説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】 定着ローラの表面の一部に熱伝達部材を接触させて配置することを前提としつつ、雰囲気(定着ローラと加圧ローラ近傍)への熱の移動を防止することができる定着装置を提供する。
【解決手段】 定着ローラ1の表面に長軸ローラ状の熱伝達部材11を平行に接触させて配置した定着装置において、熱伝達部材11は樹脂製の断熱層12の外周に、高熱伝導率材13と低熱伝導率材14を周方向に交互に配置して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラと加圧ローラを圧接して設けた熱ローラ方式の定着装置及びその定着装置を搭載した電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、記録紙に転写したトナー画像を定着する定着装置には熱ローラ方式の定着装置が多く用いられている。この定着装置は内部に熱源を有し、表面を、トナーに対し離型性を有する材料、例えばシリコーンゴムやフッ素樹脂で形成した定着ローラと加圧ローラを圧接回転させ、両ローラの圧接部をなすニップを通過する記録紙上の未定着トナー像を加熱加圧して定着する。
この熱ローラ方式の定着装置は、定着ローラ表面と記録紙上のトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を記録紙上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことができ、高速度画像形成装置において非常に有効である。
定着ローラ幅(軸方向;長手方向長さ)に比べて、小さなサイズの記録紙に連続して画像を形成した場合、定着ローラ端部の熱は記録紙に吸収されないため、定着ローラ幅方向端部の温度が定着ローラ中央部に対して高くなり、その部分に直接接触している加圧ローラ端部温度も加圧ローラ中央部より高くなる。
温度検知部材が定着ローラ長手方向中央部に配置された場合、ローラ端部の温度が過昇することにより、定着ローラ及び、加圧ローラ表層の早期劣化が発生する。また、加熱源から発せられる熱エネルギーは記録紙が通過しない部分の温度上昇に使われるため、エネルギー効率が非常に悪くなる。一方、温度検知部材が定着ローラ長手方向端部に配置された場合、ローラ中央部(記録紙通過部)の定着ローラ温度が低下することとなり、定着性が悪化する。
この対応として、定着ローラの表面の一部に熱伝達部材を接触させて配置し、定着ローラの温度を均一にする技術が提案されている。この構成において、熱伝達部材を定着ローラ全幅で接触させることが望ましい。さらに、熱伝達部材としてヒートパイプローラやアルミローラを使用することで、定着ローラの温度を効率良く均一にする効果が向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ヒートパイプローラやアルミローラは長手方向の熱の移動が良好であるだけでなく、径方向や円周方向の熱の移動も良好のため、定着ローラから熱伝達部材へ移動し、そこから雰囲気中へ逃げる(移動する)熱量も増加する。従って、上記従来の定着ローラの表面の一部に熱伝達部材を接触させて配置し、定着ローラの温度を均一にする技術は、定着ローラの長手方向の温度分布を均一にする効果は向上するものの、全体として温度が下がってしまい、結果的に熱効率が低下するという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、定着ローラの表面の一部に熱伝達部材を接触させて配置することを前提としつつ、雰囲気(定着ローラと加圧ローラ近傍)への熱の移動を防止して熱効率を向上させることができる定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、定着ローラの表面に長軸ローラ状の熱伝達部材を平行に接触させて配置した定着装置において、熱伝達部材は、樹脂製の断熱層の外周に高熱伝導率材と低熱伝導率材を周方向交互に配置して構成されている定着装置を最も主要な特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1の定着装置において、高熱伝導率材中にヒートパイプが挿入されている定着装置を主要な特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1の定着装置において、高熱伝導率材アルミ系材料であり、低熱伝導率材は鉄系材料または樹脂材料である定着装置を主要な特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1の定着装置において、定着ローラ回転停止時に熱伝達部材の低熱伝導率材領域のみが定着ローラに当接するよう、熱伝達部材の回転位置を制御する回転位置制御手段を設けた定着装置を主要な特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1の定着装置を搭載した画像形成装置を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、定着ローラの表面に長軸ローラ状の熱伝達部材を平行に接触させて配置した定着装置において、熱伝達部材は、樹脂製の断熱層の外周に高熱伝導率材と低熱伝導率材を周方向に交互に配置して構成されているので、雰囲気(定着ローラと加圧ローラ近傍)への熱の移動を防止することができる。
また、高熱伝導率材中にヒートパイプが挿入されていると、さらに効率よく加圧ローラの長手方向の温度分布を均一にする効果がある。
また、定着ローラ回転停止時、熱伝達部材の低熱伝導率材領域のみを定着ローラに当接させたので、定着ローラ回転停止中に、定着ローラとの接触部から熱伝達部材への熱の移動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成図であり、(1)は、画像形成装置に搭載された定着装置を画像形成装置の手前側から見た正面図であり、(2)は、(1)の定着ローラ部分の側面図である。
定着ローラ1には表面が弾性の材質で覆われた加圧ローラ2が圧接されている。定着ローラ1はヒータ3を内蔵し、定着ローラ1の長手方向端部に配置された温度検知部材4により定着ローラ1の温度を検知し、記載しない温度制御装置により一定の温度となるよう制御する。
定着ローラ1と加圧ローラ2の圧接部であるニップを未定着画像6が通過する際、トナーが溶け、加圧を受けて記録紙5にその未定着画像6が定着される。定着ローラ1に熱伝達部材11が平行に当接し、小サイズ紙の通紙時、定着ローラ1の温度分布を均一にする。この熱伝達部材11は定着ローラ1より遥かに小径の長軸ローラ状をしており、定着ローラ1と軸方向(長手方向)を一致させている。
図2は、図1に示す熱伝達部材の第1の実施例を示す構成図である。熱伝達部材11は、樹脂製の断熱層12の外周に高熱伝導率材13と低熱伝導率材14を交互に配置して構成されている。
高熱伝導率材13としては、アルミ系材料が挙げられる。また、低熱伝導率材14としては、鉄系材料または樹脂材料が挙げられる。
【0007】
図3は、図1に示す熱伝達部材11の第2の実施例を示す要部拡大構成図である。この第2の実施例では、高熱伝導率材(例えばアルミ系材料)13中にヒートパイプ15が挿入されている。
図4は、図2および図3に示す低熱伝導率材13の検知機構を示す図であり、(1)は正面図、(2)は上面図である。
熱伝達部材11の低熱伝導率材14の位置は、熱伝達部材11と同期して回転するように熱伝達部材11の回転軸に設けられたフィラー21と、フィラー21を検知するように設置されたフォトセンサ22とにより検知される。そして、定着ローラ1と熱伝達部材11の低熱伝導率材14が当接する位置で定着ローラ1の回転を停止するようにする。すなわち、定着ローラ1の回転停止時には、定着ローラ1と熱伝達部材11の低熱伝導率材14が当接することとなる。これにより、定着ローラ回転停止中に、定着ローラとの接触部から熱伝達部材への熱の移動を低減することができる。
本発明は、温度検知部材4を、定着ローラ1長手方向中央部に配置してもよい。また、定着ローラ1だけではなく、定着ベルト方式の定着装置にも展開可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置の構成図である。
【図2】図1に示す熱伝達部材の第1の実施例を示す構成図である。
【図3】図1に示す熱伝達部材の第2の実施例を示す要部拡大構成図である。
【図4】図2、図3に示す低熱伝導率材の検知機構を示す図である。
【符号の説明】
【0009】
1 定着ローラ
2 加圧ローラ
11 熱伝達部材
12 断熱層
13 高熱伝導率材
14 低熱伝導率材
15 ヒートパイプ
21 フィラー(回転位置制御手段構成要素)
22 フォトセンサ(回転位置制御手段構成要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラの表面に長軸ローラ状の熱伝達部材を平行に接触させて配置した定着装置において、前記熱伝達部材は、樹脂製の断熱層の外周に高熱伝導率材と低熱伝導率材を周方向に交互に配置して構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記高熱伝導率材中にヒートパイプが挿入されていることを特徴とする請求項1の定着装置。
【請求項3】
前記高熱伝導率材はアルミ系材料であり、前記低熱伝導率材は鉄系材料または樹脂材料であることを特徴とする請求項1の定着装置。
【請求項4】
前記定着ローラの回転停止時に、前記熱伝達部材の低熱伝導率材領域のみが定着ローラに当接するよう、前記熱伝達部材の回転位置を制御する回転位置制御手段を設けたことを特徴とする請求項1の定着装置。
【請求項5】
請求項1の定着装置を搭載した画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−127900(P2007−127900A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321576(P2005−321576)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】