定着装置
【課題】定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制する。
【解決手段】第1励磁回路7a、第2励磁回路7bは、ベルト701の外周面に近接して配設され、第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設される。加圧ローラ702とベルト701との係合状態で加圧ローラ702が回転すると、ベルト701がそれに連動し、従動回転する。コントローラ101は、電源装置102a、102bを独立して駆動して、励磁回路7a、7bを、個別のタイミングにてパルス状に励磁オン(ON)/励磁オフ(OFF)駆動することができる。スタンバイモードでは、画像形成モードとは異なり、コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702とを非係合状態とし、励磁回路7a、7bを、互いに位相差をもった波形で励磁動作させる。
【解決手段】第1励磁回路7a、第2励磁回路7bは、ベルト701の外周面に近接して配設され、第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設される。加圧ローラ702とベルト701との係合状態で加圧ローラ702が回転すると、ベルト701がそれに連動し、従動回転する。コントローラ101は、電源装置102a、102bを独立して駆動して、励磁回路7a、7bを、個別のタイミングにてパルス状に励磁オン(ON)/励磁オフ(OFF)駆動することができる。スタンバイモードでは、画像形成モードとは異なり、コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702とを非係合状態とし、励磁回路7a、7bを、互いに位相差をもった波形で励磁動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱方式が採用される定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、画像形成装置においては、被定着部材である記録紙上に転写されたトナー像のトナーを熱によって融解して記録紙に定着させるための定着装置が備えられている。定着装置としては、近年では薄肉金属のベルト等の回転体(定着ローラ)を誘導加熱により発熱させる電磁誘導加熱方式が多く用いられるようになってきた。
【0003】
下記特許文献1に記載される電磁誘導加熱方式の定着装置は、ウォームアップ短縮、省エネルギの観点から定着ローラの周方向の一部を加熱する局部加熱をする定着装置も知られている。
【0004】
この装置では、定着ローラが所定の定着可能温度に達した後に定着動作が行われない画像形成待機(以下、「スタンバイ」という)中において、定着ローラの温度を画像形成時の定着温度より低い所定温度範囲に温度調整する。そして、この温度調整を行いながら定着ローラを回転させることで、周方向の温度ムラを防止すると同時に、待機時における省エネルギを図っている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、定着ローラを局所加熱する定着装置において、ファーストプリントアウトタイムの短縮のため、スタンバイ時に定着ローラの回転及び温度調節をする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−154222号公報
【特許文献2】特開2007−57672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省エネルギの観点から、本来、スタンバイ状態で動作の必要ないものは、電源を遮断もしくは動作停止させることで消費電力を低減することが望ましい。ところが、上記従来の装置では、スタンバイ状態で定着ローラを回転動作させるため、駆動手段であるモータ、モータを駆動制御する制御回路、及び、モータや制御回路に電力を供給する電源装置等、多くの回路を動作させる必要がある。そのため、通常の画像形成動作時に近い電力を消費することとなる。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の定着装置は、被定着部材に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、導電層が設けられた定着ローラと、前記定着ローラと係合状態で回転することで前記定着ローラを従動回転させる加圧ローラと、磁性体コア及び励磁コイルを有し、前記定着ローラに設けられた前記導電層に渦電流を発生させて発熱させる誘導加熱手段と、前記誘導加熱手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記誘導加熱手段は、前記定着ローラの回転方向に沿った異なる箇所に複数配設され、前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記複数の誘導加熱手段を個別のタイミングにて駆動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を備える画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】画像形成動作中の定着部の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】スタンバイ中の定着部の構成を模式的に示す側面図である。
【図4】第1励磁回路の第1コイル及び第2励磁回路の第2コイルをベルトの外周側からみた図である。
【図5】本装置の制御機構の構成を示したブロック図である。
【図6】第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【図7】スタンバイモードでのベルトの回転動作のイメージを表した図である。
【図8】スタンバイモードでのベルトの回転動作のイメージを表した図である。
【図9】スタンバイモードの処理のフローチャートである。
【図10】画像形成モード(コピーモード)の処理のフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態において、ベルトの回転安定後における第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【図12】第3の実施の形態における定着部の構成を模式的に示す側面図(図(a))、第1励磁回路及び第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図(図(b))である。
【図13】第2の実施の形態の変形例において、ベルトの回転安定後における第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を備える画像形成装置の概略構成を示す模式図である。本装置は、少なくとも定着機能を有し、例えば、電子写真プロセスのタンデム方式のカラー画像形成装置として構成される。
【0013】
本装置は、各4組の感光体1(1a〜1d)、1次帯電部2(2a〜2d)、露光部3(3a〜3d)、現像部4(4a〜4d)、1次転写部53(53a〜53d)、クリーナ6(6a〜6d)、電位センサ8(8a〜8d)を備える。さらに、各1つの中間転写ベルト51、中間転写ベルトクリーナ55、2次転写部56、57、定着部7を備える。
【0014】
4個の1次帯電部2によって対応する感光体1がそれぞれ一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が対応する露光部3によってなされることにより、各感光体1上に静電潜像が形成される。その後、対応する現像部4によってトナー像が現像され、各感光体1上のトナー像は対応する1次転写部53によって中間転写ベルト51に多重転写される。そして多重転写されたトナー像は、さらに2次転写部56、57によって記録紙Pに転写される。感光体1上に残った転写残トナーは対応するクリーナ6によって回収され、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ55によって回収される。被定着部材である記録紙Pに転写されたトナー像は、定着部7によって定着されることにより、カラー画像が得られる。
【0015】
定着部7としては、電磁誘導加熱方式を採用している。電磁誘導加熱方式は、電磁誘導発熱性の発熱体に磁束発生装置で磁束を発生させ、発熱体に生じる渦電流に基づくジュール熱で被定着部材(記録紙P)を加熱して未定着のトナー像を定着処理する方式である。
【0016】
図2、図3は、定着部7の構成を模式的に示す側面図である。図2は画像形成動作中、図3は画像形成待機(以下、「スタンバイ」という)中の状態を示している。
【0017】
定着部7は、いわゆる定着ローラであるベルト701、第1励磁回路7a、第2励磁回路7b、加圧装置707、加圧ローラ702、駆動装置706、ソレノイド710、温度センサ705を備える。ベルト701は、薄肉金属等で円筒状に構成され、導電性発熱体(導電体)を導電層として含み、この導電性発熱体が加熱される。導電性発熱体は、表側、内側、中間のいずれの層に設けてもよい。
【0018】
第1励磁回路7aは、第1コイル21(21a、21b)と第1コア31(31a、31b)とでなる。第2励磁回路7bは、第2コイル22(22a、22b)と第2コア32(32a、32b)とでなる。第1励磁回路7a、第2励磁回路7bが「誘導加熱手段」である。第1コア31及び第2コア32が「磁性体コア」である。第1コイル21及び第2コイル22が「励磁コイル」である。後述するように、ベルト701は、定着動作時には図2、図3の時計方向に回転する。ベルト701の周方向において回転方向の前方を「下流側」と称する。第1励磁回路7a、第2励磁回路7bは、ベルト701の外周面に近接して配設されるが、第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設される。
【0019】
図4は、第1励磁回路7aの第1コイル21及び第2励磁回路7bの第2コイル22をベルト701の外周側からみた図である。同図下側がベルト701の回転方向下流側である。第1コイル21、第2コイル22は、それぞれ、ベルト701の長手方向に長く巻回されている。図2、図3で示される第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの図は、図4のA−A線に沿う断面に相当する図である。
【0020】
図2、図3において、第1コイル21は断面で示しているため、上流側束部21a、下流側束部21bが図示されている。第1コア31も同様で、上流側半部31a、下流側半部31bが図示されている。第2コイル22、第2コア32についても同様に、上流側束部22a、下流側束部22b、上流側半部32a、下流側半部32bが図示されている。
【0021】
第1励磁回路7a、第2励磁回路7bにおいて、電源装置102a、102b(図5参照)から動作モードに対応した交流電流が第1コイル21、第2コイル22に流れると、磁場が発生する。すると、発生した磁場に応じてベルト701の導電性発熱体に渦電流が発生して発熱する。上記動作モードには、少なくとも、定着動作を行う画像形成モードと、定着動作を行わないで待機するスタイバイモードとがある。
【0022】
温度センサ705は、ベルト701の表面温度を検出する。画像形成モードでは、温度センサ705での検出結果に基づいて、上記電源装置102a、102bによる第1コイル21、第2コイル22の交流電流が制御されることで、ベルト701の表面温度が一定に保たれる。駆動装置706は、モータ等からなり、加圧ローラ702を回転駆動する。加圧ローラ702はベルト701に対して着脱可能、すなわち、係合(当接乃至接触)する状態と係合しない状態とをとることが可能なように構成される。加圧ローラ702の着脱動作はソレノイド710によりなされる。ベルト701は、加圧ローラ702と係合していない状態では、ベルト701の周囲にある部品と接する部分が少ない。そのため、回転自在であり、僅かな付勢力によって回転を開始可能な状態となる。
【0023】
図2に示すように、ソレノイド710の駆動によりベルト701に加圧ローラ702が当接すると、加圧装置707と加圧ローラ702との間にベルト701と共に記録紙Pが挟まれ、加圧される。このような、加圧ローラ702とベルト701との係合状態で加圧ローラ702が回転すると、ベルト701がそれに連動し、従動回転する。トナー像709が形成された記録紙Pが加圧ローラ702とベルト701とに挟み込まれると、ベルト701の熱で加熱されると共に、加圧装置707と加圧ローラ702とにより圧力がかかることで、トナー像709が記録紙Pに定着する。
【0024】
図3では、加圧ローラ702がベルト701から脱した(非係合)状態であり、スタンバイ中だけでなく装置の停止時にもこの状態となる。このように、ベルト701を駆動装置706にて回転させる必要が無い期間は、駆動装置706を停止させると共に、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702を脱してベルト701の変形等を防止している。
【0025】
図5は、本装置の制御機構の構成を示したブロック図である。この制御機構は、制御手段としてのコントローラ101を有する。上記した温度センサ705、駆動装置706、ソレノイド710のほか、第1励磁回路7aを駆動する電源装置102a、第2励磁回路7bを駆動する電源装置102b、表示部・操作部103がコントローラ101に電気的に接続されている。コントローラ101は、CPUのほか、RAM、ROM等の記憶装置を含んでいる(いずれも図示せず)。
【0026】
次に、各動作モードのうち画像形成モードを説明する。本実施の形態では、画像形成モードとして「コピーモード」を例示するが、これに限られない。すなわち、定着動作を要するモードであれば、コピーモード以外のモードにも適用できる。
【0027】
コピーモードにおいて、表示部・操作部103から利用者の指示に基づいて画像形成動作が開始され、図5に示される各構成要素は、コントローラ101からの通信により動作を開始する。コントローラ101は、ソレノイド710にて加圧ローラ702をベルト701に係合させるよう制御すると共に、駆動装置706による加圧ローラ702を介したベルト701の回転制御を行う(図2)。また、コントローラ101は、温度センサ705の検出結果に基づいてベルト701の表面温度を一定に保つように、電源装置102a、102bを介してそれぞれ第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御を行う。これらの制御に際して、コントローラ101は、接続されている各構成要素に対して、画像形成動作シーケンスに従ったタイミング制御や、各構成要素のオン/オフ動作制御もしくは制御パラメータの送受信を行っている。
【0028】
次に、スタンバイモードにおける動作を説明する。スタンバイモードを含む、画像形成動作時以外のときには、コントローラ101は、ソレノイド710にて加圧ローラ702をベルト701から離脱して係合を解除するよう制御する。さらに、スタンバイ中に温度調整が必要な場合には、コントローラ101は、温度センサ705の検出結果に基づいて、ベルト701の表面温度をスタンバイモードに適した(画像形成時よりも低温の)一定温度に保つように制御する。すなわち、電源装置102a、102bを介してそれぞれ第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御を行う。
【0029】
本実施の形態では特に、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御により、ベルト701に回転力を発生させて回転させ、ベルト701の表面全体を均一な温度に制御する。スタンバイモード時の第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動態様について説明する。
【0030】
図6は、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702との非係合状態において、電源装置102a、102bの各々を独立して駆動制御できる。従って、励磁回路7a、7bを個別のタイミングにてパルス状に励磁ON/励磁OFF駆動(オン/オフ駆動)することができる。コントローラ101からのスタンバイ時の制御信号をもとに、電源装置102a、102bが動作する。
【0031】
上記した画像形成モードにおいては、励磁回路7a、7bは、同一位相で駆動される。しかし、スタンバイモードでは、画像形成モードとは異なり、図6に示すように、励磁回路7a、7bは、互いに位相差をもった波形で励磁動作する。具体的には、π/2の位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作させるよう、コントローラ101が制御する。すなわち、第2励磁回路7bは第1励磁回路7aに対してπ/2だけ遅れて励磁動作する。第1励磁回路7aが最初に励磁動作する。ベルト701の表面温度がスタンバイモードに応じて定められたスタンバイ時目標温度に達すると励磁動作は停止され、スタンバイ時目標温度を下回ると、上記した位相差をもった励磁動作が再開される。なお、構成を簡単にする観点に限れば、ベルト701の表面温度の検出値にかかわらず、図6に示すパターンによる励磁動作を継続するようにしてもよい。
【0032】
このような位相差のある波形をもって、併設される2つの励磁回路7a、7bが動作することで、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bがそれぞれモータにおけるステータの役割を果たし、ベルト701がモータにおけるロータの役割を果たす。これにより、以下に説明するように、スタンバイ中の軽い負荷状態であるベルト701に回転力を発生させることが可能となる。
【0033】
図7、図8は、スタンバイモードでのベルト701の回転動作のイメージを表した図である。図2、図3に対して、一部の構成要素の図示を省略している。
【0034】
まず、第1励磁回路7aがオンの状態では、ベルト701(の導電性発熱体)における第1励磁回路7aに対向する部分(「対向部」と称する)に渦電流が流れて電磁誘導の作用により磁束が生じる(図7)。そして、第1励磁回路7aがオフとなった時点で、「対向部」に、発生していた磁束を消させないような渦電流、すなわち、オン状態時とは逆方向の渦電流が一時的に生じる。第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aがオフとなる前の段階でオンとされている(図6)。従って、第1励磁回路7aがオフとなった時点で、図6に示すように、第2励磁回路7bはオン状態になっている(図8)。
【0035】
そのため、その時点で「対向部」と第2励磁回路7bとが引きつけ合うことになる。これにより、「対向部」が、第2励磁回路7bに引き寄せられることでベルト701が図2の時計方向に回転する。
【0036】
停止状態のベルト701に回転力を効率よく発生させるためには、励磁回路7a、7bの一方がオフとなった時点で他方がオン状態となっているような関係にあればよく、駆動の位相差はπ/2に限られない。また、特に、停止状態のベルト701に図2の時計方向への回転力を効率よく発生させるためには、最初に動作する第1励磁回路7aの位置に対して、時計方向(下流側)における180°よりも小さい回転角度範囲内の位置に第2励磁回路7bを配置するのがよい。
【0037】
このように、励磁回路7a、7bは、停止状態にあるベルト701の回転を開始させる役割を果たすが、渦電流がベルト701(の導電性発熱体)に流れる結果、ベルト701を発熱させる役割も当然に果たす。ここで、上記のようにベルト701が回転していることによって、生じた熱が一部に片寄ることが回避される。これにより、ベルト701を均一に加熱することが可能となる。
【0038】
これは、スタンバイモードにおいて、適当に加熱状態を維持するのに有効である。特に、加圧ローラ702を動作させる必要がないので、消費電力を抑えることができ、ベルト701を回転させるための専用の機構を備える必要もないので、構成がいたずらに複雑化することがない。
【0039】
図9は、スタンバイモードの処理のフローチャートである。図10は、画像形成モード(コピーモード)の処理のフローチャートである。本装置の電源投入直後には、図9の処理が開始され、後述する図9のステップS403の処理後に図10の処理が開始される。後述する図10のステップS606の処理後には再び図9の処理が開始される。
【0040】
まず、図9のステップS401では、コントローラ101は、スタンバイモード設定を行う。すなわち、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702をベルト701から離脱させ(係合を解いて)、駆動装置706をオフにして加圧ローラ702の回転を停止させる。
【0041】
次に、ステップS402では、コントローラ101は、コピーモード復帰信号の有無をチェックし、コピーモード復帰信号があれば、スタンバイモードを終了し(ステップS403)、図10のコピーモードの処理に移行する。
【0042】
一方、コピーモード復帰信号がない場合は、コントローラ101は、ステップS404で、スタンバイモードにて温度調整が必要な状態であるか否かを、温度調整信号の有無によって判別する。この温度調整信号は、例えば、ユーザの指示に基づく設定によって発生するが、これに限られない。そして、温度調整が必要な状態である場合は、ステップS405で、コントローラ101は、スタンバイモードにおける温度調整制御を実行する。この温度調整制御では、温度センサ705で検出されるベルト701の表面温度が上記スタンバイ時目標温度に一致するように、電源装置102a及び電源装置102bを駆動して、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bを励磁する。これらを励磁駆動する際の態様は、上記した図6に示した通り、位相差を有する態様である。
【0043】
一方、前記ステップS404の判別の結果、温度調整が必要でない場合は、コントローラ101は、ステップS406で、温度調整制御を停止する。すなわち、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの励磁動作を停止する。ステップS405またはステップS406の処理後は、コントローラ101は、前記ステップS402に処理を戻す。
【0044】
なお、前記ステップS404、S406のステップを廃止し、コピーモード復帰信号がない限り、一律にステップS405のスタンバイモードにおける温度調整制御が実行されるように構成してもよい。
【0045】
次に画像形成動作時の動作を説明する。まず、図10のステップS601で、コントローラ101は、コピーモード設定を行う。すなわち、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702をベルト701に係合させ、駆動装置706をオンにして加圧ローラ702の回転を開始させる。
【0046】
次に、ステップS602で、コントローラ101は、ベルト701の加熱を開始する。すなわち、電源装置102a及び電源装置102bを駆動して、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの励磁を開始する。
【0047】
次に、ステップS603では、コントローラ101は、ベルト701の表面温度が、コピーモードにおいて状態によって決定される所定の温度となるように温度制御する。この温度制御は、公知の手法と同じであり、電源装置102a及び電源装置102bの駆動の態様によって実現する。
【0048】
次に、ステップS604では、コントローラ101は、コピーモードでの動作が完了してコピーモードを終了すべき状態となったか否かを判別し、コピーモードを終了すべき状態となるまで前記ステップS603の処理を継続する。そして、コピーモードを終了すべき状態となった場合は、ステップS605で、コントローラ101は、電源装置102a及び電源装置102bの駆動を停止し、ベルト701の加熱を停止する。
【0049】
その後、ステップS606で、コントローラ101は、コピーモードを終了し、図9のスタンバイモードの処理に移行する。
【0050】
本実施の形態によれば、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bを、ベルト701の回転方向に沿った異なる位置に配設し、個別のタイミングにて励磁のオンオフが制御される。これにより、加圧ローラ702を動作させることなく、非定着動作(スタンバイ)中においてベルト701を加熱しつつ回転させる機能を励磁回路7a、7bが果たすことが可能となる。よって、非定着動作中において、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる。
【0051】
特に、励磁回路7a、7bは、互いに位相差をもって駆動されるので、時差と位置差をもった渦電流の発生により、ベルト701が停止状態にあってもベルト701に回転力を発生させることができ、効率よく回転させることができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、スタンバイモードにて温度調整が必要な場合は、図9のステップS405で、図6に示す駆動信号パターンによる温度調整制御を実行し、それを継続することとした。これに対し、本発明の第2の実施の形態では、温度調整制御を一旦開始した後、ベルト701の回転が安定したら、駆動信号パターンを図11に示す間欠駆動制御に切り換える。その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。従って、図11を加えて第2の実施の形態を説明する。
【0053】
図11は、第2の実施の形態において、ベルト701の回転安定後における第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【0054】
起動時においては、上記図6の駆動信号パターンにてベルト701の回転動作を行うが、その後、ベルト701の回転動作が安定した状態で回転動作を継続させるために、図11に示す、起動時に比較して簡易な駆動パターンで回転動作を可能にする。
【0055】
図11に示す駆動信号パターンにおいて、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bにおける駆動パルスは、画像形成動作中とは異なる所定の位相差をもった波形であり、それぞれ所定のパルス数を持ち停止期間をもった間欠波形である。具体的には、2つのパルスの波形に休止期間を持った波形である。第1励磁回路7aの2つのパルス波形と第2励磁回路7bの2つのパルス波形が時間差を持って交互に現れる。
【0056】
図11に示す駆動パターンによっても、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bがそれぞれモータにおけるステータの役割を果たし、ベルト701がモータにおけるロータの役割を果たす。これにより、回転しているベルト701に回転力を発生させることが可能となり、回転を維持することができる。しかも、ベルト701への回転力付与と同時にベルト701への加熱を行うことでベルト701を均一に加熱することが可能となる。
【0057】
また、図6に示した駆動信号パターンと比較して、停止期間があることでベルトの加熱を抑制する制御を行うことも可能となる。
【0058】
コントローラ101は、例えば、次のように制御を行う。図9のステップS405で、コントローラ101は、図6に示す駆動信号パターンによる温度調整制御を開始した後、経過時間を計時する。そして、コントローラ101は、一定の時間が経過したら、ベルト701の回転が安定したと推定し、駆動信号パターンを図11に示すものに切り換える。なお、経過時間に基づく代わりに、ベルト701の回転速度を実測し、所定の回転速度が所定の時間継続していることが検出されたら、駆動信号パターンを図11に示すものに切り換えるようにしてもよい。
【0059】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、より簡易な駆動制御によりベルト701の回転の維持が可能となり、消費電力を一層抑制することができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、誘導加熱手段として、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの2つが配設されたが、誘導加熱手段のベルト701の回転方向に沿った異なる箇所に複数配設されればよく、3つ以上でもよい。本発明の第3の実施の形態では、誘導加熱手段が3つの構成を示す。
【0061】
図12(a)は、第3の実施の形態における定着部7の構成を模式的に示す側面図であり、ベルト701と誘導加熱手段以外の構成要素の図示を省略している。図12(b)は、第3の実施の形態における第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。定着部7の構成については、図2、図3、図7、図8に代えて図12(a)が採用され、励磁回路7a、7bの励磁パターンについては図6に代えて図12(b)が採用される。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0062】
図12(a)に示すように、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bに加えて、第3励磁回路7cがベルト701の外周面に近接して配設される。第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設されるが、第3励磁回路7cは、第2励磁回路7bよりもさらに下流側の位置に配設される。第3励磁回路7cの構成は励磁回路7a、7bと同様で、コイルとコアとでなる。
【0063】
図12(b)に示すように、コントローラ101による制御によって、励磁回路7a、7b、7cは、互いに位相差をもった波形で励磁動作する。具体的には、第2励磁回路7bは第1励磁回路7aに対してπ/2だけ遅れた位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作する。第3励磁回路7cは第2励磁回路7bに対してπ/2だけ遅れた位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作する。
【0064】
かかる構成において、第1励磁回路7aがオフとなった時点で第2励磁回路7bはオン状態になっている。そのため、第1の実施の形態と同様に、第1励磁回路7aに対向する部分が第2励磁回路7bに引き寄せられることでベルト701が時計方向への回転力を受ける。また、第2励磁回路7bがオフとなった時点で第3励磁回路7cはオン状態になっている。そのため、第2励磁回路7bに対向する部分が第3励磁回路7cに引き寄せられることでベルト701が時計方向への回転力を受ける。このようにして、ベルト701が時計方向に回転する。
【0065】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
なお、本実施の形態において、励磁回路7a、7b、7cの位相差と配置との関係は、例示したものに限られない。停止状態のベルト701に回転力を効率よく発生させるためには、励磁回路7a、7b、7cのうち、ある励磁回路がオフになった時点で、その励磁回路に対して下流側に隣接する励磁回路がオン状態となっているように制御すればよい。
【0067】
より確実にベルト701に時計方向の回転起動力を発生させる観点からは、励磁回路7a、7b、7cの相互の配置位置を、互いに180°以内の角度範囲内となるように配設してもよい。例えば、等間隔に配置してもよい。
【0068】
ところで、第2の実施の形態において用いた図11に示す駆動信号パターンでは、第1励磁回路7aと第2励磁回路7bとで交互に現れる波形は2つのパルス波形であったが、図13(a)に示すように、1つのパルス波形としてもよい。あるいは、3つ以上のパルス波形としてもよい。
【0069】
また、図12(a)のような、励磁回路が3つである構成を採用する場合においても、第2の実施の形態を採用することができる。その場合は、例えば、図13(b)に示すように、ベルト701の回転が安定したら、駆動信号パターンを図12(b)に示すものから図13(a)に示す間欠駆動制御に切り換えるようにすればよい。各励磁回路の駆動信号パターンで現れる波形は、図13(a)と同様に1つのパルス波形でもよいし、3つ以上のパルス波形としてもよい。
【0070】
結局、消費電力を抑制する上で、ベルト701に回転起動力を与える初期の駆動信号パターン(図6、図12(b))から、ベルト701の回転安定後に回転維持のために適用する駆動信号パターンは、次のような条件とすればよい。すなわち、コントローラ101は、初期の駆動信号パターン(図6、図12(b))に比し、各励磁回路がオンとなる頻度が低く且つ各励磁回路がオン状態となる期間が相互に重ならないように各励磁回路を駆動制御すればよい。図11、図13(a)、(b)がその例である。
【0071】
なお、上記各実施の形態において、コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702との非係合状態において、各励磁回路を個別のタイミングにて駆動制御できるが、その制御の態様は、上記例示した態様に限定されない。各励磁回路の励磁動作もオン/オフ動作に限るものでもない。すなわち、スタンバイモードにおいて、停止状態のベルト701に対しては、回転起動力が発生するように各励磁回路を励磁制御すればよい。そして、スタンバイモードにおいて、回転が安定しているベルト701に対しては、回転を維持できるように各励磁回路を励磁制御すればよい。
【0072】
なお、上記各実施の形態において、各励磁回路(7a、7b、7c)は、ベルト701の外周面に近接配置されたが、内周面に近接配置してもよい。
【符号の説明】
【0073】
31、32 コア
21、22 コイル
7a、7b、7c 励磁回路
101 コントローラ
701 ベルト
702 加圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱方式が採用される定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、画像形成装置においては、被定着部材である記録紙上に転写されたトナー像のトナーを熱によって融解して記録紙に定着させるための定着装置が備えられている。定着装置としては、近年では薄肉金属のベルト等の回転体(定着ローラ)を誘導加熱により発熱させる電磁誘導加熱方式が多く用いられるようになってきた。
【0003】
下記特許文献1に記載される電磁誘導加熱方式の定着装置は、ウォームアップ短縮、省エネルギの観点から定着ローラの周方向の一部を加熱する局部加熱をする定着装置も知られている。
【0004】
この装置では、定着ローラが所定の定着可能温度に達した後に定着動作が行われない画像形成待機(以下、「スタンバイ」という)中において、定着ローラの温度を画像形成時の定着温度より低い所定温度範囲に温度調整する。そして、この温度調整を行いながら定着ローラを回転させることで、周方向の温度ムラを防止すると同時に、待機時における省エネルギを図っている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、定着ローラを局所加熱する定着装置において、ファーストプリントアウトタイムの短縮のため、スタンバイ時に定着ローラの回転及び温度調節をする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−154222号公報
【特許文献2】特開2007−57672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省エネルギの観点から、本来、スタンバイ状態で動作の必要ないものは、電源を遮断もしくは動作停止させることで消費電力を低減することが望ましい。ところが、上記従来の装置では、スタンバイ状態で定着ローラを回転動作させるため、駆動手段であるモータ、モータを駆動制御する制御回路、及び、モータや制御回路に電力を供給する電源装置等、多くの回路を動作させる必要がある。そのため、通常の画像形成動作時に近い電力を消費することとなる。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の定着装置は、被定着部材に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、導電層が設けられた定着ローラと、前記定着ローラと係合状態で回転することで前記定着ローラを従動回転させる加圧ローラと、磁性体コア及び励磁コイルを有し、前記定着ローラに設けられた前記導電層に渦電流を発生させて発熱させる誘導加熱手段と、前記誘導加熱手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記誘導加熱手段は、前記定着ローラの回転方向に沿った異なる箇所に複数配設され、前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記複数の誘導加熱手段を個別のタイミングにて駆動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を備える画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】画像形成動作中の定着部の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】スタンバイ中の定着部の構成を模式的に示す側面図である。
【図4】第1励磁回路の第1コイル及び第2励磁回路の第2コイルをベルトの外周側からみた図である。
【図5】本装置の制御機構の構成を示したブロック図である。
【図6】第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【図7】スタンバイモードでのベルトの回転動作のイメージを表した図である。
【図8】スタンバイモードでのベルトの回転動作のイメージを表した図である。
【図9】スタンバイモードの処理のフローチャートである。
【図10】画像形成モード(コピーモード)の処理のフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態において、ベルトの回転安定後における第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【図12】第3の実施の形態における定着部の構成を模式的に示す側面図(図(a))、第1励磁回路及び第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図(図(b))である。
【図13】第2の実施の形態の変形例において、ベルトの回転安定後における第1、第2励磁回路の駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を備える画像形成装置の概略構成を示す模式図である。本装置は、少なくとも定着機能を有し、例えば、電子写真プロセスのタンデム方式のカラー画像形成装置として構成される。
【0013】
本装置は、各4組の感光体1(1a〜1d)、1次帯電部2(2a〜2d)、露光部3(3a〜3d)、現像部4(4a〜4d)、1次転写部53(53a〜53d)、クリーナ6(6a〜6d)、電位センサ8(8a〜8d)を備える。さらに、各1つの中間転写ベルト51、中間転写ベルトクリーナ55、2次転写部56、57、定着部7を備える。
【0014】
4個の1次帯電部2によって対応する感光体1がそれぞれ一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が対応する露光部3によってなされることにより、各感光体1上に静電潜像が形成される。その後、対応する現像部4によってトナー像が現像され、各感光体1上のトナー像は対応する1次転写部53によって中間転写ベルト51に多重転写される。そして多重転写されたトナー像は、さらに2次転写部56、57によって記録紙Pに転写される。感光体1上に残った転写残トナーは対応するクリーナ6によって回収され、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ55によって回収される。被定着部材である記録紙Pに転写されたトナー像は、定着部7によって定着されることにより、カラー画像が得られる。
【0015】
定着部7としては、電磁誘導加熱方式を採用している。電磁誘導加熱方式は、電磁誘導発熱性の発熱体に磁束発生装置で磁束を発生させ、発熱体に生じる渦電流に基づくジュール熱で被定着部材(記録紙P)を加熱して未定着のトナー像を定着処理する方式である。
【0016】
図2、図3は、定着部7の構成を模式的に示す側面図である。図2は画像形成動作中、図3は画像形成待機(以下、「スタンバイ」という)中の状態を示している。
【0017】
定着部7は、いわゆる定着ローラであるベルト701、第1励磁回路7a、第2励磁回路7b、加圧装置707、加圧ローラ702、駆動装置706、ソレノイド710、温度センサ705を備える。ベルト701は、薄肉金属等で円筒状に構成され、導電性発熱体(導電体)を導電層として含み、この導電性発熱体が加熱される。導電性発熱体は、表側、内側、中間のいずれの層に設けてもよい。
【0018】
第1励磁回路7aは、第1コイル21(21a、21b)と第1コア31(31a、31b)とでなる。第2励磁回路7bは、第2コイル22(22a、22b)と第2コア32(32a、32b)とでなる。第1励磁回路7a、第2励磁回路7bが「誘導加熱手段」である。第1コア31及び第2コア32が「磁性体コア」である。第1コイル21及び第2コイル22が「励磁コイル」である。後述するように、ベルト701は、定着動作時には図2、図3の時計方向に回転する。ベルト701の周方向において回転方向の前方を「下流側」と称する。第1励磁回路7a、第2励磁回路7bは、ベルト701の外周面に近接して配設されるが、第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設される。
【0019】
図4は、第1励磁回路7aの第1コイル21及び第2励磁回路7bの第2コイル22をベルト701の外周側からみた図である。同図下側がベルト701の回転方向下流側である。第1コイル21、第2コイル22は、それぞれ、ベルト701の長手方向に長く巻回されている。図2、図3で示される第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの図は、図4のA−A線に沿う断面に相当する図である。
【0020】
図2、図3において、第1コイル21は断面で示しているため、上流側束部21a、下流側束部21bが図示されている。第1コア31も同様で、上流側半部31a、下流側半部31bが図示されている。第2コイル22、第2コア32についても同様に、上流側束部22a、下流側束部22b、上流側半部32a、下流側半部32bが図示されている。
【0021】
第1励磁回路7a、第2励磁回路7bにおいて、電源装置102a、102b(図5参照)から動作モードに対応した交流電流が第1コイル21、第2コイル22に流れると、磁場が発生する。すると、発生した磁場に応じてベルト701の導電性発熱体に渦電流が発生して発熱する。上記動作モードには、少なくとも、定着動作を行う画像形成モードと、定着動作を行わないで待機するスタイバイモードとがある。
【0022】
温度センサ705は、ベルト701の表面温度を検出する。画像形成モードでは、温度センサ705での検出結果に基づいて、上記電源装置102a、102bによる第1コイル21、第2コイル22の交流電流が制御されることで、ベルト701の表面温度が一定に保たれる。駆動装置706は、モータ等からなり、加圧ローラ702を回転駆動する。加圧ローラ702はベルト701に対して着脱可能、すなわち、係合(当接乃至接触)する状態と係合しない状態とをとることが可能なように構成される。加圧ローラ702の着脱動作はソレノイド710によりなされる。ベルト701は、加圧ローラ702と係合していない状態では、ベルト701の周囲にある部品と接する部分が少ない。そのため、回転自在であり、僅かな付勢力によって回転を開始可能な状態となる。
【0023】
図2に示すように、ソレノイド710の駆動によりベルト701に加圧ローラ702が当接すると、加圧装置707と加圧ローラ702との間にベルト701と共に記録紙Pが挟まれ、加圧される。このような、加圧ローラ702とベルト701との係合状態で加圧ローラ702が回転すると、ベルト701がそれに連動し、従動回転する。トナー像709が形成された記録紙Pが加圧ローラ702とベルト701とに挟み込まれると、ベルト701の熱で加熱されると共に、加圧装置707と加圧ローラ702とにより圧力がかかることで、トナー像709が記録紙Pに定着する。
【0024】
図3では、加圧ローラ702がベルト701から脱した(非係合)状態であり、スタンバイ中だけでなく装置の停止時にもこの状態となる。このように、ベルト701を駆動装置706にて回転させる必要が無い期間は、駆動装置706を停止させると共に、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702を脱してベルト701の変形等を防止している。
【0025】
図5は、本装置の制御機構の構成を示したブロック図である。この制御機構は、制御手段としてのコントローラ101を有する。上記した温度センサ705、駆動装置706、ソレノイド710のほか、第1励磁回路7aを駆動する電源装置102a、第2励磁回路7bを駆動する電源装置102b、表示部・操作部103がコントローラ101に電気的に接続されている。コントローラ101は、CPUのほか、RAM、ROM等の記憶装置を含んでいる(いずれも図示せず)。
【0026】
次に、各動作モードのうち画像形成モードを説明する。本実施の形態では、画像形成モードとして「コピーモード」を例示するが、これに限られない。すなわち、定着動作を要するモードであれば、コピーモード以外のモードにも適用できる。
【0027】
コピーモードにおいて、表示部・操作部103から利用者の指示に基づいて画像形成動作が開始され、図5に示される各構成要素は、コントローラ101からの通信により動作を開始する。コントローラ101は、ソレノイド710にて加圧ローラ702をベルト701に係合させるよう制御すると共に、駆動装置706による加圧ローラ702を介したベルト701の回転制御を行う(図2)。また、コントローラ101は、温度センサ705の検出結果に基づいてベルト701の表面温度を一定に保つように、電源装置102a、102bを介してそれぞれ第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御を行う。これらの制御に際して、コントローラ101は、接続されている各構成要素に対して、画像形成動作シーケンスに従ったタイミング制御や、各構成要素のオン/オフ動作制御もしくは制御パラメータの送受信を行っている。
【0028】
次に、スタンバイモードにおける動作を説明する。スタンバイモードを含む、画像形成動作時以外のときには、コントローラ101は、ソレノイド710にて加圧ローラ702をベルト701から離脱して係合を解除するよう制御する。さらに、スタンバイ中に温度調整が必要な場合には、コントローラ101は、温度センサ705の検出結果に基づいて、ベルト701の表面温度をスタンバイモードに適した(画像形成時よりも低温の)一定温度に保つように制御する。すなわち、電源装置102a、102bを介してそれぞれ第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御を行う。
【0029】
本実施の形態では特に、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの制御により、ベルト701に回転力を発生させて回転させ、ベルト701の表面全体を均一な温度に制御する。スタンバイモード時の第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動態様について説明する。
【0030】
図6は、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702との非係合状態において、電源装置102a、102bの各々を独立して駆動制御できる。従って、励磁回路7a、7bを個別のタイミングにてパルス状に励磁ON/励磁OFF駆動(オン/オフ駆動)することができる。コントローラ101からのスタンバイ時の制御信号をもとに、電源装置102a、102bが動作する。
【0031】
上記した画像形成モードにおいては、励磁回路7a、7bは、同一位相で駆動される。しかし、スタンバイモードでは、画像形成モードとは異なり、図6に示すように、励磁回路7a、7bは、互いに位相差をもった波形で励磁動作する。具体的には、π/2の位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作させるよう、コントローラ101が制御する。すなわち、第2励磁回路7bは第1励磁回路7aに対してπ/2だけ遅れて励磁動作する。第1励磁回路7aが最初に励磁動作する。ベルト701の表面温度がスタンバイモードに応じて定められたスタンバイ時目標温度に達すると励磁動作は停止され、スタンバイ時目標温度を下回ると、上記した位相差をもった励磁動作が再開される。なお、構成を簡単にする観点に限れば、ベルト701の表面温度の検出値にかかわらず、図6に示すパターンによる励磁動作を継続するようにしてもよい。
【0032】
このような位相差のある波形をもって、併設される2つの励磁回路7a、7bが動作することで、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bがそれぞれモータにおけるステータの役割を果たし、ベルト701がモータにおけるロータの役割を果たす。これにより、以下に説明するように、スタンバイ中の軽い負荷状態であるベルト701に回転力を発生させることが可能となる。
【0033】
図7、図8は、スタンバイモードでのベルト701の回転動作のイメージを表した図である。図2、図3に対して、一部の構成要素の図示を省略している。
【0034】
まず、第1励磁回路7aがオンの状態では、ベルト701(の導電性発熱体)における第1励磁回路7aに対向する部分(「対向部」と称する)に渦電流が流れて電磁誘導の作用により磁束が生じる(図7)。そして、第1励磁回路7aがオフとなった時点で、「対向部」に、発生していた磁束を消させないような渦電流、すなわち、オン状態時とは逆方向の渦電流が一時的に生じる。第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aがオフとなる前の段階でオンとされている(図6)。従って、第1励磁回路7aがオフとなった時点で、図6に示すように、第2励磁回路7bはオン状態になっている(図8)。
【0035】
そのため、その時点で「対向部」と第2励磁回路7bとが引きつけ合うことになる。これにより、「対向部」が、第2励磁回路7bに引き寄せられることでベルト701が図2の時計方向に回転する。
【0036】
停止状態のベルト701に回転力を効率よく発生させるためには、励磁回路7a、7bの一方がオフとなった時点で他方がオン状態となっているような関係にあればよく、駆動の位相差はπ/2に限られない。また、特に、停止状態のベルト701に図2の時計方向への回転力を効率よく発生させるためには、最初に動作する第1励磁回路7aの位置に対して、時計方向(下流側)における180°よりも小さい回転角度範囲内の位置に第2励磁回路7bを配置するのがよい。
【0037】
このように、励磁回路7a、7bは、停止状態にあるベルト701の回転を開始させる役割を果たすが、渦電流がベルト701(の導電性発熱体)に流れる結果、ベルト701を発熱させる役割も当然に果たす。ここで、上記のようにベルト701が回転していることによって、生じた熱が一部に片寄ることが回避される。これにより、ベルト701を均一に加熱することが可能となる。
【0038】
これは、スタンバイモードにおいて、適当に加熱状態を維持するのに有効である。特に、加圧ローラ702を動作させる必要がないので、消費電力を抑えることができ、ベルト701を回転させるための専用の機構を備える必要もないので、構成がいたずらに複雑化することがない。
【0039】
図9は、スタンバイモードの処理のフローチャートである。図10は、画像形成モード(コピーモード)の処理のフローチャートである。本装置の電源投入直後には、図9の処理が開始され、後述する図9のステップS403の処理後に図10の処理が開始される。後述する図10のステップS606の処理後には再び図9の処理が開始される。
【0040】
まず、図9のステップS401では、コントローラ101は、スタンバイモード設定を行う。すなわち、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702をベルト701から離脱させ(係合を解いて)、駆動装置706をオフにして加圧ローラ702の回転を停止させる。
【0041】
次に、ステップS402では、コントローラ101は、コピーモード復帰信号の有無をチェックし、コピーモード復帰信号があれば、スタンバイモードを終了し(ステップS403)、図10のコピーモードの処理に移行する。
【0042】
一方、コピーモード復帰信号がない場合は、コントローラ101は、ステップS404で、スタンバイモードにて温度調整が必要な状態であるか否かを、温度調整信号の有無によって判別する。この温度調整信号は、例えば、ユーザの指示に基づく設定によって発生するが、これに限られない。そして、温度調整が必要な状態である場合は、ステップS405で、コントローラ101は、スタンバイモードにおける温度調整制御を実行する。この温度調整制御では、温度センサ705で検出されるベルト701の表面温度が上記スタンバイ時目標温度に一致するように、電源装置102a及び電源装置102bを駆動して、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bを励磁する。これらを励磁駆動する際の態様は、上記した図6に示した通り、位相差を有する態様である。
【0043】
一方、前記ステップS404の判別の結果、温度調整が必要でない場合は、コントローラ101は、ステップS406で、温度調整制御を停止する。すなわち、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの励磁動作を停止する。ステップS405またはステップS406の処理後は、コントローラ101は、前記ステップS402に処理を戻す。
【0044】
なお、前記ステップS404、S406のステップを廃止し、コピーモード復帰信号がない限り、一律にステップS405のスタンバイモードにおける温度調整制御が実行されるように構成してもよい。
【0045】
次に画像形成動作時の動作を説明する。まず、図10のステップS601で、コントローラ101は、コピーモード設定を行う。すなわち、ソレノイド710の駆動により加圧ローラ702をベルト701に係合させ、駆動装置706をオンにして加圧ローラ702の回転を開始させる。
【0046】
次に、ステップS602で、コントローラ101は、ベルト701の加熱を開始する。すなわち、電源装置102a及び電源装置102bを駆動して、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの励磁を開始する。
【0047】
次に、ステップS603では、コントローラ101は、ベルト701の表面温度が、コピーモードにおいて状態によって決定される所定の温度となるように温度制御する。この温度制御は、公知の手法と同じであり、電源装置102a及び電源装置102bの駆動の態様によって実現する。
【0048】
次に、ステップS604では、コントローラ101は、コピーモードでの動作が完了してコピーモードを終了すべき状態となったか否かを判別し、コピーモードを終了すべき状態となるまで前記ステップS603の処理を継続する。そして、コピーモードを終了すべき状態となった場合は、ステップS605で、コントローラ101は、電源装置102a及び電源装置102bの駆動を停止し、ベルト701の加熱を停止する。
【0049】
その後、ステップS606で、コントローラ101は、コピーモードを終了し、図9のスタンバイモードの処理に移行する。
【0050】
本実施の形態によれば、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bを、ベルト701の回転方向に沿った異なる位置に配設し、個別のタイミングにて励磁のオンオフが制御される。これにより、加圧ローラ702を動作させることなく、非定着動作(スタンバイ)中においてベルト701を加熱しつつ回転させる機能を励磁回路7a、7bが果たすことが可能となる。よって、非定着動作中において、定着開始までの時間短縮を図りつつ非定着動作中における消費電力を抑制することができる。
【0051】
特に、励磁回路7a、7bは、互いに位相差をもって駆動されるので、時差と位置差をもった渦電流の発生により、ベルト701が停止状態にあってもベルト701に回転力を発生させることができ、効率よく回転させることができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、スタンバイモードにて温度調整が必要な場合は、図9のステップS405で、図6に示す駆動信号パターンによる温度調整制御を実行し、それを継続することとした。これに対し、本発明の第2の実施の形態では、温度調整制御を一旦開始した後、ベルト701の回転が安定したら、駆動信号パターンを図11に示す間欠駆動制御に切り換える。その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。従って、図11を加えて第2の実施の形態を説明する。
【0053】
図11は、第2の実施の形態において、ベルト701の回転安定後における第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。
【0054】
起動時においては、上記図6の駆動信号パターンにてベルト701の回転動作を行うが、その後、ベルト701の回転動作が安定した状態で回転動作を継続させるために、図11に示す、起動時に比較して簡易な駆動パターンで回転動作を可能にする。
【0055】
図11に示す駆動信号パターンにおいて、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bにおける駆動パルスは、画像形成動作中とは異なる所定の位相差をもった波形であり、それぞれ所定のパルス数を持ち停止期間をもった間欠波形である。具体的には、2つのパルスの波形に休止期間を持った波形である。第1励磁回路7aの2つのパルス波形と第2励磁回路7bの2つのパルス波形が時間差を持って交互に現れる。
【0056】
図11に示す駆動パターンによっても、第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bがそれぞれモータにおけるステータの役割を果たし、ベルト701がモータにおけるロータの役割を果たす。これにより、回転しているベルト701に回転力を発生させることが可能となり、回転を維持することができる。しかも、ベルト701への回転力付与と同時にベルト701への加熱を行うことでベルト701を均一に加熱することが可能となる。
【0057】
また、図6に示した駆動信号パターンと比較して、停止期間があることでベルトの加熱を抑制する制御を行うことも可能となる。
【0058】
コントローラ101は、例えば、次のように制御を行う。図9のステップS405で、コントローラ101は、図6に示す駆動信号パターンによる温度調整制御を開始した後、経過時間を計時する。そして、コントローラ101は、一定の時間が経過したら、ベルト701の回転が安定したと推定し、駆動信号パターンを図11に示すものに切り換える。なお、経過時間に基づく代わりに、ベルト701の回転速度を実測し、所定の回転速度が所定の時間継続していることが検出されたら、駆動信号パターンを図11に示すものに切り換えるようにしてもよい。
【0059】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、より簡易な駆動制御によりベルト701の回転の維持が可能となり、消費電力を一層抑制することができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、誘導加熱手段として、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bの2つが配設されたが、誘導加熱手段のベルト701の回転方向に沿った異なる箇所に複数配設されればよく、3つ以上でもよい。本発明の第3の実施の形態では、誘導加熱手段が3つの構成を示す。
【0061】
図12(a)は、第3の実施の形態における定着部7の構成を模式的に示す側面図であり、ベルト701と誘導加熱手段以外の構成要素の図示を省略している。図12(b)は、第3の実施の形態における第1励磁回路7a及び第2励磁回路7bの駆動信号パターンを時間軸に沿って示す図である。定着部7の構成については、図2、図3、図7、図8に代えて図12(a)が採用され、励磁回路7a、7bの励磁パターンについては図6に代えて図12(b)が採用される。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0062】
図12(a)に示すように、第1励磁回路7a、第2励磁回路7bに加えて、第3励磁回路7cがベルト701の外周面に近接して配設される。第2励磁回路7bは、第1励磁回路7aよりも下流側の位置に配設されるが、第3励磁回路7cは、第2励磁回路7bよりもさらに下流側の位置に配設される。第3励磁回路7cの構成は励磁回路7a、7bと同様で、コイルとコアとでなる。
【0063】
図12(b)に示すように、コントローラ101による制御によって、励磁回路7a、7b、7cは、互いに位相差をもった波形で励磁動作する。具体的には、第2励磁回路7bは第1励磁回路7aに対してπ/2だけ遅れた位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作する。第3励磁回路7cは第2励磁回路7bに対してπ/2だけ遅れた位相差をもって一定周期で繰り返し励磁動作する。
【0064】
かかる構成において、第1励磁回路7aがオフとなった時点で第2励磁回路7bはオン状態になっている。そのため、第1の実施の形態と同様に、第1励磁回路7aに対向する部分が第2励磁回路7bに引き寄せられることでベルト701が時計方向への回転力を受ける。また、第2励磁回路7bがオフとなった時点で第3励磁回路7cはオン状態になっている。そのため、第2励磁回路7bに対向する部分が第3励磁回路7cに引き寄せられることでベルト701が時計方向への回転力を受ける。このようにして、ベルト701が時計方向に回転する。
【0065】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
なお、本実施の形態において、励磁回路7a、7b、7cの位相差と配置との関係は、例示したものに限られない。停止状態のベルト701に回転力を効率よく発生させるためには、励磁回路7a、7b、7cのうち、ある励磁回路がオフになった時点で、その励磁回路に対して下流側に隣接する励磁回路がオン状態となっているように制御すればよい。
【0067】
より確実にベルト701に時計方向の回転起動力を発生させる観点からは、励磁回路7a、7b、7cの相互の配置位置を、互いに180°以内の角度範囲内となるように配設してもよい。例えば、等間隔に配置してもよい。
【0068】
ところで、第2の実施の形態において用いた図11に示す駆動信号パターンでは、第1励磁回路7aと第2励磁回路7bとで交互に現れる波形は2つのパルス波形であったが、図13(a)に示すように、1つのパルス波形としてもよい。あるいは、3つ以上のパルス波形としてもよい。
【0069】
また、図12(a)のような、励磁回路が3つである構成を採用する場合においても、第2の実施の形態を採用することができる。その場合は、例えば、図13(b)に示すように、ベルト701の回転が安定したら、駆動信号パターンを図12(b)に示すものから図13(a)に示す間欠駆動制御に切り換えるようにすればよい。各励磁回路の駆動信号パターンで現れる波形は、図13(a)と同様に1つのパルス波形でもよいし、3つ以上のパルス波形としてもよい。
【0070】
結局、消費電力を抑制する上で、ベルト701に回転起動力を与える初期の駆動信号パターン(図6、図12(b))から、ベルト701の回転安定後に回転維持のために適用する駆動信号パターンは、次のような条件とすればよい。すなわち、コントローラ101は、初期の駆動信号パターン(図6、図12(b))に比し、各励磁回路がオンとなる頻度が低く且つ各励磁回路がオン状態となる期間が相互に重ならないように各励磁回路を駆動制御すればよい。図11、図13(a)、(b)がその例である。
【0071】
なお、上記各実施の形態において、コントローラ101は、ベルト701と加圧ローラ702との非係合状態において、各励磁回路を個別のタイミングにて駆動制御できるが、その制御の態様は、上記例示した態様に限定されない。各励磁回路の励磁動作もオン/オフ動作に限るものでもない。すなわち、スタンバイモードにおいて、停止状態のベルト701に対しては、回転起動力が発生するように各励磁回路を励磁制御すればよい。そして、スタンバイモードにおいて、回転が安定しているベルト701に対しては、回転を維持できるように各励磁回路を励磁制御すればよい。
【0072】
なお、上記各実施の形態において、各励磁回路(7a、7b、7c)は、ベルト701の外周面に近接配置されたが、内周面に近接配置してもよい。
【符号の説明】
【0073】
31、32 コア
21、22 コイル
7a、7b、7c 励磁回路
101 コントローラ
701 ベルト
702 加圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被定着部材に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、
導電層が設けられた定着ローラと、
前記定着ローラと係合状態で回転することで前記定着ローラを従動回転させる加圧ローラと、
磁性体コア及び励磁コイルを有し、前記定着ローラに設けられた前記導電層に渦電流を発生させて発熱させる誘導加熱手段と、
前記誘導加熱手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記誘導加熱手段は、前記定着ローラの回転方向に沿った異なる箇所に複数配設され、
前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記複数の誘導加熱手段を個別のタイミングにて駆動制御することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段を互いに位相差を持って駆動することで、前記定着ローラに回転力を発生させるように制御することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段を各々オン/オフ駆動し、前記複数の誘導加熱手段のうちある誘導加熱手段がオフになった時点で、その誘導加熱手段に対して前記定着ローラの回転方向における下流側に隣接する誘導加熱手段がオン状態となっているように制御することを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記定着ローラが回転を開始した後に、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段に対する駆動制御を、前記位相差を持って駆動する制御から間欠駆動制御に切り換え、前記間欠駆動制御では、前記制御手段は、前記位相差を持って駆動する制御に比し前記各誘導加熱手段がオンとなる頻度が低く且つ前記各誘導加熱手段がオン状態となる期間が相互に重ならないように前記各誘導加熱手段を駆動制御することを特徴とする請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態においては、前記加圧ローラの回転動作を停止させるように制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項1】
被定着部材に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、
導電層が設けられた定着ローラと、
前記定着ローラと係合状態で回転することで前記定着ローラを従動回転させる加圧ローラと、
磁性体コア及び励磁コイルを有し、前記定着ローラに設けられた前記導電層に渦電流を発生させて発熱させる誘導加熱手段と、
前記誘導加熱手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記誘導加熱手段は、前記定着ローラの回転方向に沿った異なる箇所に複数配設され、
前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記複数の誘導加熱手段を個別のタイミングにて駆動制御することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段を互いに位相差を持って駆動することで、前記定着ローラに回転力を発生させるように制御することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段を各々オン/オフ駆動し、前記複数の誘導加熱手段のうちある誘導加熱手段がオフになった時点で、その誘導加熱手段に対して前記定着ローラの回転方向における下流側に隣接する誘導加熱手段がオン状態となっているように制御することを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態において、前記定着ローラが回転を開始した後に、前記制御手段は、前記複数の誘導加熱手段に対する駆動制御を、前記位相差を持って駆動する制御から間欠駆動制御に切り換え、前記間欠駆動制御では、前記制御手段は、前記位相差を持って駆動する制御に比し前記各誘導加熱手段がオンとなる頻度が低く且つ前記各誘導加熱手段がオン状態となる期間が相互に重ならないように前記各誘導加熱手段を駆動制御することを特徴とする請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの非係合状態においては、前記加圧ローラの回転動作を停止させるように制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−53403(P2011−53403A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201495(P2009−201495)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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