説明

定着装置および画像形成装置

【課題】ニップ部より搬送方向下流側での画像汚れの発生を防止する。
【解決手段】分離ユニットは、分離板76、分離ベルト74等を備えて構成される。分離ベルト74は、分離板76および駆動ローラ73におけるベルト摺動面のまわりに覆いかぶせられる構成となっており、駆動ローラ73の回転駆動によって、分離板76表面における定着ローラ20に最も近い部分である分離先端76aを含む部分を摺動運動する。分離ベルト74の摺動方向(ベルト搬送方向)は、分離板76表面の記録媒体Pとの接触部分で、その記録媒体Pの搬送方向と同一になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子複写機やファクシミリなど電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置、およびこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置では、転写紙等の記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着させる装置として、IH(Induction Heating)ヒータなどにより加熱される定着ローラと、当該定着ローラを加圧する加圧ローラとで形成されたニップ部によって未定着トナー像を有した記録媒体を挟持・搬送しながら、加熱・加圧する熱ローラ定着方式が知られ、広く利用されている。
【0003】
こうした熱ローラ定着方式では、記録媒体に融着されたトナー画像が定着ローラに接触するので、定着ローラは、離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされており、さらに分離部材を有していることが多い。
【0004】
この分離部材として、モノクロ画像形成装置の場合、定着ローラが金属製のため、分離爪をローラに接触させて使用する構成が知られている。しかしながら、カラー画像形成装置の場合には、色の発色性を良くするため、表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗ったものが使用される。このような構成では、表層が軟らかく、傷が付き易い。表層に傷が付くと定着画像にスジ状の傷を生じてしまうことから、近年のカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段はほとんど用いられず、大半は非接触分離となっている。
【0005】
非接触分離では、トナーと定着ローラとの粘着力が高いと定着後の記録媒体がローラに巻き付くため、巻き付きジャムが容易に発生する虞がある。特にカラー画像形成では何層もの色が積層されており、粘着力が高まるために巻き付きジャムが発生し易くなる虞がある。
【0006】
このため、近年のカラー画像形成装置の定着装置における記録媒体の分離では、主に次の方式が採用されている。
〔1〕定着ローラとの間に微小なギャップ(約0.2〜1mm)が空けられ、定着ローラの長手方向(軸方向)に平行に延在する分離板を用いる非接触分離板方式。
〔2〕定着ローラとの間に微小なギャップ(約0.2〜1mm)が空けられ、所定間隔に配された分離爪を用いる非接触分離爪方式。
〔3〕圧縮空気を記録媒体の分離位置に吹き付けることにより、記録媒体とローラを剥離するエア剥離方式。
〔4〕紙やフィルム等である記録媒体自身の腰の強さと定着ローラの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式。
【0007】
こうした分離方式としては、特に〔1〕と〔2〕が低コストということもあり、幅広く使用されている。
【0008】
また、トナー像を転写する転写ベルトの送り速度と、定着ローラによる送り速度とを制御することにより、記録媒体の搬送性を安定させると共に、転写ベルトから記録媒体が剥離される際のトナー像の乱れを防止しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、中間転写体を用いることで両面印刷を行う画像形成装置として、中間転写体と定着装置との間に拍車部材を設け、記録媒体にループを形成した状態で拍車部材により中間転写体から定着装置に搬送することにより、拍車部材の汚れを防止しようとするものがある(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した記録媒体の分離方式の〔1〕と〔2〕には、図4、図5に示すように、以下のような問題があった。
【0011】
まず、図4に示すように、長期間使用すると、定着ローラと分離板の間の微小ギャップに紙粉やホコリが堆積してしまう。
【0012】
また、図5に示すように、記録媒体と分離板の表面が擦れる際、記録媒体表面のトナーが分離板に移り付着してしまう。これが何度も起きていくと、分離板上にトナーが堆積してしまい、堆積したトナーが記録媒体を汚してしまう虞があった。
さらに、トナーに含まれるオイル成分が分離板の表面で結露する虞があった。
【0013】
また、こうした図4、図5に示す各問題が発生することにより、記録媒体における印刷画像に記録媒体の搬送方向へのスジが発生する問題があった。
【0014】
また、上述した特許文献1,2のものは、記録媒体の搬送方向におけるニップ部より上流側の印刷画像汚れを防ぐためのものであり、ニップ部より下流側の画像汚れを防ぐことについてまで考慮されたものではなかった。
【0015】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ニップ部より搬送方向下流側での画像汚れの発生を防止することができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、未定着画像を担持する記録媒体を加熱する加熱回転部材と、該加熱回転部材に圧接されてニップ部を形成する加圧回転部材と、加熱回転部材および加圧回転部材のうち少なくとも一方に対して設けられ、当該設けられた回転部材表面から、該回転部材の回転により搬送される記録媒体を分離する分離手段と、を備え、分離手段は、搬送される記録媒体を分離するための分離位置に設けられた分離部材と、少なくとも分離部材における、少なくとも一方の回転部材に最も近い分離先端部分を含む部分を摺動運動するベルト部材と、を備え、ベルト部材は、記録媒体との接触部分で該記録媒体の搬送方向に摺動されるよう構成されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体表面に未定着画像を形成する未定着画像形成手段と、述した本発明に係る定着装置とを備え、未定着画像形成手段により記録媒体表面に形成された未定着画像を定着装置により該記録媒体に定着させるよう構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、ニップ部より搬送方向下流側での画像汚れの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態としての画像形成装置の構成例を示す縦断面図である。
【図2】該画像形成装置における定着装置の構成例を示す縦断面図である。
【図3】該定着装置における分離ユニット43の構成例を示す縦断面図である。
【図4】従来の定着装置における問題点1を説明する図である。
【図5】従来の定着装置における問題点2を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態による分離ユニット43の他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る定着装置および画像形成装置を適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態としての画像形成装置全体の構成について、図1を参照して説明する。
図1において、符合1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、符合2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、符合4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、符合7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、符合11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、符合12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、符合13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、符合15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
【0022】
また、符合16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、符合17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、符合18は中間転写ベルト17上に形成されたカラー画像を記録媒体P上に転写する2次転写ローラ、符合19は記録媒体P上のトナー像(未定着画像)を定着する電磁誘導加熱方式の定着装置、を示す。
【0023】
次に、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿読込部4によって、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0024】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0025】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1中の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0026】
イエロー成分に対応したレーザ光は、図1中で左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0027】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、図1中で左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、図1中で左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、図1中で左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0028】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
【0029】
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ(不図示である。)が設置されている。そして、転写バイアスローラの位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0030】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
【0031】
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0032】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト17は、2次転写ローラ18との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラが、2次転写ローラ18との間に中間転写ベルト17を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト17上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト17には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0033】
その後、中間転写ベルト17は、中間転写クリーニング部16の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト17上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト17上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0034】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部7から、給紙ローラ8やレジストローラ等が設置された搬送経路K1を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部7には、記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ8が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pが搬送経路K1に向けて給送される。
【0035】
搬送経路K1に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ(不図示である。)のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト17上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラが回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像(未定着画像)が転写される。
【0036】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置19の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ローラ及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
【0037】
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ9によって、装置本体1外に出力画像として排出されて(図1中、破線矢印方向の移動である。)、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0038】
次に、上述した画像形成装置本体1に設置される定着装置19の構成、動作について、図2を参照して詳述する。
【0039】
図2に示すように、定着装置19は、誘導加熱部25(磁束発生手段)、誘導加熱部25に対向する定着部材としての定着ローラ20(加熱回転部材)、定着ローラ20に圧接する加圧部材としての加圧ローラ30(加圧回転部材)、入口ガイド板41、拍車ガイド板42、分離ユニット43(分離手段)、出口ガイド板50、サーミスタ61、62、等を備えて構成される。
【0040】
ここで、定着部材としての定着ローラ20は、鉄やステンレス鋼等からなる芯金23上に、発泡シリコーンゴム等からなる断熱弾性層22、スリーブ層21が順次積層されたものであって、その外径が40mm程度に形成されている。
【0041】
定着ローラ20のスリーブ層21は、内周面側から基材層、第1酸化防止層、発熱層、第2酸化防止層、弾性層、離型層が順次積層された多層構造体である。詳しくは、基材層は層厚が40μm程度のステンレスで形成されたものであり、第1酸化防止層及び第2酸化防止層は層厚が1μm以下のニッケルをストライクめっき処理にて形成したものであり、発熱層は層厚が10μm程度の銅で形成されたものであり、弾性層は層厚が150μm程度のシリコーンゴムで形成されたものであり、離型層は層厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成されたものである。
【0042】
このように構成された定着ローラ20は、誘導加熱部25から発せられる磁束によってスリーブ層21の発熱層が電磁誘導加熱されることになる。なお、定着ローラ20の構成は、本実施形態のものに限定されることなく、例えば、スリーブ層21を断熱弾性層22(定着補助ローラ)に接着しないで別体化することもできる。ただし、スリーブ層21(定着スリーブ)を別体化した場合には、稼動中にスリーブ層21が幅方向(スラスト方向)に移動するのを抑止するための部材を設置することが好ましい。
【0043】
ここで、定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部の上流側(搬送方向上流側)には、複数の拍車が幅方向に並設された拍車ガイド板42が設置されている。拍車ガイド板42は、ニップ部に送入される記録媒体Pの定着面(画像が定着される面である。)に対向する位置に配設されて、記録媒体Pをニップ部に案内するものである。拍車ガイド板42は、記録媒体P上の未定着画像Tに拍車が接触してもその画像に擦れ跡が生じないように、拍車の周面がノコ歯状に形成されている。
【0044】
また、定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部から送出される記録媒体Pの定着面に対向する位置(ニップ部の搬送方向下流側である。)には、分離ユニット43が設置されている。分離ユニット43は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pが、定着ローラ20に吸着して巻き付く不具合を防止するためのものである。すなわち、定着工程後の記録媒体Pが定着ローラ20に吸着してしまった場合に、記録媒体Pの先端に分離ユニット43が接触して、記録媒体Pを定着ローラ20から強制的に分離させる。
【0045】
また、ニップ部の上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側である。)であって、ニップ部に近接する位置には、定着ローラ20に接触する接触型温度検知センサとしてのサーミスタ62が配設されている。サーミスタ62は、駆動部側の幅方向端部に配設されていて、定着ローラ20の幅方向端部の表面温度を検知する。
【0046】
また、定着ローラ20の幅方向中央部に対向する位置には、サーモパイル34(非接触型温度検知センサ)が配設されている。サーモパイルとは、物体が放射する赤外線から物体の温度を測定する素子である。物体から放射された赤外線はサーモパイル内部の熱変換膜で吸収され熱に変換される。その後、膜上に形成された多数の微小熱電対によって温度として検出される。
【0047】
そして、サーミスタ62やサーモパイル34によって、定着ローラ20上の温度(定着温度)を検知して、サーミスタ62やサーモパイル34による検知結果に基づいて、誘導加熱部25による加熱量を調整する。なお、本実施形態では、定着工程時(通紙時)における定着温度が160〜165℃になるように誘導加熱部25の制御がおこなわれている。
【0048】
図2を参照して、加圧部材としての加圧ローラ30は、鉄鋼、アルミニウム等からなる円筒部材32上に、シリコーンゴム等からなる弾性層31、PFA等からなる離型層(不図示である。)が形成されたものである。加圧ローラ30の弾性層31は、肉厚が1〜5mmとなるように形成されている。また、加圧ローラ30の離型層は、層厚が20〜200μmとなるように形成されている。加圧ローラ30は、定着ローラ20に圧接している。そして、定着ローラ20と加圧ローラ30との圧接部(ニップ部)に、記録媒体Pが搬送される。
【0049】
なお、本実施形態では、定着ローラ20の加熱効率を高めるために、加圧ローラ30にハロゲンヒータ等のヒータ33が内設されている。ヒータ33に電力が供給されることにより、ヒータ33の輻射熱によって加圧ローラ30が加熱されて、定着ローラ20の表面が加圧ローラ30を介して加熱されることになる。
【0050】
また、ニップ部の上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側である。)であって、ニップ部に近接する位置には、加圧ローラ30に接触する接触型温度検知センサとしてのサーミスタ61が配設されている。サーミスタ61は、駆動部側の幅方向端部に配設されていて、加圧ローラ30の幅方向端部の表面温度を検知する。
【0051】
また、加圧ローラ30の幅方向中央部に対向する位置には、サーモパイル34(非接触型温度検知センサ)が配設されている。そして、サーミスタ61やサーモパイル34によって、加圧ローラ30上の温度を検知して、サーミスタ61やサーモパイル34による検知結果に基いて、ヒータ33による加熱量を調整する。
【0052】
ここで、加圧ローラ30に対向する位置であって、ニップ部に送入される記録媒体Pの非定着面に対向する位置(ニップ部の上流側である。)には、入口ガイド板41が設置されている。入口ガイド板41は、ニップ部に送入される記録媒体Pをニップ部に案内するものである。
【0053】
また、加圧ローラ30に対向する位置であって、ニップ部から送出される記録媒体Pの非定着面に対向する位置(ニップ部の下流側である。)には、出口ガイド板50が設置されている。出口ガイド板50は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pを定着工程後の搬送経路に向けて案内するためのものである。
【0054】
誘導加熱部25は、コイル部26(励磁コイル)、コア部27(励磁コイルコア)、コイルガイド28、等で構成される。コイル部26は、定着ローラ20の外周面の一部を覆うように配設されたコイルガイド28上に細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2中における垂直方向)に延設したものである。
【0055】
コイルガイド28は、ガラス材料が45%程度含有されたPET(ポリエチレンテレフタレート)等の耐熱性の高い樹脂材料からなり、定着ローラ20の外周面に対向してコイル部26を保持する。なお、本実施形態では、コイルガイド28(誘導加熱部25)の対向面と、定着ローラ20の外周面と、のギャップが2±0.1mmに設定されている。
【0056】
コア部27は、フェライト等の強磁性体(比透磁率が2500程度である。)からなり、定着ローラ20の発熱層に向けて効率のよい磁束を形成するためのものでありアーチコア、センターコア、サイドコア等で構成されている。
煙筒部35は、コイルの空洞部裏側に形成され、定着装置からの気流をコイル側に循環させる目的で設置されている。
【0057】
次に、本実施形態の要部構成である分離ユニット43について、図3を参照して説明する。
【0058】
分離ユニット43は、分離板76(分離部材)、分離ベルト74等を備えて構成される。
分離板76は、ニップ部から搬送されてくる記録媒体を定着ローラ20から分離し、かつ搬送方向下流側に案内するための分離位置に配置された板状部材である。
分離ベルト74は、この分離板76および駆動ローラ73(回転駆動部材)におけるベルト摺動面のまわりに覆いかぶせられる構成となっており、駆動ローラ73の回転駆動によって、分離板76表面における定着ローラ20に最も近い部分である分離先端76aを含む部分を摺動運動する。分離ベルト74の摺動方向(ベルト搬送方向)は、図3に示すように、分離板76表面の記録媒体Pとの接触部分で、その記録媒体Pの搬送方向と同一になっている。
【0059】
上述した加圧ローラ30と定着ローラ20からなるニップの搬送速度とその下流側になる排紙ローラ9の搬送速度は、排紙ローラ9の方が若干速くなっている。これは、記録媒体Pに弛みを発生させないためである。分離ベルト74の搬送速度はニップの搬送速度より速く、排紙ローラ9より遅い速度になるようになっている。
【0060】
クリーニングブラシ71は分離ベルト74に接触しており、不図示の駆動部により、分離ベルト74と接触部分で逆方向に向かうよう回転し、分離ベルト74表面の汚れを取り除く清掃機構を構成する。
【0061】
オイル塗布ローラ72も分離ベルトと接触している。オイル塗布ローラ72は自身にオイルを含んでおり、分離ベルト74と接触部分で同方向に向かうよう回転し、分離ベルト74の表面にオイルを塗布するオイル塗布機構を構成する。
【0062】
分離ベルト74は厚み60μmのポリイミド製のベルトであり、表面には10μmのフッ素樹脂がコーティングされている。クリーニングブラシ71はBTCF製でローラの周りに植毛されており、この毛を用いて汚れを取る。
【0063】
オイル塗布ローラ72はシリコーンオイルを含んでおり、これを分離ベルト74表面に塗布することによりベルトへのトナー固着性を低く抑えている。また、オイル塗布ローラ72は図示されていないがスプリングによって常に図3中の下方に付勢されており、これによってベルトのテンションを保っており、ベルトの弛みを防いでいる。
さらに分離板76のニップ側先端である分離先端76aと定着ローラ20表面との間は、微小ギャップができるように構成されている。
【0064】
次に、本実施形態による分離ユニット43の効果について説明する。
【0065】
図4に示す従来の構成では、分離ユニットの位置には分離板が設置されており、記録媒体と定着ローラの分離(剥離)に使用されていた。分離板先端とローラとの微小隙間ギャップが小さいほど、分離性能が高くなるが、ギャップを狭くするほど、この間に紙粉や空気中のチリ・ホコリが堆積しやすい。また、使用しているトナーにワックスオイルが使用されている場合、蒸発したワックスオイルが分離板に結露することがある。これらが堆積してしまうと、印刷後の記録媒体が汚れることがあった。
【0066】
これに対し、上述した実施形態によれば、分離ベルト74が摺動運動される構成により、ギャップ間に紙粉、ホコリやワックスオイルなどが堆積することを防ぐことができる。堆積されるはずの紙粉などは分離ベルト74に付着され、その後クリーニングブラシ71で取り除かれる。これによりギャップ間は一定してクリーンな状態とすることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、分離ベルト74を常に清掃することに加え、オイル塗布ローラ72により常にオイル塗布しているため、分離ユニット43先端(分離ベルト74)が定着ローラ20と接触することがあっても定着ローラが傷つきにくい構成となっている。
【0068】
従来良く使われている分離板では、分離板と定着ローラが接触すると定着ローラが傷ついてしまうため、必ず隙間ができるように高い精度の部品で構成されていた。本実施形態の構成では定着ローラが傷つきにくいので、接触圧が低ければ隙間は必ずしも必要ではなく、従来ほどの部品精度は必要ない。また、分離先端76aと定着ローラ20表面との間の微小ギャップを従来より縮小できるので、信頼性の高い分離が可能となる。
また、分離先端76aが定着ローラ表面に所定圧力で押し付けられるように分離板76が付勢される構成とすることもできる。
【0069】
また、図5に示すように、従来の構成では、分離ユニットの位置には分離板が設置されており、記録媒体と定着ローラの分離(剥離)に使用されていた。記録媒体にトナーが多く付着していると、ニップ出口では記録媒体が分離板に擦れるように搬送される。記録媒体はニップ通過直後のため、トナーは完全に固まっておらず、擦れた際にトナーが分離板に付着し、堆積していく虞があった。分離板の表面に付着したトナーは他の記録媒体が分離板と擦れた際にトナーが分離板から記録媒体に移り、記録媒体を汚すことがあった。
【0070】
これに対し、上述した実施形態によれば、分離ベルト74にトナーが付着してもクリーニングブラシ71でトナーを落とすために、こうした画像汚れの問題を発生させないようにすることができる。
【0071】
また、図5に示すように、従来の構成では、上述のようにしてトナーが分離板に付着し、堆積してしまうことで、搬送される記録媒体に擦れ跡(スジ)が付いてしまうことがあった。
【0072】
これに対し、上述した実施形態によれば、分離ベルト74が記録媒体との接触部分でその記録媒体と同じ方向、かつほとんど同じ速度で搬送されるため、記録媒体と分離ベルト74との間で擦れが発生せず、従って擦れ跡(スジ)も発生させないようにすることができる。
【0073】
以上のように、上述した実施形態は、以下の特徴を有する。
第1の特徴として、上述した実施形態の定着装置は、未定着画像を担持する記録媒体を加熱する加熱回転部材と、該加熱回転部材に当接してニップ部を形成する加圧回転部材と、上記加熱回転部材および加圧回転部材のうちの少なくとも一方の部材に対して設けられた分離ユニットとを備え、この分離ユニットは、端部が上記回転部材表面に押し付けられるように付勢され、上記ニップ部を通過してきたシート状の記録媒体を上記少なくとも一方の回転部材の表面から分離しかつ案内する分離板と、その分離板の表面を摺動運動するベルト部材とを備えたことを特徴とする。
【0074】
第1の特徴によれば、分離ベルトを搬送させることにより分離ユニットをクリーンにすることができる。このため、ニップ部より搬送方向下流側で記録媒体に汚れや擦れ跡がつくことを防ぐことできる。
【0075】
また、第2の特徴として、上述した実施形態の定着装置は、上記のベルト部材を清掃する清掃機構を有することを特徴とする。
第2の特徴によれば、分離ベルトをクリーンに保つことができる
【0076】
また、第3の特徴として、上述した実施形態の定着装置は、上記のベルト部材がエンドレスベルトであることを特徴とする。
第3の特徴によれば、分離ベルトを繰り返し使うことができる
【0077】
また、第4の特徴として、上述した実施形態の定着装置は、上記ベルト部材にシート剥離用のオイルを塗布するオイル塗布機構を有することを特徴とする。
第4の特徴によれば、分離ベルトの汚れに対する分離性を保つことがきる。
【0078】
また、第5の特徴として、上述した実施形態の定着装置は、上記分離部材から、ニップ部に対してパルス状の圧縮気体を吐出する構成とすることができる。
近年、ニップ部からの出口(搬送されてくる記録媒体の出口)に圧縮空気を噴出することにより、記録媒体の分離を行うことが多くなっている。上述した実施形態を圧縮空気噴出機構と併用することで、より確実に記録媒体の分離を行うことができる。
【0079】
このように、第5の特徴によれば、圧縮空気を吐出するエア剥離方式の分離機構と併用することができる。
【0080】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、分離ベルト74をエンドレスベルトとした構成例について説明したが、この構成に限定されず、例えば図6に示すように構成してもよい。
図6の構成例では、ベルトバンク77に分離ベルト74が予め巻きつかれた状態で保管されている。分離ベルト74の先端はベルト巻取り装置78につながれており、その間の分離ベルト74は、分離板76の分離先端76aを含む部分の表面に貼りつくように這いまわされている。
【0082】
この分離ベルト74は印刷中は静止状態にあり、印刷されるに従い、分離板と定着ローラの隙間や、記録媒体との擦れ部分が汚れていく。
このため、図6の構成例では、分離ベルト74に対して、所定枚数(例えば500ページ)印刷ごとに巻き取り動作を行う。これにより、分離ユニット43をクリーンな状態に保つことができる。
【0083】
また、上述した実施形態では、分離ユニット43が定着ローラ20に対して設けられる構成として説明したが、この構成に限定されず、記録媒体を加圧ローラ30から分離させる必要がある構成の場合、分離ユニット43が加圧ローラ30に対して設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 装置本体
2 書込み部
4 原稿読込部
5 コンタクトガラス
7 給紙部
8 給紙ローラ
9 排紙ローラ
11 感光体ドラム
12 帯電部
13 現像部
15 クリーニング部
16 中間転写ベルトクリーニング部
17 中間転写ベルト
18 2次転写ローラ
19 定着装置
20 定着ローラ
21 スリーブ層
22 断熱弾性層
23 芯金
25 誘導加熱部
26 コイル部
27 コア部
28 コイルガイド
30 加圧ローラ
31 弾性層
32 円筒部材
33 ヒータ
34 サーモパイル
41 入口ガイド板
42 拍車ガイド板
43 分離ガイド板
50 出口ガイド板
61、62 サーミスタ
71 クリーニングブラシ
72 オイル塗布ローラ
73 分離ベルト駆動ローラ
74 分離ベルト
75 アイドラローラ
76 分離板
76a 分離先端
77 ベルトバンク
78 ベルト巻取り装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特許第3434056号
【特許文献2】特開平11−265095号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像を担持する記録媒体を加熱する加熱回転部材と、
該加熱回転部材に圧接されてニップ部を形成する加圧回転部材と、
前記加熱回転部材および前記加圧回転部材のうち少なくとも一方に対して設けられ、当該設けられた回転部材表面から、該回転部材の回転により搬送される記録媒体を分離する分離手段と、を備え、
前記分離手段は、
搬送される記録媒体を分離するための分離位置に設けられた分離部材と、
少なくとも前記分離部材における、前記少なくとも一方の回転部材に最も近い分離先端部分を含む部分を摺動運動するベルト部材と、を備え、
前記ベルト部材は、記録媒体との接触部分で該記録媒体の搬送方向に摺動されるよう構成されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記分離手段は、前記ベルト部材表面を清掃する清掃機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記分離手段は、前記ベルト部材を摺動運動させる回転駆動部材を備え、
前記ベルト部材は、少なくとも前記分離部材および前記回転駆動部材における摺動面を一体として摺動可能に被覆するように設けられたエンドレスベルトであることを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記分離手段は、前記ベルト部材表面にオイルを塗布するオイル塗布機構を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記分離手段は、前記ニップ部に対して圧縮気体を吐出する吐出手段を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
記録媒体表面に未定着画像を形成する未定着画像形成手段と、
請求項1から5の何れか1項に記載の定着装置と、を備え、
前記未定着画像形成手段により記録媒体表面に形成された未定着画像を前記定着装置により該記録媒体に定着させるよう構成されたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98610(P2012−98610A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247631(P2010−247631)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】