説明

官能化非芳香族ビニルポリマー充填剤で補強したエラストマー組成物

少なくとも1種のジエンエラストマー、補強用充填剤としてのポリマー充填剤、該ポリマー充填剤とエラストマー間に結合を与えるカップリング剤をベースとし、上記ポリマー充填剤が、式≡Si-Xの官能基Z(式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)を担持する非芳香族ビニルポリマー(“NAVP”)のナノ粒子を含むことを特徴とするゴム組成物。上記NAVPは、とりわけ、メチルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートとのナノビーズ形のコポリマーであり、その直径は10〜100nmである。このポリマー充填剤は、極めて低密度故に、本発明の組成物の重量を、補強性を損なうことなく且つヒステリシスの有意な低下でもって減じることを可能にしている。
そのような組成物の取得方法。少なくとも1種のジエンエラストマーとそのようなポリマー充填剤とを含むマスターバッチ、並びにそのようなマスターバッチの取得方法。そのようなゴム組成物の、ゴム物品、とりわけ、タイヤまたはこれらのタイヤ用に意図するゴム製の半製品の製造における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤまたはタイヤ用の半製品、例えば、これらタイヤ用のトレッドの製造においてとりわけ有用なジエンエラストマー組成物に関する。
また、本発明は、そのようなゴム組成物を補強することのできる補強用充填剤、さらに詳細には、有機またはポリマータイプの補強用充填剤、さらにまた、これら補強用充填剤のそのようなゴム組成物を補強するための使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃費および自動車が放出する汚染を低減せんがために、以下の全てを有するタイヤを得るための多くの試みがタイヤ設計者によってなされている:極めて低い転がり抵抗性、乾燥地面および湿潤または積雪地面の双方上での改良された接着性、並びに良好な耐摩耗性。この問題に対する1つの有効な解決法は、過去15年に亘って、“非黒色充填剤”としても知られる無機タイプの真の補強用充填剤、とりわけ、高分散性シリカ(“HD”シリカ)を含む新たなゴム組成物の開発によって見出されており、これらの充填剤は、その補強用充填剤機能において通常のタイヤ用カーボンブラックと置換わり得ることが判明している。
しかしながら、これらの補強用無機充填剤は、等価の補強能力のためには僅かに高い密度を有するが故に、これら充填剤から派生するゴム組成物またはゴム製物品の重量を、カーボンブラックの使用と比較して増大させるという既知の欠点を有し、このことは、むしろ、もう1つのより一般的な、タイヤの、ひいてはこれらタイヤを含む車両の重量を減じるという目的を妨げている。
【発明の概要】
【0003】
研究の継続中、本出願人等は、これらの組成物において真の補強用充填剤として使用することのできる、即ち、正しくHDシリカのように通常のタイヤ用カーボンブラックと置換わり得るある種の合成有機充填剤を見出した。
これらの合成有機充填剤は、ほぼ半分ほどである密度を有するが故に、上記組成物の重量およびそれら組成物を含有するゴム物品の重量を、タイヤの使用特性を損なうことなく極めて有意に減じるのを可能にしている。
従って、本発明の第1の主題は、少なくとも1種のジエンエラストマー、ポリマー充填剤、該ポリマー充填剤とエラストマー間に結合を与えるカップリング剤をベースとし、上記ポリマー充填剤が、式≡Si-Xの官能基“Z”を担持する非芳香族ビニルポリマー(“NAVP”と略称する)のナノ粒子を含み、Xがヒドロキシルまたは加水分解可能な基であることを特徴とするゴム組成物に関する。
また、本発明の主題は、少なくとも1種のジエンエラストマーと上記Z官能化NAVPのナノ粒子を含むポリマー充填剤とをベースとするマスターバッチでもある。
また、本発明のもう1つの主題は、下記の工程:
上記ジエンエラストマーのラテックスと上記ポリマー充填剤のラテックスから出発する工程;
これらラテックスを十分に混合する工程;
そのようにして得られた混合物を沈降させる工程;
その後、そのようにして得られた沈降物を洗浄し、乾燥させる工程;
を含むマスターバッチの取得方法でもあり、この方法は、上記ポリマー充填剤が、上記のZ官能化NAVPのナノ粒子を含むことに特徴を有する。
また、本発明の主題は、本発明に従うマスターバッチのジエンエラストマー組成物の製造における使用でもある。
【0004】
また、本発明の主題は、少なくとも1種のジエンエラストマー中に、少なくとも1種のポリマー充填剤、該ポリマー充填剤とエラストマー間に結合を与えるカップリング剤を混入し、混合物全体を、1以上の工程で、110℃〜190℃の最高温度に達するまで熱機械的に混練することからなるゴム組成物の取得方法でもあり、この方法は、上記ポリマー充填剤が上記Z官能化NAVPのナノ粒子を含むことを特徴とする。極めて好ましくは、ポリマー充填剤の本発明の組成物中への混入を容易にするために、NAVPナノ粒子は、上記組成物中に、本発明のマスターバッチの形で混入する。
本発明のもう1つの主題は、本発明に従う組成物のゴム製の最終物品または半製品の製造における使用、さらにまた、本発明に従うゴム組成物を含むこれらの最終物品および半製品自体でもあり、これらの物品または製品は、とりわけ、タイヤ、タイヤ用の内部安全支持体、車輪、ゴムスプリング、エラストマー接合部、並びに他の懸架および振動防止要素のような自動車用のあらゆる接地系を意図する。
本発明の極めて特定の主題は、本発明に従うゴム組成物の、トレッド、例えばこれらトレッドの下に置くための下地層、クラウン補強プライ、サイドウォール、カーカス補強プライ、ビーズ、プロテクター、内部チューブ、チューブレスタイヤ用の気密内部ゴム、内部サイドウォール補強ゴム、並びにパンクタイヤで走行中の荷重に耐えるための他のゴム類からなる群から選ばれるタイヤまたはタイヤ用半製品の製造における使用である。
本発明に従う組成物は、乗用車、バン類、4×4車両(4本の駆動輪を有する)、SUV (スポーツ用多目的車)類、二輪車、“重量車両”(即ち、地下鉄列車、バス、道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、道路外車両)、航空機、並びに建設、農業または作業用機械に装着することを意図するタイヤの製造においてとりわけ適する。
本発明およびその利点は、以下の説明および実施例に照らして、さらにまた、本発明に従う水性エマルジョン中のNAVPナノ粒子サンプルから撮影した電子顕微鏡(TEM)画像である図面(図1)からも容易に理解し得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明に従う水性エマルジョン中のNAVPナノ粒子サンプルから撮影した電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
I. 使用する測定および試験法
I-1. ポリビニル充填剤の特性決定
以下で説明するNAVP充填剤は、“ナノ粒子”、即ち、その主要寸法(直径または長さ)が、典型的には1マイクロメートル未満、一般的には、約10ナノメートルないし100または数100ナノメートル程度の範囲内にある粒子からなる。
これらのNAVPナノ粒子は素粒子(または“一次粒子”)の形にあり、これらの素粒子またはナノ粒子は、おそらくはこれらナノ粒子の少なくとも2個の凝結体(または“二次粒子)を形成し得、場合によっては、上記ナノ粒子および/または凝結体は、引続き、外力の作用下に、例えば、機械仕事の作用下にこれらのナノ粒子および/または凝結体に離散し得る凝集体を形成することが可能である。
これらのナノ粒子は、以下に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して特性決定する。
【0007】
A) エマルジョン(ラテックス)中での特性決定
水で前以って希釈したNAVP充填剤ラテックス(例えば、水1リットル当り8gの充填剤)をイソプロパノール中にその容量の約50倍に希釈する。そのようにして得られた40mlの溶液を背高ビーカー(50ml)に注入し、その後、600W超音波プローブ(Vibracellsプローブ、リファレンス 72412、Bioblock Scientific社により販売されている)を使用し、パルスモード(1秒オン/1秒オフ)で8分間100%出力下に分散させる。その後、そのようにして得られた溶液の液滴を、炭素膜を有する銅顕微鏡グリッド上に置き、次いで、カメラ(Soft Imaging System社により販売されているMegaView IIカメラ)および画像分析システム(Soft Imaging System社からのAnalySIS Pro A、バージョン 3.0)を備えたTEM (FEI社より販売されている“CM 200”;200 kV加速電圧)により観測する。
TEMの設定は、サンプルおよびフィラメントのエージング状態に応じて既知の方法で最適化する(典型的には、コンデンサー隔膜 2 (直径50μm)およびレンズ 3 (直径40μm))。顕微鏡倍率は、ナノ粒子に対して十分な解像力を有するように適応させる。例えば、65,000の倍率は、1248×1024個のピクセルからなるデジタル画像に対して約0.96nm/ピクセルに近い解像力に相応する;そのような解像力により、例えば、40nm直径の球形ナノ粒子を1000個以上のピクセルでもって明確にし得る。カメラは、通常、標準規格を使用して較正する(低倍率においては、2160本の線/mmの金グリッド;高倍率においては、直径0.235nmの金ビーズ)。
上記ナノ粒子の直径は、ソフトウェアAnalySIS Pro A、バージョン 3.0を使用して測定する(“Measurement”メニューの“Circle”オプションによる)。各画像および所定のナノ粒子において、操作者は、スクリーン上に、ナノ粒子画像の周辺上に存在する3つの点を定める(マウスを使用して)。その後、上記のソフトウェアがこれらの3点を通る円を自動的にトレースし、ファイル(Excel)中に、ナノ粒子の円面積、円周および円直径の各値を保存する。この操作は良好に形成された輪郭を有するナノ粒子に対してのみ可能であるので、凝集体中に存在するナノ粒子は測定から除外する。試験を、サンプルを代表する最低2000個のナノ粒子(少なくとも10、典型的には50の異なる画像から得られる)において繰返す。
【0008】
B) ゴム組成物形中での特性決定
加硫ゴム組成物中のNAVP充填剤のサンプルを、凍結超薄切片法(ultracryomicrotomy)により、既知の方法で作成する(例えば、L. Sawyer and D. Grubb, Polymer Microscopy, p. 92, Chapman and Hallを参照されたい)。
この場合使用する装置は、ダイアモンドナイフを備えたLeicaウルトラクリオマイクロトーム(“EMFCS”)である。サンプルを矩形基底を有する切断ピラミットの形に切断し、切片を作成する切断面は、600μm未満の辺長を有する。この切断ピラミッドは、切断操作中は強固に保持する。サンプルを適切な温度(サンプルのガラス転移温度に近い)に冷却してサンプルが十分に堅くて切断できるようにする;ナイフの温度は、サンプルの温度に典型的に近い。切断速度と厚さ(上記装置によって示されるような)は、好ましくは、それぞれ、1〜2mm/秒および20〜30nmである。スクロース水溶液(40mlの水中40g)の液滴を使用して、切片を、上記ウルトラクリオマイクロトームの囲いから回収し、次いで、TEMグリッド上に周囲温度で置く。その後、スクロースは、蒸留水を充填した晶析装置の表面上にグリッドを置くことによって除去する。
コントラストを増強ためには、切片を、当業者にとって周知の方法を使用して、四酸化オスミウム(OsO4)による染色工程に供し得る(L. C. Sawyer and David Grubb, Polymer Microscopy, Chapman and Hall, London, New York, 1987, pp. 97-98):グリットを20mlの蒸留水と0.1gのOsO4 (Agar Scientific社;レファレンス R1015)の混合物を含有する開放晶析装置上に置く;気密デシケーター内に入れた全体を、水浴中で、50℃に3〜3 1/2時間加熱する。
切片を、CM 200 顕微鏡を使用して観察する(200 kV電圧)。コントラストを最適化するために、観測は、GIF (Gatan Imaging Filter)画像化システムおよび関連ソフトウェア(Filter Control and Digital Micrograph 3.4)により、通常のエネルギーフィルター処理画像形成法(約15 eVに等しいΔEエネルギー窓)において行なう。
【0009】
I-2. ゴム組成物の特性決定
ゴム組成物は、下記で示すように、硬化の前後において特性決定する。
引張試験
これらの試験は、硬化後の弾性応力および破壊時諸特性を測定するのを可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46-002に従って行う。100%伸び(M100と記したモジュラス)、300%伸び(M300)および400%伸び(M400)においてMPaで表す真の割線モジュラス(即ち、試験片の実際の断面まで減じて算出した)を、1回目の伸び(即ち、順応サイクルなし)で測定する。これらの引張測定は、すべて、標準温度および湿度条件((23±2℃;50±5%相対湿度)下において実施する。
流動度測定
測定は、DIN規格 53529-パート3 (1983年6月)に従う振動室レオメーターにより、150℃で実施する。時間の関数としての流動度測定トルクの進展が、加硫反応後の組成物の剛性の進展を説明する。測定値を、DIN 53529-パート2 (1983年3月)規格に従って加工する。30%〜80%転換率において算出する順位1の転換速度定数K(min-1)を測定する;この測定は、加硫速度の評価を可能にする(Kが高いほど、その速度は速い)。
動的特性
動的特性ΔG*およびtan(δ)maxを、ASTM規格 D 5992-96に従い、ビスコアナライザー(Metravib VA4000)で測定する。規格ASTM D 1349-99規格に従う標準温度条件(23℃)下に10Hzの周波数での単純交互正弦剪断応力に供した加硫組成物のサンプル(厚さ2mmおよび断面積79mm2を有する円筒状試験片)の応答を記録する。スキャンを、0.1から50%まで(前進サイクル)の、次いで50%から0.1%まで(戻りサイクル)のピーク-ピーク歪み増幅において実施する。使用する結果は、複素動的剪断弾性率(G*)および損失係数tanδである。戻りサイクルにおいて、観察するtanδの最高値を表し(tan(δ)max)、同様に0.1および50%歪み値間の複素弾性率の差(ΔG*)も表す(パイネ効果)。
【0010】
II. 発明の詳細な説明
本発明に従うゴム組成物は、少なくとも以下の構成成分、即ち、(少なくとも1種の)ジエンエラストマー、補強用充填剤としての(少なくとも1種の)ポリマー充填剤、およびこのポリマー充填剤とこのジエンエラストマー間に結合を与える(少なくとも1種の)カップリング剤をベースとし、上記ポリマー充填剤が以下で詳述するようなNAVPナノ粒子を含む。
勿論、“ベースとする組成物”なる表現は、使用する各種ベース構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これら構成成分のある種のものは、上記組成物製造の種々の段階においてまたはその後の硬化中に少なくとも部分的に反応し得るかおよび/または一緒に反応させることを意図する。また、この定義は、本発明のマスターバッチにも当てはまる。
本説明においては、特に明確に断らない限り、示したパーセント(%)は、全て質量%である。
【0011】
II-1. ジエンエラストマー
“ジエン”タイプのエラストマーまたはゴム(2つの用語は同義である)は、一般に、ジエンモノマー類(共役型または共役型でない2個の炭素-炭素二重結合を担持するモノマー類)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に属し得る。“本質的に不飽和”とは、共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来し、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン)のメンバーまたは単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;即ち、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα-オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記定義に属さず、とりわけ“本質的に飽和”のジエンエラストマーとして説明し得る(常に15%未満である低いまたは極めて低いジエン起源単位含有量)。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”ジエンエラストマーとは、とりわけ、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン) 単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
これらの定義を考慮すると、さらに詳細には、本発明に従う組成物において使用し得るジエンエラストマーは、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られた任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエン類相互或いは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
(c) 例えば、エチレン、プロピレンおよびとりわけ1,4-ヘキサジエン、エチリデン、ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンのような上述したタイプの非共役ジエンモノマーとから得られるエラストマーのような、エチレン、3〜6個の炭素原子を有するα-オレフィンおよび6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる3成分コポリマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、とりわけ塩素化または臭素化形。
本発明は任意のタイプのジエンエラストマーに適応するけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、本質的に不飽和のジエンエラストマー、とりわけ上記のタイプ(a)または(b)のジエンエラストマーと一緒に使用することを理解するであろう。
【0012】
適切な共役ジエン類は、とりわけ、1,3-ブタジエン;2-メチル-1,3-ブタジエン;例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンのような2,3-ジ(C1〜C5アルキル)-1,3-ブタジエン;アリール-1,3-ブタジエン;1,3-ペンタジエンおよび2,4-ヘキサジエンである。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ-、メタ-およびパラ-メチルスチレン;市販の“ビニルトルエン”混合物;パラ-tert-ブチルスチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
上記のコポリマー類は、99〜20質量%のジエン単位と1〜80質量%のビニル芳香族単位を含有し得る。これらのエラストマーは、使用する重合条件、とりわけ、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量の関数である任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液(とりわけエマルジョン)または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型化剤或いは官能化剤によってカップリング化および/または星型化或いは官能化し得る。
ポリブタジエン類、とりわけ、4%〜80%の1,2-単位含有量を有するポリブタジエン類または80%よりも多いシス-1,4含有量を有するポリブタジエン類;ポリイソプレン類;ブタジエン/スチレンコポリマー類、とりわけ、5質量%〜50質量%とりわけ20質量%〜40質量%のスチレン含有量、4%〜65%のブタジエン画分1,2-結合含有量および20%〜80%のトランス-1,4結合含有量を有するコポリマー類;ブタジエン/イソプレンコポリマー類、とりわけ、5質量%〜90質量%のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のガラス転移温度(Tg、ASTM D3418に従って測定)を有するコポリマー類;イソプレン/スチレンコポリマー類、とりわけ、5%〜50質量%のスチレン含有量および−25℃〜−50℃のTgを有するコポリマー類が適切である。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー類の場合、適しているのは、とりわけ、5質量%〜50質量%とりわけ10質量%〜40質量%のスチレン含有量、15質量%〜60質量%とりわけ20質量%〜50質量%のイソプレン含有量、5質量%〜50質量%とりわけ20質量%〜40質量%のブタジエン含有量、4%〜85%のブタジエン画分1,2-単位含有量、6%〜80%のブタジエン画分トランス-1,4単位含有量、5%〜70%のイソプレン画分1,2-単位+3,4-単位含有量および10%〜50%のイソプレン画分トランス-1,4単位含有量を有するコポリマー類、さらに一般的には、−20℃〜−70℃のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーである。
【0013】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)類、ポリイソプレン(IR)類、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー類、イソプレンコポリマー類およびこれらエラストマー類の混合物からなる高不飽和ジエンエラストマー群から選択する。そのようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(ABR)類、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)類、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)類、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)類およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)類からなる群から選択する。
1つの特定の実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くが)、SBR(エマルジョン中で調製したSBR(“E-SBR”)または溶液中で調製したSBR(“S-SBR”)、或いはSBR/BR、SBR/NR(またはSBR/IR)またはBR/NR(またはBR/IR)のブレンド(混合物)である。
もう1つの特定の実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主として(50phrよりも多くが)、イソプレンエラストマーである。この態様は、とりわけ、本発明の組成物を、タイヤにおいて、ある種のトレッド(例えば、産業車両用)、クラウン補強プライ(例えば、作動プライ、保護プライまたはラッピングプライ)、カーカス補強プライ、サイドウォール、ビーズ、プロテクター、下地層、ゴムブロックおよびタイヤの上記領域間の界面を提供する他の内部ゴムのゴムマトリックスを構成させることを意図する場合である。
“イソプレンエラストマー”とは、知られている通り、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)類、各種イソプレンコポリマー類およびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、とりわけ、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマー類が挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス-1,4-ポリイソプレンであり;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは90%よりも多い、より好ましくは98%よりもさらに多いシス-1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0014】
もう1つの特定の実施態様によれば、とりわけタイヤのサイドウォール用またはチューブレスタイヤの気密内部ゴム(または他の空気に対して不透過性の要素)用に意図する場合、本発明に従う組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、とりわけ少なくとも1種のEPDMコポリマーまたはブチルゴム(必要に応じて塩素化または臭素化した)を、これらのコポリマーを単独で或いは上述したような高不飽和ジエンエラストマー、とりわけ、NRもしくはIR、BRまたはSBRとの混合物において使用するかのいずれであれ、含有し得る。
本発明の組成物は、単一のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得、上記ジエンエラストマー(1種以上)は、必要に応じて、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと或いはエラストマー以外のポリマー類、例えば、熱可塑性ポリマーとさえ組合せて使用し得る。
【0015】
II.2. NAVPポリマー充填剤
本発明の組成物の補強用ポリマー充填剤は、下記の式(I)の(少なくとも1個の)官能基“Z”を担持する官能化非芳香族ビニルポリマー(NAVP)のナノ粒子を含むという本質的な特徴を有する:
≡Si-X
(式中、Siは、ケイ素原子であり;Xは、ヒドロキシル基または加水分解可能な1価の基である)。
当業者であれば、上記式(I)を見れば、4価のケイ素原子を介してNAVPに結合した少なくとも1個、多くとも3個のXまたはヒドロキシル基または加水分解可能な1価の基が存在することを容易に理解するであろう。
本出願においては、下記用語は、定義により、以下を意味するものと理解されたい:
‐“ビニルモノマー”、即ち、少なくとも1個のビニル基(CH2=CH-)または(置換形の)ビニリデン基(CH2=CH<)を担持する任意のモノマー;
‐“非芳香族ビニルモノマー”、即ち、ビニル芳香族タイプの、即ち、芳香族基によってアルファ置換されたモノマー以外の任意のビニルモノマー;
‐“非芳香族ビニルポリマー”(“NAVP”)、即ち、非芳香族ビニルモノマーの任意のホモポリマー、または少なくとも主要質量画分(好ましくは少なくとも50%以上、より好ましくは70%以上)が非芳香族ビニル単位を含み、少量画分(好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満)が、必要に応じて、ビニル芳香族モノマーのような異なる性質のモノマー(1種以上)に由来する任意のコポリマー。
好ましくは、上記式(I)において、Xは、ハロゲン、とりわけ塩素であり;或いは、Xは、式ORを満たし、式中、Oは酸素であり、Rは、水素または好ましくは1〜15個の炭素原子を含む直鎖もしくは枝分れの1価の炭化水素基を示す。
【0016】
いわゆる“ヒドロキシシリル”(≡Si-OH)または“アルコキシシリル”(≡Si=OR')官能基から選ばれるZ官能基は、とりわけ適しており、R'は、好ましくは1〜15個の炭素原子を含む炭化水素基であり、より好ましくは、アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルおよびアリールの中から、とりわけ、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルコキシアルキル、C5〜C10シクロアルキルおよびC6〜C12アリールの中から選ばれる。
本発明の1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】

(式中、基R1は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、C1〜C8アルキル、C5〜C8シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれ;
基R2は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、ヒドロキシル、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルからなる群から選ばれる)。
さらに好ましくは、これらの関係においては、
‐基R1は、C1〜C4アルキル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から、とりわけC1〜C4アルキルの中から、とりわけメチルおよびエチルの中から選ばれ;
‐基R2は、ヒドロキシルおよびC1〜C6アルコキシルからなる群から、とりわけヒドロキシルおよびC1〜C4アルコキシルの中から、とりわけヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれる。
さらにより好ましくは、基R1は、メチルおよびエチルの中から選ばれ;基R2は、ヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれる。
【0017】
NAVPの上記で説明したZ官能化は、最終ポリマーにおいて、例えば、その残存二重結合での反応により実施し得る。好ましいのは、Z官能性を、Z官能化コモノマー(以下、コモノマーBと称する)を使用することによって付与することである。
換言すると、本発明の1つの特定の実施態様によれば、上記NAVPは、少なくとも下記の2種のモノマーのコポリマーである:
‐第1の非芳香族ビニルモノマー(“A”);
‐第2の上記で定義した式(I)のZ官能基を担持するモノマー(“B”)。
上記の非芳香族ビニルモノマーAは、好ましくは、下記の式(II)に相応する:
【化2】

(式中、基R3は、水素、C1〜C8アルキルおよびC5〜C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
基Yは、ハロゲン、基OH、OR'、SR'、C≡N、C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R'')、C(O)R'およびOC(O)R'からなる群から選ばれ、式中、R'およびR”は、同一または異なるものであり得て、1〜12個の炭素原子を含む線状、枝分れまたは環状アルキル、並びに6〜20個の炭素原子を含むアリール、アラルキルまたはアルカリールからなる群から選ばれ、R'およびR”は、ハロゲン(好ましくは塩素)、酸素、窒素およびイオウの中から選ばれた少なくとも1個のヘテロ原子を含み得る)。
【0018】
以下のモノマー類を、そのようなモノマーAの例として挙げることができる:
‐ビニルアルコール(ヒドロキシル基 Y = OHとして);
‐メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル(オルガノキシル基 Y = OR'として);
‐メチルビニルチオエーテル、エチルビニルチオエーテル、フェニルビニルチオエーテル(スルフェニル基 Y = SR'として);
‐アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル(シアノ基 Y = C≡Nとして);
‐アクリル酸およびメタクリル酸(カルボニル基 Y = C(O)OHとして);
‐メチル、n-ブチル、tert-ブチル、ヒドロキシエチル、グリシジル(メタ)アクリレート(オキシカルボニル基 Y = CO(O)R'として);
‐N,N-ジメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル-(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド(カルバモイル基 Y = C(O)N(R'R”)として);
‐ビニルメチルケトン(アシル基 Y = C(O)R'として);
‐酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル(アシルオキシ基 Y = OC(O)R'として)。
好ましくは、上記式(II)においては、下記の特徴が満たされる:
‐R3は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群から選ばれ;
‐Yは、塩素、基C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R”)およびOC(O)R'からなる群から選ばれる。
さらにより好ましくは、下記の特徴が満たされる:
‐Yは、基C(O)OR'であり;
‐R3は、水素またはメチルである。
上記のより好ましい特徴を満たすモノマーAの例としては、YがC(O)OR'であり、R'が1〜8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選ばれる式(II)のアクリレートまたはメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0019】
上記の好ましい特徴を満たすモノマーAの例としては、とりわけ、R'が1〜4個の炭素原子を含むアルキルであるアクリレート(R3 = 水素)またはメタクリレート(R3 = メチル)モノマー、とりわけ、メチルアクリレート(R'がメチルである)、メチルメタクリレート(R'がメチルである)、エチルアクリレート(R'がエチルである)、エチルメタクリレート(R'がエチルである)、n-ブチルアクリレート(R'がn-ブチルである)、n-ブチルメタクリレート(R'がn-ブチルである)、tert-ブチルアクリレート(R'がtert-ブチルである)、tert-ブチルメタクリレート(R'がtert-ブチルである)、ヒドロキシエチルアクリレート(R'がヒドロキシエチルである)、ヒドロキシエチルメタクリレート(R'がヒドロキシエチルである)およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれるモノマーが挙げられる。
説明を明確にするため、単官能性タイプのこれら好ましいモノマーAの幾つかの構造式を下記で思い起されたい:
【化3】

好ましくはメチルアクリレートまたはメチルメタクリレート、さらにより好ましくはメチルメタクリレート(“MMA”と略記する)を使用する。
二官能性タイプのモノマーAの例としては、基Yがフリーラジカル重合によって共重合可能である第2のビニルまたはビニリデン基を担持する上記式(II)のジエンモノマーを使用し得る。
【0020】
第1の好ましい実施態様によれば、モノマーBは、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、およびこれら化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。さらに好ましくは、モノマーBは、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレートおよびエトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、並びにこれら化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。
さらに詳細には、モノマーBは、ヒドロキシシリルプロピルアクリレート、ヒドロキシシリルプロピルメタクリレート、メトキシシリルプロピルアクリレート、メトキシシリルプロピルメタクリレート、エトキシシリルプロピルアクリレート、エトキシシリルプロピルメタクリレートおよびこれらの化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。とりわけ、コモノマーBは、トリメトキシシリルプロピルアクリレートまたはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートである。
もう1つの好ましい実施態様によれば、コモノマーBは、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-(C1〜C4)アルコキシシラン、およびこれら化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。さらに好ましくは、このコモノマーBは、スチリル(C1〜C4)アルキルヒドロキシシラン、スチリル(C1〜C4)アルキルメトキシシランおよびスチリル(C1〜C4)アルキルエトキシシラン、並びにこれら化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。
とりわけ、コモノマーBは、スチリルエチルヒドロキシシラン、スチリルエチルメトキシシランおよびスチリルエチルエトキシシラン、並びにこれら化合物の混合物によって構成される群から選ばれる。とりわけ、コモノマーBは、スチリルエチルトリメトキシシランである。
好ましくは、非芳香族ビニルポリマー中のコモノマーBのモル含有量は、5%よりも多く、より好ましくは5%〜30%、とりわけ5%〜20%である。
さらにまた、本発明の組成物においては、モノマーBの質量含有量は、好ましくは10%〜30%、より好ましくは20%〜30%である。
【0021】
さらにまた、本発明のもう1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、上記官能化NAVPは、充填剤の形態を高温で適切に維持するように、架橋状態、即ち、三次元形で存在する。
そのような架橋は、任意の公知の手段、例えば、後処理を使用して、或いは、より好ましい実施態様によれば、少なくとも1種の出発コモノマーによってもたらし得るが、勿論、出発コモノマーは、少なくとも二官能性であること、即ち、重合時に三次元NAVPネットワークを形成することのできる少なくとも1個の第2官能基を担持することを条件とする。
この架橋は、有利には、第3のコモノマー(以下、コモノマーCと称する)の存在によってもたらし得る。
換言すれば、そのような特定の場合、上記NAVPは、少なくとも下記の3種のモノマーのコポリマーであり、3種全てがフリーラジカル重合によって共重合可能である:
‐第1の非芳香族ビニルコモノマー(“A”);
‐第2の式(I)のZ官能基を担持するコモノマー(“B”)
‐第3の架橋用コモノマー(“C”)、即ち、上記重合の見地から少なくとも二官能性であるコモノマー。
“架橋用”と称するこのモノマーCは、ビニルまたは非ビニルの芳香族または脂肪族モノマーであり得る。
さらに好ましくは、コモノマーCとして適するのは、フリーラジカル重合によって重合可能な2個の不飽和基、とりわけ、エチレン基を担持するコモノマー、とりわけ、ポリオール、とりわけジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;アルキレンジ(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビス-アクリルアミド);少なくとも2個のビニル基を担持するビニル芳香族化合物、好ましくはスチレン化合物(例えば、ジイソプロペニルベンゼン(DIB)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリビニルベンゼン(TVB));およびそのようなコモノマーの混合物からなる群から選ばれるコモノマーである。
【0022】
好ましいモノマーCのこれらの例の幾つかの構造式を、以下で思い起されたい:
【化4】

【0023】
1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、使用するNAVPは、ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、或いは主要質量画分(好ましくは少なくとも50%以上、より好ましくは70%以上)の(メタ)アクリレート単位に由来するコポリマー、例えば、コポリマーMMA-TSPM-EGDMA、MMA-TSPM-PGDMA、MMA-TSPM-HGDMAおよびMMA-TSPM-DVBからなる群から選ばれるコポリマーである。
また、上記官能基Zを担持するコモノマーBまたはコモノマーAは、架橋用コモノマーとしても使用し得るが、勿論、このコモノマーBまたはこのコモノマーAが、それ自体、少なくとも二官能性であり、他のコモノマーとフリーラジカル重合によって共重合可能であることを条件とする。
架橋用コモノマーCの質量比は、好ましくは1%よりも高く、より好ましくは5%よりも高く、とりわけ10〜30%である。
例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレンのようなジエンモノマーのような種々の他のモノマーを、必要に応じて、小割合、好ましくはモノマー総質量の20%未満で添加し得る。
本発明の1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、モノマーA、BおよびCは、異なるもので、3種全てがビニルモノマー、とりわけ、3種全てが非芳香族ビニルモノマーである。
本発明のもう1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、上記の1つと組合せるまたは組合せないにかかわらず、モノマーAおよびBは、1個の付加によって重合可能な官能基を担持し、架橋用モノマーCは、フリーラジカル重合によって重合可能である2個のみの官能基を担持する。
【0024】
架橋させたZ官能化NAVPは、ビニルコポリマーの官能化に適する任意の合成方法によって製造し得る。
好ましくは、この合成は、各種モノマーのフリーラジカル重合によって実施する。そのような方法の一般的原理は、既知であり、とりわけ、Z官能化ポリスチレン(アルコキシシランまたはヒドロキシシラン)のTSPMの存在下のエマルジョン中でのフリーラジカル重合(例えば、Macromolecules 2001, 34, 5737およびMacromolecules 2002, 35, 6185参照)または架橋させた(但し官能化していない)ポリスチレンのDVBの存在下での合成(Polymer 2000, 41, 481)に応用する。
好ましくは、上記の合成においては、非芳香族ビニルモノマーAは、アクリレートまたはメタクリレートモノマーであり;官能化用コモノマーB(官能基Zを担持する)は、好ましくは、TSPM、TSPA、TSESおよびこれらモノマーの混合物からなる群から選ばれ;架橋用コモノマーCは、それ自体、好ましくは、HGDMA、PGDMA、EGDMA、DVBおよびこれらモノマーの混合物からなる群から選ばれるビニルモノマーである。
そのようにして、Z官能化架橋NAVPのナノ粒子は、水中エマルジョン中で、即ち、ラテックスの形(典型的には、例えば、水1リットル当り100gのポリマー)で得ることができる。ポリマー“ラテックス”は、知られているとおり、水性媒質中のポリマー粒子の懸濁液またはエマルジョンからなるコロイド系を意味するものと理解しなければならないことを思い起されたい。
【0025】
図1に示すように、前記の項I-1-Aに従ってTEMにより特性決定したこれらのNAVPナノ粒子は、好ましくは、単離状態または凝結体(それ自体場合によって凝集し得る)の形のいずれであれ、実質的に球形(従って、ナノビーズの形状)で存在する。凝結体当りのナノ粒子の数は、典型的には2〜100個である。
これらのナノビーズの平均直径は、例えば項I-1-Aにおいて示しているようなTEMによって測定し得、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜60nm、とりわけ10〜40nmである。
本発明のゴム組成物においては、NAVP充填剤の量は、好ましくは、10〜100phr(注記:phr = エラストマー100質量部当りの質量部)である。これらのナノ粒子の低密度故に、この量は、有利には10〜80phr、好ましくは20〜50phr、さらにより好ましくは厳密に30phrよりも多い。
さらにまた、NAVP充填剤は、好ましくは補強用充填剤全体の80%よりも多く、より好ましくは90%(容量%)を構成し、この充填剤全体の少量成分(好ましくは20容量%よりも少なく、より好ましくは10容量%よりも少ない)は、他の補強用無機充填剤、例えば、補強用無機充填剤またはカーボンブラックによって構成され得る。NAVPナノ粒子は、有利には、補強用充填剤の全体を構成し得る。
【0026】
“補強用無機充填剤”とは、この場合、カーボンブラックに対比して“白色”充填剤、“透明”充填剤または“非黒色”充填剤としても知られている、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;この無機充填剤は、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の如何なる他の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、無機充填剤は、トレッド用の通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る。
上記NAVP充填剤以外に使用することのできる適切な補強用無機充填剤は、シリカ質タイプ(とりわけシリカ(SiO2))またはアルミナ質タイプ(とりわけアルミナ(Al2O3))の鉱質充填剤である。使用するシリカは、当業者にとって公知の任意の補強用シリカ、とりわけ、共に450 m2/g未満、好ましくは30〜400 m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはフュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(HDシリカ)としては、例えば、Degussa社からのシリカ類Ultrasil 7000およびUltrasil 7005;Rhodia社からのシリカ類Zeosil 1165 MP、1135 MPおよび1115 MP;PPG社からのシリカHi-Sil EZ150G;Huber社からのシリカ類Zeopol 8715、8745または8755;および出願WO 03/016387号に記載されているシリカ類が挙げられる。補強用アルミナの例は、Baikowski社からの“Baikalox”“A125”または“CR125”;Condea社からの“APA-100RDX”;Degussa社からの“Aluminoxide C”またはSumitomo Chemicals社からの“AKP-G015”のアルミナ類である。
また、上記NAVP充填剤と一緒に、カーボンブラック、例えば、タイヤにおいて通常使用するタイプHAF、ISAF、SAFのブラック(例えば、高補強性ブラック類N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、或いは、意図する用途によるが、より高級シリーズのブラック類、例えば、N660、N683、N772)も使用し得る。
総補強用充填剤中に存在するカーボンブラックの量は、広い限界内で変動し得るが、好ましくは、上記NAVP充填剤の量よりも少ない。有利には、カーボンブラックは、小割合または極めて小割合で、好ましくは10phr未満、より好ましくは6phr未満、例えば、0〜3phrで使用し得る。上記の範囲内では、とりわけカーボンブラックの着色特性(黒色着色剤)および耐UV特性からの利益を、上記NAVPポリマー充填剤によって得られる典型的な性能にさらに有害な影響を与えることなく有する。
好ましくは、本発明の組成物中の補強用充填剤全体の量は、20〜400phr、より好ましくは30〜200phrの範囲内にある。
【0027】
II-3. NAVP充填剤のマスターバッチ
本発明の最も知られた実施態様によれば、上記のNAVPナノ粒子は、本発明のゴム組成物中に、マスターバッチによって、即ち、これらの粒子を少なくとも1種のジエンエラストマーと前以って混合して最終ゴム組成物中への後での混入を容易にすることによって混入する。
“マスターバッチ”とは、知られているとおり、少なくとも1種のエラストマー(より一般的にはポリマー)と補強用充填剤との混合物、即ち、即使用状態の最終エラストマー(またはポリマー)組成物のプレカーサー混合物を意味するものと理解すべきである。
このマスターバッチは、少なくとも、上述のようにして官能化したNAVP充填剤とジエンエラストマー(またはジエンエラストマー混合物)を含み、本発明のもう1つの主題を構成する。
このマスターバッチは、下記の工程を含む方法(この方法自体が本発明の主題である)によって製造することができる:
‐ジエンエラストマーのラテックスおよび官能化したNAVPのラテックスから出発する工程;
‐これらのラテックスを十分に混合する工程;
‐そのようにして得られた混合物を沈降させる工程;
‐その後、そのようにして得られた沈降物を洗浄し、乾燥させる工程。
ジエンエラストマーラテックスは、エマルジョン中で既に入手し得るエラストマー(例えばエマルジョンSBR)、または有機溶媒と水の混合物中に一般的には界面活性剤によって乳化させる最初は溶液中のジエンエラストマー(有機溶媒は凝固または沈降時に排除する)からなり得る。
【0028】
2種のラテックスを十分に混合する操作は、上記ポリマー充填剤をジエンエラストマー中に適切に分散させ且つ混合物全体を均質化させるように実施して、好ましくは20〜500g/l、より好ましくは50〜350g/lの固形分濃度を有するラテックス混合物を調製する。好ましくは、2種の出発ラテックスは、混合する前に水に希釈する(例えば、ラテックス1容量に対して水1容量)。
上記2種のラテックスの混合物は、当業者にとって既知の任意の方法により、例えば、機械的作用により或いは好ましくは凝固剤の作用により沈降させ得る。
凝固剤は、任意の液体化合物で水混和性であるが、エラストマーの非溶媒(または貧溶媒)、例えば、食塩水溶液、好ましくはアルコール、または少なくとも1種のアルコールを含有する溶媒混合物(例えば、アルコールと水、またはアルコールとトルエン)である。より好ましくは、凝固剤は、メタノールまたはイソプロパノールのようなアルコール単独である。凝固は、好ましくは、大容量の凝固剤中で撹拌しながら周囲温度で実施する;典型的には、2種の希釈ラテックスの総混合容量の実質的少なくとも2倍の容量のアルコールを使用する。この工程においては、2種のラテックスの混合物を凝固剤上に注ぎ込むのが好ましく、その逆ではない。
洗浄し乾燥させた後に、マスターバッチは、少なくとも選択したジエンエラストマー(例えば、NRまたはSBR)と該エラストマーマトリックス中に埋込まれたNAVPナノ粒子とを含むゴム“小片”の形で得られる。
各種添加剤も、必要に応じて、これらの添加剤をマスターバッチにおいて適切と意図するか(例えば、安定剤、着色剤および耐UV剤としてのカーボンブラック、可塑剤、酸化防止剤等)、或いはマスターバッチを意図する最終ゴム組成物において適切と意図するか(例えば、カップリング剤)によって、マスターバッチ中に混入し得る。
マスターバッチのエラストマーは、本発明のゴムマトリックスのエラストマー(1種以上)と同一または同一ではない任意のジエンエラストマーであり得る。同じジエンエラストマーを使用し且つマスターバッチ中のNAVP量を組成物の意図する最終量に調整して、本発明の組成物の製造中に後でジエンエラストマーを追加しないようにすることが有利であり得る。
【0029】
II-4. カップリング剤
シリカのようないずれかの補強用無機充填剤と同様に、Z官能化NAVP充填剤は、カップリング剤(結合剤とも称する)を使用して充填剤粒子表面とジエンエラストマー間に十分な連結を確立させて、本発明の組成物中での上記充填剤の補強用充填剤機能を十分に奏させることを必要とする。
カップリング剤は、少なくとも二官能性であり、詳細には、簡略化した一般式“U1-T-U2”を有し、式中、
U1は、上記充填剤に物理的および/または化学的に結合し得る官能基(“U1”官能基)を示し;
U2は、ジエンエラストマーに、例えば、イオウ原子を介して物理的および/または化学的に結合し得る官能基(“U2”官能基)を示し;
Tは、U1とU2の連結を可能にする2価の基を示す。
種々の有効性を有する(シリカ/ジエンエラストマー)カップリング剤は、極めて多数の文献に記載されており、当業者にとって周知である。タイヤの製造において有用な上記ジエンゴム組成物中で、シリカのような補強用無機充填剤とジエンエラストマー間で有効な結合を確保する可能性のある任意のカップリング剤、とりわけ、官能基U1およびU2を担持するオルガノシラン類または多官能性ポリオルガノシロキサン類を使用し得る。
とりわけ、例えば、出願WO 03/002648号およびWO 03/002649号に記載されているような、その特定の構造により“対称形”または“非対称形”と称するポリ硫化シラン類を使用する。
【0030】
本発明を実施するのにとりわけ適しているのは、以下の定義に限定することなしに、下記の一般式(III)を満たす“対称形”ポリ硫化シランと称するものである:
(III) Q-A-Sn-A-Q
(式中、nは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、とりわけC1〜C10アルキレン、とりわけC1〜C4アルキレン、特にプロピレン)であり;
Qは、下記の式の1つに相応する:
【化5】

(式中、基R4は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得、C1〜C18アルキル基、C5〜C18シクロアルキル基またはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、とりわけC1〜C4アルキル基、とりわけメチルおよび/またはエチル)を示し;
基R5は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得、ヒドロキシル基、C1〜C18アルコキシル基またはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、ヒドロキシル、C1〜C8アルコキシルまたはC5〜C8シクロアルコキシル基、より好ましくは、ヒドロキシルおよびC1〜C4アルコキシル、とりわけヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれた基)を示す)。
上記式(III)に相応するポリ硫化シラン類の混合物、とりわけ、通常の商業的に入手可能な混合物の場合、“n”の平均値は、好ましくは2〜5の間、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、二硫化シラン(n = 2)によっても有利に実施し得る。
【0031】
ポリ硫化シラン類の例としては、とりわけ、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類のような、ビス((C1〜C4)アルコキシル-(C1〜C4)アルキルシリル-(C1〜C4)アルキル)のポリスルフィド類(とりわけ、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)が挙げられる。これらの化合物のうちでは、とりわけ、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。
また、有利なカップリング剤の例としては、出願WO 02/083782号に開示されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシル-ジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)のポリスルフィド類(とりわけ、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、とりわけ、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドまたはジスルフィドも挙げられる。
上記のポリ硫化アルコキシシラン類以外のカップリング剤の例としては、とりわけ、二官能性ポリオルガノシロキサン類、或いは出願WO 02/30939号およびWO 02/31041号に記載されているような、ヒドロキシシランポリスルフィド類(上記式(III)においてR5 = OHである)が挙げられる。
本発明に従う組成物においては、カップリング剤の量は、有利には10phr未満である;一般的には、カップリング剤はできる限り少なく使用することが望ましいことを理解されたい。カップリング剤の量は、好ましくは7phr未満、より好ましくは5phr未満、とりわけ0.5〜4phrである。
カップリング剤は、本発明の組成物のジエンエラストマーに予めグラクトさせ得(“U2”官能基を介して)、そのようにして官能化即ち予備カップリングさせたエラストマーは、その場合、上記ポリマー充填剤に対しての遊離の“U1”官能基を含む。また、カップリング剤は、上記NAVP充填剤にそのZ官能を介して予めグラフトさせ得(“U1”官能基を介して)、その後、そのようにして“予備カップリングさせた”充填剤を、遊離の“U2”官能基を介してジエンエラストマーに結合させ得る。しかしながら、とりわけ未硬化状態での組成物のより良好な加工のためには、上記ポリマー充填剤にグラフトさせているまたは遊離状態の(即ち、グラフトさせていない)カップリング剤を使用するのが好ましい。
【0032】
II-5. 各種添加剤
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、可塑剤または増量剤オイル類(後者は、本来、芳香族または非芳香族である);顔料;耐オゾン性ワックス、化学耐オゾン剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用または可塑化用樹脂;メチレン受容体(例えば、ノボラックフェノール樹脂)または供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウ或いはイオウおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミド供与体のいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または数種も含み得る。
好ましくは、これらの組成物は、好ましい非芳香族系または極めて僅かにのみ芳香系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル類(とりわけ、トリオレート類)、好ましくは30℃よりも高い高Tgを有する炭化水素系可塑化用樹脂;およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。そのような好ましい可塑剤の全体量は、好ましくは10〜50phr、より好ましくは20〜40phrである。
これらの炭化水素可塑化用樹脂のうちでは(“樹脂”なる称号は、固形化合物についての定義によって留保されていることを思い起されたい)、とりわけ、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、ジペンテンまたはポリリモネンのホモポリマーまたはコポリマー;C5画分、例えば、C5画分/スチレンコポリマーまたはC5画分/C9画分コポリマーの樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、単独でまたはMESもしくはTDAEオイルのような可塑化用オイル類と併用して使用可能である。
また、上述した補強用充填剤(即ち、NAVPポリマー充填剤+必要に応じてのカーボンブラックおよび/またはHDシリカのような無機充填剤)には、意図する用途に応じて、例えば着色タイヤのサイドウォールまたはトレッドにおいて使用し得るクレー、ベントナイト、タルク、チョーク、カオリンの粒子のような不活性(即ち、非補強用)充填剤を添加することもできる。
また、これらの組成物は、上記のカップリング剤以外に、カップリング活性化剤、補強用無機充填剤用の被覆剤(例えば、単一のU2官能基を含む)、或いは、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散を改善し且つゴム組成物の粘度を低下させることによって、未硬化状態における加工特性を改善し得るより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン類(とりわけ、アルキルトリエトキシシラン類)のような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール類);第一級、第二級または第三級アミン類(例えば、トリアルカノールアミン類);ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類、例えば、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサン類(とりわけ、α,ω-ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン類)である。
【0033】
II.6 ゴム組成物の製造
本発明の組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の一般的手順に従う以下の2つの連続する製造段階を使用して製造する:所定の最高温度(この場合、110℃〜190℃、好ましくは120℃〜170℃)までの高温で熱機械加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する);および、その後の典型的には120℃未満、例えば、60℃〜100℃の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階とも称する);この仕上げ段階において架橋または加硫系を混入する。
最もよく知られた実施態様によれば、NAVPナノ粒子は、本発明の組成物中に、上述したマスターバッチの形で混入する。
例えば、加硫系を除いた本発明組成物の全成分、とりわけ、マスターバッチ中のNAVP充填剤およびそのカップリング剤を、第1のいわゆる非生産段階において、混練により、十分に混合する、即ち、これらの各種ベース構成成分をミキサー内に導入し、1以上の工程で、所定最高温度に達するまで熱機械的に混練する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1〜15分である。
第1の非生産段階においてそのようにして得られた混合物を冷却した後、加硫系を、一般に開放ミルのような開放ミキサー内で、低温にて混入する;次いで、組成物全体を、数分間、例えば、2〜15分間混合する(生産段階)。
【0034】
適切な加硫系は、好ましくは、イオウおよび促進剤をベースとする。イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用することのできる任意の化合物、とりわけ、2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略称する)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”と略称する)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”と略称する)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”と略称する)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”と略称する)およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を使用し得る。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
この加硫系には、上記の第1非生産段階中および/または生産段階中に、酸化亜鉛、ステアリン酸のような脂肪酸、グアニジン誘導体(とりわけジフェニルグアニジン)等のような各種既知の二次加硫促進剤または活性化剤を添加し得る。イオウの量は、好ましくは、0.5〜3.0phrであり、一次促進剤の量は、好ましくは、0.5〜5.0phrである。
その後、そのようにして得られた最終組成物は、とりわけ実験室での特性決定のために、例えば、フィルムまたはシート形状にカレンダー加工するか、或いは、例えば、乗用車用のタイヤトレッドとして使用し得るゴム形状要素に押出加工する。
加硫(即ち、硬化)は、既知の方法で、一般的に130℃〜200℃の温度で、とりわけ硬化温度、使用する加硫系および当該組成物の加硫速度に応じて、例えば、5〜90分で変動し得る十分な時間で実施する。
【0035】
III. 実施例
III-1. 試験1
以下の実施例においては、(Z)官能化した架橋ポリメタクリレートの2種の充填剤を、3種のモノマー(メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、および充填剤Aにおいはトリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TSPM)、充填剤Bにおいてはトリメトキシシリルプロピルアクリレート(TSPA))のフリーラジカル重合によって合成し、次いで、タイヤ用のゴム組成物中に、NAVP充填剤のラテックスとジエンエラストマー(SBR)のラテックスを共沈させることによって得られたマスターバッチの形で混入する。
1つのとりわけ好ましい実施態様によれば、Z官能基を担持するコモノマーB(この場合、TSPMまたはTSPA)の質量比は20〜30%であり、架橋用コモノマーC(この場合、EGDMA)の質量比は10%〜30%である。
A. ポリメタクリレートナノ粒子の合成
各種モノマーを、SDSの溶液(粉末状態でバブリング)を除いては全て水溶液を使用するので、前以って窒素バブリングに供する。反応は、機械的撹拌手段を備えた1.5Lの反応器内で実施する。840mlの水を導入し、30分の撹拌しながらの窒素バブリング後に、界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の0.9モル/l水溶液の50ml、リン酸水素ナトリウムとリン酸二水素アンモニウムの1モル/1等モル緩衝溶液の50mlを連続導入する。pH 7に緩衝し、350rpmで撹拌し、60℃に加熱したこの溶液に、下記の順序でモノマー充填剤を添加する:
充填剤A:48.7gのMMA (または47.1%の質量画分)、29.1gのEGDMA (28.1%の質量画分)、次いで25.6gのTSPM (24.8%の質量画分)。
充填剤B:48.7gのMMA (または47.8%の質量画分)、29.1gのEGDMA (28.6%の質量画分)、次いで24.1gのTSPA (23.7%の質量画分)。
その後、激しく撹拌(350rpm)しながら、得られたエマルジョンに45mlの過硫酸カリウム水溶液(0.125モル/l)を添加する。撹拌しながら60℃で60分後、18mlのヒドロキノン水溶液(0.5モル/l)を重合媒質に添加する。反応媒質を、エラストマーと混合する前に冷却する(乾燥抽出により測定した転換率:充填剤A 99%、充填剤B 94%)。
そのようにして得られた官能化し架橋したポリメタクリレートは、約10質量%の固形分(NAVP)と構成水(約90%)を含むラテックスの形にある。
【0036】
充填剤Aラテックスを、項I-1-Aに従って特性決定する。図1に示すTEM画像は、本発明のナノ粒子(素粒子)がこの場合ナノビーズ形状であり、その大多数が20〜60nmの直径を有することを示している。平均円直径は、34nmに等しい(標準偏差 6nm)。
この段階で、上記ポリメタクリレート(充填剤A)を単離し、乾燥させて、モノマーTSPMによって付与されたその(Z)官能化の量を、ケイ素量を分析することにより、以下のように進めて評価する:
‐水性媒質中のサンプルを、カ焼し次いで得られた灰分のアルカリ融合によって可溶化する第1工程;
‐ケイ素を、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP/AES)により定量分析する第2工程。
さらに正確には、操作は、以下のとおりである:サンプルを525℃で2時間カ焼する。次いで、融合を、得られた灰分において、1150℃(±50℃)でテトラホウ酸リチウム(例えば、1gのカ焼充填剤当り2g)と一緒に約25分間行なう。冷却後、得られた融合ビーズ全体を水中2%に希釈した塩酸中に80℃で溶解する。その後、溶液を目盛り付きフラスコに移し、調整する。
その後、ケイ素の分析を、目盛り付きフラスコの内容物について、ICP/AESによって実施する:水溶液を導入装置によりアルゴンプラズマ中に送り、そこで、水溶液は、存在する原子の脱溶媒和、原子化、次いで励起/イオン化の各段階を受ける。その後、251.611nmでのケイ素発光線を、モノクロメーターにより選択し、次いで、相応する元素の認証標準溶液から作成した較正曲線と対比して定量する(発光線の強度Iは、相応する元素の濃度Cに比例する)。
【0037】
結果は、下記の式に従う、乾燥サンプル(105℃で2時間前以って乾燥させた)に対するケイ素の質量%として表す:

式中、下記のとおりである:
‐C = mg/lで表すSi濃度;
‐V = lでの目盛り付きフラスコの容量;
‐M = mgでのサンプルの質量。
そのようにして測定したケイ素の量は、2.6%(±0.2%)に等しく、従って、理論量(即ち2.8%)に実質的に等しい。
充填剤Aナノ粒子の密度を、ヘリウムピクノメーター使用して粉末で測定する:得られた値は、1.25g/cm3に等しい。
【0038】
B. マスターバッチの製造
その後、上記ポリメタクリレートラテックスをSBRジエンエラストマー中に直接混入して、前記の項II-2に示したようにしてマスターバッチを得る。該マスターバッチ中で意図するポリメタクリレート充填剤含有量は、意図する最終ゴム組成物におけるように、39phr(100質量部のエラストマー当りの質量部)である。
SBRラテックスは、当業者にとって公知の方法で、以下の条件下に調製した:重合温度:5℃;界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム;開始剤:鉄II塩/ヒドロパーオキサイドレドックス系。転換率は、50〜60%の辺りである。そのようにして調製したSBRは、以下の特性を有している:25℃のトルエン中で0.1g/dlの固有粘度:3.11;67に等しいムーニー粘度(MS);Tg (DSC) = -52℃;微構造:スチレン23.6%、ブタジエン相:ビニル15.0%、トランス70.1%、シス14.9%。
SBRラテックスの乾燥物の量は、マスターバッチを調製する前に、乾燥抽出物について秤量することによって測定する。SBRラテックスは、水中でその容量の3倍希釈する、即ち、下記のとおりである:
充填剤A:652mlの177.1g/lのSBRラテックス(115.4gのSBR)と1304mlの希釈水;
充填剤B:408mlの195.9g/lのSBRラテックス(80gのSBR)と820mlの希釈水。
合成を終えた時点で、各ポリメタクリレート充填剤ラテックスを室温に冷却し、その後、SBRラテックスに添加し、39phrの充填剤割合に希釈する、即ち、下記の通りである:
充填剤A:90.5g/lのポリメタクリレートラテックス 497ml (45gの充填剤);
充填剤B:84.8g/lのポリメタクリレートラテックス 368ml (31.2gの充填剤)。
得られた混合物を緩やかに均質化する。その後、混合物を、100ml/分の速度で、350rpmで撹拌している5000ml (充填剤A)、3500ml (充填剤B)のメタノールに添加する。そのようにして得られた沈降物を濾紙上で濾過し、洗浄水の一定の僅かな残存泡立ちしか無く且つ硝酸銀による洗浄水試験陰性まで水洗する。そのようにして洗浄した沈降物を60℃で3〜4日間窒素中で減圧下に乾燥させる。156g (充填剤A)および107.7g (充填剤B)の乾燥マスターバッチをそのようにして回収する。
【0039】
C. ゴム組成物の製造
対照組成物(HDシリカ充填剤)を、以下のようにして、通常の方法で製造する:先ずは(“非生産段階”)、37.5phrのオイルで前以って増量したSBRエラストマーと充填剤の1部を、密閉ミキサー内に導入する;ミキサーの初期タンク温度は、約90℃である。1分程度の適切な混練時間後、カップリング剤および充填剤の残りの1部を添加する。加硫系を除く他の成分を、2分後に添加する。その場合、密閉ミキサーを75%まで満す。その後、約6分間の熱機械加工を、70rpmの平均ブレード速度により、約135℃の落下温度に達するまで実施する。
手順は、本発明に従うNAVP充填剤(ポリメタクリレート)を混入する今回の第2および第3組成物においても同じであるが、NAVP充填剤とジエンエラストマーを、39phrのNAVP粒子を含有する前以って調製したマスターバッチの形で、開始から一度に導入する;その後、増量剤オイル(37.5phrのTDAEオイル)を漸次的に混入する。
熱機械的混合加工後、得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、加硫系(イオウおよびスルフェンアミドタイプ一次促進剤)を、全成分を適切な時間(5〜12分間)混合するにより、開放ミキサーにおいて30℃で添加する(“生産工程”)。
その後、そのようにして得られた組成物を、ゴムプレート(厚さ2〜3mm)の形にカレンダー加工してその機械特性を測定するか、或いはタイヤ用の半製品、例えば、トレッドの形に押出加工する。加硫(硬化)は、加圧下に150℃で40分間実施する。
【0040】
D. 比較ゴム特性試験の結果
試験目的は、上記NAVPナノ粒子の性能を通常の無機充填剤(HDシリカ)の性能と比較することである。
このために、上記項Cに従って調製した3通りの組成物(これらの組成物の一般的配合は、低転がり抵抗性と高耐摩耗性を併せ持つ高性能タイヤトレッド(“グリーンタイヤ”としても知られる低エネルギー消費性の乗用車タイヤ)においては標準的である)を比較する。対照組成物を補強するのに選択したHDシリカは、知られているとおり極めて高い補強力を有するタイヤ級シリカ(Rhodia社からの“Zeosil”タイプの“1165MP”、約2.1 g/cm3の密度を有する)である。
対照組成物においては、使用したジエンエラストマーはSBRであり、その合成は項III-2において説明しており、37.5%のTDAEオイルで前以って増量する(即ち、100phrの乾燥SBR当り37.5phrのオイル)。
試験した3つの組成物は、補強用充填剤の本質は別にして、厳密に同一である:
‐組成物C-1:HDシリカ(対照);
‐組成物C-2:Z官能化NAVP (TSPM);
‐組成物C-3:Z官能化NAVP (TSPA)。
補強用充填剤含有量を、等容量充填剤画分(同じ容量、即ち、各組成物において約19%の充填剤)に調整する。ポリマー充填剤の比表面積の方が低く、従って、組成物C-2およびC-3に導入するTESPTカップリング剤の量は低い。
組成物C-2およびC-3(本発明)においては、NAVPナノ粒子は、補強用充填剤全体の約97%(容量)を示しており、補強用充填剤全体は小割合(2phr)のカーボンブラックを含む。
【0041】
表1および2は、各組成物の配合(表1:phrで表す各種成分の含有量)および150℃で40分の硬化前後の各組成物の特性(表2)を続けて示している。
表2の種々の結果の検証は、対照組成物C-1と比較した本発明に従う組成物C-2およびC-3について、下記のことを示している:
‐未硬化状態における、改良された加硫速度(定数K);
‐対照組成物と対比してほぼ16%の極めて有意な密度の低下(ヘリウムピクノメーターを使用して測定) (勿論、硬化後に維持された差異);
‐硬化後の、高歪み(M100、M300、M400)における等価のモジュラス値、このことは、参照HDシリカによってもたらされた補強レベルと等価の高補強レベルの当業者に対する明白な指標である。
‐大事なことは、低下した転がり抵抗性および加熱の公認された指標であるtan(δ)maxとΔG*の値の大きな低下によって例証されているように、予期に反して極めて実質的に改良されているヒステリシス特性。
【0042】
III-2. 試験2
以下の製造例においては、3種のモノマー(メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレート(TSPA))のラジカル重合によって項III-1-Aにおいて合成した官能(Z)化し架橋させたポリメタクリレート充填剤(充填剤B)を、タイヤゴム組成物中に、NAVP充填剤ラテックスとNRラテックスとの共沈によって得られたマスターバッチの形で混入する。
A. マスターバッチの製造
上記ポリメタクリレートラテックスを、天然ゴムに直接混入する。マスターバッチ中で目標とする上記ポリメタクリレート充填剤含有量は、39phr (エラストマー100質量部当りの質量部)である。
NRラテックスの乾燥物の量は、マスターバッチを調製する前に、乾燥抽出物について秤量することによって測定する。NRラテックスを水で3倍希釈する、即ち、447mlの178.8g/lのNRラテックス(80gのNR)と900mlの希釈水である。
合成を終えた時点で、ポリメタクリレート充填剤ラテックス(項III-1-Aにおいて合成した充填剤B)を室温に冷却し、その後、39phrの充填剤の割合に希釈したNRラテックス、即ち、368mlの84.8g/lポリメタクリレート充填剤ラテックス(31.2gの充填剤)に添加する。得られた混合物を緩やかに均質化する。その後、100ml/分の速度で、混合物を350rpmで撹拌している3500mlのメタノールに添加する。そのようにして得られた沈降物を濾紙により濾過し、洗浄水の一定の僅かな残存泡立ちしか無く且つ硝酸銀による洗浄水試験陰性まで水洗する。そのようにして洗浄した沈降物を60℃で3〜4日間窒素中で減圧下に乾燥させる。110gの乾燥マスターバッチをそのようにして回収する。
【0043】
B. ゴム特性試験
その後、NRゴムの2通りの組成物を、上記試験1において示したようにして調製する(約145℃の落下温度);これら2つの組成物は、以下のように、その補強用充填剤の性質においてのみ異なる:
‐組成物C-4 (対照):HDシリカ;
‐組成物C-5 (本発明):TSPA官能化NAVP
優先的応用例として、そのようなゴム組成物は、典型的には、道路接触系、とりわけ、NR系ゴムマトリックスを通常使用するタイヤの部品、例えば、タイヤの内部安全ベアリング、サイドウォール、タイヤのビーズ領域、トレッドの下地層、さらにまた、これらタイヤの、とりわけ重量貨物車両用のトレッドにおいて使用される。
補強用充填剤含有量を、等容量充填剤画分(各組成物において同じ容量(即ち17%)の充填剤)に調整する。ポリマー充填剤の比表面積の方が低いので、組成物C-5に導入するTESPTカップリング剤の量は著しく低い。本発明の組成物C-5においては、NAVP充填剤は、補強用充填剤総量の約97%(容量)を示しており、補強用充填剤全体は小割合(1phr)のカーボンブラックを含む。
【0044】
表3および4は、各組成物の配合(表3:phrで表す各種成分の含有量)および150℃で25分の硬化前後の各組成物の特性(表4)を続けて示している。
表4の種々の結果の検証は、対照組成物C-4と比較した本発明に従う組成物C-5について、下記のことを示している:
‐未硬化状態における、同様なスコーチ安全性(Ti)および加硫速度(定数K);
‐極めて有意な密度の低下(ほぼ−14%);
‐硬化後の、極めて高い歪みにおける高いモジュラス値(M600における値参照);このことは、参照HDシリカによって得られた補強レベルに対して優れていない場合でも少なくとも同等である、上記NAVP充填剤によって得られた高い補強レベルを示している。
‐大事なことに、合成ジエンエラストマー(SBR)において観測された上記の結果の全て、この場合も大きく改良されているヒステリシス特性(極めて実質的に低下したtan(δ)maxとΔG*の値)を大いに確認し得る。
結論として、本発明に従う組成物の特定のポリマー充填剤は、カーボンブラックまたはHDシリカのような通常の補強用充填剤と比較してのその極めて大幅に低下した密度故に、ポリマー組成物の重量を極めて有意に低下させることを可能にしている。
この目的は、これらの通常の充填剤と比較して、耐摩耗性または耐亀裂性と同義である補強性を損なうことがないのみならず、HDシリカのような通常の無機補強用充填剤と比較してさらに改良された転がり抵抗性または加熱性と同義であるヒステリシスの有意の低下も可能にすることによって達成されている。
最後に、上記NAVP充填剤の1つの顕著な利点を強調しなければならない:ポリマーマトリックスの密度は上記NAVP充填剤自体の密度と実質的に等しくなるので、それによって、上記ポリマーマトリックスの密度を増大させることなく補強用充填剤の量を増大させることが可能である。
【0045】
表1

(1) SBRエラストマー (項III-1-Bで説明したように合成);
(2) HDシリカ (Rhodia社からの“Zeosil”タイプ“1165MP”);
(3) Z官能化NAVP (項III-Aにおけるように合成;充填剤A);
(4) TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) TDAE増量オイル (Klaus Dahleke社からの“Vivatec 500”);
(6) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニルパラフェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6-PPD”);
(7) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
(8) Z官能化NAVP (項III-Aにおけるように合成;充填剤B)。

表2

【0046】
表3

(1) 天然ゴム;
(2) HDシリカ (Rhodia社からの“Zeosil”タイプ“1165MP”);
(3) TSPA官能化NAVP (項III-1-Aに従って合成;充填剤B);
(4) TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニルパラフェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6-PPD”);
(6) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。

表4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジエンエラストマー、ポリマー充填剤、該ポリマー充填剤とエラストマー間に結合を与えるカップリング剤をベースとし、前記ポリマー充填剤が、式≡Si-Xの官能基“Z”(式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)を担持する非芳香族ビニルポリマーのナノ粒子を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記非芳香族ビニルポリマーが、非芳香族ビニルモノマーのホモポリマー、または少なくとも主要質量画分が非芳香族ビニルであるコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記非芳香族ビニルポリマーが、アクリレートまたはメタクリレートのホモポリマーまたはコポリマーである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
Xがハロゲンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
Xが塩素である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
Xが式ORに相応し、式中、Rは、水素または直鎖もしくは枝分れの1価の炭化水素基を示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
Rが、水素、1〜15個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルおよびアリールの中から選ばれる、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
Rが、水素、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルコキシアルキル、C5〜C10シクロアルキルおよびC6〜C12アリールの中から選ばれる、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
Zが、下記の式の1つに相応する、請求項8記載の組成物:
【化1】

(式中、基R1は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、C1〜C8アルキル、C5〜C8シクロアルキルおよびC6〜C12アリールからなる群から選ばれ;
基R2は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよく、同一または異なるものであり得て、ヒドロキシル、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルからなる群から選ばれる)。
【請求項10】
基R1が、C1〜C4アルキル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から選ばれる、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
基R1が、C1〜C4アルキルからなる群から選ばれる、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
基R2が、ヒドロキシルおよびC1〜C6アルコキシルからなる群から選ばれる、請求項9〜11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
基R2が、ヒドロキシルおよびC1〜C4アルコキシルからなる群から選ばれる、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
基R1が、メチルおよびエチルの中から選ばれ;基R2が、ヒドロキシル、メトキシルおよびエトキシルの中から選ばれる、請求項9記載の組成物。
【請求項15】
前記非芳香族ビニルポリマーが、少なくとも1種の第1の非芳香族ビニルモノマー(“モノマーA”と称する)と、式≡Si-Xの官能基Zを担持する少なくとも1種の第2の官能化モノマー(“モノマーB”と称する)とのコポリマーである、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
モノマーAが、1個以上の、好ましくは1個の、フリーラジカル重合によって重合可能な官能基を担持する、請求項15項記載の組成物。
【請求項17】
モノマーAが、下記の式(II)に相応する、請求項16記載の組成物:
【化2】

(式中、基R3は、水素、C1〜C8アルキルおよびC5〜C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
基Yは、ハロゲン、基OH、OR'、SR'、C≡N、C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R'')、C(O)R'およびOC(O)R'からなる群から選ばれ、式中、R'およびR”は、同一または異なるものであり得て、1〜12個の炭素原子を含むアルキル、並びに6〜20個の炭素原子を含むアリール、アラルキルまたはアルカリールからなる群から選ばれる)。
【請求項18】
式(II)が、下記の特徴を満たす、請求項17記載の組成物:
R3は、水素およびC1〜C4アルキルからなる群から選ばれ;
Yは、塩素、基C(O)OH、C(O)OR'、C(O)N(R'R”)およびOC(O)R'からなる群から選ばれる。
【請求項19】
式(II)が、下記の特徴を満たす、請求項18記載の組成物:
R3は、水素またはメチルであり;
Yは、C(O)OR'基であり、式中、R'は、好ましくは、1〜8個の炭素原子を含むアルキルである。
【請求項20】
モノマーAが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
モノマーAが、メチルアクリレートまたはメタクリレート、好ましくはメチルメタクリレートである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
モノマーBが、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、(C1〜C4)アルコキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項15〜21のいずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
モノマーBが、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、ヒドロキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、メトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレート、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルアクリレート、エトキシシリル-(C1〜C4)アルキルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
モノマーBが、ヒドロキシシリルプロピルアクリレート、ヒドロキシシリルプロピルメタクリレート、メトキシシリルプロピルアクリレート、メトキシシリルプロピルメタクリレート、エトキシシリルプロピルアクリレート、エトキシシリルプロピルメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
コモノマーBが、トリメトキシシリルプロピルアクリレートまたはメタクリレートである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
コモノマーBが、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-(C1〜C4)アルコキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項15〜21のいずれか1項記載の組成物。
【請求項27】
コモノマーBが、スチリル-(C1〜C4)アルキル-ヒドロキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-メトキシシラン、スチリル-(C1〜C4)アルキル-エトキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
コモノマーBが、スチリルエチルヒドロキシシラン、スチリルエチルメトキシシラン、スチリルエチルエトキシシランおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
コモノマーBが、スチリルエチルトリメトキシシランである、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
前記非芳香族ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5%よりも高い、請求項15〜29のいずれか1項記載の組成物。
【請求項31】
前記非芳香族ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5〜30%である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
前記非芳香族ビニルポリマー中のコモノマーBのモル比が、5〜20%である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
前記非芳香族ビニルポリマーが、さらにまた、好ましくは付加反応により重合可能である少なくとも1種の少なくとも二官能性の架橋用コモノマー(“モノマーC”と称する)の存在によって架橋されている、請求項1〜32のいずれか1項記載の組成物。
【請求項34】
モノマーCが、少なくとも2個の重合可能な不飽和基を担持する、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記重合可能な不飽和基が、エチレン基である、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
モノマーCが、ポリオールジアクリレート、ポリオールトリアクリレート、ポリオールジメタクリレート、ポリオールトリメタクリレート、アルキレンジアクリルアミド、アルキレンジメタクリルアミド、少なくとも2個のビニル基を担持するビニル芳香族化合物、およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項33〜35のいずれか1項記載の組成物。
【請求項37】
モノマーCが、スチレン化合物である、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
スチレン化合物が、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
コモノマーCが、ポリオールジアクリレート、ポリオールジメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項36記載の組成物。
【請求項40】
コモノマーCが、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジメタクリレートおよびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
前記非芳香族ビニルポリマー中のコモノマーCの質量比が、5%よりも高い、請求項33〜40のいずれか1項記載の組成物。
【請求項42】
前記非芳香族ビニルポリマー中のモノマーCの質量比が、10〜30%である、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
モノマーBの質量比が、10〜30%である、請求項15〜42記載の組成物。
【請求項44】
モノマーBの質量比が、20〜30%である、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
前記非芳香族ビニルポリマーが、フリーラジカル重合によって得られる、請求項1〜44のいずれか1項記載の組成物。
【請求項46】
前記ナノ粒子の平均直径が、10〜100nmである、請求項1〜45のいずれか1項記載の組成物。
【請求項47】
前記ナノ粒子の平均直径が、10〜60nmである、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
前記非芳香族ビニルポリマーが、メチルメタクリレート(モノマーA)、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(モノマーB)およびエチレングリコールジメタクリレート(モノマーC)のコポリマーである、請求項33〜47のいずれか1項記載の組成物。
【請求項49】
前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜48のいずれか1項記載の組成物。
【請求項50】
前記カップリング剤が、少なくとも二官能性であるシランまたはポリシロキサンである、請求項1〜49のいずれか1項記載の組成物。
【請求項51】
非芳香族ビニルポリマー充填剤の量が、10〜100phrである、請求項1〜50のいずれか1項記載の組成物。
【請求項52】
非芳香族ビニルポリマー充填剤の量が、10〜80phrである、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
非芳香族ビニルポリマー充填剤の量が、20〜50phrである、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
少なくとも1種のジエンエラストマー中に、少なくとも1種のポリマー充填剤、該ポリマー充填剤とエラストマー間に結合を与えるカップリング剤を混入し、混合物全体を、1以上の工程で、110℃〜190℃の最高温度に達するまで熱機械的に混練することからなるゴム組成物の取得方法において、
前記ポリマー充填剤が、官能化非芳香族ビニルポリマー ≡Si-X (式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)のナノ粒子を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項55】
前記ポリマー充填剤を、前記充填剤と少なくとも1種のジエンエラストマーとのマスターバッチの形で混入する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
少なくとも1種のジエンエラストマーとポリマー充填剤をベースとし、前記ポリマー充填剤が、式≡Si-X (式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)の官能基“Z”を担持する非芳香族ビニルポリマーのナノ粒子を含むことを特徴とするマスターバッチ。
【請求項57】
下記の工程:
ジエンエラストマーのラテックスとポリマー充填剤のラテックスから出発する工程;
これらラテックスを十分に混合する工程;
そのようにして得られた混合物を沈降させる工程;
その後、そのようにして得られた沈降物を洗浄し、乾燥させる工程;
を含む、少なくとも1種のジエンエラストマーとポリマー充填剤と含む請求項56記載のマスターバッチの取得方法において、
前記ポリマー充填剤が、式≡Si-X (式中、Xは、ヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)の官能基Zを担持する非芳香族ビニルポリマーのナノ粒子を含むことを特徴とする前記取得方法。
【請求項58】
請求項56記載のマスターバッチの、ジエンエラストマー組成物の製造における使用。
【請求項59】
ゴム製の物品または半製品の製造における、請求項1〜53のいずれか1項記載のゴム組成物の使用。
【請求項60】
請求項1〜53のいずれか1項記載の組成物を含むゴムから製造した物品または半製品。
【請求項61】
前記物品または半製品が、タイヤ、タイヤ用の内部安全支持体、車輪、ゴムスプリング、エラストマー接合部、並びに他の懸架および振動防止要素からなる群から選ばれる、請求項60記載のゴム製物品または半製品。
【請求項62】
請求項1〜53のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【請求項63】
請求項1〜53のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ用の半製品。
【請求項64】
前記半製品が、トレッド、これらトレッド用の下地層、クラウン補強プライ、サイドウォール、カーカス補強プライ、ビーズ、プロテクター、内部ゴム、チューブレスタイヤ用の気密内部ゴム、内部サイドウォール補強ゴム、並びにパンクタイヤでの走行事態中の荷重に耐えるための他のゴム類からなる群から選ばれる、請求項63記載のタイヤ用半製品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−542827(P2009−542827A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517006(P2009−517006)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005772
【国際公開番号】WO2008/003435
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】