説明

定着ヒータ、定着装置、画像形成装置

【課題】電力が給電される電極部の削れや剥れによる給電用コネクタとの不良を防止する。
【解決手段】耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の絶縁基板11の長手方向に発熱抵抗体121,122、それに発熱抵抗体121,122、に電力を供給するための電極部14,15を形成し、発熱抵抗体121,122上にオーバーコート層18が施される。電極部14,15は、2種類以上のAg粉体、例えば平均粒径が1μm以下のものと2〜3μm程度のものといった異なった粒度分布のAg粉を混合したAg導体ペーストを用いて印刷し、850℃の温度で10分間で焼成して形成された導体である。これにより、電極部が形成される時に導電粒子が適度に粒成長するとともに空孔が少ないことからユニットに組み込み導通させるための図示しない給電用コネクタに電極部を装着した時もしくは通電時に、給電用コネクタ摺動による電極部の剥離や発熱抵抗体との接点部の抵抗が上昇してしまう等の接点不良を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報機器、家電製品や製造設備等に用いられる薄型の定着ヒータ、この定着ヒータが実装されるプリンタ、複写機、ファクシミリ、リライタブルペーパ等の加熱装置、この加熱装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定着ヒータの導体は、給電用コネクタが接触する電極部、発熱抵抗体とのコンタクト部、電極部とコンタクト部を繋ぐ引き回し部から構成される。電極部の昇温対策と接点硬度の向上とを両立させるために、銀(Ag)導体で発熱抵抗体にコンタクトさせ、Ag/パラジウム(Pd)導体で電極部が形成される。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2004−47247公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、電極部の空孔率が高い多孔性膜のAg/Pdで形成されたものであるにもかかわらず、硬度が高い銀パラジウムでは、電極部と発熱抵抗体とのコンタクト部で発泡が起こりにくいうえに、給電用コネクタによる削れや剥れも起こりにくいが、導体抵抗が高いために電極部の温度が高くなってしまう。この対策として導体の膜厚を厚くし導体抵抗を低くすることが考えられるが、Pdは高価であるためにコストが高くなってしまう。導体抵抗の低い銀導体で導体を形成することで電極部の発熱を抑えることができるが、硬度が低い銀だけで構成される導体は給電用コネクタによる電極部の削れや剥れによる接点不具合を起こす恐れがある。
【0004】
この発明の目的は、電力が給電される電極部の削れや剥れによる給電用コネクタとの不良を防止した定着ヒータ、これを用いた定着装置、この定着装置を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の定着ヒータは、耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極部を形成し、少なくとも前記発熱抵抗体上にオーバーコート層を施し、前記発熱抵抗体が形成された反対側の前記基板に温度制御用のサーミスタを実装した定着ヒータにおいて、前記電極部は、Ag粉体もしくは粉体からなるAg系の導体粒子が含有された導体ペーストを用いて焼成して形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、電力が給電される電極部の削れや剥れによる給電用コネクタとの不良を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明の定着ヒータの第1の実施形態の構成について説明するための表面図、図2は図1の背面図、図3は図2のx−x’断面図である。
【0008】
図1において、11は、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)等の耐熱、絶縁基板で、121,122は絶縁基板11上に、導電性成分がAg/Pdなどで構成されている抵抗体ペーストを用いて厚膜印刷により形成した発熱抵抗体である。13は発熱抵抗体121,122それぞれ一端の一部を重層した銀系の導体ペーストを焼成して形成した接続導体である。
【0009】
14は発熱抵抗体121の他端を重層形成したAg、Ag/Pt、Ag/Pd等で構成される導体ペーストを用いて厚膜印刷により形成され、電力が供給される電極部である。15は発熱抵抗体122の他端を重層形成したAg、Ag/Pt、Ag/Pd等で構成される導体ペーストを用いて厚膜印刷により形成され、電力が供給される電極部である。
【0010】
16,17は、電極部14,15と発熱抵抗体121,122をそれぞれ接続し、接続導体13と同材料で同様に焼成して一体形成された接続導体である。18は電極部14,15を少なくとも残した発熱抵抗体121,122および接続導体13,16,17上に形成されたガラス等、電気的、機械的、化学的な保護を行うオーバーコート層である。
【0011】
次に、図1の裏面を示した図2を用いて絶縁基板11の裏面側について説明する。図2において、19,20は端子部であり、電極部14,15と同じ方法で同時に形成される。端子部19,20にはそれぞれAg・Pd等を主体とする材料からなる一対の配線導体21,22の一端が結合される。配線導体21の他端は絶縁基板11に固着されたサーミスタ23の一方の電極に、配線導体22の他端はサーミスタ23の他方の電極にそれぞれ接続される。
【0012】
ところで、電極部14,15は、2種類以上のAg粉体、例えば平均粒径が1μm以下のものと2〜3μm程度のものといった異なった粒度分布のAg粉を混合したAg導体ペーストを用いて印刷し、850℃の温度で時間10分間焼成して形成された導体である。
【0013】
このように形成された電極部14,15は、Agの粒成長が適度に進み焼成後の導電粒子が5〜10μmの大きさとなり、表面の粒子間の空孔率が5%以下と小さくなる。
【0014】
この実施形態の第1の変形例について説明する。この変形例の電極部14,15は、2種類以上のAg粉体、例えば球状のものと非球状のものといった異なった形状のAg粉を混合したAg導体ペーストを用いて印刷し、850℃の温度で時間10分間焼成し形成された導体である。
【0015】
次に、この実施形態の第2の変形例の電極部14,15は、2種類以上のAg粉とAg以外の導電粒子、例えば異なる粒度分布をもつAg粉体2種類と微量のPd粉やPt粉を混合した導電粒子を使用したAg系ぺーストを用いて印刷し、850℃の温度で10分間焼成して形成された導体である。
【0016】
さらに、この実施形態の第3の変形例の電極部14,15は、導電粒子、結着用ガラス以外に無機酸化物である例えばガラス等をフィラーとして0.1〜10%添加したAg系導体ペーストを用いて印刷し、ピーク温度が850℃、時間が10分ピークの条件で焼成して形成された導体である。
【0017】
上記した第1〜第3の変形例による形成された電極部14,15においても、Agの粒成長が適度に進み焼成後の導電粒子が5〜10μmの大きさとなり、表面の粒子間の空孔率が5%以下と小さくなる。導電粒子の焼結を抑制しすぎず粒成長が適度に進んでいるため、導体抵抗が3μΩ/□/10μm以下の電極部となる。また、絶縁基板と電極部が発熱抵抗体と重なるコンタクト部での発泡や剥離のない電極部の形成が実現できる。
【0018】
この実施形態によれば、電極部が形成される時に導電粒子が適度に粒成長するとともに空孔が少ないことからユニットに組み込み導通させるための図示しない給電用コネクタに電極部を装着した時もしくは通電時に、給電用コネクタ摺動による電極部の剥離や発熱抵抗体との接点部の抵抗が上昇してしまう等の接点不良を防止できる。これにより、長期にわたり信頼性のある電極部を実現することができる。
【0019】
次に、図4、図5を参照し、この発明の定着ヒータの第2の実施形態について説明する。図4は、要部を拡大して示した表面図、図5は図4のZ−Z’断面図であり、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0020】
この実施形態は、Ag/Pd導体のような空孔率の高い多孔性の導体で電極部14,15、接続導体16,17および発熱抵抗体121,122とのコンタクト部41,42を形成し、コンタクト部41,42を除いた電極部14,15および接続導体16,17上には、電極部14,15や接続導体16,17より空孔率の低い例えばAgによる導体43,44を形成したものである。
【0021】
この実施形態の場合、空孔率の高い導体上に低抵抗率の空孔率の低い導体を重ね合せたことで、発熱抵抗体と電極部が重なったコンタクト部や電極部での発泡を抑え、電極部での発熱を抑えることが可能となる。
【0022】
この発明の定着ヒータの第3の実施形態について説明する。この実施形態は、図1の発熱抵抗体121の他端を重層形成したAg、Ag/Pt、Ag/Pd等で構成される導体ペーストを用いて厚膜印刷により形成され、電力が供給される電極部14,15に銅(Cu)の化合物を添加させたものである。
【0023】
この実施形態では、電極部14,15がAg等の導電ペーストにCuの化合物を添加させたことで、導電ペーストの導電粒子の焼結が促進され緻密な膜による電極部14,15の形成が可能となる。これにより電極部は、コネクタ摺動に伴う電極部の剥れを起こしにくく、導体に添加するガラスおよび無機酸化物の添加量を少なくすることができる。反応しやすいガラスの添加量が減ることでガスの発生量が少なくなり、コンタクト部の発泡およびクラックが発生しにくくなる。
【0024】
また、ガラスおよび無機酸化物の添加量が少ないことから低い抵抗値となり、電極部の発熱による温度上昇も防ぐことができる。電極部に接触されるコネクタにAgメッキが施されたる場合でも、Cuの化合物が電極部の表面に分布しているため、融着による剥れも起こしにくくなる。
【0025】
この実施形態の効果について図6を参照して説明する。図6(a)は電極部にCu化合物0.2%添加された場合のこの発明の電極部表面の、図6(b)は、電極部にCu化合物0.5%添加された場合のこの発明の電極部表面の、図6(c)は、電極部にCu化合物1.0%添加された場合のこの発明の電極部表面の、図6(d)は無機酸化物1.0%添加の従来の電極部表面のそれぞれ顕微鏡写真である。
【0026】
図6(a)〜(c)の顕微鏡写真でわかるように、Cu化合物が1.0%以下添加された場合は、無機酸化物が1.0%添加された場合に比べで導電粒子の焼結が促進されることから、いずれの場合も空孔率が小さく緻密な電極部表面を形成することができる。また、Cu化合物の添加量としては、図6(c)のCu化合物1.0%添付された場合が図6(a)のCu化合物0.2%添加よりも緻密な表面であることがわかる。
【0027】
図6(a)〜(d)のそれぞれの空孔率を測定した結果、(a)では8.3%、(b)では5.7%、(c)では4.3%、(d)では19%であった。このように、Cu化合物の添加量が多いほど空孔率が低下することがわかり、無機酸化物添加の場合、同じ添加量のCu化合物1.0%に比して15%程度の差が生じる結果となった。
【0028】
ただし、Cu化合物の添加量を増加していくと比抵抗が上昇し、結果として発熱を促進してしまうことから、添加量には限度がある。
【0029】
このように、Cuの化合物が所要量添加された緻密な電極部は、コネクタ摺動による電極の剥れを起こしにくく、導体に添加するガラスおよび無機酸化物の添加量を少なくすることができる。反応しやすいガラスの添加量が減ることでガスの発生量が少なくなり、コンタクト部の発泡やクラックが発生しにくくなる。また、ガラスおよび無機酸化物の添加量が少ないため低い抵抗値となり、導体部の発熱による電極部の温度上昇も防ぐことができる。コネクタにAgメッキが施されている場合でも、Cuが電極表面に分布しているため、融着による剥れも起こしにくくなる。
【0030】
上記した構成の定着ヒータ100は、定着装置に組み込まれ、例えば図7に示す回路構成により通電され発熱温度が調整される。すなわち、商用電源91を温度制御回路92の制御端子に接続されたソリッドステートリレー93を介して定着ヒータ100の電極部14,15に通電されると、直列接続された抵抗発熱体121,122に電流が流れて発熱する。抵抗発熱体121,122の発熱により基板11も温度上昇する。この熱は、基板11の裏面側に取着されたサーミスタ23の感温部に伝わり、感温部の抵抗値を変化させる。サーミスタ23の抵抗値の変化を、Pd1の基板11の裏面側に形成された配線導体を介して出力させ、これを温度制御回路92に入力して設定温度にあるか否かを判定する。温度が設定温度より低い場合はソリッドステートリレー93にオン信号を出力し、設定温度より高い場合はソリッドステートリレー93にオフ信号を出力する。
【0031】
このように、抵抗発熱体121,122に加える電力を制御することによって、抵抗発熱体121,122を温度調整する。なお、温度制御回路92はソリッドステートリレー93のオン・オフ制御について述べたが、他にパルス幅変調制御方式等による温度調整でも構わない。
【0032】
そして、定着ヒータ100は電極部14,15に電力が供給されると、抵抗発熱体121,122にそれぞれ電流が流れ、抵抗発熱体121,122は長手方向にほぼ均一の発熱温度分布を呈することになる。この実施形態では、例えば抵抗発熱体121,122の抵抗値を25Ωとし、100Vの電圧を印加することにより4Aの電流が流れ、400Wの発熱量を得ることが可能となる。
【0033】
通常は、上述したように基板11の裏面側に設けたサーミスタ23が定着ヒータ100の温度を検出して温度制御回路92を通じてソリッドステートリレー93をオン・オフ制御し所定の温度に制御している。
【0034】
次に、図8を参照し、上記した定着ヒータの実施形態を定着装置200に実装した場合の、この発明の定着装置の一実施形態について説明する。図中定着ヒータ100については、図1、図2と同じであり、同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0035】
図8において、201は回転軸202で回転自在に回転される加圧ローラで、その表面に耐熱性弾性材料たとえばシリコーンゴム層203が嵌合してある。加圧ローラ201の回転軸202と対向して定着ヒータ100が並置して図示しない基台内に取り付けられている。
【0036】
定着ヒータ100の周囲にはポリイミド樹脂等の耐熱性のシートからなるエンドレスのロール状の定着フィルム204が循環自在に巻装されており、抵抗発熱体121,122を介した基板11真上のオーバーコート層18の表面は、この定着フィルム204を介して加圧ローラ201のシリコーンゴム層203と弾接している。
【0037】
定着装置200において定着ヒータ100は電極部14,15に接触したりん青銅板等に銀メッキを施した弾性が付与された図示しないコネクタを通じて通電され、発熱した抵抗発熱体121,122のオーバーコート層18上に設けられた定着フィルム204面とシリコーンゴム層203との間で、トナー像T1がまず定着フィルム204を介して定着ヒータ100により加熱溶融され、少なくともその表面部は融点を大きく上回り完全に軟化溶融する。この後、加圧ローラ201の用紙排出側では複写用紙Pが定着ヒータ100から離れ、トナー像T2は自然放熱して再び冷却固化し、定着フィルム204も複写用紙Pから離反される。
【0038】
このように、トナー像T1は一旦完全に軟化溶融された後、加圧ローラ201の用紙排出側で再び冷却されることから、トナー像T2の凝縮力は非常に大きくなものとなっている。
【0039】
この実施形態では、高い耐電圧特性から得られる熱効率のよい定着ヒータによる定着装置を実現できる。
【0040】
次に、図9を参照して、この発明に係る定着ヒータ、この定着ヒータを用いた定着装置を搭載した複写機を例とした、この発明の画像形成装置について説明する。図中、定着装置200の部分は、上記した説明と同じであり、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
図9において、301は複写機300の筐体、302は筐体301の表面に設けられたガラス等の透明部材からなる原稿載置台で、矢印Y方向に往復動作させて原稿P1を走査する。
【0042】
筐体301内の上方向には光照射用のランプと反射鏡とからなる照明装置302が設けられており、この照明装置302により照射された原稿P1からの反射光源が短焦点小径結像素子アレイ303によって感光ドラム304上スリット露光される。なお、この感光ドラム304は矢印方向に回転する。
【0043】
また、305は帯電器で、例えば酸化亜鉛感光層あるいは有機半導体感光層が被覆された感光ドラム304上に一様に帯電を行う。この帯電器305により帯電された感光ドラム304には、結像素子アレイ303によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器306による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化される。
【0044】
カセット307内に収納されている複写用紙Pは、給送ローラ308と感光ドラム304上の画像と同期するタイミングをとって上下方向で圧接して回転される対の搬送ローラ309によって、感光ドラム304上に送り込まれる。そして、転写放電器310によって感光ドラム304上に形成されているトナー像は複写用紙P上に転写される。
【0045】
この後、感光ドラム304上から離れた用紙Pは、搬送ガイド311によって定着装置200に導かれて加熱定着処理された後に、トレイ312内に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム304上の残留トナーはクリーナ313を用いて除去される。
【0046】
定着装置200は複写用紙Pの移動方向と直交する方向に、この複写機300が複写できる最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)より長い抵抗発熱体121,122を延在させて定着ヒータ100の加圧ローラ201が設けられている。
【0047】
そして、定着ヒータ100と加圧ローラ201との間を送られる用紙P上の未定着トナー像T1は、抵抗発熱体121,122の熱を受け溶融して複写用紙P面上に文字、英数字、記号、図面等の複写像を現出させる。
【0048】
この実施形態では、高い耐電圧特性から得られる熱効率のよい定着ヒータよる定着装置200を用いた複写機300を実現できる。
【0049】
なお、この発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、オーバーコート層材は相対する定着フィルムの材質やその他条件によって変える必要があるため特定はできないが、定着フィルムが樹脂の場合、オーバーコート層はガラスや定着フィルムが金属の場合、オーバーコート層は樹脂を組み合わせるのが望ましい。この樹脂としては一般的に摺動性に優れるとされる材料である、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリフェニレンサルファイド、エラストマー系、ポリオレフィン系、フッ素等が考えられる。基本的にはどれを使用しても良いが、耐熱性から弾性に富むPI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)等のイミド系が好ましいが、硬度が低すぎると樹脂被膜の方が削れてしまうため、例えば3H以上の硬度は必要である。
【0050】
また、定着ヒータの用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用可能である。
【0051】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、上記した実施形態によって把握される技術思想をその効果とともに以下に説明する。
【0052】
(1)耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極部を形成し、少なくとも前記発熱抵抗体上にオーバーコート層を施し、前記発熱抵抗体が形成された反対側の前記基板に温度制御用のサーミスタを実装した定着ヒータにおいて、前記電極部は、前記発熱抵抗体の位置まで空孔率の高い導体上に空孔率の低い導体を重ね合せて形成したことを特徴とする定着ヒータ。
この技術思想によれば、空孔率の高い導体上に低抵抗率の空孔率の低い導体を重ね合せたことで、発熱抵抗体と電極部が重なったコンタクト部や電極部での発泡を抑え、電極部での発熱を抑えることが可能となる。
【0053】
(2)前記電極部は、粒径の異なるAg粉体からなるAg導体ペーストを印刷焼成し形成したことを特徴とする技術思想(1)記載の定着ヒータ。
この技術思想(2)では、焼成により粒径の異なるAg粉末が焼成により粒成長することから、粒子間の穴孔率を適度に小さくでき電極部の抵抗値を抑え、コンタクト部や電極部での発熱を抑えることができる。
【0054】
(3)前記電極部は、粒径の異なるAg粉体とAg以外の導電粉体からなるAg系導体ペーストを印刷焼成し形成したことを特徴とする技術思想(1)記載の定着ヒータ。
この技術思想(3)によれば、AgとAg以外の導電粉末が合金化して融点が変わり焼結の止まりを遅くできる。
【0055】
(4)前記電極部は、無機酸化物をフィラーとして0.1〜10%添加したAg系導体ペーストを印刷焼成し形成したことを特徴とする技術思想(1)記載の定着ヒータ。
この技術思想では、フィラーでAgの焼結を止めて発泡を抑えつつ、無機酸化物が電極部の絶縁基板との接着を強固なものとすることができ、剥がれ防止に繋がる。
【0056】
(5)前記電極部は、Cu化合物を添加したAg系導体で形成したことを特徴とする技術思想(1)記載の定着ヒータ。
この技術思想の場合、電極部と発熱抵抗体とのコンタクト部が発泡やクラックの発生しにくいものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の定着ヒータに関する第1の実施形態の構成について説明するための表面図。
【図2】図1の背面図。
【図3】図1のx−x’断面図。
【図4】この発明の定着ヒータの第2の実施形態について説明するための拡大表面図。
【図5】図4のy−y’断面図。
【図6】この発明の定着ヒータに関する第2の実施形態の効果について説明する従来と比較した顕微鏡写真。
【図7】図1に用いる温度調整について説明するための回路構成図。
【図8】この発明の定着装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【図9】この発明の画像形成装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0058】
11 絶縁基板
121,122 発熱抵抗体
13 接続導体
14,15 電極部
16,17 接続導体
18 オーバーコート層
19,20 端子部
21,22 配線導体
23 サーミスタ
41,42 コンタクト部
43,44 導体
100 定着ヒータ
200 定着装置
300 複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に、発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極部を形成し、少なくとも前記発熱抵抗体上にオーバーコート層を施し、前記発熱抵抗体が形成された反対側の前記基板に温度制御用のサーミスタを実装した定着ヒータにおいて、
前記電極部は、表面の空孔率が10%以下であることを特徴とする定着ヒータ。
【請求項2】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに対向配置された抵抗発熱体が圧接された請求項1記載の定着ヒータと、
前記定着ヒータと前記加熱ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
媒体に形成された静電潜像にトナーを付着させ、該トナーを用紙に転写して所定の画像を形成する形成手段と、
画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記定着ヒータに圧接しながら通過させることによって、トナーを定着するようにした請求項2記載の定着装置とを具備したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−34032(P2007−34032A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219001(P2005−219001)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】