴とする方法。
【請求項24】
ウイルス様粒子を安定化させる方法であって、以下の工程、
a)第一のポリペプチド部分に第二の自己結合ペプチド部分を共有結合により取り付けることによってキメラポリペプチドを調製する工程であって、
前記第一のポリペプチド部分が、ウイルスキャプシドポリペプチドであるか、又はウイルスキャプシドポリペプチドに由来し、前記第二のペプチド部分が、約15から約80のアミノ酸残基の長さを有するペプチドを含み、前記第二のペプチドが、
i)N-アセチル化ペプチドとして存在するときは自己集合して、pH7.0及び約10ミリモル/リットルの濃度のPBS水溶液中でパラレルマルチマーを形成し、
ii)予め決定した多価金属イオンの5倍モル過剰の存在下においては、少なくとも10マイクロモル/リットルの濃度で溶液中に存在するときは自己集合するか、又は
iii)前記ペプチドは、インフルエンザA M2ポリペプチドの自己集合性細胞外ドメインであり、ただし前記第二の部分が、HBcポリペプチドである第一の部分とN-末端で結合した、0、1又は2個のシステインを含む細胞外M2ドメイン以外である工程、及び
b)ウイルス様粒子が集合して、少なくとも約9コピーの前記キメラポリペプチドを有するウイルス様粒子を形成するために十分な時間、複数の前記キメラポリペプチドを水性組成物中で維持する工程、及び
ii)前記ウイルス様粒子を回収する工程であって、前記安定化されたウイルス様粒子が、前記取り付けられた自己結合ペプチドを欠く、ウイルスキャプシドポリペプチドを含むウイルス様粒子よりも安定である工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1に記載のキメラポリペプチドから形成される超分子構造物。
【請求項26】
請求項16に記載の組換えキメラB型肝炎コアタンパク質分子から形成される粒子。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−516641(P2009−516641A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529175(P2008−529175)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033595
【国際公開番号】WO2007/027640
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(506343391)セルデックス セラピューティックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】