説明

実体顕微鏡用双眼鏡筒

【課題】単純な構造で、輻輳角を有する実体顕微鏡用双眼鏡筒を提供すること。
【解決手段】ポロプリズム部104aは、入射面に垂直に光が入射される入射プリズム110aと、出射面から垂直に光が出射される出射プリズム112aと、入射プリズム110aと出射プリズム112aとの間の光路中に配置されている中間プリズム111aとを有し、眼幅調整プリズム部105aは、出射プリズム112aの出射光の光軸AX3上に配置された第一眼幅調整プリズム120aと、第一眼幅調整プリズム120aの出射光の光軸AX4に対し入射面が垂直になるよう配置された第二眼幅調整プリズム121aと、を有し、ポロプリズム部104aと眼幅調整プリズム部105aとを構成する光学素子の反射面のうちのいずれか一つの反射面は、輻輳角θが0°とは異なる角度となるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的正立像の形成と、使用者の眼幅に対応する眼幅調整を可能とした輻輳角を有するガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、実体顕微鏡用双眼鏡筒において、光学像の上下方向の反転による正立像の形成と、使用者(観察者)の瞳間距離に対応する接眼レンズの射出瞳間距離(以下、適宜「眼幅」という。)の調整とは、それぞれ不可欠の構成である。このため、従来より、双眼鏡筒として例えば、図7に示すような構成が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来技術のガリレオ型の実体顕微鏡の光学系を示している。第1の接眼レンズ25と第2の接眼レンズ25′との作る瞳孔間距離(眼幅)Lを変化させることができる。そして、眼幅Lを変化させたとき、立体感を変化させない瞳孔間距離調整手段として、第1の正立プリズム24と第2の正立プリズム24’と、結像レンズ23、23’を用いる。
【0004】
また、瞳孔間距離(眼幅)調整手段は、第1の接眼レンズ25と第2の接眼レンズ25′との作る眼幅Lを変化させたとき、第1の接眼レンズ25と第2の接眼レンズ25’との作る輻輳角θを同じ値に維持する。そして、光軸Oa3、Oa3’上で、これらの光軸に沿って進む光線を各接眼レンズ系の光軸Oa4、Oa4’に沿って進ませることができる。観察者は、肉眼E、E’で物体OBJの像を観察する。
【0005】
【特許文献1】特開2001−311876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒は、多くの場合、出射側の光軸が平行である、即ち輻輳角を持たないため、使用時間が長くなると疲れやすくなり、また、慣れていない観察者には融像しにくいという現象を生ずる。これは、観察側には輻輳角を持たないにもかかわらず、物体側には内向角があるため、観察者は光軸が平行でありながら視差があるという不自然な像を観察させられるためである。
【0007】
特許文献1に開示された構成では、このような不都合を克服すべく、ガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒において、輻輳角を持たせた構成例である。
【0008】
しかしながら、図7に示した構成では、眼幅調整の際に結像レンズを連動させる機構が必要となる。このため、構造が複雑となってしまうという問題を有している。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単純な構造で、輻輳角を有する実体顕微鏡用双眼鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、正立像を得るための一対のポロプリズム部と、眼幅を調整するための一対の眼幅調整プリズム部とを少なくとも備えるガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒であって、ポロプリズム部は、入射面に垂直に光が入射される入射プリズムと、出射面から垂直に光が出射される出射プリズムと、入射プリズムと出射プリズムとの間の光路中に配置されている中間プリズムとを有し、眼幅調整プリズム部は、出射プリズムの出射光の光軸上に配置された第一眼幅調整プリズムと、第一眼幅調整プリズムの出射光の光軸に対し入射面が垂直になるよう配置された第二眼幅調整プリズムと、を有し、ポロプリズム部と眼幅調整プリズム部とを構成する光学素子の反射面のうちのいずれか一つの反射面は、輻輳角が0°とは異なる角度となるように形成されていることを特徴とするガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒を提供できる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、第一眼幅調整プリズムの出射光の光軸を回転軸として、第一眼幅調整プリズムと第二眼幅調整プリズムとが相対的に所定角度だけ回転して配置されることにより、輻輳角が0°と異なることが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、所定の鏡筒傾斜角度を得られるように、入射プリズムは、入射プリズムの出射光の光軸を軸にして鏡筒傾斜角度に応じて回転させて配置され、さらに、出射プリズムは、出射プリズムへの入射光の光軸を軸にして入射プリズムの回転方向とは反対の方向に回転させて配置されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、第一眼幅調整プリズムと第二眼幅調整プリズムとの相対的な回転に応じて生ずる像の回転を補正するように、入射プリズムと出射プリズムと少なくとも一方のプリズムは、中間プリズムに対して回転した位置に設けられていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、第一眼幅調整プリズムと第二眼幅調整プリズムとは相対的に回転可能に構成され、第一眼幅調整プリズムと第二眼幅調整プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムを回転させることで、輻輳角を所望の値に調整できることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、第一眼幅調整プリズムと第二眼幅調整プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムの回転動作に応じて生ずる像の回転を補正するように、入射プリズムと出射プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムを回転動作に応じて連動して回転させる回転機構を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒は、単純な構造で、輻輳角を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒103を備えるガリレオ型の実体顕微鏡100の全体構成を示している。図2は、実体顕微鏡100の側面図である。
【0019】
物体OBJからの光は、一つの対物レンズ101を透過して、一対の結像光学系102a、102bに入射する。結像光学系102a、102bは、それぞれズーム光学系としての変倍機能を有している。また、結像光学系102a、102bは、例えば、それぞれ複数のレンズ素子L1a、L2a、L3a、L1b、L2b、L3bで構成されている。そして、結像光学系102a、102bは、対物レンズ101からの観察光を映像面に結像させる。
【0020】
結像光学系102a、102bからの光は、それぞれ一対のポロプリズム部104a、104bと、一対の眼幅調整プリズム部105a、105bとに入射する。一対のポロプリズム部104a、104bと、一対の眼幅調整プリズム部105a、105bとは、双眼鏡筒103の筐体内に収納されている。
【0021】
図3は、実体顕微鏡用双眼鏡筒103の筐体内の一対のポロプリズム部104aと一対の眼幅調整プリズム部105aとの斜視構成を示している。一対のポロプリズム部は、正立像を得るため光学系である。一対の眼幅調整プリズム部は、眼幅を調整するための光学系である。
【0022】
なお、双眼で観察するための一対の光学系は、それぞれ同一の構成を有している。このため、以下、適宜、一対の光学系のうちの一方の光学系について説明し、他方の光学系について重複する説明は省略する。
【0023】
ポロプリズム部104aは、三角プリズムの入射面に垂直に光が入射される入射プリズム110aと、三角プリズムの出射面から垂直に光が出射される出射プリズム112aと、入射プリズム110aと出射プリズム112aとの間の光路中に配置されている中間プリズム111aとを有している。
【0024】
また、眼幅調整プリズム部105aは、出射プリズム112aの出射光の光軸AX3上に配置された第一眼幅調整プリズム120aと、第一眼幅調整プリズム120aの出射光の光軸AX4に対し入射面が垂直になるよう配置された第二眼幅調整プリズム121aとを有している。
【0025】
そして、ポロプリズム部104aと眼幅調整プリズム部105aとを構成する光学素子の反射面のうちのいずれか一つの反射面は、輻輳角θが0°とは異なる角度となるように形成されている。
【0026】
また、第一眼幅調整プリズム120aの出射光の光軸AX4を回転軸として、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとが相対的に所定角度だけ回転して配置されることにより、輻輳角が0°と異なるように構成されている。詳細な構成は後述する。なお、「光軸」とは、例えば、結像光学系102a、102bの光軸をいう。即ち、例えば、結像光学系102aの光軸上を進行した光線が、実体顕微鏡用双眼鏡筒103に入射して進行するときを考える。
【0027】
入射プリズム110aは、結像光学系102aからの光束が入射面から垂直に入射される。入射プリズム110aは、入射光を直角に折り曲げて、中間プリズム111aの方向へ射出する。また、出射プリズム112aは、中間プリズム111aからの光束を直角に折り曲げ、出射面から垂直に出射させる。
【0028】
そして、図4に示すように、入射プリズム110aは、その出射光軸を軸に所定角度αだけ回転させて配置されている。また、出射プリズム112aは、その入射光軸を軸に、入射プリズム110aの回転方向と逆向きに角度βだけ回転させて配置されている。そして、入射プリズム110aと出射プリズム112aとは、それぞれ中間プリズム111aに固定されている。
【0029】
第一眼幅調整プリズム120aは、ポロプリズム部104aの出射プリズム112aに対応させて配置されている。第一眼幅調整プリズム120aは、出射プリズム112aより出射される光束を直角に折り曲げる。第一眼幅調整プリズム120aは、折り曲げた光束を出射面から垂直に出射させて、第二眼幅調整プリズム121aへの入射面へと導いている。
【0030】
第二眼幅調整プリズム121aは、入射面を第一眼幅調整プリズム120aからの出射光束の光軸AX4に垂直に、また、出射光束の光軸AX5aが光軸AX3に対して光軸AX4を軸に角度θ傾いて出射されるよう配置されている。
【0031】
また、出射プリズム112aからの出射光軸AX3を中心とし、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aを一体に回転させる。これにより、接眼レンズ106a(図2)の間隔lを可変にしている。
【0032】
接眼レンズ106a(図2)は、第二眼幅調整プリズム121aの出射光軸AX5aと同軸上に配置されている。そして、観察者は、接眼レンズ106aを介して、肉眼Eaにより映像面に結像された像を観察する。
【0033】
本実施例の実体顕微鏡用双眼鏡筒103では、対物レンズ101からの観察光が結像光学系102aに入射される。結像光学系102aからの出射光が、入射プリズム110a、中間プリズム111a、出射プリズム112aから構成されるポロプリズム部104aに入射される。
【0034】
ポロプリズム部104a内を光束が通過することにより、観察像の上下左右が反転され正立像に補正される。同時に、ポロプリズム部104aからの出射光は、入射プリズム110aと出射プリズム112aのそれぞれの回転角αと回転角βに応じて、所定角度の傾きをもって出射される。
【0035】
また、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aを回転して、接眼レンズ106a(図2)の間隔lを可変することで観察者の眼幅に合わせた実体顕微鏡用双眼鏡筒が得られる。
【0036】
このように、入射プリズム110aと、中間プリズム111aと、出射プリズム112aとからなるポロプリズム部104aにおいて、入射プリズム110aは、その出射光軸を軸に所定角度αだけ回転されている。
【0037】
また、出射プリズム112aについても、その入射光軸を軸に入射プリズム110aの回転方向と逆向きに同角度βだけ回転されている。そして、両プリズム110a、112aは、それぞれ中間プリズム111aに接着固定されている。
【0038】
この時、入射プリズム110aと出射プリズム112aのそれぞれの回転角αと回転角βを、それぞれα=γ+Aおよびβ=γ−Bとする。さらに、第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aにおいて、第一眼幅調整プリズム120aの出射光軸AX4を軸に第二眼幅調整プリズム121aをθだけ回転させて固定する。これにより、第二眼幅調整プリズム121aの出射光軸AX5aが角度θだけ傾き出射される。ここで、角度γは、鏡筒傾斜角度に対応する。また、角度θ=A+Bとなるよう構成する。
【0039】
換言すると、所定の鏡筒傾斜角度γを得られるように、入射プリズム110aは、入射プリズム110aの出射光の光軸AX1を軸にして鏡筒傾斜角度γに応じて回転させて配置され、さらに、出射プリズム112aは、出射プリズム112aへの入射光の光軸AX2を軸にして入射プリズム110aの回転方向とは反対の方向に回転させて配置されている。
【0040】
さらに、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとの相対的な回転に応じて生ずる像の回転を補正するように、入射プリズム110aと出射プリズム112aと少なくとも一方のプリズムは、中間プリズム111aに対して回転した位置に設けられている。
【0041】
本実施例によれば、単純、簡単な構造で出射光軸に輻輳角をつけることができる。また、輻輳角をつけたことによる光軸に垂直な面内での像の回転を補正することができる。
【0042】
さらに、構成部品として用いられる入射プリズム110a、出射プリズム112a、第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aは、特殊な形状のものではない。このため、一般的な三角プリズムを用いることができるので、安価に製造できる。また、図示はしないが、これらのプリズムの反射面をミラーに置き換えることも可能である。
【0043】
また、入射プリズム110a、出射プリズム112a、第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aでの反射角を、例えばすべて45°に設定できる。このため、面精度による像の劣化も少なく良好な観察像を得られる。
【0044】
(変形例)
次に、本実施例の変形例について説明する。なお、変形例において、本実施例と重複する部分の説明は、省略する。例えば、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aの固定方法について、光軸に対して角度θだけ回転させて接合することができる。
【0045】
また、他の変形例として、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aを一体のプリズムとして構成することもできる。いずれの変形例においても、本実施例と同様の作用、効果を奏する。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明の実施例2に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の構成の一部を示している。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施例は、観察者が輻輳角θを任意に変更できるように構成されている。
【0047】
第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとは相対的に回転可能に構成され、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとの少なくともいずれか一方のプリズムを回転させることで、輻輳角θを所望の値に調整できる。
【0048】
第一眼幅調整プリズム120aは、出射プリズム112aより出射される光束を直角に折り曲げる。第一眼幅調整プリズム120aは、折り曲げた光束を出射面から垂直に出射させることにより、第二眼幅調整プリズム121aへの入射面へと導いている。第二眼幅調整プリズム121aは、入射面を第一眼幅調整プリズム120aからの出射光束の光軸AX4に垂直に、また、出射光束の光軸AX5aが光軸AX3に対して光軸AX4を軸に回転可能となるように配置されている。
【0049】
第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aにおいて、第一眼幅調整プリズム120aの出射光軸AX4を軸に第二眼幅調整プリズム121aを回転する。この回転は、回転機構部201により行われる。これにより、第二眼幅調整プリズム121aの出射光軸AX5aが任意の角度だけ傾いて出射される。
【0050】
本実施例によれば、単純、簡単な構造で出射光軸に任意の輻輳角つけることができる。また、輻輳角をつけたことによる光軸に垂直な面内での像の回転を補正することができる。
【実施例3】
【0051】
図6は、本発明の実施例3に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の構成の一部を示している。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施例では、輻輳角θを変化させたときの像の光軸を軸とした回転を補正するよう構成されている。
【0052】
本実施例は、第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとの少なくともいずれか一方のプリズムの回転動作に応じて生ずる像の回転を補正するように、入射プリズム110aと出射プリズム112aとの少なくともいずれか一方のプリズムを回転動作に応じて連動して回転させる連動機構部301(回転機構)を有している。
【0053】
具体的には、図6に示すように、中間プリズム111aについては、その入射光軸を軸に回転可能に配置されている。出射プリズム112aは、中間プリズム111aの出射光軸上に出射プリズム112aの入射光軸が一致し、かつその入射光軸を軸に回転可能に構成されている。
【0054】
また、第二眼幅調整プリズム121aと中間プリズム111a、出射プリズム112aは互いに連動機構部301により連動するように配置されている。
【0055】
本実施例では、第二眼幅調整プリズム121aの出射光軸AX5aが任意の角度θだけ回転したとき、中間プリズム111aおよび出射プリズム112aがθ=A+Bの関係となるように、連動機構部301により連動する。連動機構部301は、例えば、歯車により第二眼幅調整プリズム121aの動き(回転角度)応じた動きを中間プリズム111aへ伝達するように構成されている。
【0056】
入射プリズム110aは、その出射光軸を軸に所定角度α=γ+Aだけ回転する。出射プリズム112aは、その入射光軸を軸に入射プリズム110aの回転方向と逆向きに角度β=γ−Bだけ回転する。ここで、角度γは、鏡筒傾斜角度に対応する。
【0057】
これにより、入射プリズム110aと中間プリズム111aと出射プリズム112aとを通過する光束の像が、角度θだけ回転して出射され、第一眼幅調整プリズム120aに入射する。第一眼幅調整プリズム120aと第二眼幅調整プリズム121aとが光軸AX4を軸に角度θだけ回転して相対している。このため、観察される像は、回転角度θと逆に角度θだけ回転する。
【0058】
本実施例では、単純、簡単な構造で出射光軸に任意の輻輳角つけることができる。また、輻輳角をつけたことによる光軸に垂直な面内での像の回転を補正することができる。
【0059】
さらに、構成部品として用いられる入射プリズム110a、出射プリズム112a、第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aは、特殊な形状のものでなく、一般的な三角プリズムを用いることができる。このため、実体顕微鏡用双眼鏡筒を安価に製造できる。
【0060】
さらに、入射プリズム110a、出射プリズム112a、第一眼幅調整プリズム120aおよび第二眼幅調整プリズム121aでの反射角を、例えばすべて45°にできる。このため、面精度による像の劣化も少なく良好な観察像を得られる。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、簡単名構成で、ガリレオ型の実体顕微鏡の長所を維持したまま、顕微鏡観察時に視差に応じた輻輳角をつけることができる。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形例をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に実体顕微鏡用双眼鏡筒は、ガリレオ型の実体顕微鏡に有用であり、特に、輻輳角を有する実体顕微鏡に適している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒を備える実体顕微鏡の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒を備える実体顕微鏡の概略構成を示す他の図である。
【図3】実施例1に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の斜視構成を示す図である。
【図4】実施例1に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の斜視構成を示す他の図である。
【図5】実施例2に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の斜視構成を示す図である。
【図6】実施例3に係る実体顕微鏡用双眼鏡筒の斜視構成を示す図である。
【図7】従来技術の実体顕微鏡用双眼鏡筒の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
100 実体顕微鏡
101 対物レンズ
102a、102b 結像光学系
103 実体顕微鏡用双眼鏡筒
104a、104b ポロプリズム部
105a、105b 輻輳調整プリズム部
106a 接眼レンズ
110a、110b 入射プリズム
111a、111b 中間プリズム
112a、112b 射出プリズム
120a、120b 第一眼幅調整プリズム
121a、121b 第二眼幅調整プリズム
201 回転機構部
301 連動機構部
22 対物レンズ
23、23’ 結像レンズ
24、24’ 正立プリズム
l 眼幅
θ 輻輳角
AX0、AX1、AX2、AX3、AX4、AX5a、AX5b 光軸
Ea、E、E’ 観察者の肉眼
L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b レンズ素子
OBJ 物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正立像を得るための一対のポロプリズム部と、眼幅を調整するための一対の眼幅調整プリズム部とを少なくとも備えるガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒であって、
前記ポロプリズム部は、
入射面に垂直に光が入射される入射プリズムと、
出射面から垂直に光が出射される出射プリズムと、
前記入射プリズムと前記出射プリズムとの間の光路中に配置されている中間プリズムとを有し、
前記眼幅調整プリズム部は、
前記出射プリズムの出射光の光軸上に配置された第一眼幅調整プリズムと、
前記第一眼幅調整プリズムの出射光の光軸に対し入射面が垂直になるよう配置された第二眼幅調整プリズムと、を有し、
前記ポロプリズム部と前記眼幅調整プリズム部とを構成する光学素子の反射面のうちのいずれか一つの反射面は、輻輳角が0°とは異なる角度となるように形成されていることを特徴とするガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。
【請求項2】
前記第一眼幅調整プリズムの出射光の光軸を回転軸として、前記第一眼幅調整プリズムと前記第二眼幅調整プリズムとが相対的に所定角度だけ回転して配置されることにより、輻輳角が0°と異なることを特徴とする請求項1に記載のガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。
【請求項3】
所定の鏡筒傾斜角度を得られるように、前記入射プリズムは、前記入射プリズムの出射光の光軸を軸にして前記鏡筒傾斜角度に応じて回転させて配置され、さらに、前記出射プリズムは、前記出射プリズムへの入射光の光軸を軸にして前記入射プリズムの回転方向とは反対の方向に回転させて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。
【請求項4】
前記第一眼幅調整プリズムと前記第二眼幅調整プリズムとの相対的な回転に応じて生ずる像の回転を補正するように、前記入射プリズムと前記出射プリズムと少なくとも一方のプリズムは、前記中間プリズムに対して回転した位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。
【請求項5】
前記第一眼幅調整プリズムと前記第二眼幅調整プリズムとは相対的に回転可能に構成され、
前記第一眼幅調整プリズムと前記第二眼幅調整プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムを回転させることで、前記輻輳角を所望の値に調整できることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。
【請求項6】
前記第一眼幅調整プリズムと前記第二眼幅調整プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムの回転動作に応じて生ずる像の回転を補正するように、前記入射プリズムと前記出射プリズムとの少なくともいずれか一方のプリズムを前記回転動作に応じて連動して回転させる回転機構を有することを特徴とする請求項5に記載のガリレオ型の実体顕微鏡用双眼鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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