室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物、並びにこれを用いたシーリング材及び防水シール
【課題】防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、
(A)オルガノポリシロキサンであるベースポリマー 100質量部、
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)シラン化合物又はその部分加水分解物 1〜30質量部、
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【解決手段】少なくとも、
(A)オルガノポリシロキサンであるベースポリマー 100質量部、
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)シラン化合物又はその部分加水分解物 1〜30質量部、
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化して弾性のあるシリコーンゴムとなる室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物に関し、特には、水廻り用等に使用され、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に接着性、特にアクリル樹脂等の難接着樹脂に対し良好に接着性を有し、かつ人体及び環境にやさしい室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物からなるシーリング材、防水シールに関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は、施工後の環境(特に高温度、高湿度、温湿度差が大きい条件下に曝されたとき)や、施工後のシーリング材表面に結露や汚れなどが付着することによってシーリング材表面にかびなどの微生物が発生することが知られている。この結果として施工面の意匠性が低下し不快感を与えるほか、シーリング材の劣化が促進されることによりシーリング特性を低下させてしまうという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、シリコーンシーリング材に防かび剤を添加することが知られているが、従来の防かび剤では必ずしも有効な防かび性能が得られなかったり、シーリング材に添加されている硬化剤や触媒と反応する事による変色や着色、太陽光に含まれる紫外線等の照射による着色や変色が起きたり、シーリング材の保存安定性の低下、さらには得られる硬化物の物性・接着性を低下させてしまうことが問題であった。
【0004】
さらに、近年において、特にEU諸国、オーストラリアでは法規制が厳しくなっており、これらの国へ輸出する場合には、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている防かび剤であるメトキシカルボニルアミノベンツイミダゾールは0.1%以上添加すると有毒マークの表示義務があり、特許文献3に記載されているテブコナゾールは有害マークを表示する義務があり、一般消費者の不安を与えるケースが生じている。
【0005】
また、上記に示したような防かび剤を使用した場合、難接着樹脂、特に近年浴槽用途として増えているアクリル樹脂に対する接着性が不十分であるという問題もある。
一方、特許文献4には、オルガノポリシロキサンに重金属を含まない殺生物剤をマイクロカプセル化したものを添加した防汚塗料が記載されているが、具体的な組成については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−112803号公報
【特許文献2】特開平6−256755号公報
【特許文献3】特開2003−238301号公報
【特許文献4】特表2001−502732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【0009】
このような本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサンは、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものである。
【0010】
この場合、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物が、更に、(G)非反応性シリコーンオイルを含有するものであるとすることができる。
このように、室温硬化型オルガノポリシロキサンが、(G)成分として、非反応性シリコーンオイルを含有するものであれば、作業性、糸切れ性等の特性が向上すると共に、硬化後のゴム物性を調整することもできる。
【0011】
この場合、前記(C)成分のシラン化合物又はその部分加水分解物の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であるものとすることができる。
【0012】
このように、(C)成分の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であれば、より接着性が向上すると共に、硬化時に発生する物質に起因する不快な臭いを抑えることのできる組成物とできる。
【0013】
また、本発明は、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物からなるシーリング材を提供する。
このように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、シーリング材として好適に用いることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる防水シールを提供する。
このように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、水廻り用等の防水シールとしても好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものである。また、シーリング材や水廻りの防水シール材としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、環境に対する意識の高まりから、法規制が厳しくなっており、優れた防かび性、耐変色性、保存安定性、及び接着性を有しつつも、人体や環境に優しいオルガノポリシロキサン組成物が求められていた。
【0017】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、有害マークや有毒マークの表示義務のないチアベンダゾールを特定の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することで、従来の防かび性オルガノポリシロキサン組成物と同等以上の防かび性能を有し、かつ変色が少なく、難接着樹脂に対する接着性にも優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びにそれを用いてなるシーリング材及び防水シール部材を見出し、本発明をなすに至った。
【0018】
即ち、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサンは、少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする。
【0019】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<(A)成分>
本発明に使用される(A)成分は、本組成物のベースポリマーとなるものであり、下記一般式(1)及び(2)
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むものである。
【0020】
(A)成分の好ましい粘度は、25℃において100〜500,000mPa・s、より好ましくは1,000〜300,000mPa・s、特に好ましくは、5,000〜100,000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上であれば、硬化物に優れた物理的性質、特に柔軟性・耐衝撃性を与えることができ、500,000mPa・s以下であれば、組成物の粘度が高くなり過ぎることもなく、作業性が低下するおそれもないためである。なお、この粘度は回転粘度計による測定値である。
【0021】
上記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、メチル基が好ましい。R1は炭素原子数1〜10、特に1〜6の置換又は非置換の一価の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基及びこれらの基の水素結合が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。上記一般式(2)中の複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0022】
また、Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、アルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、特にエチレン基が好ましい。
【0023】
また、上記一般式(1)及び/又は(2)は、上記一般式(2)で示されるオルガノポリシロキサンの製造工程で副生成物として生成し得る、下記(3)、(4)、(6)で表されるオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【化4】
(式中、R、R1、X、Y、Nは上記の通りである。Wは炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、アルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、その中でもビニル基が最も好ましい。)
【化5】
(式中、R、R1、X、Y、M、Nは上記の通りである。また、R2は同一又は異種の、下記一般式(5)で示される加水分解性基を含む分岐鎖であり、Zは1以上の整数である。
【化6】
(式中、R、R1、Yは上記の通りである。Pは0又は1の整数である。))
【化7】
(式中、R、R1、R2、W、X、Y、Z、Nは上記の通りである。)
【0024】
この場合、上記一般式(3)、(4)、(6)で表されるオルガノポリシロキサンの含有量は、(1)及び/又は(2)成分の30質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分の無機充填材は、本組成物にゴム物性を付与するための補強性、非補強性充填剤を指す。本充填剤としては、無処理の煙霧質シリカ、沈降性シリカ等のシリカおよびこれらの表面をアルコキシシラン、オルガノハロシラン、シラザン、低分子シロキサン等で疎水化処理したシリカ、無処理の炭酸カルシウムおよびこの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、樹脂酸、樹脂酸誘導体等で処理した炭酸カルシウム、カーボン粉、タルク、ベントナイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミ、水酸化アルミニウム等が例示される。これらの中で、好ましくは、含水量の少ないもの、シリカ、炭酸カルシウムであり、より好ましくは疎水化処理したシリカ、表面処理した炭酸カルシウムであり、特に好ましくは、疎水化処理したシリカである。
【0026】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜300質量部の範囲、好ましくは、7〜150質量部の範囲で使用される。5質量部未満では十分なゴム強度が得られないことがあり、300質量部を超えるとカートリッジからの吐出性等の作業性が悪化、保存安定性が低下、得られるゴム物性の機械特性の低下等が生じる。
【0027】
<(C)成分>
本発明に使用される(C)成分の下記一般式(7)
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一、又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の1価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物は、本発明の組成物において架橋剤として作用するものである。
【0028】
上記一般式(7)のR3は同一、又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基及びこれらの基の水素結合が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基が特に好ましい。
【0029】
また、Kは加水分解性基であり、その具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシム基などのアルケニルオキシム基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基などのケトオキシム基などが例示される。また、アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロイロキシ基、ベンゾイルオキシム基などのアシロキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアミノ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基などのアミノキシ基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などのアミド基などで例示される加水分解性基等が例示され、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のアルコキシ基、ケトオキシム基である。nは2〜4の整数である。
【0030】
この(C)成分の架橋剤はシラン化合物、この部分加水分解物およびこれらの混合物でもよい。これらは1種類に限定されず、その2種以上を使用してもよい。
【0031】
(C)成分の配合量は、1〜30質量部であり、より好ましくは3〜15質量部である。(C)成分が1質量部未満ではこの組成物の製造時あるいは保存中にこれがゲル化を起したり、この組成物から得られる弾性体が目的とする物性を示さなくなり、逆に30質量部より多くするとこの組成物の硬化時における収縮率が大きくなり、この硬化物の弾性も低くなる。
【0032】
<(D)成分>
(D)成分の硬化触媒は、本発明の組成物における(A)成分のベースポリマーと(C)成分の架橋剤との縮合反応の触媒作用を行なうものである。具体的にはオクタン酸鉄、ナフテン酸鉄、オクタン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクタン酸錫、ナフテン酸錫、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛のような有機酸金属塩、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジオクトエ−トなどのようなアルキル錫エステル化合物、ハロゲン化錫化合物、錫オルソエステル化合物、テトラブチルチタネ−ト、テトラブチルジルコネ−トのような金属アルコレ−ト、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナ−ト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテ−ト)チタンなどのチタンキレ−ト、ジエチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミンなどのアミン類などが例示される。これらの中で、有機スズ化合物と有機チタン化合物が好ましい。この(D)成分としての硬化触媒の使用は1種類に限定されず、これらは2種以上を使用してもよい。
【0033】
(D)成分の配合量は0.01〜15質量部であり、好ましくは、0.05〜10質量部である。0.01質量部未満ではこの組成物を空気中に曝したときにタックフリ−の皮膜形成に長時間が必要となるし、その内部硬化性もわるくなり、また15質量部より多くすると皮膜形成時間が数秒間と極めて短くなって作業性が劣るようになるほか、保存安定性が低下する。
【0034】
<(E)成分>
(E)成分のシランカップリング剤は、本発明の組成物において接着性を付与させるための必須成分である。シランカップリング剤としては公知のものが好適に使用され、(メタ)アクリルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0035】
上記(E)成分の量は、(A)成分100質量部当たり、0.05〜15質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。(A)成分100質量部に対し0.05質量部未満では、硬化物が十分な接着性能を示さないものとなり、15質量部を超えて配合すると、硬化後のゴム強度が低下して目的のゴム弾性体が得難くなり、経済的にも不利になる。
【0036】
<(F)成分>
(F)成分のチアベンダゾールは、本組成物に良好な防かび性能を与えると共に、(E)成分同様接着性を向上させる成分である。
ここで、チアベンダゾールとは下記一般式(8)の構造で示されるものである。
【化8】
【0037】
このチアベンダゾールを防かび剤として使用した組成物は、EU諸国およびオーストラリアに輸出する際も毒性表示義務が無く、また更には日本におけるPRTR法においても非該当となっている人体にやさしい物質であり、かつ防かび性能も従来のものと同等以上である。
【0038】
この(F)成分のチアベンダゾールは、それ単体で添加しても良好な防かび性能を得ることができるが、より防かび性能の安定化を目的とし、組成物内の分散性を高めるために、(A)成分のオルガノポリシロキサンや後述する(G)成分の非反応性シリコーンオイルと予め分散混合させてなるマスターバッチの形式で組成物中に添加させることにより、防かび性能をより安定化させ、さらにより高い耐変色性の付与が可能となる。
この場合、(F)成分と(G)成分をマスターバッチ化したものを用いることが特に好ましい。
【0039】
(F)成分の配合量は0.1〜5質量部であり、好ましくは、0.2〜2質量部である。0.1質量部未満では十分な防かび性能が得られず経時での意匠性、ゴム物性の劣化が確認されてしまい、また5質量部より多くすると硬化物のゴム強度が低下するほか、経済的にも不利となる。
【0040】
<(G)成分>
本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物には、(G)成分の非反応性シリコーンオイルを配合することが好ましい。非反応性シリコーンオイルとは、分子中にアルコキシ基やシラノール基等の反応性基を有しないシリコーンオイルであり、ジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイル等が例示され、分子末端はトリメチルシリル基等のトリオルガノシリル基で封鎖されている。好ましくは両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンオイルである。この成分を配合することにより、作業性、糸切れ性等の特性が向上すると共に、硬化後のゴム物性を調整することができる。
【0041】
この粘度(25℃)は5〜50,000mPa・s、特に50〜5,000mPa・sであることが好ましい。配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部、特に0.2〜80質量部であることが好ましい。
【0042】
また、(G)成分は、その一部または全量を前述したように(F)成分とのマスターバッチ化剤としても好適に使用することができる。
マスターバッチ化する場合、(G)成分と(F)成分の配合割合は、(G)成分100質量部に対して、(F)成分が10〜300質量部、特に50〜200質量部とすることが好ましい。マスターバッチ化は、(G)成分と(F)成分を均一に混合すればよいが、三本ロール等の高せん断の付与できる装置を用いることが好ましい。
(F)成分を、マスターバッチ化して使用することにより、組成物中における(F)成分の相溶性が向上し、耐変色性等の特性がより優れたものとなる。
【0043】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、(A)〜(F)成分のほかに必要に応じて、(G)成分のみならず、その他種々の化合物を添加することが可能である。例えば、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維などの繊維質充填剤;ベンガラ、酸化セリウムなどの耐熱性向上剤;耐寒性向上剤;脱水剤;防錆剤;顔料;並びに、トリオルガノシロキシ単位及びSiO2単位よりなる網状ポリシロキサンなどの補強剤、ヘキサメチルジシラザン、グリセリン、脂肪酸などの有機多価アルコール、脂肪酸エステルなどの保存安定化剤等が挙げられる。これらは、適宜1種単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の調製及びその硬化
本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、(A)〜(F)成分及び必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態(乾燥雰囲気中)で均一に混合することにより、一液型の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物として得られる。
得られた組成物は密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に晒すことによりゴム状弾性体に硬化する、いわゆる一包装型室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物(シーリング材)として用いることができる。
また、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、近年浴槽用途として増えているアクリル樹脂等の難接着樹脂に対しても十分な接着性を有するため、水廻り用等の防水シールとしても用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度は25℃での回転粘度計による測定法の測定値を示したものである。
[マスターバッチ1の調製]
チアベンダゾール100質量部に、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖された粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ1を得た。
【0046】
[マスターバッチ2の調製]
メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾール100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ2を得た。
【0047】
[マスターバッチ3の調製]
デブコナゾール100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ3を得た。
【0048】
[マスターバッチ4の調製]
ヨードプロピニルブチルカーバメート100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ4を得た。
【0049】
[室温硬化型組成物1の調製]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ15質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン5質量部、ビニルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン1.5質量部を加えて、減圧下で完全に混合し、更にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、ジオクチル錫ジオクテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【0050】
[室温硬化型組成物2の調製]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ10質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリメトキシシラン8質量部、減圧下で完全に混合し、更に3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.38質量部、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【0051】
[室温硬化性組成物の調整3]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部、25℃における粘度が100mPa・sの末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン40質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ15質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン5質量部、ビニルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン1.5質量部を加えて、減圧下で完全に混合し、更にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、ジオクチル錫ジオクテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【0052】
[室温硬化性組成物の調整4]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部、25℃における粘度が100mPa・sの末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン50質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ19質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリメトキシシラン8質量部、減圧下で完全に混合し、更に3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.38質量部、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【0053】
[実施例1]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.0質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0054】
[実施例2]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.0質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0055】
[実施例3]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.25質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0056】
[実施例4]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.25質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0057】
[実施例5]
上記に記述した組成物3を169.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.75質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0058】
[実施例6]
上記に記述した組成物4を185.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.75質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、組成物8を得た。
【0059】
[比較例1]
上記に記述した組成物1のみで評価を行った。
【0060】
[比較例2]
上記に記述した組成物2のみで評価を行った。
【0061】
[比較例3]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.1質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.05質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0062】
[比較例4]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.1質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.05質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0063】
[比較例5]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ2を1.0質量部(A成分100質量部に対し、メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0064】
[比較例6]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ3を1.0質量部(A成分100質量部に対し、デブコナゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0065】
[比較例7]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ4を1.0質量部(A成分100質量部に対し、ヨードプロピニルブチルカーバメート0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0066】
尚、上記実施例及び比較例における試験方法は、下記の要領にて行った。
試験方法
<一般特性確認試験>各項目測定方法:2mm厚のシートを成型し、23℃・50%RH×7日間養生後、下記の要領で物性を評価した。
指触乾燥時間:JIS A 5758に規定する方法に準じて測定した。
硬さ、切断時伸び、引張強さ:JIS K 6249に規定する方法に準じて測定した。
【0067】
<アクリル接着確認試験>25×100×2mm厚の樹脂被着体に、上記で作製した実施例、比較例の組成物を塗布し、室温下に放置してゴム弾性体としたのち、得られた硬化物を引っ張ることで被着体の接着性を目視にて確認した。
評価:○:良好、△:一部剥離、×:不可
【0068】
<保存安定性確認試験>各サンプルを密封下で70℃,7日間乾燥機で加熱劣化後、上記一般特性確認試験と同じ要領で測定した。
【0069】
<変色試験>30×30×2mm厚のシートを作成し、各条件下に曝された時の初期との色差(ΔE)を測定した。
【0070】
<かび抵抗性確認試験>30×30×2mm厚のシートを作成し、JIS Z 2911に準じて防かび性能を確認した。その際、用いた菌種、培養条件は下記の通りである。
(菌種)
Aspergillus niger NBRC 105649
Penicillium pinophilum IAM 7013(Penicillium funiculosum)
Paecilomyces variotii IAM 5001
Chaetomium globosum NBRC 6347
【0071】
(懸濁液の調製)
各試験株菌をオートミル・麦芽エキス寒天を用いて25℃±1℃で培養後、充分に生育した胞子(分生子)をスルホこはく酸ジオクチルナトリウムを50mg/l添加した無機塩溶液*に浮遊させ、各単一胞子懸濁液とした。各単一胞子懸濁液を等量ずつ取り混合し、混合胞子懸濁液とした。
* 無機塩溶液の組成
硝酸ナトリウム 2.0g
リン酸二水素カリウム 0.7g
リン酸水素二カリウム 0.3g
塩化カリウム 0.5g
硫酸マグネシウム七水和物 0.5g
硫酸鉄(II)七水和物 0.01g
精製水 1000ml
pH 6.0〜6.5
【0072】
(試料用平板の調製)
寒天を20g/l添加した無機塩溶液をシャーレ(直径90mm)に分注し固化させた。
(試料の調製)
約30×30×2mmの大きさに切断した検体をエタノール(70vol%)に1分間浸した後、風乾し、試料とした。
【0073】
(試験操作)
試料を試験用平板の培養面の中央に接着するように置き、混合胞子懸濁液0.1mlを培養面と試料に均等にまきかけ、蓋をして温度29℃±1℃、相対湿度90%以上で培養した。培養1,2,3および4週間後に菌糸の発育状態を下記に従い観察した。
結果0;肉眼および顕微鏡下でかびの発育は認められない。
結果1;肉眼ではかびの発育が認められないが、顕微鏡下では確認する。
結果2;菌糸の発育が肉眼で認められるが、発育部分の面積は試料の全面積の25%を越えない。
結果3;菌糸の発育が肉眼で認められる。発育部分の面積は試料の全面積の25%を越える。
【0074】
上記実施例及び比較例における試験結果について、表1にまとめて掲げた。
【表1】
【0075】
表1に示されるように、実施例1〜6は、接着性、保存安定性も良好で、防かび性に優れており、また、法規制に該当しないものであることから、人体及び環境に優しいものであるといえる。
一方、比較例1〜4は、かびの発生を抑えることができず、比較例5〜6は、接着性が悪い上に、人体及び環境にも悪影響を及ぼすものであり、比較例7は、接着性、保存安定性が悪く、かびの発生を抑えることもできなかった。
【0076】
以上のことから、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物であれば、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対しても良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものであることが実証された。
【0077】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化して弾性のあるシリコーンゴムとなる室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物に関し、特には、水廻り用等に使用され、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に接着性、特にアクリル樹脂等の難接着樹脂に対し良好に接着性を有し、かつ人体及び環境にやさしい室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物からなるシーリング材、防水シールに関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は、施工後の環境(特に高温度、高湿度、温湿度差が大きい条件下に曝されたとき)や、施工後のシーリング材表面に結露や汚れなどが付着することによってシーリング材表面にかびなどの微生物が発生することが知られている。この結果として施工面の意匠性が低下し不快感を与えるほか、シーリング材の劣化が促進されることによりシーリング特性を低下させてしまうという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、シリコーンシーリング材に防かび剤を添加することが知られているが、従来の防かび剤では必ずしも有効な防かび性能が得られなかったり、シーリング材に添加されている硬化剤や触媒と反応する事による変色や着色、太陽光に含まれる紫外線等の照射による着色や変色が起きたり、シーリング材の保存安定性の低下、さらには得られる硬化物の物性・接着性を低下させてしまうことが問題であった。
【0004】
さらに、近年において、特にEU諸国、オーストラリアでは法規制が厳しくなっており、これらの国へ輸出する場合には、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている防かび剤であるメトキシカルボニルアミノベンツイミダゾールは0.1%以上添加すると有毒マークの表示義務があり、特許文献3に記載されているテブコナゾールは有害マークを表示する義務があり、一般消費者の不安を与えるケースが生じている。
【0005】
また、上記に示したような防かび剤を使用した場合、難接着樹脂、特に近年浴槽用途として増えているアクリル樹脂に対する接着性が不十分であるという問題もある。
一方、特許文献4には、オルガノポリシロキサンに重金属を含まない殺生物剤をマイクロカプセル化したものを添加した防汚塗料が記載されているが、具体的な組成については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−112803号公報
【特許文献2】特開平6−256755号公報
【特許文献3】特開2003−238301号公報
【特許文献4】特表2001−502732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【0009】
このような本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサンは、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものである。
【0010】
この場合、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物が、更に、(G)非反応性シリコーンオイルを含有するものであるとすることができる。
このように、室温硬化型オルガノポリシロキサンが、(G)成分として、非反応性シリコーンオイルを含有するものであれば、作業性、糸切れ性等の特性が向上すると共に、硬化後のゴム物性を調整することもできる。
【0011】
この場合、前記(C)成分のシラン化合物又はその部分加水分解物の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であるものとすることができる。
【0012】
このように、(C)成分の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であれば、より接着性が向上すると共に、硬化時に発生する物質に起因する不快な臭いを抑えることのできる組成物とできる。
【0013】
また、本発明は、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物からなるシーリング材を提供する。
このように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、シーリング材として好適に用いることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる防水シールを提供する。
このように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、水廻り用等の防水シールとしても好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものである。また、シーリング材や水廻りの防水シール材としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、環境に対する意識の高まりから、法規制が厳しくなっており、優れた防かび性、耐変色性、保存安定性、及び接着性を有しつつも、人体や環境に優しいオルガノポリシロキサン組成物が求められていた。
【0017】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、有害マークや有毒マークの表示義務のないチアベンダゾールを特定の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することで、従来の防かび性オルガノポリシロキサン組成物と同等以上の防かび性能を有し、かつ変色が少なく、難接着樹脂に対する接着性にも優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びにそれを用いてなるシーリング材及び防水シール部材を見出し、本発明をなすに至った。
【0018】
即ち、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサンは、少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする。
【0019】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<(A)成分>
本発明に使用される(A)成分は、本組成物のベースポリマーとなるものであり、下記一般式(1)及び(2)
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むものである。
【0020】
(A)成分の好ましい粘度は、25℃において100〜500,000mPa・s、より好ましくは1,000〜300,000mPa・s、特に好ましくは、5,000〜100,000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上であれば、硬化物に優れた物理的性質、特に柔軟性・耐衝撃性を与えることができ、500,000mPa・s以下であれば、組成物の粘度が高くなり過ぎることもなく、作業性が低下するおそれもないためである。なお、この粘度は回転粘度計による測定値である。
【0021】
上記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、メチル基が好ましい。R1は炭素原子数1〜10、特に1〜6の置換又は非置換の一価の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基及びこれらの基の水素結合が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。上記一般式(2)中の複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0022】
また、Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、アルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、特にエチレン基が好ましい。
【0023】
また、上記一般式(1)及び/又は(2)は、上記一般式(2)で示されるオルガノポリシロキサンの製造工程で副生成物として生成し得る、下記(3)、(4)、(6)で表されるオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【化4】
(式中、R、R1、X、Y、Nは上記の通りである。Wは炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、アルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、その中でもビニル基が最も好ましい。)
【化5】
(式中、R、R1、X、Y、M、Nは上記の通りである。また、R2は同一又は異種の、下記一般式(5)で示される加水分解性基を含む分岐鎖であり、Zは1以上の整数である。
【化6】
(式中、R、R1、Yは上記の通りである。Pは0又は1の整数である。))
【化7】
(式中、R、R1、R2、W、X、Y、Z、Nは上記の通りである。)
【0024】
この場合、上記一般式(3)、(4)、(6)で表されるオルガノポリシロキサンの含有量は、(1)及び/又は(2)成分の30質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分の無機充填材は、本組成物にゴム物性を付与するための補強性、非補強性充填剤を指す。本充填剤としては、無処理の煙霧質シリカ、沈降性シリカ等のシリカおよびこれらの表面をアルコキシシラン、オルガノハロシラン、シラザン、低分子シロキサン等で疎水化処理したシリカ、無処理の炭酸カルシウムおよびこの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、樹脂酸、樹脂酸誘導体等で処理した炭酸カルシウム、カーボン粉、タルク、ベントナイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミ、水酸化アルミニウム等が例示される。これらの中で、好ましくは、含水量の少ないもの、シリカ、炭酸カルシウムであり、より好ましくは疎水化処理したシリカ、表面処理した炭酸カルシウムであり、特に好ましくは、疎水化処理したシリカである。
【0026】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜300質量部の範囲、好ましくは、7〜150質量部の範囲で使用される。5質量部未満では十分なゴム強度が得られないことがあり、300質量部を超えるとカートリッジからの吐出性等の作業性が悪化、保存安定性が低下、得られるゴム物性の機械特性の低下等が生じる。
【0027】
<(C)成分>
本発明に使用される(C)成分の下記一般式(7)
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一、又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の1価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物は、本発明の組成物において架橋剤として作用するものである。
【0028】
上記一般式(7)のR3は同一、又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基及びこれらの基の水素結合が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基が特に好ましい。
【0029】
また、Kは加水分解性基であり、その具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシム基などのアルケニルオキシム基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基などのケトオキシム基などが例示される。また、アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロイロキシ基、ベンゾイルオキシム基などのアシロキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアミノ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基などのアミノキシ基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などのアミド基などで例示される加水分解性基等が例示され、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のアルコキシ基、ケトオキシム基である。nは2〜4の整数である。
【0030】
この(C)成分の架橋剤はシラン化合物、この部分加水分解物およびこれらの混合物でもよい。これらは1種類に限定されず、その2種以上を使用してもよい。
【0031】
(C)成分の配合量は、1〜30質量部であり、より好ましくは3〜15質量部である。(C)成分が1質量部未満ではこの組成物の製造時あるいは保存中にこれがゲル化を起したり、この組成物から得られる弾性体が目的とする物性を示さなくなり、逆に30質量部より多くするとこの組成物の硬化時における収縮率が大きくなり、この硬化物の弾性も低くなる。
【0032】
<(D)成分>
(D)成分の硬化触媒は、本発明の組成物における(A)成分のベースポリマーと(C)成分の架橋剤との縮合反応の触媒作用を行なうものである。具体的にはオクタン酸鉄、ナフテン酸鉄、オクタン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクタン酸錫、ナフテン酸錫、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛のような有機酸金属塩、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジオクトエ−トなどのようなアルキル錫エステル化合物、ハロゲン化錫化合物、錫オルソエステル化合物、テトラブチルチタネ−ト、テトラブチルジルコネ−トのような金属アルコレ−ト、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナ−ト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテ−ト)チタンなどのチタンキレ−ト、ジエチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミンなどのアミン類などが例示される。これらの中で、有機スズ化合物と有機チタン化合物が好ましい。この(D)成分としての硬化触媒の使用は1種類に限定されず、これらは2種以上を使用してもよい。
【0033】
(D)成分の配合量は0.01〜15質量部であり、好ましくは、0.05〜10質量部である。0.01質量部未満ではこの組成物を空気中に曝したときにタックフリ−の皮膜形成に長時間が必要となるし、その内部硬化性もわるくなり、また15質量部より多くすると皮膜形成時間が数秒間と極めて短くなって作業性が劣るようになるほか、保存安定性が低下する。
【0034】
<(E)成分>
(E)成分のシランカップリング剤は、本発明の組成物において接着性を付与させるための必須成分である。シランカップリング剤としては公知のものが好適に使用され、(メタ)アクリルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0035】
上記(E)成分の量は、(A)成分100質量部当たり、0.05〜15質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。(A)成分100質量部に対し0.05質量部未満では、硬化物が十分な接着性能を示さないものとなり、15質量部を超えて配合すると、硬化後のゴム強度が低下して目的のゴム弾性体が得難くなり、経済的にも不利になる。
【0036】
<(F)成分>
(F)成分のチアベンダゾールは、本組成物に良好な防かび性能を与えると共に、(E)成分同様接着性を向上させる成分である。
ここで、チアベンダゾールとは下記一般式(8)の構造で示されるものである。
【化8】
【0037】
このチアベンダゾールを防かび剤として使用した組成物は、EU諸国およびオーストラリアに輸出する際も毒性表示義務が無く、また更には日本におけるPRTR法においても非該当となっている人体にやさしい物質であり、かつ防かび性能も従来のものと同等以上である。
【0038】
この(F)成分のチアベンダゾールは、それ単体で添加しても良好な防かび性能を得ることができるが、より防かび性能の安定化を目的とし、組成物内の分散性を高めるために、(A)成分のオルガノポリシロキサンや後述する(G)成分の非反応性シリコーンオイルと予め分散混合させてなるマスターバッチの形式で組成物中に添加させることにより、防かび性能をより安定化させ、さらにより高い耐変色性の付与が可能となる。
この場合、(F)成分と(G)成分をマスターバッチ化したものを用いることが特に好ましい。
【0039】
(F)成分の配合量は0.1〜5質量部であり、好ましくは、0.2〜2質量部である。0.1質量部未満では十分な防かび性能が得られず経時での意匠性、ゴム物性の劣化が確認されてしまい、また5質量部より多くすると硬化物のゴム強度が低下するほか、経済的にも不利となる。
【0040】
<(G)成分>
本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物には、(G)成分の非反応性シリコーンオイルを配合することが好ましい。非反応性シリコーンオイルとは、分子中にアルコキシ基やシラノール基等の反応性基を有しないシリコーンオイルであり、ジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイル等が例示され、分子末端はトリメチルシリル基等のトリオルガノシリル基で封鎖されている。好ましくは両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンオイルである。この成分を配合することにより、作業性、糸切れ性等の特性が向上すると共に、硬化後のゴム物性を調整することができる。
【0041】
この粘度(25℃)は5〜50,000mPa・s、特に50〜5,000mPa・sであることが好ましい。配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部、特に0.2〜80質量部であることが好ましい。
【0042】
また、(G)成分は、その一部または全量を前述したように(F)成分とのマスターバッチ化剤としても好適に使用することができる。
マスターバッチ化する場合、(G)成分と(F)成分の配合割合は、(G)成分100質量部に対して、(F)成分が10〜300質量部、特に50〜200質量部とすることが好ましい。マスターバッチ化は、(G)成分と(F)成分を均一に混合すればよいが、三本ロール等の高せん断の付与できる装置を用いることが好ましい。
(F)成分を、マスターバッチ化して使用することにより、組成物中における(F)成分の相溶性が向上し、耐変色性等の特性がより優れたものとなる。
【0043】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、(A)〜(F)成分のほかに必要に応じて、(G)成分のみならず、その他種々の化合物を添加することが可能である。例えば、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維などの繊維質充填剤;ベンガラ、酸化セリウムなどの耐熱性向上剤;耐寒性向上剤;脱水剤;防錆剤;顔料;並びに、トリオルガノシロキシ単位及びSiO2単位よりなる網状ポリシロキサンなどの補強剤、ヘキサメチルジシラザン、グリセリン、脂肪酸などの有機多価アルコール、脂肪酸エステルなどの保存安定化剤等が挙げられる。これらは、適宜1種単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の調製及びその硬化
本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、(A)〜(F)成分及び必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態(乾燥雰囲気中)で均一に混合することにより、一液型の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物として得られる。
得られた組成物は密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に晒すことによりゴム状弾性体に硬化する、いわゆる一包装型室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物(シーリング材)として用いることができる。
また、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、近年浴槽用途として増えているアクリル樹脂等の難接着樹脂に対しても十分な接着性を有するため、水廻り用等の防水シールとしても用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度は25℃での回転粘度計による測定法の測定値を示したものである。
[マスターバッチ1の調製]
チアベンダゾール100質量部に、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖された粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ1を得た。
【0046】
[マスターバッチ2の調製]
メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾール100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ2を得た。
【0047】
[マスターバッチ3の調製]
デブコナゾール100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ3を得た。
【0048】
[マスターバッチ4の調製]
ヨードプロピニルブチルカーバメート100質量部に、分子鎖両末端がメチル基で封鎖した粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部を添加し、均一分散させることによりマスターバッチ4を得た。
【0049】
[室温硬化型組成物1の調製]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ15質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン5質量部、ビニルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン1.5質量部を加えて、減圧下で完全に混合し、更にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、ジオクチル錫ジオクテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【0050】
[室温硬化型組成物2の調製]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ10質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリメトキシシラン8質量部、減圧下で完全に混合し、更に3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.38質量部、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【0051】
[室温硬化性組成物の調整3]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部、25℃における粘度が100mPa・sの末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン40質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ15質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン5質量部、ビニルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン1.5質量部を加えて、減圧下で完全に混合し、更にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5質量部、ジオクチル錫ジオクテート0.1質量部を加え、減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【0052】
[室温硬化性組成物の調整4]
25℃における粘度が50,000mPa・sの末端がメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部、25℃における粘度が100mPa・sの末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン50質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ19質量部、酸化チタン7質量部を加え、混合機で混合した後、メチルトリメトキシシラン8質量部、減圧下で完全に混合し、更に3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.38質量部、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【0053】
[実施例1]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.0質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0054】
[実施例2]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.0質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0055】
[実施例3]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.25質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0056】
[実施例4]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.25質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0057】
[実施例5]
上記に記述した組成物3を169.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.75質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0058】
[実施例6]
上記に記述した組成物4を185.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を1.5質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.75質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、組成物8を得た。
【0059】
[比較例1]
上記に記述した組成物1のみで評価を行った。
【0060】
[比較例2]
上記に記述した組成物2のみで評価を行った。
【0061】
[比較例3]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.1質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.05質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0062】
[比較例4]
上記に記述した組成物2を126.7質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ1を0.1質量部(A成分100質量部に対し、F成分のチアベンダゾール0.05質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0063】
[比較例5]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ2を1.0質量部(A成分100質量部に対し、メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0064】
[比較例6]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ3を1.0質量部(A成分100質量部に対し、デブコナゾール0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0065】
[比較例7]
上記に記述した組成物1を129.1質量部に対し、上記に記述したマスターバッチ4を1.0質量部(A成分100質量部に対し、ヨードプロピニルブチルカーバメート0.5質量部)を加え、減圧下で完全に混合し、得られた組成物で評価を行った。
【0066】
尚、上記実施例及び比較例における試験方法は、下記の要領にて行った。
試験方法
<一般特性確認試験>各項目測定方法:2mm厚のシートを成型し、23℃・50%RH×7日間養生後、下記の要領で物性を評価した。
指触乾燥時間:JIS A 5758に規定する方法に準じて測定した。
硬さ、切断時伸び、引張強さ:JIS K 6249に規定する方法に準じて測定した。
【0067】
<アクリル接着確認試験>25×100×2mm厚の樹脂被着体に、上記で作製した実施例、比較例の組成物を塗布し、室温下に放置してゴム弾性体としたのち、得られた硬化物を引っ張ることで被着体の接着性を目視にて確認した。
評価:○:良好、△:一部剥離、×:不可
【0068】
<保存安定性確認試験>各サンプルを密封下で70℃,7日間乾燥機で加熱劣化後、上記一般特性確認試験と同じ要領で測定した。
【0069】
<変色試験>30×30×2mm厚のシートを作成し、各条件下に曝された時の初期との色差(ΔE)を測定した。
【0070】
<かび抵抗性確認試験>30×30×2mm厚のシートを作成し、JIS Z 2911に準じて防かび性能を確認した。その際、用いた菌種、培養条件は下記の通りである。
(菌種)
Aspergillus niger NBRC 105649
Penicillium pinophilum IAM 7013(Penicillium funiculosum)
Paecilomyces variotii IAM 5001
Chaetomium globosum NBRC 6347
【0071】
(懸濁液の調製)
各試験株菌をオートミル・麦芽エキス寒天を用いて25℃±1℃で培養後、充分に生育した胞子(分生子)をスルホこはく酸ジオクチルナトリウムを50mg/l添加した無機塩溶液*に浮遊させ、各単一胞子懸濁液とした。各単一胞子懸濁液を等量ずつ取り混合し、混合胞子懸濁液とした。
* 無機塩溶液の組成
硝酸ナトリウム 2.0g
リン酸二水素カリウム 0.7g
リン酸水素二カリウム 0.3g
塩化カリウム 0.5g
硫酸マグネシウム七水和物 0.5g
硫酸鉄(II)七水和物 0.01g
精製水 1000ml
pH 6.0〜6.5
【0072】
(試料用平板の調製)
寒天を20g/l添加した無機塩溶液をシャーレ(直径90mm)に分注し固化させた。
(試料の調製)
約30×30×2mmの大きさに切断した検体をエタノール(70vol%)に1分間浸した後、風乾し、試料とした。
【0073】
(試験操作)
試料を試験用平板の培養面の中央に接着するように置き、混合胞子懸濁液0.1mlを培養面と試料に均等にまきかけ、蓋をして温度29℃±1℃、相対湿度90%以上で培養した。培養1,2,3および4週間後に菌糸の発育状態を下記に従い観察した。
結果0;肉眼および顕微鏡下でかびの発育は認められない。
結果1;肉眼ではかびの発育が認められないが、顕微鏡下では確認する。
結果2;菌糸の発育が肉眼で認められるが、発育部分の面積は試料の全面積の25%を越えない。
結果3;菌糸の発育が肉眼で認められる。発育部分の面積は試料の全面積の25%を越える。
【0074】
上記実施例及び比較例における試験結果について、表1にまとめて掲げた。
【表1】
【0075】
表1に示されるように、実施例1〜6は、接着性、保存安定性も良好で、防かび性に優れており、また、法規制に該当しないものであることから、人体及び環境に優しいものであるといえる。
一方、比較例1〜4は、かびの発生を抑えることができず、比較例5〜6は、接着性が悪い上に、人体及び環境にも悪影響を及ぼすものであり、比較例7は、接着性、保存安定性が悪く、かびの発生を抑えることもできなかった。
【0076】
以上のことから、本発明の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物であれば、防かび性、耐変色性及び保存安定性に優れると共に、難接着樹脂に対しても良好な接着性を有し、かつ人体及び環境に優しいものであることが実証された。
【0077】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
更に、(G)非反応性シリコーンオイルを含有することを特徴とする請求項1に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(C)成分のシラン化合物又はその部分加水分解物の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物からなるシーリング材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる防水シール。
【請求項1】
少なくとも、
(A)下記一般式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも一種以上を含むベースポリマー 100質量部、
HO(SiR12O)XH (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは10以上の整数である。)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であり、R1、Xは上記の通りである。Yはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、M、Nは0又は1の整数である。)
(B)無機充填材 5〜300質量部、
(C)下記一般式(7)で示されるシラン化合物又はその部分加水分解物
1〜30質量部、
R34−nSiKn (7)
(式中、R3は同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換の一価炭化水素基である。また、Kは加水分解性基であり、nは2〜4の整数である。)
(D)硬化触媒 0.01〜15質量部、
(E)シランカップリング剤 0.05〜15質量部、
(F)チアベンダゾール 0.1〜5質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
更に、(G)非反応性シリコーンオイルを含有することを特徴とする請求項1に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(C)成分のシラン化合物又はその部分加水分解物の加水分解性基Kが、アルコキシ基又はケトオキシム基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物からなるシーリング材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる防水シール。
【公開番号】特開2011−116896(P2011−116896A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276872(P2009−276872)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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