説明

家電製品

【課題】電源基板上の回路部品や電源基板に接続された電気配線が万が一発火したとしても延焼を防止でき、安全性を高めた家電製品を提供する。
【解決手段】炊飯器の本体1内に設けられた電気部品に必要な電圧を供給する回路部品が実装された電源基板5と、電源基板5が収納されたエンクロージャー6とを備え、エンクロージャー6の内面の全ての面に顔料と基材の配合割合が異なる二種類の第1の耐熱塗料と第2の耐熱塗料をそれぞれ塗布して二層にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線や電気部品の発火による延焼を防止するよう構成された家電製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の家電製品は、合成樹脂で構成された外郭体の上半体の内面に防燃材層が設けられ、その上半体に連結された底部プレート上に制御回路基板や温風ファン等の電気機器、電気配線等が設けられている。外郭体内の電気機器や電気配線から万が一発火した場合、外郭体の上半体に設けられた防燃材層により、発火による周囲への延焼が抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−147858号公報(第3―4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の家電製品では、合成樹脂製の外郭体の上半体の内面に水酸化アルミニウムを含む塗料を塗布して防燃材層を構成しているが、万が一電気機器や電気配線の底面側にトラッキング現象が発生し、電気機器や電気配線が底面方向に向けて発火した場合、外郭体及び外郭体から周囲の部材への延焼の可能性があった。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、電源基板上の回路部品や電源基板に接続された電気配線が万が一発火したとしても延焼を防止でき、安全性を高めた家電製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る家電製品は、電気部品に必要な電圧を供給する回路部品が実装された電源基板と、その電源基板が収納されたエンクロージャーとを備え、エンクロージャーの内面に顔料と基材の配合割合が異なる二種類の耐熱塗料をそれぞれ塗布して二層にしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、エンクロージャーの内面に顔料と基材の配合割合が異なる二種類の耐熱塗料をそれぞれ塗布して二層にしたので、万が一電源基板に実装された回路部品が発火したり、充電部に起因するトラッキング現象により電源基板が発火したとしても、エンクロージャーから周囲の部品への延焼を確実に防止でき、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る家電製品の一例である炊飯器の側方の一部を切断して示す側面図である。
【図2】実施の形態1に係る家電製品のエンクロージャーを拡大して示す縦断面図である。
【図3】実施の形態1におけるエンクロージャーの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態2におけるエンクロージャーの構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る家電製品の一例である炊飯器の側方の一部を切断して示す側面図、図2は実施の形態1に係る家電製品のエンクロージャーを拡大して示す縦断面図、図3は実施の形態1におけるエンクロージャーの外観を示す斜視図である。
【0010】
図1において、家電製品の一例である炊飯器は、内釜が着脱自在に収納される本体1と、本体1の上部開口を開閉する蓋体2とで構成されている。本体1の蓋体2の開閉側の面(前面上部)には、炊飯に必要な各種のキースイッチ、液晶表示器やLED等を有する操作表示部3が設けられている。本体1内には、操作表示部3に対向して設置された操作表示基板4や、電源基板5が収納されたエンクロージャー6、内釜を誘導加熱する加熱コイル等が設けられている。
【0011】
電源基板5には、商用電源の交流電圧を直流に変換して平滑する整流回路及び平滑コンデンサ、平滑コンデンサにより平滑された直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路、商用電源の交流電圧から制御電圧を生成する定電圧回路等を構成する各種の部品が実装されている。
【0012】
前述したエンクロージャー6は、本体1内の底部7に固定され、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の熱可塑性樹脂からなる難燃材料で構成されている。その材料の難燃グレードとしては、UL94_V0以上が望ましい。
【0013】
エンクロージャー6は、例えば図3に示すように、外形が直方体状に形成され、本体1の前面側に位置するカバー60と、そのカバー60により前面開口が覆われた箱体61とで構成されている。箱体61の奧に位置する後面には、図2に示すように、その面と一体に成型された複数のボス62が取り付けられている。複数のボス62には、それぞれねじ穴が設けられている。前述した電源基板5は、ボス62のねじ穴にねじ込まれる止めネジ70によって箱体61の後面側に固定されている。
【0014】
エンクロージャー6の内面の全ての面には、顔料と基材の配合割合が異なる二種類の第1の耐熱塗料63と第2の耐熱塗料64とが重なるように塗布されている。耐熱塗料の顔料の一例として、珪砂(SiO2 )、アルミナ(Al23 )等の無機系顔料が用いられている。基材としては、水性エマルションが使用されている。
【0015】
ここで、エンクロージャー6の組み立てについて説明する。
先ず、エンクロージャー6の箱体61の後面、両側面、上面及び下面に第1の耐熱塗料63を塗布する。第1の耐熱塗料63が乾燥したら第1の耐熱塗料63の上に第2の耐熱塗料64を塗布する。その後、エンクロージャー6のカバー60の内面に第1の耐熱塗料63を塗布し、第1の耐熱塗料63が乾燥したらその上に第2の耐熱塗料64を塗布する。塗布した二種類の耐熱塗料の厚みは、厚いほど耐熱の効果が大きいが、費用対効果を勘案すると、それぞれ0.5mm〜2.0mmが望ましい。第2の耐熱塗料64が乾燥した後は、前述したように電源基板5を止めネジ70によってボス62に固定する。そして、箱体61の前面開口にカバー60を嵌合させて固定する。
【0016】
耐熱塗料の乾燥速度は周囲温度が高いほど促進される。ただし、エンクロージャー6は、樹脂製であるため、その材料の耐熱温度以内でなるべく高い温度で乾燥させて、乾燥時間の短縮を図るようにすることが望ましい。一例として、エンクロージャー6がポリプロピレンの場合、材料の軟化温度が100℃程度であるため、70〜80℃で乾燥させると効率的である。
【0017】
外部から電源基板5への接続や、電源基板5から加熱コイルへの接続、電源基板5と操作表示基板4との接続は、コネクタ71とリード線72を介して行われる。リード線72は、図3に示すように、例えばエンクロージャー6のカバー60から見て箱体61のカバー60との接合側の右側面に設けられた引出穴79を通して外部に引き出される。リード線72の引出穴73は、リード線72を束ねた大きさよりも少し大きい程度の穴である。リード線72と引出穴73との隙間をなるべく小さくし、エンクロージャー6内の空間の気密性が保たれるように空気の出入りが遮断されるように密閉する。
【0018】
以上のように実施の形態1においては、エンクロージャー6内の空間の気密性が保たれており、空気の出入りが遮断されている。そのため、万が一電源基板5に実装された回路部品が発火したり、電源基板5の電源パターンの異極間でトラッキング現象が生じて電源基板5が発火したとしても酸欠状態となり、電源基板5や回路部品の燃焼を抑制できる。
【0019】
また、エンクロージャー6の内面の全ての面には、顔料と基材の配合割合が異なる二種類の第1の耐熱塗料63と第2の耐熱塗料64とが施されているので、発火がどの方向に発生しても、エンクロージャー6から周囲の部品への延焼を確実に防止でき、安全性を高めることができる。
【0020】
実施の形態2.
図4は実施の形態2におけるエンクロージャーの構成を示す部分断面図である。なお、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付している。
実施の形態2においては.例えば基材に対し顔料の配合割合を50〜70%とし、残りを基材とした第1の耐熱塗料63と、例えば基材に対し顔料の配合割合を80%以上とし、残りを基材とした第2の耐熱塗料64とを用いている。第1の耐熱塗料63は、顔料の配合割合が少ないので、耐熱性は低下するものの断熱性の高い塗料となっている。また、第2の耐熱塗料64は、顔料の配合割合が多いので、耐熱性の高い塗料となっている。
【0021】
前述の第1の耐熱塗料63と第2の耐熱塗料64を、図4に示すように、エンクロージャー6の内面の全ての面(箱体61とカバー60の内側面)に塗布することで、断熱性と耐熱性を有するエンクロージャー6が構成される。そのエンクロージャー6は、万が一電源基板5から出火したとしても、第2の耐熱塗料64により高熱に耐え、かつ第1の耐熱塗料63により周囲への放熱が抑制される。
【0022】
このように、エンクロージャー6の内側面に断熱と耐熱という特性の異なる二種類の耐熱塗料を順に塗布して二層にしているので、発火に対する耐延焼性を大幅に向上させ、より安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の活用例として、炊飯器を挙げて説明したが、空気清浄機、除湿機、掃除機や空気調和機等の家電製品の電源基板のエンクロージャーへの適用が挙げられる。
【符号の説明】
【0024】
1 本体、2 蓋体、3 操作表示部、4 操作表示基板、5 電源基板、6 エンクロージャー、7 底部、60 カバー、61 箱体、62 ボス、63 第1の耐熱塗料、64 第2の耐熱塗料、70 止めネジ、71 コネクター、72 リード線、73 引出穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品に必要な電圧を供給する回路部品が実装された電源基板と、
前記電源基板が収納されたエンクロージャーとを備え、
前記エンクロージャーの内面に顔料と基材の配合割合が異なる二種類の耐熱塗料をそれぞれ塗布して二層にしたことを特徴とする家電製品。
【請求項2】
前記二種類の耐熱塗料は、前記基材に対し前記顔料を少なく配合した断熱性を有する第1の耐熱塗料と、前記基材に対し前記顔料を多く配合した耐熱性を有する第2の耐熱塗料であり、
前記エンクロージャーの内面に前記第1の耐熱塗料を塗布し、前記第1の耐熱塗料の上に前記第2の耐熱塗料を塗布したことを特徴とする請求項1記載の家電製品。
【請求項3】
前記二種類の耐熱塗料に、無機系顔料と水性エマルション基材が用いられていることを特徴とする請求項1又は2記載の家電製品。
【請求項4】
前記エンクロージャーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン及びABSの何れかの熱可塑性樹脂が用いられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の家電製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−41735(P2011−41735A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192881(P2009−192881)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】