説明

定着装置

【課題】熱源の熱を効率的に利用し、短時間で加熱ローラを所定の温度に昇温することができる定着装置が求められている。
【解決手段】定着装置は、加熱部材10と加圧部材とを含む。加熱部材10は、加熱ローラ15と、熱源16と、一対の断熱部材22とを含む。加熱ローラ15は、中空円筒状に形成されており、加熱ローラ15の両端は開口している。熱源16は、加熱ローラ15の軸方向X1に延びている。加熱ローラ15は、熱源16によって、挿通されている。また、熱源16と加熱ローラ15との間には、隙間が設けられている。加熱ローラ15の本体17の内部17aは、上記隙間を介して、外部と通じている。一対の断熱部材22は、加熱ローラ15の本体17の両端にそれぞれ配置されている。一対の断熱部材22と熱源16とは密着しており、加熱ローラ15の本体17は、一対の断熱部材22によって封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタ、複写機およびファクシミリ等の画像形成装置に備えられる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に備えられる定着装置は、通例、内部に熱源を有する加熱ローラと、加熱ローラと対をなす加圧ローラとを含む。トナー像が転写された用紙は、加熱ローラおよび加圧ローラによってニップされ、加熱および加圧される。これにより、トナー像が用紙に定着する。
このような定着装置では、加熱ローラは短時間で所定の温度に昇温することが求められる。そのため、特許文献1では、加熱ローラの両端を熱可塑性樹脂の軸部材でそれぞれ支持することによって熱源の熱が加熱ローラの両端から逃げることを防止し、熱源の熱を効率的に利用して、短時間で加熱ローラを昇温している。
【特許文献1】特開平6−161313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、軸部材が熱可塑性樹脂で形成されているため、加熱ローラおよび軸部材を挿通する熱源と軸部材との間に隙間が出来てしまう。というのは、軸部材と熱源とを密着させると、軸部材が熱によって変形したり炭化したりする場合があるからである。そのため、軸部材と熱源との間に隙間を設けなければいけない。したがって、熱源の熱がこの隙間から逃げてしまい、加熱ローラをより短時間で昇温することができない。
【0004】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、熱源の熱を効率的に利用し、短時間で加熱ローラを所定の温度に昇温することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、トナー像が転写された用紙(2)を加熱および加圧して用紙にトナー像を定着させる定着装置(6)において、熱伝導性材料で形成された中空円筒状の加熱ローラ(15)と、上記加熱ローラの内部(15a)に配置され、加熱ローラを加熱する熱源(16)と、上記加熱ローラの両端にそれぞれ配置され、加熱ローラの両端を封止する一対の断熱部材(22)とを備える定着装置である。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、加熱ローラの両端を断熱部材で封止することにより、熱源の熱が加熱ローラの両端から逃げることを防止できる。これにより、熱源の熱を効率的に利用して短時間で加熱ローラを所定の温度に昇温することができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記断熱部材は、繊維系断熱材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
この構成によれば、断熱部材を繊維系断熱材で形成することによって、断熱部材が柔軟性をもつので、断熱部材と加熱ローラとを容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における定着装置6を備えた画像形成装置としてのプリンタ1の概略構成を示す図解的な断面図である。図1を参照して、プリンタ1は、用紙2が搬送される用紙搬送路3と、用紙2が収容されるカセット4と、トナー像を用紙2に転写する画像形成部5と、トナー像を用紙2に定着させる定着装置6と、用紙2を搬送する用紙搬送装置7とを備えている。
【0009】
用紙2にトナー像を定着させる一連の流れは、以下のようにして行われる。最初に、カセット4に収容された用紙2が、用紙搬送装置7によって用紙搬送路3に繰り出される。次に、用紙2は、画像形成部5に搬送され、画像形成部5によってトナー像が転写される。続いて、用紙2は、定着装置6に搬送され、定着装置6によってトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙2は、用紙搬送装置7によって機外に排出される。これによって、用紙2にトナー像を定着させる一連の流れが完了する。
【0010】
次に、定着装置6の構成について詳細に説明する。
図2は、図1における定着装置6を示す概略的な拡大断面図であり、図3は、図2における定着装置6の加熱部材10を径方向からみた概略的な断面図である。なお、図3において、加熱部材10の一端側のみを示しているが、加熱部材10の他端側も一端側と同じ構成を有する。
【0011】
図2および図3を参照して、定着装置6は、加熱部材10と加圧部材11とを含む。加熱部材10は、中空円筒状であり、両端が開口している加熱ローラ15と、加熱ローラ15の内部15aに配置された熱源16と、加熱ローラ15の両端を封止する一対の断熱部材22とを含む。
加熱ローラ15は、例えば、金属のような熱伝導性に優れた材料によって形成されている。また、加熱ローラ15は、円筒状の本体17と、本体17の両端にそれぞれ形成された円筒状の一対の小径部18と、本体17と一対の小径部18とを同軸上に連結する一対の環状段部19とを有する。これら本体17、一対の小径部18および一対の環状段部19は一体に形成されている。
【0012】
図2を参照して、熱源16は、加熱ローラ15の軸方向X1に延びている。加熱ローラ15は、熱源16によって、挿通され、内部15aから加熱されている。また、熱源16と加熱ローラ15との間には、隙間が設けられている。加熱ローラ15の本体17の内部17aは、上記隙間を介して、外部と通じている。さらに、加熱ローラ15は、加熱ローラ15の両端の一対の小径部18において、断熱ブッシュ20を介して、図示しないフレームに保持された軸受21に回転自在に保持されている。
【0013】
図3を参照して、一対の断熱部材22は、加熱ローラ15の本体17の内部17aの両端にそれぞれ配置されており、例えば、シリカやアルミナ系の繊維系断熱材によって形成されている。また、一対の断熱部材22と熱源16とは接触しており、一対の断熱部材22は、加熱ローラ15の本体17の両端をそれぞれ封止するように配置されている。これにより、加熱ローラ15の本体17の内部17aは、外部と遮断されている。
【0014】
再び図2を参照して、加圧部材11は、円柱状に形成され、加熱ローラ15と概ね等しい軸長を有している。加圧部材11は、加熱ローラ15と平行に配置され、加熱ローラ15の本体17に対して押圧されている。これにより、加熱ローラ15の本体17と加圧部材11との接触部であるニップが形成されている。
トナー像が転写された用紙2は、上記ニップにおいて加熱および加圧される。これにより、トナー像が用紙2に定着する。
【0015】
以上のように、この実施形態によれば、加熱ローラ15の本体17の内部17aの両端に一対の断熱部材22をそれぞれ配置することにより、加熱ローラ15の本体17の両端を封止し、加熱ローラ15の本体17の内部17aと外部とを遮断している。これにより、熱源16から加熱ローラ15の本体17に与えられる熱が、加熱ローラ15と熱源16との隙間から外部に逃げることを防止できる。したがって、熱源16の熱を逃すことなく、効率的に利用できるので、短時間で加熱ローラ15を所定の温度に加熱することができる。
【0016】
また、一対の断熱部材22を繊維系断熱材によって形成することにより、各断熱部材22を容易に変形させて、熱源16および加熱ローラ15に密着させることができる。これによって、加熱ローラ15の密閉性が向上し、より短時間で加熱ローラ15を所定の温度に加熱することができる。さらに、各断熱部材22を容易に変形させることができるので、加熱ローラ15への一対の断熱部材22の組み込みも容易である。
【0017】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、前記の実施形態では、加熱ローラ15の本体17の両端にそれぞれ断熱部材22を配置する例について説明したが、断熱部材22は、図4に示すように、加熱ローラ15の小径部18の内部に配置されていてもよい。また、一方の断熱部材22を加熱ローラ15の小径部18の内部に配置し、他方の断熱部材22を加熱ローラ15の本体17の内部17aの一端に配置してもよい。
【0018】
また、前記の実施形態では、加圧部材11が、円筒状に形成された単一の部材である例について説明したが、加圧部材110は、図5に示すように、一対のローラ23と、一対のローラ23に張架されたベルト24とを有するものでもよい。この場合、一対のローラ23に張架されたベルト24が加熱ローラ15に押圧され、ニップが形成される。
さらに、前記の実施形態では、画像形成装置がプリンタである例について説明したが、画像形成装置は、複写機またはファクシミリであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタ、複写機またはファクシミリの内の2つ以上の機能を有する複合機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における定着装置を備えた画像形成装置としてのプリンタの概略構成を示す図解的な断面図である。
【図2】図1における定着装置を示す概略的な拡大断面図である。
【図3】図2における定着装置の加熱部材を径方向からみた概略的な断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る加熱部材を径方向からみた概略的な断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る定着装置を示す概略的な拡大断面図である。
【符号の説明】
【0020】
2 用紙
6 定着装置
15 加熱ローラ
15a 内部
16 熱源
22 断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が転写された用紙を加熱および加圧して用紙にトナー像を定着させる定着装置において、
熱伝導性材料で形成された中空円筒状の加熱ローラと、
上記加熱ローラの内部に配置され、加熱ローラを加熱する熱源と、
上記加熱ローラの両端にそれぞれ配置され、加熱ローラの両端を封止する一対の断熱部材とを備える定着装置。
【請求項2】
上記断熱部材は、繊維系断熱材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−93745(P2007−93745A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280136(P2005−280136)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】