説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、装置を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルトの大きな弛みが生じることのない、定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト21の内周面側に固設されて加圧回転体31に圧接してニップ部を形成する固定部材26と、ニップ部を除く位置で定着ベルト21の内周面に対向するように固設されて定着ベルト21を加熱するパイプ状の金属部材22と、を備える。そして、ニップ部下流側において定着ベルト21に弛みが生じないように定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24を、定着ベルト21と金属部材22との間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、そこに設置される定着装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、装置を高速化した場合であっても定着不良が生じにくい定着装置が知られている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1等の定着装置は、定着部材としての定着ベルト、定着ベルトの内周面に対向するように固設された略パイプ状の金属部材(対向部材)、金属部材を加熱するために金属部材に内設されたヒータ(加熱手段)、定着ベルトに圧接してニップ部を形成する加圧回転体としての加圧ローラ、等で構成されている。
そして、定着ベルトがヒータによって加熱された金属部材によって加熱されて、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像がニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1等の定着装置は、ニップ部上流側が定着ベルトの張り側となってニップ部下流側で定着ベルトの弛みが生じてしまっていた。そして、このようにニップ部下流側で生じる定着ベルトの弛みが大きくなってしまうと、ニップ部から送出された記録媒体上の定着画像に光沢ムラ等の異常画像が生じる不具合や、ニップ部から送出された記録媒体の分離性が低下する不具合が発生してしまうことになる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、装置を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルトの大きな弛みが生じることのない、定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内周面側に固設されて、当該定着ベルトを介して加圧回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する固定部材と、前記ニップ部を除く位置で前記定着ベルトの内周面に対向するように固設されて前記定着ベルトを加熱するとともに、加熱手段によって加熱されるパイプ状の金属部材と、を備え、前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向下流側において前記定着ベルトに弛みが生じないように前記定着ベルトを内周面側から押圧する押圧部材を、前記定着ベルトと前記金属部材との間に設けたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記押圧部材を、前記定着ベルトとの当接位置において前記定着ベルトの走行方向と同じ方向に移動するように駆動手段によって回転駆動されるローラ部材としたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、幅方向に直交する断面でみたときに、前記金属部材の中心と前記加圧回転体の回転中心とを通る直線で分割される一方の領域に前記加熱手段が配設されて他方の領域に前記押圧部材が配設されたものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記押圧部材は、前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向下流側の位置に配設されたものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記押圧部材を、ヒートパイプとしたものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項5に記載の発明において、前記加熱手段は、電磁誘導によって前記金属部材を加熱するものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記金属部材は、前記押圧部材との接触を避けるための凹状部を具備し、前記押圧部材は、前記凹状部に対向する位置と前記金属部材に幅方向にわたって接触する接触位置との間を移動可能に構成されたものである。
【0013】
また、請求項8記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項7に記載の発明において、前記押圧部材は、幅方向のサイズが小さな記録媒体が連続的に通紙されるときに、前記接触位置に移動するように制御されるものである。
【0014】
また、請求項9記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記金属部材の内周面側に固設されて前記固定部材に当接して当該固定部材を補強する補強部材をさらに備えたものである。
【0015】
また、この発明の請求項10記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
【0016】
なお、本願において、固定部材が「固設」された状態とは、固定部材が回転駆動されることなく非回転で保持されている状態であるものと定義する。したがって、例えば、固定部材がスプリング等の付勢部材によってニップ部に向けて付勢されている場合であっても固定部材が非回転で保持されていれば、固定部材が「固設」された状態となる。
また、本願において、「幅方向」とは、記録媒体の通紙方向に対して直交する方向であるものと定義する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、定着ベルトと金属部材との間に、定着ベルトを内周面側から押圧する押圧部材を設けている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、装置を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルトの大きな弛みが生じることのない、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置に設置された定着装置を示す構成図である。
【図3】図2の定着装置を幅方向にみた図である。
【図4】ニップ部の近傍を示す拡大図である。
【図5】定着ベルト及び金属部材の近傍を示す拡大図である。
【図6】別の定着装置の一部を示す拡大図である。
【図7】この発明の実施の形態2における定着装置を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3における定着装置の一部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1〜図6にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0021】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0022】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0023】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0024】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0025】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0026】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0027】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0028】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0029】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0030】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0031】
次に、図2〜図5にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2〜図5に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、金属部材22(加熱部材)、補強部材23、押圧部材24、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40、断熱部材27、ステー部材28、等で構成される。
【0032】
ここで、定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面21a(固定部材26との摺接面である。)側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。なお、本実施の形態1では、定着ベルト21の弾性層として、層厚が200μmのシリコーンゴムを用いている。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
【0033】
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmになるように設定されている。なお、本実施の形態1では、定着ベルト21の内径が30mmに設定されている。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータ(加熱手段)、金属部材22、補強部材23、断熱部材27、ステー部材28、等が固設されている。また、図示は省略するが、定着ベルト21と金属部材22との間には、潤滑剤が介在(塗布)されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面21aに摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、固定部材26の構成については、後でさらに詳しく説明する。
【0034】
図2を参照して、金属部材22(加熱部材)は、ニップ部を除く位置で定着ベルト21の内周面に対向するように形成され、ニップ部の位置では断熱部材27を介して固定部材26を保持するように形成された略円筒体である。図3を参照して、金属部材22は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。また、金属部材22の両端には、定着ベルト21の寄り(幅方向の移動である。)を制限するためのフランジ29が挿設されている。
そして、略パイプ状に形成された金属部材22は、ヒータ25の輻射熱により加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。すなわち、金属部材22がヒータ25によって直接的に加熱されて、金属部材22を介して定着ベルト21がヒータ25によって間接的に加熱されることになる。定着ベルト21の加熱効率を良好に維持するためには、金属部材22の厚さを0.1mm以下に設定することが好ましい。
金属部材22の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができるが、その中でも単位体積の熱容量比(密度×比熱である。)が比較的小さいフェライト系ステンレス鋼が好適である。本実施の形態1では、金属部材22の材料として、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430を用いている。また、金属部材22の厚さを0.1mmに設定している。
【0035】
加熱手段としてのヒータ25は、ハロゲンヒータ(又はカーボンヒータ)であって、その両端部が定着装置20の側板43に固定されている(図3を参照できる。)。そして、装置本体1の電源部により出力制御されたヒータ25(加熱手段)の輻射熱によって、金属部材22が加熱される。さらに、金属部材22によって定着ベルト21がニップ部を除く位置で全体的に加熱されて、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーミスタ等の温度センサ40によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0036】
このように、本実施の形態1における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されるのではなく、金属部材22によって定着ベルト21が周方向にわたってほぼ全体的に加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
【0037】
ここで、略パイプ状の金属部材22は、定着ベルト21の内周面(ニップ部を除く位置である。)にクリアランスをあけて対向するように固設されている。定着ベルト21と金属部材22とのクリアランス量δ(ニップ部を除く位置のギャップである。)は、0mmより大きく1mm以下に設定されている(0mm<δ≦1mmである。)。これにより、金属部材22と定着ベルト21とが摺接する面積が大きくなって定着ベルト21の磨耗が加速する不具合を抑止するとともに、金属部材22と定着ベルト21とが離れ過ぎて定着ベルト21の加熱効率が低下する不具合を抑止することができる。さらに、金属部材22が定着ベルト21に近設されることで、可撓性を有する定着ベルト21の円形姿勢がある程度維持されるため、定着ベルト21の変形による劣化・破損を軽減することができる。また、金属部材22と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、定着ベルト21の内周面には、双方の部材21、22の間にはフッ素グリスやシリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。
ここで、本実施の形態1では、定着ベルト21と金属部材22との間に、定着ベルト21にテンションを与えるための押圧部材24(ローラ部材)が設置されているが、これについては後で詳しく説明する。
なお、本実施の形態1では、金属部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、金属部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできる。
【0038】
ここで、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材26の強度を補強する補強部材23が、定着ベルト21の内周面側に固設されている。図3を参照して、補強部材23は、幅方向の長さが固定部材26と同等になるように形成されていて、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。そして、補強部材23が固定部材26及び定着ベルト21を介して加圧ローラ31に当接することで、ニップ部において固定部材26が加圧ローラ31の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。なお、本実施の形態1において、補強部材23は、金属部材22の内部を概ね2つの空間に分けるように配設された板状部材である。
【0039】
この補強部材23は、上述した機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。なお、本実施の形態1では、補強部材23の材料として、板厚が1.5〜2mm程度のSUS304(又は、SUS430)を用いている。
また、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、鏡面処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が金属部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(金属部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
【0040】
図2を参照して、ニップ部の位置で定着ベルト21の外周面に当接する加圧回転体としての加圧ローラ31は、外径が30mmであって、中空構造の芯金32上に弾性層33(層厚が3mm程度である。)を形成したものである。加圧ローラ31(加圧回転体)の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。また、図3を参照して、加圧ローラ31には駆動部51の駆動ギア(不図示である。)に噛合するギア45が設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
【0041】
なお、加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、金属部材22に生じる撓みをさらに軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径とほぼ同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
【0042】
図4を参照して、定着ベルト21の内周面21aに摺接する固定部材26は、ベース層26b上に表面層26aが形成されたものである。固定部材26は、加圧ローラ31との対向面(摺接面)が、加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材26の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
【0043】
また、固定部材26のベース層26bを形成する材料としては、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがないように、ある程度剛性のある材料で形成されている。なお、本実施の形態1では、ベース層26bの材料として、厚さが1.5mm程度のアルミニウムを用いている。
金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形することがある。パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22とは別に高剛性の固定部材26を設置してニップ部を形成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
【0044】
また、固定部材26の表面層26aは、フッ素ゴム等の低摩擦弾性材料で形成されている。このような表面層26aを設けることにより、固定部材26と定着ベルト21との摺接によって双方の部材21、26が磨耗する不具合が軽減されるとともに、双方の部材21、26の間に所望のニップ部が形成されることになる。なお、本実施の形態1では、表面層26aの厚さが1.5〜2mm程度に設定されている。
また、固定部材26の表面層26aに、予め潤滑剤を含浸させることもできる。これにより、固定部材26は、定着ベルト21に当接する面に潤滑剤が保持された状態になり、双方の部材21、26が磨耗する不具合がさらに軽減される。
【0045】
また、本実施の形態1では、固定部材26とヒータ25(加熱手段)との間に断熱部材27を設置している。詳しくは、固定部材26と金属部材22との間であって、固定部材26の摺接面を除く面を覆うように断熱部材27が設置されている。断熱部材27の材料としては、断熱性に優れたスポンジゴムや、空包を有するセラミック、等を用いることができる。
本実施の形態1では、定着ベルト21と金属部材22とがほぼ全周にわたって近接しているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱待機時に金属部材22の熱が固定部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
【0046】
さらに、固定部材26と定着ベルト21との摩擦抵抗を低減するために双方の部材間に塗布された潤滑剤は、ニップ部における高圧条件に加えて高温条件による使用によって劣化して、定着ベルト21のスリップ等の不具合が生じてしまう可能性がある。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、金属部材22の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
【0047】
また、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、固定部材26が断熱されて、ニップ部では積極的に定着ベルト21は加熱されないことになる。そのため、ニップ部に送入された記録媒体Pの温度がニップ部から送出されるときには低くなる。すなわち、ニップ部出口では、記録媒体P上に定着されたトナー像の温度が低くなって、トナーの粘性が低下して、定着ベルト21に対するトナー接着力が小さくなった状態で、記録媒体Pは定着ベルト21から分離される。したがって、定着工程直後の記録媒体Pが定着ベルト21に巻き付いてジャムになる不具合が防止されるとともに、定着ベルト21に対するトナー固着も抑制される。
【0048】
また、本実施の形態1では、図4を参照して、固定部材26が挿設された金属部材22の凹部22aを内周面側から保持するステー部材28が設置されている。
略パイプ状の金属部材22は、0.1mm厚のステンレスからなる平板に曲げ加工を施して形成したものである。したがって、ステンレス板を曲げ加工によって所望のパイプ形状に加工しようとしても、そのままでは、スプリングバックによって径が大きくなる方向に開いてしまい所望のパイプ形状を形成することができない。そして、金属部材22がスプリングバックによって開いてしまうと、定着ベルト21の内周面に接触してしまい定着ベルト21を傷つけたり、定着ベルト21との接触ムラによる定着ベルト21の加熱ムラが生じたりしてしまう。本実施の形態1では、このような不具合が生じるのを抑止するために、金属部材22の開口部が形成された凹部22a(曲げ部)をステー部材28で固定することによって、金属部材22のスプリングバックによる変形を抑止している。具体的には、スプリングバック力に抗するように曲げ加工が施された金属部材22の形状を保持しながら、金属部材22の内周面側からステー部材28を凹部22aに圧入する。
【0049】
ここで、金属部材22の加熱効率を高くするためには、金属部材22の肉厚は0.2mm以下に設定することが好ましい。
上述したように、金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に作用すると、その加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形してしまう。そして、パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じてしまう。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22に凹部22a(固定部材26が挿設されている部分である。)をニップ部から離れるように設けて、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に直接的に作用しないように構成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
【0050】
以下、上述のように構成された定着装置20の通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、駆動部51によって加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、ニップ部における加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、金属部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
【0051】
以下、本実施の形態1における定着装置20において特徴的な構成・動作について、詳しく説明する。
図2及び図5を参照して、本実施の形態1における定着装置20には、定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24が、定着ベルト21と金属部材22との間に設けられている。この押圧部材24は、ニップ部下流側(ニップ部に対して定着ベルト21の走行方向下流側である。)において定着ベルト21に弛みが生じないようにするためのものである。
【0052】
図4を参照して、定着ベルト21はニップ部の位置における加圧ローラ31との摩擦抵抗によって矢印方向(反時計方向)に走行するため、ニップ部上流側(ニップ部に対して定着ベルト21の走行方向上流側である。)が定着ベルト21の張り側(ベルト・テンションが大きくなる側である。)となる。したがって、ニップ部下流側では、定着ベルト21に弛み(図中の一点鎖線で示すベルトの軌跡Aである。)が生じやすくなる。そして、このような定着ベルト21の弛みが大きくなると、ニップ部における見かけのニップ幅が大きくなって、ニップ部から送出される記録媒体Pに過剰な熱量供給がされ、定着画像に光沢ムラやオフセット等の異常画像が生じてしまう。さらには、定着ベルト21の弛みによって、ニップ部から送出された記録媒体Pが定着ベルト21に密着して分離されにくくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24を設けているために、定着ベルト21にテンションが付与されて、ニップ部下流側における定着ベルト21の弛みが軽減される。したがって、光沢ムラやオフセット等のない良好な定着画像が出力されるとともに、定着工程後の記録媒体Pの分離不良の発生も抑止されることになる。
【0053】
ここで、本実施の形態1における押圧部材24は、定着ベルト21との当接位置において定着ベルト21の走行方向と同じ方向に移動するように回転(図5の反時計方向の回転である。)するローラ部材である。押圧部材24(ローラ部材)は、外径が2〜5mm程度で、定着ベルト21に対して幅方向全域にわたって当接するように構成されている。また、図2に示すように、押圧部材24(ローラ部材)を回転駆動する駆動手段としての駆動モータ52が、加圧ローラ31を回転駆動する駆動部51とは別に設けられている。
このように、押圧部材24が定着ベルト21との摩擦抵抗によって従動するのではなく、押圧部材24が駆動モータ52(駆動手段)によって独自に回転駆動されるとともに、押圧部材24を定着ベルト21と略線接触するローラ部材とすることで、押圧部材24を設置することで定着ベルト21への負荷トルクが増加する不具合を軽減することができる。
なお、定着ベルト21との当接位置における押圧部材24の線速度を定着ベルト21の走行速度と等速になるように回転駆動して、定着ベルト21を補助的に駆動する機能を押圧部材24に持たせることもできる。そのような場合には、押圧部材24の材料(表面材料)として、定着ベルト21との摩擦抵抗が大きくなるような高摩擦材料を用いることが好ましい。このような構成により、定着ベルト21のスリップを確実に軽減することができる。
【0054】
なお、押圧部材24は、定着ベルト21や金属部材22から熱を奪って双方の部材21、22の加熱効率を低下させないように、断熱性材料で形成することが好ましい。
また、本実施の形態1では、金属部材22と定着ベルト21との間の微小なクリアランスに押圧部材24を設置することを考慮して、押圧部材24が金属部材22にも当接するように構成したが、押圧部材24が金属部材22に当接しないように構成することもできる。
また、本実施の形態1では、押圧部材24を回転駆動する駆動モータ51(駆動手段)を、加圧ローラ31を回転駆動する駆動部51とは別に設けた。これに対して、加圧ローラ31を回転駆動する駆動部51によって、押圧部材24を回転駆動するように構成することもできる。
【0055】
ここで、本実施の形態1では、図5に示すように、幅方向(図5の紙面垂直方向である。)に直交する断面でみたときに、金属部材22の中心と加圧ローラ31の回転中心とを通る直線(図5中、一点鎖線で示す直線である。)で分割される、一方の領域(一点鎖線の下方である。)にヒータ25(加熱手段)が配設されて、他方の領域(一点鎖線の上方である。)に押圧部材24が配設されている。
このように構成することで、ヒータ25によって直接的に加熱される金属部材22の領域B(ヒータ25に近接して対向する領域である。)を定着ベルト21に密着させることができる。したがって、定着ベルト21の加熱効率がさらに向上することになる。すなわち、図6に示すように、幅方向に直交する断面でみたときに、金属部材22の中心と加圧ローラ31の回転中心とを通る直線(図5中、一点鎖線で示す直線である。)で分割される、一方の領域(一点鎖線の下方である。)にヒータ25(加熱手段)と押圧部材24とを配設した場合には、ヒータ25によって直接的に加熱される金属部材22の領域Bが定着ベルト21に密着しにくくなってしまう(定着ベルト21と金属部材22との微小なクリアランスを確保しにくくなってしまう)。
【0056】
また、本実施の形態1では、図5に示すように、押圧部材24は、ニップ部下流側(一点鎖線の上方である。)の位置に配設されている。
これにより、ニップ部下流側において定着ベルト21にテンションを効果的に付与して、その位置における定着ベルト21の弛みを効率的に消失することができる。さらに、押圧部材24が定着ベルト21や金属部材22から熱を奪ってしまう場合であっても、その後に領域B(ヒータ25によって金属部材22が直接的に加熱される領域である。)にて金属部材22や定着ベルト21がヒータ25によって積極的に加熱されるために、金属部材22や定着ベルト21の加熱不良が生じる不具合が抑止される。
【0057】
なお、本実施の形態1において、押圧部材24をヒートパイプとすることもできる。これにより、定着ベルト21や金属部材22における幅方向の温度分布を均一化することができる。したがって、記録媒体P上に形成される定着画像に定着ムラが生じにくくなる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態1においては、定着ベルト21と金属部材22との間に、定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24を設けている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、定着装置20(画像形成装置1)を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルト21に大きな弛みが生じる不具合を抑止することができる。
【0059】
実施の形態2.
図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における定着装置は、金属部材22が電磁誘導によって加熱される点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0060】
図7に示すように、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、略パイプ状の金属部材22、補強部材23、押圧部材24、断熱部材27、加圧ローラ31(加熱回転体)、温度センサ40、等で構成される。また、図示は省略するが、本実施の形態2における定着装置20にも、前記実施の形態1のものと同様に、定着ベルト21を内周面側から押圧するように押圧部材24(ローラ部材)が設置されている。
【0061】
ここで、本実施の形態2における定着装置20は、加熱手段として、ヒータ25の代わりに、誘導加熱部50が設置されている。そして、本実施の形態2における金属部材22は、ヒータ25の輻射熱によって加熱される前記実施の形態1のものとは異なり、誘導加熱部50による電磁誘導によって加熱される。
【0062】
誘導加熱部50は、励磁コイル、コア、コイルガイド、等で構成される。励磁コイルは、定着ベルト21の一部を覆うように、細線を束ねたリッツ線を幅方向(図7の紙面垂直方向である。)に延設したものである。コイルガイドは、耐熱性の高い樹脂材料等からなり、励磁コイルやコアを保持する。コアは、フェライト等の強磁性体(比透磁率が1000〜3000程度である。)からなる半円筒状部材であって、金属部材22に向けて効率のよい磁束を形成するためにセンターコアやサイドコアが設けられている。コアは、幅方向に延設された励磁コイルに対向するように設置されている。
【0063】
このように構成された定着装置20は、次のように動作する。
定着ベルト21が図7中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部50との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、金属部材22の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、金属部材22表面に渦電流が生じて、金属部材22自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、金属部材22が電磁誘導加熱されて、さらに加熱された金属部材22によって定着ベルト21が加熱される。
【0064】
なお、金属部材22を効率的に電磁誘導加熱するためには、誘導加熱部50を金属部材22の周方向全域に対向するように構成することが好ましい。また、金属部材22の材料としては、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム、これらのうち複数の金属からなる合金、等を用いることができる。
また、定着ベルト21にニッケル、ステンレス、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム、これらのうち複数の金属からなる合金、等からなる金属層を設けて、誘導加熱部50によって定着ベルト21を電磁誘導加熱することもできる。
【0065】
ここで、本実施の形態2において、押圧部材24をヒートパイプとすることが好ましい。これにより、定着ベルト21や金属部材22における幅方向の温度分布を均一化することができる。したがって、記録媒体P上に形成される定着画像に定着ムラが生じにくくなる。
特に、本実施の形態2における定着装置20のように加熱手段として電磁誘導を用いた場合には、加熱手段としてヒータを用いた場合に比べて、金属部材22や定着ベルト21の昇温時間が大きく短縮される反面、幅方向の温度分布が不均一になりやすいため、押圧部材24をヒートパイプとすることが有用になる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、定着ベルト21と金属部材22との間に、定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24を設けている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、定着装置20(画像形成装置1)を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルト21に大きな弛みが生じる不具合を抑止することができる。
【0067】
なお、本実施の形態2では、金属部材22を電磁誘導加熱により加熱したが、金属部材22を抵抗発熱体の熱によって加熱することもできる。具体的に、金属部材22の内周面の一部又は全部に抵抗発熱体を当接させる。抵抗発熱体は、セラミックヒータ等の面状発熱体であって、その両端部に電源部が接続されている。そして、抵抗発熱体に電流が流されると、抵抗発熱体自身の電気抵抗によって抵抗発熱体が昇温して、当接する金属部材22を加熱する。さらに、加熱された金属部材22によって定着ベルト21が加熱されることになる。
このような場合にも、押圧部材24を設けることで、本実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0068】
実施の形態3.
図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図8は、実施の形態3における定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図5に相当する図である。本実施の形態3における定着装置は、押圧部材24が移動可能に構成されている点が、前記実施の形態2のものとは相違する。
【0069】
図8(A)に示すように、本実施の形態3における定着装置20も、前記実施の形態2のものと同様に、定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、略パイプ状の金属部材22、補強部材23、押圧部材24、断熱部材27、加圧ローラ31(加熱回転体)、温度センサ40、等で構成される。また、図示は省略するが、本実施の形態3における定着装置20にも、前記実施の形態2のものと同様に、定着ベルト21の外周面に対向する位置に加熱手段としての誘導加熱部50が設置されている。また、定着ベルト21を内周面側から押圧するように、押圧部材24(ローラ部材)が設置されている。また、押圧部材24は、ヒートパイプである。
【0070】
ここで、本実施の形態3における金属部材22には、押圧部材24(ヒートパイプ)との接触を避けるための凹状部22aが形成されている。そして、不図示の移動機構によって、押圧部材24が、凹状部22aに対向する位置と、金属部材22に幅方向にわたって接触する接触位置と、の間を移動できるように構成されている。すなわち、押圧部材24は、図8(A)の位置(金属部材22に接触する位置である。)と、図8(B)の位置(金属部材22に接触しない位置である。)と、を移動することができる。このような移動機構としては、例えば、カム機構を用いたものとすることができる。
【0071】
そして、通常の通紙時(定着工程時)には押圧部材24が図8(B)の位置になるように制御され、小サイズ紙(幅方向のサイズが小さな記録媒体Pである。)が連続的に通紙されるときには押圧部材24が図8(A)の位置になるように制御される。
このように構成することで、小サイズ紙が連続通紙されるときに、金属部材22の非通紙領域(幅方向両端部)が過昇温しそうになっても、図8(A)に示すように押圧部材24としてのヒートパイプが金属部材22に当接しているために、非通紙領域の熱を幅方向に分散することができる。これに対して、幅方向両端部で過昇温が生じない通常時には、図8(B)に示すように押圧部材24を金属部材22から離間させているために、金属部材22の熱が押圧部材24に奪われることなく、定着ベルト21を効率的に加熱することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態3においても、前記各実施の形態と同様に、定着ベルト21と金属部材22との間に、定着ベルト21を内周面側から押圧する押圧部材24を設けている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短くて、定着装置20(画像形成装置1)を高速化した場合であっても定着不良等が生じることなく、ニップ部下流側で定着ベルト21に大きな弛みが生じる不具合を抑止することができる。
【0073】
なお、前記各実施の形態では、定着ベルトとして複層構造の定着ベルト21を用いたが、定着ベルトとしてポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、金属等からなる無端状の定着フィルムを用いることもできる。そして、その場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 金属部材(加熱部材)、
22a 凹状部、
23 補強部材、
24 押圧部材(ローラ部材)、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 固定部材、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
50 誘導加熱部(加熱手段)、
52 駆動モータ(駆動手段)、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特許2008−158482号公報
【特許文献2】特許2007−334205号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面側に固設されて、当該定着ベルトを介して加圧回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する固定部材と、
前記ニップ部を除く位置で前記定着ベルトの内周面に対向するように固設されて前記定着ベルトを加熱するとともに、加熱手段によって加熱されるパイプ状の金属部材と、
を備え、
前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向下流側において前記定着ベルトに弛みが生じないように前記定着ベルトを内周面側から押圧する押圧部材を、前記定着ベルトと前記金属部材との間に設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記定着ベルトとの当接位置において前記定着ベルトの走行方向と同じ方向に移動するように駆動手段によって回転駆動されるローラ部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
幅方向に直交する断面でみたときに、前記金属部材の中心と前記加圧回転体の回転中心とを通る直線で分割される一方の領域に前記加熱手段が配設されて他方の領域に前記押圧部材が配設されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向下流側の位置に配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、ヒートパイプであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、電磁誘導によって前記金属部材を加熱することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記金属部材は、前記押圧部材との接触を避けるための凹状部を具備し、
前記押圧部材は、前記凹状部に対向する位置と前記金属部材に幅方向にわたって接触する接触位置との間を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記押圧部材は、幅方向のサイズが小さな記録媒体が連続的に通紙されるときに、前記接触位置に移動するように制御されることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記金属部材の内周面側に固設されて前記固定部材に当接して当該固定部材を補強する補強部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170000(P2011−170000A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32016(P2010−32016)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】