説明

定着装置

【課題】 加圧ローラとの接触部から熱伝導部材の外周を伝わり、雰囲気へ熱が移動するのを防止し、熱効率を高めることができる定着装置を提供すること。
【解決手段】 加圧ローラの表面に熱伝達部材を回転可能に接触させて配置した熱ローラ方式の定着装置において、熱伝達部材11は、円筒体からなる内層断熱部材12と、該部材の外周に嵌合して装着された円筒体からなる外層部材とを具え、該外層部材はその円周方向に良熱伝導部14と断熱部15が複数、交互に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ及びファクシミリ等の電子写真方式を使用した画像形成装置に用いられる定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を使用した画像形成装置で記録紙に転写したトナー画像を定着する定着装置には熱ローラ方式の定着装置が多く用いられている。この定着装置は、図7,8に示すように内部に熱源としてのヒータ3を有し、表面をトナーに対し離型性を有する材料、例えばシリコーンゴムやフッ素樹脂で形成した定着ローラ1と、表面が弾性の材質で覆われ、該ローラに圧接して配置された加圧ローラ2とを有し、両ローラを回転させて、その圧接部をなすニップを通過する記録紙(転写紙)5上の未定着トナー像6を加熱加圧して定着する。この熱ローラ方式の定着装置は、定着ローラ表面と転写紙上のトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を転写紙上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行なうことができ、高速度電子写真複写機等において、非常に有効である。
【0003】
ところで、定着ローラ1の幅に対して、小さなサイズの転写紙5が、画像が形成されて連続して定着装置を通過した場合、定着ローラの長手方向端部の温度が定着ローラの長手方向中央部に対して高くなり、その部分に直接接触している加圧ローラ端部の温度も加圧ローラ中央部より高くなる。
【0004】
温度検知部材4が定着ローラ1の中央部に配置された場合、定着ローラ端部の温度が過昇することにより、定着ローラ1及び加圧ローラ2の表層の早期劣化が発生する。また、ヒータ3から発せられる熱エネルギーは転写紙5が通過しない部分の温度上昇に使われるため、エネルギー効率が非常に悪くなる。
【0005】
一方、温度検知部材4が定着ローラ1の端部に配置された場合、定着ローラ中央部(転写紙通過部)の温度が低下することにより、定着性が悪化する。
【0006】
この対応として、図面に示すように加圧ローラ2の表面に熱伝達部材7を回転可能に接触させて配置し、小さなサイズの転写紙5の通紙時、加圧ローラ2の温度分布を均一にすることが考えられた。この場合、熱伝達部材7を加圧ローラ2の長手方向全幅で接触させることが望ましい。また、熱伝達部材7としてヒートパイプローラやアルミローラを使用することが望ましく、このようなヒートパイプローラやアルミローラを使用すると、加圧ローラ2の温度を効率良く均一にする効果が期待できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱伝達部材7としてヒートパイプローラやアルミローラを使用する場合は長手方向の熱の移動が良好であるが、径方向や円周方向の熱の移動も良好のため、加圧ローラ2から熱伝達部材7へ移動し、そこから雰囲気中へ逃げる(移動する)熱量も増加する。そのため加圧ローラ2の長手方向の温度分布を均一にする効果は期待できるものの、全体として温度が下がってしまい、結果的に熱効率が低下するという問題があった。
【0008】
そこでこの発明は、前記従来のものの問題点を解決し、加圧ローラとの接触部から熱伝導部材の外周を伝わり、雰囲気へ熱が移動するのを防止し、熱効率を高めることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、加圧ローラの表面に熱伝達部材を回転可能に接触させて配置した熱ローラ方式の定着装置において、前記熱伝達部材は、その表面に加圧ローラの表面に接触する断熱部を有することを特徴とする。請求項2に記載の発明は、請求項1において、熱伝達部材は、円筒体からなる内層断熱部材と、該部材の外周に嵌合して装着された円筒体からなる外層部材とを具え、該外層部材はその円周方向に良熱伝導部と断熱部が複数、交互に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、熱伝達部材は、長手方向両端部に断熱部材を具えていることを特徴とする。請求項4に記載の発明は、請求項3において、熱伝達部材は、その長さが加圧ローラの長さ以上となっていて、両端部に設けた断熱部材が加圧ローラの両端部より外側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、加圧ローラは、回転停止したとき、その表面が熱伝達部材の断熱部に接触するようになっていることを特徴とする。請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、熱伝達部材の回転角度を検知するセンサと、このセンサからの検知信号を受けて、加圧ローラが回転停止したとき、加圧ローラの表面が熱伝達部材の断熱部に接触するように加圧ローラの回転を駆動制御する駆動制御手段とを具えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、熱伝達部材の外径をd、加圧ローラの外径をDとすると、外径dと外径Dの関係が、d>Dの時、d/D=(整数とならない値)、d<Dの時、D/d=(整数とならない値)、またはd≠Dとなっていて、熱伝達部材と加圧ローラが、いつも同じ面で接触しないようになっていることを特徴とする。請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかにおいて、熱伝達部材は、その表面が加圧ローラの表面と接触する部分を除いて筒状の断熱部材で覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、熱伝達部材の表面に加圧ローラの表面に接触する断熱部を有するので、加圧ローラと熱伝達部材との接触部から熱伝達部材の外周を伝わり、雰囲気へ逃げる熱の移動を断熱部によって防止できる。したがって、加圧ローラ全体としての温度低下を抑止でき、熱効率を高めることができるという効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る定着装置の概略構成を示す正面図、図2は図1の右側から見た側面図である。これら図面において従来と同様な部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略し、主に異なる部分について以下に説明する。
【0016】
11は小ローラ状の回転体からなる熱伝達部材で、加圧ローラ2の表面にその長手方向全幅にわたり接触し、加圧ローラ2の回転により連れ回るようになっている。この熱伝達部材11は、図3に詳細断面を示すように中空円筒体からなる内層断熱部材12と、該部材の外周に嵌合して装着された同じく中空円筒体からなる外層部材13とからなっている。外層部材13はその円周方向に良熱伝導部14と断熱部15が複数、交互に配置された構成となっている。良熱伝導部14と断熱部15の円周方向の長さは、ほぼ均等になっている。良熱伝導部14としてはアルミ等の金属が適し、内層断熱部材12及び外層部材13の断熱部15としては樹脂が適している。熱伝達部材11の両端部には断熱部材16が配設されている。断熱部材16が配設された熱伝達部材11の長さは、図2から明らかなように加圧ローラ2の長さと同じになっている。したがって、断熱部材16は加圧ローラ2の両端部より外側に配置された状態になる。断熱部材16としては樹脂、ゴム、発泡ゴム、フェルトが適している。
【0017】
この実施の形態においても温度検知部材4は、定着ローラ1の長手方向端部に配置されている。温度検知部材4により定着ローラ1の端部の温度が検知されると、この検知信号が図示しない温度制御装置に送られ、該制御装置により定着ローラ1が所定の温度となるようヒータ3が制御される。尚、温度検知部材4は、定着ローラ1の長手方向中央部に配置してもよい。
【0018】
熱伝達部材11が前記のような構成からなるので、定着装置が使用されない待機中とか、回転停止中には加圧ローラ2も回転停止となるが、このようなときに加圧ローラ2の表面が熱伝達部材11の断熱部15に接触するようにすることが可能となる。これにより、加圧ローラ2からの熱を断熱部15で遮断して、雰囲気へ熱が移動するのを防止することができる。加圧ローラ2が回転停止したとき、その表面が熱伝達部材11の断熱部15に接触するようにする手段としては、種々のものが考えられるが、例えば実機の組み付け時に加圧ローラ2の回転を駆動する図示しないモータを熱伝達部材11の回転との関係で予め設定した制御値に基づき制御することが考えられる。
【0019】
図4,5は、加圧ローラ2が回転停止したとき、その表面が熱伝達部材11の断熱部15に接触するよう自動制御する一例を示す。すなわち、この例では熱伝達部材11の軸端に設置されて熱伝達部材11と同期して回転するフィラー21と、その近傍に設置したフォトセンサ22により熱伝達部材11の断熱部15の位置(回転角度)を検知する一方、この検知信号を受ける図示しない制御手段が加圧ローラ2を回転駆動する図示しないモータを、加圧ローラ2が回転停止したとき、その表面が熱伝達部材11の断熱部15に接触するように制御する。これにより、前記と同様に加圧ローラ2からの熱を断熱部15で遮断して雰囲気へ熱が移動するのを防止することができる。
【0020】
実施の形態においては、熱伝達部材11の外径をd、加圧ローラの外径をDとすると、外径dと外径Dの関係は、
d>Dの時、d/D=(整数とならない値)
d<Dの時、D/d=(整数とならない値)
またはd≠D
となっている。
【0021】
熱伝達部材11の外径dと加圧ローラ2の外径Dを前記のようにすることにより、加圧ローラ2の回転停止中(回転中も)、熱伝達部材11と加圧ローラ2が、いつも同じ面で接触することが避けられ、加圧ローラ2の温度分布の均一化が可能となる。
【0022】
熱伝達部材11から雰囲気に熱が移動するのをより効率的に行うため、図6に示すような断熱部材25を設けてもよい。この断熱部材25は、熱伝達部材11を同心状にすっぽりと覆う形の略半円筒状に形成され、唯一開口した開口部26を接触した加圧ローラ2の表面に向けて配置されている。断熱部材25としては、耐熱樹脂、シリコーンゴム、耐熱フェルトが適している。
【0023】
前記により熱伝達部材11は、その表面が加圧ローラ2の表面と接触する部分を除いて断熱部材25で覆われることとなるので、加圧ローラ2から熱伝達部材11へ、熱伝達部材11から雰囲気への熱の移動を効率的に防止することが可能となるとともに、加圧ローラ2の温度分布均一化がより向上することが可能となる。
【0024】
前記実施の形態で示した熱伝達部材11は、好ましい一例を示したにすぎず、他の設計例を排除するものではない。例えば、熱伝達部材11を外層部材13のみで構成するとか、外層部材13の良熱伝導部14と断熱部15を適宜の数にするとか、あるいは内層断熱部材12及び外層部材13の良熱伝導部14と断熱部15の材質を実施の形態で示したもの以外とするとか、は任意である。また、この実施の形態では加圧ローラ2とニップを形成する部材として定着ローラ1を示したが、ニップ形成部材としてはこのような定着ローラ1だけではなく、定着ローラと加熱ローラの間に巻き掛けられた無端状の定着ベルトとしてもよいことは勿論である。
【0025】
次に、特許請求の範囲の請求項2以下に記載した発明の特有な効果について説明する。請求項2に記載の発明によれば、熱伝達部材は、円筒体からなる内層断熱部材と、該部材の外周に嵌合して装着された円筒体からなる外層部材とを具え、該外層部材はその円周方向に良熱伝導部と断熱部が複数、交互に配置されているので、加圧ローラから熱伝達部材へ、接触部を介して逃げる熱の移動を外層部材の断熱部により防止することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、熱伝達部材は、長手方向両端部に断熱部材を具えているので、熱伝達部材の両端部から雰囲気へ熱の移動を防止することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、熱伝達部材は、その長さが加圧ローラの長さ以上となっていて、両端部に設けた断熱部材が加圧ローラの両端部より外側に配置されているので、加圧ローラの長手方向の温度分布を加圧ローラ長手方向全域に渡って均一にする効果と、熱伝達部材の両端部から雰囲気へ熱の移動を防止する効果を効率良く両立させることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、加圧ローラは、回転停止したとき、その表面が熱伝達部材の断熱部に接触するようになっているので、加圧ローラの回転停止中に、加圧ローラとの接触部から熱伝導部材への熱の移動を防止することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、熱伝達部材の回転角度を検知するセンサと、このセンサからの検知信号を受けて、加圧ローラが回転停止したとき、加圧ローラの表面が熱伝達部材の断熱部に接触するように加圧ローラの回転を駆動制御する駆動制御手段とを具えたので、請求項5に記載の発明の効果を自動制御により達成することが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、熱伝達部材の外径をd、加圧ローラの外径をDとすると、外径dと外径Dの関係が、d>Dの時、d/D=(整数とならない値)、d<Dの時、D/d=(整数とならない値)、またはd≠Dとなっていて、熱伝達部材と加圧ローラが、いつも同じ面で接触しないようになっているので、加圧ローラの回転停止中(回転中も)、熱伝達部材と加圧ローラが、いつも同じ面で接触することが避けられ、加圧ローラの温度分布の均一化が可能となる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、熱伝達部材は、その表面が加圧ローラの表面と接触する部分を除いて筒状の断熱部材で覆われているので、加圧ローラから熱伝達部材へ、熱伝達部材から雰囲気への熱の移動を防止する効果をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施の形態に係る定着装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の右側から見た側面図である。
【図3】熱伝達部材の詳細断面図である。
【図4】加圧ローラの回転停止中の、熱伝達部材の加圧ローラに対する接触状態を示す図面である。
【図5】熱伝達部材の回転停止位置を制御するセンサを示し、(A)はその平面図、(B)は正面図である。
【図6】熱伝達部材を断熱部材で覆った例を示す正面図である。
【図7】従来の定着装置の概略構成を示す正面図である。
【図8】従来の定着装置の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 定着ローラ 2 加圧ローラ
3 ヒータ 4 温度検知部材
5 記録紙(転写紙) 6 未定着トナー像
7 熱伝達部材 11 熱伝達部材
12 内層断熱部材 13 外層部材
14 良熱伝導部 15 断熱部
16 断熱部材 21 フィラー
22 フォトセンサ 25 断熱部材
26 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラの表面に熱伝達部材を回転可能に接触させて配置した熱ローラ方式の定着装置において、前記熱伝達部材は、その表面に加圧ローラの表面に接触する断熱部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
熱伝達部材は、円筒体からなる内層断熱部材と、該部材の外周に嵌合して装着された円筒体からなる外層部材とを具え、該外層部材はその円周方向に良熱伝導部と断熱部が複数、交互に配置されている請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
熱伝達部材は、長手方向両端部に断熱部材を具えている請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
熱伝達部材は、その長さが加圧ローラの長さ以上となっていて、両端部に設けた断熱部材が加圧ローラの両端部より外側に配置されている請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
加圧ローラは、回転停止したとき、その表面が熱伝達部材の断熱部に接触するようになっている請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
熱伝達部材の回転角度を検知するセンサと、このセンサからの検知信号を受けて、加圧ローラが回転停止したとき、加圧ローラの表面が熱伝達部材の断熱部に接触するように加圧ローラの回転を駆動制御する駆動制御手段とを具えた請求項1ないし5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
熱伝達部材の外径をd、加圧ローラの外径をDとすると、外径dと外径Dの関係が、
d>Dの時、d/D=(整数とならない値)
d<Dの時、D/d=(整数とならない値)
またはd≠Dとなっていて、熱伝達部材と加圧ローラが、いつも同じ面で接触しないようになっている請求項1ないし6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
熱伝達部材は、その表面が加圧ローラの表面と接触する部分を除いて筒状の断熱部材で覆われている請求項1ないし7のいずれかに記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−276318(P2006−276318A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93394(P2005−93394)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】