定常プラズマ生成装置
【課題】回転磁場単独でプラズマを高効率で生成でき、且つ、小型である定常プラズマ生成装置を提供する。
【解決手段】本発明による定常プラズマ生成装置は、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成される。放電管10は、プラズマ生成ガスが提供される。アンテナ部20は、放電管10の軸を回転軸とする回転磁場を放電管10に与えるものであり、複数の複数巻コイル21と、複数の磁性体22とを有する。複数の複数巻コイル21は、それぞれ放電管10の軸の垂直方向を軸とするものであり、複数の磁性体22は、各複数巻コイル21内にそれぞれ挿入される。電流型インバータ回路30は、アンテナ部20を含む並列共振回路を駆動する。
【解決手段】本発明による定常プラズマ生成装置は、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成される。放電管10は、プラズマ生成ガスが提供される。アンテナ部20は、放電管10の軸を回転軸とする回転磁場を放電管10に与えるものであり、複数の複数巻コイル21と、複数の磁性体22とを有する。複数の複数巻コイル21は、それぞれ放電管10の軸の垂直方向を軸とするものであり、複数の磁性体22は、各複数巻コイル21内にそれぞれ挿入される。電流型インバータ回路30は、アンテナ部20を含む並列共振回路を駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定常プラズマ生成装置に関し、特に、回転磁場を用いた定常プラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波放電を用いたプラズマ生成装置は、微細加工のためのドライエッチングや、薄膜形成のためのスパッタリング、プラズマCVD等の様々な分野で用いられている。今後は、薄膜形成等の表面処理等に用いられる低温プラズマ源や、推進源としてのプラズマスラスタ、宇宙機や宇宙エレベータのための磁化プラズマシールド等への応用が期待されている。このようなプラズマ生成手法として、プラズマ柱に直交するように回転磁場を印加する手法がある。プラズマ内に周方向の電流を定常的に駆動することにより、プラズマの一様性及び制御性を向上可能であることがこれまでに実証され、広く知られている。
【0003】
回転磁場を用いたプラズマ生成装置の例としては、例えば特許文献1がある。特許文献1では、固定巻線コイルを、各種薄膜形成装置内のプラズマ処理を行う真空成膜室の外側の周囲に配置する構成が開示されている。このコイルに交流電力を投入することで、真空成膜室内に回転磁場を発生させ、プラズマ発生部周囲に大量に配置されたソレノイドコイルによる直流発散磁界との合成により、プラズマ中の荷電粒子を撹拌しつつ均一化を図り、所望の方向にプラズマを引き出すような回転磁場を生成可能であるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、プラズマ輸送部の外側に、複数のヘルムホルツコイルを同心円状に配置する構成が開示されている。このように配置された複数のヘルムホルツコイルに位相が互いに異なる電流を印加すると、複数のヘルムホルツコイルの内側に回転磁場が生成され、電子が捕捉されつつイオンが回転しながら輸送され、プラズマ処理室におけるプラズマの均一性が向上するとしている。
【0005】
また、非特許文献1では、FIX(FRC Injection eXperiment)装置の真空容器内に回転磁場を印加するアンテナを配置して、回転磁場を利用した、電子によるトロイダル電流の駆動を可能とした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−229859号公報
【特許文献2】特開2001−358129号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】北野勝久、東小薗殻充、岡田成文、後藤誠一「FRCプラズマの電流駆動を目的とした高周波インバーター電源の開発」平成15年度電気学会全国大会講演論文集、4 パワーエレクトロニクス/産業システム、pp150−151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、電子サイクロトロン共鳴を用いて別途生成したプラズマに回転磁場を印加して均一化を図るものであったが、プラズマ生成効率や消費電力に対しての観点はなかった。また、特許文献1では、大量のソレノイドコイルを用いるため、プラズマ生成用電源の他に、別途、回転磁場生成用の電源が必要となる。したがって、装置が大型化されるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術は、放電管に回転磁場を与えるために、複数のヘルムホルツコイルを同心円状に配置したものである。また、特許文献2では、プラズマ生成用電源の他に、別途、回転磁場生成用の電源が必要となる。したがって、特許文献1に開示の技術と同様に、装置が大型化されるという問題があった。
【0010】
非特許文献1に開示の技術は、FIX装置に用いられる回転磁場発生装置のインバータ部での出力が2kV、850Aであり、高周波大電力電源が必要なものである。したがって、プラズマ生成装置全体として大規模なシステムが必要であり、比較的簡素なプラズマ生成装置に用いることができるものではなかった。また、消費電力も高いものであった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成でき、且つ、小型である定常プラズマ生成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による定常プラズマ生成装置は、プラズマ生成ガスが提供される放電管と、放電管の外部に設けられ、放電管の軸を回転軸とする回転磁場を放電管に与えるアンテナ部であって、それぞれ放電管の軸の垂直方向を軸とする複数の複数巻コイルと、各複数巻コイル内にそれぞれ挿入される複数の磁性体と、を有するアンテナ部と、アンテナ部を含む並列共振回路を駆動する電流型インバータ回路と、を具備するものである。
【0013】
また、アンテナ部の複数の複数巻コイルは、複数組の一対の複数巻コイルであって、該一対の複数巻コイルは、それぞれの複数巻コイルの軸が放電管を挟んで同軸となるように配置されれば良い。
【0014】
また、アンテナ部の複数の磁性体は、連続的に接続され、放電管の周囲に磁気回路を形成すれば良い。
【0015】
さらに、アンテナ部は、放電管の軸方向に複数列に配置されても良い。
【0016】
また、放電管の軸方向に複数配置されるアンテナ部は、各アンテナ部により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるようにそれぞれ制御されても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の定常プラズマ生成装置には、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成でき、且つ、小型であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置に適用可能な電流型インバータ回路の回路図の一例である。
【図4】図4は、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置の複数の磁性体の配置を説明するための断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施例の定常プラズマ生成装置を説明するための概略断面図である。
【図6】図6は、磁性体の有無によるプラズマ密度の比較結果を示す図である。
【図7】図7は、磁性体の有無による回転磁場の径方向磁場の比較結果を示す図である。
【図8】図8は、磁性体の有無による回転磁場生成効率の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略平面図である。また、図2は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の図1のb−b断面図である。図示の通り、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置は、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成されている。なお、定常プラズマ生成装置とは、プラズマを磁場配位により封じ込めて定常的に制御可能なプラズマ生成装置のことをいう。
【0020】
放電管10は、プラズマ生成ガスが提供されるものである。放電管10は、例えば円柱状であり、例えば石英ガラス管で構成されれば良い。放電管10内にプラズマ生成ガスを供給し、さらに後述のアンテナ部20により回転磁場を印加することで、プラズマが生成され、真空容器等に送られる。プラズマ生成ガスには、例えばAr、He等の希ガスが用いられれば良い。
【0021】
また、アンテナ部20は、放電管10の外部に設けられており、放電管10の軸を回転軸とする回転磁場を放電管10に与えるものである。アンテナ部20は、複数の複数巻コイル21と、複数の磁性体22とから主に構成されている。磁性体22は、例えばフェライト等の強磁性体からなるものが好ましい。また、アンテナ部20は、後述の電流型インバータ回路30により駆動されることで、放電管10内に回転磁場が生成されるように配置されるものである。図示例では、4つのアンテナ部20が一対ずつ組み合わされて放電管10を挟んで対向するように配置されている。
【0022】
アンテナ部20を構成する複数の複数巻コイル21は、それぞれ放電管10の軸の垂直方向(半径方向)を軸とするように配置されている。ここで、複数巻コイル21には、例えばフッ素樹脂被膜線等が用いられれば良い。また、コイルの個数や巻数、段数、直径等は、適宜決定されれば良い。図示例では、複数巻のコイルを4個配置した例を示している。なお、アンテナ部20に配置される複数の複数巻コイル21は、同種のものを用いれば良いが、後述の電流型インバータ回路30で適切に制御されれば、各複数巻コイル21は、それぞれ異なっていても良い。
【0023】
また、複数の磁性体22は、複数の複数巻コイル21内にそれぞれ挿入されている。磁性体22が複数巻コイル21内に挿入されることで、放電管に与えられる磁界が大きくなる。
【0024】
電流型インバータ回路30は、アンテナ部20と共振用コンデンサ37からなる並列共振回路を駆動するものである。具体的には、アンテナ部20の各複数巻コイル21に流れる電流を適宜制御するものである。電流型インバータ回路30は、電流制御が容易であり、プラズマ生成と回転磁場による電流駆動を同時に実現することが可能となっている。
【0025】
図3は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置に適用可能な電流型インバータ回路の回路図の一例である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図示の通り、例えば電流型インバータ回路30には、スイッチング素子にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたフルブリッジ回路が使用されている。電流型インバータ回路30は、充放電用コンデンサ31、IGBT32から主に構成されている。IGBT32は、ゲートへの制御信号(Clock A,Clock B)によりON/OFF制御され、充放電用コンデンサ31の直流出力を連続パルス状にアンテナ部20に印加するものである。図示例の電流型インバータ回路30では、IGBT32を2つ並列接続して用いることで、トランジスタへの負荷を軽減させている。そして、各IGBT32のゲートへの制御信号Clock A,Clock Bには、90度の位相差が与えられている。また、電流型インバータ回路30における過電圧や過電流(サージ)によるトランジスタの破壊を防止するために、各IGBT32にスナバ回路33が設けられている。スナバ回路33は、コンデンサ34及び抵抗35の並列回路並びにこれに直列に接続されるダイオード36からなるものである。なお、大電力を高速にスイッチング可能なトランジスタであれば、IGBTに限らず、他のトランジスタやスイッチング回路等であっても良い。また、共振用コンデンサ37は、アンテナ部20と共振周波数が所定の値となるように構成されるものである。
【0026】
そして図2に示されるように、放電管10の中心軸を中心に90度毎に4つの複数巻コイル21が配置され、放電管10を挟んで対向する複数巻コイル21の軸が同軸となるように配置されている。このように構成することで、電流型インバータ回路30により90度の位相差をもって駆動すれば、回転磁場が放電管10内に生成される。
【0027】
ここで、図示例では、複数巻コイル21は、4個の複数巻コイル21が用いられているが、より効率良く回転磁場を生成するために、複数巻コイル21をさらに多く用いても良い。この場合、複数巻コイル21の配置に応じて、電流型インバータ回路30の位相を適宜設定して適切な回転磁場が生成されるように構成すれば良い。
【0028】
次に、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の動作について説明する。まず、電流型インバータ回路30を用いて、アンテナ部20の各一対の複数巻コイル21に、位相が互いに異なる電流を順に印加する。その結果、放電管10内に回転磁場が生成される。そして、この回転磁場によりプラズマが生成される。ここで、各複数巻コイル21に挿入された各磁性体22の効果により、低い消費電力で強い回転磁場が生成される。回転磁場の周波数を、例えばイオンと電子のサイクロトロン周波数の中間の値に設定することによって、放電管10内部に生成されるプラズマ中の電子が、回転磁場の影響を受け、放電管10の軸を中心として、回転磁場の強度に応じた直径及び回転磁場の回転速度と同じ回転速度で回転する。
【0029】
このように構成された本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置では、放電管10の内部に効率良く回転磁場を与えられるため、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成可能となる。
【0030】
次に、プラズマ生成のさらなる高効率化を目的とし、磁性体により磁気回路を形成した形態を図示例と共に説明する。図4は、本発明の第2実施例の定常プラズマ装置の複数の磁性体の配置を説明するための断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0031】
図示の通り、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置は、第1実施例と同様に、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成されている。第1実施例と異なる点は、アンテナ部20の複数の複数巻コイル21内にそれぞれ挿入されている複数の磁性体40が、放電管10の周囲で連続的に接続されている点にある。この磁性体の構成により、放電管10の周囲に磁気回路が形成されている。
【0032】
ここで、図4において、破線矢印はある時点における磁場の方向を示している。なお、複数巻コイルに付した符号は説明のための便宜的なものであり、複数巻コイルの制御の順序等が限定されるものではない。
【0033】
複数の磁性体40、図示例では、具体的には4つの磁性体40を組み合わせることで、放電管10を囲うように磁気回路が構成されている。より具体的には、磁性体40は、複数巻コイル21に挿入される突状部分と、放電管10の周囲を覆うように複数巻コイル21の外側に延在する磁路部分とから構成されている。磁路部分が4つ組み合わされることで、一連の磁気回路が放電管10の周囲に配置されるようになっている。なお、磁路部分については図示例のように端部が当接することで4角形状に連続的に接続されるように構成しても良いし、放電管と同軸の円形状の磁路を放電管の周りに形成するように、円の1/4の形状をそれぞれ構成する磁性体を4つ組み合わせた磁路部分としても良い。
【0034】
このような構成のアンテナ部20の複数巻コイル21の内、一対の複数巻コイル21a及び複数巻コイル21cに交流電流を印加することで、放電管10内では、例えば磁場は図中上側から下側へ通過し、磁性体40により形成される磁気回路では下側から上側へ向かう磁場が生成される(図示の破線矢印の状態)。交流電流が印加されるので、この状態から上下逆になる状態を順に繰り返すことになる。そして、一対の複数巻コイル21b及び複数巻コイル21dに、一対の複数巻コイル21a及び複数巻コイル21cに印加した電流と90度位相の異なる電流を印加することで、放電管10内に回転磁場が生成される。このように、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置は、電流型インバータ回路30により、複数の複数巻コイル21に位相が互いに異なる電流を順に印加し、適宜制御することで、放電管10内に回転磁場が生成されると共に、放電管10の周囲に、複数巻コイル21に印加される電流に対応した磁場が、磁性体により形成される磁気回路に沿って発生する。本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置では、コイルに磁性体を挿入することで磁場強度を高めると共に、磁性体を連続的に接続することで形成される磁気回路により電源の効率を高め、回転磁場強度が向上し、高いプラズマ生成効率が実現可能である。なお、図示例では、複数の複数巻コイル21が4個配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されず、放電管10の周囲に磁性体による磁気回路が形成され、且つ、放電管10内に回転磁場が生成される配置及び個数であれば、複数巻コイル21は何個用いられても良い。
【0035】
次に、アンテナ部20を複数列で用いる例について説明する。図5は、本発明の第3実施例の定常プラズマ装置を説明するための概略断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。なお、電流型インバータ回路については図示を省略した。図示の通り、第3実施例では、アンテナ部20が、放電管10の軸方向に複数列に配置されている。放電管10の軸方向に複数列に配置される各アンテナ部20をそれぞれ制御することで、それぞれの配置位置において回転磁場を生成させることが可能である。このような構成とすることで、放電管10の軸方向で任意にプラズマを制御することが可能である。
【0036】
ここで、放電管10の軸方向に複数列に配置されるアンテナ部20は、各アンテナ部20により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるように制御されても良い。このような構成とすることで、例えば放電管10の軸方向にプラズマを加速する等の制御が容易に可能となる。
【0037】
次に、本発明の定常プラズマ生成装置の効果を確認するため、アンテナ部20により生成される磁場を比較する検証試験を行った。図6は、磁性体(フェライト)の有無によるプラズマ密度の比較結果を示す図である。まず、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成されるプラズマの密度と、比較例のプラズマの密度との比較を行った。ここで、比較例としては、アンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものを用いている。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて低消費電力でありながら、比較例と同等のプラズマ密度を有することが分かる。
【0038】
また、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成される回転磁場の径方向磁場と、比較例の回転磁場の径方向磁場との比較を行った。図7は、磁性体(フェライト)の有無による回転磁場の径方向磁場の比較結果を示す図である。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて約25%の消費電力でありながら、比較例と同等の回転磁場を生成できることが分かる。
【0039】
また、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成される回転磁場の生成効率と、比較例の回転磁場の生成効率との比較を行った。図8は、磁性体(フェライト)の有無による回転磁場生成効率の比較結果を示す図である。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。なお、回転磁場生成効率は、平均回転磁場強度を平均アンテナ電流で除した値である。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて、約3倍の回転磁場生成効率があることが分かる。
【0040】
さらに、第1実施例、第2実施例及び比較例の定常プラズマ生成装置のアンテナ部20により生成される磁場を比較した検証試験の結果を以下の表1に示す。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。表の通り、磁性体22が挿入された第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べてインダクタンスが明らかに増加していることが分かる。また、平均アンテナ電流は、第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べて少ない。さらに、第2実施例は、第1実施例と比較しても少ないことが分かる。これは、同じ大きさの電流をアンテナ部20に流した場合に得られる磁場強度が増加することを示している。さらに、第2実施例のように磁気回路が形成されることで、得られる磁場強度がさらに増加している。これは、回転磁場生成効率の値からも明らかである。したがって、第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べてプラズマ生成効率が高く、さらに、第2実施例は、第1実施例と比べてもプラズマ生成効率が高いことを示している。即ち、同じ磁場強度であれば、より低い消費電力でプラズマを生成可能である。
【表1】
【0041】
上述のように、本発明の定常プラズマ生成装置は、低消費電力であり、プラズマ生成効率が高いことが確認された。
【0042】
なお、本発明の定常プラズマ生成装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 放電管
20 アンテナ部
21 複数巻コイル
22,40 磁性体
30 インバータ回路
30 電流型インバータ回路
31 充放電用コンデンサ
32 IGBT
33 スナバ回路
34 コンデンサ
35 抵抗
36 ダイオード
37 共振用コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は定常プラズマ生成装置に関し、特に、回転磁場を用いた定常プラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波放電を用いたプラズマ生成装置は、微細加工のためのドライエッチングや、薄膜形成のためのスパッタリング、プラズマCVD等の様々な分野で用いられている。今後は、薄膜形成等の表面処理等に用いられる低温プラズマ源や、推進源としてのプラズマスラスタ、宇宙機や宇宙エレベータのための磁化プラズマシールド等への応用が期待されている。このようなプラズマ生成手法として、プラズマ柱に直交するように回転磁場を印加する手法がある。プラズマ内に周方向の電流を定常的に駆動することにより、プラズマの一様性及び制御性を向上可能であることがこれまでに実証され、広く知られている。
【0003】
回転磁場を用いたプラズマ生成装置の例としては、例えば特許文献1がある。特許文献1では、固定巻線コイルを、各種薄膜形成装置内のプラズマ処理を行う真空成膜室の外側の周囲に配置する構成が開示されている。このコイルに交流電力を投入することで、真空成膜室内に回転磁場を発生させ、プラズマ発生部周囲に大量に配置されたソレノイドコイルによる直流発散磁界との合成により、プラズマ中の荷電粒子を撹拌しつつ均一化を図り、所望の方向にプラズマを引き出すような回転磁場を生成可能であるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、プラズマ輸送部の外側に、複数のヘルムホルツコイルを同心円状に配置する構成が開示されている。このように配置された複数のヘルムホルツコイルに位相が互いに異なる電流を印加すると、複数のヘルムホルツコイルの内側に回転磁場が生成され、電子が捕捉されつつイオンが回転しながら輸送され、プラズマ処理室におけるプラズマの均一性が向上するとしている。
【0005】
また、非特許文献1では、FIX(FRC Injection eXperiment)装置の真空容器内に回転磁場を印加するアンテナを配置して、回転磁場を利用した、電子によるトロイダル電流の駆動を可能とした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−229859号公報
【特許文献2】特開2001−358129号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】北野勝久、東小薗殻充、岡田成文、後藤誠一「FRCプラズマの電流駆動を目的とした高周波インバーター電源の開発」平成15年度電気学会全国大会講演論文集、4 パワーエレクトロニクス/産業システム、pp150−151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、電子サイクロトロン共鳴を用いて別途生成したプラズマに回転磁場を印加して均一化を図るものであったが、プラズマ生成効率や消費電力に対しての観点はなかった。また、特許文献1では、大量のソレノイドコイルを用いるため、プラズマ生成用電源の他に、別途、回転磁場生成用の電源が必要となる。したがって、装置が大型化されるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術は、放電管に回転磁場を与えるために、複数のヘルムホルツコイルを同心円状に配置したものである。また、特許文献2では、プラズマ生成用電源の他に、別途、回転磁場生成用の電源が必要となる。したがって、特許文献1に開示の技術と同様に、装置が大型化されるという問題があった。
【0010】
非特許文献1に開示の技術は、FIX装置に用いられる回転磁場発生装置のインバータ部での出力が2kV、850Aであり、高周波大電力電源が必要なものである。したがって、プラズマ生成装置全体として大規模なシステムが必要であり、比較的簡素なプラズマ生成装置に用いることができるものではなかった。また、消費電力も高いものであった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成でき、且つ、小型である定常プラズマ生成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による定常プラズマ生成装置は、プラズマ生成ガスが提供される放電管と、放電管の外部に設けられ、放電管の軸を回転軸とする回転磁場を放電管に与えるアンテナ部であって、それぞれ放電管の軸の垂直方向を軸とする複数の複数巻コイルと、各複数巻コイル内にそれぞれ挿入される複数の磁性体と、を有するアンテナ部と、アンテナ部を含む並列共振回路を駆動する電流型インバータ回路と、を具備するものである。
【0013】
また、アンテナ部の複数の複数巻コイルは、複数組の一対の複数巻コイルであって、該一対の複数巻コイルは、それぞれの複数巻コイルの軸が放電管を挟んで同軸となるように配置されれば良い。
【0014】
また、アンテナ部の複数の磁性体は、連続的に接続され、放電管の周囲に磁気回路を形成すれば良い。
【0015】
さらに、アンテナ部は、放電管の軸方向に複数列に配置されても良い。
【0016】
また、放電管の軸方向に複数配置されるアンテナ部は、各アンテナ部により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるようにそれぞれ制御されても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の定常プラズマ生成装置には、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成でき、且つ、小型であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置に適用可能な電流型インバータ回路の回路図の一例である。
【図4】図4は、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置の複数の磁性体の配置を説明するための断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施例の定常プラズマ生成装置を説明するための概略断面図である。
【図6】図6は、磁性体の有無によるプラズマ密度の比較結果を示す図である。
【図7】図7は、磁性体の有無による回転磁場の径方向磁場の比較結果を示す図である。
【図8】図8は、磁性体の有無による回転磁場生成効率の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の概略平面図である。また、図2は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の図1のb−b断面図である。図示の通り、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置は、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成されている。なお、定常プラズマ生成装置とは、プラズマを磁場配位により封じ込めて定常的に制御可能なプラズマ生成装置のことをいう。
【0020】
放電管10は、プラズマ生成ガスが提供されるものである。放電管10は、例えば円柱状であり、例えば石英ガラス管で構成されれば良い。放電管10内にプラズマ生成ガスを供給し、さらに後述のアンテナ部20により回転磁場を印加することで、プラズマが生成され、真空容器等に送られる。プラズマ生成ガスには、例えばAr、He等の希ガスが用いられれば良い。
【0021】
また、アンテナ部20は、放電管10の外部に設けられており、放電管10の軸を回転軸とする回転磁場を放電管10に与えるものである。アンテナ部20は、複数の複数巻コイル21と、複数の磁性体22とから主に構成されている。磁性体22は、例えばフェライト等の強磁性体からなるものが好ましい。また、アンテナ部20は、後述の電流型インバータ回路30により駆動されることで、放電管10内に回転磁場が生成されるように配置されるものである。図示例では、4つのアンテナ部20が一対ずつ組み合わされて放電管10を挟んで対向するように配置されている。
【0022】
アンテナ部20を構成する複数の複数巻コイル21は、それぞれ放電管10の軸の垂直方向(半径方向)を軸とするように配置されている。ここで、複数巻コイル21には、例えばフッ素樹脂被膜線等が用いられれば良い。また、コイルの個数や巻数、段数、直径等は、適宜決定されれば良い。図示例では、複数巻のコイルを4個配置した例を示している。なお、アンテナ部20に配置される複数の複数巻コイル21は、同種のものを用いれば良いが、後述の電流型インバータ回路30で適切に制御されれば、各複数巻コイル21は、それぞれ異なっていても良い。
【0023】
また、複数の磁性体22は、複数の複数巻コイル21内にそれぞれ挿入されている。磁性体22が複数巻コイル21内に挿入されることで、放電管に与えられる磁界が大きくなる。
【0024】
電流型インバータ回路30は、アンテナ部20と共振用コンデンサ37からなる並列共振回路を駆動するものである。具体的には、アンテナ部20の各複数巻コイル21に流れる電流を適宜制御するものである。電流型インバータ回路30は、電流制御が容易であり、プラズマ生成と回転磁場による電流駆動を同時に実現することが可能となっている。
【0025】
図3は、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置に適用可能な電流型インバータ回路の回路図の一例である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図示の通り、例えば電流型インバータ回路30には、スイッチング素子にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたフルブリッジ回路が使用されている。電流型インバータ回路30は、充放電用コンデンサ31、IGBT32から主に構成されている。IGBT32は、ゲートへの制御信号(Clock A,Clock B)によりON/OFF制御され、充放電用コンデンサ31の直流出力を連続パルス状にアンテナ部20に印加するものである。図示例の電流型インバータ回路30では、IGBT32を2つ並列接続して用いることで、トランジスタへの負荷を軽減させている。そして、各IGBT32のゲートへの制御信号Clock A,Clock Bには、90度の位相差が与えられている。また、電流型インバータ回路30における過電圧や過電流(サージ)によるトランジスタの破壊を防止するために、各IGBT32にスナバ回路33が設けられている。スナバ回路33は、コンデンサ34及び抵抗35の並列回路並びにこれに直列に接続されるダイオード36からなるものである。なお、大電力を高速にスイッチング可能なトランジスタであれば、IGBTに限らず、他のトランジスタやスイッチング回路等であっても良い。また、共振用コンデンサ37は、アンテナ部20と共振周波数が所定の値となるように構成されるものである。
【0026】
そして図2に示されるように、放電管10の中心軸を中心に90度毎に4つの複数巻コイル21が配置され、放電管10を挟んで対向する複数巻コイル21の軸が同軸となるように配置されている。このように構成することで、電流型インバータ回路30により90度の位相差をもって駆動すれば、回転磁場が放電管10内に生成される。
【0027】
ここで、図示例では、複数巻コイル21は、4個の複数巻コイル21が用いられているが、より効率良く回転磁場を生成するために、複数巻コイル21をさらに多く用いても良い。この場合、複数巻コイル21の配置に応じて、電流型インバータ回路30の位相を適宜設定して適切な回転磁場が生成されるように構成すれば良い。
【0028】
次に、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置の動作について説明する。まず、電流型インバータ回路30を用いて、アンテナ部20の各一対の複数巻コイル21に、位相が互いに異なる電流を順に印加する。その結果、放電管10内に回転磁場が生成される。そして、この回転磁場によりプラズマが生成される。ここで、各複数巻コイル21に挿入された各磁性体22の効果により、低い消費電力で強い回転磁場が生成される。回転磁場の周波数を、例えばイオンと電子のサイクロトロン周波数の中間の値に設定することによって、放電管10内部に生成されるプラズマ中の電子が、回転磁場の影響を受け、放電管10の軸を中心として、回転磁場の強度に応じた直径及び回転磁場の回転速度と同じ回転速度で回転する。
【0029】
このように構成された本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置では、放電管10の内部に効率良く回転磁場を与えられるため、回転磁場単独でプラズマを高効率で生成可能となる。
【0030】
次に、プラズマ生成のさらなる高効率化を目的とし、磁性体により磁気回路を形成した形態を図示例と共に説明する。図4は、本発明の第2実施例の定常プラズマ装置の複数の磁性体の配置を説明するための断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0031】
図示の通り、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置は、第1実施例と同様に、放電管10と、アンテナ部20と、電流型インバータ回路30とから主に構成されている。第1実施例と異なる点は、アンテナ部20の複数の複数巻コイル21内にそれぞれ挿入されている複数の磁性体40が、放電管10の周囲で連続的に接続されている点にある。この磁性体の構成により、放電管10の周囲に磁気回路が形成されている。
【0032】
ここで、図4において、破線矢印はある時点における磁場の方向を示している。なお、複数巻コイルに付した符号は説明のための便宜的なものであり、複数巻コイルの制御の順序等が限定されるものではない。
【0033】
複数の磁性体40、図示例では、具体的には4つの磁性体40を組み合わせることで、放電管10を囲うように磁気回路が構成されている。より具体的には、磁性体40は、複数巻コイル21に挿入される突状部分と、放電管10の周囲を覆うように複数巻コイル21の外側に延在する磁路部分とから構成されている。磁路部分が4つ組み合わされることで、一連の磁気回路が放電管10の周囲に配置されるようになっている。なお、磁路部分については図示例のように端部が当接することで4角形状に連続的に接続されるように構成しても良いし、放電管と同軸の円形状の磁路を放電管の周りに形成するように、円の1/4の形状をそれぞれ構成する磁性体を4つ組み合わせた磁路部分としても良い。
【0034】
このような構成のアンテナ部20の複数巻コイル21の内、一対の複数巻コイル21a及び複数巻コイル21cに交流電流を印加することで、放電管10内では、例えば磁場は図中上側から下側へ通過し、磁性体40により形成される磁気回路では下側から上側へ向かう磁場が生成される(図示の破線矢印の状態)。交流電流が印加されるので、この状態から上下逆になる状態を順に繰り返すことになる。そして、一対の複数巻コイル21b及び複数巻コイル21dに、一対の複数巻コイル21a及び複数巻コイル21cに印加した電流と90度位相の異なる電流を印加することで、放電管10内に回転磁場が生成される。このように、本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置は、電流型インバータ回路30により、複数の複数巻コイル21に位相が互いに異なる電流を順に印加し、適宜制御することで、放電管10内に回転磁場が生成されると共に、放電管10の周囲に、複数巻コイル21に印加される電流に対応した磁場が、磁性体により形成される磁気回路に沿って発生する。本発明の第2実施例の定常プラズマ生成装置では、コイルに磁性体を挿入することで磁場強度を高めると共に、磁性体を連続的に接続することで形成される磁気回路により電源の効率を高め、回転磁場強度が向上し、高いプラズマ生成効率が実現可能である。なお、図示例では、複数の複数巻コイル21が4個配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されず、放電管10の周囲に磁性体による磁気回路が形成され、且つ、放電管10内に回転磁場が生成される配置及び個数であれば、複数巻コイル21は何個用いられても良い。
【0035】
次に、アンテナ部20を複数列で用いる例について説明する。図5は、本発明の第3実施例の定常プラズマ装置を説明するための概略断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。なお、電流型インバータ回路については図示を省略した。図示の通り、第3実施例では、アンテナ部20が、放電管10の軸方向に複数列に配置されている。放電管10の軸方向に複数列に配置される各アンテナ部20をそれぞれ制御することで、それぞれの配置位置において回転磁場を生成させることが可能である。このような構成とすることで、放電管10の軸方向で任意にプラズマを制御することが可能である。
【0036】
ここで、放電管10の軸方向に複数列に配置されるアンテナ部20は、各アンテナ部20により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるように制御されても良い。このような構成とすることで、例えば放電管10の軸方向にプラズマを加速する等の制御が容易に可能となる。
【0037】
次に、本発明の定常プラズマ生成装置の効果を確認するため、アンテナ部20により生成される磁場を比較する検証試験を行った。図6は、磁性体(フェライト)の有無によるプラズマ密度の比較結果を示す図である。まず、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成されるプラズマの密度と、比較例のプラズマの密度との比較を行った。ここで、比較例としては、アンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものを用いている。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて低消費電力でありながら、比較例と同等のプラズマ密度を有することが分かる。
【0038】
また、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成される回転磁場の径方向磁場と、比較例の回転磁場の径方向磁場との比較を行った。図7は、磁性体(フェライト)の有無による回転磁場の径方向磁場の比較結果を示す図である。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて約25%の消費電力でありながら、比較例と同等の回転磁場を生成できることが分かる。
【0039】
また、本発明の第1実施例の定常プラズマ生成装置により生成される回転磁場の生成効率と、比較例の回転磁場の生成効率との比較を行った。図8は、磁性体(フェライト)の有無による回転磁場生成効率の比較結果を示す図である。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。なお、回転磁場生成効率は、平均回転磁場強度を平均アンテナ電流で除した値である。図示の通り、第1実施例は比較例と比べて、約3倍の回転磁場生成効率があることが分かる。
【0040】
さらに、第1実施例、第2実施例及び比較例の定常プラズマ生成装置のアンテナ部20により生成される磁場を比較した検証試験の結果を以下の表1に示す。比較例は上述のものと同様でアンテナ部の複数巻コイルに磁性体が挿入されていないものである。表の通り、磁性体22が挿入された第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べてインダクタンスが明らかに増加していることが分かる。また、平均アンテナ電流は、第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べて少ない。さらに、第2実施例は、第1実施例と比較しても少ないことが分かる。これは、同じ大きさの電流をアンテナ部20に流した場合に得られる磁場強度が増加することを示している。さらに、第2実施例のように磁気回路が形成されることで、得られる磁場強度がさらに増加している。これは、回転磁場生成効率の値からも明らかである。したがって、第1実施例及び第2実施例は、比較例と比べてプラズマ生成効率が高く、さらに、第2実施例は、第1実施例と比べてもプラズマ生成効率が高いことを示している。即ち、同じ磁場強度であれば、より低い消費電力でプラズマを生成可能である。
【表1】
【0041】
上述のように、本発明の定常プラズマ生成装置は、低消費電力であり、プラズマ生成効率が高いことが確認された。
【0042】
なお、本発明の定常プラズマ生成装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 放電管
20 アンテナ部
21 複数巻コイル
22,40 磁性体
30 インバータ回路
30 電流型インバータ回路
31 充放電用コンデンサ
32 IGBT
33 スナバ回路
34 コンデンサ
35 抵抗
36 ダイオード
37 共振用コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状電流を有する定常プラズマ生成装置であって、該定常プラズマ生成装置は、
プラズマ生成ガスが提供される放電管と、
前記放電管の外部に設けられ、放電管の軸を回転軸とする回転磁場を放電管に与えるアンテナ部であって、それぞれ放電管の軸の垂直方向を軸とする複数の複数巻コイルと、各複数巻コイル内にそれぞれ挿入される複数の磁性体と、を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部を含む並列共振回路を駆動する電流型インバータ回路と、
を具備することを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定常プラズマ生成装置において、前記アンテナ部の複数の複数巻コイルは、複数組の一対の複数巻コイルであって、該一対の複数巻コイルは、それぞれの複数巻コイルの軸が前記放電管を挟んで同軸となるように配置されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の定常プラズマ生成装置において、前記アンテナ部の複数の磁性体は、連続的に接続され、放電管の周囲に磁気回路を形成することを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の定常プラズマ生成装置であって、さらに、前記アンテナ部は、放電管の軸方向に複数列に配置されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定常プラズマ生成装置において、放電管の軸方向に複数配置されるアンテナ部は、各アンテナ部により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるようにそれぞれ制御されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項1】
環状電流を有する定常プラズマ生成装置であって、該定常プラズマ生成装置は、
プラズマ生成ガスが提供される放電管と、
前記放電管の外部に設けられ、放電管の軸を回転軸とする回転磁場を放電管に与えるアンテナ部であって、それぞれ放電管の軸の垂直方向を軸とする複数の複数巻コイルと、各複数巻コイル内にそれぞれ挿入される複数の磁性体と、を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部を含む並列共振回路を駆動する電流型インバータ回路と、
を具備することを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定常プラズマ生成装置において、前記アンテナ部の複数の複数巻コイルは、複数組の一対の複数巻コイルであって、該一対の複数巻コイルは、それぞれの複数巻コイルの軸が前記放電管を挟んで同軸となるように配置されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の定常プラズマ生成装置において、前記アンテナ部の複数の磁性体は、連続的に接続され、放電管の周囲に磁気回路を形成することを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の定常プラズマ生成装置であって、さらに、前記アンテナ部は、放電管の軸方向に複数列に配置されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定常プラズマ生成装置において、放電管の軸方向に複数配置されるアンテナ部は、各アンテナ部により生成される各回転磁場が、それぞれ異なる大きさとなるようにそれぞれ制御されることを特徴とする定常プラズマ生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−204159(P2012−204159A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68129(P2011−68129)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
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