説明

家屋の電源装置

【課題】蓄電池の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することで消費電力を契約電力以内に納める。
【解決手段】電流計16により商用電力の容量が所定電流を超えたことが検出された場合、蓄電池11の電力を放電して電気負荷6に供給することで、商用電力の供給をサービスブレーカ4の契約電流の範囲内に抑制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の電源装置に関し、電力会社から供給される商用電力と蓄電池からの電力を併用する電源装置に適用される。
【背景技術】
【0002】
住宅等の家屋には、電力会社からの商用電力が供給され、商用電力により家屋内の電気負荷(家電装置、照明装置等)の電力が賄われている。近年、太陽光発電や燃料電池等の家庭用の発電設備が実用化され、電力会社から供給される商用電力と家庭用の発電設備等からの電力を併用する電源装置が知られている。この電源装置では、家庭用の発電設備等からの電力を蓄電池に蓄え、例えば、商用電力の停電時のバックアップや昼間の電力源として蓄電池から電力を供給するようにしている。
【0003】
電力会社からの商用電力の供給契約は、容量(許容電流)に応じて料金が設定される契約とされている。このため、家屋には契約容量(契約許容電流)に応じたブレーカが設置され、家屋内の電気負荷が契約容量を超える場合には、安全のためにブレーカが遮断するようになっている。蓄電池を備えた電源装置において、電気負荷及び蓄電池の充電に供給される電力の容量(電流)を監視し、供給される電力が契約容量を超えないようにする技術が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来から提案されている技術は、電気負荷の消費電力及び蓄電池の充電量が契約許容電流を超えると判断された際に、蓄電池の充電量を抑制することで、商用電力が契約許容電流を超えないようにし、契約許容電流の範囲の商用電力を電気負荷に供給するようにしている。これにより、契約許容電流(契約容量)の範囲で商用電力を最大限有効に利用することが可能になる。
【0005】
従来から提案されている電源装置は、蓄電池への充電を抑制することで商用電力を契約許容容量の範囲に抑えている。しかし、蓄電池を備えた電源装置は、商用電力の停電時のバックアップや昼間の電力源として蓄電池を使用することが実用化されてきているのが現状であるため、商用電力を更に有効に利用する余地が残されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−141924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、蓄電池の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することができる家屋の電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の家屋の電源装置は、家屋の電気負荷に対し契約電流に応じた商用電力の供給を許可する供給許可手段と、前記供給許可手段に供給された前記商用電力の状態を検出する電力検出手段と、前記電気負荷に接続される蓄電池と、前記電力検出手段で検出された前記商用電力の状態が所定電流を超えた際に前記蓄電池の電力を放電して前記電気負荷に供給する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、電力検出手段により商用電力の容量が所定電流を超えたことが検出された場合、蓄電池の電力を放電して電気負荷に供給し、電気負荷への商用電力の供給を抑制し、供給許可手段で許容される範囲の商用電力で電気負荷の電力を賄う。このため、蓄電池の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することが可能になる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の家屋の電源装置は、請求項1に記載の家屋の電源装置において、前記蓄電池は、前記供給許可手段に供給された前記商用電力で充電される電池であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の本発明では、蓄電池は、契約電流に応じた商用電力により充電が行われ、契約電流の範囲の商用電力を最大限に利用することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の家屋の電源装置は、請求項1もしくは請求項2に記載の家屋の電源装置において、前記蓄電池は、電気動力の車両に電力を供給する蓄電池であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、電気動力の車両に電力を供給する蓄電池を家屋の電気負荷に接続して電力を供給することができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の家屋の電源装置は、請求項3に記載の家屋の電源装置において、前記蓄電池は、前記車両に搭載された蓄電池であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、車両に搭載された蓄電池を家屋の電気負荷に接続して電力を供給することができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の家屋の電源装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の家屋の電源装置において、前記制御手段は、前記蓄電池の電力を放電して前記電気負荷に供給する際に、使用する前記電気負荷の種類を選択する機能を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、蓄電池の電力を放電して電気負荷に供給する際に、電気負荷の種類を選択し、限られた電力で使用する電気負荷の機器をコントロールすることができる。この場合、電力検出手段で検出された電流値に応じて電気負荷の機器を選択したり、時間帯に基づいて電気負荷の機器を選択することができ、電気負荷の戸別の使用状況に応じて任意に機器を選択することができる。例えば、深夜温水器や乾燥機等の機器に対し、使用する電力の容量(電流)が小さい機器から優先して使用したり、温水を使用する時間帯、乾燥操作を必要とする時間帯で機器を選択することが可能である。
【0018】
また、請求項6に係る本発明の家屋の電源装置は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の家屋の電源装置において、前記蓄電池に充電される商用電力は、深夜電力であり、更に、前記蓄電池には、家屋用発電手段から得られる電力が蓄えられることを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、商用電力の深夜電力、及び、家屋用発電手段から得られる電力が蓄えられた蓄電池から電気負荷に電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の家屋の電源装置は、蓄電池の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る家屋の電源装置の全体構成図である。
【図2】制御フローチャートである。
【図3】消費電流の変化の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図3に基づいて本発明の家屋の電源装置を説明する。
【0023】
図1には本発明の一実施例に係る家屋の電源装置の全体システムを説明するための概略状況、図2には蓄電池の放電制御処理の流れ、図3には消費電力と契約電流の関係を説明する概念を示してある。
【0024】
図1に示すように、家屋1には電力会社からの商用電力が電線2を介して受電部3に供給され、受電部3に供給された電力は供給許可手段としてのサービスブレーカ4から切換え手段5を介して電気負荷(家電装置や照明装置等)6に供給される。サービスブレーカ4は電力会社との契約により容量(契約電流)が決められ、電気負荷6の消費電力(消費電流)が契約電流を超えると安全のためにサービスブレーカ4が遮断されて電力の供給が遮断される。
【0025】
一方、家屋1には戸別電源用として蓄電池11が備えられ、蓄電池11から切換え手段5を介して電気負荷(家電装置や照明装置等)6に電力の供給(放電)が可能になっている。また、サービスブレーカ4から切換え手段5を介して商用電力が蓄電池11に供給されて充電が可能になっている。蓄電池11には料金が安い、例えば、深夜電力が供給されて充電される。また、家屋1には家屋用発電手段としての太陽光発電装置12が備えられ、太陽光発電装置12で得られた電力が蓄電池11に供給されて充電される。
【0026】
家屋用発電手段としては、太陽光以外の自然エネルギーにより発電を行う設備や、家庭用燃料電池、家庭用マイクロタービン等の発電設備が適用される。
【0027】
一方、蓄電池11には電気動力の車両14が接続可能とされ、車両14に対して蓄電池11の電力が充電可能になっている。車両14は、電動モータにより駆動力を得る電気自動車であり、駐車時に蓄電池11の電力が車載蓄電池15に供給されて車載蓄電池15が充電される。車両としては、動力源としてエンジンと電動モータとを有するハイブリッド車両を用いることも可能である。
【0028】
尚、蓄電池11の電力により車両14の車載蓄電池15の充電を行う例を挙げて説明したが、車両14を接続した際に太陽光発電装置12で得られた電力及びサービスブレーカ4からの商用電力により車載蓄電池15の充電を行うことも可能である。そして、蓄電池11とは並列に、もしくは、蓄電池11の電力と合わせて電気負荷6に供給する構成にすることも可能である。
【0029】
更に、家屋1のサービスブレーカ4からの商用電力により車載蓄電池15の充電が可能な構成にし、車両14を家屋1に接続した際の車載蓄電池15を外部の蓄電池として運用することも可能である。この場合、蓄電池11を省略することができる。
【0030】
一方、サービスブレーカ4から切換え手段5に送られる商用電力の容量(電流)を検出する電力検出手段としての電流計16が備えられ、電気負荷6(蓄電池11)に供給される電力(電流)、即ち、電気負荷6の商用電力の消費電流(以下、電気負荷6の消費電流と記載する)が検出される。電流計16の検出情報は制御装置17に入力され、制御装置17は電流計16の検出情報に基づいて切換え手段5の電力の流れ方向を制御する。
【0031】
つまり、電流計16で検出される電流値が所定値(サービスブレーカ4の契約電流値に対して余裕を持った値)を超えた場合、制御装置17は、電気負荷6の消費電流がサービスブレーカ4の契約電流値に近付いたと判断する。そして、制御装置17からは、サービスブレーカ4からの商用電力を減らして蓄電池11からの電力を電気負荷6に供給(放電)するように切換え手段5に動作指令を送る。
【0032】
これにより、電気負荷6の消費電流がサービスブレーカ4の契約電流値に近付いた際に、電気負荷6への商用電力の供給が抑制され、蓄電池11からの電力が電気負荷6に供給されるので、電気負荷6の消費電力が増えても、サービスブレーカ4の契約電流の範囲の商用電力で電気負荷6の消費電流(消費電力)を賄うことができる。
【0033】
更に、蓄電池11からの電力により電気負荷6の消費電力が賄われる場合に、使用する電気負荷6の種類を選択する選択手段18が備えられている。選択手段18は、電気負荷6の戸別の使用状況に応じて、任意に使用する機器を選択する。
【0034】
例えば、電流計16で検出された電流値に応じて使用する機器を選択することができる。また、例えば、深夜温水器や乾燥機等の機器に対し、使用する電力の容量(電流)が小さい機器から優先して使用したり、温水を使用する時間帯、乾燥操作を必要とする時間帯で機器を選択することができる。
【0035】
上記構成の家屋の電源装置では、電力会社から供給される商用電力のうち、低料金の深夜電力等が蓄電池11に充電される。また、太陽光発電装置12で発電された電力が蓄電池11に充電される。蓄電池11に充電された電力は、家屋1の電気負荷6の昼間の電力源として供給されたり、家屋1が停電した際のバックアップの電力として供給される。また、車両14が接続されると、蓄電池11の電力が車載蓄電池15に充電され、車両14の動力エネルギーが蓄えられる。
【0036】
サービスブレーカ4から電気負荷6に供給される商用電力は電流計16で検出され、電流値が所定値(サービスブレーカ4の契約電流値に対して余裕を持った値)を超えた場合、制御装置17により、サービスブレーカ4からの商用電力を減らして蓄電池11からの電力を電気負荷6に供給(放電)するように切換え手段5が切換えられる。これにより、サービスブレーカ4の契約容量に拘わらず、蓄電池11の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することが可能になる。
【0037】
図2、図3に基づいて電気負荷6の消費電流が増加した際の処理を具体的に説明する。図に示した処理は、蓄電池11の充電・放電が実施されていない状態を前提に説明してある。
【0038】
例えば、電気負荷6の消費電流が増加した場合、蓄電池11が充電中であれば充電を抑制して対応し、蓄電池11の充電を終了した後に電気負荷6の消費電流が更に増加した時に以下の処理が実行される。
【0039】
処理がスタートすると、ステップS1で電気負荷6の消費電流Aとサービスブレーカ4の契約電流Bが比較される。即ち、消費電流Aに余裕分のαを加算した電流値が契約電流Bを超えるか否かが判断される。ステップS1で消費電流A+αが契約電流Bを越えないと判断された場合、商用電力の供給を継続しても、このままではサービスブレーカ4の契約電流Bを超える虞がないため、処理を終了する。
【0040】
ステップS1で消費電流Aに余裕分のαを加算した電流値が契約電流Bを超えると判断された場合、商用電力の供給を継続するとサービスブレーカ4の契約電流Bを超える虞があるため、ステップS2で蓄電池11からの放電制御を開始する。これにより、蓄電池11の電力が電気負荷6に供給される。
【0041】
つまり、図3(a)に示すように、消費電流A+α(1)と契約電流B(3)が比較され、消費電流A+α(1)が契約電流B(3)を超えた時には、蓄電池11の電力を電気負荷6に供給して消費電流Aを減少させ、商用電力の消費電流を消費電流aとする。消費電流Aが減少して消費電流aとなるため、消費電流a+α(2)が契約電流B(3)を下回る。
【0042】
図2のフローチャートに戻り、蓄電池11からの放電を開始した後、ステップS3で電気負荷6の消費電流Aに僅かな余裕分のβ(β<α)を加算した電流値が契約電流Bを超えるか否かが判断される。ステップS3で消費電流A+βが契約電流Bを越えないと判断された場合、消費電流Aが契約電流Bに達するまでには多少の余裕があるため、ステップS2の処理に移行して放電が継続される。
【0043】
ステップS3で消費電流Aに僅かな余裕分のβを加算した電流値が契約電流Bを超えると判断された場合、このままの商用電力の供給を継続するとサービスブレーカ4の契約電流Bを超える虞があるため、ステップS4で蓄電池11からの放電を増加する。これにより、蓄電池11の電力が電気負荷6に供給される。
【0044】
つまり、図3(b)に示すように、消費電流A+β(1)と契約電流B(3)が比較され、消費電流A+β(1)が契約電流B(3)を超えた時には、蓄電池11の充電を増加して消費電流Aを減少させ、商用電力の消費電流を消費電流aとする。消費電流Aが減少して消費電流aとなるため、消費電流a+β(2)が契約電流B(3)を下回る。
【0045】
ステップS4で蓄電池11からの放電を増加した後、ステップS1に移行して消費電流と契約電流Bとの比較を継続する。
【0046】
上述した実施例では、契約電流Bと電気負荷6の消費電流A+α(A+β)とを比較して蓄電池11による充電制御を実施するようにしたが、電気負荷6の消費電流の変化状態により蓄電池11による充電を実施することも可能である。例えば、一時的な増加の場合には蓄電池11による充電を実施せず、電気負荷6が増加している状態が継続した際に蓄電池11による充電を実施する等の制御を行うことも可能である。
【0047】
上述した家屋の電源装置は、電気負荷6の消費電流が増加してサービスブレーカ4の契約電流を超える虞がある時に、蓄電池11の電力を電気負荷6に供給して商用電力の供給を抑制することができる。このため、サービスブレーカ4の契約電流を変更することなく、蓄電池11の電力を最大限に生かして商用電力を有効に利用することが可能になる。即ち、既存のサービスブレーカ4の契約のままで、電気負荷6の電力を増加して使用することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電力会社から供給される商用電力と蓄電池からの電力を併用する電源装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 家屋
2 電線
3 受電部
4 サービスブレーカ
5 切換え手段
6 電気負荷
11 蓄電池
12 太陽光発電装置
14 車両
15 車載蓄電池
16 電流計
17 制御装置
18 選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の電気負荷に対し契約電流に応じた商用電力の供給を許可する供給許可手段と、
前記供給許可手段に供給された前記商用電力の状態を検出する電力検出手段と、
前記電気負荷に接続される蓄電池と、
前記電力検出手段で検出された前記商用電力の状態が所定電流を超えた際に前記蓄電池の電力を放電して前記電気負荷に供給する制御手段とを備えた
ことを特徴とする家屋の電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の家屋の電源装置において、
前記蓄電池は、前記供給許可手段に供給された前記商用電力で充電される電池である
ことを特徴とする家屋の電源装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の家屋の電源装置において、
前記蓄電池は、電気動力の車両に電力を供給する蓄電池である
ことを特徴とする家屋の電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の家屋の電源装置において、
前記蓄電池は、前記車両に搭載された蓄電池である
ことを特徴とする家屋の電源装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の家屋の電源装置において、
前記制御手段は、前記蓄電池の電力を放電して前記電気負荷に供給する際に、使用する前記電気負荷の種類を選択する機能を有している
ことを特徴とする家屋の電源装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の家屋の電源装置において、
前記蓄電池に充電される商用電力は、深夜電力であり、
更に、前記蓄電池には、家屋用発電手段から得られる電力が蓄えられる
ことを特徴とする家屋の電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−5332(P2012−5332A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140880(P2010−140880)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】