説明

官能化ビニルポリマーナノ粒子

とりわけポリマーマトリックス中の補強用充填剤として使用することのできる、架橋し官能化されたビニルポリマーのナノ粒子であって、上記ビニルポリマーが少なくとも以下のモノマーのコポリマーであり、これらのモノマーが全てフリーラジカル重合により共重合可能であることを特徴とするナノ粒子:非芳香族ビニルモノマー“A”;Zによって示され且つ式≡Si-X (式中、Xはヒドロキシルまたは加水分解可能な基を示す)を有する官能基を有するモノマー“B”;架橋用モノマー“C”、還元すれば、上記重合の点で少なくとも二官能性であるモノマー。上記ビニルポリマーは、好ましくはポリメタクリレート、とりわけ、メチルメタクリレート(モノマーA)、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(モノマーB)およびエチレングリコールジメタクリレート(モノマーC)のコポリマーであり、10〜100nmの直径を有するナノビーズの形にある。極めて低密度故に、このビニルポリマー充填剤は、ポリマー組成物、とりわけエラストマー組成物の重量低減を、補強性を損なうことなくまた実質的なヒステリシスの低下でもって可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリックスまたは組成物を補強することのできる補強用充填剤、さらに詳細には、有機タイプの補強用充填剤および該補強用充填剤のそのようなマトリックス、とりわけ自動車用のタイヤの製造に関連するエラストマーマトリックスの補強のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費および自動車が放出する汚染を低減せんがために、以下の全てを有するタイヤを得るための多くの試みがタイヤ設計者によってなされている:極めて低い転がり抵抗性、乾燥地面および湿潤または積雪地面の双方上での改良された接着性、並びに良好な耐摩耗性。この問題に対する1つの有効な解決法は、過去15年に亘って、“非黒色充填剤”としても知られる無機タイプの新たな真の補強用充填剤、とりわけ、高分散性シリカ(“HD”シリカ)の開発によって見出されており、この充填剤は、その補強用充填剤機能において通常のタイヤ用カーボンブラックと置換わり得ることが判明している。
しかしながら、これらの補強用無機充填剤は、等価の補強能力のためには僅かに高い密度を有するが故に、これらの充填剤が補強するポリマーマトリックスの重量を、カーボンブラックの使用と比較して増大させるという既知の欠点を有し、このことは、むしろ、もう1つのより一般的な、タイヤの、ひいてはこれらのタイヤを含む車両の重量を減じるという目的を妨げている。
【発明の概要】
【0003】
研究の継続中、本出願人等は、予期に反して、真の補強用無機充填剤として使用することのできる、即ち、正しくHDシリカのように通常のタイヤ用カーボンブラックと置換わり得るある種の合成有機充填剤を見出した。
これらの新規な合成有機充填剤は、およそ半分ほどである密度を有する故に、これらの充填剤が補強するポリマーマトリックスの重量並びにこれら充填剤を含むポリマー物品、とりわけタイヤのようなゴム物品の重量を、これら物品の使用特性を損なうことなく極めて有意に減じるのを可能にしている。
従って、本発明の第1の主題は、ポリマーマトリックス中の補強用充填剤としてとりわけ有用である、官能化された架橋ビニルポリマーのナノ粒子に関し、上記ビニルポリマーが少なくとも下記のモノマーのコポリマーであり、これらのモノマーが全てフリーラジカル重合により共重合可能であることを特徴とする:
非芳香族ビニルモノマー“A”;
式≡Si-Xの官能基Zを担持し、Xがヒドロキシルまたは加水分解可能な基を示すモノマー“B”;
架橋用モノマー“C”、即ち、上記重合の点で少なくとも二官能性であるモノマー。
また、本発明の主題は、本発明に従うナノ粒子の、ポリマーマトリックス、とりわけエラストマーマトリックスを補強するための使用である。
本発明の特定の主題は、本発明に従うナノ粒子の、ゴム製の最終物品または半製品を補強するための使用であり、これらの物品または半製品は、とりわけ、タイヤ、タイヤ用の内部安全支持体、車輪、ゴムスプリング、エラストマー接合部並びに他の懸架および振動防止要素のような自動車のあらゆる接地系を意図する。
本発明の主題は、とりわけ、本発明に従うナノ粒子のタイヤを補強するための使用である。
また、本発明の主題は、ポリマーマトリックス、とりわけエラストマーマトリックス中に埋込んだ本発明に従うナノ粒子を含むマスターバッチでもある。
また、本発明の主題は、少なくとも1種のポリマー、とりわけエラストマー;本発明に従うナノ粒子;および上記ポリマーと上記ナノ粒子表面間に結合を与えるカップリング剤を含むポリマー組成物でもある。
本発明およびその利点は、以下の説明および実施例に照らして、さらにまた、本発明に従う水性エマルジョン中のVPナノ粒子サンプルから撮影した電子顕微鏡(TEM)画像である図面(図1)からも容易に理解し得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明に従う水性エマルジョン中のVPナノ粒子サンプルから撮影した電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
I. 使用する測定および試験法
I-1. ポリビニル充填剤の特性決定
以下で説明するビニルポリマー(“VP”と略記する)の充填剤は、“ナノ粒子”、即ち、その主要寸法(直径または長さ)が、典型的には1マイクロメートル未満、一般的には、約10ナノメートルないし100または数100ナノメートル程度の範囲内にある粒子からなる。
これらのVPナノ粒子は素粒子(または“一次粒子”)の形にあり、これらの素粒子またはナノ粒子は、おそらくはこれらナノ粒子の少なくとも2個の凝結体(または“二次粒子)を形成し得、場合によっては、上記ナノ粒子および/または凝結体は、引続き、外力の作用下に、例えば、機械仕事の作用下にこれらのナノ粒子および/または凝結体に離散し得る凝集体を形成することが可能である。
これらのナノ粒子は、以下に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)によって特性決定する。
【0006】
A) エマルジョン(ラテックス)中での特性決定
水で前以って希釈したPV充填剤ラテックス(例えば、水1リットル当り8gの充填剤)をイソプロパノール中にその容量の約50倍に希釈する。そのようにして得られた40mlの溶液を背高ビーカー(50ml容量)に注入し、その後、600W超音波プローブ(Vibracellsプローブ、リファレンス 72412、Bioblock Scientific社により販売されている)を使用し、パルスモード(1秒オン/1秒オフ)で8分間100%出力下に分散させる。その後、そのようにして得られた溶液の液滴を、炭素膜を有する銅顕微鏡グリッド上に置き、次いで、カメラ(Soft Imaging System社により販売されているMegaView IIカメラ)および画像分析システム(Soft Imaging System社からのAnalySIS Pro A、バージョン 3.0)を備えたTEM (FEI社より販売されている“CM 200”;200 kV加速電圧)により観測する。
TEMの設定は、サンプルおよびフィラメントのエージング状態に応じて既知の方法で最適化する(典型的には、コンデンサー隔膜 2 (直径50μm)およびレンズ 3 (直径40μm))。顕微鏡倍率は、ナノ粒子に対して十分な解像力を有するように適応させる。例えば、65,000の倍率は、1248×1024個のピクセルからなるデジタル画像に対して約0.96nm/ピクセルに近い解像力に相応する;そのような解像力により、例えば、40nm直径の球形ナノ粒子を1000個以上のピクセルでもって明確にし得る。カメラは、通常、標準規格を使用して較正する(低倍率においては、2160本の線/mmの金グリッド;高倍率においては、直径0.235nmの金ビーズ)。
上記ナノ粒子の直径は、ソフトウェアAnalySIS Pro A、バージョン 3.0を使用して測定する(“Measurement”メニューの“Cercle”オプションによる)。各画像および所定のナノ粒子において、操作者は、スクリーン上に、ナノ粒子画像の周辺上に存在する3つの点を定める(マウスを使用して)。その後、上記のソフトウェアがこれらの3点を通る円を自動的にトレースし、ファイル(Excel)中に、ナノ粒子の円面積、円周および円直径の各値を保存する。この操作は良好に形成された輪郭を有するナノ粒子に対してのみ可能であるので、凝集体中に存在するナノ粒子は測定から除外する。試験を、サンプルを代表する最低2000個のナノ粒子(少なくとも10、典型的には50の異なる画像から得られる)において繰返す。
【0007】
B) ゴム組成物形中での特性決定
加硫ゴム組成物中のVP充填剤のサンプルを、凍結超薄切片法(ultracryomicrotomy)により、既知の方法で作成する(例えば、L. Sawyer and D. Grubb, Polymer Microscopy, page 92, Chapman and Hallを参照されたい)。
この場合使用する装置は、ダイアモンドナイフを備えたLeicaウルトラクリオマイクロトーム(“EMFCS”)である。サンプルを矩形基底を有する切断ピラミットの形に切断し、切片を作成する切断面は、600μm未満の辺長を有する。この切断ピラミッドは、切断操作中は強固に保持する。サンプルを適切な温度(サンプルのガラス転移温度に近い)に冷却してサンプルが十分に堅くて切断できるようにする;ナイフの温度は、サンプルの温度に典型的に近い。切断速度と厚さ(上記装置によって示されるような)は、好ましくは、それぞれ、1〜2mm/秒および20〜30nmである。スクロース水溶液(40mlの水中40g)の液滴を使用して、切片を、上記ウルトラクリオマイクロトームの囲いから回収し、次いで、TEMグリッド上に周囲温度で置く。その後、スクロースは、蒸留水を充填した晶析装置の表面上にグリッドを置くことによって除去する。
コントラストを増強ためには、切片を、当業者にとって周知の方法を使用して、四酸化オスミウム(OsO4)による染色工程に供し得る(L. C. Sawyer and David Grubb, Polymer Microscopy, Chapman and Hall, London, New York, 1987, pp. 97-98):グリットを20mlの蒸留水と0.1gのOsO4 (Agar Scientific社;レファレンス R1015)の混合物を含有する開放晶析装置上に置く;気密デシケーター内に入れた全体を、水浴中で、50℃に3〜3 1/2時間加熱する。
切片を、CM 200 顕微鏡を使用して観察する(200 kV電圧)。コントラストを最適化するために、観測は、GIF (Gatan Imaging Filter)画像化システムおよび関連ソフトウェア(Filter Control and Digital Micrograph 3.4)により、通常のエネルギーフィルター処理画像形成法(約15 eVに等しいΔEエネルギー窓)において行なう。
【0008】
II.発明の詳細な説明
本説明においては、特に断らない限り、使用する全てのパーセント(%)は、質量%である。
II-1. ビニルポリマーのナノ粒子
本発明のナノ粒子は、官能化された架橋ビニルポリマーから形成されるという本質的な特徴を有し、該ビニルポリマー(“VP”と略記する)は、全てがフリーラジカル重合によって共重合可能である少なくとも下記のモノマーのコポリマーである:
・非芳香族ビニルモノマー“A”;
・式(I):≡Si-X (式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な1価の基を示す)の官能基Zを担持するモノマー“B”;
・架橋用モノマー“C”、即ち、上記重合の点で少なくとも二官能性であるモノマー。
本出願においては、下記用語は、定義により、以下を意味するものと理解されたい:
‐“ビニルモノマー”、即ち、少なくとも1個のビニル基(CH2=CH-)または(置換形の)ビニリデン基(CH2=C<)を担持する任意のモノマー;
‐“非芳香族ビニルモノマー”、即ち、ビニル芳香族タイプ、即ち、芳香族基によってアルファ置換されたモノマー以外の任意のビニルモノマー。
‐好ましくは、上記VPは、専らビニルモノマーである上記モノマー類のコポリマーであるか、或いはその主要モノマー質量画分(好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上)がビニルモノマーからなる(少量画分はビニルモノマー以外の1種以上のモノマーに由来し得る)コポリマーである。
これらの定義を考慮すると、当業者であれば、モノマーCは、PVを架橋させるために、少なくとも二官能性、即ち、フリーラジカル重合によって重合可能である少なくとも2個の官能基を担持しなければならず、重合の点で、少なくとも単官能性、即ち、フリーラジカル重合によって重合可能である少なくとも1個の官能基を担持しなければならないモノマーAおよびBとは異なることを直ちに理解するであろう。
しかしながら、本発明は、重合の点で単官能性であるモノマーAおよびBの場合に限定されるものではなく、これらのモノマーの各々は、フリーラジカル重合によって重合可能である1個よりも多い官能基を含み得る。従って、二官能性モノマーAまたはモノマーBの特定の場合(例えば、後述するジ(メタ)アクリレートまたはジ(メタ)アクリルアミドにおける場合のような)、これらモノマーは、本発明の1つの特定の実施態様によれば、モノマーCの架橋機能も満たし得る。
【0009】
上記VPのZ官能化は、モノマーBによってもたらされる。このモノマーBのモル比は、好ましくは5%よりも高く、とりわけ5〜30%、とりわけ5〜20%である。
当業者であれば、上記式(I)を見れば、4価のケイ素原子を介してVPに結合した少なくとも1個、多くとも3個のXまたはヒドロキシル基または加水分解可能な1価の基が存在することを容易に理解するであろう。
好ましくは、Xは、ハロゲン、とりわけ塩素であり、或いは、Xは、式ORを満たし、式中、Oは酸素であり、Rは、水素または好ましくは1〜15個の炭素原子を含む直鎖もしくは枝分れの1価の炭化水素基を示す。
いわゆる“ヒドロキシシリル”(≡Si-OH)または“アルコキシシリル”(≡Si=OR')官能基から選ばれるZ官能基は、とりわけ適しており、R'は、好ましくは1〜15個の炭素原子を含む1価の炭化水素基であり、より好ましくは、アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルおよびアリールの中から、とりわけ、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルコキシアルキル、C5〜C10シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれる。
本発明の1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】

(式中、基R1は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、C1〜C8アルキル、C5〜C8シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれ;
基R2は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、ヒドロキシル、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルからなる群から選ばれる)。
さらに好ましくは、これらの関係においては、
‐基R1は、C1〜C4アルキル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から、とりわけC1〜C4アルキルの中から、とりわけメチルおよびエチルの中から選ばれ;
‐基R2は、ヒドロキシルおよびC1〜C6アルコキシルからなる群から、とりわけヒドロキシルおよびC1〜C4アルコキシルの中から、とりわけヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれる。
さらにより好ましくは、基R1は、メチルおよびエチルの中から選ばれ;基R2は、ヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれる。
【0010】
第1の好ましい実施態様によれば、コモノマーBは、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレートおよびメタクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレートおよびメタクリレート、並びにそのようなモノマーの混合物からなる群から選ばれる。さらに好ましくは、コモノマーBは、ヒドロキシ-、メトキシ-、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレートおよびメタクリレート、並びにそのようなモノマーの混合物からなる群から、とりわけ、ヒドロキシ-、メトキシ-、エトキシ-シリルプロピルアクリレートおよびメタクリレートの中から、とりわけ、トリメトキシシリルプロピルアクリレートおよびメタクリレートの中から選ばれる。
第2の好ましい実施態様によれば、コモノマーBは、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-(C1〜C4)アルコキシシラン、およびそのようなモノマーの混合物からなる群から選ばれる。さらに好ましくは、コモノマーBは、スチリル-(C1〜C4)アルキルヒドロキシ-、メトキシ-、エトキシ-シランおよびそのようなモノマーの混合物からなる群から、とりわけ、スチリルエチルヒドロキシシラン、スチリルエチルメトキシシランおよびスチリルエチルエトキシシランの中から選ばれる;とりわけ、スチリルエトキシトリメトキシシラン(またはトリメトキシシリルエチルスチレン)を使用する。
官能基Zを担持するこのコモノマーBについて上述した好ましいモル比を考慮すれば、コモノマーBは、好ましくは10%よりも高い、より好ましくは10〜30%、とりわけ15〜30%である質量比で使用する。
【0011】
タイプBのコモノマー、とりわけ、それぞれ下記の式を有するトリメトキシシリルプロピルメタクリレート(“TSPM”と略記する)、トリメトキシシリルプロピルアクリレート(“TSPA”と略記する)およびトリメトキシシリルエチルスチレン(“TSES”と略記する)またはスチリルエチルトリメトキシシランからなる群から選ばれるモノマーは、周知である:
【化2】

【0012】
さて、非芳香族ビニルモノマーAに関しては、モノマーAは、好ましくは、下記の式(II)に相応する:
【化3】

(式中、基R3は、水素、C1〜C8アルキルおよびC5〜C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
基Yは、ハロゲン、基OH、OR'、SR'、C≡N、C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R'')、C(O)R'およびOC(O)R'からなる群から選ばれ、式中、R'およびR”は、同一または異なるものであり得て、1〜12個の炭素原子を含む線状、枝分れまたは環状アルキル、並びに6〜20個の炭素原子を含むアリール、アラルキルまたはアルカリールからなる群から選ばれ、R'およびR”は、ハロゲン(好ましくは塩素)、酸素、窒素およびイオウの中から選ばれた少なくとも1個のヘテロ原子を含み得る)。
以下のモノマー類を、そのようなモノマーAの例として挙げることができる:
‐ビニルアルコール(ヒドロキシル基 Y = OHとして);
‐メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル(オルガノキシル基 Y = OR'として);
‐メチルビニルチオエーテル、エチルビニルチオエーテル、フェニルビニルチオエーテル(スルフェニル基 Y = SR'として);
‐アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル(シアノ基 Y = C≡Nとして);
‐アクリル酸およびメタクリル酸(カルボニル基 Y = C(O)OHとして);
‐メチル、n-ブチル、tert-ブチル、ヒドロキシエチル、グリシジル(メタ)アクリレート(オキシカルボニル基 Y = CO(O)R'として);
‐N,N-ジメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル-(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド(カルバモイル基 Y = C(O)N(R'R”)として);
‐ビニルメチルケトン(アシル基 Y = C(O)R'として);
‐酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル(アシルオキシ基 Y = OC(O)R'として)。
【0013】
好ましくは、上記式(II)においては、下記の特徴が満たされる:
‐R3は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群から選ばれ;
‐Yは、塩素、基C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R”)およびOC(O)R'からなる群から選ばれる。
さらにより好ましくは、下記の特徴が満たされる:
‐Yは、C(O)OR'であり;
‐R3は、水素またはメチルである。
上記のより好ましい特徴を満たすモノマーAの例としては、YがC(O)OR'であり、R'が1〜8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選ばれる式(II)のアクリレートまたはメタクリレートモノマーが挙げられる。
上記の好ましい特徴を満たすモノマーAの例としては、とりわけ、R'が1〜4個の炭素原子を含むアルキルであるアクリレート(R3 = 水素)またはメタクリレート(R3 = メチル)モノマー、とりわけ、メチルアクリレート(R'がメチルである)、メチルメタクリレート(R'がメチルである)、エチルアクリレート(R'がエチルである)、エチルメタクリレート(R'がエチルである)、n-ブチルアクリレート(R'がn-ブチルである)、n-ブチルメタクリレート(R'がn-ブチルである)、tert-ブチルアクリレート(R'がtert−ブチルである)、tert-ブチルメタクリレート(R'がtert−ブチルである)、ヒドロキシエチルアクリレート(R'がヒドロキシエチルである)、ヒドロキシエチルメタクリレート(R'がヒドロキシエチルである)およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれるアクリレートまたはメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0014】
説明を明確にするため、単官能性タイプのこれら好ましいモノマーAの幾つかの構造式を下記で思い起されたい:
【化4】

好ましくはメチルアクリレートまたはメチルメタクリレート、さらにより好ましくはメチルメタクリレート(“MMA”と略記する)を使用する。
二官能性タイプのモノマーAの例としては、基Yがフリーラジカル重合によって重合可能である第2のビニルまたはビニリデン基を担持する上記式(II)のモノマーを使用し得る。
【0015】
さらにまた、Z官能化VPは、充填剤の形態を高温で適切に維持するように、架橋状態、即ち、三次元形で存在する。
架橋は、付加反応によって重合可能であり且つ重合の点で二官能性である、即ち、重合時に三次元VPネットワークを形成することのできる少なくとも1個の第2官能基を担持する少なくとも1種の出発コモノマー(モノマーC)によってもたらされる。“架橋用”と称するこのモノマーCは、ビニルまたは非ビニルの芳香族または脂肪族モノマーであり得る。
さらに好ましくは、コモノマーCとして適するのは、フリーラジカル重合によって重合可能な2個の不飽和基、とりわけ、エチレン基を担持するコモノマー、とりわけ、ポリオール、とりわけジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;アルキレンジ(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビス-アクリルアミド);少なくとも2個のビニル基を担持するビニル芳香族化合物、好ましくはスチレン化合物(例えば、ジイソプロペニルベンゼン(DIB)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリビニルベンゼン(TVB);およびそのようなコモノマーの混合物からなる群から選ばれるモノマーである。
【0016】
好ましいモノマーCのこれらの例の幾つかの構造式を、以下で思い起されたい:
【化5】

【0017】
1つの特定の好ましい実施態様によれば、本発明のナノ粒子のVPは、ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、或いは主要質量画分(好ましくは少なくとも50%以上、より好ましくは70%以上)の(メタ)アクリレート単位に由来するコポリマー、例えば、コポリマーMMA-TSPM-EGDMA、MMA-TSPM-PGDMA、MMA-TSPM-HGDMAおよびMMA-TSPM-DVBからなる群から選ばれるコポリマーである。
また、上記官能基Zを担持するコモノマーBまたはコモノマーAは、架橋性コモノマーとしても使用し得るが、勿論、このコモノマーBまたはこのコモノマーAが、それ自体、少なくとも二官能性であり、他のコモノマーとフリーラジカル重合によって共重合可能であることを条件とする。
架橋用コモノマーCの質量比は、好ましくは1%よりも高く、より好ましくは5%よりも高く、とりわけ10〜30%である。
例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレンのようなジエンモノマーのような種々の他のモノマーを、必要に応じて、小割合で、好ましくはモノマー総質量の20%未満で添加し得る。
本発明の1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、モノマーA、BおよびCは、異なるもので、3種全てがビニルモノマー、とりわけ、3種全てが非芳香族ビニルモノマーである。
本発明のもう1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、上記の1つと組合せるかまたは組合せないで、モノマーAおよびBは、付加によって重合可能な1個の官能基を担持し、架橋用モノマーCは、フリーラジカル重合によって重合可能である少なくとも2個のみの官能基を担持する。
【0018】
架橋したZ官能化VPは、ビニルコポリマーの官能化に適する任意の合成方法によって製造し得る。
好ましくは、この合成は、各種モノマーのフリーラジカル重合によって実施する。そのような方法の一般的原理は、既知であり、とりわけ、Z官能化ポリスチレン(アルコキシシランまたはヒドロキシシラン)のTSPMの存在下のエマルジョン中でのフリーラジカル重合(例えば、Macromolecules 2001, 34, 5737およびMacromolecules 2002, 35, 6185参照)または架橋させた(但し官能化していない)ポリスチレンのDVBの存在下での合成(Polymer 2000, 41, 481)に応用する。
好ましくは、上記の合成においては、非芳香族ビニルモノマーAは、アクリレートまたはメタクリレートモノマーであり;官能化用コモノマーB (官能基Zを担持する)は、好ましくは、TSPM、TSPA、TSESおよびこれらモノマーの混合物からなる群から選ばれ;架橋用コモノマーCは、それ自体ビニル化合物であり、好ましくは、HGDMA、PGDMA、EGDMA、DVBおよびこれらモノマーの混合物からなる群から選ばれる。
そのようにして、Z官能化架橋VPのナノ粒子は、水中エマルジョン中で、即ち、ラテックスの形(典型的には、水1リットル当り100gのポリマー)で得ることができる。ポリマー“ラテックス”は、知られているとおり、水性媒質中のポリマー粒子の懸濁液またはエマルジョンからなるコロイド系を意味するものと理解しなければならないことを思い起されたい。
図1に示すように、前記の項I-1-Aに従ってTEMにより特性決定したこれらのVPナノ粒子は、好ましくは、単離状態または凝結体(それ自体場合によって凝集し得る)の形のいずれであれ、実質的に球形(従って、ナノビーズの形状)で存在する。凝結体当りのナノ粒子の数は、典型的には2〜100個である。
【0019】
これらのナノビーズの平均直径は、例えば項I-1-Aにおいて示しているようなTEMによって測定し得、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜60nm、とりわけ10〜40nmである。
上記で説明した本発明に従うVPナノ粒子は、ポリマーマトリックスを補強するのに有利に使用し得、これらのマトリックスのポリマーは、任意の性質を有し、例えば、熱可塑性材料、熱硬化性材料、またはジエンもしくは非ジエンエラストマーであり得る。
これらのポリマーマトリックスにおいては、VPナノ粒子の量は、好ましくは、ポリマー100質量部当り10〜100質量部である。これらのナノ粒子の低密度故に、この量は、有利には10〜80部、好ましくは20〜50phr、さらにより好ましくは厳密に30phrよりも多い。
さらにまた、VP充填剤は、好ましくは補強用充填剤全体の80%よりも多く、より好ましくは90%(容量%)よりも多くを構成し、この充填剤全体の少量成分(好ましくは20容量%よりも少なく、より好ましくは10容量%よりも少ない)は、他の補強用無機充填剤、例えば、無機充填剤またはカーボンブラックによって構成される。
VPナノ粒子は、有利には、上記ポリマーマトリックス中の補強用充填剤の全体を構成し得る。
【0020】
II-2. VPナノ粒子のマスターバッチ
上述のVPナノ粒子は、そのポリマーマトリックス中に、有利には、マスターバッチによって、即ち、これらの粒子を少なくとも1種のポリマーと前以って混合して、これら粒子のその後の最終ポリマーマトリックス中への混入を容易にすることによって混入する。
“マスターバッチ”とは、知られているとおり、少なくとも1種のポリマー(例えば、エラストマーまたはエラストマー混合物)と補強用充填剤との混合物、即ち、即使用状態の最終ポリマーマトリックスのプレカーサー混合物を意味するものと理解すべきである。
例えば、このマスターバッチは、下記の工程を含む方法によって製造する:
‐ポリマーのラテックスと官能化した架橋VPのラテックスから出発する工程;
‐これらのラテックスを十分に混合する工程;
‐そのようにして得られた混合物を沈降させる工程;
‐その後、そのようにして得られた沈降物を洗浄し、乾燥させる工程。
上記ポリマーラテックスは、エマルジョン中で既に入手し得るポリマー、または有機溶媒と水の混合物中に一般的には界面活性剤によって乳化させる最初は溶液中のポリマーからなり得る(有機溶媒は、凝固または沈降時に排除する)。
【0021】
2種のラテックスを十分に混合する操作は、上記VPナノ粒子を上記ポリマー中に適切に分散させ且つ混合物全体を均質化させるように実施して、好ましくは20〜500g/l、より好ましくは50〜350g/lの固形分濃度を有するラテックス混合物を調製する。好ましくは、2種の出発ラテックスは、混合する前に水で希釈する(例えば、ラテックス1容量に対して水1容量)。
上記2種のラテックスの混合物は、当業者にとって既知の任意の方法により、例えば、機械的作用により或いは好ましくは凝固剤の作用により沈降させ得る。凝固剤は、任意の液体化合物で水混和性であるが、ポリマーに対する非溶媒(または貧溶媒)、例えば、食塩水溶液、好ましくはアルコール、または少なくとも1種のアルコールを含有する溶媒混合物(例えば、アルコールと水、またはアルコールとトルエン)である。より好ましくは、凝固剤は、メタノールまたはイソプロパノールのようなアルコール単独である。凝固は、好ましくは、大容量の凝固剤中で撹拌しながら周囲温度で実施する;典型的には、2種の希釈ラテックスの総混合容量の実質的少なくとも2倍の容量のアルコールを使用する。この工程においては、2種のラテックスの混合物を凝固剤上に注ぎ込むのが好ましく、その逆ではない。
洗浄し乾燥させた後に、マスターバッチは、少なくとも選択したポリマーと該ポリマーのマトリックス中に埋込まれたVPナノ粒子とを含む、いわゆるポリマー“小片”の形で得られる。
各種添加剤も、必要に応じて、これらの添加剤をマスターバッチにおいて適切と意図するか(例えば、安定剤、着色剤および耐UV剤としてのカーボンブラック、可塑剤、酸化防止剤等)、或いはマスターバッチを意図する最終ポリマーマトリックスにおいて適切と意図するかによって、マスターバッチ中に混入し得る。
マスターバッチのポリマーは、任意のポリマーであり得、最終ポリマーマトリックスのポリマー(1種以上)と同じであっても同じでなくてもよい。同じポリマーを使用し且つマスターバッチ中のVP含有量を意図する最終含有量に調整して、後で、補強用充填剤としての本発明のナノ粒子およびそれによって補強されたポリマーを含む最終ポリマー組成物の製造中にポリマーを追加しないようにすることが有利であり得る。
【0022】
II-3. VPナノ粒子のタイヤ補強用充填剤としての使用
上述した本発明に従うナノ粒子は、好ましくは、タイヤまたはタイヤ用の半製品の補強において使用し、これらの半製品は、とりわけ、トレッド類;例えば、これらトレッド類の下に置くことを意図する下地層;クラウン補強プライ類;サイドウォール類;カーカス補強プライ類;ビーズ類;プロテクター類;内部チューブ類;チューブレスタイヤ用の気密内部ゴム類、内部サイドウォール補強ゴム類、並びにパンクタイヤによる走行の場合の荷重支持を意図する他のゴム類からなる群から選ばれる。
そのような半製品を製造するには、(i) 少なくとも1種)のジエンエラストマー、(ii) (なくとも1種)の本発明に従うVP充填剤、および(iii) このVP充填剤とこのジエンエラストマー間に結合を与える(少なくとも1種)のカップリング剤を少なくともベースとするゴム組成物を使用する。
“ベースとする”なる表現は、使用する上記各種ベース成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらベース成分のあるものは、組成物の製造の種々の段階において或いはその後の硬化中に、少なくとも部分的に一緒に反応するかおよび/または反応するように意図し得る。
“ジエン”タイプの“エラストマー”または“ゴム”なる用語(2つの用語は同義である)は、知られているとおり、ジエンモノマー類(共役型あるいはそうでないにしろ、2個の炭素-炭素二重結合を担持するモノマー類)に少なくとも1部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BRと略記する)類、ポリイソプレン(IR)類、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー類、イソプレンコポリマー類およびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。
【0023】
1つの特定の実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR) (エマルジョン中で調製したSBR (E-SBR)または溶液中で調製したSBR (S-SBR)のいずれか)、またはSBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)またはBR/NR (またはBR/IR)のブレンド(混合物)である。
もう1つの特定の実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマー、即ち、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)類、各種イソプレンコポリマー類およびこれらのエラストマーのブレンドからなる群から選ばれるイソプレンホモポリマーまたはイソプレンコポリマーである。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム、または90%よりも多い、より好ましくは98%よりも多いシス-1,4-結合含有量(モル%)を有する合成シス1,4-ポリイソプレンである。
もう1つの特定の実施態様によれば、とりわけVP充填剤をタイヤサイドウォール、チューブレスタイヤの気密内部ゴム(または空気に対して不透過性の他の要素)の補強に意図する場合、ゴム組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、とりわけ、少なくとも1種のEPDMコポリマーまたはブチルゴム(必要に応じて、塩素化または臭素化した)を含有し得、これらのコポリマーは、単独でまたは、上述したような高不飽和ジエンエラストマー類、とりわけ、NRまたはIR或いはBRまたはSBRとの混合物中で使用する。
【0024】
カップリング剤(または結合剤)は、上記VP粒子の表面とこれら粒子を意図するポリマーとの間に十分な結合を確立してこれら粒子がその補強用充填剤機能を十分に奏し得ることを意図する。
カップリング剤は、当業者にとって周知であり、極めて多くの文献に記載されている。タイヤの製造において使用し得るジエンゴム組成物において、シリカのような無機補強用充填剤とジエンエラストマーとの結合を有効に付与し得る任意のカップリング剤、とりわけ、多官能性オルガノシラン類およびポリオルガノシロキサン類を使用し得る。
オルガノシラン類の例としては、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C1〜C4)アルコキシシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類、とりわけ、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドまたは式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを挙げることができる。また、有利なカップリング剤の例としては、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシル-ジC1〜C4)アルキルシリルプロピル)のポリスルフィド類、とりわけ、ビス-モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドまたはジスルフィド
も挙げることができる。上記のポリスルフィドアルコキシシラン類以外のカップリング剤の例としては、とりわけ、二官能性ポリオルガノシロキサン類またはヒドロキシシランポリスルフィド類を挙げることができる。
カップリング剤含有量は、好ましくは10phr未満、より好ましくは7phr未満、とりわけ5phr未満である。
勿論、上記ゴム組成物は、例えば、可塑剤および増量剤オイル;顔料;耐オゾンワックス、化学耐オゾン剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用または可塑化用樹脂;メチレン受容体または供与体;カップリング活性化剤;被覆剤;加工を容易にする薬剤;イオウまたはイオウおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミド供与体のいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において通常使用される通常の添加剤の全部または数種も含む。
【0025】
III. 実施例
III-1. 試験1
以下の実施例においては、(Z)官能化した架橋ポリメタクリレートの2種の充填剤を、3種のモノマー(メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、および充填剤Aにおいはトリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TSPM)、充填剤Bにおいてはトリメトキシシリルプロピルアクリレート(TSPA))のフリーラジカル重合によって合成し、次いで、タイヤ用のゴム組成物中に、VP充填剤のラテックスとジエンエラストマー(SBR)のラテックスを共沈させることによって得られたマスターバッチの形で混入した。
1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、Z官能基を担持するコモノマーB(この場合、TSPMまたはTSPA)の質量比は20〜30%であり、架橋用コモノマーC(この場合、EGDMA)の質量比は10%〜30%である。
A. ポリメタクリレートナノ粒子の合成
各種モノマーを、SDSの溶液(粉末状態でバブリング)を除いて全て水溶液であるので、前以って窒素バブリングに供する。反応は、機械的撹拌手段を備えた1.5Lの反応器内で実施する。840mlの水を導入し、30分の撹拌しながらの窒素バブリング後に、界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の0.9モル/l水溶液の50ml、リン酸水素ナトリウムとリン酸二水素アンモニウムの1モル/1等モル緩衝溶液の50mlを連続導入する。pH 7に緩衝し、350rpmで撹拌し、60℃に加熱したこの溶液に、下記の順序でモノマー充填剤を添加する:
充填剤A:48.7gのMMA (または47.1%の質量画分)、29.1gのEGDMA (28.1%の質量画分)、次いで25.6gのTSPM (24.8%の質量画分)。
充填剤B:48.7gのMMA (または47.8%の質量画分)、29.1gのEGDMA (28.6%の質量画分)、次いで24.1gのTSPA (23.7%の質量画分)。
その後、激しく撹拌(350rpm)しながら、得られたエマルジョンに45mlの過硫酸カリウム水溶液(0.125モル/l)を添加する。撹拌しながら60℃で60分後、18mlのヒドロキノン水溶液(0.5モル/l)を重合媒質に添加する。反応媒質を、エラストマーと混合する前に冷却する(乾燥抽出により測定した転換率:充填剤A 99%、充填剤B 94%)。
そのようにして得られた官能化し架橋したポリメタクリレートは、約10質量%の固形分(VP)と構成水(約90%)を含むラテックスの形にある。
【0026】
充填剤Aラテックスを、項I-1-Aに従って特性決定する。図1に示すTEM画像は、本発明のナノ粒子(素粒子)がこの場合ナノビーズ形状であり、その大多数が20〜60nmの直径を有することを示している。平均円直径は、34nmに等しい(標準偏差 6nm)。
この段階で、上記ポリメタクリレート(充填剤A)を単離し、乾燥させて、モノマーTSPMによって付与されたその(Z)官能化の量を、ケイ素量を分析することにより、以下のように進めて評価する:
‐水性媒質中のサンプルを、カ焼し次いで得られた灰分のアルカリ融合によって可溶化する第1工程;
‐ケイ素を、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP/AES)により定量分析する第2工程。
さらに正確には、操作は、以下のとおりである:サンプルを525℃で2時間カ焼する。次いで、融合を、得られた灰分において、1150℃(±50℃)でテトラホウ酸リチウム(例えば、1gのカ焼充填剤当り2g)により約25分間行なう。冷却後、得られた融合ビーズ全体を水中2%に希釈した塩酸中に80℃で溶解する。その後、溶液を目盛り付きフラスコに移し、調整する。
その後、ケイ素の分析を、目盛り付きフラスコの内容物について、ICP/AESによって実施する:水溶液を導入装置によりアルゴンプラズマ中に送り、そこで、水溶液は、存在する原子の脱溶媒和、原子化、次いで励起/イオン化の各段階を受ける。その後、251.611nmでのケイ素発光線を、モノクロメーターにより選択し、次いで、相応する元素の認証標準溶液から作成した較正曲線と対比して定量する(発光線の強度Iは、相応する元素の濃度Cに比例する)。
【0027】
結果は、下記の式に従う、乾燥サンプル(105℃で2時間前以って乾燥させた)に対するケイ素の質量%として表す:

式中、下記のとおりである:
‐C = mg/lで表すSi濃度;
‐V = lでの目盛り付きフラスコの容量;
‐M = mgでのサンプルの質量。
そのようにして測定したケイ素の量は、2.6%(±0.2%)に等しく、従って、理論量(即ち2.8%)に実質的に等しい。
充填剤Aナノ粒子の密度を、ヘリウムピクノメーター使用して粉末で測定する:得られた値は、1.25g/cm3に等しい。
【0028】
B. マスターバッチの製造
その後、上記ポリメタクリレートラテックスをSBRジエンエラストマー中に直接混入して、前記の項II-2に示したようにしてマスターバッチを得た。該マスターバッチ中で意図するポリメタクリレート充填剤含有量は、意図する最終ゴム組成物におけるように、39phr(100質量部のエラストマー当りの質量部)である。
SBRラテックスは、当業者にとって公知の方法で、以下の条件下に調製した:重合温度:5℃;界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム;開始剤:鉄II塩/ヒドロパーオキサイドレドックス系。転換率は、50〜60%の辺りであった。そのようにして調製したSBRは、以下の特性を有していた:25℃でのトルエン中0.1g/dlでの固有粘度:3.11;67に等しいムーニー粘度(MS);Tg (DSC) = -52℃;微構造:23.6%のスチレン、ブタジエン相:15.0%のビニル、70.1%のトランスおよび14.9%のシス。
SBRラテックスの乾燥物の量は、マスターバッチを調製する前に、乾燥抽出物について秤量することによって測定する。SBRラテックスは、水中でその容量の3倍希釈する、即ち、下記のとおりである:
充填剤A:652mlの177.1g/lのSBRラテックス(115.4gのSBR)と1304mlの希釈水;
充填剤B:408mlの195.9g/lのSBRラテックス(80gのSBR)と820mlの希釈水。
合成を終えた時点で、上記各ポリアクリレートラテックスを冷却し、次いで、39phrの充填剤の割合に希釈した上記SBRに添加する、即ち、
充填剤A:497mlの90.5g/lのポリメタクリレート充填剤ラテックス (45gの充填剤);
充填剤B:368mlの84.8g/lのポリメタクリレート充填剤ラテックス (31.2gの充填剤)。
得られた混合物を緩やかに均質化する。その後、混合物を、100ml/分の速度で、350rpmで撹拌している5000ml (充填剤A)、3500ml (充填剤B)のメタノールに添加する。そのようにして得られた沈降物を濾紙上で濾過し、洗浄水の一定の僅かな残存泡立ちしか無く且つ硝酸銀による洗浄水試験陰性まで水洗する。そのようにして洗浄した沈降物を60℃で3〜4日間窒素中で減圧下に乾燥させる。156g (充填剤A)および107.7g (充填剤B)の乾燥マスターバッチをそのようにして回収する。
【0029】
C. ゴム組成物の製造
対照組成物(HDシリカ充填剤)を、以下のようにして、通常の方法で製造する:先ずは(“非生産段階”)、37.5phrのオイルで前以って増量したSBRエラストマーと充填剤の1部を、密閉ミキサー内に導入する;ミキサーの初期タンク温度は、約90℃である。1分程度の適切な混練時間後、カップリング剤および充填剤の残りの1部を添加する。加硫系を除く他の成分を、2分後に添加する。その場合、密閉ミキサーを75%まで満す。その後、約6分間の熱機械加工を、70rpmの平均ブレード速度により、約135℃の落下温度に達するまで実施する。
手順は、本発明に従うVP充填剤(ポリメタクリレート)を導入する今回の第2および第3組成物においても同じであるが、VP充填剤とジエンエラストマーを、39phrのVP粒子を含有する前以って調製したマスターバッチの形で、開始から一度に導入する;その後、増量剤オイル(37.5phrのTDAEオイル)を漸次的に混入する。
熱機械的混合加工後、得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、加硫系(イオウおよびスルフェンアミドタイプ一次促進剤)を、全成分を適切な時間(5〜12分間)混合する(“生産工程”)により、開放ミキサーにおいて30℃で添加する。
その後、そのようにして得られた組成物を、ゴムプレート(厚さ2〜3mm)の形にカレンダー加工してその機械特性を測定するか、或いはタイヤ用の半製品、例えば、トレッドの形に押出加工する。加硫(硬化)は、加圧下に150℃で40分間実施する。
【0030】
D. ゴム組成物の特性決定
ゴム組成物は、下記で示すように、硬化の前後において特性決定する。
引張試験
これらの試験は、硬化後の弾性応力および破壊時諸特性を測定するのを可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46-002に従って行う。100%伸び(M100と記したモジュラス)、300%伸び(M300)および400%伸び(M400)においてMPaで表す真の割線モジュラス(即ち、試験片の実際の断面まで減じて算出した)を、1回目の伸び(即ち、順応サイクルなし)で測定する。これらの引張測定は、すべて、標準温度および湿度条件((23±2℃;50±5%相対湿度)下において実施する。
流動度測定
測定は、DIN規格 53529-パート3 (1983年6月)規格に従う振動室レオメーターにより、150℃で実施する。時間の関数としての流動度測定トルクの進展が、加硫反応後の組成物の剛性の進展を説明する。測定値を、DIN 53529-パート2 (1983年3月)規格に従って加工する。30%〜80%転換率において算出する順位1の転換速度定数K(min-1)を測定する;この測定は、加硫速度の評価を可能にする(Kが高いほど、その速度は速い)。
動的特性
動的特性ΔG*およびtan(δ)maxを、ASTM D 5992-96規格に従い、ビスコアナライザー(Metravib VA4000)で測定する。規格ASTM D 1349-99規格に従う標準温度条件(23℃)下に10Hzの周波数での単純交互正弦剪断応力に供した加硫組成物のサンプル(厚さ2mmおよび断面積79mm2を有する円筒状試験片)の応答を記録する。スキャンを、0.1から50%まで(前進サイクル)の、次いで50%から0.1%まで(戻りサイクル)のピーク-ピーク歪み増幅において実施する。使用する結果は、複素動的剪断弾性率(G*)および損失係数tanδである。戻りサイクルにおいて、観察するtanδの最高値を表し(tanδmax)、同様に0.1および50%歪み値間の複素弾性率の差(ΔG*)も表す(パイネ効果)。
【0031】
E. 比較ゴム特性試験の結果
試験目的は、本発明に従うナノ粒子の性能を通常の無機充填剤(HDシリカ)の性能と比較することである。
このために、上記項Cに従って調製した3通りの組成物(これらの組成物の一般的配合は、低転がり抵抗性と高耐摩耗性を併せ持つ高性能タイヤトレッド(“グリーンタイヤ”としても知られる低エネルギー消費性の乗用車タイヤ)においては標準的である)を比較する。対照組成物を補強するのに選択したHDシリカは、知られているとおり極めて高い補強力を有するタイヤ級シリカ(Rhodia社からの“Zeosil”タイプの“1165MP”、約2.1 g/cm3の密度を有する)である。
対照組成物においては、使用したジエンエラストマーはSBRであり、その合成は項III-2において説明しており、37.5%のTDAEオイルで前以って増量する(即ち、100phrの乾燥SBR当り37.5phrのオイル)。
試験した3つの組成物は、補強用充填剤の本質は別にして、厳密に同一である:
‐組成物C-1:HDSシリカ(対照);
‐組成物C-2:TSPM官能化VP (本発明);
‐組成物C-3:Z官能化VP (TSPA)。
補強用充填剤含有量を、等容量充填剤画分(同じ容量、即ち、各組成物において約19%の充填剤)に調整する。ポリマー充填剤の比表面積の方が低く、従って、組成物C-2およびC-3に導入するTESPTカップリング剤の量は低い。
組成物C-2およびC-3(本発明)においては、VPナノ粒子は、補強用充填剤全体の約97%(容量)を示しており、補強用充填剤全体は小割合(2phr)のカーボンブラックを含む。
【0032】
表1および2は、各組成物の配合(表1:phrで表す各種成分の含有量)および150℃で40分の硬化前後の各組成物の特性(表2)を続けて示している。
表2の種々の結果の検証は、対照組成物C-1と比較した本発明に従うナノ粒子で補強した組成物C-2およびC-3について、下記のことを示している:
‐未硬化状態における、改良された加硫速度(定数K);
‐対照組成物と対比してほぼ16%の極めて有意な密度の低下(ヘリウムピクノメーターを使用して測定) (勿論、硬化後に維持された差異);
‐硬化後の、高歪み(M100、M300、M400)における等価のモジュラス値、このことは、参照HDシリカによってもたらされた補強レベルと等価の高補強レベルの当業者に対する明白な指標である。
‐大事なことに、転がり抵抗性および加熱の公認された指標であるtanδmaxとΔG*の値の大きな低下によって例証されているように、予期に反して極めて実質的に改良されているヒステリシス特性。
III-2. 試験2
以下の製造例においては、3種のモノマー(メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレート(TSPA))のラジカル重合によって項III-1-Aにおいて合成した官能(Z)化し架橋させたポリメタクリレート充填剤(充填剤B)を、タイヤゴム組成物中に、VP充填剤ラテックスとNRラテックスとの共沈によって得られたマスターバッチの形で混入する。
A. マスターバッチの製造
上記ポリメタクリレートラテックスを、天然ゴムに直接混入する。マスターバッチ中で目標とする上記ポリメタクリレート充填剤含有量は、39phr (エラストマー100質量部当りの質量部)である。
NRラテックスの乾燥物の量は、マスターバッチを調製する前に、乾燥抽出物について秤量することによって測定する。NRラテックスを水で3倍希釈する、即ち、447mlの178.8g/lのNRラテックス(80gのNR)と900mlの希釈水である。
合成を終えた時点で、ポリメタクリレート充填剤ラテックス(項III-1=Aにおいて合成した充填剤B)を室温に冷却し、その後、39phrの充填剤の割合に希釈したNRラテックス、即ち、368mlの84.8g/lポリメタクリレート充填剤ラテックス(31.2gの充填剤)に添加する。得られた混合物を緩やかに均質化する。その後、100ml/分の速度で、混合物を350rpmで撹拌している3500mlのメタノールに添加する。そのようにして得られた沈降物を濾紙上で濾過し、洗浄水の一定の僅かな残存泡立ちしか無く且つ硝酸銀による洗浄水試験陰性まで水洗する。そのようにして洗浄した沈降物を60℃で3〜4日間窒素中で減圧下に乾燥させる。110gの乾燥マスターバッチをそのようにして回収する。
【0033】
B. ゴム特性試験
その後、NRゴムの2通りの組成物を、上記試験1において示したようにして調製する(約145℃の落下温度);これら2つの組成物は、以下のように、その補強用充填剤の性質においてのみ異なる:
‐組成物C-4 (対照):HDシリカ;
‐組成物C-5 (本発明):TSPA官能化VP
優先的応用例として、そのようなゴム組成物は、典型的には、道路接触系、とりわけ、NR系ゴムマトリックスを通常使用するタイヤの部品、例えば、タイヤの内部安全ベアリング、サイドウォール、タイヤのビーズ領域、トレッドの下地層、さらにまた、これらタイヤの、とりわけ重量貨物車両用のトレッドにおいて使用される。
補強用充填剤含有量を、等容量充填剤画分(各組成物において同じ容量(即ち17%)の充填剤)に調整する。ポリマー充填剤の比表面積の方が低いので、組成物C-5に導入するTESPTカップリング剤の量は著しく低い。本発明の組成物C-5においては、VP充填剤は、補強用充填剤全体の約97%(容量)を示しており、補強用充填剤全体は小割合(1phr)のカーボンブラックを含む。
【0034】
表3および4は、各組成物の配合(表3:phrで表す各種成分の含有量)および150℃で25分の硬化前後の各組成物の特性(表4)を続けて示している。
表4の種々の結果の検証は、対照組成物C-4と比較した本発明に従う組成物C-5について、下記のことを示している:
‐未硬化状態における、同様なスコーチ安全性および加硫速度(定数K);
‐極めて有意な密度の低下(ほぼ−14%);
‐硬化後の、極めて高い歪みにおける高いモジュラス値(M600における値参照);このことは、参照HDシリカによって得られた補強レベルに対して優れていない場合でも少なくとも同等である、上記VP充填剤によって得られた高い補強レベルを示している。
‐大事なことに、合成ジエンエラストマー(SBR)において観測された上記の結果の全て、この場合も大きく改良されているヒステリシス特性(極めて実質的に低下したtanδmaxとΔG*の値)を大いに確認し得る。
【0035】
結論として、本発明に従うVPナノ粒子は、カーボンブラックまたはHDシリカのような通常の補強用充填剤と比較してのその極めて大幅に低下した密度故に、ポリマー組成物の重量を極めて実質的に低下させることを可能にしている。
この目的は、これらの通常の充填剤と比較して、耐摩耗性または耐亀裂性と同義である補強性を損なうこともないだけでなく、HDシリカのような通常の無機補強用充填剤と比較してさらに改良された転がり抵抗性または加熱性と同義であるヒステリシスの有意の低下を可能にすることによっても達成されている。
最後に、上記VP充填剤の1つの顕著な利点を強調しなければならない:ポリマーマトリックスの密度は上記VP充填剤自体の密度と実質的に等しくなるので、それによって、上記ポリマーマトリックスの密度を増大させることなく補強用充填剤の量を増大させることが可能である。
本発明のナノ粒子は、有利には、ポリマーがとりわけ熱可塑性物質、熱硬化性物質またはエラストマーのいずれであれ、任意のタイプのポリマーマトリックス(例えば、ポリアミド類;ポリエステル類;ポリプロピレン、ポリエチレンのようなポリオレフィン類;PVC;ポリカーボネート類;ポリアクリル類;エポキシ樹脂、ポリシロキサン類、ポリウレタン類、ジエンエラストマー類)用の補強用充填剤として使用し得る。
【0036】
表1

(1) SBRエラストマー (項III-1-Bで説明したように合成);
(2) HDシリカ (Rhodia社からの“Zeosil”タイプ“1165MP”);
(3) Z官能化VP (項III-Aにおけるように合成;充填剤A);
(4) TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) TDAE増量オイル (Klaus Dahleke社からの“Vivatec 500”);
(6) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニルパラフェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6-PPD”);
(7) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
(8) Z官能化VP (項III-Aにおけるように合成;充填剤B)。

表2

【0037】
表3

(1) 天然ゴム;
(2) HDシリカ (Rhodia社からの“Zeosil”タイプ“1165MP”);
(3) TSPA官能化NAVP (項III-1-Aに従って合成;充填剤B);
(4) TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニルパラフェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6-PPD”);
(6) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。

表4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中の補強用充填剤としてとりわけ有用である、官能化された架橋ビニルポリマーのナノ粒子であって、前記ビニルポリマーが少なくとも下記のモノマーのコポリマーであり、これらのモノマーが全てフリーラジカル重合により共重合可能であることを特徴とするナノ粒子:
非芳香族ビニルモノマー“A”;
式≡Si-Xの官能基Zを担持し、Xがヒドロキシルまたは加水分解可能な基を示すモノマー“B”;
架橋用モノマー“C”、即ち、前記重合の点で少なくとも二官能性であるモノマー。
【請求項2】
Xがハロゲンである、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
Xが塩素である、請求項2記載のナノ粒子。
【請求項4】
Xが式ORに相応し、式中、Rは、水素または直鎖もしくは枝分れの1価の炭化水素基を示す、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
Rが、水素、アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選ばれ、前記アルキルおよびアリールが1〜15個の炭素原子を含む、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
Rが、水素、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルコキシアルキル、C5〜C10シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれる、請求項5記載のナノ粒子。
【請求項7】
Zが、下記の式の1つに相応する、請求項6記載のナノ粒子:
【化1】

(式中、基R1は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、C1〜C8アルキル、C5〜C8シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれ;
基R2は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、ヒドロキシル、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルからなる群から選ばれる)。
【請求項8】
基R1が、C1〜C4アルキル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から選ばれる、請求項7記載のナノ粒子。
【請求項9】
基R1が、C1〜C4アルキルからなる群から選ばれる、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項10】
基R2が、ヒドロキシルおよびC1〜C6アルコキシルからなる群から選ばれる、請求項7〜9のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項11】
基R2が、ヒドロキシルおよびC1〜C4アルコキシルからなる群から選ばれる、請求項10記載のナノ粒子。
【請求項12】
基R1が、メチルおよびエチルの中から選ばれ;基R2が、ヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルからなる群から選ばれる、請求項11記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記コポリマーの主要質量画分が、非芳香族ビニル画分である、請求項1〜12のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項14】
モノマーAが、1個以上の、好ましくは1個の、フリーラジカル重合によって重合可能な官能基を担持する、請求項1〜13のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項15】
モノマーAが、下記の式(II)に相応する、請求項14記載のナノ粒子:
【化2】

(式中、基R3は、水素、C1〜C8アルキルおよびC5〜C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
基Yは、ハロゲン、基OH、OR'、SR'、C≡N、C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R'')、C(O)R'およびOC(O)R'からなる群から選ばれ、式中、R'およびR”は、同一または異なるものであり得て、1〜12個の炭素原子を含むアルキル、並びに6〜20個の炭素原子を含むアリール、アラルキルまたはアルカリールからなる群から選ばれる)。
【請求項16】
式(II)が、下記の特徴を満たす、請求項15記載のナノ粒子:
R3は、水素およびC1〜C4アルキルからなる群から選ばれ;
Yは、塩素、基C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R”)およびOC(O)R'からなる群から選ばれる。
【請求項17】
式(II)が、下記の特徴を満たす、請求項16記載のナノ粒子:
R3は、水素またはメチルであり;
Yは、C(O)OR'基であり、式中、R'は、好ましくは、1〜8個の炭素原子を含むアルキルである。
【請求項18】
モノマーAが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項17記載のナノ粒子。
【請求項19】
モノマーAが、メチルアクリレートまたはメタクリレート、好ましくはメチルメタクリレートである、請求項18記載のナノ粒子。
【請求項20】
モノマーBが、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜19のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項21】
モノマーBが、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項20記載のナノ粒子。
【請求項22】
モノマーBが、ヒドロキシシリルプロピルアクリレート、ヒドロキシシリルプロピルメタクリレート、メトキシシリルプロピルアクリレート、メトキシシリルプロピルメタクリレート、エトキシシリルプロピルアクリレート、エトキシシリルプロピルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項21記載のナノ粒子。
【請求項23】
コモノマーBが、トリメトキシシリルプロピルアクリレートまたはメタクリレートである、請求項22記載のナノ粒子。
【請求項24】
コモノマーBが、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-(C1〜C4)アルコキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜19のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項25】
コモノマーBが、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-メトキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-エトキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項24記載のナノ粒子。
【請求項26】
コモノマーBが、スチリルエチルヒドロキシシラン、スチリルエチルメトキシシラン、スチリルエチルエトキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項25記載のナノ粒子。
【請求項27】
コモノマーBが、スチリルエチルトリメトキシシランである、請求項26記載のナノ粒子。
【請求項28】
前記ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5%よりも高い、請求項1〜27のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項29】
前記ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5〜30%である、請求項28記載のナノ粒子。
【請求項30】
前記ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5〜20%である、請求項29記載のナノ粒子。
【請求項31】
コモノマーCが、少なくとも2個の重合可能な不飽和基を担持する、請求項1〜30のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項32】
前記重合可能な不飽和基が、エチレン基である、請求項31記載のナノ粒子。
【請求項33】
前記ビニルポリマーが、フリーラジカル重合によって得られる、請求項1〜32のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項34】
コモノマーCが、ポリオールジアクリレート、ポリオールトリアクリレート、ポリオールジメタクリレート、ポリオールトリメタクリレート、アルキレンジアクリルアミド、アルキレンジメタクリルアミド、少なくとも2個のビニル基を担持するビニル芳香族化合物、およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜33のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項35】
コモノマーCが、スチレン化合物である、請求項34記載のナノ粒子。
【請求項36】
スチレン化合物が、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項35記載のナノ粒子。
【請求項37】
コモノマーCが、ポリオールジアクリレート、ポリオールジメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項34記載のナノ粒子。
【請求項38】
コモノマーCが、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項39】
前記ビニルポリマー中のコモノマーCの質量比が、5%よりも高い、請求項1〜38のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項40】
前記ビニルポリマー中のモノマーCの質量比が、10〜30%である、請求項39記載のナノ粒子。
【請求項41】
モノマーBの質量比が、10〜30%である、請求項40記載のナノ粒子。
【請求項42】
モノマーBの質量比が、20〜30%である、請求項41記載のナノ粒子。
【請求項43】
ナノ粒子の平均直径が、10〜100nmである、請求項1〜42のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項44】
ナノ粒子の平均直径が、10〜60nmである、請求項43記載のナノ粒子。
【請求項45】
前記ビニルポリマーが、メチルメタクリレート(モノマーA)、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(モノマーB)およびエチレングリコールジメタクリレート(モノマーC)のコポリマーである、請求項38〜44のいずれか1項記載のナノ粒子。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか1項記載のナノ粒子の、ポリマーマトリックスを補強するための使用。
【請求項47】
前記ポリマーマトリックスのポリマーが、エラストマーである、請求項46記載の使用。
【請求項48】
タイヤの補強における、請求項46の使用。
【請求項49】
ポリマーマトリックス中に埋込んだ請求項1〜45のいずれか1項記載のナノ粒子を含むマスターバッチ。
【請求項50】
前記ポリマーマトリックスのポリマーが、エラストマーである、請求項49記載のマスターバッチ。
【請求項51】
少なくとも1種のポリマー、請求項1〜45のいずれか1項記載のナノ粒子、および前記ポリマーと前記ナノ粒子表面間に結合を与えるカップリング剤を含むポリマー組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−542826(P2009−542826A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517005(P2009−517005)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005771
【国際公開番号】WO2008/003434
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】