説明

安定組成物

【課題】安定組成物の提供。
【解決手段】Bステージオルガノポリシリカ樹脂を含有する安定オルガノポリシリカ組成物、斯かるBステージオルガノポリシリカ樹脂組成物を安定化させる方法及び斯かる安定組成物を使用して電子デバイスを製造する方法が、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にBステージ誘電体組成物の安定化の分野に関する。特に、本発明は、オルガノポリシリカ物質組成物の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシリカ物質は、有機珪素含有コーティングの前駆体物質として有用であることが当分野でよく知られている。斯かるコーティングには、耐スクラッチコーティング、絶縁体(誘電体)、エッチング停止層、ハードマスク層、耐反射コーティング、遮音材、サーマルブレークス(thermal breaks)、断熱材及び光学コーティング等としての適用性があることが見出されている。最近では、オルガノポリシリカ物質は、絶縁材として関心の対象であった。
【0003】
米国特許第4,349,609号(タケダ等)は、特に集積回路の製造における誘電体としての使用に好適であるオルガノポリシリカ組成物を開示する。オルガノポリシリカ物質のフィルムにボイドを組み入れることにより斯かる材料の誘電率を低下させるため、多くの努力がなされてきた。例えば、多孔性オルガノポリシリカ誘電層を含有する集積回路装置製造用のプロセスを開示する米国特許第5,895,263号(カーター等)及び米国特許第6,271,273B1号(ヨウ等)がある。
【0004】
オルガノポリシリカ物質は、典型的には溶液中でBステージ形態で基体に適用される。斯かるBステージ材には、モノマー、オリゴマー又はポリマーさえも含まれ、縮合などにより更に硬化されて、硬化フィルム又はコーティング等のより高分子量物質を形成する。有機溶媒は、典型的にはBステージオルガノポリシリカ物質の斯かるコーティング溶液を調製するのに使用される。
【0005】
Bステージオルガノポリシリカ物質の調製は、よく知られている。典型的には、アルキルトリアルコキシシランは、酸触媒の存在下で水と反応してシロキサン部分縮合生成物を形成する。例えば、米国特許第3,389,114号(ブルジンスキー等)は、触媒としての700ppmまでの塩酸の存在下でメチルトリエトキシシランと水とを反応させることによるメチルシルセスキオキサンの調製を開示している。ブルジンスキーは、また、その後の硬化を伴うより硬質のポリシロキサンは、700ppmを超える蟻酸を使用して達成され得ることを見出している、米国特許第4,223,121号が参照される。多様な他の有機酸はアルキルもしくはフェニルのトリアルコキシまたはトリハロシランの縮合を触媒することが知られている。斯かる酸は、典型的には、その加水分解速度を制御するために反応混合物のpHを緩衝させるのに使用される。これらの酸としては、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、蓚酸、クロロ酢酸、グルタル酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、ジメチルマロン及びパラ‐トルエンスルホン酸が挙げられる。例えば、米国特許第4,324,712号(ボーン)及び国際特許出願第WO01/41541号(ガスワース等)が参照される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,349,609号明細書
【特許文献2】米国特許第5,895,263号明細書
【特許文献3】米国特許第6,271,273号明細書
【特許文献4】米国特許第3,389,114号明細書
【特許文献5】米国特許第4,223,121号明細書
【特許文献6】米国特許第4,324,712号明細書
【特許文献7】国際公開第01/41541号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,993,532号明細書
【特許文献9】米国特許第6,235,101号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、自己縮合する傾向があり、それは樹脂の分子量を増加し、それにより樹脂の他の特性に影響を与える。最も顕著には、コーティング溶液に変化が起き、粘度、コーティング厚さ及び均一性に深刻な影響を与える。また、分子量の増加は、ゲル粒子の形成を結果として生じ、コーティング欠陥をもたらす。これは、特にコーティングの光学的品質が重要である用途にとっては問題である。例えば、光学導波管においては、ゲル粒子は、光の散乱を引き起こす領域を装置中にもたらす。眼鏡レンズ等の耐スクラッチコーティングにおいては、ゲル粒子は好ましくない収差を引き起こし、使用者の視覚を妨げる。経時的なオルガノポリシリカ樹脂の分子量増加及びゲル粒子の形成により、オルガノポリシリカ樹脂を含有する多くの生成物に関し短い貯蔵期間がもたらされる。
【0008】
従来では、Bステージオルガノポリシリカ樹脂の溶液は斯かる自己縮合を減少し、且つそれらの貯蔵期間を増加するために冷却して貯蔵される。その溶液は、冷凍された輸送及び/又は容器を使用して出荷されなければならない。斯かる冷却貯蔵の必要性は、これらの物質を取り扱う費用を多大に増加させる。従って、Bステージオルガノポリシラン樹脂の貯蔵期間改良の必要性が存在する。
【0009】
米国特許第5,993,532号(ブロデリック等)は、100重量部の溶媒、0.1から100重量部のシルセスキオキサン水素及び0.002から4重量部の酸を含有する安定なシルセスキオキサン水素組成物を開示する。多様な有機及び無機酸が開示されている。この特許には、オルガノポリシリカ樹脂の記載は存在しない。
【0010】
米国特許第6,235,101B1号(クロサワ等)は、式R(Si(OR4−nの化合物の水解物及び/又は部分縮合物[ここで、R及びRは、(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリール及びnは1又は2である];金属キレート化合物;110℃から180℃の沸点を有する有機溶媒;及びβ‐ジケトンを含む組成物を開示する。これらの組成物は、また、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランのような四官能性アルコキシシランを含んでも良い。これら四官能性アルコキシシランは、その組成物にある程度の貯蔵安定性を提供することが開示されている。また、ある種のカルボン酸がこれらの組成物に添加され得ることも開示されている。しかしながら、斯かるカルボン酸の機能又は斯かる酸の量、又は斯かる酸のPKa値のいずれをも開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、ある種の有機酸は、自己縮合反応及びゲル形成に対してBステージオルガノポリシリカ樹脂を安定化させることが見出された。斯かる有機酸は、少量でオルガノポリシリカ樹脂を安定化させる。
【0012】
一態様において、本発明は、Bステージオルガノポリシリカ樹脂及び2以上の炭素を有し且つ約1から約4のpKaを有する有機酸を含む安定な組成物であって、実質的に反応アルコールを含まない組成物を提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、Bステージオルガノポリシリカ樹脂、ポロゲン及び2以上の炭素を有し且つ約1から約4のpKaを有する有機酸を含む安定な組成物であって実質的に反応アルコールを含まない組成物を提供する。
【0014】
更に他の態様において、本発明は、Bステージオルガノポリシリカ樹脂及びキレート剤として機能することのできる有機酸含む安定な組成物であって実質的に反応アルコールを含まない組成物を提供する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、a)実質的に反応アルコールを含まないBステージオルガノポリシリカ樹脂を提供し;b)ゲル化を引き起こすのに充分な量より少ない量の、少なくとも2つの炭素及び約1から約4のpKaを有する有機酸を添加する工程を含む、Bステージオルガノポリシリカ樹脂を安定化させる方法を提供する。
【0016】
いっそう更なる態様において、本発明は、a)Bステージオルガノポリシリカ樹脂、ポロゲン及び2以上の炭素を有し且つ約1から約4のpKaを有する有機酸を含む安定な組成物であって実質的に反応に関与するアルコールを含まない組成物を電子デバイス基体上に堆積させ;b)Bステージオルガノポリシリカ樹脂を硬化してオルガノポリシリカ誘電体を形成し;及びc)ポロゲンを除去して基体上に堆積した多孔性オルガノポリシリカ物質を提供する工程を含む、多孔性オルガノポリシリカ誘電体を形成することを含む電子デバイスを製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の全体に亘り、次の略語は、明らかに特段の指示がない限り、次の意味を有する。℃=摂氏度;μm=ミクロン=マイクロメートル;ppm=百万当たりの部、UV=紫外線;rpm=1分当たりの回転数;nm=ナノメートル;g=グラム;wt%=重量パーセント;L=リットル;Cst=センチストークス;及びmL=ミリリットル。
【0018】
用語「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリル双方を含み、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレート双方を含む。同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミド双方を意味する。「アルキル」は、直鎖、分岐及び環状アルキル基を含む。「アリール」は、任意の芳香族基を包含し、好ましくは6から20炭素原子を含有するものを包含する。
【0019】
用語「ポロゲン」は細孔形成物質、すなわちオルガノポリシリカ物質中に分散されたポリマー物質又は粒子であり、引き続き除去されてオルガノポリシリカ物質中に細孔又はボイド又は自由体積を生じさせるものである。従って、用語「除去可能ポロゲン」、「除去可能ポリマー」及び「除去可能粒子」とは、本明細書全体に亘り互換的に使用される。用語「細孔」及び「ボイド」は、本明細書全体に亘り互換的に使用される。「架橋剤」及び「架橋性薬剤」は、本明細書全体に亘り互換的に使用される。「ポリマー」は、ポリマー及びオリゴマーを意味する。用語「ポリマー」は、また、ホモポリマー及びコポリマーを含む。用語「オリゴマー」及び「オリゴマー性」は、ダイマー、トリマー及びテトラマー等を意味する。「モノマー」は、重合され得るエチレン性又はアセチレン性不飽和化合物を意味する。斯かるモノマーは、1以上の二重又は三重結合を含有することができる。
【0020】
用語「Bステージ」は、未硬化オルガノポリシリカ樹脂を意味する。「未硬化」とは、縮合などにより重合され、硬化されて、コーティング又はフィルムのような高分子量物質を形成することができる任意のオルガノポリシリカ樹脂を意味する。斯かるBステージ物質は、モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物であり得る。Bステージ物質は、更にポリマー物質と、モノマー、オリゴマー又はモノマーとオリゴマーとの混合物との混合物を含むよう意図されている。
【0021】
用語「水解物」は、シランの加水分解により形成されるオリゴマー又はポリマー物質を意味し、用語「共水解物(cohydrolyzate)」を含む。「共水解物」は2以上のシランの加水分解により調製されるオリゴマー又はポリマー物質を意味する。「部分縮合物」は、シランの部分縮合により調製されたオリゴマー又はポリマー物質を意味し、用語「部分共縮合物(partial cocondensate)」を含む。同様に、用語「部分共縮合物」は2以上のシランの部分縮合により調製されるオリゴマー又はポリマー物質を意味する。
【0022】
「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。同様に、「ハロゲン化」とは、フッ素化、塩素化、臭素化及びヨウ素化を意味する。断りのない限り、全ての量は重量部であり、全ての比率は重量である。全ての数的範囲は、その両端の数字を含み、組み合わせ可能である。
【0023】
本発明は、1以上のBステージオルガノポリシリカ樹脂及び2以上の炭素を有し且つ約1から約4のpKaを有する有機酸を含む安定な組成物であって実質的に反応アルコールを含まない組成物を提供する。Bステージオルガノポリシリカ樹脂(又はオルガノシロキサン)は、珪素、炭素、酸素及び水素原子を含む化合物を意味する。好適なオルガノポリシリカ樹脂は、式(I)又は(II)の1以上のシラン水解物又は部分縮合物である:
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
ここで、Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールであり;Yは加水分解性基であり;aは0から2の整数であり;R、R、R及びRは独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、‐(CHh1‐E‐(CHh2‐、‐(CH‐Z、アリーレン、置換アリーレン及びアリレンエーテルから選択され;Eは酸素、NR及びZから選択され;Zはアリール及び置換アリールから選択され;Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;b及びdはそれぞれ0から2の整数であり;cは0から6の整数であり;h、h1、h2及びkは独立して1から6の整数である;但し、R,R,R及びRの少なくとも一つは水素ではない。置換「アリール」及び「置換アリーレン」は、1以上の水素がシアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、(C〜C)アルキル及び(C〜C)アルコキシ等の他の置換基で置き換えられたアリール又はアリーレン基を意味する。
【0027】
Rは、好ましくは(C〜C)アルキル又はフェニルであり、より好ましくはメチル、エチル、イソブチル、tert‐ブチル又はフェニルである。好ましくは、aは1である。Yについての好適な加水分解性基としては、ハロ、(C〜C)アルコキシ及びアシルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい加水分解性基は、クロロ及び(C〜C)アルコキシである。式(I)の好ましいオルガノシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソ‐プロピルトリエトキシシラン、イソ‐プロピルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソ‐ブチルトリエトキシシラン、イソ‐ブチルトリメトキシシラン、tert‐ブチルトリエトキシシラン、tert‐ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン及びシクロヘキシルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
式(II)のオルガノシランは、好ましくは、R及びRが独立して(C〜C)又はフェニルである化合物である。好ましくは、R及びRは、メチル、エチル、tert‐ブチル、イソ‐ブチル及びフェニルである。b及びdは、また、独立して1又は2であることが好ましい。好ましくは、Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、アリーレン、アリーレンエーテル及び‐(CHh1‐E‐(CHh2‐である。式(II)の好適な化合物としては、Rがメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ノルボルニネン、シクロヘキシレン、フェニレン、フェニレンエーテル、ナフチレン及び‐CH‐C‐CH‐であるものが挙げられるが、これらに限定されない。cは1から4であることが、更に好ましい。
【0029】
式(II)の好適なオルガノシランとしては、ビス(ヘキサメトキシシリル)メタン、ビス(ヘキサエトキシシリル)メタン、ビス(ヘキサフェノキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(ヘキサメトキシシリル)エタン、ビス(ヘキサエトキシシリル)エタン、ビス(ヘキサフェノキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)エタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)エタン、ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)エタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3‐ビス(ヘキサメトキシシリル)プロパン、1,3‐ビス(ヘキサエトキシシリル)プロパン、1,3‐ビス(ヘキサフェノキシシリル)プロパン、1,3‐ビス(ジメトキシメチルシリル)プロパン、1,3‐ビス(ジエトキシメチルシリル)プロパン、1,3‐ビス(ジメトキシフェニルシリル)プロパン、1,3‐ビス(ジエトキシフェニルシリル)プロパン、1,3‐ビス(メトキシジメチルシリル)プロパン、1,3‐ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3‐ビス(メトキシジフェニルシリル)プロパン及び1,3‐ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの内で好ましいのは、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,2,2‐テトラメトキシ‐1,2‐ジメチルジシラン、1,1,2,2‐テトラエトキシ‐1,2‐ジメチルジシラン、1,1,2,2‐テトラメトキシ‐1,2‐ジフェニルジシラン、1,1,2,2‐テトラエトキシ‐1,2‐ジフェニルジシラン、1,2‐ジメトキシ‐1,1,2,2‐テトラメチルジシラン、1,2‐ジエトキシ‐1,1,2,2‐テトラメチルジシラン、1,2‐ジメトキシ‐1,1,2,2‐テトラフェニルジシラン、1,2‐ジエトキシ‐1,1,2,2‐テトラフェニルジシラン、ビス(ヘキサメトキシシリル)メタン、ビス(ヘキサエトキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン及びビス(エトキシジフェニルシリル)メタンである。
【0030】
Bステージオルガノポリシリカ樹脂が式(II)のオルガノシランの水解物又は部分縮合物を含むとき、cは0でもよい、但し、RおよびRの少なくとも一つは水素ではない。代替的な態様において、Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(I)及び(II)双方のオルガノシランの共水解物又は部分共縮合物を含むことができる。斯かる共水解物又は部分共縮合物は、式(II)においてcは0であり得るが、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではないことを条件とする。cが0である場合の式(II)の好適なシランとしては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2‐ペンタメトキシ‐2‐メチルジシラン、1,1,1,2,2‐ペンタエトキシ‐2‐メチルジシラン、1,1,1,2,2‐ペンタメトキシ‐2‐フェニルジシラン、1,1,1,2,2‐ペンタエトキシ‐2‐フェニルジシラン、1,1,2,2‐テトラメトキシ‐1,2‐ジメチルジシラン、1,1,2,2‐テトラエトキシ‐1,2‐ジメチルジシラン、1,1,2,2‐テトラメトキシ‐1,2‐ジフェニルジシラン、1,1,2,2‐テトラエトキシ‐1,2‐ジフェニルジシラン、1,1,2‐トリメトキシ‐1,2,2‐トリメチルジシラン、1,1,2‐トリエトキシ‐1,2,2‐トリメチルジシラン、1,1,2‐トリメトキシ‐1,2,2‐トリフェニルジシラン、1,1,2‐トリエトキシ‐1,2,2‐トリフェニルジシラン、1,2‐ジメトキシ‐1,1,2,2‐テトラメチルジシラン、1,2‐ジエトキシ‐1,1,2,2‐テトラメチルジシラン、1,2‐ジメトキシ‐1,1,2,2‐テトラフェニルジシラン及び1,2‐ジエトキシ‐1,1,2,2‐テトラフェニルジシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
如何なる硬化工程の前にも、本発明のBステージオルガノポリシリカ樹脂は、1以上のヒドロキシ又はアルコキシ末端キャッピング又は側鎖官能基を含むことができる。斯かる末端キャッピング又は側鎖官能基は当業者に公知である。
【0032】
一態様において、特に好適なBステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(I)の化合物の水解物又は部分縮合物である。斯かるBステージオルガノポリシリカ樹脂は式(III)を有する:
【0033】
【化3】

【0034】
ここで、R、R、R及びR10は、独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;e,g及びrは、独立して0から1の数であり;fは0.2から1の数であり;nは約3から約10,000の整数であり;但し、e+f+g+r=1であり;但し、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではない。上記式(III)において、e、f、g及びrは各成分のモル比を表す。斯かるモル比は、0及び約1の間で変わり得る。eは0から約0.8であるのが好ましい。gは0から約0.8であるのが、また好ましい。更にrは0から約0.8であるのが好ましい。上記式において、nはBステージ物質における繰り返し単位の数を意味する。好ましくは、nは約3から約1000の整数である。
【0035】
好適なオルガノポリシリカ樹脂としては、シルセスキオキサン(silsesquioxanes)、部分的に縮合したハロシラン又は約500から約20,000の数平均分子量を有するテトラエトキシシランの制御された加水分解により部分的に縮合されたようなアルコキシシラン、組成RSiO、OSiRSiO、RSiO及びOSiRSiOを有する有機的に変性されたケイ酸塩[ここで、Rは有機置換基である]、及びモノマー単位としてSi(OR)を有する部分縮合オルトケイ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。シルセスキオキサンは、種類RSiO1.5[ここでRは有機置換基である]のタイプの重合体ケイ酸塩物質である。好適な、シルセスキオキサンは、メチルシルセスキオキサン、エチルシルセスキオキサン、プロピルシルセスキオキサン及びブチルシルセスキオキサン等のアルキルシルセスキオキサン;フェニルシルセスキオキサン及びトリルシルセスキオキサン等のアリールシルセスキオキサン;メチルシルセスキオキサンとフェニルシルセスキオキサンの混合物のようなアルキル/アリールシルセスキオキサンの混合物及びメチルシルセスキオキサンとエチルシルセスキオキサンのようなアルキルシルセスキオキサンの混合物である。Bステージシルセスキオキサン物質には、シルセスキオキサンのホモポリマー、シルセスキオキサンのコポリマー又はこれらの混合物が含まれる。斯かる物質は、一般に商業的に入手可能であるか又は公知の方法で調製され得る。
【0036】
Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、シルセスキオキサン及びより好ましくはメチルシルセスキオキサン、エチルシルセスキオキサン、プロピルシルセスキオキサン、イソ‐ブチルシルセスキオキサン、tert‐ブチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサン、トリルシルセスキオキサン、ベンジルシルセスキオキサン又はこれらの混合物を含むのが好ましい。メチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサン及びこれらの混合物が特に好ましい。他の有用なシルセスキオキサン混合物には、ヒドリドシルセスキオキサンとアルキル、アリール、又はアルキル/アリールシルセスキオキサンとの混合物が含まれる。典型的には、本発明に有用なシルセスキオキサンは、一般に約3から約10,000の繰り返し単位を有するオリゴマー物質として使用される。
【0037】
特に好適なオルガノポリシリカBステージ樹脂は、式(I)及び/又は(II)の1以上のオルガノシランとSiY[Yは上記で定義された任意の加水分解性基である]の式を有する1以上の四官能性シランとの共水解物又は部分縮合物である。好適な加水分解性基としては、ハロ、(C〜C)アルコキシ及びアシルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい加水分解性基は、クロロ及び(C〜C)アルコキシである。式SiYの好適な四官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラクロロシラン等が、挙げられるが、これらに限定されない。共水解物又は部分共縮合物を調製するための好適なシラン混合物としては、メチルトリエトキシシランとテトラエトキシシラン;メチルトリメトキシシランとテトラメトキシシラン;フェニルトリエトキシシランとテトラエトキシシラン;メチルトリエトキシシランとフェニルトリエトキシシランとテトラエトキシシラン;エチルトリエトキシシランとテトラメトキシシラン;及びエチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランが挙げられる。斯かるオルガノシラン対四官能性シランの比率は、典型的には99:1から1:99、好ましくは95:5から5:95、より好ましくは90:10から10:90であり、更により好ましくは、80:20から20:80である。
【0038】
特定の態様において、Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(I)の1以上のオルガノシランと式SiYの四官能性シランとの共水解物又は部分共縮合物である。他の態様においては、Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(II)の1以上のオルガノシランと式SiYの四官能性シランとの共水解物又は部分共縮合物である。更に他の態様において、Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(I)の1以上のオルガノシラン、式(II)の1以上のシラン及び式SiYの四官能性シランとの共水解物又は部分共縮合物である。本発明のBステージオルガノポリシリカ樹脂は式(I)又は(II)の1以上のシランの非水解物又は非縮合シランと、式(I)又は(II)の1以上のシランの水解又は部分縮合シランを含む。更なる態様において、Bステージオルガノポリシリカ樹脂は、式(II)のシランと式(I)の1以上のオルガノシランの部分縮合物の水解物、及び好ましくは式(I)の1以上のオルガノシランと式SiY四官能性シランとの共水解物又は部分共縮合物であり、ここで、Yは上記で定義された通りである。好ましくは、斯かるBステージオルガノポリシリカ樹脂は式(II)の1以上のシランと式(RSiO1.5)(SiO)、[Rは上記の通りである]、を有する共水解物又は部分共縮合物との混合物を含む。
【0039】
式(I)のオルガノシランが四官能性シランで共水解又は共縮合されるとき、式(I)のオルガノシランは式RSiYを有するのが好ましく、及び好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びこれらの混合物から選択される。また、四官能性シランは、テトラメトキシシラン及びテラエトキシシランから選択されるのが好ましい。
【0040】
斯かる四官能性シラン含有共水解物又は部分共縮合物もまた、貯蔵安定性の不足の問題があり、冷却して貯蔵及び出荷されなければならない。従って、斯かる共水解物もまた、本発明から利益を得る。
【0041】
少なくとも2つの炭素及び25℃において約1から約4の酸解離定数(「pKa」)を有する任意の有機酸が好適である。好ましい有機酸は、約1.1から約3.9、より好ましくは1.2から約3.5のpKaを有する。キレート剤として機能することができる有機酸が、好ましい。斯かるキレート化有機酸は、ジ‐、トリ‐、テトラ‐及びより高位のカルボン酸のようなポリカルボン酸、及び1以上のヒドロキシル、エーテル、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、イミン及びチオール等で置換されたカルボン酸を包含する。好ましいキレート化有機酸は、ポリカルボン酸及びヒドロキシ置換カルボン酸である。用語「ヒドロキシ置換カルボン酸」は、ヒドロキシ置換ポリカルボン酸を含む。好適な有機酸としては、蓚酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、α‐ケトグルタル酸、サリチル酸及びアセト酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい有機酸は、蓚酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、クエン酸及び乳酸であり、より好ましいのはマロン酸である。有機酸の混合物は、本発明に有益に使用され得る。当業者は、ポリカルボン酸がその化合物中でそれぞれのカルボン酸部位についてのpKa値を有することを認識するであろう。斯かるポリカルボン酸におけるpKa値の一つだけが、本発明の使用に好適である有機酸について25℃において1から4の範囲内であることが必要とされる。
【0042】
有機酸は、安定化量で存在する。斯かる安定化量は、Bステージオルガノポリシリカ樹脂の縮合又は硬化を引き起こすのに充分な量より少ない量である。典型的には、有機酸の量は1から10,000ppm、好ましくは5から5,000ppm、より好ましくは10から2,500ppm、及び更により好ましくは10から1,000ppmである。有機酸は、一般に多くの供給元から商業的に入手可能である。
【0043】
本発明の安定組成物は、実質的に反応アルコールを含まない。「実質的に反応アルコールを含まない」とは、本組成物が、組成物の総重量を基準にして5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更により好ましくは2.5重量%以下、いっそうより好ましくは2重量%以下の反応アルコ−ルを含有することを意味する。用語「反応アルコール」とは、Bステージオルガノポリシリカ樹脂を形成するためオルガノアルコキシシランモノマー、例えば、オルガノトリアルコキシシラン又はジオルガノジアルコキシシランの縮合の過程で生じるアルコールを意味する。例えば、メチルトリエトキシシランがモノマーとして使用されるとき、縮合の過程で生成する反応アルコールはエタノールである。フェニルトリメトキシシランの場合は、メタノールが縮合過程で生成する反応アルコールである。斯かる反応アルコールは、典型的には低級脂肪族アルコール及びより典型的にはメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールである。
【0044】
本組成物は、実質的に水を含まないのが好ましい。実質的に「水を含まないとは」本組成物が、本組成物の総重量を基準にして2.5重量%以下の水を含有することを意味する。好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、及び更により好ましくは0.5重量%以下である。
【0045】
本組成物が、式(II)の化合物の水解物又は部分縮合物であるBステージオルガノポリシリカ樹脂を含むとき、斯かる組成物は、β‐ジケトン及び式R10(M)(OR11q−p、を有する金属キレート化合物の組み合わせを実質的に含まないことが好ましい。ここで、R10はキレート剤であり;Mは金属原子であり;R11は(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリールであり;qはその金属の原子価であり;及びpは1からqの整数である。ここで使用される「実質的に含まない」とは0.5ミリモル未満、好ましくは0.1ミリモル未満の金属キレートが存在することを意味する。斯かる組成物は、β‐ジケトン及び金属キレートのそのような組み合わせを含まないことが好ましい。特に式(II)のオルガノポリシリカ樹脂を含む好適な組成物は、上記金属キレートを単独でも実質的に含まない。他の好適な組成物は、実質的にβ‐ジケトンを含まない、即ち、本組成物は、組成物の総重量を基準にして1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、及びより好ましくは0.1重量%未満でβ‐ジケトンを含有する。斯かる組成物は、β‐ジケトンを単独でも含まないのが更に好ましい。
【0046】
本発明の組成物は、更に1以上の有機溶媒を含むことができる。ケトン、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル及びエステル等の、本組成物を不安定化させない任意の有機溶媒が使用され得る。好適な有機溶媒としては、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、2‐ヘプタノン、γ‐ブチロラクトン、ε‐カプロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、n‐アミルアセテート、n‐ブチルアセテート、シクロヘキサノン、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N´‐ジメチルプロピレンウレア、メシチレン、キシレン及び乳酸エチルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2‐ヘプタノン及び乳酸エチルである。
【0047】
1以上の感光性又は感熱性塩基発生剤が、Bステージオルガノポリシリカ樹脂を硬化させることを助力するため本組成物に添加され得る。感光性又は感熱性塩基発生剤は、典型的には保護基により保護され、熱又は光による保護基の開裂により遊離塩基が遊離されるまでBステージオルガノポリシリカ樹脂の縮合反応又は硬化を促進しない。室温において、感熱性又は感光性塩基発生剤は、Bステージオルガノポリシリカ樹脂に対し実質的に不活性である。好ましい感光性塩基発生剤は、感光性アミン発生剤である。好適な感光性アミン発生剤は、ウレタン(置換o‐ニトロベンジルアルコール及びモノ又はジイソシアネートから誘導されたカルバミン酸塩)である。好適な感光性アミン発生剤は、o‐ニトロベンジルカルバメートである。別の好適な感光性アミン発生剤は、t‐ブチルカルバメートである。他の好適な感光性アミン発生剤としては、ベンジルカルバメート(例えば、ベンジルオキシカルボニル置換基により保護されたアミン)、ベンジルスルホンアミド、ベンジル第四級アンモニウム塩、イミン、イミニウム塩及びコバルト‐アミン錯体が挙げられる。好適な感光性アミン発生剤は、第一級又は第二級アミン、ジアミン又はポリアミンの(α‐メチル‐2‐ニトロベンジルオキシカルボニル)カルバメート、例えば、ビス[(α‐メチル‐2´‐ニトロベンジルオキシ)カルボニル]ヘキサン‐1,6‐ジアミンである。好適な感光性アミン発生剤は、式R´R´´N−CO‐OR´´´を有する、ここで、R´及びR´´は、独立にヒドリド又は低級(C〜C)アルキル及びR´´´はニトロベンジル(例えば、オルソ)又はαメチルニトロベンジルである。本発明に使用される適当な他の感光性アミン発生剤は、当業者にとって公知である。慣用的に、感光性アミン発生剤は、遊離アミンを発生させるために225〜500nmの光を吸収するであろう。
【0048】
本発明の使用に好適な感熱性塩基発生剤は、熱的に除去可能な保護基を有する塩基である。約75℃から約200℃の高められた温度にその塩基を熱すれば、その後に縮合又は硬化反応を触媒することができる遊離塩基を放出する。好適な感熱性塩基発生剤には、カルバミン酸塩及び有機第四級アンモニウム塩が含まれる。好適な感熱性アミン発生剤としては、第一級及び第二級アミン、ジアミン、及びポリアルキレン(例えば、C)イミン及びアミノ置換(i)ポリエーテル、(ii)ポリスチレン(iii)ポリメタクリレート及び(iV)ポリシロキサンのようなポリアミンのt‐ブトキシカルバメートが挙げられる。好適な感熱性アミン発生剤は、ビス(t‐ブトキシカルボニル)‐4,7,10トリオキサ‐1,13‐トリデカンジアミンである。好適な感熱性塩基発生剤は、式R´R´´N‐CO‐OR´´´を有する、ここで、R´及びR´´は、独立にヒドリド又は低級(C〜C)アルキルであり、R´´´はt‐ブチルである。他の感熱性塩基発生剤は当業者にとって公知である。
【0049】
有機溶媒が使用されるとき、それらは典型的には全組成の60から99%、好ましくは70−95重量%の量で使用される。有機溶媒の混合物は、本発明について有利に使用され得る。斯かる混合物が使用されるとき、組成物中の有機溶媒の全量は典型的には60から99%である。好適な有機溶媒は、一般に様々な供給業者から商業的に入手され得るし、更なる精製無しに使用され得る。
【0050】
本組成物は、オルガノポリシリカ樹脂と有機酸及び任意の有機溶媒とを配合することにより調製される。その成分は如何なる順序でも配合され得る。
【0051】
本発明の有機酸は、更なる縮合又は重合に対しBステージオルガノポリシリカ樹脂を安定化させる。斯かる継続される縮合又は重合は、樹脂の増加した粘度により実証され、最終的には樹脂のゲル化を生じる。斯かる縮合の制御は、一貫した分子量を与える物質を提供するために重要である。本組成物の利点は、それらは安定であること、即ち、慣用のBステージオルガノポリシリカ組成物よりも長期間及びより高い温度にて貯蔵に際し減少した縮合又は重合を示すことである。「安定」とは、Bステージオルガノポリシリカ組成物の粘度が、40℃において96時間の貯蔵の後で35%未満、好ましくは30%未満しか増加しないことをいう。ここで、粘度は商業的に入手可能な粘度計を使用して25℃においてセンチストークで測定される。斯かる安定なBステージオルガノポリシリカ樹脂は、好ましくは40℃において1000時間、好ましくは40℃で1400時間の貯蔵の後でゲル形成がない。
【0052】
オルガノポリシリカ樹脂が誘電体として使用されるとき、集積回路の製造などにおいて、任意にポロゲンを含有することができる。ポロゲンは、樹脂コーティングの硬化及びその後のポロゲン物質を除去した後で多孔性フィルムを形成するためにBステージオルガノポリシリカ樹脂に添加される。斯かる多孔性コーティングは、それらが相当する非多孔性コーティングより低誘電率(及びそれ故より良い絶縁体である)を有するので集積回路製造に有用であり、且つ特に低反射コーティングの光学コーティングにおいて有用である。
【0053】
多岐に亘るポロゲンが、オルガノポリシリカ樹脂と共に使用され得る。好適なポロゲンには、米国特許第5,895,263号(カーター等)及び6,271,273B1号(ヨウ等)に開示されたものが含まれる。ポロゲンは、オルガノポリシリカ樹脂と相容性であることが好ましい。「相容性」とは、Bステージオルガノポリシリカ樹脂とポロゲンの組成物が可視光線に対して光学的に透明であるという意味である。Bステージオルガノポリシリカ樹脂とポロゲンの溶液、Bステージオルガノポリシリカ樹脂とポロゲンの組成物を含むフィルム又は層、ポロゲンをその中に分散させたオルガノポリシリカ樹脂を含む組成物、及びポロゲンを除去した後の結果として生じる多孔性誘電体は、全て可視光線に対して光学的に透明である。「実質的に相容性」とは、Bステージオルガノポリシリカ樹脂及びポロゲンの組成物が僅かに曇りを生じるか又は僅かに不透明であることを意味する。好ましくは「実質的に相容性」とは、Bステージオルガノポリシリカ樹脂とポロゲンの溶液、Bステージオルガノポリシリカ樹脂とポロゲンの組成物を含むフィルム又は層、ポロゲンをその中に分散させたオルガノポリシリカ樹脂を含む組成物、及びポロゲンを除去した後の結果として生じる多孔性オルガノポリシリカ樹脂の少なくとも一つが僅かに曇りを生じるか又は僅かに不透明であることを意味する。
【0054】
好ましくは、ポロゲンは、溶液状態及び薄いオルガノポリシリカフィルム状態でホスト誘電マトリックス材と分散性、混和性又はさもなければ実質的に相容性である。従って、ポロゲンは、ホストオルガノポリシリカBステージ物質と同一の溶媒又は混合溶媒系に可溶性でなければならない。また、ポロゲンは、ポロゲンの大きさと匹敵し得る大きさを有する実質的に均一に分散した細孔の望ましい利点を獲得するために、実質的に分離した、実質的に非凝集の又は実質的に非凝結の粒子として溶液内に存在しなければならない。
【0055】
好ましいポロゲンは、米国特許第6,271,273B1号(ヨウ等)において開示され、ここに参照として挿入された、重合単位として少なくとも一つのシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマー及び1以上の架橋剤を含む架橋されたポリマー粒子である。1以上のシリル含有モノマー又は1以上のポリ(アルキレンオキシド)モノマー、又はこれらの混合物と共重合し得る好適なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、窒素含有化合物及びそれらのチオ類似体及び置換エチレンモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。斯かるポロゲンは、エマルション重合及び溶液重合を含む多様な重合法により、及び好ましくは溶液重合により調製され得る。
【0056】
ポリマーポロゲンは、重合単位としてシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマーの少なくとも一つを含む。斯かるシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマーは、非架橋ポリマーを形成するために使用され、架橋剤として使用され又はその両方として使用され得る。珪素を含有する如何なるモノマーも、本発明においてシリル含有モノマーとして有用となり得る。斯かる珪素含有モノマー内の珪素部位は、反応性であり又は非反応性であることができる。代表的な「反応性」シリル含有モノマーとしては、トリメトキシシリル含有モノマー、トリエトキシシリル含有モノマー及びメチルジメトキシシリル含有モノマー等、これらに限定されないが、1以上のアルコキシ又はアセトキシ基を含有するものが挙げられる。代表的な「非反応性」シリル含有モノマーとしては、トリメチルシリル含有モノマー、トリエチルシリル含有モノマー及びフェニルジメチルシリル含有モノマー等、これらの限定はされないが、アルキル基,アリール基、アルケニル基又はこれらの混合物を含有するものが挙げられる。重合単位として、シリル含有モノマーを含むポリマーポロゲンは、シリル部位を含有するモノマーの重合により調製される斯かるポロゲンを含むよう意図されている。末端キャッピング単位としてのシリル部位だけを含有する直鎖ポリマーを含むことは意図されてはいない。
【0057】
好適なシリル含有モノマーとしては、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ‐トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジビニルシラン、トリビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルシラン、メチルトリビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、トリビニルフェニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、テトラビニルシラン、ジメチルビニルジシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、ポリ(ビニルヒドロシロキサン)、ポリ(フェニルビニルシロキサン)、アリルオキシ‐tert‐ブチルジメチルシラン、アリルオキシトリメチルシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ‐イソ‐プロピルシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリフェニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、エトキシジフェニルビニルシラン、メチルビス(トリメチルシリルオキシ)ビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリス(トリメチルシリルオキシ)ビニルシラン、ビニルオキシトリメチルシラン及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明のポロゲンを形成するために有用なシリル含有モノマーの量は、典型的には使用されるモノマーの総重量を基準にして約1から約99wt%である。好ましくはシリル含有モノマーは、1から約80wt%及びより好ましくは約5から約75wt%の量で存在する。
【0059】
好適なポリ(アルキレンオキシド)モノマーとしては、ポリ(プロピレンオキシド)モノマー、ポリ(エチレンオキシド)モノマー、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノマー、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)4‐ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレン/エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいポリ(アルキレンオキシド)モノマーには、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキレートトリ(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート等が含まれる。特に好ましいポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートは、約200から約2000の範囲の分子量を有するものである。本発明に有用なポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノマーは、線状、ブロック又はグラフトコポリマーであり得る。斯かるモノマーは、典型的には約1から約50及び好ましくは約2から約50の重合度を有する。
【0060】
典型的には、本発明のポロゲンに有用なポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、使用されるモノマーの総重量を基準にして約1から約99wt%である。ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、好ましくは約2から約90wt%、より好ましくは約5から約80wt%である。
【0061】
シリル含有モノマー及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーは、本発明のポロゲンを形成するために単独又は組み合わせて使用され得る。シリル含有モノマー及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーは、組み合わせて使用されるのが好ましい。一般に、ポロゲンを誘電体マトリックスと相容化するのに必要とされるシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、マトリックス中で所望されるポロ−ゲン添加量、オルガノポリシリカ誘電体マトリックスの具体的組成及びポロゲンポリマーの組成に依存する。シリル含有モノマー及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーの組み合わせが使用されるとき、他のモノマー量が増加されるに連れて一つのモノマーの量が減少される。従って、シリル含有モノマーの量が組合わせ中で増加されるのに連れて、組み合わせ中のポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は減少される。
【0062】
本ポロゲンポリマーは、典型的には架橋粒子であり、電子デバイス中の高度インターコネクト構造における変性剤としての使用に適する分子量又は粒径を有する。典型的には、斯かる用途用に有用な粒径範囲は約1,000nmまでであり、たとえば、約0.5から約1000nmの平均粒径を有する。平均粒径は、約0.5から約200nm、より好ましくは約0.5から約50nm、更により好ましくは約1nmから約20nm及び最も好ましくは約1から約10nmの範囲である。本プロセスの利点は、ポロゲンの除去に際して誘電体マトリックス中で形成される細孔の大きさは、使用されるポロゲン粒子の大きさと実質的に同じ大きさ、即ち、寸法である。従って、本プロセスで製造された多孔性オルガノポリシリカ誘電材料は、0.5から1,000nm、好ましくは0.5から200nm、より好ましくは0.5から50nm及び最も好ましくは1から20nmの範囲の平均粒径の実質的に均一な細孔粒径を持つ実質的に均一に分散された細孔を有する。
【0063】
使用に際して、ポロゲンは、有機酸及び任意の溶媒の安定化量の添加前又は後でオルガノポリシリカ樹脂と配合され得る。好ましくは、ポロゲンは、溶媒に溶解又は分散され、その後Bステージオルガノポリシリカ樹脂、酸及び溶媒の混合物に添加される。ポロゲンを溶解又は分散するために使用される溶媒は、安定なBステージオルガノポリシリカ組成物を調製するのに使用されるものと同一又は異なってもよい。ポロゲン粒子は、組成物内に分散又は溶解される。
【0064】
代替の態様において、有機カルボン酸又は無水物のような有機カルボン酸の同等物は、使用されるポロゲン粒子に組み入れられ得る。斯かるポロゲン粒子は、モノマー又は架橋剤として有機カルボン酸又は有機カルボン酸同等物を組み入れることができる。有機酸含有モノマー又は架橋剤は、2以上のカルボン酸部位及び好ましくは2つのカルボン酸部位を含有するのが好ましい。好適なモノマー及び架橋剤としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、ビニルフタル酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物、(メタ)アクリル酸のサリチル酸エステル、シトラコン酸、(メタ)アクリル酸のクエン酸エステル、ビニルナフタレンジカルボン酸無水物、N,N‐(二酢酸)(メタ)アクリルアミド及びo‐、m‐、又はp‐N,N‐(二酢酸)アミノ‐メチルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明は、また、1以上のBステージオルガノシリカ樹脂と重合単位として1以上のカルボン酸又は無水物含有モノマー又は架橋剤を含むポリマーポロゲンを含む安定組成物を提供する。斯かる組成物は、斯かる組成物は本発明の添加される有機カルボン酸を必要とすることなく安定である。しかしながら、2以上の炭素及び1から4のpKa値を有する有機カルボン酸の添加は、斯かる組成物の安定性を向上させる。
【0065】
本発明の組成物は、スピンコーティング、スプレーコーティング又はドクターブレイド等の公知の方法により基体上に析出されてフィルム又は層を形成する。基体上に析出された後で、Bステージオルガノポリシリカ樹脂はそれから実質的に硬化されて硬質の、架橋されたオルガノポリシリカマトリックス材を形成する。もし、本組成物がポロゲンを含有するとき、斯かる硬化工程は実質的にポロゲン粒子を除去することなく遂行される。オルガノポリシリカ樹脂材の硬化は、縮合を誘起するための加熱又はオリゴマー又はモノマー単位の遊離基カップリングを容易にするe‐ビーム照射等、これらに限定されないが、これらを含む当分野で公知の如何なる手段を介してもよい。典型的には、Bステージ物質は、高められた温度、例えば直接に、例えばホットプレート上で一定の温度でまたは段階的に加熱され、硬化される。Bステージオルガノポリシリカ樹脂を硬化させる好適な温度は、約200℃から約350℃である。斯かる硬化条件は、当業者には公知である。
【0066】
一旦、Bステージオルガノポリシリカ樹脂誘電体が硬化されると、フィルムは、オルガノポリシリカ樹脂物質を実質的に劣化させることなく、即ち、5重量%未満の樹脂材しか失われることなく、任意のポロゲンを除去する条件に付される。典型的な除去法としては、UV、X線、ガンマー線、アルファ粒子、中性子ビーム又は電子ビームなど、これらに限定されないが、斯かる放射線又は熱が挙げられる。ポロゲンを熱的に除去するために硬化樹脂材は、オーブンヒーティング又はマイクロウェーブヒーティングにより加熱され得る。典型的には、ポロゲンは、250℃から425℃の範囲の温度で除去される。ポロゲンは、典型的には除去を実施するには1から120分間、加熱される。熱レイビルポロゲンの特定の除去温度は、ポロゲンの組成に従い変化することは当業者には認識されるであろう。
【0067】
除去に際し、ポロゲンポリマーは解重合し、又はその後除去される或いは拡散する揮発性成分又はフラグメントに分解し、誘電マトリックス材は細孔又はボイドを生じ、それがプロセスで使用されるキャリヤーガスで充満される。従って、ボイドを有する多孔性ポリシリカ樹脂物質が得られ、そこではボイドの大きさは実質的にポロゲンの粒径と実質的に同じである。ボイドを有する結果的に生じる樹脂材は、従って斯かるボイドを有さない物質より低い誘電率を有する。
【0068】
従って、本発明は、a)電子デバイス基体上にBステージオルガノポリシリカ樹脂、ポロゲン粒子及び2以上の炭素及び約1から約4のpKaを有する有機酸を含む安定組成物であって実質的に反応アルコールを含まない組成物を堆積させ;b)Bステージポリシリカ樹脂を硬化してオルガノポリシリカ誘電体を形成し;及びc)ポロゲン粒子を除去して基体上に堆積した多孔性オルガノポリシリカ物質を提供する工程を含む、多孔性オルガノポリシリカ誘電材を形成することを含む電子デバイスを製造する方法を提供する。
【実施例】
【0069】
次の実施例は、本発明の更なる種々の態様を例示するために提示され、如何なる態様においても本発明を限定するものと意図されるものでない。
【0070】
実施例1
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(「PGMEA」)中の、重合単位として、シリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマーから選択される少なくとも1つの化合物および1以上の架橋剤を含む架橋されたポロゲン粒子に、PGEMEA中の商業的に入手可能なBステージメチルシルセスキオキサン樹脂(メチルトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの約8:2比の混合物の加水分解から調製された)が添加された。ポロゲン粒子の量は、ポロゲンとBステージメチルシルセスキオキサン樹脂の総重量を基準にして30重量%のポロゲンを提供するのに充分であった。追加のPGMEAを加え、26.3%の所望の固形分濃度を含有する樹脂組成物を生成した。
【0071】
実施例2
実施例1の樹脂組成物の試料70gが、多くのジャーのそれぞれに添加された。試料A及びBは対照であり、そのまま使用された。有機酸が残りの試料のそれぞれに添加され、その試料は完全に混合された。使用された具体的な有機酸及び量は表1に報告されている。幾つかの試料は、表1に示されるように添加された水を含んでいた。試料は、一定の時間、40℃に貯蔵された。所定の時間において、10mLのアリコートが各試料から除去され、粘度が調節された温度(25℃)の試料浴を有するキャノン‐フェンスク(Cannon‐Fenske)粘度計を使用して測定された。粘度測定結果は、センチストークス単位で表1に報告されている。試験は、ゲルが形成されたとき、各試料について停止された。
【0072】
【表1】

【0073】
上記結果は、本発明の有機酸がより安定なBステージオルガノポリシリカ樹脂組成物を提供すること、即ち、他の有機酸よりゲル化するのにより長い時間を要することを明確に示している。
【0074】
実施例3
ポロゲン粒子が29.8重量%及び固形分が25.4%であったことを除いて、実施例1が繰り返された。
【0075】
実施例4
実施例3の樹脂組成物の試料100gが、多くのジャーのそれぞれに添加された。試料1は対照であり、そのまま使用された。マロン酸が残りの試料のそれぞれに添加され、その試料は完全に混合された。使用されたマロン酸の量は表2に報告されている。幾つかの試料は、表2に示されるように添加された水を含んでいた。試料は、一定の時間、40℃に貯蔵された。所定の時間において、10mLのアリコートが各試料から除去され、粘度が調節された温度(25℃)の試料浴を有するキャノン‐フェンスク粘度計を使用して測定された。粘度測定結果は、センチストークス単位で表2に報告されている。試験は、ゲルが形成されたとき、各試料について停止された。
【0076】
【表2】

【0077】
これらの結果は、マロン酸の優れた安定化能力を実証している。
【0078】
実施例5
試料が室温で貯蔵されたことを除いて実施例4の手順が、繰り返された。
試料12は、対照であり、添加有機酸は含まれていなかった。試料13は、マロン酸を含有していた。これらのデータは表3において報告されている。
【0079】
【表3】

【0080】
上記データは、室温においてBステージオルガノポリシリカ樹脂を安定化させることにおける有機酸の有効性を実証している。
【0081】
実施例6
対照試料(14)は、PGMEA内の商業的に入手可能なBステージメチルシルセスキオキサン樹脂(メチルトリアルコキシシランの加水分解により調製)とポロゲン粒子を配合することにより調製された。比較試料(15)は、PGMEA内の商業的に入手可能な実施例1のBステージメチルシルセスキオキサン樹脂とポロゲン粒子及び5000ppmの蟻酸を配合することにより調製された。対照及び比較試料双方のポロゲン粒子の量は、ポロゲン及び樹脂の総重量を基準にして30重量%のポロゲンを提供するのに充分であった。
【0082】
4つの試料(16〜19)は、PGMEA内の商業的に入手可能な実施例1のBステージメチルシルセスキオキサン樹脂とポロゲン粒子及一定量のマロン酸を配合することにより調製された。試料16,17,18及び19におけるマロン酸の量は、それぞれ5000ppm、1000ppm、10ppm及び100ppmであった。試料16〜19のそれぞれにおけるポロゲンの量はポロゲン及び樹脂の総重量を基準にして23重量%を提供するのに重量であった。
【0083】
各試料14〜19のポロゲンは同一であり、重合単位としてシリル含有モノマー又は(ポリ)アルキレンオキシドモノマーから選択される1以上の化合物及び1以上の架橋剤を含んでいた。
【0084】
試料14〜19は室温で貯蔵され、試料はポンプ及びインライン0.1μmポリプロピレンフィルターカプセルを通して各試料を連続的に再循環して経時的に粘度変化について評価された。試料粘度は、実施例2で報告されたように測定され、表4で(センチストークで)報告されている。
【0085】
【表4】

【0086】
これらのデータは、最低10ppmのマロン酸で23%のポロゲンを含有するBステージメチルシルセスキオキサン樹脂を安定化させるのに充分であることを示している。データは、また、5000ppmのマロン酸は23%のポロゲンを含有するBステージメチルシルセスキオキサンの粘度増加をもたらし、すなわち縮合をもたらし、従って、5000ppmはこれらの特定試料の安定化量を超過していることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(II)の1以上のシランの水解物又は部分縮合物を含むBステージオルガノポリシリカ樹脂、
【化1】

【化2】

(式中、Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールであり;Yは任意の加水分解性基であり;aは0から2の整数であり;R、R、R及びRは独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、‐(CHh1‐E‐(CHh2‐、‐(CH‐Z、アリーレン、置換アリーレン及びアリーレンエーテルから選択され;Eは酸素及びZから選択され;ZはNR、アリール及び置換アリールから選択され;Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;b及びdはそれぞれ0から2の整数であり;cは0から6の整数であり;h、h1、h2及びkは独立して1から6の整数である;但し、R、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではない。);及び、
2以上の炭素及び約1から約4のpKaを有し、ポリカルボン酸及びヒドロキシ置換されたカルボン酸からなる群から選択される有機酸;
を含む安定組成物であって、反応アルコール、β‐ジケトン及び式R10(M)(OR11q−pを有する金属キレート化合物(式中、R10はキレート剤であり;Mは金属原子であり;R11は(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリールであり;qはその金属の原子価であり;及びpは1からqの整数である)を実質的に含まない組成物。
【請求項2】
式(I)又は(II)の1以上のシランの水解物又は部分縮合物を含むBステージオルガノポリシリカ樹脂、
【化3】

【化4】

(式中、Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールであり;Yは任意の加水分解性基であり;aは0から2の整数であり;R、R、R及びRは独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、‐(CHh1‐E‐(CHh2‐、‐(CH‐Z、アリーレン、置換アリーレン及びアリーレンエーテルから選択され;Eは酸素及びZから選択され;ZはNR、アリール及び置換アリールから選択され;Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;b及びdはそれぞれ0から2の整数であり;cは0から6の整数であり;h、h1、h2及びkは独立して1から6の整数である;但し、R、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではない。);
重合単位として少なくとも一つのシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマー及び1以上の架橋剤を含むポリマーポロゲン;及び、
2以上の炭素及び約1から約4のpKaを有し、ポリカルボン酸及びヒドロキシ置換されたカルボン酸からなる群から選択される有機酸;
を含む安定組成物であって、反応アルコール、β‐ジケトン及び式R10(M)(OR11q−pを有する金属キレート化合物(式中、R10はキレート剤であり;Mは金属原子であり;R11は(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリールであり;qはその金属の原子価であり;及びpは1からqの整数である)を実質的に含まない組成物。
【請求項3】
式(I)又は(II)の1以上のシランの水解物又は部分縮合物を含むBステージオルガノポリシリカ樹脂、
【化5】

【化6】

(式中、Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールであり;Yは任意の加水分解性基であり;aは0から2の整数であり;R、R、R及びRは独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、‐(CHh1‐E‐(CHh2‐、‐(CH‐Z、アリーレン、置換アリーレン及びアリーレンエーテルから選択され;Eは酸素及びZから選択され;ZはNR、アリール及び置換アリールから選択され;Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;b及びdはそれぞれ0から2の整数であり;cは0から6の整数であり;h、h1、h2及びkは独立して1から6の整数である;但し、R、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではない。);及び、
キレート化剤として機能することができ、ポリカルボン酸及びヒドロキシ置換されたカルボン酸からなる群から選択される有機酸;
を含む安定組成物であって、反応アルコール、β‐ジケトン及び式R10(M)(OR11q−pを有する金属キレート化合物(式中、R10はキレート剤であり;Mは金属原子であり;R11は(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリールであり;qはその金属の原子価であり;及びpは1からqの整数である)を実質的に含まない組成物。
【請求項4】
式(I)又は(II)の1以上のシランの水解物又は部分縮合物を含むBステージオルガノポリシリカ樹脂、
【化7】

【化8】

(式中、Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールであり;Yは任意の加水分解性基であり;aは0から2の整数であり;R、R、R及びRは独立して水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、‐(CH‐、‐(CHh1‐E‐(CHh2‐、‐(CH‐Z、アリーレン、置換アリーレン及びアリーレンエーテルから選択され;Eは酸素及びZから選択され;ZはNR、アリール及び置換アリールから選択され;Rは水素、(C〜C)アルキル、アリール及び置換アリールから選択され;b及びdはそれぞれ0から2の整数であり;cは0から6の整数であり;h、h1、h2及びkは独立して1から6の整数である;但し、R、R、R及びRの少なくとも一つは水素ではない。);及び、
重合単位として1以上のカルボン酸‐又は無水物‐含有モノマー又は架橋剤を含むポリマーポロゲン;
を含む安定組成物であって、β‐ジケトン及び式R10(M)(OR11q−pを有する金属キレート化合物(式中、R10はキレート剤であり;Mは金属原子であり;R11は(C〜C)アルキル又は(C〜C20)アリールであり;qはその金属の原子価であり;及びpは1からqの整数である)を実質的に含まない安定組成物。
【請求項5】
前記水解物又は部分縮合物が式SiY[式中、Yはハロ、(C〜C)アルコキシ又はアシルオキシである]の四官能性シランの水解物又は部分縮合物を更に含む請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機酸が1から10,000ppmの量で存在する請求項1から3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
a)電子デバイス基体上に請求項2又は4に記載の安定組成物を堆積させ;b)Bステージオルガノポリシリカ樹脂を硬化してオルガノポリシリカ誘電体を形成し;及びc)ポロゲンを除去して基体上に堆積した多孔性オルガノポリシリカ物質を提供する工程を含む、多孔性オルガノポリシリカ誘電体を形成することを含む、電子デバイスを製造する方法。

【公開番号】特開2010−261049(P2010−261049A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−175931(P2010−175931)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2002−333272(P2002−333272)の分割
【原出願日】平成14年11月18日(2002.11.18)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】