説明

定量切断装置及び定量切断方法

【課題】本発明は、円柱形状の弾性食品であっても予め設定される一定重量に簡単な測定で精度良く切断することができる定量切断装置を提供する。
【解決手段】定量切断装置10は、弾性食品Kを一定重量の個体kに切断する。この定量切断装置10は、整形手段(整形プーリ12と押圧プーリ13)とセンサ14と切断制御部15とカッタ16とを備える。整形手段は、弾性食品Kを一定の断面積に整形する。センサ14は、整形手段によって整形された弾性食品の断面積に対応する寸法h(t)を測定する。切断制御部15は、センサ14からの出力、弾性食品Kの比重ρ、搬送速度Uに基づいて弾性食品Kの切断箇所Ctを決定し、カッタ16で弾性食品Kを切断箇所で切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性のある食品を一定重量に切断する定量切断装置、および定量切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱形状に連続成形して作られる食品は、切断前の食品の搬送速度または移動長さに切断刃物の動作を合わせて一定長さで切断することで、所望する一定の重量になるように切断される。このとき、食品が弾性を有している場合には、当該弾性食品はその弾性のため、円柱形状に連続成形する過程で収縮するなどにより、直径が変化することがある。このような直径の誤差は、一定長さに切断した弾性食品の個体の重量のばらつきとして現れる。
【0003】
大量生産される食品においては、表示される内容量に対して、実際の食品の重量が下回らないことが要求される。したがって、個々の重量の誤差を考慮して、包装される食品の重量は、表示された内容量よりも超過する側に誤差が生じるように品質管理される。しかし、個々の重量を超過側に管理して生産する場合、個々の重量の誤差が大きいと、一定量の原料から生産できる製品の個数が試算値よりも下回り、生産性が悪化する。
【0004】
例えば、特許文献1には、設定した一個の重量になるような長さにのし餅を切断するのし餅の自動切断方法および切断機が記載されている。のし餅は、平たく伸ばされて冷やし固められる。このとき、厚み方向にばらつきが生じやすい。特許文献1に記載の切断機は、短冊状に幅を切り揃えたのし餅を厚み方向に複数本束ねて1組にし、のし餅の束を搬送するコンベアの進行方向と直角な方向にその総厚みをセンサ装置で測定する。測定した厚みの値は、進行方向の距離の値と対応させて記憶する。そして、1回に切断されるのし餅の総重量が一定になるように、記憶した厚みの値を基に算定した距離だけのし餅の束を移動させ、束ねた1組ののし餅を端から順に切断する。
【0005】
このように、特許文献1に記載された切断機は、のし餅を複数の短冊にして厚み方向に重ねることで、冷やし固めたときに生じるのし餅の厚みのばらつきを相殺し、一袋当りの総重量でのばらつきを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−46280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1による切断方法によれば、のし餅は、冷やし固められた後、均一な幅に切り揃えられた後、厚み方向に重ねられて厚みを測定される。つまり、単品に切り出したときの個々の重量に対する誤差の要因となるのは、厚みのみである。そして、冷やし固められたのし餅のように切断前の形状が安定していれば、厚みを計測してから切断するまでの間に形状が変化しないので、切断するときの重量が均一になるように切断することも容易である。
【0008】
しかし、円柱形状に連続成形して作られる弾性食品の場合は、円柱形状に成形した後に、食材そのものの持つ弾力性によって、直径方向に不均一に収縮し、そもそも断面形状が安定しにくい性質がある。つまり、弾性食品は、搬送中の形状が変化しやすいため、特許文献1による切断方法を適用しても、単品の重量を一定に揃えることが難しい。また、円柱形状に成形された弾性食品は、真円であると仮定しない限り、一方向に直径を測定しただけでその断面積を決定することができない。
【0009】
また、タンパク質、脂肪等の固形分比率が温度によって大きく物性が変わってしまう食品、例えばチーズ等では、引き延して整形する場合は、直径の変動が著しく予測不能となる場合がある。上記の変動要因を均一化しようとすると、攪拌によってオイルオフや離水、硬化などの現象が起こり、適切な物性に制御することが困難となる。
【0010】
そこで、本発明は、円柱形状の弾性食品であっても予め設定される一定重量に簡単な測定で精度良く切断することができる定量切断装置および定量切断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る定量切断装置は、連続して製造される弾性を有する弾性食品を一定重量の個体に切断する。この定量切断装置は、整形手段とセンサと切断制御部とカッタとを備える。整形手段は、一定の速度で搬送されてくる弾性食品を一定の断面積に整形する。センサは、整形手段によって整形された弾性食品の断面積に対応する寸法を計測する(以下、代表寸法という)。切断制御部は、少なくともセンサからの出力、弾性食品の比重、弾性食品の搬送速度に基づいて弾性食品の切断箇所を決定する。カッタは、切断制御部に決定された弾性食品の切断箇所を切断する。
【0012】
このとき、定量切断装置において整形手段は、整形プーリと押圧プーリとを備える。整形プーリは、弾性食品が搬送される途中に配置されてセンサの出力に基づいて弾性食品の断面積を求めるときにその断面積計算を実施するために基準として設定される断面形状の溝を有している。押圧プーリは、整形プーリの溝に弾性食品の外周面の少なくとも半分を密着させる。また、センサは、弾性食品の搬送方向に整形手段よりも下流側に配置される。そしてセンサは、一つの切断箇所を決定するまでの間に弾性食品の搬送方向に沿って複数回代表寸法を測定し、切断制御部は、測定された代表寸法から求められる断面積によって見積もられる測定点間の体積の和を基に切断箇所を決定する。
【0013】
または、この定量切断装置は、カッタよりも搬送ラインの下流側に配置されて切断後の個体の実測重量を測定する計量器をさらに備える。そして、切断制御部は、目標重量と実重量との差を基に次に切断する個体の切断箇所を補正する。
【0014】
または、この定量切断装置において、整形プーリの溝は、整形された弾性食品の断面の目標形状を真円としたときの直径を有した半円の底壁と、この直径の幅で底壁の両端から立ち上がる側壁とで構成される。
【0015】
切断箇所が連続する2つの測定点の間に設定される場合、1つ前の個体の切断箇所から最初の測定点までの間の体積、および、最後の測定点からこの個体の切断箇所までの間の体積は、各切断箇所の前後の測定点で測定される代表寸法から求められる断面積の変化率から1次線形で補間された断面積を基に見積もる。
【0016】
また、整形プーリに巻き掛けられている範囲の前記弾性食品の断面積を前記整形プーリに巻き掛けられていない範囲の前記弾性食品の断面積よりも小さくしない力で、前記押圧プーリを前記整形プーリに向けて付勢する付勢手段をさらに備える。
【0017】
本発明に係る定量切断方法は、連続して製造される弾性を有する弾性食品を一定重量の個体に切断する。そのために、切断前の弾性食品を一定の速度で搬送し、弾性食品を搬送する途中で弾性食品を一定の断面積に整形手段で整形し、整形された弾性食品の断面積に対応する寸法をセンサで計測し、センサからの出力、弾性食品の比重、弾性食品の搬送速度に基づいて弾性食品の切断箇所を切断制御部で決定する。そして、切断制御部に決定された弾性食品の切断箇所をカッタで切断する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の定量切断装置によれば、円柱形状の弾性食品であっても簡単な測定だけで設定された一定重量に対して精度良く切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の定量切断装置を模式的に示す側面図。
【図2】図1に示した定量切断装置の整形プーリおよびその周辺を示す側面図。
【図3】図2中のF3−F3線に沿って整形プーリおよび押圧プーリを示す断面図。
【図4】図1中のF4−F4線に沿って弾性食品とカッタとの配置を示す断面図。
【図5】図1に示した定量切断装置で切断箇所を決定する方法を説明する模式図。
【図6】図1に示した定量切断装置のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る第1の実施形態の定量切断装置10およびこれを使った定量切断方法を、図1〜6を参照して説明する。図1に示すように、この定量切断装置10は、断面の形状が一定の形状で連続して製造される弾性を有する弾性食品、例えば、粘弾性を有した原材料から円柱形状に成形して作られる弾性食品Kを一定重量の個体kに切断する。定量切断装置10は、ラインコントローラ11と整形プーリ12と押圧プーリ13とセンサ14と切断制御部15とカッタ16とを備えている。なお、この明細書中において弾性食品Kとは、製造工程における搬送中にその断面形状が変形しやすい食品、例えば、チーズ、パン生地、麺生地、グミ、餅、飴、蒲鉾、こんにゃくなどが含まれる。本実施形態では、弾性食品Kがチーズである場合を例に説明する。
【0021】
定量切断装置10には、複数のローラやプーリ、駆動モータからなる搬送手段の一例である搬送ラインから円柱形状に形成された弾性食品Kが供給される。弾性食品Kは、搬送ラインによって搬送される過程で一定の比率で引き伸ばされながら目標の直径を有した円柱形状に成形される。ラインコントローラ11は、目標とする直径の円柱形状に成形された弾性食品Kを設定された一定の速度で搬送するように駆動モータを制御している。
【0022】
整形プーリ12と押圧ローラ13は、整形手段の一例であって、弾性食品Kを一定の断面積に整形する。整形プーリ12は、ラインコントローラ11によって、弾性食品Kが一定の搬送速度Uで搬送されるように制御される。押圧プーリ13は、図1に示すように、整形プーリ12に向けて付勢手段132で付勢されている。弾性食品Kは、押圧プーリ13によって整形プーリ12に押し当てられて一定の形状に整形された後に、ガイド163の途中に配置されたカッタ16によって個体kへと切断される。切断された個体kは、スライダ18によって案内され、コンベア171の上流側に落とされる。圧力センサ172は、コンベア171のベルト173の下に設置され、ベルト173の上に載せられた個体kの実重量Waを計測する。
【0023】
切断制御部15は、センサ14で測定した弾性食品Kの代表寸法、弾性食品Kの比重、弾性食品Kの搬送速度U、および弾性食品Kの個体kの実際の重量(実重量Wa)とに基づいて、弾性食品Kの切断箇所を決定する。そして、切断制御部15は、駆動モータ162を制御し、駆動モータ162の回転軸164に設けられたブレード161を駆動して弾性食品Kを決定された切断箇所で切断する。
【0024】
カッタ16は、図1に示すように、センサ14よりも搬送ラインの下流側に配置され、ブレード161と駆動モータ162とガイド163とを備える。ブレード161は、弾性食品Kの搬送方向に対して垂直に配置され、図4に示すように駆動モータ162によって弾性食品Kの搬送ラインを横切るように回転させられる。駆動モータ162は、切断制御部15によって1回転ごとの回転速度および回転角度を自由に変動させやすいように、サーボモータであることが好ましい。ガイド163は、ブレード161が横切る搬送ラインの上流側および下流側にそれぞれ設置され、ブレード161によって切断される弾性食品Kがぶれないように保持する。
【0025】
ブレード161を回転させることによって生じる振動を抑えるために、ブレード161の回転軸164に対して対称となる位置にバランサーウエイトを取り付けても良いし、複数本のブレード161を点対称に配置しても良い。また、駆動モータ162としてサーボモータを採用する代わりにソレノイドを用いても良い。その場合、ブレード161は、往復動するように構成するか、同じ経路を通らないように循環するように構成する。
【0026】
計量器17は、カッタ16よりも搬送ラインの下流側に配置されて、切断された固体kの実重量Waを計量する。計量器17は、図1に示すように、コンベア171と圧力センサ172とを備えている。コンベア171は、切断された個体kを次の工程へ送る搬送ラインの一部を構成する。カッタ16によって切断された弾性食品Kの個体kは、カッタ16の下に配置されたスライダ18によって案内され、コンベア171の上流側に落とされる。圧力センサ172は、コンベア171のベルト173の下に設置され、通過するベルト173の上に載せられた個体kの実重量Waを計測することができる。
【0027】
本実施形態において圧力センサ172は、通過する個体kを一つ一つ計量できるように配置されている。なお、圧力センサ172は、個体kを一つ一つ計量する代わりに、複数個を同時に計量して、その平均値を求めるようにしても良いし、コンベア171上に乗っている複数の個体kの総重量の増加減少を基に、新たに乗せられた個体kの重量を求めるようにしても良い。
【0028】
図3を参照して、さらに定量切断装置10の詳細を説明する。図3は、整形プーリ12の断面および押圧プーリ13を示す断面図である。整形プーリ12は、図3に示すように外周に溝121が形成されており、図2に示すように搬送速度Uと同じ周速度で回転する。溝121は、センサ14の出力に基づいて弾性食品Kの断面積を求めるときにその断面積計算を実施するための基準として設定された断面形状を有している。具体的には溝121は、個体kが目標体積Vsになる場合の断面形状を真円にしたときの直径を有した半円の底壁121aと、この直径の幅で半円の底壁121aの両端から立ち上がる側壁121bとで構成されている。
【0029】
押圧プーリ13は、図3に示すように、整形プーリ12の溝121に弾性食品Kを押し当て、この弾性食品Kの外周面のほぼ半周分を溝121の底壁121aに密着させる。したがって、整形プーリ12に挿嵌される前の弾性食品Kは、溝121の横幅に対して深さ方向にやや縦長に扁平されていることが好ましい。押圧プーリ13の幅は、整形プーリ12の溝121の幅より小さく、溝121に嵌り込むように構成されているとともに、弾性食品Kの断面形状が真円に近くなるように、底壁121aの半円と同じ半径を有する円弧の断面形状の溝131を有している。
【0030】
このように構成することによって、弾性食品Kの断面形状は、押圧プーリ13によって整形プーリ12の溝121に押さえつけられた状態で、ほぼ真円になる。このとき、押圧プーリ13で弾性食品Kを整形プーリ12に押し当てる付勢手段132の力は、整形プーリ12と押圧プーリ13とによって整形された弾性食品Kの断面積が整形前の弾性食品Kの断面積より小さくならない程度の力であることが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態において、図1、図2、図3に示すように押圧プーリ13の直径は、整形プーリ12の直径よりも小さく図示されている。しかし、上述した押圧プーリ13としての機能を果たすのであれば、整形プーリ12の直径よりも大きい直径の押圧プーリ13を用いてもよい。また、押圧プーリ13は、弾性食品Kの搬送方向に複数配置されていても良い。ただし、断面積が小刻みに変動する弾性食品Kの場合、押圧プーリ13がその変動に追随できるようにすることを考慮すると、押圧プーリ13は、直径もある程度小さく、かつ、軽いことが好ましい。
【0032】
センサ14は、図1に示すように、押圧プーリ13よりも搬送ラインの下流側に配置されている。以下、図2に基づいて詳細を説明する。センサ14は、レーザ式の距離センサであって、整形プーリ12の溝121の幅方向において中央の位置の弾性食品Kの外表面の変位を測定する。つまり、センサ14は、溝121に嵌合している弾性食品Kの高さ(整形プーリ12の半径方向に沿って計測した場合の弾性食品Kの寸法)に比例して変動する代表寸法h(t)を計測する。代表寸法h(t)を計測する計測時間間隔Δtは、個体kを設定された目標重量Wsに切断する切断時間間隔Ctよりも短い時間間隔にする。したがって、センサ14は、弾性食品Kの搬送方向に少なくとも2点以上、個体kの代表寸法h(t)を計測する。
【0033】
なお、センサ14は、レーザ式の距離センサの代わりに超音波式の距離センサであっても良いし、弾性食品Kの外表面を非接触で計測する代わりに押圧プーリ13の変位を測定することによって間接的に代表寸法h(t)を計測するようにしても良い。また、計測時間間隔Δtは、弾性食品Kの代表寸法、すなわち断面積の変化率に応じて設定しても良い。つまり、時間間隔を短くして、弾性食品Kの単位長さ当りの計測点を増やすことで、弾性食品Kの体積変化を細かく捉えることができるようになる。その結果、後述する重量予測モデルで算出される個体kの予測重量Weと実際に切断された個体kの実重量Waとの差のばらつきが小さくなる。
【0034】
切断制御部15は、センサ14で測定した代表寸法h(t)、弾性食品Kの比重ρ、弾性食品Kの搬送速度Uに基づいて、x個目の個体kの実重量Waが目標重量Wsとなるように、弾性食品Kの切断箇所Cを決定する。
【0035】
この切断制御部15は、図1に示すように、センサ14、ラインコントローラ11、カッタ16、計量器17にそれぞれ接続されている。切断制御部15は、予め設定される弾性食品Kの目標重量Ws、弾性食品Kの比重ρ、弾性食品Kの設定断面積S、標準切断時間間隔CTを基に切断前の弾性食品Kの搬送速度Uを決定し、ラインコントローラ11に制御信号を出力するとともに、実際の搬送速度Uを確認するために整形プーリ12で計測された搬送速度Uをラインコントローラ11から取得する。また、切断制御部15は、変動する弾性食品Kの断面積S(t)に比例して変動する代表寸法h(t)をセンサ14から取得し、切断された弾性食品Kの個体kの実重量Waを計量器17から取得する。切断制御部15は、予め設定される弾性食品Kに関する各設定値、およびラインコントローラ11とセンサ14と計量器17から得られるそれぞれの実測値に基づいて、弾性食品Kのx番目の個体kの切断時間間隔Ctやその補正値CT’を算出する。そして、切断時間間隔Ctおよび補正値CT’から決定された切断時間間隔CTに基づいて、切断制御部15は、ブレード161の回転速度や駆動タイミングを制御する信号をカッタ16へ出力する。
【0036】
この切断制御部15は、いわゆるプログラマブル論理コントローラ(PLC)を含んでいる。弾性食品Kの個体kの目標重量Wsに対して精度良く切断するために、例えば、決定された切断箇所Cが333msに対して、測定ポイントを60点確保して約5ms以内の切断精度を保障するためには、センサ14で代表寸法を取得したあと、カッタ16で弾性食品Kから個体kを切断するための次の切断箇所Cを決定するまでの一連のプログラムを実行するスキャンタイムが5ms以内に処理される必要がある。したがって、このPLCに搭載されるCPU(中央演算ユニット)の演算処理速度は、一連のシーケンスを5ms以内に処理できる十分な仕様のものが好ましい。なお、PLCと同じ処理ができるのであれば、どのようなコンピュータシステムを採用しても良い。このため、必要とされる切断箇所Cの時間と精度によるが、なるべく一連のプログラムを実行するスキャンタイムが10ms以下で処理できるCPUが望ましい。
【0037】
以上の構成を備える定量切断装置10は、製造ラインにおいて搬送中の断面形状が変化しやすい弾性食品Kであっても、整形プーリ12の溝121に弾性食品Kを押し当てて弾性食品Kの断面形状を保持した状態で一つの方向に代表寸法h(t)を計測するという簡単な方法で、搬送方向に変動する弾性食品Kの体積変化を正確に把握することができる。つまり、これまでは弾性食品Kの断面積を正確に求めるためには、少なくとも2方向に弾性食品Kの径を測定して楕円で近似したり、スリットレーザを照射して断面形状を測定するセンサで実測したりなど、装置としても大掛かりなものが必要であったのに対して、この実施形態の定量切断装置10では、対象とする弾性食品Kの物性特性を活かし、変形しない程度に半円状の均一な形状を有する溝121に押え付けて形状を整え安定化させることで一点の距離情報から断面積を正確に予測することを連続的に可能にしている。
【0038】
以下に、計測された代表寸法h(t)から弾性食品Kのx番目の個体kの切断時間間隔Ctを算出する方法を図5を参照して説明する。図5では、センサ14からカッタ16までの搬送ラインを直線状に展開して示している。計測点から切断位置までの距離D、n番目の計測時刻t、時刻tにおける代表寸法h(t)、計測時間間隔Δt、搬送速度U、任意の切断時刻t、n番目の計測時刻tからn+1番目の計測時刻t(n+1)までの間の弾性食品Kの体積をVとする。 切断される弾性食品Kの個体kの重量Wkは、その個体kの体積Vkおよび比重ρから求められる。個体kの体積Vkは、任意の時刻tの断面積S(t)を搬送速度Uで積算することで求められる。任意の時刻tの断面積S(t)は、その時刻tにおける代表寸法h(t)から求められる。
【0039】
そこで、センサ14で測定される代表寸法h(t)から切断される地点の断面積S(t)を予測し、さらに、任意の時刻tで切断された地点から以降の断面積S(t)を移動方向に積算することで、切断された地点から以降の体積V(t)を算出する。そして、弾性食品Kの比重ρを一定とし、次に切断したときに個体kの重量Wkが個体kの目標重量Wsになる切断時間間隔Ctを求めることで、次の切断時刻t+Ctを決定する。
【0040】
いま、時刻tに代表寸法h(t)を測定した計測点と時刻tに代表寸法h(t)を測定した計測点との間の位置で弾性食品Kが切断されると仮定する。その切断予定位置をセンサ14の時間軸において考えて、時刻tとする。時刻tにおける代表寸法h(t)は、その前の時刻tにおける代表寸法h(t)および後の時刻tにおける代表寸法h(t)から、一次線形補間によって求めることができる。
【0041】
具体的には、t≦t≦tとして、代表寸法h(t)は、以下の式(1)に示される。
【数1】

【0042】
また、この代表寸法によって予測される断面積S(t)は、式(2)に示される。このとき式(2)において、弾性食品Kの断面形状は、成形プーリ12の溝121に押し当てられて扁平するので、指数mは1〜2.5の範囲内である。
【数2】

【0043】
さらに、この断面積S(t)を基に、時刻tの計測点から時刻tの切断箇所までの予測される体積V(t)を式(3)から算出できる。
【数3】

【0044】
図5において、指数m=2の場合の時刻tにおける計測点と時刻tにおける計測点との間を切断したとすると、切断箇所Cから時刻tにおける計測点までの体積V1bは、時刻tにおける計測点から時刻tにおける計測点までの体積Vから時刻tにおける計測点から切断箇所Cまでの体積V1aを引いた体積である。時刻tにおける計測点から時刻tにおける切断箇所Cまでの体積V1aとして予測される体積V(t)は、式(4)に示される。
【数4】

【0045】
展開して整理すると次のようになる。
【数5】

【0046】
また図5に示すように、切断時間間隔Ctによって切断される弾性食品Kの個体kの体積V(t)は、切断箇所Cからこの個体kを切り出すための次の切断箇所Cまでの体積V(t)の総和であり、個体kの目標重量Ws、弾性食品Kの比重ρ、切断時間間隔Ctとすると、これらは、式(5)に示される関係にある。そこで、この式(5)から切断時間間隔Ctは求められる。
【数6】

【0047】
図5に示すように切断箇所Cから切断箇所Cまでの間に5つの計測点t,t,t,t,tが存在する場合、式(5)を展開すると次のようになる。
【数7】

【0048】
簡略化のために、z=t+Ctとして、式(4)と同様に展開する。
【数8】

【0049】
最後にzを元に戻すと、切断時間間隔Ctは式(6)によって求めることができる。
【数9】

【0050】
なお、重量予測モデルにおいて、計測点間の弾性食品Kの代表寸法h(t)を内挿する補間関数は、計測時間間隔tn+1−tが短い場合、一次関数で必要な予測精度を得ることができる。計測時間間隔tn+1−tが長い場合、多項式で定義される関数曲線やスプライン曲線などを補間関数として用いればよい。
【0051】
また、切断時間間隔Ctを算出するタイミングは、センサ14で測定した時刻tの代表寸法h(t)と時刻tn+1の代表寸法h(tn+1)から求められる体積Vを先に決定された切断箇所の直後から累積し、これが目標重量Wsを超えた時点に設定すればよい。例えば、実際に切断されているいないに係らず、図5に示す例の場合、先に決定された切断箇所Cから後の体積V1b,V,V,V,V,Vに基づく重量を順に足し合わせる。そして、時刻tまでの体積を足し合わせると、目標重量Wsを超えるので、その時点で次の切断箇所Cを時刻tの代表寸法h(t)および時刻tの代表寸法h(t)から算出する。
【0052】
さらに、切断箇所Cが決定されると、その後の体積V7b,V,V,V10,V11に基づく重量を順に足し合わせ、目標重量Wsを超える前の時刻t11の代表寸法h(t11)と目標重量Wsを超えたあとの時刻t12の代表寸法h(t12)から、次の切断箇所Cを算出する。このようにして、切断箇所Cを順番に決定していく。切断制御部15は、搬送速度U、センサ14を通過した時刻からの経過時間、センサ14の計測点からカッタ16の切断位置までの距離Dを基に、決定された切断箇所Cが切断位置に来たときにブレード161でタイミングよく切断できるようにカッタ16を制御する。
【0053】
本実施形態の定量切断装置10は、弾性食品Kから個体kを切断した後でその個体kの実重量Waを計量器17で計量し、重量予測モデルに反映するフィードバック制御機能をさらに有している。そこで、このフィードバック制御機能を含めた定量切断装置10の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
定量切断装置10は、まず、目標重量Ws、標準切断時間間隔CT、標準切断時間間隔の下限値CTminと上限値CTmax、切断の対象となる弾性食品Kの搬送速度U、実重量Waに基づく補正係数I(t)など各設定値を入力される(S1)。搬送速度Uで弾性食品Kの搬送を開始し、入力された目標重量Ws、搬送速度U、標準切断時間間隔CTを基に、定量切断の制御が行われない通常のカット動作が開始される(S2)。1つの個体kをカットするごとに、代表寸法h(t)から切断箇所Cを決定する定量切断の制御を開始するか判断する(S3)。制御を開始しない場合、さらに定量切断装置10はカット動作を終了するか判断し(S31)する。カット動作を終了する場合、定量切断装置10は停止し、カット動作を続ける場合は標準切断時間間隔CTで次の個体kを切断する(S2)ことを繰り返す。
【0055】
定量切断の制御を開始する場合、切断制御部15は、カウンタをゼロにして(S35)代表寸法h(t)の計測を開始する(S4)。弾性食品Kは、整形プーリ12の溝121へ押圧プーリ13で押し当てられ形が整えられたのち、センサ14によって代表寸法h(t)を計測される。切断制御部15は、カッタ16を制御し、代表寸法h(t)を計測し始めた時刻からU/D以上経過した後に、まず頭出しの切断を行なうとともに、カウンタを1つ繰り上げる(S45)。切断制御部15は、1つ目の個体kを切断するために、式(6)に従って最初の切断箇所に対する次の切断箇所までの切断時間間隔Ctを算出する(S5)。
【0056】
ここで、先に切断された個体kの実重量Waに基づく補正係数I(x)があるか判断(S6)し、あれば切断時間間隔に加味される。しかし、補正係数I(x)は実際に切断された個体kの実重量Waに基づいて演算される。したがって、実重量Waが計測されるまでの初期の切断において補正係数I(x)は当然まだ定まっていない。なお、定量切断装置10が通常の切断を開始し、その間に切断された個体kの重量を定量切断の制御に先駆けて取得してその重量値を基に補正係数I(x)が設定される場合は、その補正係数I(x)を採用しても良い。また、定量切断の制御が開始されるとしばらくの間は補正係数I(x)を演算するために基準切断時間間隔CTで切断を繰り返す予備運転を行うようにしても良い。この実施形態では補正係数I(x)が設定されていない場合を例に、以下に説明する。そこで、補正係数I(x)が定まるまでここ(S6)で決定されるx個目までの個体kを切断する時間間隔は、CT=Ctと決定(S61)して、補正係数I(x)が無い場合の処理に進む。
【0057】
弾性食品Kの個体kの目標重量Wsを基に設定される切断時間間隔の公差に対して、演算された切断時間間隔CTが超えることを防ぐために、CTmin<CT<CTmaxに入っているか判断する(S7)。範囲以内である場合は、演算によって求められた切断時間間隔CTで弾性食品Kを切断する(S8)。また、切断時間間隔CTが下限値CTminを下回っている場合はCT=CTminとして弾性食品Kを切断し(S9)、切断時間間隔CTが上限値CTmaxを超えている場合はCT=CTmaxとして弾性食品Kを切断する(S10)。
【0058】
切断された個体kは、計量器17で実重量Waが測定される(S11)。切断制御部15は、実重量Waを目標重量Wsと比較する(S12)。誤差がある場合は、代表寸法h(t)から算出された次の切断時間間隔Ctにこの誤差を反映するために、以下の計算式によって補正係数I(x)が設定される。このとき補正係数I(x)は、先の補正係数I(x-1)があればその補正係数I(x-1)と事前に設定されている比例定数Jとから、次式で求められる(S13)。
【数10】

【0059】
最後に、個体kの重量を一定にするために切断箇所Cを決定する定量切断の制御を終了するか判断(S14)する。そして継続する場合は、引き続き次の切断時間間隔Ctを代表寸法h(t)から算出する動作(S5)の前に戻り、カウンタを一つ繰り上げる(S45)。そして次の切断時間間隔Ctを算出(S5)し、補正係数I(x)があるか判断する(S6)。2回目以降の切断の場合、前回までのルーティーンによって設定された補正係数I(x)があるので、これを用いて新しい補正値CT’を演算する(S15)。この補正値CT’を用いて切断時間間隔CTは、以下のように決定される(S16)。
【数11】

【0060】
したがって、以降の切断動作では、先に切断された個体kの実重量Waから求められた補正値CT’が加えられたより理想的な切断時間間隔CTを毎回算出し、これを基に切断動作が行われる。そして、定量切断の制御を終了するか判断する(S14)ところで、停止すると判断されるまで、定量切断の動作((S45)から(S14)まで)が繰り返される。定量切断の制御を終了すると判断された場合は、「A」からカット動作を終了するかの判断(S31)に移行し、終了する場合は、定量切断装置10が停止し、終了しない場合は、基準切断時間間隔CTで切断をする通常の切断動作(S2)に戻る。
【0061】
以上のように構成された定量切断装置10は、弾性食品Kの断面形状を整形プーリ12で安定させた状態で、一方向についてのみ代表寸法h(t)を測定し、その値からx番目に切断する個体kの重量が目標重量Wsになる理想的な切断時間間隔CTを算出する。さらに、この定量切断装置10は、切断後の個体kの実重量Waを測定し、その値を目標重量Wsと比較し、次の切断時間間隔CT(X+1)を補正することができる。そして定量切断装置10は、この動作を連続的に行なう。
【0062】
したがって、弾性食品Kを目標重量Wsの個体kに切断する場合、各個体kの重量の誤差を極めて少なくすることができる。この定量切断装置10は、個体kの誤差を小さくできるので、大量生産される商品個々の重量のばらつきが少ない安定した品質を確保できるとともに、原材料の無駄を少なく抑えることができる。
【0063】
また、上述の実施形態では、弾性を有する食品の形状を円柱形状として説明したが、食品の断面の形状は円に限らず、一定の形状に設定される断面の形状が計測しやすい形状であれば、三角形や四角形あるいはその他の形状でもよい。例えば、シート状に薄く延された弾性食品である場合、整形プーリに相当する搬送ベルトの表面と弾性食品との間に空気が入らないよう押圧プーリで押し付け、代表寸法として厚みを測定し、目標重量となるように定量切断することで、一定重要に精度良く切断することもできる。
【符号の説明】
【0064】
10…定量切断装置、12…整形プーリ、13…押圧プーリ、14…センサ、15…切断制御部、16…カッタ、17…計量器、121…溝、121a…底壁、121b…側壁、K…弾性食品、k…個体、U…搬送速度、h(t)…代表寸法、S(t)…断面積、Vs…目標体積、Ws…目標重量、Wa…実重量、ρ…弾性食品の比重
…x番目の切断箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して製造される弾性を有する弾性食品を一定重量の個体に切断する定量切断装置において、
一定の速度で搬送されてくる前記弾性食品を一定の断面積に整形する整形手段と、
前記整形手段によって整形された前記弾性食品の断面積に対応する寸法を計測するセンサと、
前記センサからの出力、前記弾性食品の比重、前記弾性食品の搬送速度に基づいて前記弾性食品の切断箇所を決定する切断制御部と、
前記切断制御部に決定された前記弾性食品の切断箇所を切断するカッタと
を備える定量切断装置。
【請求項2】
前記整形手段は、
前記弾性食品が搬送される途中に配置されて前記センサの出力に基づいて前記弾性食品の断面積を求めるときにその断面積計算を実施するための基準として設定される断面形状の溝を有した整形プーリと、
前記整形プーリの前記溝に前記弾性食品の外周面の少なくとも半分を密着させる押圧プーリと
を備えることを特徴とする請求項1に記載された定量切断装置。
【請求項3】
前記センサは、前記弾性食品の搬送方向に前記整形手段よりも下流側に配置されことを特徴とする請求項1に記載された定量切断装置。
【請求項4】
前記センサは、一つの切断箇所を決定するまでの間に前記弾性食品の搬送方向に沿って複数回代表寸法を測定し、
前記切断制御部は、測定された代表寸法から求められる断面積によって見積もられる測定点間の体積の和を基に前記切断箇所を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載された定量切断装置。
【請求項5】
前記カッタよりも前記弾性食品の搬送方向の下流側に配置されて切断後の前記個体の重量を測定する計量器をさらに備え、
前記切断制御部は、目標重量と実重量との差を基に次に切断する個体の前記切断箇所を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載された定量切断装置。
【請求項6】
前記整形プーリの溝は、整形された前記弾性食品の断面の目標形状を真円としたときの直径を有した半円の底壁と、前記直径の幅で前記底壁の両端から立ち上がる側壁とで構成されていることを特徴とする請求項2に記載された定量切断装置。
【請求項7】
前記切断箇所が連続する2つの前記測定点の間に設定される場合、1つ前の個体の切断箇所から最初の測定点までの間の体積、および、最後の測定点からこの個体の切断箇所までの間の体積は、各切断箇所の前後の前記測定点で測定される代表寸法から求められる断面積の変化率から1次線形で補間された断面積を基に見積もられる
ことを特徴とする請求項4に記載された定量切断装置。
【請求項8】
前記整形プーリと前記押圧プーリによって整形された前記弾性食品の断面積が整形前の前記弾性食品の断面積よりも小さくならない程度の力で、前記押圧プーリを前記整形プーリに向けて付勢する付勢手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載された定量切断装置。
【請求項9】
連続して製造される弾性を有する弾性食品を一定重量の個体に切断する定量切断方法において、
切断前の前記弾性食品を一定の速度で搬送し、
前記弾性食品を搬送する途中で前記弾性食品を一定の断面積に整形手段で整形し、
整形された前記弾性食品の断面積に対応する寸法をセンサで計測し、
前記センサからの出力、前記弾性食品の比重、前記弾性食品の搬送速度に基づいて前記弾性食品の切断箇所を切断制御部で決定し、
前記切断制御部に決定された前記弾性食品の切断箇所をカッタで切断する
定量切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30540(P2011−30540A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182681(P2009−182681)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】