説明

実時間IR分光法の装置および方法

【課題】動作中に移動部品またはフーリエ変換を必要としないIRスペクトル装置および方法。
【解決手段】サンプルのIRスペクトル情報および化学分析は、IR源(310)と、サンプル・ボリュームを配置するサンプリング・アクセサリ(330)と、光分散要素(350)と、分散光ビームを検出するように構成された焦平面アレイ(FPA)と、FPAを制御し、IRスペクトログラフを表示するためのプロセッサ(380)およびディスプレイ(390)とを使用して決定される。光ファイバ結合により、遠隔感知が可能になり、移動部品が構築されないので、可搬性、高信頼性、および堅牢性が向上する。この装置および方法の使用は、様々な膜、被覆剤、および液体の厚さおよび化学組成の測定を含めて、産業および環境に広く応用され、また、化学および生物戦争薬剤を含めて、有害物質の実時間感知に使用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、サンプル材料のIRスペクトルを決定する装置および方法に関する。より具体的には、開示する発明は、実時間で動作し、移動部品の使用を全く必要としない装置および方法を使用して、サンプルのIRスペクトルを分光学的に決定することに関する。さらに、開示する発明の装置および方法は、サンプル材料の組成を分析するために、検出スペクトル情報の膨大な数学的変換を必要としない。
【0002】
開示する発明は、産業用に、たとえば製造プロセスを監視する実時間法に応用される。そのようなプロセスは、(固体、液体、化学的に結合された、物理的に吸着された)表面上の被覆剤の厚さ、化学的構造、および配向の測定を含むが、これに限定されるものではない。これらの測定は、生物学的材料、ポリマー、超伝導体、半導体、金属、誘電体、および鉱物に対して行われる測定を含むが、これに限定されるものではない。さらに、気体、液体、または固体状態のいずれかの材料の様々な処理を含む化学反応に存在する化学種を測定および検出する実時間装置および方法に適用される。
【背景技術】
【0003】
産業が中核技術のコスト削減を追求し続けているので、プロセスおよび性能の最適化がより強調されることになる。この経費節減により、可搬式で堅牢であり、信頼性が高く、苛酷な産業環境または実験室外環境において長時間にわたって動作することができる全く新しいクラスの高度な機器の開発および導入が必要となる。
【0004】
分光技術は、しばしば、材料の分析に使用される。従来、分光学は、物質による特定の色の光(エネルギー)の選択的な吸収、放出、または散乱を測定する。たとえば、可視白色光は、プリズムによって、成分の色またはスペクトルに分離することができる。分光測定の基本的な目的は、一般に、未知の材料の化学組成を特定すること、あるいは、「既知」の材料または物体の構造、運動、または環境特性(内部温度、圧力、磁場の強度など)の詳細を解明することである。科学および産業の多くの分野に対する分光学の普及した技術的重要性は、天然染料および合成染料の特徴付け、および星の基本的組成の決定など、19世紀の成功にさかのぼることができる。
【0005】
現代の分光学の応用により、「光」の意味は、ガンマ線ならびにx線から紫外線、可視光線、および赤外線を経てマイクロ波ならびに電波にまで至る電磁放射の全領域または全スペクトルを含むように一般化された。電磁放射のこれらの様々な形態(または波長領域)はすべて、それ自体の特徴的な測定方法を有する。これらの異なる方法により、様々なタイプの分光装置および技術が生じ、これらは、互いに外見的に非常に異なり、しばしば、材料の特性を測定するために異なる物理現象に依拠する。さらに、これらの多様な分野における様々な専門家および他の研究者は、多様である程度細分化された知識基盤と「経験則」とを使用するので、通例、これらの専門分野の技術的境界を越えることがない。
【0006】
赤外線(IR)の使用は、材料の化学的性質を分析する多くの分光技術の1つである。あらゆる場合において、分光分析は、対象とするサンプルによって吸収もしくは反射された量、または適切にエネルギーを加えられたときにサンプルから放出される量で表して、光エネルギーの非常に特定の波長を測定することを意味する。
【0007】
IRの場合では、分光分析の吸収形態に依拠する。IR放射は、たとえば紫外線(UV)で見られるような異なる電子状態間すなわち分子軌道間の遷移を誘起するにはエネルギーが十分ではない。原子吸収とは異なり、IR分光法は、分子の単一電子状態内における振動遷移を調査するものであり、Pb、Cuなど、特定の要素に関するものではない。そのような振動は、3つの主要なカテゴリ、すなわち、結合軸に沿った原子間距離の変化に由来する伸張、2つの結合の角度変化に由来する湾曲、および原子の2つの基の角度ならびに分離距離の変化に関するねじれ結合の1つに相当する。O、H、N、Cl、Fなどの等核2原子分子、または不活性ガスなどを除いて、ほとんどすべての材料は、IR放射を吸収する。
【0008】
IRは、通常、0.78μmと1000μmの間の電磁スペクトルの領域を網羅する。IR分光法の文脈では、瞬間的な周波数は、「波数」(cm−1の単位)で測定され、これは、放射の波長(センチメートルの単位)の逆数を取ることによって計算される。正確には定義されないが、IRの領域は、以下に示す波長および対応する波数の範囲を有する3つの領域によってさらに示されることがある。
「近IR」:0.78〜2.5μm 12800〜4000cm−1
「中間IR」:2.5〜50μm 4000〜200cm−1
「遠IR」:50〜1000μm 200〜10cm−1
【0009】
IRを吸収する分子では、分子内の振動または回転により、分子の双極子モーメントの正味の変化が生じなければならない。入射IR放射の交番電界は、分子の双極子モーメントの変動と相互作用し、放射の周波数が、分子の振動周波数と整合する場合、放射は吸収され、分子振動のためにIR帯域の強度は減少する。
【0010】
分子官能基の電子状態は、それぞれが異なるエネルギー・レベルにある多くの関連する振動状態を有する可能性がある。したがって、IR分光法は、「官能基」または分子種として知られているものを形成するために、原子を特定の化学的な組合わせでグループ化することに関する。これらの様々な官能基は、関連するタイプの化学結合の吸収特性によって、材料の特性または予期される行動を決定するのに役立つ。これらの化学結合は、振動中に双極子モーメントが変化する。そのような官能基およびそれぞれのエネルギー帯の例には、水酸基(O−H)(3610〜3640cm−1)、アミン(N−H)(3300〜3500cm−1)、芳香環(C−H)(3000〜3100cm−1)、アルケン(C−H)(3020〜3080cm−1)、アルカン(C−H)(2850〜2960cm−1)、ニトリル(C=−N)(2210〜2260cm−1)、カルボニル(C=O)(1650〜1750cm−1)、またはアミン(C−N)(1180〜1360cm−1)などがある。これらの官能基のそれぞれに関連するIR吸収帯は、あるタイプの「指紋」として作用し、組成分析において非常に有用であり、有機分子および有機金属分子の識別に特に有用である。
【0011】
どの波長が対象とする各官能基によって吸収されるかを知ることによって、分析されているサンプルに適切な波長を向けることができ、次いで、サンプルによって吸収されるエネルギーの量を測定することができる。吸収の強度は、成分の濃度に関係する。より多くのエネルギーが吸収されると、より多くの特定の官能基がサンプルに存在する。したがって、結果は数値的に定量化することができる。さらに、サンプルに吸収帯が欠如していることにより、しばしば同様に有用な情報を提供することができる。
【0012】
サンプル吸収の強度および周波数は、スペクトルと呼ばれる2次元プロットで示される。強度は、一般に、サンプルによって吸収された光の量である吸光度、またはサンプルを通過する光の量である透過パーセントについて報告される。IR分光法では、上記で定義されたように、通常、周波数が、波数の観点で報告される。
【0013】
赤外線分光計は、光源(太陽など)と、プリズムなどの波長識別ユニットまたは光分散要素と、IRに感度のある検出器とを使用して構築することができる。光分散要素を走査することによって、様々な波長においてスペクトル情報を獲得することが可能である。しかし、この手法の1つの欠点は、必要な走査動作に関連する移動部品である。そのような移動部品は、たとえば、そのような装置の堅牢性および可搬性を本質的に制限する。
【0014】
より最近では、マイケルソン干渉計を使用して、IRスペクトルのいわゆるインターフェログラムを生成していた。インターフェログラムは、後で高速フーリエ変換(FFT)などのフーリエ変換処理を受けて、最終スペクトルをもたらす。IR領域では、そのような分光計は、FTIR干渉計と呼ばれ、1960年代の中頃に初めて市販された。FTIR干渉計の例を図1に示す。
【0015】
FTIR干渉計100の重要な構成要素は、IR源110、干渉計(130、140、150)、およびIR検出器160である。FTIR干渉計100は、サンプル120を同時に透過したすべての光周波数を測定して、検出器160が信号を拾う前に放射の個々の周波数の強度を変調する手段を分光計に提供する。通常、移動ミラー構成150を使用して、2つの(最初の)同一光ビーム間の経路長差を獲得する。基準ビームとは異なる距離を進行した後、第2ビームおよび基準ビームは、再び組み合わされて、干渉パターンとなる。IR検出器160を使用して、この干渉パターンを検出する。
【0016】
検出された干渉パターンまたはインターフェログラムは、ミラー位置に対する強度のプロットである。インターフェログラムは、サンプルによって放出されたすべての波長の和であり、すべての実用的な目的について、当初の形態ではインターフェログラムを解釈することはできない。フーリエ変換(FT)の数学的プロセスを使用して、コンピュータまたは専用プロセッサが、インターフェログラムを、サンプル120によって吸収されたまたはサンプル120を透過した光の特性であるスペクトルに変換する。
【0017】
FT分光法の発明は、20世紀における近代的な機器の開発における最も重要な前進の1つであることが実証されている。光の干渉を使用する光学分光法により、FT機器によって提供される大量のスループットおよび多重化の利点のために、分子の振動/回転の迅速で敏感な検出が可能になった。高分解能スペクトルが必要とされる核磁気共鳴(NMR)および質量分光法においても、FT機器は、最新技術として普及した。
【0018】
しかし、ある世代の分光技師にFT機器を選ばせた同じ技術革新は、FT機器を動作環境に対して極度に敏感にもした。これらの理由により、FT干渉計は、振動を防止するために光学ベンチの使用を必要とし、また経路長差を熱で誘発することによってインターフェログラムに悪影響を与える温度変化を制御するために厳格な環境制御をも必要とする実験室条件にほとんど限定される。このタイプの走査手法は、機能可能であるが、獲得可能な信号対雑音比(SNR)は、複数のインターフェログラムの膨大な信号平均化をしばしば必要とし、したがって、FTIRシステムを本質的に低速にし、これらのシステムの多くの移動部品により、速度は遅く、信頼性も低い。
【0019】
分光法では、分解能が、スペクトルの2つのピークを分解または区別する能力の尺度であり、高分解能は、ピーク位置間の小さい波数差に対応し、低分解能は、ピーク位置間のより大きな波数差に関連する。フーリエ変換干渉計は、ミラーの可能な運動量、または特定の装置によって生成することができる経路長差に応じて、1/1000thcm−1程度の極度に高い分解能とすることができる。「低」分解能は、一般に、16〜32cm−1の領域と見なされるが、分解能は、必要な測定および特定の応用分野に基づいて選択されるので、「低」分解能と「高」分解能との間には明確な境界は存在しない。FTIRに関連する通常の化学分析および識別では、8cm−1またはそれより良好の「高」分解能が一般的である。そうでないと、分解能が低過ぎる場合に、化学的な情報が失われることがある。たとえば、より低い分解能が使用された場合、特定の化学結合または振動状態で識別された隣接するピークが、1つになって「不明瞭」になり、識別不能になる可能性がある。
【0020】
熱安定性と、機械的振動隔離と、厳密な光学位置合わせとの必要性は、FT機器を使用することができる場所と方法とについて厳格な制約を課し、具体的には、そのような機器の可搬性を制限してきた。議論をFTIR干渉計に限定した場合には、現在利用可能な機器に使用される特定の技術を調査することにより、欠点のいくつかを見つけることができるところが明らかになる。表1は、光学干渉計の動作に最も一般的に使用される4つの技術と、その制限との比較である。
【表1】

【0021】
FTIRは、産業界、政府、および学術的実験室における様々な研究に適用され、様々なサンプルの分析を実施する従来の方法に対し、主要な改良をもたらした。しかし、従来の干渉計の移動ミラー機構は、よりコンパクトで可搬式のFTIRの設計および構築を制限することが明らかになった。Stelzle、Tuchtenhagen、およびRaboltによって試行された1つの潜在的な解決法(「熱走査干渉計を有する新規な全光ファイバ・フーリエ変換分光計」)は、全光ファイバFT分光計を構築するものであり、これは、移動部品を有さず、赤外線分光法を実施するために使用された。
【0022】
この実行可能性調査では、光ファイバを使用して近IR(10000〜5000cm−1)の領域の干渉計を構築することが試行された。2つの慎重に測定され劈開された光ファイバが、2つの光チャネルまたは光路として使用され、一方のファイバは、周囲温度に維持され、他方のファイバは、反復して加熱/冷却された。加熱/冷却ファイバの長さおよび屈折率の両方の変化による2つのファイバ・チャネルの結果的な光路差(OPD)により、組合わせチャネルにおいて干渉が生じる。加熱/冷却周期を使用して、3cmのOPDを生成し、それに応じて計算されたパワー・スペクトルを有するインターフェログラムを作成した。
【0023】
しかし、様々な熱および機械的条件下にある光ファイバにおける2つの光ビームの干渉は、非常に複雑であることが判明した。光路長差の原因が移動ミラーに由来する幾何学的経路長のみである従来のマイケルソン干渉計とは対照的に、光ファイバ干渉計は、動作環境のあらゆる機械的変化または温度変化に反応し、これにより、干渉が起きるのに必要な位相情報の交錯または損失が生じる。光ファイバの概念は良いものであるが、移動部品のないIR機器のより賢明な計画を開発しなければならないことが結論付けられた。
【0024】
文献を概観すると、図2に示すように、可視光線、近IR、またはIRなど問題の帯域に関係なく、移動部品のないFT干渉計を構築する他の手法も試行されたことが明らかになった。そのような手法は、インターフェログラムを収集するために、線形アレイ検出器または焦平面アレイ(FPA)を使用した。これらの設計には、検出器の上にインターフェログラムの中心部分を投影し、次いで、「撮像」インターフェログラムを使用して、フーリエ変換処理の後パワー・スペクトルを計算することが含まれていた。これらの従来の技術の1つの難点は、アレイ検出器のサイズと、その動的範囲と、利用可能なスペクトル応答の制限領域とが、アレイ検出器によって獲得することができるインターフェログラムの範囲を制限することである。
【0025】
さらに、移動部品がない場合でも、これらの手法は、パワー・スペクトルを導出するために、計算が膨大なフーリエ変換処理に依然として依拠する。したがって、依然として、中間IR領域において、堅牢で非干渉性の移動部品のない分光計が必要である。
【0026】
フーリエ変換分光法とは別に、分散に基づく分光法は、可能な実施態様をも提供する。この手法では、プリズムまたは回折格子などの光分散要素を使用して、入射光放射に存在するスペクトル周波数を分離する。次いで、入射光に存在する様々な波長を検出することを可能にするために、分散要素を回転させた。
【0027】
分散に基づくIR分光法は、走査速度が遅く、感度がより低いために、1970年代後半にはほとんどの分析応用分野で使用されなくなった。移動プリズムなどの分散分光計の走査機構は、堅牢性および光学スループットの両方を本質的に制限することが周知である。走査の必要性は、光子の点検出が当時の唯一の利用可能な方法であったということに由来し、これは、IR領域のスペクトルには特に当てはまった。しかし、現在では、可視領域および近IR領域のアレイ検出器は、光子の領域検出に広く利用可能である。ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている可視光/近IRカメラなど、可視光領域において80%を超える量子効率(QE)が可能である電荷結合素子(CCD)が作成され、多くの応用分野において使用されている。この前進の結果として、現在では、可視領域および近赤外領域のCCDベースの高性能スペクトログラフ・システムを市販業者から購入することができる。これらのシステムは、従来のFT干渉計の代替物を提供する。
【0028】
しかし、IR調査から現在利益を得ることができる科学的な問題の範囲は、著しく拡大されており、スペクトルが記録されている間にビームの位置を変化させることがある(振動または発振など)サンプルを含んでいる応用分野は、従来のFTIR機器を使用して型通りに対処することができない。FTIR機器の走査アーキテクチャおよび様々な光周波数成分の結果的な変調は、位置が揺らぐサンプルによってさらに変調されることがあり、これにより、スペクトル情報は無用になることがある。
【0029】
したがって、IR放射を送達および検出するので好都合な非走査機器が、絶対に必要である。たとえば、処理中のポリマー薄膜における微細機械変形のオンライン研究、発光ダイオード(LED)の老朽化のin−situ構造研究、および柔軟ポリマー基板上における無機(シリコン、SiNなど)薄膜成長の監視を必要とする応用分野は、すべて、移動部品がなく、その結果として堅牢で可搬式となるIR機器から利益を得ることになる。そのような可搬式の機器は、特にサンプリング幾何形状が変動する、または遠隔サンプル位置で、薄膜研究に強力な新しい道具を提供することによって、材料の研究を容易にする。
【0030】
IR領域におけるそのような非走査実時間機器のさらなる利点を、潜在的な化学戦争または生物戦争の攻撃中に軍人または民間人付近を監視することを含めて、環境監視において見ることができる。そのような薬剤の複雑な化学組成は、強いIR吸収を示し、したがって、容易に識別することができる。
【0031】
上述のCCD検出器の進歩により可視光線および近赤外線領域のスペクトログラフが分光法に浸透したとは言え、FT機器は、中間赤外線から遠赤外線領域では依然として分光法の主流であり、したがって、この領域の機器は、やはり干渉計の動作環境によって極端に制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、サンプルの変動により、従来のFTIRスペクトルにおいてS/Nが著しく低下する特定の応用例に対処するために、IR領域において堅牢でコンパクトな可搬機器が必要である。
【0033】
さらに、移動部品がなく、かつIR焦平面アレイ(FPA)技術に基づく可搬式で信頼性の高いIR分光器が必要である。
【0034】
さらに、干渉計または計算が膨大なフーリエ変換手法に依拠せず、高い振動および広い温度変化を含めて苛酷な環境に比較的敏感でない、IR分光材料分析の実時間で敏感な比較的高分解能の装置および方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、移動部品または計算が膨大なフーリエ変換干渉技術を使用せずに、サンプル材料のIRスペクトルを決定する堅牢で高分解能、高感度な装置および方法を提供するという上述した問題の多くを克服する。
【0036】
本発明の第1実施形態は、走査機構または移動部品を使用せず、かつフーリエ変換信号処理を使用せずに、IRスペクトル情報を獲得するために、IR FPA技術に基づいてサンプル材料のIRスペクトルを決定する装置を含む。
【0037】
IR源は、サンプル・ボリュームを通過し、この場合、IRエネルギーの少なくともいくらかは、サンプル・ボリュームにおいて吸収される。結果的なIR信号は、光分散されて、IR光をそれぞれの波長成分に分散させ、複数の検出要素を有するIR検出上に投影される。検出器の出力は、干渉技術を使用せずに、表示および分析のためにさらに処理される。
【0038】
第2実施形態では、1つまたは複数の光ファイバを使用して、IR源をサンプル・ボリュームを経て光分散要素の中に結合し、またIR検出器の中にも結合する。そのような実施形態は、たとえば、評価されている現象が、具体的にはIR検出器である装置から遠隔式に特定される、遠隔感知の応用分野において使用することが可能である。煙突放出などを監視する環境応用分野では、分析するサンプル・ボリュームは、地上から数百メートルにあることが可能である。実験をセンサにもたらすために望遠光学機器を使用することがあるように、光ファイバ・ケーブルを使用することが可能である。
【0039】
第1実施形態の第1態様では、InSb焦平面アレイ(FPA)を使用して、3〜5μmの領域において吸収を検出し、第1実施形態の第2態様では、マイクロボロメータ・ベースのFPAを7〜13μmの領域に使用する。第1実施形態の他の態様では、HgCdTd(MCT)アレイ、またはより広いもしくは異なるスペクトル応答を有する他のInSbアレイを使用することが可能である。
【0040】
サンプルからの信号は、2つの方法のどちらかによって収集することができる。直接レンズによる信号収集は、アパーチャを経て信号を分光計に結合することによって使用することが可能である。別法として、結合は、中間IR光ファイバを使用することにより達成される。
【0041】
光ファイバを使用することにより、装置の配置について柔軟性が提供され、煙突などの遠隔感知が可能になり、また複数チャネル検出および化学分析のより容易な実施が可能になる。
【0042】
本発明の装置および方法は、スペクトル情報を決定するために移動部品を必要としない。したがって、この方法および装置は、製造プラントの高振動環境など、比較的苛酷な環境にうまく適応する。
【0043】
この方法を様々な産業応用分野において使用して、透過モードまたは反射モードにおいて、水、油、および他の溶媒などを含むがこれに限定されない液体表面上の皮膜剤/膜(固体、液体、化学的に結合された、物理的に吸着された)の厚さ、化学的構造、および配向を測定および検出し、また、金属および半導体を含むがこれに限定されない固体基板上に電気化学的に付着された膜の厚さ、配向、および化学的構造を測定することも可能である。
【0044】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と関連して取り入れた本発明の以下の詳細な記述を考慮する際に、より容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
第1実施形態について、図3を参照して説明する。装置300は、IR光源310を含む。IR光源310は、タングステン・ランプ、ネルンスト灯、もしくはグローバーなどを含めて、任意の一般的なIR光源とすることができ、またはいくつかの応用例では、太陽のIR放射を使用することが可能である。好ましい実施形態では、IR源は、たとえば、Cal−Sensorsによって製造されたZnSeウィンドウを有するIRエミッタとすることが可能である。理想的には、IR源310は、IRスペクトルまたはIRスペクトルの少なくとも一部にわたって「平坦」または一様な強度を有する。しかし、IR源310が一様ではない場合、そのような非一様性を分析プロセス中に相殺することが可能である。
【0046】
装置の分解能を少なくとも部分的に確立するために、調節可能なアパーチャ320を使用する。すなわち、より小さいサイズの開口は、より高い分解能を提供する。調節可能なアパーチャ320は、円形アイリスとすることが可能であり、または好ましい実施形態では、たとえば約1cmの長さの寸法と0〜2mmの調節可能な幅とを有する調節可能矩形スリットとすることが可能である。そのようなスリットは、モデルWH−01としてRIICによって製造されている。
【0047】
サンプリング・アクセサリ330は、分析されるサンプルを含んでいるサンプル・ボリュームを光路に配置する。サンプリング・アクセサリ320は、好ましい実施形態では、ポリマー膜、近IR源310など、サンプリングされる材料の小さなサンプル・ボリュームを単に配置する簡単なサンプル・ホルダとすることが可能であり、または、気体をサンプリングするために使用される既知のより精巧なサンプリング・ボリューム構成を備えることが可能である。
【0048】
固体または液体より小さい密度を有する気体は、サンプル・ボリュームを通るIR源の複数通路に備えるために、1組のミラーまたは他の適切な構成(図示せず)を有するより精巧なサンプリング・アクセサリを必要とする可能性がある。そのような複数通路は、IR吸収現象を適格に測定するために十分な光密度が達成されることを保証する際に有用である。複数通路構成は、他の実施形態では、煙突放出を監視するために、あるいは実験室、軍事、もしくは産業の環境において有害な化学煙霧または蒸気を監視するために使用することも可能である。
【0049】
サンプリング・アクセサリ330は、望遠鏡または顕微鏡の構成を含む光学機器を備えることもでき、あるいは、単一光ファイバまたは光ファイバの束に結合することもできる。
【0050】
さらに、装置300は、複数のサンプリング・アクセサリ(図示せず)を含むことが可能である。このサンプリング・アクセサリを適切なビーム分割光学機器と共に使用して、IR源310からの発光の一部に複数のサンプリング・アクセサリのそれぞれを通過させることが可能である。
【0051】
光分散要素350は、サンプル・ボリュームを通過したIR光源310からの発光の一部を受光する。サンプリング・アクセサリ330内のサンプル・ボリュームにおいて、1つまたは複数のIR波長が吸収されるので、IR源310を表すIRスペクトル全体は、サンプル・ボリュームを通過しない可能性がある。次いで、吸収されなかったIR波長は、光分散要素350と相互作用して、分散光ビームを形成する。光分散要素350は、サンプリング・アクセサリ330を出るIR光に存在する波長を一方向において分離または分散させる。
【0052】
光分散要素350は、一実施形態では、たとえば、1mm当たり300個の線を有するルールド回折格子とすることが可能である。そのような格子は、たとえば、モデル300g/mmホログラフィック格子としてSPEXによって製造されている。
【0053】
他の実施形態では、光分散要素は、図4に示すように、プリズムとすることが可能である。他の好ましい実施形態では、ぺリン・ブロカ・プリズム450を使用することが可能である。IR波長では、ぺリン・ブロカ・プリズムは、これらのIRスペクトル領域における材料の吸収を最小限に抑えて、波長の関数として適切な光分散を保証するために、セレン化亜鉛(ZnSe)から機械加工することが可能である。図5は、ZnSeの屈折率の分布と図4のペリン・ブロカ・プリズムの例示的な実施形態の光学屈折率とのグラフを提供する。装置400は、図3に示した装置300と同様に動作するが、構成要素は選択的に変更されている。たとえば、光結合手段は、マルチファイバ束をも含むことが可能であるIRファイバ410と、軸外し放物面ミラー440と、凹型ミラー442と、凸型ミラー444とを含むことが可能である。IRファイバ410によって投影される光は、照明されているサンプル・ボリュームから来る光を含むことが可能であり、または、IRファイバを使用して、サンプル・ボリュームを照明することが可能である。集束光学機器370は、この実施形態では、プリズム450から放出される光をIR検出器370の上に適切に投影するために使用されるゲルマニウム(Ge)集光レンズとすることが可能である。放物面ミラーは、円錐状ファイバ出力光ビームを平行化させるためにIRファイバを使用するときに好ましい。ペリン・ブロカ・プリズムは、図3の光結合およびIR源310と共に、ならびに光ファイバの実施態様において使用することも可能である。逆に、ファイバから放出される円錐ビームを平行化して、光をシステムの中、および光分散要素350として使用する場合、回折格子の上に結合するために適切な対策を講ずることを想定すると、ルールド回折格子は、光ファイバと共に使用することが可能である。
【0054】
回折格子は、適切な分解能を多くの応用分野に提供することができるが、ペリン・ブロカの幾何形状は、3つの利益を提供することが可能である:(1)光分散は、様々な波長における屈折率のみの関数であり、したがって光学設計を簡単にする;(2)2イン1プリズム設計は、非常に高い角分散効率を有し、ほぼ90°のビーム折り畳みが利用可能であることにより、コンパクトなフットプリントの光学システムを達成することが可能になる;(3)周囲/ZnSe境界面における光の透過を最大にするために、ブルースター角入射構成を使用することが可能である。(3)は、ZnSeの屈折率が高いために(約2.4)反射損が主な懸念であるIR領域では、重要である。
【0055】
ペリン・ブロカ・プリズムの設計の他に、中間IR性能について最適化された特別の回折格子が、プリズム手法より良好ではないまでも、理論的には同様のスループットおよび分散を提供することができる。しかし、溝の数および格子サイズの両方に対する分解能の依存性は、格子を使用する光学設計に対しより多くの制限を課す可能性がある。したがって、少数の溝を有する低コストで既成の格子が特定の応用分野に十分である場合、およびプリズムで現在獲得することができるよりも高い分解能が必要とされる状況では、格子の使用を考慮することが可能である。
【0056】
プリズムまたは回折格子を使用するどちらの場合でも、光分散要素350は、表面と表面上に投影される入射光との間の入射角度に関して調節可能とすることができる。以下で議論するように、そのような角度調節を使用して、波長範囲、またはIR検出器370に呈示されるスペクトル帯域通過を制御することが可能である。
【0057】
集束光学機器360は、光分散要素350の光をIR検出器370に結合し、IR検出器370は、分散光ビームの方向に対応する分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を有する。通常、入射光は、画素の2つ以上の行の上に投影され、光分散要素から投影された光は、20画素を覆うことが可能である。IR検出器370は、光分散要素350の分散光ビームを検出して、出力を提供し、この出力は、その後、サンプリング・アクセサリ330に含まれているサンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定するために使用される。
【0058】
一実施形態では、IR検出器370は、たとえばIndigo Systemsによって製造されているMerlin Midモデルなど、3〜5μmの波長範囲に感度のあるInSbカメラとすることが可能である。そのような検出器には、30μs画素ピッチを有する320×256画素InSb検出器と、3.0〜5.0μs可変コールド・フィルタと、1秒当たり15、30、または60フレーム(fps)(最小限)のユーザ選択可能フレーム率と、4時間の最低保持時間を有する液体窒素冷却デュワーと、雑音等価温度差NEΔT<20mKと、10μsから16.6msのユーザ選択可能積分時間と、補正された非一様性<0.1%とが含まれる。この範囲のInSb検出器は、可搬性を向上させるために、熱電的に冷却することも可能である。
【0059】
この特定のInSbカメラは、オン・カメラ制御を介して、または販売者供給グラフィカル・ユーザ・インターフェースまたは標準的なWindows(登録商標)の端末通信プログラムを伴うRS−232インターフェース、あるいはユニバーサル・シリアル・バス(USB)またはIEEE1394標準インターフェースなどの市販されているインターフェースを介して制御することが可能である。さらに、このカメラは、自動利得制御(AGC)アルゴリズムと、高輝度および低輝度の両方のシーンを見ることを可能にする調節可能検出器利得およびバイアスと、NTSC、S−ビデオ、および12ビット補正デジタル・ビデオを含むことが可能であるデータ出力とを提供する。さらに、集束光学機器360をIR検出器370に沿って提供することが可能である。上述したInSb検出器は、25mm中間IRレンズと共に市販されている。
【0060】
他の実施形態では、IR検出器370は、モデルMerlin UncooledとしてやはりIndigo Systemsによって製造されているマイクロボロメータ・カメラとすることが可能である。この特定のカメラは、7.5〜13.5μsスペクトル領域において51ミクロン画素ピッチを有する320×240画素マイクロボロメータ検出器を含む。15、30、または60fps(最低)のユーザ選択可能フレーム率が利用可能である。この装置は、InSbカメラとは対照的に、313°Kにおいて熱電的に(TE)安定であり、雑音等価温度差NEΔT<100mKを有し、1〜48μsのユーザ選択可能積分時間を有する。
【0061】
この検出器アレイは、上記で議論したように、InSbアレイと同じ方式で制御することが可能である。InSbモデルの場合のように、同様の検出器利得制御、およびデータ出力が利用可能である。
【0062】
さらに、水銀カドミウム・テルル化物HgCdTe(MCT)アレイは、IR検出器370として使用するのに将来有望であり、これにより、InSbおよびマイクロボロメータの装置と比較して、感度および帯域幅が改善された。現在、そのようなアレイは、製造がいくらか困難であり、他の利用可能なIR検出器より高価である。
【0063】
InSbおよびマイクロボロメータの両方のタイプの検出器を熱電的に冷却することが可能であるが、InSb FPAの感度は、マイクロボロメータFPAの感度よりはるかに高い。実際、上記で特定したInSb FPAの感度は、従来のFTIRにおいて一般的に使用される液体窒素冷却MCT検出器より良好である。一方、最新のマイクロボロメータ・ベースのFPAの感度は、液体窒素冷却MCT検出器の感度より、さらに約1桁低い。しかし、液体窒素冷却MCT検出器の性能レベルにおける感度は、必ずしも必要ではなく、多くの応用分野では、マイクロボロメータFPAのより低い感度でも、装置において重大な効率の問題を生じないことが可能である。さらに、FPAを使用する重大な利点は、単一要素検出器と比較したとき、垂直ビニングが可能であることである。画素の有限の高さから信号を追加することによって、SNRを著しく改善することができる。
【0064】
焦平面アレイ(FPA)構成の観点でIR検出器370について記述してきたが、線形アレイ検出器もIR検出器370として使用することが可能である。しかし、上記で議論したように、複数の検出器要素を1次元アレイで有する線形アレイ検出器は、2次元検出器アレイが提供するいくつかの利点を利用することができない。そのような利点は、たとえば、信号対雑音(SNR)比を増大させるための検出器アレイ画素出力の垂直「ビニング」または合計、および複数サンプル分析のためにFPAの様々な領域を使用するマルチチャネル検出能力である。これらの追加の特徴は、線形アレイでは利用可能でない。
【0065】
装置300の様々な要素間の光路または光結合手段は、一実施形態では、IR源310からの光をサンプリング・アクセサリ320のサンプル・ボリュームを経て光分散要素330の上にまたはそれを通して結合し、および集束光学機器360を経てIR検出器370の上に結合するために、様々な構成の標準的なIRミラー340、342を含むことが可能である。そのようなミラーは、たとえば、Newport Corporationによって製造されている3インチ(約7.6cm)の直径の前部表面アルミニウム・ミラーとすることが可能である。IR帯域における使用に利用可能な他のミラー・コーティングは、銅または金などとすることが可能である。
【0066】
図5に示す他の実施形態では、光路は、Amorphous Materials,Inc.によって製造されているファイバ・モデルC1−500など、具体的にはマルチモードIR光ファイバである、光ファイバまたは光ファイバ束の使用を含むことが可能である。様々なサンプルのタイプおよびサンプリングの幾何形状により、中間IR光ファイバをIR源と分散要素との間に組み込んで、IR源をサンプル・ボリュームに送達し、サンプル・ボリュームにおいて吸収された後のIR光の光路を分散要素に提供することが可能になることが有利であると考えられる。
【0067】
中間IR領域(3〜5または7〜13μmの領域を含む)において1dB/mより小さい損失を有する光ファイバが、市販されている。これらのマルチモード・ファイバは、可視光線および近IRの領域においてファイバの対応物に見られるような柔軟性および使い易さなどの特徴を提供する。これらの光学材料の熱特性および機械的特性は、この10年で劇的に改善された。
【0068】
FPA検出器とマルチチャネル・ファイバ束とを組み合わせたとき、いくつかのサンプルの同時測定または同じサンプルの異なる位置での同時測定が可能になる。これは、示唆した分光計が、単一の機器で複数検出チャネルを提供することができ、したがって、チャネル当たりの所有コスト(cost−of−ownership)を劇的に減少させることができることを意味する。図4に示す一般的な設計方式では、軸外し放物面ミラー440を使用して、IRファイバ410またはファイバ束の入口アパーチャまたは出力端部から信号を収集して、平行化させる。調節可能なアパーチャ420を使用して、平行化ビームのサイズを制御することが可能であり、その後、集中光学機器442、444を使用して、信号をプリズムに結合させる。ビーム集中光学機器とアパーチャ・サイズとの組合わせは、分光計のf数を決定し、したがってスペクトル分解能を決定する。
【0069】
プロセッサ380は、IRスペクトル処理専用に適合された専用コンピュータとすることが可能であり、いわゆる「ファームウェア」または特注の特定用途向け集積回路(ASIC)などの集積回路に実装することができ、あるいは、一般的なパーソナル・コンピュータ(PC)とすることが可能である。プロセッサ380は、IR検出器470に制御ソフトウェア/ハードウェアを提供することが好ましい。
【0070】
上記で議論したFPAのいずれか1つを使用する好ましい実施形態では、Indigo Systemsによって製造された「Talon Ultra」データ獲得システムを使用することが可能である。プロセッサ380は、専用IR像獲得局として実施することが可能であり、500MHzペンティアム(登録商標)III PCと、256MB RAMと、12GBハード・ドライブと、ウィンドウズ(登録商標)NT4.0オペレーティング・システムと、IRカメラ・デジタル・インターフェース・ケーブル(10ft、または〜3m)と、高速16ビット・フレーム・グラバと、カメラ・インターフェース・ソフトウェアと、Image Pro(登録商標)4.0または同等物に基づく画像分析ソフトウェアとを含む。そのような例示的な実装により、IRカメラから画像およびデータを獲得して、調査、加工、および記憶するために、画像を処理、測定、分析、および出力するユーティリティの全範囲が提供される。
【0071】
ディスプレイ装置390は、CRTディスプレイまたはLCDディスプレイなどの標準的なコンピュータ・モニタとすることが可能であり、あるいは印刷装置とすることが可能である。
【0072】
この特定の例示的な実施形態は、データを獲得するためにPCシステム・メモリを使用することが可能であるが、特定目的向けの専用高速メモリを使用することも可能である(図示せず)。可搬性を追加するために、一体式LCDディスプレイと共に、プロセッサ380をラップトップ・コンピュータまたはノートブック・コンピュータに組み込むことが可能である。
【0073】
例示的な実施形態では、プロセッサ380上で動作するソフトウェアは、実時間ヒストグラムと、実時間デジタルフィルタリングと、実時間フレーム平均化と、ユーザ確定可能注目画像領域(ROI)と、全装備データ・ディスプレイ、整理編集、分析能力と、データ収集、分析、および報告を自動化するための視覚ベーシック互換性マクロ言語など、広範な特徴を提供することが好ましい。
【0074】
このタイプのアプリケーションでは、「実時間」は、初期設定からサンプリングおよび分析を通して1秒未満であると見なされることが好ましく、500ms未満であると見なされることがより好ましく、20ms未満であることがよりいっそう好ましい。このタイプの応答時間は、従来の走査および干渉技術と比較して、好ましい結果を提供する。さらに、「実時間」検出は、それが行われている際にプロセスを連続的に監視する能力を意味することがより好ましい。収集されたデータ・セットまたはデューティ・サイクル間の時間領域は、一般に、5〜100μsの範囲にある。
【0075】
追加の分析ソフトウェアは、プロセッサ380において動作して、IRスペクトル情報を分析し、過フッ化炭化水素、炭化水素、または複雑な分子結合、あるいは化学または生物戦争薬剤に見られるような「シグナチュア」官能基など、サンプル・ボリュームに見られる1つまたは複数の特定の官能基を決定することが可能である。さらに、特定のシグナチュア官能基または化学組成がサンプル・ボリュームにあることが決定された場合、可聴または視覚あるいはその両方の警報を作動させることが可能である。
【0076】
装置300のいくつかの構成要素は、セットアップを容易にする、または最適なデータ収集に備えるように調節可能であるが、装置300は、動作中に移動部品を全く使用せずに、IRスペクトル情報を決定することができることに留意されたい。
【0077】
第1実施形態の非干渉装置を動作させて、IR源を提供することと、サンプル・ボリュームを光路に配置することと、IR源の発光の少なくとも一部をサンプル・ボリュームを経て光路の中に通過させることと、IR源の発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、複数の検出器を使用して分散IR光ビームを検出することと、複数の検出器の出力を評価することによってサンプルのIRスペクトルを非干渉的に決定することとによって、サンプル・ボリュームにおけるサンプルのIRスペクトルを決定する。より好ましい方法では、たとえば、FPAなどの2次元検出器アレイを動作させる。検出器の各列は、分散IR光ビーム内に含まれる波長を表し、検出器要素の少なくとも2つの行を使用して、検出信号のSNRを改善する。
【0078】
装置を確実に使用することを可能にする前に、潜在的な非一様源強度を補償するために、IR源310を較正しなければならず、また好ましくは、対象の帯域にわたって少なくともスペクトル強度を知らなければならない。
【0079】
源較正プロセスは、サンプル・ボリュームが光路にない状態で背景パワー・スペクトルを収集することと、サンプル・パワー・スペクトルを収集することと、次いで背景パワー・スペクトルによってサンプル・パワー・スペクトルを分割(またはその比を形成)して、装置によって報告された各周波数位置について、サンプル強度/背景強度または透過率を決定することとを含む。通例、対数演算、すなわち吸収スペクトル(ABS)を以下のように決定することによって、データをさらに処理する。
ABS=−log10(サンプル/背景)
【0080】
吸収スペクトルが決定された後、開示した装置および方法を産業または環境のプロセス監視において使用して、たとえば、固体もしくは液体の膜または他の固体もしくは液体の上の被覆剤の厚さを測定することが可能である。
【0081】
上記で記述した一般的な動作手順に基づいて、開示した本発明により、サンプルの吸収スペクトルが獲得される。吸収率(ABS)の量は、一般に、以下のように表すことができる。
ABS=A×B×C
上式で、Aはサンプルに存在する吸収官能基の吸収係数、Bはサンプル内の経路長(厚さ)、Cは官能基の濃度である。この定量的な関係は、「ベールの法則」として広く知られている。
【0082】
既知の濃度Cおよび既知の厚さBを有する標準的なサンプルを使用して、濃度および厚さを測定して、そのサンプルが示すあらゆる振動帯域について吸収係数Aを計算することができる。吸収帯についてAを知った後、ベールの法則を使用して、濃度または厚さを測定することができる。
【0083】
たとえば、膜処理ラインでは、材料形成が一定に維持される場合、対応するCおよびAの値も一定である。この場合、吸収レベルがBに正比例するので、開示した本発明を使用して、膜の厚さを監視することができる。一方、半導体化学蒸着(CVD)処理室では、たとえば、気体種の濃度を開示した本発明で測定することができるが、その理由は、A(既知の種)およびB(固定された室のサイズ)が一定に維持され、濃度が、測定吸収率に正比例するとして決定されるからである。
【0084】
配向測定は、以下のように行われる。非偏光IR光をIR測定に使用するとき、整合する振動周波数を有するすべての官能基が吸収する。しかし、特定の方向に発振する電磁波のみが通過するように、入射IR光が線形に偏光しているとき、整合周波数および偏光と同じ方向における双極子モーメントの変化の両方を有する官能基のみが、入射光を吸収することができる。
【0085】
乱雑に配向したサンプルでは、すべての双極子の方向が同じようにサンプリングされ、したがって、偏光方向に対する依存性は観測されない。一方、処理ステップによって生じた好ましい配向を有するサンプルでは、偏光方向が、サンプルの双極子の変化方向と整合するとき、よりいっそう強い吸収が起きる。吸収スペクトルを偏光IR光および非偏光IR光と比較することによって、調査中のサンプルがどの程度、およびどの方向に配向しているかを推測することができる。
【0086】
赤外光の偏光は、しばしば、金ワイヤ偏光器を使用することで達成される。この光学装置は、たとえば、ZnSなどのIR透過基板の上に平行に配置された微細分離金ワイヤからなることが可能である。
【0087】
偏光方向とサンプル双極子方向との定量的な関係は、以下のように表される。
ABSObserved∝cos(Θ)
上式で、Θは、振動中のサンプルの双極子モーメントの変化方向と入射IR光の偏光方向との間の角度である。上記の関係から、Θ=90°であるとき、振動周波数条件が満たされている場合でも、吸収は起きないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
開示した発明の応用および方法は、様々な産業および環境プロセスに広く適用される。
【0089】
いくつかの応用分野は、半導体、金属、および誘電体を含むがこれに限定されない固体表面上の被覆剤(固体、液体、化学的に結合された、物理的に吸着された)の厚さ、化学構造、および配向を測定する方法を含む。
【0090】
たとえば、装置の製造に使用される現在の材料処理では、分子レベルに関する処理済み材料の微妙な相違により、特定の手順の成功または失敗を決定することができる。結晶秩序、鎖配向、および水素結合強度などの分子パラメータは、最終装置の機能に対して重要な影響を有することがある。たとえば、ノートブック・コンピュータに使用される液晶ディスプレイは、光変調器として作用する液晶分子の「オフ」配向を画定するために、ガラス・テンプレート上で使用されるポリマー・コーティングの鎖配向に依拠する。しかし、そのようなポリマー鎖の配向は、「バフ」プロセスによって生成され、バフ・プロセス中に、ベロア生地を使用してポリマー・コート・ガラスを所与の方向にこすって、鎖配向を誘起する。平坦パネル・ディスプレイ製造ラインの歩留まりは、成功したバフ・プロセスに決定的に依存することが周知であるが、最終組立品が完成する前に、バフによって誘起される鎖配向を評価することができる、様々な製造段階中に使用される監視プロセスは存在しない。したがって、不良なLC位置合わせ特性を有するガラス・テンプレートは、製造プロセスが完了するまでは、組立ラインから除去されない。失敗した完全組立ディスプレイを破棄するコストは、不良な位置合わせ特性を有するポリマー・コーティング・バフ・ガラス・プレートを除去するコストより数倍高い。このより効率的な品質管理プロセスを実現する際の主な障害は、製造プラントに見られる苛酷な動作条件に耐えることができる高信頼検出方法が存在しないことである。
【0091】
たとえば、走査探査顕微鏡法およびx線回折などのプロセス方法は、性質が破壊的であることがあり、長いデータ収集時間と、生産ラインからのサンプルの除去とを必要とする。したがって、これらの技術では、成功するオンライン・プロセス監視方法に必要な実時間統計を達成することはできない。開示した装置および方法は、たとえば、実時間で非破壊的にプロセスを監視することができ、バフ・プロセスが完了した後すぐに、大面積サンプルの鎖配向に関する情報を獲得することができる。
【0092】
本発明者は、様々な有機、無機、およびポリマーの表面を使用する液晶位置合わせの研究に関与しており、テンプレート表面の秩序、配向、形態、およびトポロジが、最終LC配向において重要な役割を果たすことを示した。この情報は、本明細書で開示した可搬式赤外線分光計を使用する平坦パネル・ディスプレイ産業に容易に適用可能である。
【0093】
湖、川、または海の上など、水環境においてIR分光法を環境に適用することにより、反射IRエネルギーを使用して、水面上の油または他の汚染物質を検出および測定し、特有の官能基の存在または欠如を決定することができる。
【0094】
さらに、IR分光計は高度に移動性なので、上記で議論したように野外で動作することができる水質汚染モニタとして使用することが可能である。開示された分光計で提供されるスペクトル範囲は、ほとんどの芳香族汚染物質について指紋領域のスペクトル特徴を網羅する。水に割り当てることができるIR帯域(1600〜1750cm−1)は、このスペクトル領域の汚染物質の信号と干渉しないので、野外での汚水の大まかな分析も、この機器で可能である。
【0095】
他の応用例は、薄膜に関するIR分光法である。ポリマーの光学的特性、機械的特性、および老朽化の特性の多くは、処理中に生じる秩序、配向、および形態成長の1次関数である。皮肉なことに、ポリマーが薄膜に形成されるときの配向および秩序の構造的な成長については、あるとしてもわずかな理解しか存在していない。実時間IR分光法によってポリマー鎖組織の性質を構造的に特徴付ける能力により、微細な機械的変形の方向に対する結晶化および配向の所望の量の最終的な制御を提供する処理プロトコルの最適化が可能になる。多くの場合、これは、トランス結合またはゴーシュ結合、および結晶材料またはアモルファス材料の属性とすることができる特定のIR帯域によって簡単に実証される。薄膜の処理(加熱、伸張、冷却)としてIR帯域の強度および周波数の両方を追跡することにより、配向および結晶形態の分子成長を、それが行われる際に追跡することが可能になる。
【0096】
ポリ(エチレン)(PE)膜およびファイバに関する多くの研究が行われてきたが、提供された情報は、通常、処理前、および変形、加熱などが完了した後に獲得される。様々な空間領域における分光情報を実時間で提供することが、開示した光ファイバIR機器により可能である。選択した焦平面アレイのスペクトル領域に応じて、斜方晶系単位セルの特性である1460〜1470cm−1(ダブレット)CHシザーズ振動および720〜730cm−1(ダブレット)CH横揺れ振動を使用して、結晶の成長を調査することが可能である。さらに、730および720cm−1におけるCH横揺れ成分の遷移モーメントは、単位セルの「a」軸および「b」軸にそれぞれ平行であるので(「c」は鎖軸に沿う)、処理中に偏光IRビームの730と720cm−1との相対強度を追跡することによって、図面のプロセスにおいて導入した2軸配向の程度を決定することも可能であるはずである。
【0097】
さらに、帯域の両方の組(横揺れおよびシザーズ)が、ポリマー鎖軸の垂直方向に大きく偏光しているので、強度を使用して、機械的変形の方向に関係する軸配向の情報を提供することもできる。同様に、2920cm−1(非対称CH伸張)および2850cm−1(対称CH伸張)に位置するCH伸張振動は、それぞれ炭素主鎖の面外と炭素主鎖の面とにおいて強く偏光される。したがって、これらの振動を使用して、2軸配向膜における「a」軸および「b」軸の配向の程度を決定することもできる。
【0098】
強度が偏光率の変化に依存し、誘起された配向の解釈をより間接的にするラーマン分光法とは異なり、IR強度は、双極子モーメント(特定の振動モードについて)の変化に依存し、したがって、ポリマー鎖軸に対する双極子モーメントの配向変化の方向が既知である場合、鎖配向のより直接的な評価を提供する。PEの場合では、これらは周知であり、PEは、IR分光法を実施する対象となる適切なポリマーである。
【0099】
他の応用例は、一連のポリ(エステル)薄膜の測定である。ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)膜の事前処理および事後処理に関するいくつかの研究が文献として存在するが、処理中のPETに関する研究は、報告されていない。さらに、構造的に関係するポリ(エチレンナフタレート)(PEN)に関する研究はほとんど行われていない。PENの主要な市場は、現在のところ特殊膜であるので、その改善された(PETと比較して)熱特性および誘電特性のために、特性に関する様々な処理パラメータの影響の理解は、本質的に重要であり、かつ時宜を得ている。
【0100】
伸張後のPETの以前の研究では、−OCHCHO−基のトランス構造およびゴーシュ構造に以前に割り当てられていた973および1041cm−1における帯域の強度が、応力を加えた後、かなり変化する(973cm−1は周波数もシフトする)ことを示していた。これは、応力により、ゴーシュ結合がトランスに変化することを示唆するが、この実証のみでは、サンプル全体の結晶度が増大したことは示されなかった。これには、やはり応力の関数として追跡され、973cm−1トランス帯域が増大する際に増大することが認められた結晶領域のトランス型に特徴的な848cm−1CH横揺れ振動を使用することを必要とした。
【0101】
同様の振舞いが、1386cm−1CH縦揺れモードについても観測され、PETの結晶領域ではトランス結合の特性であることも観測された。−OCHCHO−基は、両方のポリエステル鎖において芳香族基間の一般的な結合であるので、973、1041、848、および1386cm−1帯域の強度および周波数を監視して、PET膜とPEN膜の両方について、配向の成長、すべてのトランス内容、および結晶度に対する処理パラメータの影響を理解する。さらに、PETおよびPENの結晶度および配向の変化は、2780および2850cm−1におけるCH伸張モードを追跡することによって確認することもできる。一方、3200cm−1におけるC=O上音振動を使用して、配向のみを追跡することができる。
【0102】
開示した装置の他の産業用の応用分野は、透過ならびに反射の際の、水、油、ならびに他の溶媒を含むがこれに限定されない液体表面上の(固体、液体、化学的に結合された、物理的に吸着された)被覆剤/膜の厚さ、化学的構造、および配向を測定および検出する方法を含む。
【0103】
透過または反射において、環境石油流出、汚染された池、小川、川などを含むがこれに限定されない水上の油の厚さ、化学構造、および配向を測定および検出する方法。
【0104】
膜、吸収された気体、固体および液体の表面上の被覆剤を含むがこれに限定されない、過フッ化炭化水素物質の厚さ、配向、および化学構造を測定する方法。
【0105】
金属および半導体を含むがこれに限定されない、固体基板の上に電磁的に付着された膜の厚さ、配向、および化学構造を測定する方法。
【0106】
熱、放射、または光によって化学的または物理的に劣化した、固体または液体の基板の上に独立している、またはその上で担持されている膜の厚さ、配向、および化学構造の変化を測定する方法。
【0107】
膜を処理(伸張、結晶化、位置合わせが代表的であるが、処理の例を限定しない)している際の膜の配向を統計的にまたは「実時間」で検出する方法。
【0108】
固体または液体の基板の上に自立している、またはその上で担持されている膜の厚さ、配向、化学構造、および結晶化を測定する実時間方法。
【0109】
気体、液体、または固体状態において化学反応が行われる際に存在する化学種を測定および検出する実時間方法。
【0110】
工場、実験室、採掘トンネル、貯蔵室、および戦場などを含むがこれに限定されない、気体状態の有害物質を測定および検出する実時間方法。
【0111】
配向、結晶化、融解、劣化、付着、および昇華を包含するプロセスを含むがこれに限定されない、プロセスを監視する実時間方法。
【0112】
工場、鉱業場、自動車、航空機、または宇宙船を含むがこれに限定されない、機械の雑音が大きい環境において装備することができる監視方法。
【0113】
赤外線望遠光学機器と共に装備して、遠隔感知プラットフォームとして役立つことができる監視方法。
【0114】
赤外線顕微光学機器と共に装備して、実時間赤外線顕微鏡サンプリングを実施することができる監視方法。
【0115】
医療用内視鏡検出を実施するために赤外線光ファイバと共に装備することができる監視方法。
【0116】
(実験結果)
図5に示す屈折率情報による光線追跡計算に基づいて、ほぼブルースター角度(ZnSeのθ〜67°)で「短い側入口」において動作するZnSeで作成された67.5°ペリン・ブロカ・プリズムは、3,13μm波長ビームとの間で約6°の角分散を与える。異なる波長間のチップ上空間距離は、使用する集束光学機器と、ペリン・ブロカ・プリズムのサイズと、システムのf数とによって決定される。スペクトル領域の500〜1000cm−1のスパンは、FPA上に水平に集束させることが可能である(256、320などの画素)。光ビームの分散方向に沿ってFPAにおいて画素数が与えられると、最大分解能は、約5cm−1である。しかし、より微細な溝の格子など、異なる光学構成要素を使用すると、5cm−1より良好な分解能が、この分光計について達成可能である。
【0117】
FPA−IR分光法の性能に到達するために、ヘキサデカン(C1634)のスペクトルが、10μsでCH伸張領域において獲得されており、これを図6に示す。この実験では、300溝/mmのIR格子と共に、3〜5μmFPAを使用した。図6の様々なセクション「A」、「B」、および「C」は、信号積分の様々なレベルと、複数行、および複数獲得フレームまたは期間の使用から利用可能なSNRの改善とを示す。図6の右側は、これらの様々な手法に関連する雑音レベルを示す。
【0118】
比較のために、図7の右側に示すように、16cm−1、8cm−1、および4cm−1の分解能を使用する従来のFTIR機器を使用して、ヘキサデカンのIRスペクトルも獲得した。すべての3つのスペクトルにおいて観測された2875cm−1におけるメチル伸張は、機器の分解能の表示として使用することができる。この弱い帯域は、2850cm−1におけるはるかにより強い対称的なCH伸張の高周波数側で見られる。FPA−IRスペクトルのメチル伸張は、4cm−1分解能FTIRスペクトルの場合ほど分解されないが、8cm−1分解能FTIRスペクトルの場合より分解される。
【0119】
したがって、これは、開示したFPA−IR分光計が、4〜8cm−1の領域の分解能において機能するという明確な証拠である。収集時間(同じSNRスペクトルについて)が数分から数マイクロ秒に改善され、したがって、動的プロセスを調査することが可能になる。さらに、様々な構成要素を最適化することによって、システムの分解能およびスループットの改善を達成することができ、一方、検出器の垂直画素のビニングは、弱い吸収システムのSNRを改善する。
【0120】
IRスペクトル情報を決定する本発明の好ましい実施形態の議論を対象としてきたが、本発明の方法およびシステムは、そのような狭い実施態様にのみ限定されるものではない。たとえば、本発明は、上記で議論した産業用および環境のプロセスに適用可能とすることも可能であり、たとえば、ポリマー膜の厚さなどの1つまたは複数の物理的属性を制御するためにバッチ生産ラインの制御システムに組み込む、または半導体処理において組み込むことがさらに可能である。
【0121】
本発明を多くの方式で変更することが可能であることが明らかになるであろう。たとえば、サンプル・ボリュームに関して特定の位置にあることが可能であるように、特定の光学構成要素を変更することが可能である。そのような変更は、本発明の精神および範囲から逸脱すると見なされるべきではなく、すべてのそのような修正は、以下の請求項の範囲内に含まれることを意図していることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の幅および範囲は、添付の請求項の範囲およびその均等物によってのみ限定される。
【0122】
(政府のライセンス権)
米国政府は、国家科学財団(NSF)承認第0076017によって規定されるように、本発明における権利を有する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】従来のFTIR干渉計を示す図である。
【図2】フーリエ変換に基づくが、光路長の差を生成するために移動部品を必要としない従来の干渉分光法に使用される2つの異なる方式を示す図である。
【図3】非干渉IR分光法が移動部品を使用せずに達成される、本発明の一実施形態を示す図である。
【図4】光を装置に結合するために使用されるIR光ファイバを示す、ぺリン・ブロカ・プリズムを光分散要素として使用する他の実施形態を示す図である。
【図5】ZnSeの屈折率の分布と、図4のペリン・ブロカ・プリズムの例示的な実施形態の光屈折とを示すグラフである。
【図6】開示した本発明によって達成可能な雑音および信号の平均化を表す図である。
【図7】開示した本発明の結果と従来のFTIR干渉計との比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定する装置であって、
IR光源と、
前記サンプル・ボリュームを光路に配置するサンプリング・アクセサリと、
前記光路にある光分散要素とを備え、
前記IR光源からの発光の少なくとも一部が、前記光路に沿って前記サンプルを通過し、前記発光の少なくとも一部が、前記光分散要素と相互作用して、分散光ビームを形成し、
さらに、前記分散光ビームの分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を内部に有するIR検出器を備え、
前記IR検出器が、前記分散光ビームを検出して、前記サンプルの前記IRスペクトル情報を決定する出力を提供し、
前記装置が、動作中に移動部品を使用せずに前記IRスペクトル情報を決定することができ、
光分散要素が調節可能であり、前記IR検出器の上に投影された前記分散光ビームの波長の範囲が、前記IR光源からの発光の少なくとも一部と、前記光分散要素の表面との間の入射角を調節することによって決定される装置。
【請求項2】
サンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定する装置であって、
IR光源と、
前記サンプル・ボリュームを光路に配置するサンプリング・アクセサリと、
前記光路にある光分散要素とを備え、
前記IR光源からの発光の少なくとも一部が、前記光路に沿って前記サンプルを通過し、前記発光の少なくとも一部が、前記光分散要素と相互作用して、分散光ビームを形成し、
さらに、前記分散光ビームの分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を内部に有するIR検出器を備え、
前記IR検出器が、前記分散光ビームを検出して、前記サンプルの前記IRスペクトル情報を決定する出力を提供し、
前記装置が、動作中に移動部品を使用せず、前記IRスペクトル情報を決定することができ、
また、それぞれが少なくとも1つの異なるサンプル・ボリュームを配置する複数のサンプリング・アクセサリを備え、
前記少なくとも1つの異なるサンプル・ボリュームのそれぞれのIRスペクトル情報を同時に決定する装置。
【請求項3】
サンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定する装置であって、
IR光源と、
前記サンプル・ボリュームを光路に配置するサンプリング・アクセサリと、
前記光路にある光分散要素とを備え、
前記IR光源からの発光の少なくとも一部が、前記光路に沿って前記サンプルを通過し、前記発光の少なくとも一部が、前記光分散要素と相互作用して、分散光ビームを形成し、
さらに、前記分散光ビームの分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を内部に有するIR検出器を備え、
前記IR検出器が、前記分散光ビームを検出して、前記サンプルの前記IRスペクトル情報を決定する出力を提供し、
前記装置が、動作中に移動部品を使用せずに前記IRスペクトル情報を決定することができ、
前記サンプリング・アクセサリが、前記サンプル・ボリューム内のIR吸収現象の検出に適した前記サンプルの光密度を提供するように構成される装置。
【請求項4】
サンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定する装置であって、
IR光源と、
前記サンプル・ボリュームを光路に配置するサンプリング・アクセサリと、
前記光路にある光分散要素とを備え、
前記IR光源からの発光の少なくとも一部が、前記光路に沿って前記サンプルを通過し、前記発光の少なくとも一部が、前記光分散要素と相互作用して、分散光ビームを形成し、
さらに、前記分散光ビームの分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を内部に有するIR検出器を備え、
前記IR検出器が、前記分散光ビームを検出して、前記サンプルの前記IRスペクトル情報を決定する出力を提供し、
前記装置が、動作中に移動部品を使用せずに前記IRスペクトルを決定することができ、
また、それぞれが異なるサンプルに対応する複数の分散光ビームを形成する複数の光分散要素を備える装置。
【請求項5】
1つまたは複数のサンプル・ボリュームにおいて化学分析を実施するために、動作中に、IR吸収現象を使用し、かつ移動部品を使用しない実時間非干渉装置であって、
広帯域光源と、
前記広帯域光源から発光された光の少なくとも一部が、前記1つまたは複数のサンプル・ボリュームのそれぞれを通過するように、前記1つまたは複数のサンプル・ボリュームを配置するための少なくとも1つのサンプリング・アクセサリと、
1つまたは複数の対応する分散サンプル・ビームを獲得するために、前記1つまたは複数のサンプル・ボリュームのそれぞれを通過した光の少なくとも一部を光分散させる調節可能手段と、
行および列に構成された複数の検出器要素を有する2次元IR検出器アレイと、
前記1つまたは複数の対応する分散サンプル・ビームを前記2次元IR検出器アレイの上に結合する光学結合手段と、
前記2次元IR検出器アレイを制御して、1つまたは複数の特定の波長領域におけるIR吸収スペクトルに少なくとも基づいて、前記1つまたは複数のサンプルの非干渉的化学分析を提供するプロセッサ手段とを備え、
前記1つまたは複数の対応する分散サンプル・ビームのそれぞれが、前記2次元IR検出器アレイの異なる領域の多数の行の上に投影され、前記多数行のそれぞれの対応する列検出器要素が、特定の波長におけるIRスペクトル成分の強度を実時間で決定するように、前記2次元IR検出器アレイの各異なる領域の内部において合算され、
前記特定の波長におけるIRスペクトル成分の強度を表す信号の信号対雑音比が、前記対応する列検出器要素を前記多数行のそれぞれにおいて追加することによって増大される装置。
【請求項6】
前記1つまたは複数のサンプルのそれぞれを通過した前記光の少なくとも一部を光分散させる前記調節可能手段が、上に衝突する入射光に対して調節可能な入射角度を有する回折格子である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記1つまたは複数のサンプルのそれぞれを通過した光の前記少なくとも一部を光分散させる前記調節可能手段が、上に投影された入射光に対して調節可能な入射角度を有するペリン・ブロカ・プリズムである、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記光結合手段が直接レンズ結合を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記光結合手段が1つまたは複数の光ファイバを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記2次元IR検出器アレイがInSb焦平面アレイである、請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記2次元IR検出器アレイがマイクロボロメータ焦平面アレイである、請求項5に記載の装置。
【請求項12】
前記2次元IR検出器がMCTを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサ手段がパーソナル・コンピュータである、請求項5に記載の装置。
【請求項14】
前記1つまたは複数のサンプルのそれぞれを通過した前記光の少なくとも一部を光分散させるための前記調節可能手段が、前記1つまたは複数の対応する分散サンプル・ビームの波長領域を同調させるように調節される、請求項5に記載の装置。
【請求項15】
非干渉装置を使用して、サンプル・ボリュームの少なくとも1つのサンプルのIRスペクトルを決定する方法であって、
IR源を提供することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを光路に配置することと、
前記IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを経て前記光路の中に通過させることと、
前記IR源の前記発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、
2次元の行および列に構成された複数の検出器を使用して、前記分散IR光ビームの各スペクトル成分を同時に検出することと、
検出器の少なくとも2つの行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が、前記分散IR光ビーム内に含まれる波長を表し、
また、少なくとも前記分散IR光ビームの各スペクトル成分を同時に検出するステップ中に、前記非干渉装置のすべての構成要素の固定相対位置を維持することを備える方法。
【請求項16】
非干渉装置を使用してサンプル・ホルダの少なくとも1つのサンプルのIRスペクトルを決定する方法であって、
IR源を提供することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ホルダを光路に配置することと、
前記IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ホルダを通して前記光路の中に通過させることと、
前記IR源の前記発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、
2次元の行および列に構成された複数の検出器を使用して、前記分散IR光ビームを検出することと、
検出器の少なくとも2つの行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が、前記分散IR光ビーム内に含まれる波長を表し、
さらに、前記分散IR光ビームにおいて光の範囲を制御するために、前記IR源の前記発光の少なくとも一部の前記光分散を調節することとを備える方法。
【請求項17】
非干渉装置を使用して、サンプル・ボリュームの少なくとも1つのサンプルのIRスペクトルを決定する方法であって、
IR源を提供することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを光路に配置することと、
前記IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを経て前記光路の中に通過させることと、
前記IR源の前記発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、
2次元の行および列に構成された複数の検出器を使用して、前記分散IR光ビームを検出することと、
検出器の少なくとも2つの行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が、前記分散IR光ビーム内に含まれる波長を表し、
さらに、少なくとも2つのサンプル・ボリュームにおいて複数のサンプルを同時に分析することを備える方法。
【請求項18】
非干渉装置を使用して、サンプル・ボリュームの少なくとも1つのサプルのIRスペクトルを決定する方法であって、
IR源を提供することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを光路に配置することと、
前記IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを経て前記光路の中に通過させることと、
前記IR源の前記発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、
2次元の行および列に構成された複数の検出器を使用して、前記分散IR光ビームを検出することと、
検出器の少なくとも2つの行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が、前記分散IR光ビーム内に含まれる波長を表し、
さらに、複数のスペクトル像を前記複数の検出器出力に同時に呈示することを備え、
前記複数のスペクトル像のそれぞれが、前記複数の検出器出力の様々な領域の上に投影される方法。
【請求項19】
前記列のそれぞれにおいて複数の検出器出力を合計することによって、信号対雑音比を増大させることをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の検出器の2つ以上の獲得期間中に獲得された複数の検出器出力を合計することによって、信号対雑音比を増大させることをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
非干渉装置を使用して、サンプル・ボリュームの少なくとも1つのサンプルのIRスペクトルを決定する方法であって、
IR源を提供することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを光路に配置することと、
前記IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを経て前記光路に中に通過させることと、
前記IR源の前記発光の少なくとも一部を光分散させて、分散IR光ビームを形成することと、
2次元の行および列に構成された複数の検出器を使用して、前記分散IR光ビームを検出することと、
検出器の少なくとも2つの行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が、前記分散IR光ビームに内に含まれる波長を表し、
さらに、前記IR源のスペクトルを評価することと、
前記IR源の前記スペクトルに対処するために、前記複数の検出器の複数の出力の一部を訂正することとを備える方法。
【請求項22】
通過、分散、検出、および決定の少なくとも前記ステップ中に、前記装置のすべての構成要素を互いに静止位置に維持することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記非干渉装置の分解能を調節するために、前記IR源と前記少なくとも1つのサンプルとの間に配置された光学開口の少なくとも1つの寸法を調節することをさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのサンプルにおいて1つまたは複数の分子官能基を識別するために、前記決定されたIRスペクトルを処理することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのサンプルにおいて1つまたは複数のシグナチュア官能基を識別するために、前記決定されたIRスペクトルを処理することと、
前記1つまたは複数のシグナチュア官能基の1つまたは複数が、前記少なくとも1つのサンプルにおいて認められた場合、警報を可能にすることとをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
非干渉装置におけるIR吸収を使用して、少なくとも1つのサンプル・ボリュームの少なくとも1つのサンプルのIRスペクトルを決定する方法であって、前記装置が、広帯域IR源と、前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを配置する少なくとも1つのサンプル・アクセサリと、光分散要素と、列および行に構成された複数の検出要素を有する2次元IR検出器とを含み、
前記広帯域IR源の発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームに投影することと、
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを透過した光ビームを前記光分散要素に結合することと、
分散IR光ビームを形成することと、
前記2次元IR検出器を使用して、前記分散IR光ビームを検出することと、
検出器の複数の行にある各検出器からの出力を評価することによって、前記少なくとも1つのサンプルの前記IRスペクトルを非干渉的に決定することとを備え、
検出器の各列が前記分散IR光ビーム内に含まれる波長を表す方法。
【請求項27】
前記広帯域IR源と、前記光分散要素と、前記2次元IR検出器とを、投影、結合、形成、検出、および決定の少なくとも前記ステップ中に、少なくとも互いに静止して維持することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記列のそれぞれにおいて複数の検出器出力を合計することによって、信号対雑音比を増大させることをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記2次元IR検出器の2つ以上の獲得期間中に獲得された複数の検出器出力を合計することによって、信号対雑音比を増大させることをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記結合手段が直接レンズ結合を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記光学結合ステップが光ファイバ結合を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記光ファイバ結合が、前記2次元IR検出器および前記非干渉装置から実質的な距離で離れて配置された前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームから前記2次元IR検出器の中に、前記分散IR光ビームを結合することを少なくとも含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記広帯域IR源の前記発光の少なくとも一部を前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームの中に光結合するファイバをさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
複数のスペクトル像を前記2次元IR検出器の上に同時に投影することをさらに備え、
前記複数のスペクトル像のそれぞれが、前記2次元IR検出器の異なる領域の上に投影され、
前記複数のスペクトル像のそれぞれが、対応するサンプルのIRスペクトルを表す、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
1つまたは複数の分子官能基の存在を検出するために、前記決定されたIRスペクトルを処理することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記決定されたIRスペクトルが、1つまたは複数のシグナチュア官能基を含む場合、警報を可能にすることをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記IRスペクトルから、化学種を気体、液体、および固体の状態のいずれかで実時間で検出することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記化学種を実時間で検出することが、化学または生物戦争薬剤を検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化学種を実時間で検出することが、有害煙霧または蒸気を含む気体有害物質を測定および検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記IRスペクトルから、前記少なくとも1つのサンプルの少なくとも1つの物理的属性を決定することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの物理的属性が、本質的に実時間で連続して決定される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、固体表面上の被覆剤の厚さ、化学構造、および配向の少なくとも1つを測定することを含み、前記固体表面が、半導体、金属、および誘電体の少なくとも1つを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、透過モードまたは反射モードにおいて、液体表面上の膜の厚さを測定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
水面上の油膜の厚さを測定することをさらに備える、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、過フッ化炭化水素物質の厚さ、濃度、および化学構造の少なくとも1つを検出および測定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、固体基板上の膜の厚さ、配向、および化学構造の少なくとも1つを測定および検出することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、半導体を含む固体基板の上に電磁的に付着された膜の厚さ、配向、および化学構造の少なくとも1つを測定および決定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、熱、放射、または光によって化学的または物理的に劣化された膜の厚さ、配向、および化学構造の少なくとも1つを測定および検出することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、膜の厚さを実時間で測定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの物理的属性に基づいて、伸張、結晶化、および位置合わせのプロセスの少なくとも1つを制御することをさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの物理的属性を決定することが、膜の厚さ、配向、化学構造、および結晶化の少なくとも1つを測定および検出することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記結合ステップが、前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを透過した前記光ビームを、IR望遠鏡を経て結合することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
前記結合ステップが、前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを透過した前記光ビームを、IR顕微鏡を経て結合することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項54】
前記結合ステップが、前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを透過した前記光ビームを、内視鏡を経て結合することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項55】
IR光源によって照明された物質の実時間IRスペクトル情報を収集、処理、および表示する装置であって、
光分散要素と、
IR焦平面アレイと、
前記照明された物質内におけるIR吸収相互作用から得られるIR信号を前記IR焦平面アレイに結合する光結合手段と、
前記IR焦平面アレイの出力を処理して、前記IRスペクトル情報の各スペクトル成分を同時に決定する処理手段と、
前記IRスペクトル情報を表示する表示手段とを備える装置。
【請求項56】
IR光源によって照明された物質のIRスペクトル情報を収集、処理、および表示する装置であって、
光分散要素と、
IR焦平面アレイと、
前記照明された物質内におけるIR吸収相互作用から得られるIR信号を前記IR焦平面アレイに結合する光結合手段と、
前記IR焦平面アレイの出力を処理して、前記IRスペクトル情報を決定する処理手段と、
前記IRスペクトル情報を表示する表示手段とを備え、
前記光結合手段が偏光要素を含む装置。
【請求項57】
前記照明物質内のIR吸収相互作用から得られる前記IR信号が、前記物質から反射される、請求項55に記載の装置。
【請求項58】
前記照明物質内のIR吸収相互作用から得られる前記IR信号が、前記物質を透過する、請求項55に記載の装置。
【請求項59】
前記光結合手段が光ファイバ結合を含む、請求項55に記載の装置。
【請求項60】
前記処理手段が、前記IR焦平面出力を分析して、1つまたは複数の特定の官能基が検出された場合に警報を可能にする、請求項55に記載の装置。
【請求項61】
前記静止光結合手段が、光路に調節可能アパーチャを備える、請求項5に記載の実時間非干渉装置。
【請求項62】
調節可能アパーチャを前記光路において提供することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも1つのサンプル・ボリュームを透過した光ビームを前記光分散要素に結合するステップが、可変アパーチャを光路において提供することを備える、請求項26に記載の方法。
【請求項64】
サンプル・ボリュームのサンプルのIRスペクトル情報を決定する装置であって、
IR光源と、
前記サンプル・ボリュームを光路に配置するサンプリング・アクセサリと、
前記光路にある光分散要素とを備え、
前記IR光源からの発光の少なくとも一部が、前記光路に沿って前記サンプルを通過し、前記発光の少なくとも一部が、前記光分散要素と相互作用して、分散光ビームを形成し、
さらに、前記分散光ビームの分散方向に少なくとも沿って配置された複数の検出要素を内部に有するIR検出器と、
前記IR検出器から実時間出力を受信して、周波数または波長の範囲の完全に範囲内において前記実時間出力を処理するプロセッサ手段とを備え、
前記プロセッサ手段が、前記サンプルの前記IRスペクトル情報の各スペクトル成分を同時に決定し、
動作中に移動部品を使用せずに前記IRスペクトル情報を決定することができる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−106006(P2006−106006A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336622(P2005−336622)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【分割の表示】特願2003−532934(P2003−532934)の分割
【原出願日】平成13年10月1日(2001.10.1)
【出願人】(504131714)ユーディー テクノロジー コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】UD TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】