説明

定着装置および画像形成装置

【課題】非通紙領域における過剰昇温の発生を低コストで防止することが可能な定着装置を提供する。
【解決手段】加熱部材により未定着画像を熱融着する定着装置であって、加熱部材の非通紙領域の温度が、定着温度より高い所定温度に達すると起動し、当該領域の過昇温を抑制する抑制装置と、加熱部材における最大通紙幅より幅方向内側の領域の一部と近接して対向する位置に配置され、加熱部材の非通紙領域の雰囲気温度を検出可能な非接触型の温度センサーと、その配置位置が加熱部材の通紙領域と対向する場合には、その検出温度に応じて、非通紙領域の温度が所定温度を超えたか否かを判定し(S1205)、超えた場合に抑制装置を起動する(S1206)制御手段と、を備え、温度センサーは、非通紙領域の温度が定着温度から所定温度までの範囲内にある場合において、検出温度と非通紙領域の温度とが正の相関関係を示す位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置およびそのような定着装置を備えた画像形成装置に関し、特に、複数サイズの記録紙にトナー像を定着する定着装置において、非通紙領域における過昇温を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の分野においては、ウォームアップ時間の短縮化や省エネルギー化を図るため、熱容量の小さい加熱部材を用いて熱定着動作を行う定着装置が利用されるようになってきている。例えば、電磁誘導加熱方式利用した定着装置では、励磁コイルに高周波数の電流を流すことにより磁束を発生させ、低熱容量の加熱部材(厚みの薄い発熱層)を誘導加熱することにより、熱定着動作が行われる。
【0003】
一方、このような熱容量の小さい加熱部材を用いた場合には、用紙の幅の小さい記録シート(例えば、A6縦の用紙幅105mmの記録シート)について連続的に熱定着動作を行った場合に、加熱部材の非通紙領域が過剰に昇温されやすい。加熱部材の熱容量が小さいと、記録シートの通紙により熱が奪われ、通紙領域の温度が定着温度より低下するので、当該領域の温度を定着温度に維持するように熱定着動作中、加熱部材は、随時加熱され、これにより、記録シートの通紙により熱が奪われない、加熱部材の非通紙領域が過剰に加熱され、昇温されることになる。
【0004】
加熱部材の非通紙領域が過剰に昇温され、定着装置の耐熱温度(例えば、定着装置に一般的に用いられる耐熱部材であるシリコーンの耐熱温度240℃)を超えると、定着装置が熱損傷を受けるおそれがあるため、例えば、特許文献1には、電磁誘導加熱方式の定着装置において、加熱部材の非通紙領域に温度センサーを配置して、当該温度センサーの検出する温度に応じて消磁コイルを駆動させ、当該非通紙領域における昇温を抑制する技術が開示されている。
【0005】
この温度センサーは、加熱部材の表面に接触跡が形成され、当該接触跡により熱定着後の画像品質が劣化しないように、非接触型の温度センサーを用いるのが望ましい(特許文献2参照)。この場合には、加熱部材の表面の温度を直接測定できないため、検出温度を、予め実験で定めた補正係数で補正した補正値を用いて表面温度が測定される。
このように、加熱部材の非通紙領域の表面温度に応じて消磁コイルを駆動させることにより、用紙の幅の小さい記録シートについて連続的に熱定着動作を行った場合に、当該非通紙領域が過剰に昇温して、定着装置の耐熱温度を超えないように制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−321642号公報
【特許文献2】特開2010−66347号公報
【特許文献3】特開2008−139472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加熱部材の非通紙領域の表面温度は、隣接する記録シートが通紙される通紙領域の雰囲気温度の影響を受けるため、特許文献3の図5に示すように、通紙領域の端部から幅方向にある程度離れた位置で最も高くなる。このため、用紙の幅の大きい記録シート(例えば、A4横の用紙幅の記録シート)を加熱部材に通紙した場合には、非通紙領域の幅方向の長さ(通紙領域の末端から加熱部材の有効加熱領域の末端までの長さ)が、用紙幅の小さい記録シート(A6縦の用紙幅の記録シート)の場合に比べ、短くなり、その分、昇温量が小さくなる。
【0008】
従って、通紙速度がそれ程速くない速度(例えば、55ppm程度の速度)では、用紙幅の大きい記録シートについては、消磁コイルを駆動させなくても、加熱部材の非通紙領域の表面温度が定着装置の耐熱温度を超えることはなかった。
しかしながら、通紙速度が高速化された場合には、通紙による加熱部材の温度低下を防ぐため、より多くの熱量が加熱部材に供給されるようになるので、熱定着時における加熱部材の非通紙領域の昇温量が増大し、用紙幅の大きい記録シートの熱定着時においても加熱部材の非通紙領域の表面温度が定着装置の耐熱温度を超えてしまうという問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、加熱部材の非通紙領域の近傍に非接触型の温度センサーを配置した定着装置において、用紙幅の大きい記録シートについて熱定着動作を行った場合に、加熱部材の非通紙領域に過剰昇温が発生するのを低コストで防止することが可能な定着装置及び当該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る定着装置は、加熱部材により記録シートの未定着画像を熱融着する定着装置であって、熱融着時に前記加熱部材の非通紙領域の温度が、定着温度より高い所定温度を超えたときに起動し、前記非通紙領域の過昇温を抑制する過昇温抑制装置と、前記加熱部材における最大通紙幅より幅方向内側の領域の一部と近接して対向する位置に配置され、前記加熱部材の非通紙領域の雰囲気温度を検出することが可能な非接触型の温度センサーと、前記温度センサーの配置位置が前記加熱部材の通紙領域と対向する場合には、当該温度センサーが検出した温度に応じて、前記非通紙領域の温度が前記所定温度を超えたか否かを判定し、前記所定温度を超えた場合に前記過昇温抑制装置を起動する制御手段と、を備え、前記温度センサーは、前記非通紙領域の温度が前記定着温度から前記所定温度までの範囲内にある場合において、当該検出温度と前記非通紙領域の温度とが正の相関関係を示す位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
前記相関関係は比例関係であることとすることができる。又、前記幅方向内側の領域は、前記最大通紙幅の領域の一方の端部からの幅方向の距離が、前記最大通紙幅の8.2%に相当する長さを超えない範囲にある領域であることとすることができる。又、前記最大通紙幅は、257mmより大きく297mm以下であることとすることができる。又、前記近接して対向する位置は、前記加熱部材から2〜4mmの距離だけ離れた位置であることとすることができる。又、前記温度センサーは、サーミスタ素子と当該サーミスタ素子と接触している集熱部材とを含むこととすることができる。
【0012】
又、前記加熱部材は電磁誘導により発熱する発熱層を有する長尺の加熱回転体であり、幅方向に沿って前記加熱回転体と対向するように延びる中空長円環状のコイルであって、磁束を発生して前記発熱層を電磁誘導加熱する励磁コイルを備え、前記過昇温抑制装置は、中空環状のコイルであって、前記励磁コイルよりも幅方向の長さが短く、前記励磁コイルと中空部同士が連通するように前記励磁コイルの一部と幅方向に近接して対向配置され、前記励磁コイルが発生する磁束の一部を打ち消して前記発熱層の電磁誘導加熱を抑制する少なくとも1つの消磁コイルから構成されることとすることができる。さらに、前記温度センサーは、前記中空部同士が連通している領域に配置されていることとすることができる。
【0013】
又、本発明の一形態に係る画像形成装置は、前記定着装置を備える画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を備えることにより、非接触型の温度センサーが加熱部材の最大通紙幅よりも幅方向内側の領域の一部と近接して対向する位置に配置されている場合においても、当該温度センサーを、加熱部材の非通紙領域の温度が定着温度以上の高温側において、当該温度センサーの検出温度と非通紙領域の温度とが正の相関関係を示す位置に配置することにより、当該温度センサーの配置位置が加熱部材の通紙領域と対向することになる場合においても、当該温度センサーの検出温度を用いて非通紙領域の温度が過昇温抑制装置を起動する温度になったか否かを判定して過昇温抑制装置の起動を制御し、加熱部材の非通紙領域における過昇温を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係るプリンター1の構成を示す図である。
【図2】定着装置5の構成を示す分解斜視図である。
【図3】定着装置5の要部における断面図である。
【図4】発熱ベルト51bの構成を示す部分断面図である。
【図5】励磁コイル80や消磁コイル81〜83を制御するための回路構成を示す図である。
【図6】端部温度センサー55の配置と最大通紙幅との関係を示す図である。
【図7】端部温度センサー55の具体例を示す平面図である。
【図8】通紙対向サイズ(A4横サイズ297mm)の記録シートを定着温度180℃、通紙速度75枚/分の条件で定着ローラー51に1分間連続通紙した場合における、定着ローラー51の幅方向Jの温度分布と、端部温度センサー55の検出温度の幅方向Jの温度分布とを示す図である。
【図9】端部温度センサー51を端部近傍範囲に配置した場合における、非通紙対応領域の温度と端部温度センサー51の検出温度との関係を示す図である。
【図10】図9の関係図の定着温度(180℃)以上の高温側における温度領域における非通紙領域の表面温度(t1)と、端部温度センサー55の検出温度(t2)との対応関係を示すテーブルである。
【図11】制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。
【図12】制御部60が行う消磁コイル起動制御処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一形態の画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンターの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンター1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンター1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンター1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60を備えている。
【0017】
プリンター1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない表示部を有する操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを記録シートへ多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0018】
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、二次転写ローラー45などを有している。作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラー34Y、感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナー35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、従動ローラー12と駆動ローラー13に張架されて矢印A方向に周回駆動される。又、従動ローラー12の近傍には、中間転写ベルト11上に残留するトナーを除去するためのクリーナー14が配置されている。
【0019】
露光部10は、レーザーダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザー光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。
【0020】
各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの
各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成され
る。形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各一次転写ローラー(図1では、作像部3Yに対応する一次転写ローラーのみ符号34Yを付し、他の一次転写ローラーについては、符号を省略している。)により、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次一次転写された後、二次転写ローラー45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0021】
トナー像が二次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラー71により排紙トレイ72に排出される。
給紙部4は、記録シート(図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー42と、繰り出された記録シートを二次転写位置46に送り出すタイミングをとって記録シートを搬送するタイミングローラー44などを備えている。
【0022】
給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、大きさ又は厚さ又は材質の異なる記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
タイミングローラー44は、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように中間転写ベルト11上に一次転写されたトナー像が二次転写位置46に搬送されるタイミングに合わせて、記録シートをニ次転写位置46に搬送する。そして、二次転写位置46において、二次転写ローラー45により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0023】
繰り出しローラー42、タイミングローラー44等の各ローラーは、搬送モーター(不図示)を動力源とし、歯車ギヤーやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モーターとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモーターが使用される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す分解斜視図である。図3は、定着装置5の要部における断面図(図2の仮想面Vで切断したときの断面図)である。
定着装置5は、電磁誘導加熱方式の定着装置であり、両図に示すように、定着ローラー51、加圧ローラー52、磁束発生部53、中央部温度センサー54、端部温度センサー55等から構成される。定着ローラー51と加圧ローラー52とは平行に配設されて圧接され、圧接部に定着ニップNを形成している。
【0024】
図3に示すように、加圧ローラー52が、不図示の駆動モーターにより矢印C方向に回転駆動されることにより、定着ローラー51が矢印B方向に従動回転する。なお、駆動モーターの駆動は制御部60によって制御される。定着ローラー51は、長尺で円柱状の芯金511の周囲を断熱層512で被覆してなるローラー本体51aと、ローラー本体51aに外嵌された発熱ベルト51bとから構成される。定着ローラー51の外径は、例えば、約30mmとすることができる。
【0025】
芯金511は、定着ローラー51を支持する部材であり、例えば図2の両端部511a、511bを除く外径が約18mmの円柱体で構成される。芯金511を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。芯金511の両端部511a、511bは、不図示のフレームの軸受部に回転自在に軸支される。
断熱層512は、発熱ベルト51bが発熱した熱を芯金511に逃がさないようにするとともに、発熱ベルト51bを介して加圧ローラー52と定着ニップNを形成するための層である。断熱層512の厚みは例えば、約10mmとすることができる。断熱層512を構成する材料としては、耐熱性及び断熱性の高いものが望ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の発砲弾性体やシリコーンスポンジ材等を用いることができる。
【0026】
図4は、発熱ベルト51bの構成を示す部分断面図である。同図に示すように、発熱ベルト51bは、金属発熱層513、弾性層514、離型層515がこの順に積層されて構成される。金属発熱層513は、電磁誘導により発熱して発熱ベルト51bを発熱させる層であり、例えば、Ni,SUS,Fe等の磁性材料からなる。金属発熱層513の厚みは例えば、10〜100μmとすることができる。
【0027】
弾性層514は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層514を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。弾性層514の厚みは、例えば、10〜800μmとすることができる。弾性層514を構成する材料としては、耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いることができる。例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどを用いることができる。
【0028】
離型層515は、発熱ベルト51bの最外層をなし、発熱ベルト51bと記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層515の厚みは、5〜100μm、望ましくは10〜50μmの範囲内のものとするのがよい。離型層515を構成する材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れたものを使用することができる。例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂を使用することができる。
【0029】
図3の説明に戻って、加圧ローラー52は、円柱状の芯金521の周囲に、弾性層522を介して離型層523が積層されて構成されている。定着ローラー51を加圧ローラー52で押圧することにより、定着ローラー51と加圧ローラー52との間に、周方向に所定幅を有する定着ニップNが形成される。加圧ローラー52の外径は、例えば、約35mmとすることができる。
【0030】
芯金521は、加圧ローラー52を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金521は、例えば、図2の両端部521a、521bを除く外径が約30mmの円柱体で構成される。芯金521の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。芯金521の両端部521a、521bは、不図示のフレームの軸受部に回転自在に軸支される。
【0031】
弾性層522は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体で、厚さ1〜20mmの範囲内の耐熱性の高い材料で構成される。離型層523は、加圧ローラー52と記録シートとの離型性を高めるための層であり、離型層515と同様の材料及び厚さで構成することができる。加圧ローラー52の大きさとしては、例えば、外径約35mmのものを用いることができる。
【0032】
磁束発生部53は、図2、図3に示すように、励磁コイル80、3対の消磁コイル81、82、83、コイルボビン84、メインコア85、裾コア86a、86b等から構成される。励磁コイル80は、定着ローラー51の幅方向J(回転軸方向)に沿って定着ローラー51と対向するように延びる中空長円環状のコイルであって、耐熱性の樹脂で被覆した細い線を束ねたリッツ線を幅方向Jに沿って巻回してなる。励磁コイル80は、コイルボビン84に保持され、不図示の高周波インバータに接続されている。励磁コイル80は、高周波電力の供給を受けて、交番磁束を発生し、当該交番磁束が定着ローラー51の金属発熱層513に導かれることにより、金属発熱層513が電磁誘導加熱される。
【0033】
消磁コイル81、82、83は、それぞれ、中空環状のコイルであって、励磁コイル80よりも幅方向Jの長さが短く、励磁コイル80と中空部同士が連通するように、励磁コイル80の一部と幅方向Jにおいて近接して対向配置されている。各消磁コイルは、リッツ線を幅方向Jに沿って巻回してなる。消磁コイル81、82、83は、それぞれ、幅方向Jの一方の端部が励磁コイル80の外面の一部と絶縁シートを挟んで密着されている。そして、消磁コイル82、83は、もう一方の端部がそれぞれ、隣接する消磁コイルの幅方向Jの端部の外面上に絶縁シートを介して重ねられている。又、消磁コイル81のもう一方の端部は、励磁コイル80の外面の一部と密着又は、励磁コイル80に近接した位置に配置されている。
【0034】
図5は、励磁コイル80や消磁コイル81〜83を制御するための回路構成を示す図である。同図に示されるように、励磁コイル80は励磁回路90の切替えリレー95を介して高周波電源94に接続されている。また、消磁コイル81〜83はそれぞれ切替えリレー96〜98に直列接続されループ回路91〜93を形成している。切替えリレー95、96〜98は何れも制御部60の制御下にある。
【0035】
制御部60は、端部温度センサー55を介して定着ローラー51の非通紙領域の表面温度を監視しており、当該表面温度が所定の制御温度(例えば、210℃)に達すると、通紙する記録シートのサイズに応じて対応する切替えリレー96〜98をオンして消磁コイル81〜83に逆磁束を発生させる。これによって、励磁コイル80が発生させる磁束が打ち消されるので、非通紙対応領域における過昇温が抑制される。また、言うまでも無く、制御部60は定着ローラー51の通紙領域の温度を監視し、画像形成時には切替えリレー95をONして励磁コイル80に通電し、電磁誘導加熱を行なう。
【0036】
図3の説明に戻って、中央部温度センサー54は、定着ローラー51の幅方向Jの中央部において、定着ローラー51に近接して対向(ここでは、定着ローラー51との間隔を約3mm(2〜4mmの範囲)とする。)するように配置されている。中央部温度センサー54としては、例えば非接触型の赤外線センサーを用いることができ、制御部60は、中央部温度センサー54の検出結果に基づき、当該定着ローラー51の通紙領域の表面温度が所定の定着温度(例えば、180℃)になるように励磁コイル80へ供給する電力を制御する。
【0037】
端部温度センサー55は、図2に示すように、励磁コイル80の長円状の中空部と、消磁コイル83の中空部とが連通している領域において、定着ローラー51と近接して対向(ここでは、定着ローラー51との間隔を約3mm(2〜4mmの範囲)とする。)するように配置され、定着ローラー51の非通紙領域の温度を監視するために使用される。
図6は、端部温度センサー55の配置と最大通紙幅との関係を示す図である。同図に示すように、端部温度センサー55は、幅方向Jにおいて、B4縦サイズ257mmより外側で最大通紙幅(A4横サイズ297mm)より内側の領域に配置されている。端部温度センサー55が、定着ローラー51の最大通紙幅(ここでは、A4横サイズ297mmとする。)より幅方向Jにおいて内側の領域に配置されているのは、最大通紙幅より外側の領域(同図の符号a、bで示す領域)は、放熱がおこりやすく、内側の領域に比べ温度が低下する傾向があり、最大通紙幅より外側の領域に端部温度センサー55を配置すると、通紙される記録シートのサイズによっては定着ローラー51の非通紙領域の温度が正確に測れなくなるからである。又、最大通紙幅より外側の領域に端部温度センサー55を配置しようとすると、そのためのスペースを確保する必要があり、スペース効率が悪くなるという問題も生じる。
【0038】
端部温度センサー55としては、非接触型の温度センサー、例えばサーミスタを用いることができる。非接触型温度センサーは、定着ローラー51の表面近傍の雰囲気の温度を検出するため、定着ローラー51の表面温度の変化が遅れて検出される。これにより定着ローラー51の表面温度と検出温度とに時間的なズレが生じるため、定着ローラー51の非通紙領域の温度制御には、端部温度センサー55の検出温度(T0)ではなく、当該検出温度(T0)を、予め実験等をおこなうことにより定めた補正係数(A)を用いて補正した補正温度(T=A×T0)が用いられる。
【0039】
図7は、端部温度センサー55の具体例を示す平面図である。同図に示すように、端部温度センサー55は、サーミスタ素子551が熱の放散を阻止する集熱部材であるアルミ箔552上に接着され、さらにアルミ箔552の裏面に破損を防止するためのポリイミドテープ553を貼り付けることにより構成されている。
又、サーミスタ素子551には、リード線554、555が接続されている。
【0040】
[3]非通紙領域の温度の監視
制御部60は、印刷対象となる記録シートのサイズが、定着ローラー51に通紙されたときに、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向する場合には、端部温度センサー55の検出温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域の温度が所定の制御温度を超えたか否かを監視し、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向しない場合には、検出温度を補正係数で補正した補正温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域の温度が所定の制御温度を超えたか否かを監視する。
【0041】
ここで、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向するか否かの判定は、定着ローラー51に記録シートを通紙した場合に、端部温度センサー55が当該通紙領域と近接して対向することになる記録シートのサイズ(以下、「通紙対向サイズ」とい。)を予め、制御部60に記憶させておくことにより、行うことができる。
例えば、本実施の形態では、「A4横サイズ297mm」を通紙対向サイズとして制御部60に記憶させることとし、印刷指示された記録シートのサイズが、記憶されている通紙対向サイズと一致する場合には、制御部60は、「端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向する」と判定し、一致しない場合には、「端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向しない」と判定することとすることができる。
【0042】
又、印刷対象となる記録シートのサイズが、通紙対向サイズである場合に、端部温度センサー55の検出温度を直接用いて定着ローラー51の非通紙領域の温度が所定の制御温度を超えたか否かの監視を行うのは、以下の理由による。
図8は、通紙対向サイズ(A4横サイズ297mm)の記録シートを定着ローラー51に定着温度180℃、通紙速度75枚/分の条件で500枚連続通紙した場合における、定着ローラー51の幅方向Jの温度分布と、端部温度センサー55の検出温度(定着ローラー51の近傍の雰囲気温度)の幅方向Jの温度分布とを示す図である。
【0043】
同図において縦軸は、温度(℃)を、横軸は定着ローラー51の最大通紙幅(A4横サイズ297mm)の通紙領域の幅方向Jの中央位置(以下、「中央位置」という。)から一方の端部に向かう幅方向Jの距離をそれぞれ示す。符号71は、接触型の温度センサーを用いて測定した、定着ローラー51の幅方向Jの各距離(中央位置からの各距離)における表面温度の温度分布を示し、符号72は、端部温度センサー55を用いて検出した、定着ローラー51近傍の雰囲気温度の幅方向Jの各距離(中央位置からの各距離)における温度分布を示す。当該温度分布における端部温度センサー55の各検出位置は、端部温度センサー55の感温部であるサーミスタ素子の位置(図7参照)を基準としている。又、端部温度センサー55は、各検出位置において、定着ローラー51に近接して対向(ここでは、定着ローラー51との間隔を約3mm(2〜4mmの範囲)とする。)するように配置されている。
【0044】
又、符号73は、最大通紙幅(A4横サイズ297mm)の通紙対応領域の一方の末端の位置(中央位置からの距離が148.5mmの位置)を示す。同図に示すように、上記の末端位置から符号Pの両矢印で示す範囲(中央位置からの距離が124mmから148.5mmの範囲(上記の末端の位置からの距離が最大通紙幅の8.2%に相当する長さを超えない範囲))においては、当該範囲よりも中央位置からの距離が短い範囲に比べ、検出温度が上昇している。この検出温度の上昇は、最大通紙幅より外側の非通紙領域における温度上昇の影響によるものと考えられる。従って、端部温度センサー55を最大通紙幅の内側で符号Pの両矢印で示す範囲(以下、「端部近傍範囲」という。)に配置することにより、最大通紙幅より外側の非通紙領域の温度を検知することが可能になると考えられる。以下、端部温度センサー55の配置位置は、端部温度センサー51の感温部であるサーミスタ素子の位置を基準とする。
【0045】
図9は、端部温度センサー55を端部近傍範囲に配置した場合における、定着ローラー51の非通紙領域の温度と端部温度センサー55の検出温度との関係を示す図である。同図は、ウォームアップを開始してから、通紙対向サイズ(A4横サイズ297mm)の記録シートについて、定着装置5を用いて定着温度180℃、通紙速度75枚/分の条件で熱定着動作を所定時間(ここでは、1分間とする)行うまでの期間における、両者の温度関係を示している。ここでは、端部温度センサー55は、中央位置からの距離が144mmの位置(図8の符号Qで示す位置)に配置されている。又、端部温度センサー55は、定着ローラー51に近接して対向(ここでは、定着ローラー51との間隔を約3mm(2〜4mmの範囲)とする。)するように配置されている。
【0046】
同図の縦軸は、温度(℃)を、横軸は、ウォームアップを開始からの経過時間(秒)を示す。又、符号81は、定着ローラー51の非通紙領域の表面温度の温度変化を、符号82は、端部温度センサー55の補正温度の温度変化を、符号83は、端部温度センサー55の検出温度の温度変化を、符号84は、加圧ローラー52の表面温度の温度変化をそれぞれ示す。なお、非通紙領域の温度及び加圧ローラー52の表面温度は、接触型の温度センサーを用いて測定された。
【0047】
符号81と符号82の示す温度変化を比較すると明らかなように、定着温度(180℃)以上の高温側の温度領域においては、端部温度センサー55の補正温度が定着ローラー51の非通紙領域の表面温度に対応して変化しない(補正温度は、当該温度領域においてほとんど変化しない)ため、補正温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域の表面温度を推定することは困難であると考えられる。
【0048】
一方、符号81と符号83の示す温度変化を比較すると、定着温度(180℃)以上の高温側の温度領域において、端部温度センサー55の検出温度は、定着ローラー51の非通紙領域の表面温度に対応して変化する(当該検出温度は、定着ローラー51の非通紙領域の表面温度と正の相関関係を示している。)ため、当該検出温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域の表面温度を推定することが可能となる。
【0049】
図10は、図9の関係図の定着温度(180℃)以上の高温側における温度領域における定着ローラー51の非通紙領域の表面温度(t1)と、端部温度センサー55の検出温度(t2)との対応関係を示すテーブルである。同図に示すように両者の比(t1/t2)は、ほぼ一定の値(1.95±0.4)を示しており、両者は定着温度(180℃)以上の高温側において比例関係にあることを示している。
【0050】
このように、両者が比例関係にあることから、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向する場合には端部温度センサー55を端部近傍範囲に配置することにより、端部温度センサー55の検出温度を用いて定着温度以上の高温側において、定着ローラー51の非通紙領域の表面温度を精度よく推定することができる。
又、端部温度センサー55が通紙領域と近接して対向しない場合(非通紙領域と近接して対向する場合)には、従来通り、検出温度の補正温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域の表面温度を精度よく測定することができる。
【0051】
[4]制御部の構成
図11は、制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。制御部60は、所謂コンピュータであって、同図に示されるように、CPU(Central Processing Unit)601、通信インターフェース(I/F)部602、ROM(Read Only Memory)603、RAM(Random Access Memory)604、画像データ記憶部605、通紙対向サイズ記憶部606、閾値記憶部607などを備える。
【0052】
通信I/F部602は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースである。ROM603には、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、操作パネル6、画像読取部7等を制御するためのプログラム、後述する消磁コイル起動制御処理を制御するためのプログラム等が格納されている。
画像データ記憶部605は、通信I/F部602や画像読取部7を介して入力された、印刷用の画像データを記憶している。通紙対向サイズ記憶部606は、通紙対向サイズ(ここでは、A4横サイズ297mm)を記憶している。閾値記憶部607は、検出温度閾値と補正温度閾値とを記憶している。
【0053】
ここで、「検出温度閾値」とは、定着ローラー51の非通紙領域の表面温度が所定の制御温度(例えば210℃)に達したときにおける、端部近傍範囲に配置した端部温度センサー55の検出温度の値のことをいい、予め製造者によって測定され、決定される。
例えば、図10に示す対応関係を示すテーブルを用いて、定着ローラー51の非通紙領域の温度が所定の制御温度(210℃)の場合に対応する端部温度センサー55の検出温度(110℃)が検出温度閾値として決定される。
【0054】
又、「補正温度閾値」は、定着ローラー51の非通紙領域の温度が所定の制御温度(例えば210℃)に達したか否かを判定するための閾値であり、所定の制御温度と一致する。
[5]消磁コイル起動制御処理
図12は、制御部60が行う消磁コイル起動制御処理の動作を示すフローチャートである。制御部60は、操作パネル6又はネットワーク接続された外部の端末装置から通信I/F部602を介して印刷ジョブの実行指示を受取ると(ステップS1201)、印刷ジョブの印刷条件を参照して印刷対象となる記録シートのサイズを特定し(ステップS1202)、当該サイズが通紙対向サイズ記憶部606に記憶されている通紙対向サイズと一致するか否かにより、特定したサイズの記録シートを定着ローラー51に通紙した場合に、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向することになるか否かを判定する(ステップS1203)。
【0055】
端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向することになる場合には(ステップS1203:YES)、制御部60は、消磁コイルのオン・オフの制御に用いる制御閾値として、閾値記憶部607に記憶されている検出温度閾値を選択し、実行指示された印刷ジョブを開始する(ステップS1204)。次に制御部60は、端部温度センサー55の検出温度(t2)を取得し、t2が選択した検出温度閾値を超えているか否かを判定する(ステップS1205)。
【0056】
t2が検出温度閾値を超えている場合には(ステップS1205:YES)、制御部60は、切替えリレー96、97をオフに、切替えリレー98をオンに制御して消磁コイル83をオン状態にし、磁束を発生させて、励磁コイル80が発生させる磁束の一部を打ち消して定着ローラー51の非通紙領域における過昇温を抑制する(ステップS1206)。
【0057】
t2が検出温度閾値を超えていない場合には(ステップS1205:NO)、制御部60は、切替えリレー96、97、98を全てオフにし、全ての消磁コイルをオフ状態にする(ステップS1207)。
ステップS1206又はステップS1207の処理の後、制御部60は、実行指示された印刷ジョブが終了するまで(ステップS1208:YES)、ステップS1205〜ステップS1207の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS1203の処理の判定結果が否定的である場合には(ステップS1203:NO)、制御部60は、消磁コイルのオン・オフの制御に用いる制御閾値として、閾値記憶部607に記憶している補正温度閾値を選択し、実行指示された印刷ジョブを開始する(ステップS1209)。次に制御部60は、端部温度センサー55の検出温度(t2)を取得し、取得した検出温度(t2)に基づいて予め決定された補正係数を用いて補正温度(t3)を算出し、t3が選択した補正温度閾値を超えているか否かを判定する(ステップS1210)。
【0059】
t3が補正温度閾値を超えている場合には(ステップS1210:YES)、制御部60は、特定した記録シートのサイズに応じて切替えリレー96〜98の内、対応する切替えリレーをオンに制御して当該消磁コイルをオン状態にし、磁束を発生させて、励磁コイル80が発生させる磁束の一部を打ち消して定着ローラー51の非通紙領域における過昇温を抑制する(ステップS1211)。
【0060】
t3が検出温度閾値を超えていない場合には(ステップS1210:NO)、制御部60は、切替えリレー96、97、98を全てオフにし、全ての消磁コイルをオフ状態にする(ステップS1212)。
ステップS1211又はステップS1212の処理の後、制御部60は、実行指示された印刷ジョブが終了するまで(ステップS1213:YES)、ステップS1210〜ステップS1212の処理を繰り返す。
【0061】
このように、端部温度センサー55を端部近傍範囲に配置することにより、
用紙幅が大きく、記録シートのサイズが、定着ローラー31に通紙した場合に、端部温度センサー55が定着ローラー51の通紙領域と近接して対向することになり、補正温度が定着ローラー51の非通紙領域の温度と対応しない場合には、定着温度以上の高温度側において当該非通紙領域の温度と端部温度センサー55の検出温度とが正に対応して変化するようにし、当該検出温度を用いて定着ローラー51の非通紙領域における消磁コイルのオン・オフを制御することにより、当該非通紙領域における過昇温を防止することができる。
【0062】
[6] 変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1)本実施の形態では、端部温度センサー55を、定着温度(180℃)以上の高温側において当該センサーの検出温度と、定着ローラー51の非通紙領域の温度とが比例関係にある位置に配置することとしたが、当該非通紙領域の温度を、端部温度センサー55を用いて推定するためには、比例関係までは必要ではなく、両者が正の相関関係を有していればよい。
【0063】
(2)本実施の形態では、消磁コイルを用いて定着ローラー51の非通紙領域における過昇温を防止することとしたが、過昇温を防止する手段は、消磁コイルに限定されず、他の冷却手段、例えば、冷却ファンを用いることとしてもよい。
又、本実施の形態では、定着装置の加熱方式を電磁誘導加熱方式としたが、当該加熱方式は、電磁誘導加熱方式に限定されず、他の加熱方式、例えば、熱容量の小さいベルト加熱方式(例えば、ヒータ加熱方式)の定着装置において、本実施の形態の、端部近傍範囲に配置した端部温度センサー55を用いて定着ローラーの非通紙領域の温度制御を行うこととしてもよい。
【0064】
(3)本実施の形態では、所定の制御温度を210℃として、消磁コイル起動制御処理の動作を行うこととしたが、当該制御温度は、定着装置の耐熱性等を考慮して定められるものであり、210℃に限定されず、他の制御温度、例えば、240℃とすることとしてもよい。
(4)本実施の形態では、定着装置5の最大通紙幅をA4横サイズ297mmとしたが、最大通紙幅は、A4横サイズに限定されず、さらに大きい幅、例えば、300nm〜320mmであってもよいし、A4横サイズより小さい幅、B4縦サイズ257mmであってもよい。この場合においても、最大通紙幅の通紙領域の末端から端部温度センサー55が配置される配置位置までの距離の、最大通紙幅に対する比率(%)が、本実施の形態の端部近傍範囲と同一の比率(最大通紙幅の8.2%に相当する長さを超えない範囲)になるようにすることで、本実施の形態の場合と同様の効果が得られる。
【0065】
(5)本発明の実施形態では、消磁コイルを定着ローラー51の幅方向Jの両側に3個ずつ設けることとしたが、消磁コイルの数は、少なくとも1つ以上であればよく、本実施の形態における数に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、定着装置およびそのような定着装置を備えた画像形成装置に関し、特に、複数サイズの記録紙にトナー像を定着する定着装置において、非通紙領域における過昇温を防止する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 プリンタ
3 画像プロセス部
4 給紙部
5 定着装置
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 従動ローラー
13 駆動ローラー
14、35Y クリーナー
31Y 感光体
32Y 帯電器
33Y 現像器
41 給紙カセット
42 繰り出しローラー
43 搬送路
44 タイミングローラー
45 二次転写ローラー
46 二次転写位置
51 定着ローラー
52 加圧ローラー
53 磁束発生部
54 中央部温度センサー
55 端部温度センサー
60 制御部
71 排出ローラー
72 排紙トレイ
80 励磁コイル
81〜83 消磁コイル
84 コイルボビン
85 メインコア
86a、86b 裾コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材により記録シートの未定着画像を熱融着する定着装置であって、
熱融着時に前記加熱部材の非通紙領域の温度が、定着温度より高い所定温度を超えたときに起動し、前記非通紙領域の過昇温を抑制する過昇温抑制装置と、
前記加熱部材における最大通紙幅より幅方向内側の領域の一部と近接して対向する位置に配置され、前記加熱部材の非通紙領域の雰囲気温度を検出することが可能な非接触型の温度センサーと、
前記温度センサーの配置位置が前記加熱部材の通紙領域と対向する場合には、当該温度センサーが検出した温度に応じて、前記非通紙領域の温度が前記所定温度を超えたか否かを判定し、前記所定温度を超えた場合に前記過昇温抑制装置を起動する制御手段と、
を備え、
前記温度センサーは、前記非通紙領域の温度が前記定着温度から前記所定温度までの範囲内にある場合において、当該検出温度と前記非通紙領域の温度とが正の相関関係を示す位置に配置されている
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記相関関係は比例関係である
ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記幅方向内側の領域は、前記最大通紙幅の領域の一方の端部からの幅方向の距離が、前記最大通紙幅の8.2%に相当する長さを超えない範囲にある領域である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記最大通紙幅は、257mmより大きく297mm以下である
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記近接して対向する位置は、前記加熱部材から2〜4mmの距離だけ離れた位置である
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記温度センサーは、サーミスタ素子と当該サーミスタ素子と接触している集熱部材とを含む
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱部材は電磁誘導により発熱する発熱層を有する長尺の加熱回転体であり、
幅方向に沿って前記加熱回転体と対向するように延びる中空長円環状のコイルであって、磁束を発生して前記発熱層を電磁誘導加熱する励磁コイルを備え、
前記過昇温抑制装置は、中空環状のコイルであって、前記励磁コイルよりも幅方向の長さが短く、前記励磁コイルと中空部同士が連通するように前記励磁コイルの一部と幅方向に近接して対向配置され、前記励磁コイルが発生する磁束の一部を打ち消して前記発熱層の電磁誘導加熱を抑制する少なくとも1つの消磁コイルから構成される
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記温度センサーは、前記中空部同士が連通している領域に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の定着装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−92572(P2013−92572A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233132(P2011−233132)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】