説明

定着器用ローラ

【課題】この発明は、下地のゴム弾性体との接着性の問題の発生がなく、しかも定着ローラとしての耐スリップ性にも優れ、さらに硬度変化や外形変化も少なく、しかも短い工程で製作することができるような高耐久性の定着器用ローラを得ようとするものである。
【課題手段】芯金10外周面に液状炭化水素を内包する熱可塑性樹脂粒子を予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンおよび多価アルコールを液状付加反応型シリコーンゴムに配合してなる組成物を硬化させて形成させたシリコーンゴム弾性層11を設け、その表面に2〜50μmのシリコーンゴムからなる補強層12を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置で用いられる加熱定着装置の定着器用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置で用いられる加熱定着装置の定着器用ローラは、最近、省エネルギ化を図るために、内部にヒータを有する薄肉の中空芯金のロールを用い、その肉厚を薄くすることで機器の立ち上がり時間を短くする方式が採用されている。
【0003】
また、ポリイミド樹脂のような耐熱性樹脂や金属で出来た薄肉のベルトの表面に、フッ素樹脂などの離型層を設けた定着ベルトを介して内側ヒータで加熱し、紙などの上にトナー画像を加熱定着する方式も行われている。この方式では熱容量の小さい薄肉の定着ベルトを用いるために、機械の立ち上がり時間をさらに短縮できる利点がある。
【0004】
しかし、機器の早い立上げには、さらに加熱定着に際して、定着器の加圧ローラが、定着ローラや定着ベルトからの熱を奪うのを出来るだけ少なくするようにすることが好ましく、このために加圧ローラの下層に熱伝導率の低いシリコーンスポンジ層を形成し、その外表面に薄いフッ素樹脂層を設けた低熱伝導性の加圧ローラを使用することが行われている。
【0005】
こうした加圧ローラ下層のシリコーンスポンジとしては、セル径の安定性や熱伝導率の安定性から、液状ゴムに予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンを混合してスポンジ層を形成させる方法が広く行われている。この方法は、樹脂マイクロバルーンが予め熱膨張させてあるためセルが安定しており、マイクロバルーンの配合率によって弾性層の空隙率をコントロールすることが出来るため、安定した熱伝導率が得られる利点がある。
【0006】
しかし、芯金外周面に樹脂マイクロバルーンを含有するシリコーンゴム弾性層だけを設けた単層構造のローラを定着器用のローラとして使用すると、マイクロバルーンの物性が非常に低いために、定着器用ローラとしての強度が不十分で、定着ベルトとの摩擦力や紙との摩擦力に耐えきれず、定着器用ローラの表面はすぐに破壊してしまうものである。そのためにローラ外周面にフッ素樹脂層を形成したり、フッ素樹脂のチューブを被せて耐久性をもたせることが行われているものである。
【0007】
樹脂マイクロバルーンを含有する弾性層を下層に用い、その表面にフッ素樹脂層を設けた定着用ローラの先行技術としては、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物100重量部に平均粒子径が200μm以下の中空フィラーを0.1〜200重量部配合したもので、外周面にフッ素樹脂層を設けたもの(例えば特許文献1参照。)、有機マイクロバルーンを含有するゴム層と耐熱性ゴム層との間に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム層が形成されているもの(例えば特許文献2参照。)、基材上に少なくとも一層のゴム層が形成され、最外層にフッ素樹脂またはポリイミド樹脂の耐熱性樹脂層が形成されたゴム被覆ローラにおいて、ゴム層が有機マイクロバルーンと、補足剤を含有するゴム層とからなるもの(例えば特許文献3参照。)、加圧ローラが樹脂マイクロバルーンにより形成された空隙部を分散含有する弾性層を有し、最外層としてフッ素樹脂およびフッ素ゴム離型層を有するもの(例えば特許文献4参照。)、支持体上に少なくとも弾性層を有し、該弾性層が少なくとも既膨張の樹脂マイクロバルーンが配合されたシリコーンゴムを硬化して形成されたローラで、外周にフッ素樹脂チューブを被覆したローラあるいはフッ素樹脂をコートしたローラ(例えば特許文献5参照。)が知られている。
【特許文献1】特許第3494039号(特許請求の範囲、請求項1,5)
【特許文献2】特開2000−230541(特許請求の範囲、請求項1,4)
【特許文献3】特開2001−295830(特許請求の範囲、請求項5,6)
【特許文献4】特開2002−148988(特許請求の範囲、請求項1,請求項13)
【特許文献5】特開2002−70838(特許請求の範囲、請求項1、段落0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の先行技術のように、ローラ軸の外周面にシリコンゴム層を設け、その外周にフッ素樹脂層を形成したもの或いはフッ素樹脂のチューブを被せたもの、さらにはフッ素樹脂をコーティングしたものは、フッ素樹脂層と下層のシリコーンゴム弾性層とを強固に接着させることが非常に困難であるといった問題がある。
【0009】
そのために、フッ素樹脂で予め薄肉のチューブを成型し、その内面を強アルカリ性の薬液処理やエキシマレーザー処理などで接着可能な層に形成し、フッ素樹脂チューブ内面やゴム弾性層の表面の一方或いは双方に接着剤を塗布してフッ素樹脂チューブをゴム弾性層に接着する方法が採用されている。しかしながら、この方法は接着の工程が多いために品質の安定性に欠ける問題があった。さらに、この方法はチューブ内面の薬液処理やエキシマレーザー処理によって処理層自体の耐熱性がフッ素樹脂より劣って、定着器用ローラとして長期間高温で使用すると処理層で接着破壊を起こしてしまう問題があった。
【0010】
また、樹脂マイクロバルーンを含有する弾性体を作成した後に、その表面にフッ素樹脂やフッ素樹脂をブレンドしたフッ素ゴムをディピング方式やスプレー方式でコーティングする方法では、表面層を形成した後高温で加熱して表面層を加硫硬化或いは溶融して定着器用ローラとするが、この方法では接着力を強くするために接着層を複数層設けるなどしても強力な接着力は得られず、高温、高圧下での長期使用に十分耐えることは出来なかった。
【0011】
さらに、フッ素樹脂やフッ素ゴムをブレンドしたものは離型性には優れているが、このものは摩擦係数が非常に低い特徴がある。従って、これを定着ベルトに用いた定着器用の加圧ローラとして用いた場合、定着条件によって加圧ローラと紙との間でスリップが発生して搬送速度が変化してしまうといった問題があった。このスリップは、紙の種類や環境によっても変化し、高温高湿の環境では紙中の水分量が増えるために定着時の熱によって水が気化してスリップがさらに発生しやすいといった厄介なものであった。
【0012】
こうした問題の改善策として、ローラ表面粗さを粗くして気化した水分による影響を少なくしてスリップを押える試みもなされているが、表面粗さを一定に粗くすることの困難性に加えて、ローラ使用中の磨耗によって表面粗さが変化してしまうこともあり有効な改善策とはなっていない。
【0013】
最近、トナー成分の改良により、従来よりも離型性に優れたトナーの開発が進んで、高離型性のフッ素樹脂や、フッ素樹脂を含んだフッ素ゴム材料を表面の離型層として使用しないでも、長期にわたり定着器用ローラ表面にトナーの付着が起こらない定着器の開発が進んでいる。この目的は、離型層と接着不良トラブルの解消や紙とのスリップ問題の解決とともに、フッ素樹脂やフッ素樹脂を含んだフッ素ゴム材料の価格が非常に高価であるので、フッ素樹脂を使用しないで定着器の価格低減を図ることを大きな目的としているものである。しかし、トナー成分の改良により補強層の問題が全て解決されていないのが実状である。
【0014】
この発明は、上記事情を鑑みて下地のゴム弾性体との接着性の問題の発生がなく、しかも定着器用ローラとしての耐スリップ性にも優れ、さらに硬度変化や外形変化も少なく、しかも短い工程で製作することができるような高耐久性の定着器用ローラを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、芯金外周面に液状炭化水素を内包する熱可塑性樹脂粒子を予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンおよび多価アルコールを液状付加反応型シリコーンゴムに配合してなる組成物を硬化させて形成させたシリコーンゴム弾性層を設け、その表面に2〜50μmのシリコーンゴムからなる補強層を設けたことを特徴とする定着器用ローラ(請求項1)、前記補強層が、接着成分を含んだ付加反応型シリコーンスポンジ組成物又は接着成分を含んだ縮合反応型シリコーンゴム組成物を硬化させたものである請求項1記載の定着器用ローラ(請求項2)、前記補強層のシリコーンゴムが、デュロメータ、タイプA硬度15〜50°で比重が1.4以下のシリコーンゴムである請求項1または請求項2に記載の定着器用ローラ(請求項3)である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、複写機などの定着器用ローラの芯金周面に設けたシリコーンスポンジ弾性体の表層に、フッ素樹脂またはフッ素樹脂フイルムを用いないでシリコーンゴム層を設けたので、これまでのように下層のシリコーンスポンジゴム弾性体と表層のフッ素樹脂またはフッ素樹脂フイルムとの接着不良の問題は解消することができるようになった。また、下層のシリコンコーンスポンジ層を連続気泡としたので、使用時の加熱によってローラが膨張するのを防ぐことができ、このためにローラの膨張に伴う紙の搬送スピードの変化といったったようなトラブルを未然に防ぐことができるようになったものである。さらに、長期の使用によってもローラの硬度変化が少なく安定したトナーの定着を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、複写器などの定着器1の構成を概略で示したものである。定着器1は、定着ベルト2とこれに摺接する加圧ローラ3とからなる。定着ベルト2は、金属の薄板又はポリイミド樹脂など耐熱性樹脂フイルムで円筒形にしたものである。トナー4が文字,図形などの形で付着された紙5が、定着ベルト2と加圧ローラ3の間に供給され、加圧ローラ3が回転することによって矢印6方向に移動し、その間に定着ベルト2の加熱ヒータ7がこれを加熱して、紙5の上にトナー4が溶着されるものである。
【0018】
加圧ローラ3は、芯金10の周囲にシリコーンスポンジ弾性層11を一層或いは複数層形成する。このシリコーンスポンジ弾性層11は、液状炭化水素を内包する熱可塑性樹脂粒子を予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンおよび多価アルコールを液状付加反応型シリコーンゴムに配合してなる組成物を硬化させて形成したものとする。このシリコーンゴム弾性層11の表面には、厚さの薄いシリコーンゴムで被覆した補強層が形成されている。
【0019】
ここでシリコーンスポンジ弾性層11が、液状炭化水素を内包する熱可塑性樹脂粒子を予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンおよび多価アルコールを液状付加反応型シリコーンゴムに配合した組成物を硬化したスポンジ弾性層としたのは、これによって弾性体を連泡タイプのシリコーンスポンジとするためである。連泡タイプのシリコーンスポンジ弾性層は、定着器用ローラとして使用したときに加熱による熱膨張を抑えることができるので、ローラの熱膨張による紙の搬送スピードの変化を抑制することができる。また、長期の使用でもローラの硬度変化を少なくすることが可能である。
【0020】
シリコーンゴム弾性層の上には2〜50μmの非常に薄肉のシリコーンゴムの補強層を設ける。この補強層は、低粘度の液状シリコーンゴムを用いたり、或いは粘度の高い原料では溶剤により希釈して粘度を調整し、ディピング方式、スプレーコート方式などで弾性層表面に薄肉の被膜を形成し、加硫硬化して形成する。
【0021】
補強層は、シリコーンゴム弾性層表面に接着するために、接着面に接着層を設ける必要があるが、接着の安定化を図るために予め接着成分を含んだ付加反応型シリコーンゴム組成物または、接着成分を含んだ縮合反応型シリコーンゴム組成物を使用すると、接着層を設けることなしで安定して強力な接着が得られる。
【0022】
上記の接着成分を含んだ付加反応型シリコーンゴム組成物とは、加熱硬化型シリコーン接着剤、シリコーンシール材、ポッテング材と一般に呼ばれるものでGE東芝シリコーン(株)製のTSE322シリーズ、TSE325シリーズや、信越化学工業(株)製のX−32−1934シリーズなどの付加反応型シリーズゴムに接着成分を含み、加熱硬化することで自己接着するタイプのシリコーンゴムである。また、接着成分を含んだ縮合反応型シリコーンゴム組成物とは、室温硬化型シリコーン接着剤、シーリング剤と呼ばれているもので、GE東芝シリコーン(株)製のTSE382シリーズ、TSE370シリーズ、信越化学工業(株)製のKE45シリーズ、KE42シリーズ、東レ・ダウコーニング(株)製のSH780シリーズ、SE9175シリーズで代表されるものであり、縮合反応により室温で硬化、接着するタイプのシリコーンゴムである。
【0023】
この補強層は、厚さ2〜50μmの薄肉とする。この厚さで定着器用の補強層として強度的に十分な効果がある。補強層の厚さが2μm未満であると、表面全体に均一なシリコーンゴム層を形成することが難しく、またシリコーンゴム中の架橋成分などが弾性体層に吸収されて部分的に硬化不良を起こして安定した補強層が形成されない。この補強層の厚さが50μmを超えると、定着器用ローラとしての表面硬度が上がってしまい、低硬度のバルーンスポンジ層を使用した効果を阻害するとともに、ローラ表面の熱伝導率が大きく変化して定着器の立上がり時間や定着像に影響を与えてしまう恐れがある。
【0024】
さらに、この発明の定着器用ローラの補強層としてのシリコーンゴムは、定着器用ローラの低硬度を妨げないように、低硬度のシリコーンゴムを用いることが好ましい。しかし、JIS-A 硬度15°以下のシリコーンゴムを使用すると表面に粘着性が生じ、定着時に紙がローラに巻きつく問題が発生するので使用できない。JIS-A 硬度で15〜50°のゴムを使用することが好ましい。
【0025】
補強層として使用するシリコーンゴムに各種充填剤を配合し、さらに強度アップすることや、導電性付与などを行うことができるが、充填剤を多量に配合するとシリコーンゴムとして離型性が低下してくるために表面にトナーの付着が起こりやすくなってしまう。また、シリコーンゴムの比重が1.40以上となるような充填剤を多量に配合したものでは、トナー付着が発生しやすく実用に耐えない定着器用ローラとなってしまう恐れがある。
【0026】
樹脂マイクロバルーンを含有するシリコーンゴム弾性層やシリコーンゴム補強層にカーボンブラックや金属粉などの導電性付与剤を配合することにより体積抵抗率を下げ、定着器用ローラの帯電を抑えて画質の向上や通紙性を改良することも可能であるが、樹脂マイクロバルーンを含有するシリコーンゴム弾性層は強度の問題があって多量の導電性付与剤の配合は物性低下につながるおそれがあり、これらはシリコーンゴム補強層に加えるのが好ましい。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
図2に示すように、外径11mmの外周に接着剤を塗布した芯金32を、内径18.3mmの金型33内に装着し、芯金32と金型33との隙間に液状付加反応型シリコーンゴム100重量部に予め熱膨張させた樹脂マイクロバルー(ケマ・ノーベル社商品名,エクスパンセル092DE‐120)2.0重量部とトリエチレングリコール8.0部を配合した液状付加反応型シリコーンゴム組成物を金型下方から注入し、金型を130℃で40分加熱し、低分子量シロキサン分、トエチレングリコール、樹脂マイクロバルーンの分解物などを取り除き、連泡シリコーンスポンジ弾性層34が外周に形成された外径18mmのローラを得た。
【0028】
これを金型から外し、このシリコーンスポンジ弾性層34の上に、接着成分を含んだ付加反応型シリコーンゴム組成物X−32−1934(信越化学工業(株)商品名)をトルエンで希釈した溶液をスプレーコーティング方式でコーティングし、これを2時間室温で放置してトルエンをとばした後、オーブン中で100℃4時間加熱しシリコーンゴムを硬化させ、厚み5μmのシリコーンゴム補強層を形成した。補強層の硬さ(デュロメータタイプA)は、35°で、比重1.25であった。この定着器用ローラは、ローラ表面硬度36°(Asker C硬度計)であった。この定着器用ローラをキャノン(株)製プリンターLBP 3000の定着器用ローラとして使用して通紙試験を行った。その結果、通紙2万枚で何ら問題は生じなかった。
【0029】
(実施例2,3)
実施例2は、実施例1と同様にして定着用ローラを作成し、その場合のシリコーンゴム補強層の厚さを5μmとし、その他は実施例1と同様とした。実施例3は、実施例1と同様にして定着用ローラを作成し、その場合のシリコーンゴム補強層の厚さを50μmとし、その他は実施例1と同様とした。これについて実施例1と同様の通紙試験を行ったところ、通紙2万枚まで定着画像のムラや紙の巻きつきは発生せず加圧ローラとしての使用に問題はなかった。
【0030】
(比較例1)
外径11mmの芯金の外周に接着剤を塗布した芯金を、実施例1と同様の図2に示すような内径18.3mmの金型内に装着し、芯金と金型の隙間に液状付加反応型シリコーンゴム100重量部に予め熱膨張させた樹脂マイクロバルー(エクスパンセル092DE‐120)2.0重量部とトリエチレングリコール8.0部を配合した液状付加反応型シリコーンゴム組成物を金型下方から注入し、金型を130℃で40分加熱し、低分子量シロキサン分、トエチレングリコール、樹脂マイクロバルーンの分解物などを取り除き、連泡シリコーンスポンジ弾性層が外周に形成された外径18mmの定着器用ローラを得た。
【0031】
この定着器用ローラは、ローラ表面硬度が35°(Asker C硬度計)で、ローラ表面熱伝導率が0.117W/m.K、弾性層の比重が0.62であった。この定着器用ローラを実施例1と同様にして通紙試験を行ったところ、通紙90枚目で定着画像のムラが発生した。定着器を分解して加圧ローラ表面を確認したところ弾性表面に破壊が生じていた。
【0032】
(比較例2,3)
比較例2は、実施例1と同様にして定着用ローラを作成し、その場合、シリコーンゴム補強層の厚さを1μmとして、その他は実施例1と同様とした。比較例3は、実施例1と同様にして、シリコーンゴム補強層の厚さを60μmとして、その他は実施例1と同様とした。比較例2は、ローラ表面に部分的にシリコーンゴムが未硬化の部分があるために通紙試験に使用できなかった。また、比較例3は、ローラ表面の熱伝導率が0.136W/m.Kと大きく上昇しており、通紙1枚目の画像の定着性に差が見られたため試験を行わなかった。実施例1〜3、比較例2,3の結果をまとめて表1に示した。
【表1】

【0033】
(実施例4〜7、比較例4)
実施例1と同じようにして成形したシリコーンスポンジ弾性体の上に、紙コーンゴム補強層の材料を変更して実施例4〜6の定着ローラとした。また、実施例7は、弾性層表面に接着剤DY39−110A/B(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を介して表面補強層を形成し定着器用ローラとした。なお、シリコーンゴム材料は次の通りである。
【0034】
TSE322 GE東芝シリコーン(株)製 付加反応型シリコーンゴム
TSE3221 GE東芝シリコーン(株)製 付加反応型シリコーンゴム
KE45 信越化学工業(株) 縮合反応硬化型シリコーンゴム
KE1346 信越化学工業(株) 付加反応型シリコーンゴム(接
着成分を含まない)
TSE325 東芝シリコーン(株)製 付加反応型シリコーン
これら実施例4〜7の定着器用ローラを実施例1と同じキャノン(株)製プリンターLBP 3000の定着器用ローラとして使用して通紙試験を行った。その結果、通紙2万枚まで定着画像ムラ、紙の巻きつきは発生せず、何ら問題は生じなかった。
【0035】
比較例4は、表面補強層に硬度12°と硬度の低いものを使用したためにローラ表面に粘着性があり、通紙試験の1枚目で紙が定着器用ローラに巻きつき使用できなかった。これらの結果をまとめて表2に示した。
【表2】

【0036】
(比較例5,6)
比較例1と同じようにして成形した連泡シリコーンスポンジ弾性体の上に、接着剤DY39−110A/B(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を介して付加反応型シリコーンゴム組成物SE6746(東レ・ダウコーニングシリコーン(株))を使用して実施例1の方法でシリコーンゴム補強層を30μm設けて比較例5の定着器用ローラを作成した。
【0037】
比較例5は、硬度60°の補強層のゴムを使用したがローラ表面硬度が硬くなってしまい、定着器のニップ幅を測定したところ実施例1のローラに比べて0.4mmもニップ幅が小さくなっているのが確認された。このため、通紙1枚目の画像の定着性に差が見られ通紙試験を行わなかった。
【0038】
比較例6は、KE1367(信越化学工業(株))を用いて比較例5と同様にして定着器用ローラを製作した。これを用いて実施例1と同じようにして通紙試験を行ったところ、約2万枚通紙時に紙の裏面に汚れが現れた。そこで定着器用加圧ローラの表面を確認したところ、トナーの付着が進んでおり、このために紙の裏面の汚れが発生したものと分かった。この時点で試験を中止した。これは比重1.47と充填剤を多量に配合したシリコーンゴムのため、トナーに対する離型性が不十分であることが原因でトナー付着が発生したものと考えられた。これらの結果をまとめて表3に示した。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施例になる定着器用ローラを用いた定着装置の概略説明図。
【図2】この発明の実施になる定着器用ローラを製造する工程を示した概略説明図。
【符号の説明】
【0040】
1…定着器、2…定着ベルト、3…加圧ローラ、4…トナー、5…紙、7…加熱ヒータ、10,32…芯金、11、34…シリコーンスポンジ弾性層、33…金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周面に、液状炭化水素を内包する熱可塑性樹脂粒子を予め熱膨張させた樹脂マイクロバルーンおよび多価アルコールを、液状付加反応型シリコーンゴムに配合してなる組成物を硬化させて形成させたシリコーンゴム弾性層を設け、その表面に2〜50μmのシリコーンゴムからなる補強層を設けたことを特徴とする定着器用ローラ。
【請求項2】
前記補強層が、接着成分を含んだ付加反応型シリコーンスポンジ組成物又は接着成分を含んだ縮合反応型シリコーンゴム組成物を硬化させたものである請求項1記載の定着器用ローラ。
【請求項3】
前記補強層のシリコーンゴムが、デュロメータ、タイプA硬度15〜50°で、比重が1.4以下のシリコーンゴムである請求項1または請求項2に記載の定着器用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−350026(P2006−350026A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176742(P2005−176742)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000142436)株式会社金陽社 (25)
【Fターム(参考)】