説明

定着装置および該定着装置を有する画像形成装置

【課題】 記録媒体に与える熱と圧力の負荷に起因するクセの発生を軽減することができる定着装置および該定着装置を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 第1ローラ11及び第2ローラ12に掛け渡される定着ベルト10と、定着ベルト10を加熱するヒータ13と、定着ベルト10を介して第1ローラ11との間にニップ部を構成し該定着ベルトとともに回転する加圧ローラ14,15がシート材の搬送方向Sに対して複数個設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのベルト支持部材に掛け渡される定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記定着ベルトを介して前記ベルト支持部材の1つとの間にニップ部を構成し該定着ベルトとともに回転する加圧回転体とを有し、前記ニップ部で未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持搬送することにより、熱と圧力の作用により未定着トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置および該定着装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ.或いはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機などとして構成される画像形成装置において上記形式の定着装置が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−76202号公報
【0004】
かかる定着装置としては、特許文献1に開示されているように、定着ベルトに加圧部材を圧接させ、未定着トナー像を担持した記録媒体であるシート材を、そのトナー像が定着ベルトに圧接する向きにして定着ベルトと加圧部材との圧接部、すなわちそのニップ部を通過させる形式の装置が知られている。
【0005】
この種の定着装置においては、未定着トナー像の定着不良を起こさせないために充分な熱と圧力の作用を与える必要があるが、その一方で熱と圧力の作用はニップ部を通過するシート材に負荷を与えてしまい、その結果、作用させた熱と圧力に起因してシート材にカール等のクセ(以下、カールクセという。)を生じてしまう。
【0006】
シート材のカールクセは一度生じてしまうと、その除去が非常に困難であり、且つ経時においてもシート材のカールクセが完全に無くなるまでには至らない。従って、画像形成後のシート材品質を落とすことは勿論のこと、定着装置の下流側に設けたシート材受け部材上に画像形成後のシート材を積載させる場合においても積載不具合を生じやすくなってしまう。これにより、シート材積載の品質確保のため、その他多くのシート材姿勢教示部材を必要となってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、記録媒体に与える熱と圧力の負荷に起因するクセの発生を軽減することができる定着装置および該定着装置を有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、少なくとも2つのベルト支持部材に掛け渡される定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記定着ベルトを介して前記ベルト支持部材の1つとの間にニップ部を構成し該定着ベルトとともに回転する加圧回転体とを有し、前記ニップ部で未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持搬送することにより、熱と圧力の作用により未定着トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、前記加圧回転体が前記記録媒体の搬送方向に対して複数個設けられていることを特徴とする定着装置を提案する。
【0009】
なお、本発明は、前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の径をD1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の径をD2とすると、D2≦D1であると、効果的である。
【0010】
さらに、本発明は、前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の加圧力をP1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の加圧力をP2とすると、P2≦P1であると、効果的である。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体が樽状に形成されたローラであると、効果的である。
さらにまた、本発明は、前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の硬度をh1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の硬度をh2、前記定着ベルトを介して加圧回転体と当接するベルト支持部材の硬度をh3とするとh2<h3<h1であると、効果的である。
【0012】
また、本発明の他の目的を達成するため、本発明の画像形成装置において、記録媒体上にトナー像を形成する作像手段と、該作像手段によって記録媒体上に形成されたトナー像を定着する請求項1ないし5の何れかに記載の定着装置とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、圧力の作用を与える加圧部材を少なくとも複数個有し各1個ごとの加圧力を抑えることで、定着不良を起こさせない圧作用力を保持したままシート材のカールクセを抑制する機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、画像形成装置の実施形態を示す外観図、図2はその画像形成装置の記録媒体の搬送経路の一部を示す斜視図であり、この画像形成装置は記録媒体としてのシート材Pにトナー像を形成する作像手段(図示せず)と、そのトナー像をシート材P(図3に示す)に定着する定着装置1とを有しており、定着を終えたシート材Pは図2に示すシート搬送経路Aを通って排紙トレイ2に排紙され、そこにストックされる。
【0015】
図3は、定着装置1から排紙トレイ2までのシート搬送経路を示す説明図である。
図3において、定着装置1はベルト支持部材としての第1ローラ11と第2ローラ12に巻き掛けられた定着ベルト10を有し、第1ローラ11の内部には加熱手段としてヒータ13が内蔵されている。第1ローラ11には定着ベルト10を介して複数個の加圧回転体が当接されている。本実施形態における加圧回転体はシート材の搬送方向Sに対して上流加圧ローラ14と下流加圧ローラ15とで構成され、定着装置1には上流及び下流加圧ローラ14,15によるニップ部が形成されている。また、第1ローラ11が図示していない駆動装置によって図3の時計方向に回転駆動されることにより、定着ベルト10が矢印B方向に回転され、加圧ローラ14,15は反時計方向に従動回転される。
【0016】
なお、図示した例では、定着ベルト10が第1ローラ11と第2ローラ12の2つのローラに巻き掛けられているが、定着ベルト10を3以上のローラに掛け渡すように構成することもできる。
【0017】
図示していない作像手段で形成された未定着トナー像を担持したシート材Pが、定着装置1に搬送され、そのトナー像が定着ベルト10に接する向きにして、定着ベルト10と上流加圧ローラ14のニップ部に入り込み、続いて定着ベルト10と加圧ローラ15のニップ部に入り、ここを通過する。このときトナー像に圧力が加えられると共に、熱を与えられてトナーが加熱溶融されてトナー像がシート材Pに定着される。
【0018】
なお、各部材の材質として、第1ローラ11は、例えば、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼等の中空金属円筒体状の薄肉ローラとして構成できる。加圧ローラ14,15として構成された加圧回転体は、例えば、芯金20と、そのまわりに設けられた弾性を有する断熱性の発泡体層と、その発泡体層のまわりに設けられた離型層とから構成することができる。
【0019】
定着ベルト10の基材には、例えば耐熱性樹脂や、金属から形成されたエンドレスのベルト状基材を用いることができる。耐熱性樹脂の材質としては、ポリイミド、ポリアミドイド、ポリエーテルケトン(PEEK)等を使用し、金属ベルトの材質としては、ニッケル、アルミニウム、鉄等を使用することができる。その定着ベルト10の表面は、シート材とトナーとに加圧接触するので、離型性を有していることが好ましく、しかも耐熱性、耐久性に優れていることが好ましい。このため、定着ベルト10の表層は、例えばフッ素系樹脂、高離型シリコーンゴム等の耐熱性離型層であることが望ましい。
【0020】
このように構成された定着装置1は、加圧回転体である加圧ローラ14,15が複数、本例では2個設けられているので、定着に必要な加圧力を確保しても加圧ローラ14,15の1個毎の加圧力を抑えることができる。したがって、シート材Pがニップ部で受ける熱や圧の負荷が分散され、定着に必要な熱及び圧を受けるにも拘らず、個々の加圧ローラ14,15の加圧力を下げられており、カールクセの発生を抑えることができる。
【0021】
図4は、本発明の他の実施形態における定着装置1から排紙トレイ2までのシート搬送経路Aを示す説明図である。
上記構成のように、複数個の加圧ローラ14,15とニップ部を形成される定着ベルト10においては、搬送されるシート材に熱を奪われるため、特に連続搬送状態においてシート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15による定着性能がその上流側の上流加圧ローラ14による定着性能より低くなるが、その分下流側の下流加圧ローラ15においてはシート材Pのカールクセが生じにくくなると言える。
【0022】
そこで、図4の実施形態ではかかる定着の傾向を利用してシート材搬送方向上流側の上流加圧ローラ14の径をD1、シート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15の径をD2とすると、D2≦D1に設定する。このように設定することにより、シート材Pのカールクセの発生をより効果的に抑えられる。
【0023】
図5は、本発明のさらに他の実施形態における定着装置1を示す説明図である。
シート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15による定着性能がその上流側の上流加圧ローラ14による定着性能より低くなることは上述の通りである。したがって、複数のニップ部を有しているとは言え、シート材搬送方向S上流側の上流加圧ローラ14による定着性能が充分でなければ安定した定着性能の確保が困難である。
【0024】
そこで、本実施形態ではシート材搬送方向S上流側の上流加圧ローラ14による良好な定着性能を得るため、シート材搬送方向S上流側の上流加圧ローラ14による加圧力をP1、シート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15による加圧力をP2とすると、P2≦P1に設定する。このように設定することにより、複数個の加圧ローラを設けても安定した定着性能が実現できる。
【0025】
ところで、上記構成の定着装置では加圧回転体を複数個設けるため、1枚のシート材Pが同時に複数のニップ部を通過することになる。このとき、各ニップ間に搬送方向のズレが存在すると、このズレがシート材Pに伝わり最悪の場合シート材Pが破損したりシワが発生したりする。
【0026】
そこで、図6に示す本発明のさらに他の実施形態ではシート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15の形状を樽形状とし、該下流加圧ローラ15の端部では殆ど圧が作用しない状態に設ける。
【0027】
このように構成することにより、ニップ部間で生じた搬送方向のズレをシート材搬送方向S下流側の下流加圧ローラ15の方で吸収させることができる。したがって、シート材の変形を招く恐れのない定着装置1を実現することができる。
【0028】
加圧ローラ14、15と定着ベルト10を介して第1ローラ11の間に形成されるニップ部においては、高い圧力が作用するというニップ部の構成上、硬度の高い部材が硬度の低い部材の方に食い込んだ状態で設けられており、この食い込みがシート材のカールクセを引き起こす要因の1つとなっている。
【0029】
そこで、図7に示す本発明のさらに他の実施形態では上流加圧ローラ14の硬度をh1、下流加圧ローラ15の硬度をh2及び第1ローラ11の硬度をh3とすると、h2<h3<h1に設定する。すなわち、下流加圧ローラ15の硬度より第1ローラ11の硬度が硬く、第1ローラ11の硬度よりも上流加圧ローラ14の硬度が硬くなるとように設定している。
【0030】
このように構成することで、上流加圧ローラ14のニップ部で生じたシート材のカールクセを、それより下流側の下流加圧ローラ15のニップ部で補正する作用がシート材に働き、シート材のカールクセを低減させることができる。
【0031】
以上説明した各構成は、図3に示した形態以外の各種定着装置にも広く適用できるものである。例えば、定着ベルトを支持するベルト支持部材はローラに限らず、例えば断面半月状等のベルトを摺動支持できるアール部分を有する部材で構成することもできる。また、加熱手段は第1ローラ11ではなく第2ローラ12に設けたもので良いし、また、定着ベルトを外部に設けた熱源で直接加熱するものでもあっても良い。さらに、加熱手段は加圧回転体側にも設けることもできる。なお、加圧ローラは複数個設けることができるが、定着性の確保、設置箇所等の条件から照らしてせいぜい2,3個である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の画像形成装置のシート材搬送経路の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明の定着装置の一実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の定着装置の他の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の定着装置のさらに他の実施形態を示す説明図である。
【図6】本発明の定着装置のまたさらに他の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明の定着装置のまたさらに他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 定着装置
10 定着ベルト
11 第1ローラ
12 第2ローラ
14 上流加圧ローラ
15 下流加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのベルト支持部材に掛け渡される定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記定着ベルトを介して前記ベルト支持部材の1つとの間にニップ部を構成し該定着ベルトとともに回転する加圧回転体とを有し、前記ニップ部で未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持搬送することにより、熱と圧力の作用により未定着トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、
前記加圧回転体が前記記録媒体の搬送方向に対して複数個設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の径をD1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の径をD2とすると、D2≦D1であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の加圧力をP1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の加圧力をP2とすると、P2≦P1であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体が樽状に形成されたローラであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧回転体の中、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けた上流加圧回転体の硬度をh1、該上流加圧回転体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に設けた下流加圧回転体の硬度をh2、前記定着ベルトを介して加圧回転体と当接するベルト支持部材の硬度をh3とするとh2<h3<h1であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
記録媒体上にトナー像を形成する作像手段と、該作像手段によって記録媒体上に形成されたトナー像を定着する請求項1ないし5の何れかに記載の定着装置とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−41131(P2007−41131A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222837(P2005−222837)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】