説明

官能化ポリマー

【課題】タイヤ部品用として優れた特性を有するポリブタジエンゴムを提供する。
【解決手段】(i)ネオジム化合物で代表されるランタニド化合物、アルミノキサン及び他の有機アルミニウム化合物を含むアルキル化剤より成るランタニド系触媒を使用して、1,3−ブタジエンを重合させて、反応性のシス−1,4−ポリブタジエンを生成させる工程、及び(ii)該反応性のシス−1,4−ポリブタジエンにアジン化合物を反応させる工程により官能化ポリブタジエンを製造する。
【効果】ペイン効果及びヒステリシスの減少したタイヤ部品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月28日に出願された米国仮出願第60/754,535号の利益を主張し、引用してここに援用する。
【0002】
本発明の一以上の実施態様は、官能化ポリマー及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ランタニド系の触媒系は、高いシス−1,4−結合含量を有する共役ジエンポリマーを製造するために有用である。ランタニド系触媒を用いて調製したシス−1,4−ポリジエンは、重合完了時にいくらかのポリマー鎖が活性末端を有するので、偽リビング特性を示し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一以上の実施態様において、本発明は、官能化ポリマーを調製する方法を含み、該方法は、(i)ランタニド系触媒を使用して共役ジエンモノマーを重合させて反応性ポリマーを生成させる工程、及び(ii)該反応性ポリマーにアジン化合物を反応させる工程を含む。
【0005】
一以上の実施態様において、本発明は、更に、(i)ランタニド系触媒を使用して共役ジエンモノマーを重合させて反応性ポリマーを生成させる工程、及び(ii)該反応性ポリマーにアジン化合物を反応させる工程によって調製した官能化ポリマーを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一以上の実施態様によれば、ランタニド系触媒を用いて共役ジエンモノマーを重合させることにより偽リビングポリマーを生成させることができ、その後、アジン化合物を反応させることによって、該ポリマーを官能化できる。得られた官能化ポリマーは、タイヤ部品の製造に使用できる。
【0007】
共役ジエンモノマーの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、及び2,4−ヘキサジエンが挙げられる。また、共重合においては、二種以上の共役ジエンモノマーの混合物を利用できる。
【0008】
本発明の一以上の実施態様の実施は、如何なる特定のランタニド系触媒の選択によっても制限されない。一以上の実施態様において、触媒組成物は、ランタニド系化合物、アルキル化剤、及び一以上の不安定なハロゲン原子を含む含ハロゲン化合物を含むことができる。ランタニド化合物及び/又はアルキル化剤が一以上の不安定なハロゲン原子を含む場合、該触媒は、別個の含ハロゲン化合物を含む必要がなく;例えば、該触媒は、単にハロゲン化ランタニド化合物とアルキル化剤を含んでもよい。特定の実施態様において、該アルキル化剤は、アルミノキサン及び少なくとも一種の他の有機アルミニウム化合物の両方を含んでもよい。更に他の実施態様において、非配位性アニオンを含む化合物、又は非配位性アニオン前駆体、すなわち化学反応により非配位性アニオンを形成できる化合物を、含ハロゲン化合物の代わりに使用できる。一実施態様において、該アルキル化剤が有機アルミニウム水素化物の化合物を含む場合、該含ハロゲン化合物は、米国特許第7,008,899号公報に開示されているようなスズハロゲン化物でもよく、該公報を引用してここに援用する。かかる実施態様又は他の実施態様においては、他の有機金属化合物、ルイス塩基、及び/又は触媒変性剤を上記成分又は要素に加えて使用してもよい。例えば、一実施態様においては、米国特許第6,699,813号公報に開示されているような分子量調整剤として含ニッケル化合物を使用することができ、該公報を引用してここに援用する。
【0009】
各種ランタニド化合物又はその混合物を使用できる。一以上の実施態様において、かかる化合物は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒中で可溶性である。他の実施態様においては、重合媒体中で分散して触媒活性種を形成できる炭化水素に不溶性のランタニド化合物もまた有用である。
【0010】
ランタニド化合物は、少なくとも一原子のランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムを含む。ジジムとしては、モズナ砂から得た希土類の市販の混合物が挙げられる。
【0011】
前記ランタニド化合物中のランタニド原子は、特に限定されないが、0、+2、+3、及び+4の酸化状態を含む様々な酸化状態をとることができる。ランタニド化合物としては、特に限定されないが、ランタニドカルボン酸塩、ランタニド有機リン酸塩、ランタニド有機ホスホン酸塩、ランタニド有機ホスフィン酸塩、ランタニドカルバミン酸塩、ランタニドジチオカルバミン酸塩、ランタニドキサントゲン酸塩、ランタニドβ−ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はランタニドアリールオキシド、ランタニドハロゲン化物、ランタニド偽ハロゲン化物、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられる。
【0012】
本発明の実施を限定する意図なしに、ネオジム化合物に焦点をあてて更に議論するが、当業者であれば、他のランタニド金属に基づく類似の化合物を選択できるであろう。
【0013】
ネオジムカルボン酸塩としては、ネオジム蟻酸塩、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジム吉草酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2−エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(ネオジムバーサテートとしても知られる)、ネオジムナフテン酸塩、ネオジムステアリン酸塩、ネオジムオレイン酸塩、ネオジム安息香酸塩、及びネオジムピコリン酸塩が挙げられる。
【0014】
ネオジム有機リン酸塩としては、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)リン酸塩、ネオジムジデシルリン酸塩、ネオジムジドデシルリン酸塩、ネオジムジオクタデシルリン酸塩、ネオジムジオレイルリン酸塩、ネオジムジフェニルリン酸塩、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)リン酸塩、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)リン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)リン酸塩、及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)リン酸塩が挙げられる。
【0015】
ネオジム有機ホスホン酸塩としては、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、ネオジムオクタデシルホスホン酸塩、ネオジムオレイルホスホン酸塩、ネオジムフェニルホスホン酸塩、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ネオジムブチルブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルドデシルホスホン酸塩、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホン酸塩、ネオジムオレイルオレイルホスホン酸塩、ネオジムフェニルフェニルホスホン酸塩、ネオジム(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)ブチルホスホン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、及びネオジム(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩が挙げられる。
【0016】
ネオジム有機ホスフィン酸塩としては、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジムデシルホスフィン酸塩、ネオジムドデシルホスフィン酸塩、ネオジムオクタデシルホスフィン酸塩、ネオジムオレイルホスフィン酸塩、ネオジムフェニルホスフィン酸塩、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ネオジムジブチルホスフィン酸塩、ネオムジペンチルホスフィン酸塩、ネオジムジヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムジヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムジオクチルホスフィン酸塩、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジムジデシルホスフィン酸塩、ネオジムジドデシルホスフィン酸塩、ネオジムジオクタデシルホスフィン酸塩、ネオジムジオレイルホスフィン酸塩、ネオジムジフェニルホスフィン酸塩、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、及びネオジムブチル(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩が挙げられる。
【0017】
ネオジムカルバミン酸塩としては、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、及びネオジムジベンジルカルバミン酸塩が挙げられる。
【0018】
ネオジムジチオカルバミン酸塩としては、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩、及びネオジムジベンジルジチオカルバミン酸塩が挙げられる。
【0019】
ネオジムキサントゲン酸塩としては、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、及びネオジムベンジルキサントゲン酸塩が挙げられる。
【0020】
ネオジムβ−ジケトネートとしては、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、及びネオジム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられる。
【0021】
ネオジムアルコキシド又はネオジムアリールオキシドとしては、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2−エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられる。
【0022】
ネオジムハロゲン化物としては、ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、及びネオジムヨウ化物が挙げられる。適切なネオジム偽ハロゲン化物としては、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアン酸塩が挙げられる。好適なネオジムオキシハライドとしては、ネオジムオキシフルオライド、ネオジムオキシクロライド、及びネオジムオキシブロマイドが挙げられる。不安定なハロゲン原子を含むネオジムハロゲン化物、ネオジムオキシハロゲン化物、又は他のネオジム化合物を使用する場合、含ネオジム化合物は、含ハロゲン化合物としても作用する。テトラヒドロフラン(THF)等のルイス塩基を、不活性な有機溶媒中でこのクラスのネオジム化合物を可溶化するための助剤として使用してもよい。
【0023】
有機ランタニド化合物という用語は、少なくとも一つのランタニド−炭素結合を含むランタニド化合物を指す。かかる化合物は、限定しないが、大部分がシクロペンタジエニル(Cp)配位子、置換シクロペンタジエニル配位子、アリル配位子、及び置換アリル配位子を含む化合物である。好適な有機ランタニド化合物としては、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Clが挙げられる[式中、Lnはランタニド原子を表し、またRはヒドロカルビル基を表す]。
【0024】
各種アルキル化剤、又はその混合物を使用できる。ヒドロカルビル化剤とも呼ばれるアルキル剤は、ヒドロカルビル基を別の金属に転移できる有機金属化合物を包含する。一般に、かかる試薬は、1族、2族、3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)等の陽イオン性金属の有機金属化合物を含む。一以上の実施態様において、アルキル化剤は、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物を含む。該アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含む場合、かかるアルキル化剤は、含ハロゲン化合物としても作用する。
【0025】
“有機アルミニウム化合物”という用語は、少なくとも一つのアルミニウム−炭素結合を含むアルミニウム化合物を指す。一以上の実施態様において、有機アルミニウム化合物は炭化水素溶媒中で可溶性である。
【0026】
一以上の実施態様において、有機アルミニウム化合物としては、式AlRnX3-n[式中、Rはそれぞれ炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基で、同一でも異なってもよく、Xはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、同一でも異なってもよく、nは1から3の整数である]で表される化合物が挙げられる。一以上の実施態様において、各Rは、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基でもよい。かかるヒドロカルビル基は、特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0027】
有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムハイドライド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハイドライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート化合物、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド化合物、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられる。
【0028】
トリヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられる。
【0029】
ジヒドロカルビルアルミニウムハイドライドとしては、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−オクチルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジ−p−トリルアルミニウムハイドライド、ジベンジルアルミニウムハイドライド、フェニルエチルアルミニウムハイドライド、フェニル−n−プロピルアルミニウムハイドライド、フェニルイソプロピルアルミニウムハイドライド、フェニル−n−ブチルアルミニウムハイドライド、フェニルイソブチルアルミニウムハイドライド、フェニル−n−オクチルアルミニウムハイドライド、p−トリルエチルアルミニウムハイドライド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムハイドライド、p−トリルイソプロピルアルミニウムハイドライド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムハイドライド、p−トリルイソブチルアルミニウムハイドライド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムハイドライド、ベンジルエチルアルミニウムハイドライド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ベンジルイソプロピルアルミニウムハイドライド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ベンジルイソブチルアルミニウムハイドライド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
【0030】
ヒドロカルビルアルミニウムジハイドライドとしては、エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソプロピルアルミニウムジハイドライド、n−ブチルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、及びn−オクチルアルミニウムジハイドライドが挙げられる。
【0031】
ジヒドロカルビルアルミニウムクロライド化合物としては、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロライド、ジフェニルアルミニウムクロライド、ジ−p−トリルアルミニウムクロライド、ジベンジルアルミニウムクロライド、フェニルエチルアルミニウムクロライド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロライド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロライド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロライド、フェニルイソブチルアルミニウムクロライド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロライド、p−トリルエチルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロライド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロライド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロライド、ベンジルエチルアルミニウムクロライド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロライド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロライド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロライド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロライド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロライドが挙げられる。
【0032】
ヒドロカルビルアルミニウムジクロライドとしては、エチルアルミニウムジクロライド、n−プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、及びn−オクチルアルミニウムジクロライドが挙げられる。
【0033】
他の有機アルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、イソブチルアルミニウムジフェノキシド等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
他クラスの有機アルミニウム化合物としては、アルミノキサン類が挙げられる。アルミノキサン類としては、次の一般式:
【化1】

で表されるオリゴマー状の直鎖アルミノキサン類、及び次の一般式:
【化2】

[式中、xは1から約100の整数で、他実施態様においては約10から約50でもよく;yは2から100の整数で、他実施態様においては約3から約20でもよく;各Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であって、同一でも異なってもよい]で示すことができるオリゴマー状の環式アルミノキサン類が挙げられる。一以上の実施態様において、各Rは、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基である。これらヒドロカルビル基は、特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。本願で使用するアルミノキサンの分子数は、オリゴマー状のアルミノキサン分子のモル数というよりもアルミニウム原子のモル数を指すことに注意すべきである。かかる慣行は、アルミノキサンを利用する触媒の技術分野において一般に採用されている。
【0035】
アルミノキサン類は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物に水を反応させることによって調製できる。該反応は(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解し、その後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩中に含まれる結晶水、又は無機化合物もしくは有機化合物に吸着した水と反応させる方法、(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合させるモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法、等の公知の反応に従って実行できる。
【0036】
アルミノキサン化合物としては、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、2,6−ジメチルフェニルアルミノキサン等、及びこれらの混合物が挙げられる。変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンの約20−80%のメチル基を、当業者に既知の方法を用いてC2からC12のヒドロカルビル基、好ましくはイソブチル基、で置換することによって形成できる。
【0037】
アルミノキサン類は、それのみで又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用できる。一実施態様において、メチルアルミノキサン及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等の少なくとも一つの他の有機アルミニウム化合物(例えばAlRnX3-n)を組み合わせて使用する。
【0038】
有機マグネシウム化合物という用語は、少なくとも一つのマグネシウム−炭素結合を含むマグネシウム化合物を指す。有機マグネシウム化合物は、炭化水素溶媒中で溶解する。利用可能な有機マグネシウム化合物の一クラスは、式MgR2[式中、各Rは一価の有機基で、同一でも異なってもよく、ただし、該基は炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している]で表される。一以上の実施態様において、各Rはヒドロカルビル基であり、また生成する有機マグネシウム化合物はジヒドロカルビルマグネシウム化合物である。ヒドロカルビル基の例としては、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、及びアルキニル基が挙げられる。これらのヒドロカルビル基は、特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0039】
ジヒドロカルビルマグネシウム化合物の例としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジシソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
利用可能な別クラスの有機マグネシウム化合物としては、式RMgX[式中、Rは一価の有機基であり、ただし、該基は炭素原子を介してマグネシウム原子に結合し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシト゛基、又はアリールオキシド基である]で表される化合物が挙げられる。一以上の実施態様において、Rは、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基でもよい。これらのヒドロカルビル基は、特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一以上の実施態様において、Xはカルボキシル基、アルコキシト゛基、又はアリールオキシド基である。
【0041】
式RMgXで表される有機マグネシウム化合物の典型的な種類としては、特に限定されないが、ヒドロカルビルマグネシウム水素化物、ヒドロカルビルマグネシウムハロゲン化物、ヒドロカルビルマグネシウムカルボン酸塩、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、ヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
式RMgXで表される有機マグネシウム化合物の具体例としては、メチルマグネシウム水素化物、エチルマグネシウム水素化物、ブチルマグネシウム水素化物、ヘキシルマグネシウム水素化物、フェニルマグネシウム水素化物、ベンジルマグネシウム水素化物、メチルマグネシウム塩化物、エチルマグネシウム塩化物、ブチルマグネシウム塩化物、ヘキシルマグネシウム塩化物、フェニルマグネシウム塩化物、ベンジルマグネシウム塩化物、メチルマグネシウム臭化物、エチルマグネシウム臭化物、ブチルマグネシウム臭化物、ヘキシルマグネシウム臭化物、フェニルマグネシウム臭化物、ベンジルマグネシウム臭化物、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、ベンジルマグネシウムフェノキシド等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
一以上の不安定なハロゲン原子を含む、各種含ハロゲン化合物又はこれらの混合物を使用できる。ハロゲン原子の例としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。異なるハロゲン原子を有する二種以上の含ハロゲン化合物の組み合わせもまた利用可能である。一以上の実施態様において、かかる含ハロゲン化合物は炭化水素溶媒中において可溶性でもよい。他の実施態様においては、重合媒体中で分散して触媒活性種を形成できる、炭化水素中で不溶性の含ハロゲン化合物も有用である可能性がある。
【0044】
好適な含ハロゲン化合物の種類としては、特に限定されないが、元素状態のハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン水素化物、有機ハロゲン、無機ハロゲン、金属ハロゲン、有機金属ハロゲン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
元素状態のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。混合ハロゲンとしては、ヨウ素一塩化物、ヨウ素一臭化物、ヨウ素三塩化物、及びヨウ素五フッ化物が挙げられる。
【0046】
ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられる。
【0047】
有機ハロゲン化物としては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、クロロ−ジ−フェニルメタン、ブロモ−ジ−フェニルメタン、トリフェニルメチルクロライド、トリフェニルメチルブロマイド、ベンジリデンクロライド、ベンジリデンブロマイド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロライド、ベンゾイルブロマイド、プロピニルクロライド、プロピニルブロマイド、メチルクロロフォルメート、及びメチルブロモフォルメートが挙げられる。
【0048】
無機ハロゲン化物としては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ酸化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、及び四ヨウ化テルルが挙げられる。
【0049】
金属ハロゲン化物としては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、及び二フッ化亜鉛が挙げられる。
【0050】
有機金属ハロゲン化物としては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムフルオライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジフルオライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、メチルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムクロライド、トリメチルスズクロライド、トリメチルスズブロマイド、トリエチルスズクロライド、トリエチルスズブロマイド、ジ−t−ブチルスズジクロライド、ジ−t−ブチルスズジブロマイド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジブロマイド、トリブチルスズクロライド、及びトリブチルスズブロマイドが挙げられる。
【0051】
非配位性アニオンを含む化合物は公知である。一般に、非配位性アニオンは、例えば立体障害のために触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的にかさ高いアニオンである。典型的な非配位性アニオンとしては、テトラアリールボレートアニオン及びフッ化テトラアリールボレートアニオンが挙げられる。非配位性アニオンを含む化合物は、更にカルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン、又はホスホニウムカチオン等のカウンターカチオンを含む。典型的なカウンターカチオンとしては、トリアリールカルボニウムカチオン及びN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられる。非配位性アニオン及びカウンターカチオンを含む化合物の例としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられる。
【0052】
非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンを形成可能な化合物が挙げられる。典型的な非配位性アニオン前駆体としては、トリアリールボロン化合物、すなわちBR3[式中、Rは、ペンタフルオロフェニル基又は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等の強電子吸引性のアリール基である]が挙げられる。
【0053】
前記触媒組成物は、幅広い触媒濃度及び触媒成分の割合にわたって、共役ジエンを重合して立体特異性のポリジエンにする高い触媒活性を有しうる。触媒成分は相互作用して触媒活性種を形成すると思われている。また、如何なる一触媒成分も、最適濃度は他触媒成分の濃度に依存しうると思われている。
【0054】
一以上の実施態様において、アルキル化剤のランタニド化合物に対するモル比(アルキル化剤/Ln)は、約1:1から約1,000:1、他の実施態様においては約2:1から約500:1、その他の実施態様においては約5:1から約200:1、で変えることができる。
【0055】
アルミノキサンと少なくとも一つの他の有機アルミニウム試薬の両方をアルキル化剤として使用する実施態様において、アルミノキサンのランタニド化合物に対するモル比(アルミノキサン/Ln)は、5:1から約1,000:1、他の実施態様においては約10:1から約700:1、その他の実施態様においては約20:1から約500:1、で変えることが可能であり;また、少なくとも一つの有機アルミニウム化合物のランタニド化合物に対するモル比(Al/Ln)は、約1:1から約200:1、他の実施態様においては約2:1から約150:1、その他の実施態様においては約5:1から約100:1、で変えることができる。
【0056】
一以上の実施態様において、不安定なハロゲン原子のランタニド化合物に対するモル比(不安定な原子/Ln)は、約0.5:1から約20:1、他の実施態様においては約1:1から約10:1、その他の実施態様においては約2:1から約6:1、で変えることができる。
【0057】
更にもう一つの実施態様においては、非配位性アニオン又は非配位性アニオン前駆体のランタニド化合物に対するモル比(An/Ln)は、約0.5:1から約20:1、他の実施態様においては約0.75:1から約10:1、その他の実施態様においては約1:1から約6:1、で変えることができる。
【0058】
触媒組成物は、触媒成分を組み合わせて又は混合して形成することができる。活性な触媒種はかかる組み合わせの結果生じると思われているが、各種成分又は要素の間の相互作用又は反応の程度についてはあまり知られていない。それゆえ、“触媒組成物”という用語は、成分の単なる混合物、物理的な又は化学的な誘引力により生じる各種成分の複合体、前記成分の化学反応生成物、或いはこれらの組み合わせ、を包含するため使用されている。
【0059】
本発明の触媒組成物は様々な方法によって形成できる。
【0060】
一実施態様において、該触媒組成物は、インサイチューで触媒成分をモノマー及び溶媒を含む溶液又は単にバルクモノマーに、段階的に又は同時に加えることによって形成することができる。一実施態様においては、最初にアルキル化剤を加え、次に、ランタニド化合物を加え、その後、含ハロゲン化合物、又は必要であれば非配位性アニオン含有化合物もしくは非配位性アニオン前駆体、を加えることができる。
【0061】
他の実施態様において、約−20℃から約80℃の適当な温度の重合系外で該触媒成分を予備混合してもよく、そして、生成した触媒組成物を数分から数日の範囲の一定期間熟成させ、その後モノマー溶液に加えてもよい。
【0062】
更に他の実施態様においては、少なくとも一種の共役ジエンモノマーの存在下で該触媒組成物を予備形成してもよい。即ち、約−20℃から約80℃の適当な温度において少量の共役ジエンモノマーの存在下で、該触媒成分を予備混合してもよい。触媒の予備形成に使用できる共役ジエンモノマーの量は、ランタニド化合物1モルあたり約1から約500モル、他の実施態様においては約5から約250モル、また他の実施態様においては約10から約100モル、の範囲にできる。生成した触媒組成物を数分から数日の一定期間熟成させ、その後に重合させる共役ジエンモノマーの残余に加えてもよい。
【0063】
また更に他実施態様においては、二段階の方法を使用して該触媒組成物を形成してもよい。第一の段階は、共役ジエンモノマーの非存在下で又は共役ジエンモノマーが少量存在している下で、約−20℃から約80℃の適切な温度において、アルキル化剤にランタニド化合物を混合することを含む。第二の段階においては、前記反応混合物及び含ハロゲン化合物、非配位性アニオン、又は非配位性アニオン前駆体を、段階的に又は同時に、重合させる共役ジエンモノマーの残余に投入することができる。
【0064】
触媒組成物又は一以上の触媒成分の溶液を、前記方法と同じく重合系外で調製する場合、有機溶媒又はキャリアを使用してもよい。該有機溶媒は、触媒組成物又は触媒成分を溶解する働きをしても、単に触媒組成物又は成分を懸濁し得るキャリアとして働いてもよい。該有機溶媒は、触媒組成物に対して不活性であり得る。有用な溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン類、イソペンタン類、イソオクタン類、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、石油スピリット等が挙げられる。また、脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。また、上記炭化水素の市販の混合物を使用してもよい。
【0065】
ポリマーの製造は、触媒的に効果的な量の前記触媒組成物が存在している下で共役ジエンモノマーを重合することによって実現できる。重合中で使用する全触媒濃度は、成分の純度、重合温度、重合速度及び所望の転換率、所望の分子量、並びに多数のその他要因等、様々な要因の相互作用に依存する。従って、それぞれの触媒成分を触媒的に効果的な量使用できるという以外、特定の総触媒濃度を決定的に説明することはできない。一以上の実施態様において、使用するランタニド化合物の量は、共役ジエンモノマー100gに対して約0.01から約2ミリモル、他の実施態様においては約0.02から約1ミリモル、その他の実施態様においては約0.05から約0.5ミリモル、で変えることができる。
【0066】
該重合は、希釈剤としての有機溶媒中で実行できる。一実施態様においては、溶液重合系を使用できるが、かかる系では重合させるモノマーと形成されたポリマーが重合媒体中に溶解している。或いは、形成したポリマーが不溶である溶媒を選択することにより、沈殿重合系を使用してもよい。いずれの場合でも、重合させるモノマーは凝縮相中に存在してもよい。また、該触媒成分を有機溶媒中に溶解、又は懸濁してもよい。これらの又は他の実施態様においては、該触媒成分又は要素を、触媒担体に担持させないか、又は含浸させない。他の実施態様において、該触媒成分又は該触媒要素を担持してもよい。
【0067】
かかる重合の実施中に、触媒組成物の調製に使用する有機溶媒に加えて、一定量の有機溶媒を重合系に加えてもよい。追加の有機溶媒は、触媒組成物を調製するために使用した有機溶媒と同じでも異なってもよい。重合を触媒するために使用した該触媒組成物に対して不活性な有機溶媒を選択してもよい。典型的な炭化水素溶媒を前記した。溶媒を使用した場合、重合させるモノマーの濃度は特定の範囲に限定されない。しかしながら、一以上の実施態様において、重合初期に重合媒体中に存在しているモノマーの濃度は、約3重量%から約80重量%の範囲、他の実施態様においては約5重量%から約50重量%の範囲、その他の実施態様においては約10重量%から約30重量%の範囲、にできる。
【0068】
また、共役ジエンの重合はバルク重合によって実行してもよく、ここでバルク重合とは、実質的に溶媒を使用しない重合環境を指す。該バルク重合は凝縮させた液相又は気相中で実行できる。
【0069】
共役ジエンの重合は、バッチ法、連続法、又は半連続法で実行してもよい。半連続法においては、既に重合したモノマーと置換するために、必要に応じてモノマーを断続的に投入してもよい。いずれの場合にも、窒素、アルゴン、又はヘリウム等の不活性な保護ガスを用いた無酸素条件下、中適度から激しい撹拌のもと、重合反応を行うことができる。重合温度は、−10℃又はそれ未満の低温から、100℃又はそれを超える高温までの広い範囲で変えることができる。一実施態様において、該重合温度は約20℃から約90℃である。外部冷却(例えば、熱的に制御された反応ジャケット)、内部冷却(例えば反応器につないだ還流コンデンサーの使用によるモノマー又は溶媒の気化及び凝縮)、或いはこれら方法を組み合わせることによって重合熱を除去してもよい。重合圧力は広い範囲で変化させてもよいが、約1気圧から約10気圧の範囲の圧力を維持してもよい。
【0070】
本発明の一以上の実施態様におけるランタニド系触媒組成物を使用して調製したポリマーは、該重合混合物が失活する前に反応性の鎖末端を含んでいるかもしれない。偽リビングポリマーとも呼ばれるこれらの反応性ポリマーは、アジン化合物又はそれらの混合物と反応して官能化ポリマーを形成できる。
【0071】
一以上の実施態様において、アジン化合物は、ヒドラジンとアルデヒド、ケトン又はこの両方との縮合生成物を含む。一般的に、2モルのアルデヒド及び/又はケトンは、1モルのヒドラジンと反応して縮合生成物、すなわちアジンを形成する。2モルのアルデヒド及び/又はケトンは、同一でも異なってもよい。一以上の実施態様において、ヒドラジンが一種類のアルデヒドと反応する場合、生成物は各窒素原子上に位置する孤立電子対に対してトランスに位置するアルキル基を含む。例えば、2モルのベンズアルデヒドがヒドラジンと反応した場合、生成物はトランス,トランス−ベンズアルデヒドアジンを含みうる。他の実施態様において、特にアジンが二以上の異なるアルデヒド、又はアルデヒド及びケトンの混合物から生成する場合、シス及び/又はトランス構造もまた形成されうる。
【0072】
一以上の実施態様において、アジン化合物としては、式
【化3】

[式中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して水素原子又は一価の有機基を含む]で定義される化合物が挙げられる。一以上の実施態様において、該一価の有機基としては、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、及びアルキニル基等のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基が挙げられ、各基は1個又は当該基を形成するのに適切な最少の炭素原子数から約20個までの炭素原子を含むことが好ましい。これらのヒドロカルビル基は、特に限定されないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一以上の実施態様において、R2、R3、R4、及びR5の一以上は、ヘテロ環の置換基を含む。
【0073】
一以上の実施態様において、アジン化合物としては、式
【化4】

[式中、R6及びR7は、二価の有機基を含む]で定義される化合物が挙げられる。一以上の実施態様において、該二価の有機基としては、特に限定されないが、アルキレン基、シクロアルキレン基、置換アルキレン基、置換シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、置換アルケニレン基、置換シクロアルケニレン基、アリーレン基、及び置換アリーレン基等のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基が挙げられ、各基は1個又は当該基を形成するのに適切な最少の炭素原子数から約20個までの炭素原子を含むことが好ましい。置換ヒドロカルビレン基としては、一以上の水素原子がアルキル基等の置換基で置換されたヒドロカルビレン基が挙げられる。該二価の有機基は、特に限定されないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等の一以上のヘテロ原子を更に含んでもよい。一以上の実施態様において、R8及びR9は、ヘテロ環基を形成する。
【0074】
一以上の実施態様において、アジン化合物としては、式
【化5】

[式中、R8及びR9は各々独立して水素又は一価の有機基であり、R10は二価の有機基である]で定義される化合物が挙げられる。
【0075】
アジン化合物の種類としては、アルデヒドアジン、ケトンアジン、環式ケトンアジン、混合アルデヒドアジン、混合ケトンアジン、一以上のヘテロ環を含むアルデヒドアジン、一以上のヘテロ環を含むケトンアジン、及び混合アルデヒド−ケトンアジンが挙げられる。
【0076】
アルデヒドアジンの例としては、ホルムアルデヒドアジン、アセトアルデヒドアジン、プロパナールアジン、ブタナールアジン、ペンタナールアジン、シクロペンタンカルボキシアルデヒドアジン、ヘキサナールアジン、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドアジン、ヘプタナールアジン、シクロヘプタンカルボキシアルデヒドアジン、オクタナールアジン、シクロオクタンカルボキシアルデヒドアジン、ノナナールアジン、シクロノナンカルボキシアルデヒドアジン、及びベンズアルデヒドアジンが挙げられる。
【0077】
混合アルデヒドアジンの例としては、ベンズアルデヒドプロパナールアジン、シクロペンタンカルボキシアルデヒドブタナールアジン、アセトアルデヒドプロパナールアジン、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドオクタナールアジン、及びシクロノナンカルボキシアルデヒドヘプタナールアジンが挙げられる。
【0078】
一以上のヘテロ環を含むアルデヒドアジンの例としては、2−ピリジンカルボキシアルデヒドアジン、テトラヒドロフラン−3−カルボキシアルデヒドアジン、3−フランカルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−4−ピラゾールカルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−2−ピロールカルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−2−イミダゾールカルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−インドール−3−カルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアルデヒドアジン、2−フランカルボキシアルデヒドアジン、ピラジンカルボキシアルデヒドアジン、2−チアゾールカルボキシアルデヒドアジン、及び2−チオフェンカルボキシアルデヒドアジンが挙げられる。
【0079】
ケトンアジンの例としては、アセトンアジン、プロパノンアジン、ブタノンアジン、ペンタノンアジン、ヘキサノンアジン、ヘプタノンアジン、オクタノンアジン、及びノナノンアジンが挙げられる。
【0080】
環式ケトンアジンの例としては、シクロブタノンアジン、シクロペンタノンアジン、シクロヘキサノンアジン、シクロヘプタノンアジン、シクロオクタノンアジン、シクロノナノンアジン、シクロデカノンアジン、シクロウンデカノンアジン、シクロドデカノンアジン、及びシクロトリデカノンアジンが挙げられる。
【0081】
混合ケトンアジンの例としては、アセトンプロパノンアジン、アセトンペンタノンアジン、プロパノンペンタノンアジン、ヘキサノンオクタノンアジン、及びブタノンノナノンアジンが挙げられる。
【0082】
一以上のヘテロ環を含むケトンアジンの例としては、2−アセチルチアゾールアジン、2−アセチルピリジンアジン、3−アセチルピリジンアジン、4−アセチルピリジンアジン、ビス(2−ピリジル)ケトンアジン、2−アセチル−1−メチルピロールアジン、及び3−アセチル−1−メチルピロールアジンが挙げられる。
【0083】
混合アルデヒド−ケトンアジンの例としては、アセトアルデヒドペンタノンアジン、プロパナールヘキサノンアジン、及びアセトアルデヒドブタノンアジンが挙げられる。
【0084】
一以上の実施態様において、偽リビングポリマー及びアジン化合物は、偽リビングポリマーが調製又は貯蔵されていたのと同じ媒体中でそれらを組み合わせる又は混合することによって反応させることが可能である。例えば、偽リビングポリマーが溶媒中で合成される場合、アジン化合物を偽リビングポリマーを含む溶液に加えることができる。一以上の実施態様において、偽リビングポリマーが失活する前に、アジン化合物を偽リビングポリマーと反応させることができる。一以上の実施態様において、アジン化合物と偽リビングポリマーの間の反応は、偽リビングポリマーの合成によって生じる重合温度がピークをうってから30分以内、他の実施態様においては5分以内、その他の実施態様では1分以内、に起こりうる。一以上の実施態様においては、偽リビングポリマーとアジン化合物の間の反応は、重合温度のピークで起こりうる。他の実施態様においては、偽リビングポリマーとアジン化合物の間の反応は、偽リビングポリマーを貯蔵した後に起こりうる。一以上の実施態様において、偽リビングポリマーは、不活性雰囲気の下、室温又はそれ未満で貯蔵される。一以上の実施態様において、アジン化合物と偽リビングポリマーの間の反応は、約10℃から約150℃、また他の実施態様においては約20℃から約100℃、で起こりうる。
【0085】
偽リビングポリマーと反応可能なアジン化合物の量は、所望の官能化の程度によって変化しうる。一以上の実施態様において、使用したアジン化合物の量は、ランタニド化合物のランタニド金属によって表現できる。例えば、アジン化合物のランタニド金属に対するモル比は、約1:1から約200:1、他の実施態様においては5:1から150:1、その他の実施態様においては10:1から100:1にしてもよい。
【0086】
一以上の実施態様において、偽リビングポリマーとアジン化合物の間の反応が達成又は完了した後、残余の反応性ポリマー鎖及び触媒又は触媒成分を不活性化するために、失活剤を重合混合物に加えることができる。該失活剤としてはプロトン性化合物が挙げられ、該プロトン性化合物としては、特に限定されないが、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はこれらの混合物が挙げられる。失活剤と一緒に、或いは失活剤を添加する前又は後に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤を加えてもよい。使用する酸化防止剤の量は、ポリマー生成物の0.2重量%から1重量%の範囲にすることができる。
【0087】
重合混合物が失活した時に、該ポリマー生成物は、当業者に周知の脱溶媒法及び乾燥法を用いて、重合混合物から回収できる。例えば、かかるポリマーは、ポリマーセメントを蒸気で脱溶媒した後に、生成したポリマークラムを熱風トンネル内で乾燥することによって回収できる。或いは、該ポリマーは、該ポリマーセメントをドラム乾燥機上で直接乾燥することによって回収してもよい。乾燥させたポリマー中の揮発性物質の含有量は、該ポリマーの1重量%未満、他の実施態様においては0.5重量%未満にできる。
【0088】
1,3−ブタジエンを重合させる場合、ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、約5,000から約200,000、他の実施態様においては約25,000から約150,000、その他の実施態様においては約50,000から約120,000、にすることができ、これらはポリスチレンスタンダード及びポリブタジエンのマーク−ホーウィンク定数によって校正したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。該ポリマーの多分散性は、約1.5から約5.0、また他の実施態様においては約2.0から約4.0にできる。
【0089】
シス−1,4−ポリジエンを調製する場合、それらは、シス−1,4−結合が約60%超、他の実施態様においては約75%超、その他の実施態様においては約90%超、更にその他の実施態様においては95%超でありうる。また、これらポリマーの1,2−結合の含有量は、約7%未満、他の実施態様においては5%未満の量、その他の実施態様においては2%未満の量、更にその他の実施態様においては1%未満にできる。かかるシス−1,4−結合及び1,2−結合の含有量は赤外分光法によって測定できる。
【0090】
本発明の官能化ポリマーは、タイヤ部品の製造に特に有用である。これらタイヤ部品は、本発明の官能化ポリマーのみを用いて又は本発明の官能化ポリマーと他のゴムポリマーとを共に用いて製造できる。使用可能な他のゴムポリマーとしては、天然のエラストマー及び合成のエラストマーが挙げられる。該合成のエラストマーは、一般に共役ジエンモノマーを重合することによって得られる。かかる共役ジエンモノマーを、芳香族ビニルモノマー等の他のモノマーと共重合してもよい。他のゴムポリマーは、エチレンと一以上のα−オレフィン及び任意に一以上のジエンモノマーとを重合することによって得てもよい。
【0091】
有用なゴムポリマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン−co−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリ(スチレン−co−イソプレン)、及びポリ(スチレン−co−イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物が挙げられる。かかるエラストマーは直鎖状、分枝状、及び星形状を含む無数の高分子構造を有しうる。また、一般的にゴムの配合に使用する他の成分を加えてもよい。
【0092】
前記ゴム組成物は、無機充填剤及び有機充填剤等の充填剤を含んでもよい。該有機充填剤としては、カーボンブラック及び澱粉が挙げられる。該無機充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー(ケイ酸アルミニウム水和物)、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0093】
硫黄又は過酸化物系の硬化系を含む多くのゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)を使用できる。硬化剤に関しては、カーク−オサマー著、化学技術百科事典、第三版、第20巻、p.365−468、1982年、特には硬化剤と助剤の項、p.390−402、及びA.Y.コラン著、ポリマーの科学と技術百科事典、第二版、1989年、加硫の項、に記載されており、これらを引用してここに援用する。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用してもよい。
【0094】
使用できる他の成分としては、促進剤、オイル、ワックス、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着性付与樹脂、補強樹脂、ステアリン酸等の脂肪酸、素練り促進剤、及び一以上の追加のゴム類が挙げられる。
【0095】
これらゴム組成物は、トレッド、サブトレッド、ブラックサイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー等のタイヤ部品を形成するために有用である。該官能化ポリマーは、トレッド配合物に使用することが好ましい。一以上の実施態様において、これらトレッド配合物は、配合物中のゴムの全重量に対して約10から約100重量%、他の実施態様においては約35から約90重量%、その他の実施態様においては約50から約80重量%、の官能化ポリマーを含んでもよい。
【0096】
一以上の実施態様において、加硫可能なゴム組成物は、ゴム成分及び充填剤(ゴム成分は任意に本発明の官能化ポリマーを含む)を含む初期マスターバッチを形成することによって調製してもよい。かかる初期マスターバッチは、約25℃から約125℃の初期温度、約135℃から約180℃の排出温度で混合してもよい。早期加硫(スコーチとしても知られている)を防ぐために、該初期マスターバッチから加硫剤を除いてもよい。該初期マスターバッチを加工したら、最終混合段階において低温で加硫剤を導入し初期マスターバッチと混合してもよく、ここで加硫プロセスを開始させないことが好ましい。任意に、マスターバッチ混合段階と最終混合段階の間に、リミルとも呼ばれる追加の混合工程を行ってもよい。本発明の官能化ポリマーを含む各種成分を該リミル中に加えることができる。ここで使用されているゴムの配合技術及び添加剤は、ゴム技術、第二版、1973年、のゴムのコンパウンディング及び加硫の項に記載されているとおり、概ねよく知られている。
【0097】
また、シリカを充填したタイヤ配合物に適用できる混合条件及び方法が、米国特許第5,227,425号、第5,719,207号、第5,717,022号、及び欧州特許第890,606号に記載されているとおりよく知られており、これら全てを引用してここに援用する。一以上の実施態様において、充填剤としてシリカを(それのみで又は他の充填剤と組み合わせて)使用する場合、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム配合物に加えてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、米国特許第3,842,111号、第3,873,489号、第3,978,103号、第3,997,581号、第4,002,594号、第5,580,919号、第5,583,245号、第 5,663,396号、第5,674,932号、第5,684,171号、第5,684,172号、第5,696,197号、第6,608,145号、第6,667,362号、第6,579,949号、第6,590,017号、第6,525,118号、第6,342,552号、及び第6,683,135号に記載されており、これらを引用してここに援用する。一実施態様において、カップリング剤及び遮蔽剤が実質的に存在しない条件で、本発明の官能化ポリマー及びシリカを含めることによって、前記初期マスターバッチを調製する。
【0098】
加硫可能なゴム組成物をタイヤ製造に使用する場合、ゴムの成形技術、成型技術及び加硫技術等の通常のタイヤ製造技術により、かかる組成物をタイヤ部品に加工できる。一般に、加硫は、モールド内で加硫可能な組成物を加熱することによって達成され;例えば、約140℃から約180℃に加熱してもよい。硬化又は架橋したゴム組成物は加硫物といってもよく、これは一般的に熱硬化性の三次元ポリマーネットワークを含む。加工助剤及び充填剤等の他の成分を、加硫したネットワークの全体に均一に分散させてもよい。米国特許第5,866,171号、第5,876,527号、第5,931,211号、及び第5,971,046号中で議論されているようにして、空気入りタイヤを製造でき、これらを引用してここに援用する。
【0099】
本発明の実施の仕方を明らかにするために、以下の例を準備及び試験した。しかしながら、これらの例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきものではない。請求の範囲が本発明の範囲を規定する役割を果たす。
【実施例】
【0100】
(例1、未変性シス−1,4−ポリブタジエンの合成(コントロールポリマー))
タービンアジテーターブレードを具える2−ガロン反応器に、ヘキサン1403gと20.6重量%のブタジエンのヘキサン溶液3083gを加えた。4.32 Mのメチルアルミノキサンのトルエン溶液7.35ml、20.6重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液1.66g、0.537 Mのネオジムバーサテートのシクロヘキサン溶液0.59ml、1.0 Mのジイソブチルアルミニウムハイドライドのヘキサン溶液6.67ml、及び1.0 Mのジエチルアルミニウムクロライドのヘキサン溶液1.27mlを混合して、予備調製触媒を準備した。該触媒を15分間熟成し、反応器に投入した。その後、反応ジャケットの温度を65℃にセットした。該触媒を加えてから53分後、重合混合物を室温に冷却した。生成したポリマーセメントを5gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含むイソプロパノール12リットルによって凝固させ、その後ドラム乾燥した。予熱時間1分、運転時間4分で、大ローターを用いたモンサントムーニー粘度計を使用することにより、該ポリマーの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)を測定したところ、29.4であった。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、該ポリマーは、数平均分子量(M)が116,900、重量平均分子量(M)が217,200、また分子量分布(M/M)が1.86であった。該ポリマーを赤外分光分析したところ、シス−1,4−結合含量が94.5%、トランス−1,4−結合含量が5.0%、また1,2−結合含量が0.5%であった。
【0101】
(例2、トランス,トランス−ベンズアルデヒドアジン(BAZ)で変性させたシス−1,4−ポリブタジエンの合成)
タービンアジテーターブレードを具える2−ガロン反応器に、ヘキサン1586gと21.9重量%のブタジエンのヘキサン溶液2900gを加えた。4.32 Mのメチルアルミノキサンのトルエン溶液7.35ml、21.9重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液1.57g、0.537 Mのネオジムバーサテートのシクロヘキサン溶液0.59ml、1.0 Mのジイソブチルアルミニウムハイドライドのヘキサン溶液6.67ml、及び1.0Mのジエチルアルミニウムクロライドのヘキサン溶液1.27mlを混合して予備調製触媒を準備した。該触媒を15分間熟成し、反応器に投入した。その後、反応ジャケットの温度を65℃にセットした。該触媒を加えてから70分後、重合混合物を室温に冷却した。生成したリビングポリマーセメント434gを窒素パージしたボトルに移した後、0.52 Mのトランス,トランス−ベンズアルデヒドアジンのトルエン溶液3.50mlを加えた。該ボトルを、65℃に維持した水浴中で35分間振とうした。生成した混合物を0.5gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含むイソプロパノール3リットルによって凝固させ、その後ドラム乾燥し、以下の性質を有する変性ポリマーを生成させた:ML1+4=29.9、M=123,400、M=212,100、M/M=1.72、シス−1,4−結合=94.3%、トランス−1,4−結合=5.2%、及び1,2−結合=0.5%。
【0102】
(例3−4、BAZ−変性ポリマー対未変性ポリマーのコンパウンディングの評価)
例1−2で製造したポリマーサンプルを、カーボンブラックを充填したゴム加硫物において評価した。加硫物の組成を表1に示す;表中の数は、ゴム100重量部当たりの重量部(phr)を表している。該加硫物の物理的性質を表2にまとめる。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
引張り機械特性は、ASTM-D 412に記載されている標準的な方法で測定した。引張り試験の試料は厚さ1.9mmのリング状であった。ペイン効果(ΔG')及びヒステリシス(tanδ)のデータは、50℃において0.25%から14.75%までの歪走査を1Hzで実行することによる動的歪み走査実験から得た。ΔG'は、0.25%歪時のG'と14.75%歪時のG'との間の差である。
【0106】
表2から理解できるように、BAZ−変性ポリマーサンプルは、未変性のポリマーサンプルよりも、50℃で低いtanδを示し、これはポリマーのBAZ変性がヒステリシスを減少させることを示している。更に、BAZ−変性ポリマーサンプルは、未変性のポリマーサンプルよりも低いΔG'を示し、これはBAZ−変性ポリマーとカーボンブラック間の強い相互作用によってペイン効果が減少したことを示している。
【0107】
当業者には、本発明の範囲及び精神から逸脱しない種々の変形及び変更が明らかである。本発明は、ここに示した説明用の例に正規に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ランタニド系触媒を使用して共役ジエンモノマーを重合させて反応性ポリマーを生成させる工程;及び
(ii)該反応性ポリマーにアジン化合物を反応させる工程
を含むことを特徴とする官能化ポリマーの調製方法。
【請求項2】
前記アジン化合物が下記式
【化1】

[式中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して水素原子又は一価の有機基を含む]で定義されること、或いは前記アジン化合物が下記式
【化2】

[式中、R6及びR7は、各々独立して二価の有機基である]で定義されること、或いは前記アジン化合物が下記式
【化3】

[式中、R8及びR9は、各々独立して水素又は一価の有機基であり、R10は二価の有機基である]で定義されることを特徴とする官能化ポリマーの調製方法。
【請求項3】
(i)ランタニド系触媒を使用して1,3−ブタジエンを重合させて反応性のシス−1,4−ポリブタジエンポリマーを生成させる工程であって、前記ランタニド系触媒が、ランタニド化合物、アルミノキサン及び少なくとも一種の他の有機アルミニウム化合物を含むアルキル化剤、並びに任意に含ハロゲン化合物を組み合わせて形成され、ただし、任意のハロゲン化合物が存在しない場合、前記ランタニド化合物又は前記アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含むことを特徴とする工程;及び
(ii)前記反応性のポリマーにアジン化合物を反応させる工程であって、前記アジン化合物の前記ランタニド系触媒のランタニド金属に対するモル比が約1:1から約200:1であることを特徴とする工程
を含むことを特徴とする官能化ポリマーの調製方法。
【請求項4】
前記アジン化合物が、アルデヒドアジン、ケトンアジン、環式ケトンアジン、混合アルデヒドアジン、混合ケトンアジン、一つ以上のヘテロ環を含むアルデヒドアジン、一つ以上のヘテロ環を含むケトンアジン、及び混合アルデヒド−ケトンアジンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1、2、又は3のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2007−186696(P2007−186696A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−352531(P2006−352531)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】