説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】定着ベルトと加圧部材とのニップ部における定着ベルトと加圧部材との間の滑りを効果的に抑制可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置13は、無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21に内接するベルト支持部材22と、ベルト支持部材22の両端に回転可能に付設された一対の押圧コロ31と、定着ベルト21を介してベルト支持部材22及び押圧コロ31に圧接される加圧ローラー23と、定着ベルト21を挟んで加圧ローラー23の反対側に配置される誘導加熱部25と、を含む構成である。押圧コロ31の外周面31aは、ベルト支持部材22の定着ベルト21との対向面22bよりも加圧ローラー23側に突出しており、押圧コロ31と加圧ローラー23との対向部Sにおいてはベルト支持部材22と加圧ローラー23との対向部(定着ニップ部N)よりも高い押圧力が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した定着ベルトと加圧部材とのニップに、未定着トナー画像を担持した用紙を挿入して未定着トナーを加熱、溶融し、用紙に定着するベルト定着方式の定着装置、及びそれを備えた電子写真方式を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた従来の画像形成装置においては、ニップを形成する定着ローラー対の少なくとも一方のローラーに熱源を内蔵させて加熱ローラーとし、このローラー対のニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって用紙にトナーを定着する熱ローラー定着方式が広く用いられている。
【0003】
このような熱ローラー定着方式では、加熱ローラーに内蔵されたハロゲンランプなどの熱源からローラー表面までの熱伝達の効率が低く、熱の損失が大きい。また、ローラー表面まで熱が伝達するのに長い時間が必要である。その結果、加熱効率が悪いために消費電力が多く、ローラー表面が定着可能な温度に達するまでのウォームアップ時間が長くなるなどといった問題があった。
【0004】
また、加熱ローラーとして金属製の円筒表面にフッ素樹脂をコーティングしたハードローラーを用い、加圧ローラーとしてゴムローラーを用いた場合、ローラー対のニップ部の断面形状が加圧ローラー側に凸の円弧状となる。そのため、加熱により水分が蒸発して加熱ローラー側にカールした用紙がニップ形状によってさらにカールし円筒状になってしまう。逆に、加熱ローラー側にゴムローラーを用い、加圧ローラー側にハードローラーを用いた場合は、用紙の裏面にトナーが存在する両面印字時に加圧ローラー側に用紙が巻き付いてジャムが発生するおそれがあった。一方、加熱ローラー側及び加圧ローラー側の両方にゴムローラーを用いる構成では、ニップ部の断面形状は直線状となり用紙のカールは発生し難くなるが、封筒や送り状のように2枚以上の紙が重なった用紙では紙がずれて皺が発生するという問題点があった。
【0005】
これらの問題点を改善するために、用紙を加熱するための加熱部材を、加熱ローラーに代えて発熱源からの輻射光を吸収して発熱する無端状の定着ベルトとし、定着ベルトとこれに圧接される加圧部材とのニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって用紙にトナーを定着するベルト定着方式が開発されている。このベルト定着方式では、熱ローラー定着方式に比べ熱容量を小さくしてウォームアップ時間を短縮するとともに、消費電力を低減することができる。
【0006】
定着ベルトの駆動方法としては、例えば特許文献1には、無端状の定着ベルトの回転軸方向の両端にフランジ状のエンドキャップ部材を固定し、エンドキャップ部材に形成されたギアを介して定着ベルトを駆動する構成が開示されている。また、特許文献2には、無端状の定着ベルトの内側のニップ部下流位置に配置された張架ローラーによって定着ベルトを駆動する構成が開示されている。さらに、特許文献3には、無端状の定着ベルトの内側にベルト駆動用の第1ローラーを設け、定着ベルトの非通紙領域の少なくとも一部に密嵌(内接)されるとともに、通紙領域において遊嵌されるように第1ローラーの軸方向において外径を変化させた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−227106号公報
【特許文献2】特開2004−286921号公報
【特許文献3】特開2010−139934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようなベルト定着方式を用いた画像形成装置では、特にカラー機の場合、モノクロ機に比べて記録媒体へのトナーの付着量が多いため、記録媒体にトナーを定着させる際に記録媒体が定着ベルトに接触している時間(ニップ時間)を長くとる必要がある。そして、ニップ時間を長くとるためには定着ベルトと加圧部材とのニップ部の面積(ニップ幅)を十分に確保する必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1〜3のように定着ベルトを直接駆動する方法では、定着ベルトの内側に配置したエンドキャップ部材、張架ローラー、第1ローラー等の押圧部材を回転させる必要があるため、ニップ部の形状や幅を自由に設定することが困難であった。
【0010】
また、一般的にニップ幅を広くする方法として、大径の加圧ローラーを用いる方法や、加圧ローラー表面のゴム厚を増加させるか、或いはゴム硬度を低下させる方法、加圧ローラーの押圧力を高める方法等が知られている。しかし、加圧ローラーの大径化は定着装置の大型化やコストアップを招き、ゴム厚の増加はウォームアップ時間の延長を招くおそれがあった。また、ゴム硬度の低下は温度による外径変化が大きくなるため搬送性の低下を招き、耐久性も低下する。さらに加圧ローラーの押圧力の上昇は、ローラー表面の撓み量の過多による搬送性の低下や定着フレーム補強によるコストアップに繋がる。
【0011】
そこで、定着ベルトの内側にベルト支持部材を配置し、定着ベルトの外側からベルト支持部材に加圧ローラーを圧接するとともに、加圧ローラーと定着ベルトの外面との摩擦力によりベルト支持部材と定着ベルトの内面とを摺動させて定着ベルトを回転駆動させる摺動ベルト定着方式が考案されている。摺動ベルト方式では、ベルト支持部材の形状を平面状や曲率の小さいR形状とすることにより、低い押圧力で広いニップ幅を得ることができる。
【0012】
ところで、摺動ベルト方式では、ニップ部を用紙が通過している間は定着ベルトと加圧ローラーとが通紙領域外でしか接触しておらず、定着ベルトを駆動させる摩擦力が低下する。また、定着ベルトの表層にはトナーに対する離型性を高めるためにフッ素系樹脂が用いられるため元々摩擦係数が低い上、紙粉やトナーの付着により接触面積が減少して更に摩擦係数が低下する。その結果、定着ベルトと加圧ローラーとの間に滑りが発生し、定着ベルトと用紙上に担持された溶融状態の未定着トナー画像との間にも滑りが発生するため、画像のざらつきやトナーが局部的に脱落することによる白点等の画像乱れが発生するという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、定着ベルトと加圧部材とのニップ部における定着ベルトと加圧部材との間の滑りを効果的に抑制可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、記録媒体の搬送速度と略等速で回動可能な無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記定着ベルトに内接して前記定着ベルトを摺動可能に支持するベルト支持部材と、該ベルト支持部材に前記定着ベルトを介して所定の圧力で当接するとともに前記定着ベルトに回転駆動力を付与する加圧部材と、を備え、前記定着ベルトと前記加圧部材により形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置において、前記ベルト支持部材の幅方向外側に、前記定着ベルトを前記ベルト支持部材よりも大きい圧力で前記加圧部材に押圧する一対の従動回転体を設けたことを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記従動回転体は、記録媒体の挿通領域の外側に配置されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記一対の従動回転体間の距離は、前記定着ベルトの進行方向上流側における距離が、進行方向下流側における距離よりも短いことを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記従動回転体は、前記定着ベルトの幅方向端縁に重なるように配置され、前記定着ベルトと前記加圧部材の両方に接触することを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記従動回転体は、前記定着ベルトに接触する内径部と、前記加圧部材に接触する前記内径部よりも直径の大きい外径部とを有し、前記外径部と前記内径部の直径差は前記定着ベルトの厚みの2倍以下であることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記従動回転体の外周面は、前記定着ベルトの幅方向内側から外側に向かって直径が大きくなるテーパー形状であることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記定着ベルトの内面に潤滑剤が塗布されていることを特徴としている。
【0021】
また本発明は、上記構成の定着装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の構成によれば、従動回転体の対向部においてはベルト支持部材の対向部よりも高い圧力で定着ベルトが加圧部材に圧接される。これにより、ベルト支持部材が対向する定着ニップ部に記録媒体が通紙された状態であっても、定着ベルトと加圧部材との間に大きな摩擦力が維持されるため、定着ベルトと加圧部材との滑りを効果的に抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の定着装置において、従動回転体を記録媒体の挿通領域の外側に配置することにより、従動回転体の対向部において定着ベルトや加圧部材の表面が記録媒体の挿通によって傷付かず、経時的に摩擦力が低下するおそれもない。従って、定着ベルトと加圧部材との滑りを長期間に亘って抑制することができる。
【0024】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の定着装置において、定着ベルトの進行方向上流側における一対の従動回転体間の距離を、進行方向下流側における距離よりも短くすることにより、各従動回転体は回転によっていずれも定着ベルトの幅方向内側に向かおうとするため、部品公差に起因する定着ベルトの蛇行を効果的に抑制することができる。また、従動回転体は定着ベルトを幅方向外側へ広げるように進行方向下流側へ送るため、定着ベルトのシワの発生も防止することができる。
【0025】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第2の構成の定着装置において、定着ベルトの幅方向端縁に重なるように従動回転体を配置し、従動回転体が定着ベルトと加圧部材の両方に接触するようにしたので、加圧部材から従動回転体に直接駆動力が付与されるため、定着ベルトと従動回転体の境界面での滑りをより効果的に抑制することができる。
【0026】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第4の構成の定着装置において、従動回転体は、定着ベルトに接触する内径部と、加圧部材に接触する内径部よりも直径の大きい外径部とを有し、外径部と内径部の直径差を定着ベルトの厚みの2倍以下とすることにより、従動回転体から定着ベルトに作用する押圧力が確保されるため、従動回転体と定着ベルトの滑りを防止すことができる。さらに、外径部と内径部との境界に形成される段差が定着ベルトの蛇行を抑制する寄り止めとしての役割も果たすため、定着ベルトの蛇行防止機構を別途設ける必要もなくなる。
【0027】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の定着装置において、従動回転体の外周面を、定着ベルトの幅方向内側から外側に向かって直径が大きくなるテーパー形状とすることにより、従動回転体の厚み方向内側から外側に向かって押圧力が徐々に強くなるため、定着ベルトは幅方向外側へ広げられるように進行方向下流側へ送られ、定着ベルトのシワの発生を防止することができる。
【0028】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第6の構成の定着装置において、定着ベルトの内面に潤滑剤を塗布することにより、定着ベルトとベルト支持部材との摺動負荷をより低減するとともに、従動回転体のテーパー形状によって定着ベルトの幅方向端部からの潤滑剤の漏出を抑制することができる。
【0029】
また、本発明の第8の構成によれば、上記第1乃至第7のいずれかの構成の定着装置を搭載することにより、定着ベルトの滑りに起因する画像のざらつきや白点等の画像不良を効果的に抑制することができ、高画質な画像形成が可能で、耐久性にも優れたベルト定着方式の画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の概略断面図
【図2】本発明の第1実施形態に係る定着装置16の側面断面図
【図3】第1実施形態の定着装置16を図2の上方から見た平面図
【図4】ベルト支持部材22及び押圧コロ31の斜視図
【図5】定着ベルト21を介してベルト支持部材22が圧接される加圧ローラー23の長手方向中央部の断面拡大図
【図6】定着ベルト21を介して押圧コロ31が圧接される加圧ローラー23の長手方向端部の断面拡大図
【図7】本発明の第2実施形態に係る定着装置の押圧コロ31周辺を定着ベルト21の内側から見た部分平面図
【図8】本発明の第3実施形態に係る定着装置の平面図
【図9】本発明の第4実施形態に係る定着装置の押圧コロ31周辺を定着ベルト21の内側から見た部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の構成を示す模式断面図である。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラー画像形成装置について示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0032】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳された後、二次転写ローラー9の作用によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写され、さらに、定着装置13において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0033】
トナー像が転写される転写紙Pは、カラープリンター100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0034】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング部7a、7b、7c及び7dが設けられている。
【0035】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a〜4dから各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0036】
そして、一次転写ローラー6a〜6dにより一次転写ローラー6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナー等がクリーニング部7a〜7dにより除去される。
【0037】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が転写紙P上に転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着装置13へと搬送される。
【0038】
定着装置13に搬送された転写紙Pは、定着ベルト21及び加圧ローラー23(図2参照)により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0039】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置13を通過した転写紙Pは一旦排出ローラー対15方向に搬送され、転写紙Pの後端が分岐部14を通過した後に排出ローラー対15を逆回転させるとともに分岐部14の搬送方向を切り換えることで、転写紙Pの後端から反転搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ニップ部に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着装置13に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0040】
図2は、本発明の第1実施形態に係る定着装置の側面断面図であり、図3は、定着装置を図2の上方から見た平面図である。図2及び図3に示すように、定着装置13は、図2において反時計回り方向に回動する無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21に内接するベルト支持部材22と、ベルト支持部材22の両端に回転可能に付設された一対の押圧コロ31と、定着ベルト21を介してベルト支持部材22及び押圧コロ31に圧接され、図2において時計回り方向に回転する加圧ローラー23と、定着ベルト21を挟んで加圧ローラー23の反対側に配置される誘導加熱部25と、を含む構成である。なお、図3では誘導加熱部25の記載を省略している。
【0041】
定着ベルト21は、ベルト支持部材22に接する最内側に設けられた誘導発熱層や、加圧ローラー23に接する最外側に設けられた離型層を含む複数の層が積層されて成る無端状のベルトである。この定着ベルト21は、ベルト支持部材22、押圧コロ31、及び定着ハウジング(図示せず)の内面から突出して定着ベルト21の幅方向両端部に内接する円弧状のフランジ部24に巻き掛けられ、所定の張力が与えられるとともに、ベルト支持部材22及び押圧コロ31に接していない部分が誘導加熱部25と所定の間隔を隔てた円弧形状に保持されている。なお、フランジ部24に代えて、ベルト支持部材22の反対側(誘導加熱部25と対向する側)において定着ベルト21に内接する断面視アーチ形状の支持部材を配置しても良い。
【0042】
定着ベルト21の誘導発熱層としては、ニッケル等の金属をメッキ、又は圧延処理した金属層が用いられる。離型層としては、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられ、塗料の塗布やチューブを被せることによって形成されている。離型層は、PFAチューブであれば10〜50μm、フッ素樹脂塗料であれば10〜30μm程度の厚さが適当である。
【0043】
また、誘導発熱層と離型層との間に、弾性層として厚さ100〜1000μm程度のシリコンゴム層を設けても良い。この構成によれば、弾性層が用紙上の未定着トナー像を包み込んで、ソフトに定着できる。その結果、画像の高画質化を図ることが可能となり、高性能な定着装置13を得ることができる。
【0044】
また、誘導発熱層と離型層との間に蓄熱層を設けて誘導発熱層で発生した熱を逃がさないようにし、且つ定着ベルト21の表面の温度を均一に保持することもできる。その結果、さらに高い加熱効率が得られるとともに、ウォームアップ時間の短縮及び消費電力の低減の効果を高めることが可能となる。
【0045】
蓄熱層は、シリカやアルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物の粉末をフィラーとして配合して熱伝導率を高めたシリコンゴムや、アルミ、銅、ニッケル等の熱伝導率の高い金属で構成され、これらをチューブ状に成型したものを被覆する、或いはメッキするなどして設けられている。蓄熱層は、シリコンゴムのように弾性がある材料であれば良いが、金属で構成した場合、肉厚を厚くし過ぎるとベルトの硬度が上がり、トナーを溶融するのに必要なニップ量が得られなくなってしまう。したがって、蓄熱層の厚さは、10〜1000μm、望ましくは50〜500μmとする。
【0046】
本実施形態に用いる定着ベルト21の構成としては、例えば、厚さ35μmのニッケル層(誘導発熱層)上に厚さ200μmのシリコンゴム層(弾性層)を積層し、厚さ30μmのPFAチューブ(離型層)で被覆した外径40mm、幅360mmのベルトが挙げられる。
【0047】
また、定着ベルト21の表面に接するようにサーミスター(図示せず)が設けられている。このサーミスターにより定着ベルト21の温度を検知し、誘導加熱部25に流れる電流をON/OFFすることによって定着温度の制御を行う。
【0048】
また、定着ベルト21の幅方向(図2の紙面と垂直方向)の寸法は、誘導加熱部25の幅方向の寸法よりも狭く、且つ定着ニップ部Nを通過する最大の用紙幅よりも広く設定されている。これにより、誘導加熱部25は定着ベルト21全体を均一に加熱して定着むらの発生を防止するとともに、定着ベルト21は用紙サイズに係わらず用紙全面を覆うことができるため、ベルト支持部材22及び押圧コロ31への未定着トナーの付着を防止できる。
【0049】
ベルト支持部材22は、定着ベルト21を介して加圧ローラー23と当接することで、用紙を挿通させる定着ニップ部Nを形成する。ベルト支持部材22の材質としては、アルミニウム等の金属や耐熱性樹脂等が用いられる。また、定着ベルト21との接触面には弾性層として厚さ100〜1000μm程度のシリコンゴム層が設けられ、シリコンゴム層の表面には離型層としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のシートが貼り付けられている。
【0050】
本実施形態に用いるベルト支持部材22の構成としては、例えば、幅11mm、長さ300mmの直方体形状のステンレス(SUS)製の板部材の、定着ベルト21との対向面に、厚さ500μmのシリコンゴム層(弾性層)を積層し、さらにPTFEシート(離型層)を対向面の立ち上がり部分まで貼り付けたものが挙げられる。なお、金属製の薄板を折り曲げて形成した中空状のベルト支持部材22を用いても良い。
【0051】
加圧ローラー23は、例えば芯金23aの外側に弾性層23bが設けられている。芯金23aには加圧ローラー23の圧力を調整する圧調整機構(図示せず)が配置されている。本実施形態では、直径20mmのアルミニウム製の芯金23aの外側に、弾性層を構成する厚さ7.5mmのシリコンゴム層23bが設けられた外径35mmの加圧ローラー23を用いている。加圧ローラー23は図示しない駆動モーターにより時計回りに回転駆動される。なお、加圧ローラー23の表面はPFAチューブ等の離型層で被覆されていても良い。
【0052】
誘導加熱部25は、電磁誘導により定着ベルト21を加熱するものであり、コイルボビン27、コイル29、及びセンターコア30a、アーチコア30b、サイドコア30cからなるコア部等で構成され、定着ベルト21の円弧状の外面の一部を囲うように対向して配設される。
【0053】
コイルボビン27は、定着ベルト21の外面に沿う断面円弧状に成形されている。コイルボビン27の材質は、耐熱性樹脂(例えばPPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂、PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂、LCP:液晶ポリマー樹脂)であることが好ましい。
【0054】
コイルボビン27上には、細線を束ねたリッツ線を誘導加熱部25の長手方向(図2の紙面と垂直方向)に複数回(ここでは8回)巻回したコイル29が配置されている。コイル29は、図示しない電源に接続されている。また、コイル29のコイルボビン27への固定は、例えば耐熱性接着剤(例えばシリコン系接着剤)を用いて行う。
【0055】
センターコア30aは、コイル29の中央に配置される断面矩形状をなすフェライト製のコアである。センターコア30aの両側には一対のアーチコア30b及びサイドコア30cが配置されている。両側のアーチコア30bは、センターコア30aを挟んで互いに対称な形状を有し、その断面形状がアーチ形に成形されたフェライト製コアである。各アーチコア30bの全長はコイル29が配置された領域よりも長い。また、両側のサイドコア30cは、ブロック形状に成形されたフェライト製のコアである。サイドコア30cは各アーチコア30bの一端(図2では上下端)に連結して設けられている。各サイドコア30cは、それぞれコイル29が配置された領域の外側を覆っている。
【0056】
アーチコア30bは、例えば誘導加熱部25の長手方向に間隔をおいて複数箇所に配置されている。本実施形態では、隣り合うアーチコア30b同士の間隔は10mm程度としている。また、アーチコア30bの配置密度は、高ければ高いほど磁束の誘導性能が良くなる。しかしながら、ある程度アーチコア30bの配置密度を減らしても磁束の誘導性能の低下は少ないので、充分な性能を発揮できる範囲で高いコストパフォーマンスが得られるようにアーチコア30bの配置密度を設定することが好ましい。また、定着ベルト21の幅方向の温度分布を調整する場合、アーチコア30bの配置密度を調整することで対応可能である。
【0057】
また、サイドコア30cは、誘導加熱部25の長手方向において複数に分割されており、その1つの長さが30〜60mm程度である。複数のサイドコア30cは誘導加熱部25の長手方向に間隔をあけずに連続して配置されている。サイドコア30cを配置する範囲の全長はコイル29が配置された領域の長さに対応している。このようにサイドコア30cを連続して複数配置することで、アーチコア30bの配置による温度分布の振れ幅を均す効果がある。なお、各アーチコア30b、サイドコア30cの配置は、例えばコイル29の磁束密度(磁界強度)分布に合わせて決定されている。アーチコア30bがある程度の間隔をおいて配置されている分、アーチコア30bが抜けた箇所でサイドコア30cが磁束の集束効果を補い、長手方向での磁束密度分布(温度分布)を均している。
【0058】
誘導加熱部25は、コイル29に高周波電流を供給することにより、センターコア30a及び両側のアーチコア30b及びサイドコア30cを通じて磁束を発生させる。誘導加熱部25から発せられる磁束は定着ベルト21の誘導発熱層に作用する。その結果、誘導発熱層の磁束の周りに渦電流が生じるため、誘導発熱層内の電気抵抗によってジュール熱が発生して定着ベルト21が発熱することになる。
【0059】
コイル29に流れる電流は、サーミスターによって定着ベルト21が所定の温度となるように制御されている。そして、誘導加熱部25により定着ベルト21が加熱されて所定の温度に昇温すると、定着ニップ部Nで挟持された転写紙P(図1参照)が加熱されるとともに、加圧ローラー23にて加圧されることにより、転写紙P上の粉体状態のトナーが溶融定着される。
【0060】
用紙搬送方向(図2の下から上方向)に対し定着ニップ部Nの下流側には、定着ベルト21から用紙を分離する分離板35と、分離板35を支持する分離板ホルダー37とが配置されている。本実施形態では、厚さ0.1mmのステンレス板の表面にフッ素樹脂コーティングを施した長さ336mmの分離板35を、厚さ1.2mmのステンレス製の分離板ホルダー37に取り付けている。
【0061】
図4は、ベルト支持部材22及び押圧コロ31の斜視図である。図3及び図4を用いて、本発明の定着装置に用いられるベルト支持部材22及び押圧コロ31の構成について詳述する。なお、図4ではベルト支持部材22のアーム部22aは記載を省略している。
【0062】
図3に示すように、ベルト支持部材22の長手方向の両端部からはアーム部22aが突出しており、アーム部22aはコイルバネ33によって矢印A方向に付勢されている。また、図4に示すように、押圧コロ31は、ベルト支持部材22の長手方向の両端面に固着された支軸32に回転可能に外挿されている。即ち、ベルト支持部材22及び押圧コロ31は定着ベルト21を挟んで加圧ローラー23に所定の圧力で圧接されている。また、押圧コロ31は、通紙領域Rの外側(非通紙領域)において定着ベルト21を加圧ローラー23に圧接している。押圧コロ31の構成としては、例えば直径16mm、幅5mmの円板状のPPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂の表面にシリコン樹脂をコーティングしたものが挙げられる。
【0063】
図5は、定着ベルト21を介してベルト支持部材22が圧接される加圧ローラー23の長手方向中央部の断面拡大図であり、図6は、定着ベルト21を介して押圧コロ31が圧接される加圧ローラー23の長手方向端部の断面拡大図である。図4に示した押圧コロ31の外周面31aは、ベルト支持部材22の定着ベルト21との対向面22bよりも加圧ローラー23側に突出している。これにより、押圧コロ31と加圧ローラー23との対向部Sにおいてはベルト支持部材22と加圧ローラー23との対向部(定着ニップ部N)よりも高い押圧力が発生する。
【0064】
本実施形態の定着装置16では、押圧コロ31の対向部Sにおいては定着ニップ部Nよりも高い圧力で定着ベルト21が加圧ローラー23に圧接される。これにより、定着ニップ部Nに用紙が通紙された状態であっても、定着ベルト21と加圧ローラー23との間に大きな摩擦力が維持されるため、定着ベルト21と加圧ローラー23との滑りが抑制され、定着ベルト21の滑りに起因する画像のざらつきや白点等の画像不良を効果的に抑制することができる。
【0065】
また、押圧コロ31は定着ベルト21の非通紙領域を圧接するため、押圧コロ31の対向部Sにおいては定着ベルト21や加圧ローラー23の表面が通紙によって傷付かず、経時的に摩擦力が低下するおそれもない。従って、定着ベルト21と加圧ローラー23との滑りを長期間に亘って抑制することができる。
【0066】
なお、トナー付着量が多いカラー画像においても安定した定着性能を維持するために、定着ニップ部Nは広いニップ幅を確保する必要がある。そのため、図5に示すように、定着ニップ部Nでは定着ベルト21はベルト支持部材22の対向面22bに沿ったフラットな形状となっている。一方、押圧コロ31の対向部Sでは、図6に示すように、円形の押圧コロ31が加圧ローラー23の表面に食い込むため、定着ベルト21は断面円弧状に変形する。押圧コロ31の対向部Sにおける定着ベルト21の変形が大きくなると、定着ニップ部Nと対向部Sとの間で定着ベルト21が折れ曲がって破損する危険性がある。
【0067】
そのため、押圧コロ31の対向部Sでは、定着ベルト21の変形の程度が少なくなるような構成とする必要がある。具体的には、押圧コロ31の対向部Sにおける加圧ローラー23表面の凹み量が、ベルト支持部材22の対向部(定着ニップ部N)における加圧ローラー23表面の凹み量よりも1mm程度大きくなるように設定することが好ましい。定着ベルト21の折れ曲がりを小さくする他の方法としては、例えば、支軸32を長くしてベルト支持部材22から押圧コロ31までの距離を確保する方法や、押圧コロ31の直径を大きくする方法が挙げられる。
【0068】
図7は、本発明の第2実施形態に係る定着装置の押圧コロ31周辺を定着ベルト21の内側から見た部分平面図である。なお、図7では一対の押圧コロ31のうち一方のみを図示しているが、他方も全く同様である。本実施形態では、定着ベルト21の進行方向(矢印B方向)に対し、各押圧コロ31の後方を角度θだけ内側に傾斜させている。即ち、一対の押圧コロ31は、定着ベルト21の進行方向上流側における押圧コロ31間の距離が、進行方向下流側における押圧コロ31間の距離よりも短くなるようにトーインを付けてある。他の部分の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0069】
なお、一般的に「トーイン」とは、自動車の前輪において、進行方向前側の左右の前輪間距離が進行方向後側の左右の前輪間距離よりも短く設定されていることをいう。
【0070】
本実施形態の構成によれば、一対の押圧コロ31にトーインを付けることにより、各押圧コロ31は回転によっていずれも定着ベルト21の内側に向かおうとするため、支軸32や加圧ローラー23の芯金23a(ローラー回転軸)のアライメント不良、或いはコイルバネ33の付勢力のばらつき等によって発生する押圧コロ31の対向部Sにおける定着ベルト21の蛇行を互いに打ち消し合い、結果として定着ベルト21を直進させることができる。
【0071】
また、定着ベルト21の端面にプーリー等を当てて定着ベルト21の蛇行を防止する必要もないため、定着装置16の構成も簡単なものとなる。さらに、定着ベルト21は各押圧コロ31によって幅方向外側へ広げられるように進行方向下流側へ送られるため、定着ベルト21のシワの発生も防止することができる。なお、押圧コロ31の角度θは、定着ベルト21の移動速度が大きくなるほど小さくする必要がある。例えば定着ベルト21の移動速度(システム線速)が250mm/sec〜400mm/secの場合、角度θ(トーイン角度)は2°程度が好ましい。
【0072】
図8は、本発明の第3実施形態に係る定着装置の平面図である。本実施形態では、押圧コロ31が定着ベルト21の側端縁21aに重なる位置に配置されており、押圧コロ31は、定着ベルト21に接触する内径部38と、加圧ローラー23に接触する外径部39とで構成されている。また、外径部39の直径は内径部38に比べて大きくなっている。他の部分の構成は第1実施形態の図3と同様であるため説明を省略する。
【0073】
本実施形態の構成によれば、加圧ローラー23に直接接触している外径部39によって加圧ローラー23から押圧コロ31に駆動力が付与されるため、定着ベルト21と押圧コロ31の境界面での滑りをより効果的に抑制することができる。また、外径部39の直径を内径部38よりも大きくすることで、押圧コロ31から定着ベルト21に過度の押圧力が加えられたり、押圧コロ31から加圧ローラー23に加わる押圧力が不足したりすることもなくなる。さらに、外径部39と内径部38との境界に形成される段差が定着ベルト21の蛇行を抑制する寄り止めとしての役割も果たすため、第2実施形態と同様に定着ベルト21の蛇行防止機構を別途設ける必要もなくなる。
【0074】
一方、外径部39と内径部38との段差が定着ベルト21の厚みよりも大きい場合、押圧コロ31から定着ベルト21に作用する押圧力が不足して定着ベルト21の滑りが発生するおそれがある。そこで、外径部39と内径部38との境界に形成される段差が定着ベルト21の厚み以下となるように、即ち、外径部39と内径部38の直径差を、定着ベルト21の厚みの2倍以下に設定することで、押圧コロ31から定着ベルト21に作用する押圧力を押圧コロ31から加圧ローラー23に作用する押圧力と同等以上にすることができる。
【0075】
また、加圧ローラー23の弾性層23bが十分な弾性を有している場合は、内径部38と外径部39が形成されていない、外周面31aがフラットな押圧コロ31を定着ベルト21の側端縁21aに重なる位置に配置しても良い。この構成では、定着ベルト21の厚み分のギャップが弾性層23bの変形によって吸収され、押圧コロ31の外周面31aが加圧ローラー23に確実に接触する。
【0076】
図9は、本発明の第4実施形態に係る定着装置の押圧コロ31周辺を定着ベルト21の内側から見た部分平面図である。なお、図9では一対の押圧コロ31のうち一方のみを図示しているが、他方も全く同様である。本実施形態では、ローラー状やパッド状の塗布部材(図示せず)を用いて定着ベルト21の裏面にシリコンオイル40を供給することにより、定着ベルト21とベルト支持部材22との間に発生する摺動負荷を軽減している。また、押圧コロ31は、外縁部の直径r1が内縁部の直径r2よりも大きくなるように外周面31aにテーパーを付けた形状となっている。他の部分の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0077】
シリコンオイル40は、温度変化に伴う粘度変化が少なく、室温から200℃程度までで使用される摺動ベルト定着方式の潤滑剤として好適であるが、比較的粘度が低いために定着ベルト21の端部から漏れ出してしまうことがある。そのため、定着ベルト21とベルト支持部材22との摺動性を維持できなかったり、定着ベルト21の外周面に付着して画像品質を低下させたりするという問題がある。
【0078】
そこで、本実施形態では、押圧コロ31の外周面31aにテーパーを付けて外縁部の直径r1を内縁部の直径r2よりも大きくすることにより、押圧コロ31の外縁部での押圧力を高めている。これにより、定着ベルト21と押圧コロ31の隙間からのシリコンオイル40の漏出を抑制することができる。なお、シリコンオイル40に代えて、フッ素系オイル、パラフィン系オイル等を潤滑剤として使用しても良い。
【0079】
なお、本実施形態の定着装置13に用いる押圧コロ31は、定着ベルト21の裏面にシリコンオイル40を供給しない構成においても使用可能である。この場合、押圧コロ31の厚み方向内側から外側に向かって押圧力が徐々に強くなるため、定着ベルト21は幅方向外側へ広げられるように進行方向下流側へ送られる。これにより、定着ベルト21のシワの発生を防止することができる。
【0080】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記各実施形態では、一対の押圧コロ31をベルト支持部材22の両端面に支持しているが、押圧コロ31をベルト支持部材22とは別個に設け、専用のバネ部材でベルト支持部材22よりも強い押圧力で定着ベルト21の非通紙領域に接触させるようにしても良い。
【0081】
また、上記実施形態で示した定着ベルト21、加圧ローラー23の構成は好ましい一例であり、本発明の目的を達成可能な他の構成を採用することもできる。また、誘導加熱部25に代えてハロゲンランプ等の他の加熱手段を設けても良い。
【0082】
また、本発明の定着装置は図1に示したタンデム式のカラープリンターに限らず、デジタル複合機やカラー複写機、アナログ方式のモノクロ複写機、或いはモノクロプリンターやファクシミリ等の、電子写真プロセスを用いた種々の画像形成装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、定着ベルトと、定着ベルトに所定の圧力で当接する加圧ローラーにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着するベルト定着方式の定着装置に利用可能である。本発明の利用により、定着ベルトと加圧ローラーとのニップ部の面積を十分に確保するとともに、ニップ部における定着ベルトと加圧ローラーとの滑りを抑制して画像不良の発生を効果的に防止できる定着装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
13 定着装置
21 定着ベルト
22 ベルト支持部材
22a アーム部
23 加圧ローラー(加圧部材)
25 誘導加熱部(加熱手段)
31 押圧コロ(従動回転体)
31a 外周面
32 支軸
33 コイルバネ(付勢部材)
35 分離板
37 分離板ホルダー
38 内径部
39 外径部
40 シリコンオイル(潤滑剤)
100 カラープリンター
N 定着ニップ部
P 転写紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送速度と略等速で回動可能な無端状の定着ベルトと、
該定着ベルトを加熱する加熱手段と、
前記定着ベルトに内接して前記定着ベルトを摺動可能に支持するベルト支持部材と、
該ベルト支持部材に前記定着ベルトを介して所定の圧力で当接するとともに前記定着ベルトに回転駆動力を付与する加圧部材と、
を備え、前記定着ベルトと前記加圧部材により形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置において、
前記ベルト支持部材の幅方向外側に、前記定着ベルトを前記ベルト支持部材よりも大きい圧力で前記加圧部材に押圧する一対の従動回転体を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記従動回転体は、記録媒体の挿通領域の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記一対の従動回転体間の距離は、前記定着ベルトの進行方向上流側における距離が、進行方向下流側における距離よりも短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記従動回転体は、前記定着ベルトの幅方向端縁に重なるように配置され、前記定着ベルトと前記加圧部材の両方に接触することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記従動回転体は、前記定着ベルトに接触する内径部と、前記加圧部材に接触する前記内径部よりも直径の大きい外径部とを有し、前記外径部と前記内径部の直径差は前記定着ベルトの厚みの2倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記従動回転体の外周面は、前記定着ベルトの幅方向内側から外側に向かって直径が大きくなるテーパー形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトの内面に潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255870(P2012−255870A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128172(P2011−128172)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】