説明

定点観測装置、及び定点観測方法

【課題】天候や時間的制約の影響を受けずに、天体の動きを精度良く観測できる定点観測装置及び定点観測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】等立体角や座標系等の目盛11が付された透明半球1は、基盤6の平板61上に載置されている。基盤6は水準器4によって水平に設置されており、足部62によって所定の高さに支持されている。魚眼コンバータレンズ2を装着したカメラ3は、平板61の孔63越しに、レンズの光軸が透明半球1の天頂と中心を通過する直線Aと一致するように、足部62に支持部65を介して固定された保持部64に保持されている。カメラ3は、所定時間ごとに目盛11が付された透明半球1越しに天体を撮像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天体、例えば太陽の方位角・仰角の測定や、雲量測定などを、グローバルに簡易に行うための、定点観測装置及び定点観測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、理科教育で天体、たとえば太陽の動きを学習させる授業が行われる場合がある。この授業では、野外に設置した透明半球に太陽の位置を所定時間ごとに記録して、太陽の位置が変化していることを生徒に観察させる実験をすることがあった。
【0003】
上記の実験では天候や時間的制約から、日の出から日の入りの間における太陽の動きや、季節の違いによる太陽の動きの変化を観察することが難しく改善が望まれていた。
【0004】
一方、近年のネットワークの普及により、カメラで撮像された太陽の映像を、カメラに接続されたサーバーがネットワークを介してユーザ端末に配信する技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術によれば、ユーザは遠隔地点等の太陽の映像をリアルタイムに得られる。
【0005】
また、魚眼レンズを使用したカメラで撮像した風景の画像と、コンピュータで作成した網目パターンの画像とを合成して、空が写っている網目の日射条件等を測定する技術が知られている(特許文献2参照)。この技術では、画像を印刷した透明シートを重ね合わせ、重ね合わせた透明シートの中心を固定させたまま、透明シートを所定角度だけ回転させて各シートの方位を一致させた合成図を作成する。
【0006】
【特許文献1】特開平10-248061号公報
【特許文献2】特開平05-066153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1と2の技術を用いれば、カメラが撮像した太陽の画像にコンピュータで作成した網目パターンを合成して、教室等に設置したコンピュータにネットワークを介して配信できる。これにより、天候等を気にすることなく現在の太陽の位置等を観察できる。
【0008】
しかし、魚眼レンズのような広角レンズを用いた撮像では、レンズの光軸に対して大きい角度から光線が入射するため、撮像された画像に色にじみや周辺減光等を生じやすい。また、太陽のような極めて明るい光源を撮像する場合、輝度が高いためレンズ内で乱反射してゴーストやフレア等の迷光が生じやすい。夜間の撮像では、暗電流処理を行っても視野内の有効輝度値が電子ノイズに埋もれる可能性がある。そのため、魚眼レンズを用いて撮像された画像は、視野周辺が明瞭でないことが多い。
【0009】
このように広波長域の撮像では、波長によって焦点距離が異なるために、像の大きさと位置とに差が出る色収差が生じる。そのため、網目パターンをレンズの焦点距離や視野角などの光学性能から算出したとしても、撮像された画像の投影を正確に表せない。また、レンズの焦点距離の代わりに、撮像された画像の画像上の距離又は画素距離から網目パターンを算出しようとしても、視野周辺の境界が明瞭でないために正確さに欠ける。
【0010】
そこで、本発明の目的は、天候や時間的制約の影響を受けずに、天体の動きを精度良く観測できる定点観測装置及び定点観測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の定点観測装置は、目盛が付された透明半球を少なくとも有する撮像補助部と、前記透明半球の内部から前記透明半球越しに被写体を撮像可能な位置に配置された撮像手段と、を有する撮像部を備えることを特徴とする。
また、前記撮像手段に接続されたネットワークと、前記ネットワークに接続されたコンピュータとを有し、前記コンピュータは、前記ネットワークを介して、前記撮像手段が撮像した画像データを取得してもよい。
また、前記コンピュータは、前記画像データを蓄積する画像蓄積手段を有してもよい。
本発明の定点観測方法は、撮像手段が、目盛が付された透明半球の内部から前記透明半球越しに被写体を撮像する撮像ステップと前記撮像手段が、ネットワークを介してコンピュータに前記撮像ステップで撮像した画像データを配信する配信ステップとを有することを特徴とする。
また、前記コンピュータは、前記画像データを取得する画像取得ステップと、取得した前記画像データから検出する前記目盛に基づいて区画を決定する区画決定ステップと、
取得した前記画像データを色分割処理する色分割ステップと、色分割処理した前記画像データの輝度値を二値化処理する二値化ステップと、二値化処理した前記画像データにおける前記目盛の各区画内の画素の色に基づいて、前記各区画を晴又は曇のいずれかに決定する区画天気決定ステップと、すべての区画数における前記曇の区画数の比率を雲量として決定する雲量決定ステップと、を実行してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の定点観測装置を全世界の各地域に設置することにより、地球の緯度・経度の違いによる天体、例えば、太陽の天球上の位置とその天球上の軌跡の違いや、雲の動き、雲量の違いが一目でわかる。また、あらゆる地域・季節の太陽の方位角・仰角や、雲の動き、雲量が実際の映像として記録でき、サーバーを介しこれらの画像や映像をネットワークで公開することで太陽の日周運動や雲量などを短時間で観察・学習することが可能となる。また、目盛を具備した透明半球越しに天体を撮像することで、時間経過に伴う天体の移動量及び位置の変化を、撮像された目盛に基づいて簡易かつ一義的に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明の定点観測装置Xを全天観測に適用した場合の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図1は本実施形態の定点観測装置Xの全体構成を模式的に示した図である。図2は、本実施形態の定点観測装置Xの一部の側面を示した図である。
【0014】
図1又は2において、1は、少なくとも半球と中空部とを有する球面上に目盛11を設けた透明半球である。2は魚眼コンバータレンズであり、3はカメラ、4は水準器、5は方位磁石、6は基盤、7はネットワークインターフェイス、8はサーバー、9はネットワーク、10a、10bは、観察・表示用の複数のコンピュータ(以下、コンピュータ10等という)である。
【0015】
透明半球1は、光の吸収や散乱を生じにくくさせるために中空部を有し、アクリル樹脂や石英ガラス等の透明度の高い素材からなる。また、透明半球1は屋外に設置されるので、風雨に耐えうる硬化性を有していることが望ましい。なお、透明半球1は有色であってもよく、光吸収物質を含有する素材であったり、有色で塗布された球面を有したりすることにより、所定の波長のみ通過させるフィルター機能を備えていてもよい。例えば、透明半球1は、日中の撮像であれば、太陽の位置を確認可能な程度の透過性を持つ黒色であってもよい。
【0016】
透明半球1には、測定方法に応じて等立体角や座標系等の目盛11が付される。目盛11は、直線でもよいし、破線や、点線でもよく、目盛として認識できる大きさ及び形状であればよい。また、目盛11は、透明半球1の全体に付されていてもよいし、透明半球1の一部に付されていてもよい。本実施形態では、高度と方位角で天体の位置を表す地平座標を目盛11とする。
【0017】
目盛11は、赤外線から可視光程度までの広波長域の中で明瞭に撮像されるために、例えば、昼間の太陽の撮像であれば可視光を吸収する黒色等を用い、夜間であれば赤外線を輻射する熱線等を用いるとよい。また、硫化亜鉛系やアルミン酸系ストロンチウム系等の蓄光性を有する物質を目盛11に用いれば、目盛11が夜間に発光するので終日の撮像も可能である。また、黄道の道筋にあたる側の目盛11を太陽の白色の反対色である黒色とし、黄道の道筋にあたらない側の目盛11を空の青色の反対色である黄色とする等して、複数色を用いて目盛11を表してもよい。また、撮像波長範囲における目盛11の背景値を測定し、その値と相反する値を目盛11としてもよい。
【0018】
透明半球1は、孔63が中央に位置するように、天頂を上にして基盤6の平板61上に載置される。透明半球1は、天球を模した半球を少なくとも有していれば良く、平板61に接する開口部の形状を問わない。つまり、透明半球1は平板61に載置され易いように、透明半球1の開口部に平板61と水平な固定片、例えば透明半球1の切断面が略Ω状となるような円環を設けられてもよい。また、透明半球1の開口部に沿って筒状体や足部等を接合し、透明半球1の高さを調節可能としてもよい。
【0019】
基盤6は、平板61と足部62と保持部64とからなる。平板61は、中央部に孔63を有しており、足部62によって地面から所定の高さに支持されている。孔63は、カメラ3のレンズを挿入可能な大きさ以上であって、透明半球1の開口部の大きさより小さい。この平板61の上面には、水準器4と方位磁石5とが設置されている。目盛11が方位に関係する場合、目盛11の方位と地理上の方位とを方位磁石5に基づいて合わせることができる。また、基盤6は水準器4を基準として水平に設置される。そのため、足部62は各足ごとに高さ調節可能とするとよい。また、足部62には、孔63の中央に位置するよう保持部64が支持部65によって固定されている。そして、保持部64は、カメラ3を保持可能な箱状等の形状を有している。
【0020】
カメラ3には、カメラ3のレンズの光軸と光軸を揃えた魚眼コンバータレンズ2が装着されている。この魚眼コンバータレンズ2は、全天を撮像するために立体視野角2π(180度平面角)程度の撮像が可能であることが望ましい。なお、魚眼コンバータレンズ2と同等の撮像が可能な魚眼レンズを有するカメラ3であれば、魚眼コンバータレンズ2が不要であることは言うまでもない。以下、本実施形態では、カメラ3のレンズと魚眼コンバータレンズ2のレンズとを併せて、カメラ3のレンズという。なお、カメラ3は動画又は静止画の撮像が可能であり、連続又は断続して自動的に撮像するよう設定されているものとする。
【0021】
カメラ3は、全天観測を行うために、孔63越しに、透明半球1の天頂と中心とを貫く直線Aとカメラ3のレンズの光軸とが一致し、カメラ3のレンズの焦点位置を目盛11の高度0度の水平面上に合わせた状態で保持部64に保持されている。
【0022】
魚眼レンズの投影像は、視点(カメラの中心)を中心とした半径rの球面に視野全体を投影して、その投影した結果を平面に投影し直したものである。そのため、直線Aとカメラ3の光軸とを一致させることで、目盛11がカメラ3から等距離になるので、目盛11に基づきカメラ3の投影像を簡易に測定できる。なお、本実施形態では、基盤6が水平に設置されているので、基盤6上に載置される透明半球1も水平となるため、直線Aは鉛直線となり全天観測に好適である。
【0023】
また、カメラ3は、ネットワーク公開するためのウェブサーバ機能を備えており、ブロードバンドルータ等であるネットワークインターフェイス7を介してネットワークに接続されている。同様に、サーバー8及びコンピュータ10等も図示しないネットワークインターフェイスを介してネットワークに接続されている。
【0024】
また、無線LAN対応可能なカメラ3であれば、LANケーブルの位置を考慮する必要がなく、ネットワークインターフェイス7等の通信機器等を屋内で管理できて好適である。なお、カメラ3の代わりにネットワーク機能を有しない通常のカメラを用いる場合、カメラ画像をネットワーク公開可能な機能を備えるネットワークカメラサーバ等を追加して備えればよい。また、持ち運び可能とするために、カメラ3等の屋外に設置する機器の電源を電池等で賄ってもよい。
【0025】
カメラ3は、ネットワークを介して、撮像した画像や映像データをサーバー8に蓄積するとともに、所定のWebサイトに公開する。また、カメラ3は、ネットワークを介して、撮像した画像や映像データをコンピュータ10等に送信又は蓄積してもよい。
【0026】
コンピュータ10等は、ネットワークを介して、カメラ3の画像データ等を公開しているWebサイト、サーバー8又は直接カメラ3にアクセスして、画像データ等を取得してディスプレイに表示する。なお、カメラ3の制御は、サーバー8又はコンピュータ10等からネットワークを介して行われるとよい。
【0027】
このように、撮像された画像データ等はサーバー8に蓄積されるので、例えば蓄積された画像データを蓄積された順に連続して再生することで、授業時間中に太陽の日周運動の軌跡をコンピュータ10等に表示させて確認できる。また、蓄積された各画像データを目盛11に沿って又は各画像データの中心を合わせて重ね合わせることで一枚の画像データを合成し、合成した画像から太陽の位置の変化を確認してもよい。
【0028】
また、撮像された画像データを蓄積することで、太陽の軌道を季節ごとに比較する学習も可能である。図3は四季の太陽の位置変化を表した図である。図3に示すように、例えば、蓄積された画像データを基に、ある観察地点の四季の映像から、一定時間ごとの方位角・仰角の測定結果を、横軸に方位角、縦軸に仰角(高度)としてプロットすることで、季節ごとの軌道の違いを確認できる。また、定点観測装置Xを世界各地に設置することで、緯度や経度の違いによる太陽等の動きの違いを比較できる。
【0029】
なお、目盛11も被写体と同様の色収差の影響を受けることになる。しかし、撮像時点における収差量は目盛11と被写体とで同等であるため、目盛11に基づいて太陽の位置変化を相対的に確認できる。これにより、どのような投影方法のレンズであっても、また、レンズの詳細な光学性能が不明であっても、さらにどの種類のカメラであっても、撮像された画像データに目盛11が入るので、被写体の位置変化を簡易に正確に表せる。また、目盛11に基づいて色収差や他の収差の補正を行うことで、画像データ全体の収差を簡易に補正できる。
【0030】
本実施形態では、基盤6を用いて透明半球1とカメラ3とを設置したが、目盛11が撮像範囲に入るように被写体を撮像できるのであれば基盤6は必ずしも必要でない。例えば、地面に置かれたカメラ3に透明半球1を被せてもよい。また、直線Aは、透明半球1のいずれか1点を通過していればよく、必ずしも透明半球1の天頂と中心とを通過しなくてもよい。
【0031】
なお、本実施形態では太陽の日周運動を例示したが、高感度のカメラを用いることで、夜間の月や星をリアルタイムで観察したり、運動の様子を表示したりすることもできる他、例えば月の満ち欠けのような数日に亘る変化や、季節の変化に伴う星座などの位置変化を表示することもできる。また、カメラ3が透明半球1の目盛11越しに海岸線を撮像すれば、目盛11に基づいて波の高さを測定することもできる。また、ネットワーク9を介した画像データの蓄積に限らず、カメラ3のメモリ又はフィルム等に画像データを蓄積してもよいことは言うまでもない。
【0032】
また、本実施形態では、全周撮像可能なカメラ3を用いた全天観測について説明したが、全周を撮像範囲に収めることが不要である場合、カメラ3のレンズの種類は魚眼レンズに限らず何であってもよい。この場合、カメラ3は透明半球1の目盛11越しに被写体を撮像できればよいので、透明半球1の設置向きやカメラ3の撮像方向は限定されない。例えば、天頂を上に向けて設置され高度と方位を表す目盛11が付された透明半球1の内部に、撮像方向を北に向けて設置され、魚眼レンズより視野角の狭い広角レンズを装着したカメラ3が、夜間に透明半球1の目盛11越しに撮像すれば、撮像された目盛11によって北方向の星座の動きを確認できる。
【0033】
<実施形態2>
図2に示した定点観測装置Xは、雲量の測定に適用できる。図4は本実施形態に係るサーバー80(実施形態1のサーバー8に対応する)の機能ブロック図である。図4で実線の矢印はデータの流れを表し、点線は制御信号の流れを表す。実施形態1と同様の構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0034】
サーバー80は、画像取得部82と画像処理部83と雲量決定部84とを制御する雲量測定制御部86と、画像蓄積部81と、表示部85とを有する。画像蓄積部81は、HDD(Hard Disk Drive)等よりなり、カメラ3が撮像した画像データを蓄積している。表示部85は、ディスプレイ等よりなり、雲量を表示する。雲量測定制御部86は、CPU(Central Processing Unit)等よりなり、図示せぬ記憶部に格納されたプログラムを実行することで本実施形態の処理を行う。
【0035】
次に、図5を参照して、画像取得部82と画像処理部83と雲量決定部84との処理を中心に説明する。図5は、雲量測定のフローチャートである。図6は、等立体角(2π/15ステラジアン)の目盛11が付された透明半球1を、カメラ3が撮像した画像である。画像蓄積部81には、カメラ3が撮像した図6に示すような画像データが予め蓄積されているものとする。本実施形態の目盛11は、後述する区画の境界を表す。
【0036】
まず、画像取得部82は、画像データを画像蓄積部81から取得し、画像処理部83に渡す(ステップa1)。
【0037】
次に、画像処理部83は、画像データをRGBに色分割する(ステップa2)。画像処理部83は、画像データから目盛11を読み取り、区画の境界(目盛11)を検出する。画像処理部83は、検出した区画の境界(目盛11)に基づいて区画の境界内の連続した画素領域を1つの区画として、各区画を決定する区画決定処理を行う(ステップa3)。画像処理部83は、例えば目盛11が黒の場合、R+G+B<=閾値(加色法)となる画素を目盛11として読み取ればよい。以降の処理は、検出された各区画に対して行う。
【0038】
画像処理部83は、RGBに色分割した画像データを(a×Blue−Red)で演算する(ステップa4)。なお、a、nとは撮像光学系に依存する定数である。Redでは、雲のある箇所が雲のない箇所より高輝度で出力される。Blueでは、Redほど雲のある箇所と雲のない箇所との間で差が出ない。RGBのすべてが高輝度の場合、白くなるので雲のある箇所とし、Blueのみ高輝度でRedが低輝度であれば雲のない箇所、すなわち晴となる。この差を出すために、Blueにaを乗じて、Redとの差を付ける。カメラ3によって光学系の波長依存があるが、aは基本的に1で処理できる。なお、aは0も可能な場合がある。また、nは(a×Blue−Red)から導かれる輝度値や、閾値として定める(a×Blue−Red)を整数化したり演算された値を強調したりするために用いる。nもaと同様に1で処理して問題ない場合が多い。ただし、画像データに雲や空以外の建物等の物体が写っている場合等のaの値を固定する必要があるときに、nの値を大きくすることで、建物等の物体と測定対象となる雲や空との区別を付けやすくできる。
【0039】
画像処理部83は、二値化処理として、演算した画像データの輝度値を所定の閾値と比較し(ステップa5)、閾値より大きい輝度値の画素の色を白とし(ステップa6)、閾値以下の輝度値の画素の色を黒とする(ステップa7)。なお、所定の閾値とは撮像光学系に依存する値である。そして、画像処理部83は、すべての輝度値の二値化処理を終了したか判断する(ステップa8)。画像処理部83は、二値化処理を終了したと判断したとき(ステップa8でYes)は、雲量決定部84に二値化処理を終えた画像データを渡し、区画ごとの天気を決定する処理に進む(ステップa9)。画像処理部83は、二値化処理を終了していないと判断したとき(ステップa8でNo)は、ステップa5〜ステップa8の処理を繰り返す。図7は二値化処理を終えた画像データのイメージ図である。
【0040】
次に、雲量決定部84は、画像処理部83によって検出された各区画内における白と黒の画素数を比較し、各区画の天気を晴又は曇に決定する(ステップa9)。具体的には、白の画素数が黒の画素数より多い場合の天気を晴とし、その他の場合の天気を曇とする。
【0041】
雲量決定部84は、全区画の天気を決定し終えると、全区画数における曇の区画数の比率を例えば10段階で表した雲量を表示部85に出力する(ステップa10)。
【0042】
以上の処理により、撮像された画像データの目盛11に基づいて雲量を測定できる。また、視野境界が明確な画像データに基づいて雲量測定を行えるので、精度良く測定できる。なお、目盛11の区画数を増加させることで雲量測定の精度を向上させられる。また、上記ステップa10では、雲量決定部84が雲量を表示部85に出力したが、紙に印刷したり、音声で読み上げたりしてもよく、雲量決定部84の出力形態を問わない。
【0043】
また、雲量の測定を一定時間毎に行い、横軸を測定時間として測定結果をプロットすることにより、雲量の変化を視覚的に理解することが容易なグラフを得ることができる。図8は、日中の雲量の変化をプロットしたグラフの一例である。図8では、朝6時から夕方6時までの雲量の変化を示している。
【0044】
なお、上記処理では二値化処理をRGBに色分割した画像データに対して行ったが、CMYKに色分割した画像データに対して行っても良い。図9はCMYKに色分割して雲量測定を行うフローチャートである。図5と同様の処理には同一の符号を付して説明を省略する。以下、図5の処理と異なるステップa20〜ステップa80について説明する。
【0045】
画像処理部83は、画像データをCMYKに色分割する(ステップa20)。画像処理部83は、画像データから目盛11を読み取り、区画の境界(目盛11)を検出する。画像処理部83は、検出した区画の境界(目盛11)に基づいて区画の境界内の連続した画素領域を1つの区画として、各区画を決定する区画決定処理を行う(ステップa30)。画像処理部83は、例えば目盛11が黒の場合、K>=閾値(減色法)となる画素を目盛11として読み取ればよい。以降の処理は、検出された各区画に対して行う。
【0046】
次に、画像処理部83は、CMYKに色分割した画像データを(Cyan/a×blacK)で演算する(ステップa40)。Cyanでは雲のある箇所、雲のない箇所がともに高輝度で出力される。blacKでは雲のある箇所のみ低輝度で出力される。
【0047】
画像処理部83は、二値化処理として、演算した画像データの輝度値を所定の閾値と比較する(ステップa50)。ここで、画像処理部83は、ステップa5とは反対に、閾値より小さい輝度値の画素の色を白とし(ステップa60)、閾値以上の輝度値の画素の色を黒とする(ステップa70)。これは、CyanをblacKで除算しているので、RGB分割した場合と比べて、雲のある箇所と雲のない箇所との数値の大小関係が逆になっているためである。そして、画像処理部83は、すべての輝度値の二値化処理を終了したか判断する(ステップa80)。画像処理部83は、二値化処理を終了したと判断したとき(ステップa80でYes)は、雲量決定部84に二値化処理を終えた画像データを渡し、区画ごとの天気を決定する処理に進む(ステップa9)。画像処理部83は、二値化処理を終了していないと判断したとき(ステップa80でNo)は、ステップa50〜ステップa80の処理を繰り返す。
【0048】
上記処理により、CMYKで色分割処理した画像データの二値化処理を終え、RGBで色分割処理した図5と同様に、ステップa9〜ステップa10の処理を行うことで雲量を出力できる。
【0049】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。即ち、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正は本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
定点観測を行う監視カメラや天体観測装置としての利用ができる。天体観測装置として用いる場合、学校教育における理科教材としての利用が可能である。さらには画像・映像コンテンツとしての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態1に係る定点観測装置を模式的に表した図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る定点観測装置の撮像部の側面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る定点観測装置を用いて四季の太陽の位置変化を表した図である。
【図4】本発明の実施形態2に係るサーバーの機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る雲量測定においてRGBで色分割処理する場合のフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2に係る等立体角の目盛が付された透明半球が撮像された画像のイメージ図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る二値化処理を終えた画像のイメージ図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る雲量測定において雲量の時間変化を表した図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る雲量測定においてCMYKで色分割処理する場合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1・・・透明半球
10a、10b・・・観察・表示用コンピュータ
11・・目盛
2・・・魚眼コンバータレンズ
3・・・カメラ(撮像手段)
4・・・水準器
5・・・方位磁石
6・・・基盤
61・・平板
62・・足部
63・・孔
64・・保持部
65・・支持部
7・・・ネットワークインターフェイス
8、80・・・サーバー
81・・画像蓄積部
82・・画像取得部
83・・画像処理部
84・・雲量決定部
85・・表示部
86・・雲量測定制御部
9・・・ネットワーク
X・・・定点観測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛が付された透明半球を少なくとも有する撮像補助部と、前記透明半球の内部から前記透明半球越しに被写体を撮像可能な位置に配置された撮像手段と、を有する撮像部を備えることを特徴とする定点観測装置。
【請求項2】
前記撮像手段に接続されたネットワークと、
前記ネットワークに接続されたコンピュータとを有し、
前記コンピュータは、前記ネットワークを介して、前記撮像手段が撮像した画像データを取得することを特徴とする請求項1に記載の定点観測装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記画像データを蓄積する画像蓄積手段を有することを特徴とする請求項2に記載の定点観測装置。
【請求項4】
撮像手段が、目盛が付された透明半球の内部から前記透明半球越しに被写体を撮像する撮像ステップと
前記撮像手段が、ネットワークを介してコンピュータに前記撮像ステップで撮像した画像データを配信する配信ステップと
を有することを特徴とする定点観測方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記画像データを取得する画像取得ステップと、
取得した前記画像データから検出する前記目盛に基づいて区画を決定する区画決定ステップと、
取得した前記画像データを色分割処理する色分割ステップと、
色分割処理した前記画像データの輝度値を二値化処理する二値化ステップと、
二値化処理した前記画像データにおける各区画内の画素の色に基づいて、前記各区画を晴又は曇のいずれかに決定する区画天気決定ステップと、
すべての区画数における前記曇の区画数の比率を雲量として決定する雲量決定ステップと、
を実行することを特徴とする請求項4に記載の定点観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−282406(P2009−282406A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135856(P2008−135856)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(305013068)国立大学法人宮城教育大学 (1)
【Fターム(参考)】