説明

定型耐火物用組成物及び定型耐火物

【課題】混練時の流動性が良く、成形時煉瓦が緻密となり、残炭性が低く、焼成煉瓦組織形成を阻害しない定型耐火物用組成物とこれを硬化した定型耐火物を提供すること。
【解決手段】ノボラック型フェノール樹脂(A)、水溶性アクリル樹脂(B)、ヘキサメチレンテトラミン(C)及び、アルミナ、マグネシア、クロマイト、ドロマイト、マグネシア、シリカ、ジルコン又は炭化珪素等の耐火性骨材(D)を含有することを特徴とする定型耐火物組成物、これを成形硬化した定型耐火物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐火性を有する定型耐火物として、とくに、セラミックスタイプの煉瓦用途に好適な定型耐火物組成物、これを成形硬化して得られる定型耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂を結合剤として用いる耐火物を成型したり、施工したりする場合には、結合剤と耐火骨材とを混合混練して得られた混練物を調製した後、これを成形後、加熱分解して結合剤を除去する。そこで、所謂セラミックスタイプの煉瓦に必要な結合剤(バインダー)には熱分解性が良好であることが求められている。不定形耐火物用途としては、残炭性を高くして、更に、混練物の流動性を改善するため、ノボラック型フェノール樹脂に少量の高分子量ポリエチレングリコール類を添加した結合剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、前記の技術では混練り時の流動性が上がり、成形時の煉瓦が緻密とはなるが、セラミックスタイプの煉瓦のように、残炭性を不要な場合には、フェノール樹脂の残炭性が焼成された煉瓦組織形成を阻害し、強度や、耐用性の低下を惹き起こすことがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−274960号公報(第2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、混練時の流動性が良く、成形時煉瓦が緻密となり、残炭性が低く、焼成煉瓦組織形成を阻害しない定型耐火物用組成物とこれを硬化した定型耐火物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、水溶性アクリル樹脂を添加したノボラック型フェノール樹脂が、残炭性が低く、煉瓦組織を阻害しない耐火煉瓦を得ることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、ノボラック型フェノール樹脂(A)、水溶性アクリル樹脂(B)、ヘキサメチレンテトラミン(C)及び耐火性骨材(D)を含有することを特徴とする定型耐火物組成物、これを成形硬化した定型耐火物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いるノボラック型フェノール樹脂(A)は、例えば、一般に蓚酸、塩酸、硫酸などの酸性物質または有機酸金属塩を触媒として、フェノール類とアルデヒド類をフェノール類に対するアルデヒド類のモル比0.3〜1.0で反応させたものが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂の原料となるフェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラノニルフェノール、パラクミルフェノール、ビスフェノールAなどがあり、これらを単独または2種類以上組合せて使用できる。好ましくは、コスト、樹脂の炭化率等からフェノール、クレゾールである。また、アルデヒド類としては通常ホルマリンが使用されるが、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどのアルデヒド発生物質、またはベンズアルデヒド等も使用できる。
【0008】
本発明に用いる水溶性アクリル樹脂(B)は、骨材間に滑り性を良くし成形時煉瓦を緻密とし、前記ノボラック型フェノール樹脂(A)との溶解する機能とノボラック型フェノール樹脂(A)とヘキサメチレンテトラミン(C)が架橋する際に、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの間に存在して結合度を弱める働きをする。また、前記水溶性アクリル樹脂(B)は、硬化したフェノール樹脂より低温で分解して気化し、分解ガスが抜けた微少な孔(以下、気孔と記す。)から、空気が流入し、水溶性アクリル樹脂(B)よりも抗酸化性のフェノール樹脂の酸化、分解を惹き起し易くする機能がある。
【0009】
また前記水溶性アクリル樹脂の具体例としては、(イ)α、β−不飽和カルボン酸及び/またはその塩類40〜83重量部、(ロ)(メタ)アクリル酸エステル10〜30重量部、(ハ)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル7〜50重量部((イ)、(ロ)、(ハ)の合計は100重量部)からなる単量体を重合して得られる共重合体を必須成分とするものが好ましい。
【0010】
前記各モノマーにおいて、(イ)α、β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、及びその半エステル等がある。またその塩類としてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニアや有機アミンイオンの塩などがある。これらは1種もしくは2種以上が使用されα、β−不飽和カルボン酸に換算し40〜83重量部になるようにすることが、耐火物への空気連行性が量異なることから好ましい。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステル(ロ)としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキルアルコールのもので、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上の混合物が使用される。その使用量は10〜30重量部であることが、骨材との混和性が良好で好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ハ)としては、好ましくは炭素数2〜4のアルキル基を有するものであり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上の混合物が使用される。その使用量は7〜50重量部である。前述の範囲において、7重量部以上では、アクリル樹脂の骨材への濡れ性が良好であり、50重量部以下で空気連行性の点から好ましい。
【0013】
前記共重合体の中でも、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ハ)のアルキル基が、炭素数2〜4であること、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル(ロ)が、炭素数1〜4のアルキルアルコールのアクリル酸エステルであるものが好ましい。
【0014】
なお、前記共重合体は、ラジカル重合開始剤を用いて、共重合することで得られる。例えば、ラジカル重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾイルなどの過酸化物、あるいはアゾビスイソブチロニトリルで代表されるアゾ化合物、更に、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ソーダ等の過硫酸塩などモノマーの種類により適宜選択でき、常圧下あるいは加圧下で、重合反応温度は通常50〜150℃、好ましくは常圧下、50〜100℃でで行うことが出来る。
【0015】
前記水溶性アクリル樹脂(B)は、固体または粉体として使用することもできる、通常は水溶液または水分散液として使用する。
【0016】
本発明に用いる耐火性骨材(D)としては、特に限定されないが、アルミナ、マグネシア、ドロマイト、マグネシア、シリカ、ジルコン及び炭化珪素等の無機材料類が好ましく、これらの1種以上を混合して用いても良い。
【0017】
また、前記ノボラック型フェノール樹脂(A)の添加量は、前記耐火性骨材(D)100重量部に対して、0.5〜10.0重量部であることが好ましい。
【0018】
また、前記水溶性アクリル樹脂(B)の添加量は、耐火性骨材(D)100重量部に対して0.5〜10.0重量部であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるヘキサメチレンテトラミン(C)は、前記ノボラック型フェノール樹脂(A)の硬化剤として働き、その配合比率は、耐火性骨材100重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン(C)0.01〜2.0重量部であることが好ましい。
【0020】
また、ノボラック型フェノール樹脂(A)と水溶性アクリル樹脂(B)との配合比率は、本発明の定型耐火物用組成物の流動性が良好であり、前記気孔が充分な量生成して、硬化したフェノール樹脂の分解が円滑に進行することからノボラック型フェノール樹脂(A)100重量部当たり、水溶性アクリル樹脂(B)20重量部以上が好ましく、成形物の高い機械的強度を得ることから水溶性アクリル樹脂(B)200重量部以下であることが好ましく、これらの中でも30〜150重量部が特に好ましい。
【0021】
前記定型耐火物用組成物は、前記ノボラック型フェノール樹脂(A)、水溶性アクリル樹脂(B)、ヘキサメチレンテトラミン(C)及び耐火性骨材(D)とを混合混練して混練物とすることで得ることができる。
【0022】
本発明の定型耐火物は、前記定型耐火物用組成物を型に入れて、成形することで得ることができる。例えば、前記混練物を型に込めて1t/cm程度の高圧でプレス成形して、定型耐火物を得ることができる。次いで、80〜150℃で加熱して乾燥しておいても良い。更に、前記の乾燥物を1000〜1500℃まで昇温して、焼成しても良い。前記定型耐火物としては、セラミックスタイプの耐火煉瓦が挙げられる。
【実施例】
【0023】
次いで、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において部及び%は特に断わりのない限り重量基準である。
【0024】
製造例1
攪拌機、還流冷却器及び温度計付きの反応装置にフェノール100部、37%ホルムアルデヒド水溶液70部及び蓚酸1部を仕込み、還流条件下で3時間反応させた。次いで、減圧下で脱水、脱フェノールを行った後、エチレングリコール44部を加えた後、取り出し、147部の不揮発分70%のノボラック型フェノール樹脂を得た。この樹脂は固形分の融点90℃、固形分の遊離フェノール3.0%であった。
【0025】
実施例1
製造例1で得られたノボラック型フェノール樹脂と水溶性アクリル樹脂(ウォーターゾールPC975−25;DIC株式会社製)を固形分がフェノール樹脂とアクリル樹脂との固形分比が70/30(重量比)となるように混合しして、樹脂バインダーを調製した。
【0026】
次いで前記の樹脂バインダー3重量部に対して骨材(マグネシア/酸化クロムを重量比で50/50で混合したもの)100重量部とヘキサメチレンテトラミン0.3重量とを
混練し、25mm径×25mm高さの円柱状の金型を使用し、1t/cmのプレス圧にて成形し、実験用サンプルを作製した。
【0027】
実施例2
製造例1で得られたノボラック型フェノール樹脂と水溶性アクリル樹脂(ウォーターゾールPC975−25;DIC株式会社製)を固形分がフェノール樹脂とアクリル樹脂との固形分比が85/15(重量比)となるように混合しして、樹脂バインダーを調製した。
【0028】
次いで、次いで後述する試験方法で評価した。
【0029】
比較例1
実施例1で調製した樹脂バインダーの代わりに、ノボラック型フェノール樹脂(フェノライトUG7902;DIC株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして実験用サンプルを作製した。
【0030】
【表1】

【0031】
素地強度:金型から取り出した時表面の状態を目視して角欠けや、面への付着を見る。強度は金型から取り出して直ぐに、強度を測定した。
【0032】
乾燥後強度:乾燥機中にて80℃から150℃まで20℃/hrで昇温して150℃で1時間保持後、強度を測定した。
【0033】
焼成強度:乾燥後の試験片を300℃/hrで昇温して1400℃の電気炉で1時間焼成し、自然冷却後に強度を測定した。
【0034】
なお、素地強度、乾燥強度、及び焼成強度の測定は25mm径×25mm高さの円柱成型物を横にして接線上に加圧してkgf/cmの値として得た。
【0035】
焼成後の外観目視:焼成物の外観と、これを割って内部を目視観察(炭素成分残留具合:黒色、灰色、骨材色の程度)し、下記の基準で評価した。
◎:骨材色で良好、○:若干灰色、×:灰色、××:黒色(炭素残留)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック型フェノール樹脂(A)、水溶性アクリル樹脂(B)、ヘキサメチレンテトラミン(C)及び耐火性骨材(D)を含有することを特徴とする定型耐火物組成物。
【請求項2】
前記水溶性アクリル樹脂(B)が、(イ)α、β−不飽和カルボン酸及び/またはその塩類40〜83重量部、(ロ)(メタ)アクリル酸エステル10〜30重量部、(ハ)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル7〜50重量部((イ)、(ロ)、(ハ)の合計は100重量部)からなる単量体を重合して得られる共重合体である請求項1記載の耐火物組成物。
【請求項3】
前記水溶性アクリル樹脂(B)の添加量が、耐火性骨材(D)100重量部に対して0.5〜10.0重量部である請求項3記載の定型耐火物組成物。
【請求項4】
前記ノボラック型フェノール樹脂(A)の添加量が耐火性骨材(D)100重量部に対して、0.5〜10.0重量部である請求項1記載の定型耐火物組成物。
【請求項5】
前記ヘキサメチレンテトラミン(C)の添加量が耐火性骨材(D)100重量部に対して、0.01〜2.0重量部である請求項1記載の定型耐火物組成物。
【請求項6】
前記耐火性骨材(D)がアルミナ、マグネシア、クロマイト、ドロマイト、マグネシア、シリカ、ジルコン及び炭化珪素からなる群から選ばれる1種以上の無機材料である請求項1に記載の定型耐火物組成物。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1つに記載の定型耐火物組成物を成形硬化して得られる定型耐火物。

【公開番号】特開2009−249256(P2009−249256A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101336(P2008−101336)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】