説明

容器における不純物の減少及び/又は容器の滅菌を行う方法並びに装置

本発明は特に、表面におけるエンドトキシンを減少させる方法であって、蒸気処理とプラズマ処理とを組み合わせ、この際に表面を初めに蒸気で処理し、次いでプラズマ処理によって、エンドトキシンを完全に減少させて滅菌する方法に関する。本発明はまた、この方法を実施する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立形式の請求項の上位概念部に記載された形式の方法並びに装置、つまり容器における不純物の減少及び/又は容器の滅菌を行う方法並びに装置、特にエンドトキシン減少のための方法並びに装置に関する。
【0002】
医学用機器及び補助手段を製造する場合や、医学製品を充填する場合には、製造される及び/又は使用される対象物が、例えば充填のために使用されるガラス又はプラスチック製の容器が、無菌であること、特にエンドトキシンによって汚染されていないことが、保証されねばならない。このことを保証するために、エンドトキシンを減少させるための方法が使用される。
【0003】
DE19709067A1には、例えばアンプル、バイアル及び同様な薬剤学的なパッケージング手段のような容器を滅菌する方法が開示されており、この公知の方法では、滅菌される対象物は、約350℃の温度の、乾燥した高温の空気流にさらされる。
【0004】
乾燥した熱は、エンドトキシンの減少及び滅菌のために極めて効果的に使用されることができるが、しかしながら200℃を越える温度には、例えばガラスのような僅かな種類の材料しか耐えることができない。
【0005】
DE102004015441A1には、容器のエンドトキシン残留を減少させる方法が開示されており、この公知の方法では初めに、水空気混合物が容器内に噴入され、次いで蒸留水がこの容器内に噴入され、最後に滅菌空気が容器内に吹き込まれる。
【0006】
エンドトキシン汚染を薄めるための水による洗浄は、プラスチック表面及びガラス表面では、最大約3ログの減少の僅かな効果と、極めて強く変動する結果しか示さない。
【0007】
DE102004015441A1には、さらに容器を滅菌する方法が開示されており、この公知の方法では、初めに水蒸気が容器内に噴入され、次いで滅菌空気が容器内に吹き込まれる。
【0008】
蒸気衝撃処理とも呼ばれる蒸気処理は、ガラス表面において、エンドトキシン濃度を極めて僅かしか不活性化させない。
【0009】
水による洗浄又は流れる蒸気処理は、確かに滅菌効果を示すが、しかしながら水の使用に基づいて滅菌のための後処理を要する。さらに、このような方法のエンドトキシン減少効果は、それ自体満足のいくものではない。
【0010】
DE19903935A1に基づいて公知の、容器又は対象物を滅菌する方法では、容器又は対象物内又はその表面における電磁振動によって、プラズマが励起される。このような方法はプラズマ滅菌法又は短く、プラズマ処理とも呼ばれる。
【0011】
プラズマ滅菌法は、滅菌される表面の材料に応じて、もしくはこれらの材料に合わせられる条件に応じて、極めて種々異なった結果を示す。ガラスでは不純物の減少は満足できるものであるが、プラスチックを含む条件下では、プラスチック表面における不活性効果は2ログ未満の減少であり、極めて低い。
【0012】
従来公知の方法は、例えばプラスチックやガラスのような種々様々な材料においてエンドトキシンを効果的に減少させることが不可能である。
【0013】
特に薬剤学的な充填においては、プラスチックは今日、発熱物質なしに処理することができない。同じことは、プラスチック表面を備えた医学製品に対しても言える。しかしながら発熱物質の中毒は、患者にとって極めて危険である。
【0014】
例えば乾燥した熱、飽和蒸気又はプラズマのような個々の方法は、確かに効果的な滅菌を示すが、しかしながら、例えばプラスチックのような温度に敏感な表面において、発熱物質を低減させること、つまりエンドトキシンの量を減少させることは不可能である。
【0015】
従って、製造プロセス又は充填プロセスに組み込むことができる、プラスチック表面におけるエンドトキシンを減少させる方法は、知られていない。
【0016】
発明の開示
従来技術の欠点は、冒頭に述べた形式の本発明の方法において、蒸気処理とプラズマ処理との組合せによって排除され、この場合エンドトキシン減少のために処理される表面は、初めに蒸気によって処理され、その後でプラズマ処理がエンドトキシン減少を完全に行い、その際に滅菌作用を施す。
【0017】
本発明の核となる思想は、材料表面の滅菌及びエンドトキシン減少のために蒸気衝撃処理とプラズマ処理とを組み合わせた処理を行うと、個々の処理ステップの成果が加算されるのではなく、それを上回る効果が得られる、ということにある。
【0018】
このように組み合わせられた本発明による方法は、プラスチック容器及びガラス容器に薬剤学的な製品を充填するためのみならず、例えば点滴器具セット及びこれに類したもののような医学製品を処理するため、並びに例えばポリラクチド製のねじ及びこれに類したもののようなインプラントを処理するためにも適している。
【0019】
本発明による方法は、プラスチック及びガラスにおいて4ログを上回るエンドトキシン減少を可能にする。さらに処理される表面の温度は120℃を下回った状態に留まるので、本発明による方法は、熱不安定性のプラスチックから成る表面を処理することもできる。さらに本発明による方法は、エンドトキシン減少との組合せにおいて、さらに効果的な滅菌をも可能にする。
【0020】
これによって本発明による方法は、薬剤学的なパッケージング手段として働く容器のためにも、有利に使用することができ、かつ高い生産量を、つまり相応な装置において例えば1分間に300個を上回る処理を可能にする。
【0021】
本発明の有利な方法では、蒸気処理が圧力をもって行われ、この場合蒸気は容器内において弛緩し、これによって不純物の簡単な機械的な剥離を可能にする。プラズマ処理は、冒頭に記載した従来技術に基づいて公知であるように、有利には真空中で行われる。プラズマ処理の前に容器表面を乾燥させると有利である。それというのは、場合によっては残っている水分がプラズマ処理に影響を及ぼすからである。水分は例えばプラズマ処理中に凍結してしまう。この場合蒸気処理には、水による処理ステップを追従させることができ、これによって剥離された不純物を容器から洗い流すことができる。
【0022】
本発明による別の有利な方法では、第1の蒸気処理の後で乾燥ステップを行い、この順序を少なくとも1回繰り返す。
【0023】
本発明の別の有利な方法では、蒸気処置中及び場合によっては水による洗浄中に、表面において粒子を減少させる。
【0024】
基本的には、本発明による方法によって、薬剤学的なパッケージング手段として働く容器の表面を処理することができる。このような容器は例えばガラス、石英又はプラスチックから成る表面を有することができる。このような容器の処理は、洗浄、滅菌及び発熱物質低減によって行われる。
【0025】
例えば、プラズマ処理において添加ガスの添加によって、表面濡れ性を出発状態に対して変化させることができる。遊離結合部位を飽和させるための添加ガスは、この場合有利にはプラズマ処理の後で添加される。付加的にこの場合、疎水性の被覆をプラズマ処理の後に行うことができる。
【0026】
本発明による方法によって、プラズマ処理において処理された表面の摩擦係数をも調節することができる。このような表面は例えば、フッ素化によって又は、カーボン又はヘキサメチルジシロキサンの添加によって得ることができる。これによって特に、容器におけるエラストマ栓体の摩擦も調節可能である。
【0027】
薬剤学的なパッケージング手段として働く容器がプラスチック容器である場合には、処理される表面が圧縮される。これによって、プラスチック及び容器の内容物を損なうおそれのある、場合によっては侵入する酸素に対するバリケードが形成される。これによってまた、プラスチックから容器内に溶け込むおそれのある酸素に対する遮断効果をも得ることができる。
【0028】
さらに、薬剤学的なパッケージング手段として働く容器の表面を処理する場合に、プラズマ滅菌処理の後で、プラズマ被覆処理を行うことも可能である。
【0029】
同様にまた、医学製品又はインプラントの表面を処理することも可能である。処理される表面が医学製品の表面である場合には、処理によって、細胞の付着及び成長もしくは細胞による不純物を減じるような表面が得られる。逆に、処理される表面がインプラントの表面である場合には、処理は、それによって細胞との固着及び細胞との成長を促進するような表面が得られるように、調節されることができる。
【0030】
さらにまた、別の本発明は、上に述べた方法を実施する装置であって、表面を蒸気で処理する手段と、次いで表面をプラズマによって処理する手段とが設けられている。
【0031】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明による方法を実施する装置を概略的に示す図である。
図2は、プラスチック製バイアルにおいて用いた本発明による方法の効果を、蒸気だけを使用する汎用の方法及びプラズマだけを使用する汎用の方法と比較して示すグラフであり、
図3は、ガラス製バイアルにおいて用いた本発明による方法の効果を、蒸気だけを使用する汎用の方法及びプラズマだけを使用する汎用の方法と比較して示すグラフであり、
図4は、本発明による方法を実施する装置を概略的に示す図である。
【0033】
蒸気処理とプラズマ処理との組合せを用いて表面におけるエンドトキシンを減少させる、図4に示された装置は、主として、蒸気処理ステーション30とプラズマ処理ステーション40と、バイアル10,11,12,13,14として形成された容器を、処理ステーションに供給するためのコンベヤベルト20と、両処理ステーション30,40の間における搬送のためのコンベヤベルト21と、処理ステーション40から搬出するためのコンベヤベルトとを有している。
【0034】
従って図示の本発明による装置は、汎用のクリーニング機及び該クリーニング機に続く高温滅菌トンネル及び発熱物資低減トンネル(Entpyrogenisierungstunnnel)に対して択一的に使用される。
【0035】
本発明による方法は、この場合例えば下記のように実施される:
未処理のバイアル10はコンベヤベルト20、マニプレータ又はコンベヤスターを用いて、蒸気処理ステーション30に供給される。蒸気処理ステーション30におけるバイアル11は、強烈に蒸気が吹き付けられる蒸気衝撃処理(Dampfstossprozess)を施され、このようにして前処理された別のコンベヤ21、別のマニプレータ又は別のコンベヤスターを用いて、プラズマ処理ステーション40に供給される。
【0036】
プラズマ処理ステーション40に位置するバイアル13は次いで、従来技術DE19903935A1に記載されているようなプラズマ処理を施される。
【0037】
バイアルは図4に示された装置の通過時に、元の滅菌されていない状態Iから、蒸気衝撃処理とプラズマ処理とを経て、最終的な滅菌された状態IIへと変わる。滅菌された状態IIになった後で、滅菌されたバイアル14の充填及び閉鎖が、本発明の機能のためには重要ではない装置エレメントを用いて行われる。
【0038】
図2及び図3には、蒸気だけが使用される汎用の方法とプラズマだけが使用される汎用の方法とに対する本発明による方法の効果が示されており、この場合本発明の効果は図2には、プラスチックバイアルの発熱物質低減(Entpyrogenisierung)と滅菌とが示され、図3にはガラスバイアルの発熱物質低減と滅菌とが示されている。
【0039】
図2及び図3から分かるように、例えば6mlのCOPプラスチックバイアル(図2)及び管ガラスバイアル(図3)において1秒よりも短い時間にわたって施す蒸気処理と、次いで行われる滅菌圧縮空気の吹付けによる乾燥と、最後に行われる0.3mbarでの120秒間のプラズマ処理とを本発明のように組み合わせることによって、5ログの接種された大腸菌のリポ多糖が検出限界にまで減じられ、かつ6ログのバシラス・サチリスの胞子集団が完全に不活性化される。これによって本発明による方法の使用による効果は、蒸気処理とプラズマ処理との単なる組み合わせに比べて著しく改善されている。プラズマにおいてバイアル表面において測定された温度は、この場合100℃未満である。
【0040】
従って本発明による方法は原則的には、例えばポリラクチドのような、特に熱不安定性のプラスチックのためにも適している。
【0041】
本発明による方法はさらに原則的には、温度に敏感な表面における、BSEの原因となるプリオン汚染を減少させるためにも、適している。
【0042】
さらに一般的に、本発明による方法を、非経口的に与えられる向精神薬用の無菌の充填ラインのために使用することも可能であり、このような充填ラインでは、薬剤学的なパッケージング手段として働くプラスチック製及びガラス製の容器を、同じ方法で、エンドトキシン減少のために処理及び加工することができる。さらにまた、医学技術において及びインプラントのために本発明による方法を使用することも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による方法を実施する装置を概略的に示す図である。
【図2】プラスチック製バイアルにおいて用いた本発明による方法の効果を、蒸気だけを使用する汎用の方法及びプラズマだけを使用する汎用の方法と比較して示すグラフである。
【図3】ガラス製バイアルにおいて用いた本発明による方法の効果を、蒸気だけを使用する汎用の方法及びプラズマだけを使用する汎用の方法と比較して示すグラフである。
【図4】本発明による方法を実施する装置を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器における不純物の減少及び/又は容器の滅菌を行う方法であって、蒸気処理とプラズマ処理とを組み合わせ、この際に容器の表面を初めに蒸気で処理し、次いでプラズマ処理によって、不純物を完全に減少させて滅菌することを特徴とする、容器における不純物の減少及び/又は容器の滅菌を行う方法。
【請求項2】
不純物の減少が、容器の表面におけるエンドトキシンの減少である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
蒸気処理が圧力をもって行われる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
プラズマ処理が真空中で行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
プラズマ処理の前に容器表面を乾燥させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
蒸気処理の前及び/又は後に、水による処理ステップを行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
第1の蒸気処理の後で乾燥ステップを行い、この順序を少なくとも1回繰り返す、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
表面において粒子を減少させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
薬剤学的なパッケージング手段として働く容器の表面を処理する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
医学製品の表面を処理する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
インプラントの表面を処理する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
薬剤学的なパッケージング手段として働く、ガラス又はプラスチック製の容器を、クリーニングし、滅菌し、かつ発熱物質の低減を行う、請求項9記載の方法。
【請求項13】
容器の表面におけるエラストマ栓体の摩擦を、有利に調節する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
プラズマ処理において添加ガスの添加によって、表面濡れ性を出発状態に対して変化させる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
添加ガスを、プラズマ処置の後で遊離結合部位を飽和させるために添加する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
プラスチック容器において、処理される表面を圧縮させる、請求項9記載の方法。
【請求項17】
プラズマ滅菌処理の後で、プラズマ被覆処理を行う、請求項9記載の方法。
【請求項18】
処理によって、細胞の付着及び成長もしくは細胞による汚染を減じるような表面を得る、請求項10記載の方法。
【請求項19】
処理によって、細胞との固着及び細胞との成長を促進するような表面を得る、請求項11記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法を実施する装置であって、
表面を蒸気で処理する手段と、次いで表面をプラズマによって処理する手段とが設けられていることを特徴とする、容器における不純物の減少及び/又は容器の滅菌を行う装置。
【請求項21】
前洗浄から充填後の閉鎖に到るまでの途中における容器の接触を阻止する手段が、設けられている、請求項20記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−519872(P2009−519872A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546307(P2008−546307)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067940
【国際公開番号】WO2007/071486
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】