説明

定着装置および画像形成装置

【課題】定着装置における冷却効率の向上を図る。
【解決手段】定着ローラ51と、該定着ローラ51を含む複数のローラに張架されて回動する定着ベルト53と、該定着ベルト53を介して定着ローラ51に圧接してニップ部を形成する加圧ローラ52と、定着ベルト53を冷却する冷却手段と、を有し、ニップ部を通過させたトナー画像が形成された記録材を冷却手段により冷却した後に定着ベルト53より剥離する定着装置50において、冷却手段は、定着ベルト53の内周側に設けられ、金属製の冷却ローラ56と、該冷却ローラ56を含む複数のローラに張架されて回動する金属製の冷却ベルト57と、からなり、冷却ベルト57は、定着ベルト53と接触した状態で回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。さらに詳述すると、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に装着される定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が種々考案されており公知技術となっている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録紙(用紙、記録媒体、記録材ともいう)に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録紙上のトナー画像を定着する過程により成立している。
【0003】
この定着装置では、対向するローラもしくはベルトもしくはそれらの組み合わせにより構成された定着部材及び加圧部材が当接してニップ部を形成するように配置されており、該ニップ部に記録紙を挟みこみ、熱および圧力を加え、トナー像を熱で溶融すると同時に両部材間の圧力によって記録紙上に定着することを行っている。
【0004】
また、定着装置として、従来から、定着ベルトを加熱してトナーを溶融した後、分離せず定着ベルトとトナーが密着した状態のまま冷却し、トナー面が所定の温度まで冷却され、トナーが固化した状態で分離する定着装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このような定着装置によれば、トナーが固化した状態で定着面から分離することができるため、分離定着面の平滑性を写し取ることができる(光沢性の向上)。
【0006】
ところで、定着装置における「冷却」は「加熱」に比べ非常に難しいことが知られている。これは、加熱の場合は、素早く加熱するためには必要とする所定の温度に対して加熱温度を大幅に上げ、熱勾配を大きくすることができるのに対し、冷却の場合は、室温より冷却すると空気中の湿気が結露現象を起こすため、冷却温度は室温近傍に設定することになってしまうためである。
【0007】
例えば、熱源として定着ローラ内にハロゲンヒータを使用した場合は、定着ローラを100〜200℃に昇温するために定着ローラ内面を800℃以上に加熱することができ、その温度勾配は600〜700degに達する。しかしながら、冷却の場合は、例えば、140〜160℃程度の定着面を40℃程度まで冷却するために、20〜30℃程度で冷却しても温度勾配は100deg+αであり、圧倒的に冷却の効率が悪いことがわかる。したがって、冷却する場合には加熱と異なり、時間をかけてゆっくり冷却することとなる。
【0008】
また、定着ベルトを利用した加熱の場合、加熱されてから温度が上昇し、高温の間は加熱されたトナーの粘着力で定着面とトナーとは強固に接着している。しかし、加熱後に記録材を定着ベルトと共に冷却し、トナーの温度が充分に下がってしまうと、トナーは冷却につれて固化し、定着ベルトとの接着力が低下し、部分的に浮き上がりが発生し画像ムラの原因となってしまう場合がある。
【0009】
また、特に、冷却中の定着ベルトの進行方向のベクトルが大きく変化した場合(搬送経路上の曲率が変化する場合)、所謂曲率分離を生じさせ、本来分離すべき位置に到達する前に部分的にあるいは全面的に定着ベルトと画像が分離してしまい、画像に冷却ムラの発生や搬送不良が発生するという問題がある。
【0010】
すなわち、定着ベルト及び記録材を冷却する場合、定着ベルトに接する冷却部材の表面のR形状を大きくすることができないので、必然的に平面に近い形状とせざるを得ないこととなる(例えば、特許文献2)。
【0011】
このような問題に対し、例えば、冷却部材として金属ローラ部材(以下、冷却ローラ)に定着ベルトを巻き付けたような構成では、効率的に定着ベルトを冷却することは困難である。すなわち、このような構成とすると、曲率の変化を生じさせないためには、冷却ローラと定着ベルトとが僅かに接触する配置関係にしかできないため、結局、冷却ローラと定着ベルトの間の熱交換が僅かとなり、効率的な冷却が困難である。また、冷却ローラを用いて、十分な冷却効率を得ようとすると、ローラ径を大きくして巨大なローラにする必要があり、装置が大型化するという問題が生じる。また、小径の冷却ローラを多数配列することも考えられるが、構造が複雑になり、コスト高となる。
【0012】
また、冷却部材を回転させることなく定着ベルトと摺動方式とするものもあるが、冷却部材を摺動方式のものとすると、冷却部材と定着ベルト面の摩擦により磨耗が発生するという問題がある。また、冷却部材は定着ベルトから熱の移動を受け、効率の良い熱の排出が行われず(冷媒の温度は室温近傍であるため)、冷却部材表面に定着ベルトから受けた熱の滞留が発生し、冷却効果を定着ベルトに対し発生させることが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上説明したように、従来技術では、冷却部材をローラ形状のものとするとローラ径が大きいローラを用いる必要があり、定着装置が大型化してしまう等の問題があった。また、冷却部材を固定して摺動方式のものとすると、冷却部材と定着ベルトとの摺動により磨耗が発生し、熱の滞留により冷却効率が低下してしまう等の問題があった。
【0014】
そこで本発明は、定着装置の大型化をすることなく、冷却効率の向上を図ることができる定着装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、定着ローラと、該定着ローラを含む複数のローラに張架されて回動する定着ベルトと、該定着ベルトを介して定着ローラに圧接してニップ部を形成する加圧ローラと、定着ベルトを冷却する冷却手段と、を有し、ニップ部を通過させたトナー画像が形成された記録材を冷却手段により冷却した後に定着ベルトより剥離する定着装置において、冷却手段は、定着ベルトの内周側に設けられ、金属製の冷却ローラと、該冷却ローラを含む複数のローラに張架されて回動する金属製の冷却ベルトと、からなり、冷却ベルトは、定着ベルトと接触した状態で回動するものである。
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る定着装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定着装置の大型化をすることなく、冷却効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る定着装置の一実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置の他の実施形態の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す断面図である。
【図4】定着装置の従来構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る構成を図1から図4に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(定着装置)
本実施形態に係る定着装置は、図1に示すように、定着ローラ51と、該定着ローラ51を含む複数のローラ(テンションローラ54、駆動ローラ55)に張架されて回動する定着ベルト53と、該定着ベルト53を介して定着ローラ51に圧接してニップ部を形成する加圧ローラ52と、定着ベルト53を冷却する冷却手段と、を有し、ニップ部を通過させたトナー画像が形成された記録材を冷却手段により冷却した後に定着ベルト53より剥離する定着装置50において、冷却手段は、定着ベルト53の内周側に設けられ、金属製の冷却ローラ56と、該冷却ローラ56を含む複数のローラ(図1の例では2つの冷却ローラ56a,56b)に張架されて回動する金属製の冷却ベルト57と、からなり、冷却ベルト57は、定着ベルト53と接触した状態で回動するものである。
【0021】
定着装置による加熱では、熱源を内蔵した定着ローラ(加熱ローラ)を定着ベルトの張架ローラの一つとして使えるため、定着ベルトとの接触時間が長く取れ、更に熱勾配も大きいので、熱交換をスムーズに進めることができる。
【0022】
しかしながら、加熱後の冷却においては、加熱工程により定着ベルトと記録材が定着密着状態となっており、上述のように、曲率分離を回避するため定着ベルトの搬送方向を急激に変化させることができない。
【0023】
したがって、冷却部材として、冷却ローラのみを用いて定着ベルトを冷却する構成では、冷却ローラに定着ベルトを巻きつけることができないため、冷却ローラとの接触幅(接触時間)を長くとれないことになる。
【0024】
すなわち、冷却ローラと定着ベルトの接触幅を確保するためには、冷却ローラにベルトを実際にある張力のもと巻いてやればよいのではあるが、そうするとベルトの走行が大きな曲率のもと通されるので、加熱されベルトに張り付いた状態の記録紙が冷却される前に剥離が始まってしまい。所望の光沢度を得ることができない。以上から、記録紙が完全に冷却されるまでは定着ベルトの走行は極力直線的であることが望ましいこととなる。
【0025】
そこで、本実施形態に係る定着装置は、図1に示すように、トナー画像を加熱溶融後、冷却分離する定着装置50であって、張架された定着ベルト53内に、加熱部を含まず、少なくとも1以上の冷却ローラ56に張架された冷却ベルト57を定着ベルト53内面に密着させることで、定着ベルト53の熱を奪い定着ベルト53を冷却するようにしている。
【0026】
すなわち、加熱後に冷却すべき定着ベルト53を冷却するために、定着ベルト内部に冷却用の金属ベルト(冷却ベルト57)を配置し、その冷却ベルト57の冷却を、回転するローラ(冷却ローラ56)で冷却するようにし、さらに、冷却ベルト57と定着ベルト53とを密着状態とすることで、定着ベルト53から冷却ベルト57へ熱移動が生じさせ、時間と共に冷却ベルト57の温度を上昇させて、相対的に定着ベルト53の温度を低下させるものである。
【0027】
このように、冷却ベルト57を冷却ローラ56に張架することで冷却ベルト57と冷却ローラ56との接触時間が充分確保され、摺動ではなく密着による接触なので摺動熱抵抗がなく効率良く冷却が行うことができる。また、冷却ベルト57と定着ベルト53のベルト同士の密着であるため、磨耗も殆ど生じない。
【0028】
また、回動により定着ベルト53と接触を離れた部分の冷却ベルト57は冷却ローラ56に対して大きく巻かれているので、冷却ローラ56により所定温度まで再度冷却され、再び定着ベルト53に接触する時には常に安定な冷却温度に到達した状態となるものである。
【0029】
なお、冷却ローラ56は、定着ベルト53の回転に、冷却ベルト57を介して従動回転するものであるが、別途、冷却ローラ56の駆動手段を設けて冷却ローラ56を駆動回転させるものであっても良い。
【0030】
本実施形態に係る定着装置50によれば、冷却の際に、確実な熱交換を行なうことが可能となり、従来の摺動型の定着ベルト冷却装置や、定着ベルトを直接冷却ローラで冷やす構成の定着装置に比して、熱の滞留を防止して高効率の熱交換を可能とし、冷却効率の向上を図ることができる。また、回転接触による摺動を回避することができるため定着ベルト等の長寿命化を図ることができる。また、大径の冷却ローラ等を用いる必要がないため、定着装置の小型化を図ることも可能となる。
【0031】
ここで、冷却ローラ56の材質としては、全ての汎用金属が考えられ、例えば、鉄、アルミニウム、銅などを用いることができる。また、冷却ローラ56の表面には、薄い弾性層や樹脂層を設けることが好ましく、これにより、冷却ベルト57への密着性を向上させることができる。なお、冷却ローラ56の肉厚は、例えば、0.5〜20mm程度が好ましく、冷却ベルト57の厚みは例えば、0.04〜0.4mm程度が望ましい。
【0032】
なお、定着ローラ51は、内部に熱源58としてのハロゲンランプを有している。また、定着ベルト53は、定着ローラ51、テンションローラ54および駆動ローラ55に張架されており、駆動ローラ55の回転に従動して回転するものである。
【0033】
また、図1に示す例では、冷却ベルト57は、2つの冷却ローラ56a,56bに張架されているが、少なくとも1つの冷却ローラ56に張架されていればよく、例えば、冷却ローラ56とテンションローラ等に張架されていても良い。
【0034】
また、冷却ベルト57の張力は、冷却ベルト57を構成する金属の弾性(自己バネ性)により維持される。したがって、冷却ベルト57は冷却ローラ56に接触していない部分においては見かけ弛み状態であるが、実際は円筒状のベルトを冷却ベルト57に懸架しているので冷却ベルト57のバネ性の反発に対抗する張力が冷却ベルト57にかかっている。
【0035】
この冷却ベルト57のバネ性は非常に重要であり、冷却ローラ56と張架された冷却ベルト57を定着ベルト53の内面から押し付ける際に、定着ベルト53に対して少し弛んだ冷却ベルト57によりベルトの反発力で定着ベルト53との密着が維持される。更に定着ベルト53の張力による反発で冷却ベルト57が押し付けられ、弛んだ冷却ベルト57の膨らみは抑えられ、スムーズな定着ベルト53の搬送曲線を実現することができる。
【0036】
冷却ローラ56の冷却方法は、特に限られるものではないが、例えば、ファン等の空冷手段を設け冷却ローラ内部を空冷しても良いし、また、冷却ローラ内部を、液体を冷媒として用いて冷却するようにしても良い(液体冷却手段)。
【0037】
また、冷却ローラ56の内周側に、冷却フィンを設けることも好ましい。これにより、空冷を効果的に行うことが可能となり、また、冷媒との接触面積を増加させることも可能となり、熱交換効率の上昇を図ることができる。
【0038】
また、冷媒として液体を使用する場合には、冷却ローラ56に液体冷媒を通すためにロータリージョイント(回転継手)を用いることも好ましい。
【0039】
なお、冷却ローラ56の冷却は、上述の複数の手段を適宜組み合わせて用いるようにしても良いのは勿論である。
【0040】
また、図2にしめすように、冷却ローラ56a,56bおよびこれに張架される冷却ベルト57により構成される冷却ユニット(冷却手段)を搬送方向に沿って複数備えるようにすることも好ましい。図2に示す例では、冷却ユニットを2つ設けた例を示しているが、ユニット数は、3以上であっても良いのは勿論である。このように複数の冷却ユニットを用いることにより、冷却効率を更に向上させることができ、効率的に所望の冷却温度とすることが可能となる。
【0041】
(画像形成装置)
図3に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるカラー複写機の全体概略構成を示す。図中符号100は、複写機本体である。複写機本体100には、中央に、無端ベルト状の中間転写体10を、図示例では駆動ローラ14と第1の従動ローラ15と第2の従動ローラ16に掛け回して図中時計まわりに回転搬送可能に設ける。もちろん、別途中間転写体10の片寄りを調整するローラに掛け回すなど、4つ以上のローラに掛け回すようにしてもよい。なお、中間転写体10は、図示例ではほぼ水平に張り渡すが、水平ではなく、斜めに傾斜して張り渡すようにしてもよい。
【0042】
この図示例では、図示省略するが、第2の従動ローラ16に近接し、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置を設ける。
【0043】
また、駆動ローラ14と第2の従動ローラ16間に張り渡した中間転写体10上には、その搬送方向に沿って、ブラック・イエロ・マゼンタ・シアンの4つの単色作像手段18を横に並べて配置してタンデム作像装置20を設ける。タンデム作像装置20の上には、さらに露光装置21を設ける。
【0044】
一方、中間転写体10の張り渡し領域の下方には、ローラを用いた2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、第1の従動ローラ15に押し当てて中間転写体10上の画像を記録媒体Pに転写する。2次転写装置22の横には、図示例では、2つのローラ23間に、無端ベルトである搬送ベルト24を掛け渡して設ける。搬送ベルト24の横には、記録媒体P上の転写画像を定着する定着装置50を設ける。
【0045】
上述した2次転写装置22には、画像転写後の記録媒体Pを搬送する媒体搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置22として、非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合は、この媒体搬送機能を併せて備えることは難しくなる。
【0046】
さて、このような2次転写装置22、搬送ベルト24、および定着装置50の下方には、用紙・OHPフィルム等の記録媒体Pを収納する媒体収納カセット28を備える。
【0047】
ところで、いまこのカラー複写機を用いてコピーをとるときは、スキャナ200の原稿台30上に原稿Gをセットし、不図示の原稿押えで押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、スキャナ200を駆動して原稿内容を読み取ることができる。すなわち、ハロゲンランプ等の光源31で原稿Gを照射してその反射光をミラー32で反射し、レンズ33を透して集光してCCD34に入れ、画像を電気信号に変換する。
【0048】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、同時に不図示の駆動モータで駆動ローラ14を回転駆動して従動ローラ15・16を従動回転し、中間転写体10を回転搬送する。同時に、個々の単色作像手段18でその像担持体40を回転して各像担持体40上にそれぞれ、ブラック・イエロ・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次重ね1次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。
【0049】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙コロ35を回転し、媒体収納カセット28から記録媒体Pを繰り出し、給紙路36に入れてレジストローラ37に突き当てて止める。
【0050】
そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ37を回転し、中間転写体10と2次転写装置22との間に記録媒体Pを送り込み、2次転写装置22で中間転写体10上の合成カラー画像を一括して2次転写して記録媒体P上にカラー画像を形成する。
【0051】
画像転写後の記録媒体Pは、搬送ベルト24で搬送して定着装置50へと送り込み、定着装置50で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、排紙トレイ38上にスタックする。この定着装置50として、上述の定着装置(図1、図2)を用いることにより、定着装置の大型化をすることなく、かつ、定着装置における冷却効率の向上を図ることができる画像形成装置を構成することができる。
【0052】
一方、画像転写後の中間転写体10は、不図示のベルトクリーニング装置で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム作像装置20による再度の画像形成に備える。
【0053】
さて、上述したタンデム作像装置20において、各単色作像手段18は、詳しくは、ドラム状の像担持体40のまわりに、帯電装置41、現像装置42、1次転写装置43、クリーニング装置44、不図示の除電装置などを備えてなる。
【0054】
図示省略するが、これら単色作像手段18を構成する部分の全部または一部でプロセスカートリッジを形成し、複写機本体100に対して一括して着脱自在としてメンテナンス性を向上するようにしてもよい。
【0055】
単色作像手段18を構成する部分のうち、帯電装置41は、図示例では帯電ローラを用い、像担持体40に接触して電圧を印加することによりその像担持体40の帯電を行う。
【0056】
現像装置42は、図示例では、磁性キャリアと非磁性トナーとよりなる二成分現像剤を使用する。
【0057】
1次転写装置43は、ローラ状とし、中間転写体10を挟んで像担持体40に押し当てて設ける。なお、ローラ状に限らず、ブラシや非接触のチャージャであってもよい。
【0058】
クリーニング装置44は、像担持体40に接触してクリーニングブレードやクリーニングブラシなどのクリーニング部材を備え、そのクリーニング部材で像担持体40上の残留トナーを除去する。
【0059】
不図示の除電装置は、例えばランプであり、光を照射して像担持体40の表面電位を初期化する。
【0060】
そして、像担持体40の回転とともに、まず帯電装置41で像担持体40の表面を一様に帯電し、次いでスキャナ200の読取り内容に応じ、上述した露光装置21において、レーザやLED等による書込み光Lをポリゴンミラー47で反射してさらにミラー48で反射し、像担持体40に照射して像担持体40上に静電潜像を形成する。
【0061】
その後、現像装置42によりトナーを付着してその静電潜像を可視像化し、その可視像を1次転写装置43で中間転写体10上に転写する。画像転写後の像担持体40の表面は、クリーニング装置44で残留トナーを除去して清掃し、除電装置で除電して再度の画像形成に備える。
【0062】
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0063】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
実施例1では、図1に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI(ポリイミド)、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304(オーステナイト系ステンレス)、ベルト長250mm、厚み0.2mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:100mm/sec
冷却ゾーン長さ:290mm
【0066】
実施例1の条件で通紙を行ったところ、ムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%)。
【0067】
<比較例1>
比較例1では、従来構成である冷却用のジャケット(冷却ジャケット59)に対して定着ベルト53を摺動させ、冷却する定着装置(図4)を、以下の条件で用いた。
【0068】
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ジャケット59:アルミニウム、厚み0.8mm、表層アルマイト厚み0.05mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:100mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm
【0069】
比較例1では、通紙前の空回転で分離時定着ベルト設定温度が40℃のところ60℃まで上昇してしまった。このような構成では、定着ベルトと冷却ジャケットとの摩擦が生じ、摺動による接触熱抵抗が大きいことと、同じ面が常に熱の移動を受け続けることによる熱の滞留があり、冷却効率があまりあがらないことを確認した。
【0070】
<比較例2>
比較例2では、従来構成である冷却用のジャケット(冷却ジャケット59)に対して定着ベルト53を摺動させ、冷却する定着装置(図4)を、以下の条件で用いた。
【0071】
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ジャケット59:アルミニウム、厚み0.8mm、表層アルマイト厚み0.05mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm
【0072】
線速の異なる比較例2でも、比較例1と同様に、通紙前の空回転で分離時定着ベルト設定温度が40℃のところ60℃まで上昇してしまい、冷却効率があまりあがらないことを確認した。
【0073】
<実施例2>
実施例2では、図1に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304、ベルト長250mm、厚み0.2mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:290mm
【0074】
線速の異なる実施例2でも、実施例1と同様に、ムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%)。
【0075】
<実施例3>
実施例3では、図2に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304、ベルト長250mm、厚み0.2mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm(冷却ユニット2つ)
【0076】
空回転時設定温度と表示温度の差がないことを確認後、上記条件で通紙を行ったところ、ムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%以上)。
【0077】
<実施例4>
実施例4では、図2に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み4mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304、ベルト長250mm、厚み0.3mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm(冷却ユニット2つ)
【0078】
空回転時設定温度と表示温度の差がないことを確認後、上記条件で通紙を行ったところ、ムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%以上)。
【0079】
<実施例5>
実施例5では、図2に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み1mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304、ベルト長250mm、厚み0.06mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:100mm/sec
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm(冷却ユニット2つ)
【0080】
空回転時設定温度と表示温度の差がないことを確認後、上記条件で通紙を行ったところ、2線速ともにムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%以上)。
【0081】
<実施例6>
実施例6では、図2に示す定着装置50において、以下の構成、条件下で、記録材の通紙を行った。
定着ローラ51:アルミニウム、直径100mm、厚み0.5mm
定着ベルト53:PI、ベルト長2000mm、厚み0.09mm、表層の厚み0.04mm
冷却ローラ56:アルミニウム、直径70mm、厚み0.8mm、表層(シリコンゴム)厚み0.05mm
冷却ベルト57:Sus304、ベルト長250mm、厚み0.1mm
熱源58:ハロゲンランプ
定着時設定温度:160℃
分離時定着ベルト面設定温度:40℃
線速:100mm/sec
線速:200mm/sec
冷却ゾーン長さ:700mm(冷却ユニット2つ)
【0082】
空回転時設定温度と表示温度の差がないことを確認後、上記条件で通紙を行ったところ、2線速ともにムラのない良好な光沢画像を得ることを確認できた(光沢度60%以上)。以上の実施例より、本発明の有効性を確認することができた。
【符号の説明】
【0083】
10 中間転写体
14 駆動ローラ
15 第1の従動ローラ
16 第2の従動ローラ
18 単色作像手段
20 タンデム作像装置
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 搬送ベルト
28 媒体収納カセット
30 原稿台
31 光源
32 ミラー
33 レンズ
34 CCD
35 給紙コロ
36 給紙路
37 レジストローラ
38 排紙トレイ
40 像担持体
41 帯電装置
42 現像装置
43 1次転写装置
44 クリーニング装置
47 ポリゴンミラー
48 ミラー
50 定着装置
51 定着ローラ
52 加圧ローラ
53 定着ベルト
54 テンションローラ
55 駆動ローラ
56,56a,56b 冷却ローラ
57 冷却ベルト
58 熱源
59 冷却ジャケット
100 複写機本体
200 スキャナ
G 原稿
L 書込み光
P 記録媒体(用紙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2005−292578号公報
【特許文献2】特開2007−121653号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラと、
該定着ローラを含む複数のローラに張架されて回動する定着ベルトと、
該定着ベルトを介して前記定着ローラに圧接してニップ部を形成する加圧ローラと、
前記定着ベルトを冷却する冷却手段と、を有し、
前記ニップ部を通過させたトナー画像が形成された記録材を前記冷却手段により冷却した後に前記定着ベルトより剥離する定着装置において、
前記冷却手段は、前記定着ベルトの内周側に設けられ、
金属製の冷却ローラと、
該冷却ローラを含む複数のローラに張架されて回動する金属製の冷却ベルトと、からなり、
前記冷却ベルトは、前記定着ベルトと接触した状態で回動することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記冷却ベルトは、複数の冷却ローラに張架されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記冷却ローラ内部を空冷する空冷手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記冷却ローラ内部を、液体を用いて冷却する液体冷却手段を備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記液体冷却手段としてロータリージョイントを備えたことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記冷却ローラは、内部に冷却フィンを有することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記冷却ローラと、該冷却ローラに張架される冷却ベルトからなる冷却手段を、前記定着ベルトの回転方向に複数備えたことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92646(P2013−92646A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234660(P2011−234660)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】