定着装置および画像形成装置
【課題】ニップ圧が維持されるニップを備え、このニップにより、適正な光沢度による定着を、ランニングコストの上昇を回避するとともに、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制して行う定着装置及びこの定着装置を有する画像形成装置の提供。
【解決手段】記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ70を形成する。記録媒体の搬送方向C1においてニップ70の上流端部における定着部材63の表面温度Tfoと、方向C1においてニップ70の下流端部における定着部材63の表面温度Tboと、ニップ70において定着必要熱量を与えるための方向C1に沿った定着部材63の表面温度の平均値T1と、定着画像に必要な光沢度を得るための、方向C1においてニップ70の下流端部における定着部材63の表面上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たす。
【解決手段】記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ70を形成する。記録媒体の搬送方向C1においてニップ70の上流端部における定着部材63の表面温度Tfoと、方向C1においてニップ70の下流端部における定着部材63の表面温度Tboと、ニップ70において定着必要熱量を与えるための方向C1に沿った定着部材63の表面温度の平均値T1と、定着画像に必要な光沢度を得るための、方向C1においてニップ70の下流端部における定着部材63の表面上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置であって、適正な光沢度による定着を行うための定着装置およびこの定着装置を有するかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置では、定着性能を示す指標の1つとして、定着画像の光沢度が用いられている。すなわち、定着画像の光沢度が適切であるか否かが、かかる定着装置において高画質の定着が行われているか否かの要素の1つとして用いられている。
【0003】
そこで、かかる定着装置において、定着画像の光沢度を適正化するための技術が種々提案されている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献5〕参照)。
具体的には、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照。以下、「技術1」という。)、この技術において特に第2のニップにおいて用紙を冷却する技術(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕参照。以下、「技術2」という。)、この技術において特に用紙の冷却を2つのベルトに挟持搬送させて行う技術(たとえば、〔特許文献1〕参照。以下、「技術3」という。)、光沢を与えるために定着ニップ部の圧を調整する技術(たとえば、〔特許文献2〕、〔特許文献4〕参照。以下、「技術4」という。)、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献3〕参照。以下、「技術5」という。)、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術(たとえば、〔特許文献5〕参照。以下、「技術6」という。)、定着後に用紙から剥離されるシートを用紙と一体化させて定着ニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献5〕参照。以下、「技術7」という。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの技術1〜7には、それぞれ問題がある。すなわち、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術1と、光沢を与えるために定着ニップ部の圧を調整する技術4と、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術6とには、第2のニップ部において用紙の冷却を行う場合の技術2を含めて、装置が大型化、複雑化、高価格化するという問題がある。また、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術1と、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術6とには、定着装置において消費されるエネルギーが増加するという問題がある。また用紙の冷却を2つのベルトに挟持搬送させて行う技術3には、用紙の搬送過程においてニップ圧が解除されるため、ベルトと用紙との位置ずれが発生しやすく、画像の乱れ、用紙のしわ等の不具合が発生し得るという問題がある。また光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、定着後に用紙から剥離されるシートを用紙と一体化させて定着ニップ部に通紙する技術7とには、かかる剤、シートを必要とすることによるランニングコストの上昇という問題がある。
【0005】
上述した、光沢を与えるために用紙を冷却する技術2は、定着の際に画像に当接する部材の、画像から剥離されるときの温度が、画像の光沢度を左右するという現象に着目したものであるが、この技術2は、上述のように、第2のニップ部における冷却によって実現されているため、第2のニップ部を必須とすることから、とくに、装置が大型化、複雑化、高価格化するという問題が避けられない。また、ニップ部を2つのベルトによって構成して定着が行われる用紙の搬送を行う技術3では、用紙を2つのベルトで挟持搬送するために、上述のように、ニップ圧が解除される部分が存在することにより、画像の乱れ、用紙のしわ等の、定着性に大きく低下させるという問題を発生させ得るものとなっている。なお、この後者の問題は、2つにベルトによって構成されるニップ部が第2のニップ部であるか否かによらず生じる問題である。
【0006】
したがって、定着画像の光沢度を適正化するための技術の要件としては、第2のニップにおいて冷却を行うこと、ニップ部においてニップ圧が維持されるものであることが重要であり、この条件を満たしながら、上述の各問題を回避することが望ましい。
【0007】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置であって、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、適正な光沢度による定着を、ランニングコストの上昇を回避するとともに、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら行う定着装置およびこの定着装置を有するかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、Tfo>Tfiを満たすために備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の定着装置において、前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置にあるので、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0017】
前記温度条件付与手段は、前記温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、Tfo>Tfiを満たすために備えられていることとすれば、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部においてかかる温度の関係を設定することにより、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0018】
前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することとすれば、定着部材の表面側の温度を上昇させるとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0019】
前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することとすれば、定着部材の放熱状態を適正化するとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0020】
前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることとすれば、定着ベルトによって形成された、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0021】
前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することとすれば、定着部材の裏面側の温度を低下させるとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0022】
前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることとすれば、ニップ圧が維持されるとともに定着の際にかかる搬送方向下流側端部の温度が大きく低下するニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0023】
本発明は、かかる定着装置を有する画像形成装置にあるので、定着装置においてニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成を行うとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら画像形成を行うことを図った画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した定着装置およびこれを有する画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した定着装置の一部の拡大概略正面図である。
【図3】図2に示した定着装置のさらに一部の拡大概略正面図である。
【図4】図1に示した定着装置に備えられた定着部材の表面の温度と裏面の温度との関係により定着に影響を与えることを示した概念図である。
【図5】本発明を適用した定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図6】本発明を適用した定着装置の別の構成例を示す概略図である。
【図7】図6に示した定着装置の一部の変形例を示す概略平面図である。
【図8】図6に示した定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図9】本発明を適用したさらに別の構成例の定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これらにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図10】本発明を適用した定着装置のまたさらに別の構成例を示す概略図である。
【図11】本発明を適用した定着装置のさらにまた別の構成例を示す概略図である。
【図12】従来の定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、フルカラーのカラーレーザプリンタであるが、他のタイプのプリンタ、ファクシミリ、複写機、印刷機、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
【0026】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を像形成物質としてのトナーを担持することで形成可能な第1の像担持体としての潜像担持体である感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0027】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100の本体99の図示しないフレームに回転自在に支持された可撓性を有する第2の像担持体としての中間転写体たる無端状のベルトである中間転写ベルトとしての転写ベルト11の移動方向であって図1において反時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で等間隔で並列に並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0028】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するためのトナー像形成手段である画像形成手段としての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0029】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端のベルトとして構成された転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0030】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である記録材としての用紙たる転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式言い換えると間接転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の画像形成装置である。このように画像形成装置100は画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKを横に並べて配置したタンデム画像形成部60を備えている。
【0031】
転写ベルト11は、その下側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写部58を形成している。
【0032】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された一次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0033】
転写ベルト11は、A1方向に直交する、図1の紙面に垂直な方向に対応した幅方向において、A4横サイズの転写紙Sに対応した幅を有している。よって、画像形成装置100は、最大でA3縦サイズの転写紙Sに対する画像形成が可能となっている。
【0034】
画像形成装置100は、本体99内に、4つの画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えたベルトユニットである中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、図1における転写ベルト11の右側において転写ベルト11に対向して配設された2次転写手段としての2次転写装置5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの下方に対向して配設された潜像形成手段としての光書込みユニットである書き込みユニットとしての露光装置たる光走査装置8とを有している。
【0035】
画像形成装置100はまた、本体99内に、転写ベルト11と2次転写装置5との間の転写ニップ部たる転写ニップとしての2次転写ニップである2次転写部57に向けて搬送される転写紙Sを多数枚積載可能な給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写部57に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0036】
画像形成装置100はまた、本体99内に、2次転写部57でトナー像を転写された転写紙Sに同トナー像すなわち未定着トナー画像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての熱定着装置である定着装置6と、シート給送装置61から送り出された転写紙Sを搬送する図示しない搬送ローラを備え、転写紙Sの進行方向において中途部にレジストローラ対4、定着装置6を順に配設された給紙路32と、かかる進行方向において給紙路32においてさらに下流側の終端に位置し定着済みの転写紙Sである画像出力物を本体99の外部に排出する排出ローラである排紙ローラ対としての排紙ローラ7と、転写ベルトユニット10の上方に配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9BKと、本体99の上側に配設され排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17とを有している。
【0037】
画像形成装置100はまた、本体99内に、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動手段としての駆動モータを含む駆動装置と、画像形成によって生じた、不要となったトナーを貯留する図示しない廃トナーボトルと、画像形成装置100の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段91とを有している。
【0038】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ72と、張架ローラとしての2次転写対向ローラ74と、駆動ローラ72及び2次転写対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する支持ローラとしての張架ローラ75、33と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11表面をクリーニングする中間転写体クリーニング装置であるベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13とを有している。
【0039】
転写ベルトユニット10はまた、駆動ローラ72の図示しない回転軸に連結され駆動ローラ72を回転駆動する駆動源としての図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKにそれぞれ独立して1次転写バイアスを印加する図示しない第1の転写バイアス印加手段としての電源及び制御手段91の一機能として実現された第1の転写バイアス制御手段とを有している。
【0040】
駆動ローラ72、2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33は、転写ベルト11を回転搬送可能に掛け渡し、掛け回した支持ローラとなっている。2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33は、駆動ローラ72によって回転駆動される転写ベルト11に連れ回りする従動ローラとなっている。支持ローラ72、74、75、33のうち、張架ローラ33のみが転写ベルト11の外周面である表面に当接し、他の支持ローラ72、74、75は、転写ベルト11の内周面である裏面に当接している。
【0041】
1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ転写ニップとしての1次転写ニップを形成する。この1次転写ニップは、転写ベルト11の、駆動ローラ72と張架ローラ75との間に張り渡した部分において形成されている。駆動ローラ72と張架ローラ75とは、1次転写ニップを安定化する機能を有する。
【0042】
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界や、2次転写対向ローラ74と後述する2次転写ローラ64との間で転写ベルト11を挟み付ける圧力であるニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
【0043】
2次転写対向ローラ74は、転写ベルト11を介して2次転写ローラ64を当接されており、2次転写ローラ64に対向する位置で転写ベルト11を巻き掛けて2次転写部57を形成している。
【0044】
張架ローラ75は、2次転写部57において転写ベルト11と2次転写ローラ64とによって形成されるA1方向上流側の楔状の空間を、転写紙Sが2次転写部57に滑らかに進入するように形成する入口ガイド材としての機能を有する。
張架ローラ33は、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
【0045】
クリーニング装置13は、図1において駆動ローラ72の左方に配設されている。クリーニング装置13は、駆動ローラ72に対向する位置、すなわち、A1方向において2次転写部57の下流側且つ1次転写部58の上流側の位置で転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブレード13aと、クリーニングブレード13aをその内部に収容したケース13bとを有している。
【0046】
クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブレード13aで掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
転写ベルトユニット10は、本体99に対して一体で着脱可能となっている。
【0047】
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部に配設されている。
シート給送装置61は、最上位の転写紙Sの上面に押圧される給紙ローラとしての給紙コロである給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が所定のタイミングで反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sを1枚ずつ分離してレジストローラ対4に向けて繰り出し、給送するようになっている。この点、給紙ローラ3は分離ローラとしても機能する。
シート給送装置61から送り出された転写紙Sは、給紙路32を経てレジストローラ対4に至り、レジストローラ対4のローラ間に挟まれる。
【0048】
2次転写装置5は、2次転写対向ローラ74に対向して配置されている。2次転写装置5は、2次転写対向ローラ74との間で転写ベルト11を挟むようにして配設され、転写ベルト11に従動回転し、転写ベルト11との間を通過する転写紙Sに転写ベルト11上のトナー像を転写可能とするための2次転写部材である転写部材としての転写ローラたる回転体である2次転写ローラ64を有している。
【0049】
2次転写装置5はまた、A1方向において2次転写部57の上流側に配設され、レジストローラ対4によって2次転写部57に向けて繰り出された転写紙Sを2次転写部57に案内する態様で転写紙Sの搬送時のガイドを行う紙ガイドとしてのガイド板38と、A1方向において2次転写部57の下流側に配設され、2次転写部57において転写ベルト11上のトナー像を転写された転写紙Sを2次転写ローラ64から分離して定着装置6に向けて搬送する分離板39とを有している。
【0050】
2次転写ローラ64と、転写ベルト11の2次転写部57近傍の一部とは、給紙路32に臨むように配設されており、2次転写部57を形成している。2次転写ローラ64は転写ベルト11に当接して2次転写部57を形成する当接部材として機能する。このように、2次転写ローラ64と転写ベルト11とが対向し、密着した領域が2次転写部57となっている。
【0051】
光走査装置8は、図示を省略するが、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに照射されるレーザー光の光源と、光源から出射されたレーザー光を偏向走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって偏向走査されたレーザー光を透過するf−θレンズと、f−θレンズを透過したレーザー光を感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて反射する反射ミラー等を備えている。
【0052】
図1または図2に示すように、定着装置6は、2次転写部57において転写ベルト11から未定着画像であるトナー像を転写され担持する方の転写紙Sの面側に位置する無端ベルト状の定着部材である定着回転体としての、C1方向に回転する定着ベルト63と、定着ベルト63を張架した定着ローラ68および加熱ローラ62と、加熱ローラ62の内部に配設され加熱ローラ62を加熱することで定着ベルト63を加熱するための加熱手段である定着加熱手段としての加熱ヒータであるハロゲンヒータ65とを有している。
【0053】
定着装置6はまた、定着ローラ68に対向する位置において定着ベルト63に加圧された状態で当接するように配設され、転写紙Sのトナー像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧部材である加圧回転体としての中空の加圧ローラ69と、2次転写部57において転写ベルト11からトナー像を転写された転写紙Sを、定着ベルト63と加圧ローラ69とが互いに当接することによって形成されたニップ部としての定着ニップ70に向けて案内する案内部材としてのガイド板76とを有している。
【0054】
定着装置6はまた、図示を省略するが、定着ベルト63の回転方向であるC1方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から定着ベルト63から剥離して排出ローラ7に向けて定着装置6から排出するための分離部材と、加圧ローラ69の回転方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から加圧ローラ69から剥離する分離部材と、定着ベルト63の表面温度を検知する、図示しない定着温度検知手段とを有している。
【0055】
定着装置6はまた、定着ローラ68の図示しない回転軸に連結され定着ローラ68を回転駆動する駆動源としての図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、以上述べた各構成を囲繞した図1に示すハウジング85と、制御手段91の一機能として実現され駆動モータの駆動を制御する定着駆動制御手段とを有している。
【0056】
定着ベルト63は、ニップ部70において、その表面すなわち加圧ローラ69に対向した面とその裏面すなわち定着ローラ68および加熱ローラ62に当接する側の面のうち、表面側が、転写紙Sの、未定着トナー像による画像を担持した側に面に当接して、転写紙Sを搬送しながら定着を行う。
【0057】
定着ベルト63は、PI(ポリイミド)樹脂からなる層厚90μmのベース層と、このベース層上に順次積層された、弾性材料で形成された弾性層と、離型層からなる表層とを有する多層構造の無端ベルトである。定着ベルト63の弾性層は、層厚が200μm程度であって、シリコーンゴム製であるが、弾性材料であれば、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の他の材質で形成しても良い。定着ベルト63の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)によって形成されているが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等の、トナーに対する離型性言い換えると剥離性が確保される材質によって形成されていれば良い。
【0058】
図2に示されている、「T」を冠する符号は、定着ベルト63の各位置における温度を示している。具体的には、次のとおりである。
Tf:C1方向における定着ニップ70の上流側端部位置すなわちニップ入口における定着ベルト63の温度(fはfrontの略。以下同じ。)
Tb:C1方向における定着ニップ70の下流側端部位置すなわちニップ出口における定着ベルト63の温度(bはbackの略。以下同じ。)
Tkf:C1方向において定着ベルト63が加熱ローラ62に当接し加熱される領域における上流側端部位置すなわち加熱開始位置での定着ベルト63の温度
Tkb:C1方向において定着ベルト63が加熱ローラ62に当接し加熱される領域における下流側端部位置すなわち加熱終了位置での定着ベルト63の温度
【0059】
温度Tf、Tbは、より詳細には、図3に示すように分けられる。
Tfo:Tfのうち定着ベルト63の表面すなわちニップ入口外周面位置の温度(oはoutsideの略。以下同じ。)
Tfi:Tfのうち定着ベルト63の裏面すなわちニップ入口内周面位置の温度(oはinsideの略。以下同じ。)
Tbo:Tbのうち定着ベルト63の表面すなわちニップ出口外周面位置の温度
Tbi:Tbのうち定着ベルト63の裏面すなわちニップ出口内周面位置の温度
【0060】
また、同図において、符号Tfo−1は、定着ベルト63の表面の、ニップ入口外周面位置(温度Tfoの位置)よりも上流側の位置における温度、符号Tfo−2は、この位置(温度Tfo−1の位置)よりもC1方向においてさらに上流側の位置における温度を示している。
なお、定着ベルト63の表面の温度をToまたはToutside、定着ベルト63の裏面の温度をTiまたはTinsideとする。
【0061】
加圧ローラ69は、芯金と、芯金表面にコーティングされたPFAによる離型層とを有する金属パイプローラである。加圧ローラ69の芯金の厚さは0.5mmであり、その材質は鉄であるが、アルミニウム等の他の材質で形成しても良いし、芯金の厚さは0.2〜1.0mmの範囲で設定されればよい。離型層の材質は、PFAに限られるものではない。
【0062】
加圧ローラ69と定着ローラ68とは、これらが互いに圧接されて対向しており、これによって形成された対向位置において、これらによって定着ベルト63を挟持し、定着ローラ68に巻き掛けられた位置における定着ベルト63と加圧ローラ69とを圧接することによって定着ニップ70を形成したニップ部形成部材として機能する。ニップ部形成部材として機能する加圧ローラ69と定着ローラ68とは、これらがローラ状であることで、未定着トナー像からなる画像を定着される転写紙Sを加圧した状態をC1方向において維持しながら搬送し、定着を行う。
【0063】
定着駆動制御手段として機能する制御手段91は、駆動モータの駆動を制御することで定着ローラ68の回転を制御する。定着ローラ69が回転駆動されると、定着ベルト63、加熱ローラ62が従動回転し、さらに加圧ローラ69が従動回転する。
【0064】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sをガイド板76によって定着ニップ70に案内し、定着ニップ70に挟み込む態様で通すことで挟持搬送し、加熱加圧して、熱と圧力との作用により、転写紙Sに担持されたトナー像を同転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0065】
このような定着に際し、温度検知手段によって検知された定着ベルト63の温度は制御手段91に入力され、制御手段91は、入力される定着ベルト63の温度に応じてハロゲンヒータ65の駆動制御を行うことで、定着ベルト63の温度を定着に適した温度に維持する。制御手段91は、ハロゲンヒータ65の駆動を制御する点において、加熱手段制御手段として機能する。
定着装置6のその余の点については後述する。
【0066】
トナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーは、図示しない搬送経路を経て、所定の補給量だけ、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられた現像装置80Y、80M、80C、80BKに、現像装置80Y、80M、80C、80BKのそれぞれにおけるトナー消費量に応じた所定の補給量で補給される。
【0067】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKは互いに同様の構成となっている。画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの周囲に、図1中時計方向であるその回転方向B1に沿って、作像手段として、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、クリーニング手段としての感光体クリーニング装置であるクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKと、除電手段としての図示しない除電装置と、帯電バイアス形成のためにAC帯電を行なう帯電ローラ51Y、51M、51C、51BKを備えた帯電手段としての帯電装置79Y、79M、79C、79BKと、2成分現像剤により現像を行う現像手段としての現像装置80Y、80M、80C、80BKとを有している。
【0068】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に固定された図示しないガイドレールに沿って本体99に対して引き出し自在であるとともに、本体99に押し込むことが可能であり、本体99に対して着脱自在に設置されたプロセスカートリッジとなっている。プロセスカートリッジとしての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に押し込むと、画像形成に適した所定の位置に装填され、位置決めされるようになっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことが可能であるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。またプロセスカートリッジの要素である各部の寿命が同等とされているため、不要な交換が防止、抑制され、さらに好ましい構成となっている。
【0069】
このような構成の画像形成装置100において、カラー画像を形成すべき旨の信号がユーザによって入力されると、制御手段91において形成すべき所望の画像であるフルカラー画像に対応した画像情報がメモリに記憶され保持されるとともに、駆動ローラ72が駆動され、転写ベルト11、2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33が従動回転するとともに、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKがB1方向に回転駆動される。
【0070】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、B1方向への回転に伴い、帯電装置79Y、79M、79C、79BKにより帯電バイアスによって表面を所定の極性に一様に帯電され、光走査装置8からの、同図の紙面垂直方向に略一致する主走査方向への、上方へ向けた、光変調されたレーザー光の露光走査すなわち照射により、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像による、画像情報に応じた潜像を形成され、この静電潜像を現像装置80Y、80M、80C、80BKの現像バイアス及びトナーの帯電によりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーにより現像されて顕像化すなわち可視像化され、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像によって構成された単色画像が形成される。
【0071】
なお、制御手段91は、光走査装置8を駆動して各色に対応した静電潜像を形成するにあたり、メモリに記憶した画像情報である画像データをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の色情報に分解し、各色に分解された単色の画像情報である各色画像情報に基づいて光走査装置8を駆動する。
【0072】
現像により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、A1方向の最上流側に位置するイエロートナー画像から、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像の順で、順次、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって形成される1次転写バイアスにより、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に1次転写されて色重ねが行われ、転写ベルト11上にはフルカラーのトナー画像である合成カラー画像が形成され担持される。
【0073】
一方、カラー画像を形成すべき旨の信号の入力に伴い、シート給送装置61に備えられた給送ローラ3が回転して転写紙Sを繰り出すとともに1枚ずつ分離して給紙路32に送り込み、給紙路32に送り込まれた転写紙Sは図示しない搬送ローラでさらに搬送されレジストローラ対4に突き当てられた状態で一旦停止する。
【0074】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、言い換えると給紙タイミングを計られて、レジストローラ対4が回転し、2次転写部57では、転写ベルト11に担持されている合成カラー画像が、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sに密着し、2次転写バイアス及びニップ圧の作用によって他の媒体である転写紙Sに一括して2次転写され、記録される。
【0075】
転写紙Sは2次転写装置5によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着装置6において定着ベルト63と加圧ローラ69との間の定着ニップ70すなわち定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像すなわち合成カラー画像を定着される。
【0076】
定着装置6を通過した、合成カラー画像を定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て本体99外に排出され、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。
【0077】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写後に残留し不要なトナーとなった残留トナーである転写残トナーをクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより表面から拭い去られて除去されることで清掃され、除電装置によって除電され、表面電位を初期化されて、帯電装置79Y、79M、79C、79BKによる次の帯電に供される。クリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0078】
2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード13aによって転写後にその表面に残留した不要なトナーすなわち残留トナーである転写残トナーを拭い去られ、除去されてクリーニングされ、次の転写に備える。クリーニング装置13により転写ベルト11の表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0079】
このような画像形成を行うに際し、定着装置6においては、定着動作中の定着ベルト63の温度を定着に適した温度に保つことが、良好な定着を行ううえできわめて重要である。この点、良好な定着が行われているか否か、すなわち、定着性能を示す指標の1つとして、定着画像の光沢度が一般的に用いられている。光沢度を向上させるためには、定着部材など、トナー像と接する部材の、トナー像と離れる際の温度を、ある程度低くすることが好ましい。これは、トナー像からかかる部材を引き剥がすときのトナー粘度は、温度が高いほど低いが、粘度が低いとトナー同士の凝集力よりもトナーとかかる部材との接着力のほうが強くなり、その結果、トナー像からかかる部材を引き剥がすときにトナーがかかる部材に引張られて尾を引くような作用を受けトナー像表面すなわち画像表面が荒れ、画像表面の反射率が低下して光沢度が落ちるためである。その一方で、定着を行うための基本的な条件として、トナーを溶融させる熱量を確保する必要がある。
【0080】
よって、光沢度を確保した良好な定着を行うには、次の条件を満たすことを要する。
(1)トナーを十分に溶かすために必要な熱量を与える
(2)トナー像が引き剥がされるときの温度を、光沢度を満たす温度以下またはこの温度より小さい温度とする
【0081】
そこで、定着装置6では、上述した定着ベルト63の各位置における温度と、次の温度T1、T2とを用いて、条件(1)、(2)を満たすための温度条件付与手段を備えている。
T1:定着ニップ70において定着に必要とされる熱量を与えるための、定着ニップ70におけるC1方向に沿った温度Toの、定着ニップ70のC1方向長さにおける平均値T1
T2:転写紙Sに定着された画像であるトナー像に必要とされる光沢度を得るためのニップ出口外周面位置の上限温度
【0082】
ここで、平均値T1に関してより詳しく説明する。定着ニップ70において定着に必要とされる熱量の下限値は決まっている。その一方で、定着ニップ70におけるC1方向に沿った温度Toは、C1方向において必ずしも一定ではない。そこで、かかる下限熱量を与えるための、C1方向に沿った温度Toの積分値を、C1方向における定着ニップ70の長さで除した値を、平均値T1としている。
【0083】
したがって、温度条件付与手段は、定着装置6において、条件(1)が満たされ定着性が確保されるように、
(Tfo+Tbo)/2>T1・・・式(1)
を満たすとともに、
条件(2)が満たされ光沢性が確保されるように、
Tbo<T2・・・式(2)
を満たすようになっている。
【0084】
温度条件付与手段は、具体的に、以下明らかとなるように、定着ベルト63の駆動を調整する手段、定着ベルト63をその表面から加熱する手段、定着ベルト63をその裏面から冷却する手段等の何れか、あるいはこれらの組み合わせによって実現されている。
【0085】
ここで、式(1)、式(2)を満たすうえで好適な条件(3)を説明する。
条件(3)は、
Tfo>Tfi・・・式(3)
を満たすというものである。
【0086】
図4を参照して、式(3)を満たすか否かによって、式(1)、式(2)がともに満たされるか否かに影響を与えることを説明する。同図(a)は、式(3)が満たされている場合を示しており、同図(b)は、式(3)が満たされていない場合を示している。
【0087】
まず同図(b)の場合について説明すると、ニップ部入口において温度To<温度Tiであって、定着ベルト63の裏面温度が表面温度より高く、転写紙Sが定着ニップ70を通過する過程において、転写紙Sが定着ベルト63から奪う熱量を、定着ベルト63の裏面から表面に向けて移動する熱の熱量によって補填するため、式(1)は満たされて定着性の確保には好ましくなっているが、定着ニップ70の前後での温度Toの落ち込みすなわち温度Tfo→温度Tboの幅が小さくニップ部出口における温度Tboが低下しにくいため、式(2)が満たされず光沢性が不十分となっている。
【0088】
これに対し、式(3)を満たす同図(a)の場合は、ニップ部入口において温度To>温度Tiであって、定着ベルト63の表面温度が裏面温度より高く、転写紙Sが定着ニップ70を通過する過程において、転写紙Sが定着ベルト63から奪う熱量が、定着ベルト63の表面の熱量によって補填されるため、式(1)は満たされて定着性が確保されるとともに、このとき、定着ベルト63の裏面から表面に向けた熱の移動が生じにくいことから、かかる補填によって定着ニップ70の前後での温度Toの落ち込みすなわち温度Tfo→温度Tboの幅が大きくなっており、ニップ部出口における温度Tboが容易に低下するため、式(2)が満たされて光沢性も確保されている。
【0089】
式(3)を満たすうえで好適な条件(4)を説明する。
条件(4)は、
Tfo−2>Tfo−1>Tfo・・・式(4)
を満たすというものである。
式(4)が満たされる場合というのは、温度Toが、C1方向の上流側から下流側に向けて、ニップ部入口まで漸減するというものである。すなわち、式(4)が満たされる場合、C1方向において定着ニップ70の上流側近傍の領域において、定着ベルト63表面からの放熱により、定着ベルト63がC1方向に移動するにつれて温度Toが低下するということである。かかる放熱状態が形成される場合は、定着装置6のように定着ベルト63が裏面側から加熱される構成においては、定着ベルト63の蓄熱が小さい場合たとえば定着ベルト63の熱容量が小さい場合や、定着ベルト63の熱伝導性が良く空気中への放熱性が高い場合と考えられる。
【0090】
そこで、この場合の温度条件付与手段は、温度Toを、C1方向の上流側から下流側に向けて、ニップ部入口まで漸減させる領域を形成するものであり、定着ベルト63がそのC1方向への移動により、かかる放熱状態が形成されるように、定着ベルト63の熱容量、熱伝導性と、定着ベルト63の回転速度とを関係付けたものである。定着ベルト63の厚みは厚いほど放熱効率が低下するため単位時間あたりの放熱量が小さくなり、定着ベルト63の材質によって定まる熱伝導性は大きいほど放熱の度合いが大きいため単位時間あたりの放熱量が大きくなり、定着ベルト63の回転速度は遅いほど、放熱時間が長くなり、単位時間当たりの放熱量が多くなることを利用し、これらの兼ね合いにより、かかる領域を形成する。
【0091】
したがって、この場合の温度条件付与手段は、定着ベルト63の熱容量、熱伝導性に関する条件と、定着ベルト63の回転速度を、かかる条件に応じて設定する、定着駆動制御手段として機能する制御手段91とを含む。
【0092】
このような温度条件付与手段を備え条件(4)が満たされる定着装置6により、このような温度条件付与手段を備えない従来の定着装置と比べて、条件(1)、条件(2)がともに満たされやすくなることを説明する。なお、この説明は、C1方向における定着ベルト63の、TkfからTkbまでの区間、TkbからTfまでの区間、TfからTbまでの区間、TbからTkfまでの区間の、それぞれの区間における、定着ベルト63の、C1方向のおける或る位置の温度To、温度Tiの推移を説明しながら行う。このことは、後述する、温度条件付与手段の各構成例を採用した定着装置6の説明においても同様である。
まず、かかる従来の定着装置に備えられた定着ベルト63の温度推移について、図12を参照しながら説明する。
【0093】
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、熱を与えられておらず、その温度Tiは緩やかに下降し、温度Toは定着ベルト63の蓄熱が表面に現れてきて緩やかな上昇を示す。なお、これらの上昇曲線は定着ベルト63の熱容量、熱伝導性、回転速度により決まる。ただし、回転速度は同図のファクターには含まれていない。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、定着ベルト63自体の蓄熱があるので温度降下の度合いは図4(b)に沿って説明したのと同様に比較的緩やかであり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率に変化が現れるものの温度Toと同様に蓄熱分のため温度降下の度合いは緩やかである。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(b)に沿って説明したように、条件(1)は満たされて定着性は確保されているが、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が小さく、温度Tboが低下しにくいため、条件(2)が満たされず光沢性が不十分となっている。
【0094】
これに対し、かかる温度条件付与手段を備えた、定着ベルト63が定着ニップ70へ到達したときの蓄熱量を減らした定着装置6では、図5に示すように、次のような温度推移となる。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。ただし、定着ベルト63の熱容量を減らしているので、図12に示した場合と比べて、温度Ti、温度Toの勾配は急である。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、熱を与えられておらず、その温度Tiは緩やかに下降するが、定着ベルト63の熱容量を減らしているので図12に示した場合と比べて下降勾配は急である。温度Toは定着ベルト63の蓄熱が定着ベルト63の表面に現れて来ることによって図12に示した場合よりもよりも急な上昇を示すが、その後、定着ベルト63の熱量を減らしていることにより、上昇度が緩やかとなり、さらにその後は温度下降に転じている。よって、条件(4)が満たされている。この区間では、温度Ti、温度Toがこのような推移を示す結果、温度Tiと温度Toとの温度差は図12に示した場合とに比べて明らかに小さくなっているとともに、C1方向における定着ニップ70の上流側近傍の領域において温度Toは下降している。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、定着ベルト63自体の蓄熱がないので温度降下の度合いは図12に示した場合よりも急激であり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率に変化が現れるものの定着ベルト63の熱容量が小さいので温度変化の反応が早く、急激に低下して条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0095】
図5に沿って説明した定着装置6と、図12に沿って説明した定着装置との対比により、表1における(Tfo+Tbo)/2>T1の欄に示される結果が確認された。また、同表における(Tfo+Tbo)/2<T1の欄に示される結果も、発明者による実験によって確認されている。
【0096】
【表1】
【0097】
次に、すでに述べた条件(3)を満たす構成について説明する。
かかる構成としては、図6に示す構成が挙げられる。
同図に示されている定着装置6は、TkbからTfまでの区間に、定着ベルト63を裏面側から冷却する冷却手段66を有している。冷却手段66は、C1方向において、定着ベルト63が加熱ローラ62に当接して定着ベルト63がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ベルト63の裏面に当接した円筒状の回転体によって形成された冷却部材である金属製の冷却ローラ67を有している。
冷却ローラ67は定着ベルト63に当接して定着ベルト63の熱を奪うことで定着ベルト63を冷却する。冷却ローラ67は、定着ベルト63に従動回転するように、ハウジング85に回転自在に支持されている。
このような構成により、冷却手段66は、温度Tiをかかる区間で低下させ、これによって、式(3)が満たされ、条件(3)が満たされる。
【0098】
図7に示すように、冷却手段66は、冷却ローラ67の内部に配設され、冷却ローラ67の熱伝導性を向上することで定着ベルト63裏面の冷却効率を上昇させるヒートパイプ77と、冷却ローラ67の両端部を冷却しヒートパイプ77の両端部を冷却することでかかる冷却効率をさらに向上させる冷却部材冷却手段としてのファン78とを有する構成であっても良い。これらヒートパイプ77、ファン78はいずれか一方のみを備えていても良い。ファン78は冷却ローラ67の一方の端部に対応して設けられたものであっても良い。
【0099】
冷却ローラ67は少なくとも一方の端部に放熱を促進するためのフィンを有していても良い。定着部材は冷却ローラ67と異なり固設され定着ベルト63の裏面に摺接する態様で配設されていても良い。冷却ローラ67は定着ベルト63に適切なテンションを付与するベルトテンション付与部材としての機能を有するものであっても良い。
【0100】
冷却手段66は、定着画像に要求される光沢度に応じて定着部材を定着ベルト63の裏面に接離させる接離手段を有していても良い。このような接離手段は、転写紙Sが定着ニップ70を通過するタイミングに合わせて定着部材を定着ベルト63の裏面に接離させるように構成されていても良い。接離手段のこのような駆動制御は制御手段91によって行わせることが可能であり、制御手段91は、このような駆動制御を行う場合、冷却調整制御手段として機能する。
【0101】
このような構成の定着装置6においては、温度条件付与手段は、冷却手段66を含み、これに加えて制御手段91が冷却調整制御手段として機能するときはこの冷却調整制御手段として機能する制御手段91を含む。
【0102】
かかる温度条件付与手段を備えた定着装置6では、図8に示すように、定着ベルト63が次のような温度推移となる。なお、この定着装置6は、かかる温度条件付与手段を備えていることの他は、以下において言及しない限り、図12に沿って温度推移を説明した定着装置の構成と同様となっているものとする。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。ただし、この定着装置6は、次の区間において定着ベルト63の吸熱を行う冷却手段66を有しているため、この分、この区間で定着ベルト63の温度を大きく上昇させるべく、ハロゲンヒータ65によって定着ベルト63に与える熱量を増加している。そのため、温度Ti、温度Toともに、その勾配は図12に示した場合より急であり、図5に示した場合と同等となっている。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、途中で冷却手段66によって裏面側から冷却されるようになっている。定着ベルト63は、熱を与えられておらず、温度Tiは、この区間の初めのほうは、緩やかに下降するが、冷却手段66によって冷却されると急激に下降する。温度Toは定着ベルト63の蓄熱が定着ベルト63の表面に現れて来ることによって緩やかな上昇を示すが、温度Tiの冷却の影響が定着ニップ70の近傍で現れて下降に転じている。これにより、条件(4)が満たされているとともに、C1方向における定着ニップ70の上流側端部において温度Tiと温度Toとの大小が逆転して式(3)が満たされ、条件(3)が満たされている。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、冷却手段66によって定着ベルト63の蓄熱が低下していることで温度降下の度合いは急激であり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率が大きくなる変化が現れ、急激に低下して条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(3)が満たされ、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0103】
さらに別の構成の温度条件付与手段を備えた定着装置6における定着ベルト63の温度推移を図9に示す。この定着装置6における温度条件付与手段は、定着駆動制御手段として機能する制御手段91および加熱手段制御手段として機能する制御手段91を含み、この制御手段91により、転写紙Sが定着ニップ70を通過するタイミングに合わせてハロゲンヒータ65による定着ベルト63の加熱を低下、具体的には停止させるようになっている。その他は、以下において言及しない限り、図12に沿って温度推移を説明した定着装置の構成と同様となっているものとする。なお、図9は、かかるタイミングすなわち画像形成動作が行われ定着ニップ70に転写紙Sが通される定着動作中の定着ベルト63の温度の推移を示しており、同図に示す状態となる前に、定着ベルト63の昇温動作が予め行われる。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、C1方向上流側の端部の温度Tkfが温度Ti、温度Toともに高くなるように制御が行われる。これは、ハロゲンヒータ65による定着ベルト63の加熱を停止した状態で条件(1)を満たし定着性を確保するべく、定着ベルト63による事前の蓄熱を行うためである。ハロゲンヒータ65は停止しているが、加熱ローラ62の予熱および定着ベルト63の蓄熱で温度Ti、温度Toともに低下していない。上述したように、昇温動作が予め行われていることで温度Tiと温度Toとはほぼ一致した状態となっており、この状態が維持されたまま推移する。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、温度Ti、温度Toともに、緩やかに推移する。温度Tiと温度Toとはほぼ一致した状態で推移する。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、温度Tiと温度Toとがほぼ一致していることにより、温度To、温度Tiともに温度降下の度合いは急激であり、条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示す。この温度Tkfは、上述の温度Tkfから温度Tkbまでの区間における温度Tkfよりも低下しているため、定着駆動制御手段として機能する制御手段91によりハロゲンヒータ65を動作させた状態に戻し、定着ベルト63を、かかる区間における温度Tkfに戻るまで定着駆動制御手段として機能する制御手段91により空回転させる。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
なお、ハロゲンヒータ65により定着ベルト63の加熱を低下させる態様は、停止に限られず、条件(1)、(2)を満たす範囲において低下させるものであれば良い。
【0104】
図10に、定着装置6の変形例を示す。
同図に示した定着装置6は、加熱源であるハロゲンヒータ65が、定着ベルト63の表面側言い換えると外周面側に配設された外部ローラ加熱方式となっており、ハロゲンヒータ65を内蔵しハウジング85に回転自在に支持され定着ベルト63に従動回転する定着加熱部材としての定着加熱ローラ73を有している。このように、ハロゲンヒータ65は、定着ベルト63をその表面側から加熱する定着表面加熱手段として備えられており、この定着表面加熱手段が温度条件付与手段として備えられている。
【0105】
このような構成の定着装置6では、図6、図7に示した構成と同様に、条件(3)が満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0106】
なお、図10に示した構成では、加熱手段として、定着表面加熱手段のみを有しているが、定着表面加熱手段とともに、図2、図6に示した構成と同様の、定着ベルト63を裏面側から加熱する定着裏面加熱手段を有していても良く、これらが温度条件付与手段に備えられていても良い。定着加熱ローラ73は定着ベルト63をクリーニングする定着クリーニング部材としての機能を有するものであっても良い。
【0107】
図11に示すように、定着部材は、無端ベルト状でなく、ローラ状の定着ローラ81であっても良い。すなわち、定着装置6は、ベルト定着タイプでなく、ローラ定着タイプであってもよい。この構成では、定着部材である定着ローラ81自身が、加圧ローラ69と互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、加圧ローラ69とともに転写紙Sを加圧した状態を維持しながら搬送する定着ニップ70を形成するニップ部形成部材として機能するようになっている。
【0108】
この構成において、温度条件付与手段は、図10に示した場合と同様に、定着表面加熱手段として機能するハロゲンヒータ65を有している。これにより、条件(3)が満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0109】
とくに図11(b)に示す構成は、図6、図7に示した冷却手段66と同様の冷却手段66を備えている。冷却ローラ67は、C1方向において、定着加熱ローラ73が定着ローラ81に当接して定着ローラ81がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ローラ81の裏面に当接し、この位置で、定着ローラ81を裏面から冷却する。これにより、条件(3)がより確実に満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0110】
なお、ハロゲンヒータ65は、図6に示した場合と同様に、定着ローラ81の内部に配設されていてもよく、このような構成においては、冷却ローラ67により、ハロゲンヒータ65から定着ローラ81に向けた熱が遮蔽される。よって、この構成によっても、冷却ローラ67は、C1方向において、定着ローラ81がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ローラ81の裏面に当接し、この位置で、定着ローラ81を裏面から冷却することとなる。
【0111】
以上述べたように、温度条件付与手段は、種々の構成を採ることが可能であり、条件(1)、条件(2)を少なくとも満たせば、以上述べた種々の構成を適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0112】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
たとえば、ニップ部形成部材は、以上述べた各構成例においては回転する回転部材として説明したが、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送する1つのニップ部を形成するのであれば、回転部材でなく、固定された板状等の部材であっても良い。
【0114】
また、加圧部材は、加圧ローラ69のようなローラ状でなく、ベルト状であっても良い。ただし、加圧部材をベルト状とするときは、加圧部材と別に、もう一方のニップ部形成部財と対を成すように加圧部材を挟んで対向して配設されるニップ部形成部材を要する。
【0115】
本発明を適用する画像形成装置は、タンデム型であっても、上述した間接転写方式でなく、直接転写方式を採用可能である。また、画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することが可能であるし、他にも、シート状の有機感光体等の像担持体上に各色のトナー像を現像するものの色重ね自体は別にある中間転写体を用いる方式、あるいは中間転写体を複数用いる方式、中間色トナーを用いる方式等の画像形成装置にも同様に適用することが可能である。
【0116】
その他、画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
【0117】
このような画像形成装置に用いる画像形成物質として現像剤を用いる場合、この現像剤は、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤であっても良い。さらには、画像形成物質は、定着を要するものであれば、インク等であっても良い。
【0118】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0119】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
6 定着装置
63 定着部材、温度条件付与手段、定着ベルト
65 加熱手段、定着表面加熱手段、温度条件付与手段
66 温度条件付与手段、冷却手段
68 ニップ部形成部材
69 ニップ部形成部材
70 ニップ部
81 ニップ部形成部材、定着部材
91 温度条件付与手段
100 画像形成装置
C1 搬送方向
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【特許文献1】特開2004−325936号公報
【特許文献2】特許第4300946号公報
【特許文献3】特開2009−288775号公報
【特許文献4】特開2010−164935号公報
【特許文献5】特開2008−20520号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置であって、適正な光沢度による定着を行うための定着装置およびこの定着装置を有するかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置では、定着性能を示す指標の1つとして、定着画像の光沢度が用いられている。すなわち、定着画像の光沢度が適切であるか否かが、かかる定着装置において高画質の定着が行われているか否かの要素の1つとして用いられている。
【0003】
そこで、かかる定着装置において、定着画像の光沢度を適正化するための技術が種々提案されている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献5〕参照)。
具体的には、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照。以下、「技術1」という。)、この技術において特に第2のニップにおいて用紙を冷却する技術(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕参照。以下、「技術2」という。)、この技術において特に用紙の冷却を2つのベルトに挟持搬送させて行う技術(たとえば、〔特許文献1〕参照。以下、「技術3」という。)、光沢を与えるために定着ニップ部の圧を調整する技術(たとえば、〔特許文献2〕、〔特許文献4〕参照。以下、「技術4」という。)、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献3〕参照。以下、「技術5」という。)、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術(たとえば、〔特許文献5〕参照。以下、「技術6」という。)、定着後に用紙から剥離されるシートを用紙と一体化させて定着ニップ部に通紙する技術(たとえば、〔特許文献5〕参照。以下、「技術7」という。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの技術1〜7には、それぞれ問題がある。すなわち、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術1と、光沢を与えるために定着ニップ部の圧を調整する技術4と、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術6とには、第2のニップ部において用紙の冷却を行う場合の技術2を含めて、装置が大型化、複雑化、高価格化するという問題がある。また、定着ニップ部を通過した用紙を、光沢を与えるための第2のニップ部に通紙する技術1と、光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、用紙の搬送をループさせ同一の用紙を同一の定着ニップ部に2回通紙する技術6とには、定着装置において消費されるエネルギーが増加するという問題がある。また用紙の冷却を2つのベルトに挟持搬送させて行う技術3には、用紙の搬送過程においてニップ圧が解除されるため、ベルトと用紙との位置ずれが発生しやすく、画像の乱れ、用紙のしわ等の不具合が発生し得るという問題がある。また光沢を与えるための剤とともに用紙を定着ニップ部に通紙する技術5と、定着後に用紙から剥離されるシートを用紙と一体化させて定着ニップ部に通紙する技術7とには、かかる剤、シートを必要とすることによるランニングコストの上昇という問題がある。
【0005】
上述した、光沢を与えるために用紙を冷却する技術2は、定着の際に画像に当接する部材の、画像から剥離されるときの温度が、画像の光沢度を左右するという現象に着目したものであるが、この技術2は、上述のように、第2のニップ部における冷却によって実現されているため、第2のニップ部を必須とすることから、とくに、装置が大型化、複雑化、高価格化するという問題が避けられない。また、ニップ部を2つのベルトによって構成して定着が行われる用紙の搬送を行う技術3では、用紙を2つのベルトで挟持搬送するために、上述のように、ニップ圧が解除される部分が存在することにより、画像の乱れ、用紙のしわ等の、定着性に大きく低下させるという問題を発生させ得るものとなっている。なお、この後者の問題は、2つにベルトによって構成されるニップ部が第2のニップ部であるか否かによらず生じる問題である。
【0006】
したがって、定着画像の光沢度を適正化するための技術の要件としては、第2のニップにおいて冷却を行うこと、ニップ部においてニップ圧が維持されるものであることが重要であり、この条件を満たしながら、上述の各問題を回避することが望ましい。
【0007】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる定着装置であって、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、適正な光沢度による定着を、ランニングコストの上昇を回避するとともに、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら行う定着装置およびこの定着装置を有するかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、Tfo>Tfiを満たすために備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の定着装置において、前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置において、前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置にあるので、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0017】
前記温度条件付与手段は、前記温度Tfoと、前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、Tfo>Tfiを満たすために備えられていることとすれば、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部においてかかる温度の関係を設定することにより、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0018】
前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することとすれば、定着部材の表面側の温度を上昇させるとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0019】
前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することとすれば、定着部材の放熱状態を適正化するとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0020】
前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることとすれば、定着ベルトによって形成された、ニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0021】
前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することとすれば、定着部材の裏面側の温度を低下させるとともにニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0022】
前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることとすれば、ニップ圧が維持されるとともに定着の際にかかる搬送方向下流側端部の温度が大きく低下するニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成に寄与するとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら定着を行うことを図った定着装置を提供することができる。
【0023】
本発明は、かかる定着装置を有する画像形成装置にあるので、定着装置においてニップ圧が維持されるニップ部を備え、このニップ部により、光沢度を適正として、良好な定着を行い、良好な画像形成を行うとともに、ランニングコストの上昇を回避しながら、装置の大型化、複雑化、高価格化を防止ないし抑制しながら画像形成を行うことを図った画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した定着装置およびこれを有する画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した定着装置の一部の拡大概略正面図である。
【図3】図2に示した定着装置のさらに一部の拡大概略正面図である。
【図4】図1に示した定着装置に備えられた定着部材の表面の温度と裏面の温度との関係により定着に影響を与えることを示した概念図である。
【図5】本発明を適用した定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図6】本発明を適用した定着装置の別の構成例を示す概略図である。
【図7】図6に示した定着装置の一部の変形例を示す概略平面図である。
【図8】図6に示した定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図9】本発明を適用したさらに別の構成例の定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これらにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【図10】本発明を適用した定着装置のまたさらに別の構成例を示す概略図である。
【図11】本発明を適用した定着装置のさらにまた別の構成例を示す概略図である。
【図12】従来の定着装置における定着部材の表面の温度と裏面の温度との推移と、これにより定着が影響を受けることを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、フルカラーのカラーレーザプリンタであるが、他のタイプのプリンタ、ファクシミリ、複写機、印刷機、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
【0026】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を像形成物質としてのトナーを担持することで形成可能な第1の像担持体としての潜像担持体である感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0027】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100の本体99の図示しないフレームに回転自在に支持された可撓性を有する第2の像担持体としての中間転写体たる無端状のベルトである中間転写ベルトとしての転写ベルト11の移動方向であって図1において反時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で等間隔で並列に並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0028】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するためのトナー像形成手段である画像形成手段としての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0029】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端のベルトとして構成された転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0030】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である記録材としての用紙たる転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式言い換えると間接転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の画像形成装置である。このように画像形成装置100は画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKを横に並べて配置したタンデム画像形成部60を備えている。
【0031】
転写ベルト11は、その下側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写部58を形成している。
【0032】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された一次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0033】
転写ベルト11は、A1方向に直交する、図1の紙面に垂直な方向に対応した幅方向において、A4横サイズの転写紙Sに対応した幅を有している。よって、画像形成装置100は、最大でA3縦サイズの転写紙Sに対する画像形成が可能となっている。
【0034】
画像形成装置100は、本体99内に、4つの画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えたベルトユニットである中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、図1における転写ベルト11の右側において転写ベルト11に対向して配設された2次転写手段としての2次転写装置5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの下方に対向して配設された潜像形成手段としての光書込みユニットである書き込みユニットとしての露光装置たる光走査装置8とを有している。
【0035】
画像形成装置100はまた、本体99内に、転写ベルト11と2次転写装置5との間の転写ニップ部たる転写ニップとしての2次転写ニップである2次転写部57に向けて搬送される転写紙Sを多数枚積載可能な給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写部57に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0036】
画像形成装置100はまた、本体99内に、2次転写部57でトナー像を転写された転写紙Sに同トナー像すなわち未定着トナー画像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての熱定着装置である定着装置6と、シート給送装置61から送り出された転写紙Sを搬送する図示しない搬送ローラを備え、転写紙Sの進行方向において中途部にレジストローラ対4、定着装置6を順に配設された給紙路32と、かかる進行方向において給紙路32においてさらに下流側の終端に位置し定着済みの転写紙Sである画像出力物を本体99の外部に排出する排出ローラである排紙ローラ対としての排紙ローラ7と、転写ベルトユニット10の上方に配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9BKと、本体99の上側に配設され排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17とを有している。
【0037】
画像形成装置100はまた、本体99内に、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動手段としての駆動モータを含む駆動装置と、画像形成によって生じた、不要となったトナーを貯留する図示しない廃トナーボトルと、画像形成装置100の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段91とを有している。
【0038】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ72と、張架ローラとしての2次転写対向ローラ74と、駆動ローラ72及び2次転写対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する支持ローラとしての張架ローラ75、33と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11表面をクリーニングする中間転写体クリーニング装置であるベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13とを有している。
【0039】
転写ベルトユニット10はまた、駆動ローラ72の図示しない回転軸に連結され駆動ローラ72を回転駆動する駆動源としての図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKにそれぞれ独立して1次転写バイアスを印加する図示しない第1の転写バイアス印加手段としての電源及び制御手段91の一機能として実現された第1の転写バイアス制御手段とを有している。
【0040】
駆動ローラ72、2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33は、転写ベルト11を回転搬送可能に掛け渡し、掛け回した支持ローラとなっている。2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33は、駆動ローラ72によって回転駆動される転写ベルト11に連れ回りする従動ローラとなっている。支持ローラ72、74、75、33のうち、張架ローラ33のみが転写ベルト11の外周面である表面に当接し、他の支持ローラ72、74、75は、転写ベルト11の内周面である裏面に当接している。
【0041】
1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ転写ニップとしての1次転写ニップを形成する。この1次転写ニップは、転写ベルト11の、駆動ローラ72と張架ローラ75との間に張り渡した部分において形成されている。駆動ローラ72と張架ローラ75とは、1次転写ニップを安定化する機能を有する。
【0042】
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界や、2次転写対向ローラ74と後述する2次転写ローラ64との間で転写ベルト11を挟み付ける圧力であるニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
【0043】
2次転写対向ローラ74は、転写ベルト11を介して2次転写ローラ64を当接されており、2次転写ローラ64に対向する位置で転写ベルト11を巻き掛けて2次転写部57を形成している。
【0044】
張架ローラ75は、2次転写部57において転写ベルト11と2次転写ローラ64とによって形成されるA1方向上流側の楔状の空間を、転写紙Sが2次転写部57に滑らかに進入するように形成する入口ガイド材としての機能を有する。
張架ローラ33は、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
【0045】
クリーニング装置13は、図1において駆動ローラ72の左方に配設されている。クリーニング装置13は、駆動ローラ72に対向する位置、すなわち、A1方向において2次転写部57の下流側且つ1次転写部58の上流側の位置で転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブレード13aと、クリーニングブレード13aをその内部に収容したケース13bとを有している。
【0046】
クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブレード13aで掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
転写ベルトユニット10は、本体99に対して一体で着脱可能となっている。
【0047】
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部に配設されている。
シート給送装置61は、最上位の転写紙Sの上面に押圧される給紙ローラとしての給紙コロである給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が所定のタイミングで反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sを1枚ずつ分離してレジストローラ対4に向けて繰り出し、給送するようになっている。この点、給紙ローラ3は分離ローラとしても機能する。
シート給送装置61から送り出された転写紙Sは、給紙路32を経てレジストローラ対4に至り、レジストローラ対4のローラ間に挟まれる。
【0048】
2次転写装置5は、2次転写対向ローラ74に対向して配置されている。2次転写装置5は、2次転写対向ローラ74との間で転写ベルト11を挟むようにして配設され、転写ベルト11に従動回転し、転写ベルト11との間を通過する転写紙Sに転写ベルト11上のトナー像を転写可能とするための2次転写部材である転写部材としての転写ローラたる回転体である2次転写ローラ64を有している。
【0049】
2次転写装置5はまた、A1方向において2次転写部57の上流側に配設され、レジストローラ対4によって2次転写部57に向けて繰り出された転写紙Sを2次転写部57に案内する態様で転写紙Sの搬送時のガイドを行う紙ガイドとしてのガイド板38と、A1方向において2次転写部57の下流側に配設され、2次転写部57において転写ベルト11上のトナー像を転写された転写紙Sを2次転写ローラ64から分離して定着装置6に向けて搬送する分離板39とを有している。
【0050】
2次転写ローラ64と、転写ベルト11の2次転写部57近傍の一部とは、給紙路32に臨むように配設されており、2次転写部57を形成している。2次転写ローラ64は転写ベルト11に当接して2次転写部57を形成する当接部材として機能する。このように、2次転写ローラ64と転写ベルト11とが対向し、密着した領域が2次転写部57となっている。
【0051】
光走査装置8は、図示を省略するが、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに照射されるレーザー光の光源と、光源から出射されたレーザー光を偏向走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって偏向走査されたレーザー光を透過するf−θレンズと、f−θレンズを透過したレーザー光を感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて反射する反射ミラー等を備えている。
【0052】
図1または図2に示すように、定着装置6は、2次転写部57において転写ベルト11から未定着画像であるトナー像を転写され担持する方の転写紙Sの面側に位置する無端ベルト状の定着部材である定着回転体としての、C1方向に回転する定着ベルト63と、定着ベルト63を張架した定着ローラ68および加熱ローラ62と、加熱ローラ62の内部に配設され加熱ローラ62を加熱することで定着ベルト63を加熱するための加熱手段である定着加熱手段としての加熱ヒータであるハロゲンヒータ65とを有している。
【0053】
定着装置6はまた、定着ローラ68に対向する位置において定着ベルト63に加圧された状態で当接するように配設され、転写紙Sのトナー像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧部材である加圧回転体としての中空の加圧ローラ69と、2次転写部57において転写ベルト11からトナー像を転写された転写紙Sを、定着ベルト63と加圧ローラ69とが互いに当接することによって形成されたニップ部としての定着ニップ70に向けて案内する案内部材としてのガイド板76とを有している。
【0054】
定着装置6はまた、図示を省略するが、定着ベルト63の回転方向であるC1方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から定着ベルト63から剥離して排出ローラ7に向けて定着装置6から排出するための分離部材と、加圧ローラ69の回転方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から加圧ローラ69から剥離する分離部材と、定着ベルト63の表面温度を検知する、図示しない定着温度検知手段とを有している。
【0055】
定着装置6はまた、定着ローラ68の図示しない回転軸に連結され定着ローラ68を回転駆動する駆動源としての図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、以上述べた各構成を囲繞した図1に示すハウジング85と、制御手段91の一機能として実現され駆動モータの駆動を制御する定着駆動制御手段とを有している。
【0056】
定着ベルト63は、ニップ部70において、その表面すなわち加圧ローラ69に対向した面とその裏面すなわち定着ローラ68および加熱ローラ62に当接する側の面のうち、表面側が、転写紙Sの、未定着トナー像による画像を担持した側に面に当接して、転写紙Sを搬送しながら定着を行う。
【0057】
定着ベルト63は、PI(ポリイミド)樹脂からなる層厚90μmのベース層と、このベース層上に順次積層された、弾性材料で形成された弾性層と、離型層からなる表層とを有する多層構造の無端ベルトである。定着ベルト63の弾性層は、層厚が200μm程度であって、シリコーンゴム製であるが、弾性材料であれば、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の他の材質で形成しても良い。定着ベルト63の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)によって形成されているが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等の、トナーに対する離型性言い換えると剥離性が確保される材質によって形成されていれば良い。
【0058】
図2に示されている、「T」を冠する符号は、定着ベルト63の各位置における温度を示している。具体的には、次のとおりである。
Tf:C1方向における定着ニップ70の上流側端部位置すなわちニップ入口における定着ベルト63の温度(fはfrontの略。以下同じ。)
Tb:C1方向における定着ニップ70の下流側端部位置すなわちニップ出口における定着ベルト63の温度(bはbackの略。以下同じ。)
Tkf:C1方向において定着ベルト63が加熱ローラ62に当接し加熱される領域における上流側端部位置すなわち加熱開始位置での定着ベルト63の温度
Tkb:C1方向において定着ベルト63が加熱ローラ62に当接し加熱される領域における下流側端部位置すなわち加熱終了位置での定着ベルト63の温度
【0059】
温度Tf、Tbは、より詳細には、図3に示すように分けられる。
Tfo:Tfのうち定着ベルト63の表面すなわちニップ入口外周面位置の温度(oはoutsideの略。以下同じ。)
Tfi:Tfのうち定着ベルト63の裏面すなわちニップ入口内周面位置の温度(oはinsideの略。以下同じ。)
Tbo:Tbのうち定着ベルト63の表面すなわちニップ出口外周面位置の温度
Tbi:Tbのうち定着ベルト63の裏面すなわちニップ出口内周面位置の温度
【0060】
また、同図において、符号Tfo−1は、定着ベルト63の表面の、ニップ入口外周面位置(温度Tfoの位置)よりも上流側の位置における温度、符号Tfo−2は、この位置(温度Tfo−1の位置)よりもC1方向においてさらに上流側の位置における温度を示している。
なお、定着ベルト63の表面の温度をToまたはToutside、定着ベルト63の裏面の温度をTiまたはTinsideとする。
【0061】
加圧ローラ69は、芯金と、芯金表面にコーティングされたPFAによる離型層とを有する金属パイプローラである。加圧ローラ69の芯金の厚さは0.5mmであり、その材質は鉄であるが、アルミニウム等の他の材質で形成しても良いし、芯金の厚さは0.2〜1.0mmの範囲で設定されればよい。離型層の材質は、PFAに限られるものではない。
【0062】
加圧ローラ69と定着ローラ68とは、これらが互いに圧接されて対向しており、これによって形成された対向位置において、これらによって定着ベルト63を挟持し、定着ローラ68に巻き掛けられた位置における定着ベルト63と加圧ローラ69とを圧接することによって定着ニップ70を形成したニップ部形成部材として機能する。ニップ部形成部材として機能する加圧ローラ69と定着ローラ68とは、これらがローラ状であることで、未定着トナー像からなる画像を定着される転写紙Sを加圧した状態をC1方向において維持しながら搬送し、定着を行う。
【0063】
定着駆動制御手段として機能する制御手段91は、駆動モータの駆動を制御することで定着ローラ68の回転を制御する。定着ローラ69が回転駆動されると、定着ベルト63、加熱ローラ62が従動回転し、さらに加圧ローラ69が従動回転する。
【0064】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sをガイド板76によって定着ニップ70に案内し、定着ニップ70に挟み込む態様で通すことで挟持搬送し、加熱加圧して、熱と圧力との作用により、転写紙Sに担持されたトナー像を同転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0065】
このような定着に際し、温度検知手段によって検知された定着ベルト63の温度は制御手段91に入力され、制御手段91は、入力される定着ベルト63の温度に応じてハロゲンヒータ65の駆動制御を行うことで、定着ベルト63の温度を定着に適した温度に維持する。制御手段91は、ハロゲンヒータ65の駆動を制御する点において、加熱手段制御手段として機能する。
定着装置6のその余の点については後述する。
【0066】
トナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーは、図示しない搬送経路を経て、所定の補給量だけ、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられた現像装置80Y、80M、80C、80BKに、現像装置80Y、80M、80C、80BKのそれぞれにおけるトナー消費量に応じた所定の補給量で補給される。
【0067】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKは互いに同様の構成となっている。画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの周囲に、図1中時計方向であるその回転方向B1に沿って、作像手段として、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、クリーニング手段としての感光体クリーニング装置であるクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKと、除電手段としての図示しない除電装置と、帯電バイアス形成のためにAC帯電を行なう帯電ローラ51Y、51M、51C、51BKを備えた帯電手段としての帯電装置79Y、79M、79C、79BKと、2成分現像剤により現像を行う現像手段としての現像装置80Y、80M、80C、80BKとを有している。
【0068】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に固定された図示しないガイドレールに沿って本体99に対して引き出し自在であるとともに、本体99に押し込むことが可能であり、本体99に対して着脱自在に設置されたプロセスカートリッジとなっている。プロセスカートリッジとしての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に押し込むと、画像形成に適した所定の位置に装填され、位置決めされるようになっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことが可能であるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。またプロセスカートリッジの要素である各部の寿命が同等とされているため、不要な交換が防止、抑制され、さらに好ましい構成となっている。
【0069】
このような構成の画像形成装置100において、カラー画像を形成すべき旨の信号がユーザによって入力されると、制御手段91において形成すべき所望の画像であるフルカラー画像に対応した画像情報がメモリに記憶され保持されるとともに、駆動ローラ72が駆動され、転写ベルト11、2次転写対向ローラ74、張架ローラ75、33が従動回転するとともに、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKがB1方向に回転駆動される。
【0070】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、B1方向への回転に伴い、帯電装置79Y、79M、79C、79BKにより帯電バイアスによって表面を所定の極性に一様に帯電され、光走査装置8からの、同図の紙面垂直方向に略一致する主走査方向への、上方へ向けた、光変調されたレーザー光の露光走査すなわち照射により、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像による、画像情報に応じた潜像を形成され、この静電潜像を現像装置80Y、80M、80C、80BKの現像バイアス及びトナーの帯電によりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーにより現像されて顕像化すなわち可視像化され、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像によって構成された単色画像が形成される。
【0071】
なお、制御手段91は、光走査装置8を駆動して各色に対応した静電潜像を形成するにあたり、メモリに記憶した画像情報である画像データをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の色情報に分解し、各色に分解された単色の画像情報である各色画像情報に基づいて光走査装置8を駆動する。
【0072】
現像により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、A1方向の最上流側に位置するイエロートナー画像から、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像の順で、順次、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって形成される1次転写バイアスにより、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に1次転写されて色重ねが行われ、転写ベルト11上にはフルカラーのトナー画像である合成カラー画像が形成され担持される。
【0073】
一方、カラー画像を形成すべき旨の信号の入力に伴い、シート給送装置61に備えられた給送ローラ3が回転して転写紙Sを繰り出すとともに1枚ずつ分離して給紙路32に送り込み、給紙路32に送り込まれた転写紙Sは図示しない搬送ローラでさらに搬送されレジストローラ対4に突き当てられた状態で一旦停止する。
【0074】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、言い換えると給紙タイミングを計られて、レジストローラ対4が回転し、2次転写部57では、転写ベルト11に担持されている合成カラー画像が、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sに密着し、2次転写バイアス及びニップ圧の作用によって他の媒体である転写紙Sに一括して2次転写され、記録される。
【0075】
転写紙Sは2次転写装置5によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着装置6において定着ベルト63と加圧ローラ69との間の定着ニップ70すなわち定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像すなわち合成カラー画像を定着される。
【0076】
定着装置6を通過した、合成カラー画像を定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て本体99外に排出され、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。
【0077】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写後に残留し不要なトナーとなった残留トナーである転写残トナーをクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより表面から拭い去られて除去されることで清掃され、除電装置によって除電され、表面電位を初期化されて、帯電装置79Y、79M、79C、79BKによる次の帯電に供される。クリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0078】
2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード13aによって転写後にその表面に残留した不要なトナーすなわち残留トナーである転写残トナーを拭い去られ、除去されてクリーニングされ、次の転写に備える。クリーニング装置13により転写ベルト11の表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0079】
このような画像形成を行うに際し、定着装置6においては、定着動作中の定着ベルト63の温度を定着に適した温度に保つことが、良好な定着を行ううえできわめて重要である。この点、良好な定着が行われているか否か、すなわち、定着性能を示す指標の1つとして、定着画像の光沢度が一般的に用いられている。光沢度を向上させるためには、定着部材など、トナー像と接する部材の、トナー像と離れる際の温度を、ある程度低くすることが好ましい。これは、トナー像からかかる部材を引き剥がすときのトナー粘度は、温度が高いほど低いが、粘度が低いとトナー同士の凝集力よりもトナーとかかる部材との接着力のほうが強くなり、その結果、トナー像からかかる部材を引き剥がすときにトナーがかかる部材に引張られて尾を引くような作用を受けトナー像表面すなわち画像表面が荒れ、画像表面の反射率が低下して光沢度が落ちるためである。その一方で、定着を行うための基本的な条件として、トナーを溶融させる熱量を確保する必要がある。
【0080】
よって、光沢度を確保した良好な定着を行うには、次の条件を満たすことを要する。
(1)トナーを十分に溶かすために必要な熱量を与える
(2)トナー像が引き剥がされるときの温度を、光沢度を満たす温度以下またはこの温度より小さい温度とする
【0081】
そこで、定着装置6では、上述した定着ベルト63の各位置における温度と、次の温度T1、T2とを用いて、条件(1)、(2)を満たすための温度条件付与手段を備えている。
T1:定着ニップ70において定着に必要とされる熱量を与えるための、定着ニップ70におけるC1方向に沿った温度Toの、定着ニップ70のC1方向長さにおける平均値T1
T2:転写紙Sに定着された画像であるトナー像に必要とされる光沢度を得るためのニップ出口外周面位置の上限温度
【0082】
ここで、平均値T1に関してより詳しく説明する。定着ニップ70において定着に必要とされる熱量の下限値は決まっている。その一方で、定着ニップ70におけるC1方向に沿った温度Toは、C1方向において必ずしも一定ではない。そこで、かかる下限熱量を与えるための、C1方向に沿った温度Toの積分値を、C1方向における定着ニップ70の長さで除した値を、平均値T1としている。
【0083】
したがって、温度条件付与手段は、定着装置6において、条件(1)が満たされ定着性が確保されるように、
(Tfo+Tbo)/2>T1・・・式(1)
を満たすとともに、
条件(2)が満たされ光沢性が確保されるように、
Tbo<T2・・・式(2)
を満たすようになっている。
【0084】
温度条件付与手段は、具体的に、以下明らかとなるように、定着ベルト63の駆動を調整する手段、定着ベルト63をその表面から加熱する手段、定着ベルト63をその裏面から冷却する手段等の何れか、あるいはこれらの組み合わせによって実現されている。
【0085】
ここで、式(1)、式(2)を満たすうえで好適な条件(3)を説明する。
条件(3)は、
Tfo>Tfi・・・式(3)
を満たすというものである。
【0086】
図4を参照して、式(3)を満たすか否かによって、式(1)、式(2)がともに満たされるか否かに影響を与えることを説明する。同図(a)は、式(3)が満たされている場合を示しており、同図(b)は、式(3)が満たされていない場合を示している。
【0087】
まず同図(b)の場合について説明すると、ニップ部入口において温度To<温度Tiであって、定着ベルト63の裏面温度が表面温度より高く、転写紙Sが定着ニップ70を通過する過程において、転写紙Sが定着ベルト63から奪う熱量を、定着ベルト63の裏面から表面に向けて移動する熱の熱量によって補填するため、式(1)は満たされて定着性の確保には好ましくなっているが、定着ニップ70の前後での温度Toの落ち込みすなわち温度Tfo→温度Tboの幅が小さくニップ部出口における温度Tboが低下しにくいため、式(2)が満たされず光沢性が不十分となっている。
【0088】
これに対し、式(3)を満たす同図(a)の場合は、ニップ部入口において温度To>温度Tiであって、定着ベルト63の表面温度が裏面温度より高く、転写紙Sが定着ニップ70を通過する過程において、転写紙Sが定着ベルト63から奪う熱量が、定着ベルト63の表面の熱量によって補填されるため、式(1)は満たされて定着性が確保されるとともに、このとき、定着ベルト63の裏面から表面に向けた熱の移動が生じにくいことから、かかる補填によって定着ニップ70の前後での温度Toの落ち込みすなわち温度Tfo→温度Tboの幅が大きくなっており、ニップ部出口における温度Tboが容易に低下するため、式(2)が満たされて光沢性も確保されている。
【0089】
式(3)を満たすうえで好適な条件(4)を説明する。
条件(4)は、
Tfo−2>Tfo−1>Tfo・・・式(4)
を満たすというものである。
式(4)が満たされる場合というのは、温度Toが、C1方向の上流側から下流側に向けて、ニップ部入口まで漸減するというものである。すなわち、式(4)が満たされる場合、C1方向において定着ニップ70の上流側近傍の領域において、定着ベルト63表面からの放熱により、定着ベルト63がC1方向に移動するにつれて温度Toが低下するということである。かかる放熱状態が形成される場合は、定着装置6のように定着ベルト63が裏面側から加熱される構成においては、定着ベルト63の蓄熱が小さい場合たとえば定着ベルト63の熱容量が小さい場合や、定着ベルト63の熱伝導性が良く空気中への放熱性が高い場合と考えられる。
【0090】
そこで、この場合の温度条件付与手段は、温度Toを、C1方向の上流側から下流側に向けて、ニップ部入口まで漸減させる領域を形成するものであり、定着ベルト63がそのC1方向への移動により、かかる放熱状態が形成されるように、定着ベルト63の熱容量、熱伝導性と、定着ベルト63の回転速度とを関係付けたものである。定着ベルト63の厚みは厚いほど放熱効率が低下するため単位時間あたりの放熱量が小さくなり、定着ベルト63の材質によって定まる熱伝導性は大きいほど放熱の度合いが大きいため単位時間あたりの放熱量が大きくなり、定着ベルト63の回転速度は遅いほど、放熱時間が長くなり、単位時間当たりの放熱量が多くなることを利用し、これらの兼ね合いにより、かかる領域を形成する。
【0091】
したがって、この場合の温度条件付与手段は、定着ベルト63の熱容量、熱伝導性に関する条件と、定着ベルト63の回転速度を、かかる条件に応じて設定する、定着駆動制御手段として機能する制御手段91とを含む。
【0092】
このような温度条件付与手段を備え条件(4)が満たされる定着装置6により、このような温度条件付与手段を備えない従来の定着装置と比べて、条件(1)、条件(2)がともに満たされやすくなることを説明する。なお、この説明は、C1方向における定着ベルト63の、TkfからTkbまでの区間、TkbからTfまでの区間、TfからTbまでの区間、TbからTkfまでの区間の、それぞれの区間における、定着ベルト63の、C1方向のおける或る位置の温度To、温度Tiの推移を説明しながら行う。このことは、後述する、温度条件付与手段の各構成例を採用した定着装置6の説明においても同様である。
まず、かかる従来の定着装置に備えられた定着ベルト63の温度推移について、図12を参照しながら説明する。
【0093】
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、熱を与えられておらず、その温度Tiは緩やかに下降し、温度Toは定着ベルト63の蓄熱が表面に現れてきて緩やかな上昇を示す。なお、これらの上昇曲線は定着ベルト63の熱容量、熱伝導性、回転速度により決まる。ただし、回転速度は同図のファクターには含まれていない。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、定着ベルト63自体の蓄熱があるので温度降下の度合いは図4(b)に沿って説明したのと同様に比較的緩やかであり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率に変化が現れるものの温度Toと同様に蓄熱分のため温度降下の度合いは緩やかである。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(b)に沿って説明したように、条件(1)は満たされて定着性は確保されているが、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が小さく、温度Tboが低下しにくいため、条件(2)が満たされず光沢性が不十分となっている。
【0094】
これに対し、かかる温度条件付与手段を備えた、定着ベルト63が定着ニップ70へ到達したときの蓄熱量を減らした定着装置6では、図5に示すように、次のような温度推移となる。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。ただし、定着ベルト63の熱容量を減らしているので、図12に示した場合と比べて、温度Ti、温度Toの勾配は急である。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、熱を与えられておらず、その温度Tiは緩やかに下降するが、定着ベルト63の熱容量を減らしているので図12に示した場合と比べて下降勾配は急である。温度Toは定着ベルト63の蓄熱が定着ベルト63の表面に現れて来ることによって図12に示した場合よりもよりも急な上昇を示すが、その後、定着ベルト63の熱量を減らしていることにより、上昇度が緩やかとなり、さらにその後は温度下降に転じている。よって、条件(4)が満たされている。この区間では、温度Ti、温度Toがこのような推移を示す結果、温度Tiと温度Toとの温度差は図12に示した場合とに比べて明らかに小さくなっているとともに、C1方向における定着ニップ70の上流側近傍の領域において温度Toは下降している。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、定着ベルト63自体の蓄熱がないので温度降下の度合いは図12に示した場合よりも急激であり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率に変化が現れるものの定着ベルト63の熱容量が小さいので温度変化の反応が早く、急激に低下して条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0095】
図5に沿って説明した定着装置6と、図12に沿って説明した定着装置との対比により、表1における(Tfo+Tbo)/2>T1の欄に示される結果が確認された。また、同表における(Tfo+Tbo)/2<T1の欄に示される結果も、発明者による実験によって確認されている。
【0096】
【表1】
【0097】
次に、すでに述べた条件(3)を満たす構成について説明する。
かかる構成としては、図6に示す構成が挙げられる。
同図に示されている定着装置6は、TkbからTfまでの区間に、定着ベルト63を裏面側から冷却する冷却手段66を有している。冷却手段66は、C1方向において、定着ベルト63が加熱ローラ62に当接して定着ベルト63がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ベルト63の裏面に当接した円筒状の回転体によって形成された冷却部材である金属製の冷却ローラ67を有している。
冷却ローラ67は定着ベルト63に当接して定着ベルト63の熱を奪うことで定着ベルト63を冷却する。冷却ローラ67は、定着ベルト63に従動回転するように、ハウジング85に回転自在に支持されている。
このような構成により、冷却手段66は、温度Tiをかかる区間で低下させ、これによって、式(3)が満たされ、条件(3)が満たされる。
【0098】
図7に示すように、冷却手段66は、冷却ローラ67の内部に配設され、冷却ローラ67の熱伝導性を向上することで定着ベルト63裏面の冷却効率を上昇させるヒートパイプ77と、冷却ローラ67の両端部を冷却しヒートパイプ77の両端部を冷却することでかかる冷却効率をさらに向上させる冷却部材冷却手段としてのファン78とを有する構成であっても良い。これらヒートパイプ77、ファン78はいずれか一方のみを備えていても良い。ファン78は冷却ローラ67の一方の端部に対応して設けられたものであっても良い。
【0099】
冷却ローラ67は少なくとも一方の端部に放熱を促進するためのフィンを有していても良い。定着部材は冷却ローラ67と異なり固設され定着ベルト63の裏面に摺接する態様で配設されていても良い。冷却ローラ67は定着ベルト63に適切なテンションを付与するベルトテンション付与部材としての機能を有するものであっても良い。
【0100】
冷却手段66は、定着画像に要求される光沢度に応じて定着部材を定着ベルト63の裏面に接離させる接離手段を有していても良い。このような接離手段は、転写紙Sが定着ニップ70を通過するタイミングに合わせて定着部材を定着ベルト63の裏面に接離させるように構成されていても良い。接離手段のこのような駆動制御は制御手段91によって行わせることが可能であり、制御手段91は、このような駆動制御を行う場合、冷却調整制御手段として機能する。
【0101】
このような構成の定着装置6においては、温度条件付与手段は、冷却手段66を含み、これに加えて制御手段91が冷却調整制御手段として機能するときはこの冷却調整制御手段として機能する制御手段91を含む。
【0102】
かかる温度条件付与手段を備えた定着装置6では、図8に示すように、定着ベルト63が次のような温度推移となる。なお、この定着装置6は、かかる温度条件付与手段を備えていることの他は、以下において言及しない限り、図12に沿って温度推移を説明した定着装置の構成と同様となっているものとする。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、温度Tiは急勾配の温度上昇を示し、温度Toは定着ベルト63の熱伝導のタイムラグのため上昇勾配は温度Tiよりも緩やかである。ただし、この定着装置6は、次の区間において定着ベルト63の吸熱を行う冷却手段66を有しているため、この分、この区間で定着ベルト63の温度を大きく上昇させるべく、ハロゲンヒータ65によって定着ベルト63に与える熱量を増加している。そのため、温度Ti、温度Toともに、その勾配は図12に示した場合より急であり、図5に示した場合と同等となっている。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、途中で冷却手段66によって裏面側から冷却されるようになっている。定着ベルト63は、熱を与えられておらず、温度Tiは、この区間の初めのほうは、緩やかに下降するが、冷却手段66によって冷却されると急激に下降する。温度Toは定着ベルト63の蓄熱が定着ベルト63の表面に現れて来ることによって緩やかな上昇を示すが、温度Tiの冷却の影響が定着ニップ70の近傍で現れて下降に転じている。これにより、条件(4)が満たされているとともに、C1方向における定着ニップ70の上流側端部において温度Tiと温度Toとの大小が逆転して式(3)が満たされ、条件(3)が満たされている。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、冷却手段66によって定着ベルト63の蓄熱が低下していることで温度降下の度合いは急激であり、温度Tiは温度Toの下降が伝わり始めて下降率が大きくなる変化が現れ、急激に低下して条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示し、双方の温度が均一化されていく区間となっている。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(3)が満たされ、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0103】
さらに別の構成の温度条件付与手段を備えた定着装置6における定着ベルト63の温度推移を図9に示す。この定着装置6における温度条件付与手段は、定着駆動制御手段として機能する制御手段91および加熱手段制御手段として機能する制御手段91を含み、この制御手段91により、転写紙Sが定着ニップ70を通過するタイミングに合わせてハロゲンヒータ65による定着ベルト63の加熱を低下、具体的には停止させるようになっている。その他は、以下において言及しない限り、図12に沿って温度推移を説明した定着装置の構成と同様となっているものとする。なお、図9は、かかるタイミングすなわち画像形成動作が行われ定着ニップ70に転写紙Sが通される定着動作中の定着ベルト63の温度の推移を示しており、同図に示す状態となる前に、定着ベルト63の昇温動作が予め行われる。
・Tkf〜Tkb:定着ベルト63と加熱ローラ62とが接触しているこの区間において、C1方向上流側の端部の温度Tkfが温度Ti、温度Toともに高くなるように制御が行われる。これは、ハロゲンヒータ65による定着ベルト63の加熱を停止した状態で条件(1)を満たし定着性を確保するべく、定着ベルト63による事前の蓄熱を行うためである。ハロゲンヒータ65は停止しているが、加熱ローラ62の予熱および定着ベルト63の蓄熱で温度Ti、温度Toともに低下していない。上述したように、昇温動作が予め行われていることで温度Tiと温度Toとはほぼ一致した状態となっており、この状態が維持されたまま推移する。
・Tkb〜Tf:この区間では、定着ベルト63は、一部において定着ローラ68と接触しているものの、大部分は他の部材と接触していない区間となっており、温度Ti、温度Toともに、緩やかに推移する。温度Tiと温度Toとはほぼ一致した状態で推移する。
・Tf〜Tb:この定着ニップ70に対応した区間では、温度Toは転写紙Sに熱を奪われ温度が下降するが、温度Tiと温度Toとがほぼ一致していることにより、温度To、温度Tiともに温度降下の度合いは急激であり、条件(2)が満たされる。
・Tb〜Tkf:定着ベルト63が他の部材と接触していない区間であり、転写紙Sに熱を奪われることがなく、温度Ti、温度Toともに緩やかに下降を示す。この温度Tkfは、上述の温度Tkfから温度Tkbまでの区間における温度Tkfよりも低下しているため、定着駆動制御手段として機能する制御手段91によりハロゲンヒータ65を動作させた状態に戻し、定着ベルト63を、かかる区間における温度Tkfに戻るまで定着駆動制御手段として機能する制御手段91により空回転させる。
よって、この定着装置では、図4(a)に沿って説明したように、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、定着ニップ70の前後での温度Toの温度差が大きく、温度Tboが低下するため、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
なお、ハロゲンヒータ65により定着ベルト63の加熱を低下させる態様は、停止に限られず、条件(1)、(2)を満たす範囲において低下させるものであれば良い。
【0104】
図10に、定着装置6の変形例を示す。
同図に示した定着装置6は、加熱源であるハロゲンヒータ65が、定着ベルト63の表面側言い換えると外周面側に配設された外部ローラ加熱方式となっており、ハロゲンヒータ65を内蔵しハウジング85に回転自在に支持され定着ベルト63に従動回転する定着加熱部材としての定着加熱ローラ73を有している。このように、ハロゲンヒータ65は、定着ベルト63をその表面側から加熱する定着表面加熱手段として備えられており、この定着表面加熱手段が温度条件付与手段として備えられている。
【0105】
このような構成の定着装置6では、図6、図7に示した構成と同様に、条件(3)が満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0106】
なお、図10に示した構成では、加熱手段として、定着表面加熱手段のみを有しているが、定着表面加熱手段とともに、図2、図6に示した構成と同様の、定着ベルト63を裏面側から加熱する定着裏面加熱手段を有していても良く、これらが温度条件付与手段に備えられていても良い。定着加熱ローラ73は定着ベルト63をクリーニングする定着クリーニング部材としての機能を有するものであっても良い。
【0107】
図11に示すように、定着部材は、無端ベルト状でなく、ローラ状の定着ローラ81であっても良い。すなわち、定着装置6は、ベルト定着タイプでなく、ローラ定着タイプであってもよい。この構成では、定着部材である定着ローラ81自身が、加圧ローラ69と互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、加圧ローラ69とともに転写紙Sを加圧した状態を維持しながら搬送する定着ニップ70を形成するニップ部形成部材として機能するようになっている。
【0108】
この構成において、温度条件付与手段は、図10に示した場合と同様に、定着表面加熱手段として機能するハロゲンヒータ65を有している。これにより、条件(3)が満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0109】
とくに図11(b)に示す構成は、図6、図7に示した冷却手段66と同様の冷却手段66を備えている。冷却ローラ67は、C1方向において、定着加熱ローラ73が定着ローラ81に当接して定着ローラ81がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ローラ81の裏面に当接し、この位置で、定着ローラ81を裏面から冷却する。これにより、条件(3)がより確実に満たされ、条件(1)が満たされて定着性が確保されるとともに、条件(2)が満たされて光沢性も確保される。
【0110】
なお、ハロゲンヒータ65は、図6に示した場合と同様に、定着ローラ81の内部に配設されていてもよく、このような構成においては、冷却ローラ67により、ハロゲンヒータ65から定着ローラ81に向けた熱が遮蔽される。よって、この構成によっても、冷却ローラ67は、C1方向において、定着ローラ81がハロゲンヒータ65によって加熱される領域よりも下流側、かつ、定着ニップ70の上流側端部よりも上流側において、定着ローラ81の裏面に当接し、この位置で、定着ローラ81を裏面から冷却することとなる。
【0111】
以上述べたように、温度条件付与手段は、種々の構成を採ることが可能であり、条件(1)、条件(2)を少なくとも満たせば、以上述べた種々の構成を適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0112】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
たとえば、ニップ部形成部材は、以上述べた各構成例においては回転する回転部材として説明したが、互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送する1つのニップ部を形成するのであれば、回転部材でなく、固定された板状等の部材であっても良い。
【0114】
また、加圧部材は、加圧ローラ69のようなローラ状でなく、ベルト状であっても良い。ただし、加圧部材をベルト状とするときは、加圧部材と別に、もう一方のニップ部形成部財と対を成すように加圧部材を挟んで対向して配設されるニップ部形成部材を要する。
【0115】
本発明を適用する画像形成装置は、タンデム型であっても、上述した間接転写方式でなく、直接転写方式を採用可能である。また、画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することが可能であるし、他にも、シート状の有機感光体等の像担持体上に各色のトナー像を現像するものの色重ね自体は別にある中間転写体を用いる方式、あるいは中間転写体を複数用いる方式、中間色トナーを用いる方式等の画像形成装置にも同様に適用することが可能である。
【0116】
その他、画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
【0117】
このような画像形成装置に用いる画像形成物質として現像剤を用いる場合、この現像剤は、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤であっても良い。さらには、画像形成物質は、定着を要するものであれば、インク等であっても良い。
【0118】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0119】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
6 定着装置
63 定着部材、温度条件付与手段、定着ベルト
65 加熱手段、定着表面加熱手段、温度条件付与手段
66 温度条件付与手段、冷却手段
68 ニップ部形成部材
69 ニップ部形成部材
70 ニップ部
81 ニップ部形成部材、定着部材
91 温度条件付与手段
100 画像形成装置
C1 搬送方向
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【特許文献1】特開2004−325936号公報
【特許文献2】特許第4300946号公報
【特許文献3】特開2009−288775号公報
【特許文献4】特開2010−164935号公報
【特許文献5】特開2008−20520号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、
前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、
この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、
前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、
前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、
前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、
記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、
(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、
前記温度Tfoと、
前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、
Tfo>Tfiを満たすために備えられていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、
前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、
前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置。
【請求項1】
互いに圧接されて対向することで形成された対向位置において、画像を定着される記録媒体を加圧した状態を維持しながら搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材と、
前記ニップ部において、記録媒体の画像を担持した側の面に、その表面と裏面とのうちの表面側が当接して同記録媒体を搬送する定着部材と、
この定着部材を加熱する加熱手段とを有するとともに、
前記ニップ部における記録媒体の搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の表面の温度Tfoと、
前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の温度Tboと、
前記ニップ部において定着に必要とされる熱量を与えるための前記ニップ部における前記搬送方向に沿った前記定着部材の表面の温度の同搬送方向における平均値T1と、
記録媒体に定着された画像に必要とされる光沢度を得るための、前記搬送方向において前記ニップ部の下流側端部における前記定着部材の表面の上限温度T2とについて、
(Tfo+Tbo)/2>T1とTbo<T2とを満たすための温度条件付与手段とを有する定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、
前記温度Tfoと、
前記搬送方向において前記ニップ部の上流側端部における前記定着部材の裏面の温度Tfiとについて、
Tfo>Tfiを満たすために備えられていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
前記加熱手段は、前記定着部材をその表面側から加熱する定着表面加熱手段を有し、
前記温度条件付与手段は、前記定着表面加熱手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、前記定着部材の表面の温度を、前記搬送方向の上流側から下流側に向けて、前記搬送方向における前記ニップ部の上流側端部まで漸減させる領域を形成することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、
前記定着部材は、無端ベルト状をなし前記ニップ部形成部材によって挟持された定着ベルトであることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、前記搬送方向において前記定着部材が前記加熱手段によって加熱される領域よりも下流側で前記ニップ部の上流側端部よりも上流側において前記定着部材を裏面側から冷却する冷却手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置において、
前記温度条件付与手段は、記録媒体が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記加熱手段による前記定着部材の加熱を低下させることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−194469(P2012−194469A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59607(P2011−59607)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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