説明

容器に対するパイプの接続構造

【課題】容器に固定されるパイプに位置ズレがあっても確実にシールを行うことが可能な容器に対するパイプの接続構造の提供にある。
【解決手段】パイプの接続部10は、流体としての冷却水を入れる容器11に設けられた貫通孔12にパイプPが挿通されるとともに締付け固定されている。パイプPは上部パイプ14と、下部パイプ13とが互いに結合されることで形成されている。上部パイプ14には容器11の外側に位置するフランジ部14bが設けられ、容器11とフランジ部14bとの間にはシール部材としてのOリング15が介在されている。下部パイプ13には容器の内側に位置するフランジ部13bが設けられ、容器11とフランジ部13bとの間には同様にOリング15が介在されている。また、下部パイプ13と貫通孔12との間には隙間が形成され、下部パイプ13が相対変位可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に対するパイプの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に設けられた貫通孔にOリングやグロメットを介してパイプを接続し、パイプから流体を容器外部へ漏れることなく容器内部へ流入若しくは流出させる構成が知られている。
特許文献1で開示された従来技術においては、シリンダヘッド及びチェーンカバーに設けられた冷却水出口孔に冷却水戻りパイプが接続されている。冷却水戻りパイプの外周には冷却水出口孔に密着するOリングが設けられており、冷却水戻りパイプを冷却水出口孔に嵌めこんで冷却水戻りパイプに固定された固定フランジをボルトにてチェーンカバーに締結させる構造が開示されている。この構造によれば、冷却水出口孔の内周面と冷却水戻りパイプの外周面とがOリングを介して密着され、冷却水戻りパイプと冷却水出口孔との間からの冷却水の漏れを防止できるとしている。
【0003】
また、特許文献2で開示された従来技術においては、クロスデッキメンバに組み込んでからダッシュパネルに組付け、車載機器から突き出たパイプ部材をダッシュパネルの開口部へ挿入させる構造が開示されている。この構造によれば、パイプ部材にはテーパ形状をなすグロメットが嵌挿され、開口部へパイプ部材を挿入するとき、車載機器の重心位置の変動により開口部の軸方向に対して位置ズレしているパイプ部材を、据付後、グロメット周壁と開口部周縁との当接でパイプ部材の位置が矯正されて、正規位置に挿入することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−317968号公報(第3〜4頁、図1)
【特許文献2】特開平10−24725号公報(第4〜6頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示された従来技術においては、冷却水戻りパイプの外周に設けられたOリングにより冷却水出口孔の内周面と冷却水戻りパイプの外周面との間のシール性は確保されているが、組付け時に冷却水戻りパイプに位置ズレがあった場合には、冷却水戻りパイプの中心軸と冷却水出口孔の中心軸との間に軸ズレが生じるために冷却水戻りパイプを冷却水出口孔に正しく連結できない問題がある。
また、特許文献2で開示された従来技術においては、グロメットによりパイプ部材に位置ズレがあっても正規位置に矯正可能であるが、パイプ部材に位置ズレが生じているためにパイプ部材を開口部へ挿入させる際にグロメット周壁と開口部の曲り部との間に大きな抵抗が生じグロメットが変形若しくは破損してシール性が損なわれる虞がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、容器に固定されるパイプに位置ズレがあっても確実にシールを行うことが可能な容器に対するパイプの接続構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、内側に流体を入れる容器と、該容器に設けられた貫通孔と、該貫通孔に挿通されるパイプとを有する容器に対するパイプの接続構造であって、該パイプに設けられ前記容器の外側に位置する第1フランジ部材と、前記貫通孔と該貫通孔に挿通された前記パイプとの間にあって前記パイプが前記貫通孔に対して相対変位可能とする隙間と、前記容器と前記第1フランジ部材との間に介在されるシール部材と、前記パイプを前記第1フランジ部材及び前記シール部材を介して前記容器に対し締付け固定する締付け部材とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、容器に固定されるパイプに位置ズレがあっても、貫通孔と貫通孔に挿通されたパイプとの間にパイプが貫通孔に対して相対変位可能な隙間が設けられていることにより、パイプを位置ズレの方向に相対変位させて固定させることができる。また、容器と第1フランジ部材との間にシール部材を介在させてパイプを締付け部材で容器に対し締付け固定することができるので、容器のシールを確実に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の容器に対するパイプの接続構造において、前記パイプは上部パイプと下部パイプとからなり、前記上部パイプに前記第1フランジ部材が設けられるとともに前記上部パイプの少なくとも一部の内周面に雌ネジが形成され、前記下部パイプは前記締付け部材と一体的に形成されるとともに前記容器の内側に位置する第2フランジ部材を有し、前記下部パイプの少なくとも一部の外周面に雄ネジが形成され、前記雌ネジと前記雄ネジとが互いに螺合することで前記パイプは前記容器に対して締付け固定されることを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、上部パイプの第1フランジ部材を貫通孔に対して容器の外側より当接させ、下部パイプのパイプを貫通孔に対して容器の内側より挿通させて、上部パイプに形成された雌ネジに下部パイプに形成された雄ネジを螺合させる構成なので、構成が簡単であり部品点数を削減可能である。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の容器に対するパイプの接続構造において、前記パイプは少なくとも一部の外周面に雄ネジが形成されており、前記締付け部材は内周面に雌ネジが形成されたナット部材であり、前記雌ネジと前記雄ネジとが互いに螺合することで前記パイプは前記容器に対し締付け固定されることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、パイプを貫通孔に対して容器の外側より挿通させると共にパイプに形成された第1フランジ部材を容器の外側に配設させ、容器の内側よりナット部材でナット部材の内周面に形成された雌ネジをパイプに形成された雄ネジに螺合させる構成なので、構成が簡単であり部品点数を削減可能である。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器に対するパイプの接続構造において、前記シール部材は、少なくとも前記容器の外側に設けられていることを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、シール部材は少なくとも容器の外側における容器と第1フランジ部材との間に設けられているので、容器の内側にある流体が外部に漏れることを防止できる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器に対するパイプの接続構造において、前記シール部材がOリングであることを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、シール部材がOリングなので取り扱いが簡単であり、確実にシールを行うことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器に固定されるパイプに位置ズレがあっても確実にシールを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係るパイプの接続部の要部構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るパイプの接続部の作用説明用の模式図である。
【図3】第2の実施形態に係るパイプの接続部の要部構成を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係るパイプの接続部の作用説明用の模式図である。
【図5】第3の実施形態に係る冷却器の接続前の状態を示す平面図である。
【図6】第3の実施形態に係る冷却器の接続後の状態を示す一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る容器に対するパイプの接続構造について、図1〜図2に基づいて説明する。
図1に示すように、パイプの接続部10は、流体としての冷却水を入れる容器11に設けられた貫通孔12にパイプPが挿通されるとともに締付け固定されている。パイプPは上部パイプ14と下部パイプ13とが互いに結合されることで形成されている。上部パイプ14は円筒部14aと容器11の外側に位置する第1フランジ部材に相当するフランジ部14bとから形成され、容器11とフランジ部14bとの間にはシール部材としてのOリング15が介在されている。下部パイプ13は円筒部13aと容器11の内側に位置する第2フランジ部材としてのフランジ部13bとから形成され、容器11とフランジ部13bとの間には同様にOリング15が介在されている。
【0016】
容器11は内側に冷却用の冷却水が貯留されたアルミニウム製のケースであり、容器11の側壁11aは均一な厚みを有し、側壁11aの内面側と外面側とはフラットで平行な平面が形成されている。この側壁11aには容器11の内側と外側とを繋ぐ貫通孔12が形成されている。また、貫通孔12の近傍の側壁11aの内面側と外面側には、Oリング15を装着するための溝孔11bがそれぞれ形成されている。
上部パイプ14は円筒部14aの一端にフランジ部14bを有する筒状で金属製の部材であり、その端部の内周面には雌ネジ14cが形成されている。なお、他端側は、図示しないヒートシンクに接続されている。
【0017】
下部パイプ13は、円筒部13aの端部にフランジ部13bとネジ頭13dとを有する筒状で金属製の部材であり、他端側の外周面には雄ネジ13cが形成されている。この雄ネジ13cはネジ頭13dを回すことにより雌ネジ14cと螺合される。即ち、上部パイプ14と下部パイプ13とが結合されるとともにパイプPが容器11に対して締付け固定される。つまり、下部パイプ13はパイプのみならず締付け部材にも相当する。また、円筒部13aの外径は貫通孔12の内径より小径とされて、円筒部13aと貫通孔12との間には隙間が形成され、円筒部13aが貫通孔12に対して径方向に相対変位可能となっている。
【0018】
溝孔11bにOリング15を装着した上で、上部パイプ14のフランジ部14bを貫通孔12に対して容器11外側よりOリング15に当接させ、下部パイプ13の円筒部13aを貫通孔12に対して容器11の内側より挿通させて、雌ネジ14cに雄ネジ13cを螺合させてOリング15を押圧しつつ締結させることにより、パイプPは容器11に固定される。
【0019】
次に、上記構成を有するパイプの接続部10について作用説明を行う。
図2(a)に示すように、容器11の内面側と外面側の溝孔11bにOリング15を装着した上で、容器11の貫通孔12に対して容器11外側より上部パイプ14のフランジ部14bを配設させる。
ここで、貫通孔12の中心軸線をmとし上部パイプ14の中心軸線をnとしたときに、上部パイプ14に位置ズレがあり、中心軸線mに対して中心軸線nがΔgだけズレているとする。位置ズレは、上部パイプ14に接続された図示しないヒートシンクの加工及び、容器11の貫通孔12の加工による精度のバラツキ等により発生する。なお、位置ズレが全くないときには、中心軸線mに対して中心軸線nは重なりΔg=0となる。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、下部パイプ13の円筒部13aを貫通孔12に対して容器11内側より挿通させて、雄ネジ13cを雌ネジ14cに螺合させる。
この時、下部パイプ13の中心軸線をsとすれば、中心軸線sと中心軸線nとは重なるので、下部パイプ13は、貫通孔12の中心軸線mに対してΔgだけ変位して上部パイプ14に結合されることになる。
しかし、下部パイプ13の円筒部13aの外径は貫通孔12の内径より小径とされて、円筒部13aと貫通孔12との間には隙間が形成され、円筒部13aが貫通孔12に対して径方向に相対変位可能となっているので、円筒部13aが貫通孔12に対してΔgだけ変位しても円筒部13aの外周面と貫通孔12の内周面とが干渉することはない。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、上部パイプ14に対して下部パイプ13を結合することにより、フランジ部14bはOリング15を介して容器11の外面側に当接され、フランジ部13bはOリング15を介して容器11の内面側に当接されそれぞれのOリング15は押圧されて変形する。このことにより、フランジ部13bと容器11内面との間、及びフランジ部14bと容器11外面との間はシールされて、冷却水が外部に漏れるのが防止される。
【0022】
なお、貫通孔12の内径は上部パイプ14の位置ズレ量Δgを予め考慮して設定されており、上部パイプ14の位置ズレに伴い貫通孔12に挿通される下部パイプ13に同等の変位が発生しても、貫通孔12と下部パイプ13とが干渉することはない。また、フランジ部13b、14bの外径寸法も上部パイプ14の位置ズレ量Δgを予め考慮して充分大きく設定されており、上部パイプ14及び下部パイプ13に位置ズレがあってもフランジ部13b及び14bとOリング15との当接が解除されることはない。
【0023】
このように、貫通孔12に対して上部パイプ14に位置ズレがあっても、下部パイプ13の円筒部13aと貫通孔12との間には充分な隙間が設けられていることにより、下部パイプ13の円筒部13aを径方向に変位させて締結させることができると共に、フランジ部13b及び14bがOリング15を介して容器11の内面及び外面と当接することによりシール性を確保することが可能である。
【0024】
この第1の実施形態に係るパイプの接続部10によれば以下の効果を奏する。
(1)貫通孔12に対して上部パイプ14に位置ズレがあっても、貫通孔12に挿通される下部パイプ13の円筒部13aと貫通孔12との間に充分な隙間が設けられていることにより、下部パイプ13の円筒部13aを径方向に変位させて締結させることができる。
(2)フランジ部14b及び13bは、Oリング15を介して容器11の内面及び外面と当接されているが、フランジ部14b及び13bは上部パイプ14の位置ズレを考慮して充分大きく設定されていることにより、たとえ位置ズレがあってもフランジ部13bと容器11内面との間、及びフランジ部14bと容器11外面との間を確実にシールすることができ、冷却水の外部への漏れを防止できる。
(3)フランジ部14bを貫通孔12に対して容器11外側よりOリング15に当接させ、下部パイプ13の円筒部13aを貫通孔12に対して容器11内側より挿通させて、雌ネジ14cに雄ネジ13cを螺合させる構成なので、構成が簡単であり部品点数を削減可能である。
(4)シール部材がOリング15なので取り扱いが簡単であり、確実にシールを行うことが可能である。
(5)締結後に温度変化等による膨張、収縮で位置ズレが生じても、フランジ部14bとOリング15との間で変位することで位置ズレを吸収できシール性を維持可能であると共に、下部パイプ13や容器11への応力を低減可能である。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る容器に対するパイプの接続構造を図3〜図4に基づいて説明する。
ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0026】
図3に示すように、パイプの接続部20は、流体としての冷却水を貯留する容器11と、容器11に形成された貫通孔12と、貫通孔12に挿通されたパイプに相当する配管用パイプ21と、締付け部材に相当するナット部材22とを備えている。
配管用パイプ21は、円筒部21aと第1フランジ部材としてのフランジ部21bとを有する筒状で金属製の部材であり、フランジ部21bは中に貫通孔のあいた円盤状であり、円筒部21aの軸線方向の中間位置に圧入又は、溶接により固定されている。フランジ部21bに対して容器11内側に突出する円筒部21aの部位を円筒部21cとすれば、円筒部21cの先端側の外周面には雄ネジ21dが形成されている。円筒部21cは容器11外側より貫通孔12に挿通されるが、円筒部21cの外径は貫通孔12の内径より小径とされて、円筒部21cと貫通孔12の間には隙間が形成され、円筒部21cが貫通孔12に対して径方向に相対変位可能となっている。
フランジ部21bに対して円筒部21cと反対側の端部は、図示しないヒートシンクに接続されている。
【0027】
ナット部材22は、本体部22aと本体部22aの中心位置に形成された雌ネジ22bとで構成されている。この雌ネジ22bは配管用パイプ21の円筒部21cに形成された雄ネジ21dと螺合する。
溝孔11bにOリング15を装着した上で、配管用パイプ21の円筒部21cを貫通孔12に対して容器11外側より挿通させ、フランジ部21bを容器11外側のOリング15に当接させる。そして、容器11内側よりナット部材22でナット部材22に形成された雌ネジ22bを配管用パイプ21に形成された雄ネジ21dに螺合させてOリング15を押圧しつつ締結させることにより、配管用パイプ21は容器11に固定される。
【0028】
次に、上記構成を有するパイプの接続部20について作用説明を行う。
図4(a)に示すように、容器11の内面側と外面側の溝孔11bにOリング15を装着した上で、容器11の貫通孔12に対して容器11外側より配管用パイプ21の円筒部21cを挿通させ、フランジ部21bを容器11外側に配設させる。
ここで、貫通孔12の中心軸線をmとし配管用パイプ21の中心軸線をrとしたときに、配管用パイプ21に位置ズレがあり、中心軸線mに対して中心軸線rがΔgだけズレているとする。なお、位置ズレが全くないときには、中心軸線mに対して中心軸線rは重なりΔg=0となる。
しかし、配管用パイプ21の円筒部21cの外径は貫通孔12の内径より小径とされて、円筒部21cと貫通孔12との間には隙間が形成され、円筒部21cが貫通孔12に対して径方向に相対変位可能となっているので、円筒部21cが貫通孔12に対してΔgだけ変位しても円筒部21cの外周面と貫通孔12の内周面とが干渉することはない。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、ナット部材22を容器11内側より配管用パイプ21の円筒部21cを臨む位置に持ってきて、ナット部材22の内周面の雌ネジ22bを配管用パイプ21の外周面の雄ネジ21dに螺合させる。
この時、ナット部材22の中心軸線をtとすれば、中心軸線tと中心軸線rとは重なるので、ナット部材22は、貫通孔12の中心軸線mに対してΔgだけ変位して配管用パイプ21に螺合されることになる。
【0030】
次に、図4(c)に示すように、配管用パイプ21に対してナット部材22で締付けることにより、配管用パイプ21のフランジ部21bはOリング15を介して容器11の外面側に当接され、ナット部材22の本体部22aはOリング15を介して容器11の内面側に当接されそれぞれのOリング15は押圧されて変形する。このことにより、フランジ部21bと容器11外面との間、及び本体部22aと容器11内面との間はシールされて、冷却水が外部に漏れるのが防止される。
【0031】
なお、貫通孔12の内径は配管用パイプ21の位置ズレ量Δgを予め考慮して設定されており、配管用パイプ21に位置ズレがあっても貫通孔12に干渉することなく配管用パイプ21の円筒部21cを貫通孔12に挿通できる。また、フランジ部21b及び本体部22aの外径寸法も配管用パイプ21の位置ズレ量Δgを予め考慮して充分大きく設定されており、配管用パイプ21及びナット部材22に位置ズレがあってもフランジ部21b及び本体部22aとOリング15との当接が解除されることはない。
【0032】
このように、貫通孔12に対して配管用パイプ21に位置ズレがあっても、配管用パイプ21の円筒部21cと貫通孔12との間には充分な隙間が設けられていることにより、円筒部21cを貫通孔12に干渉することなく挿通させ締結させることができる。また、
フランジ部21b及び本体部22aがOリング15を介して容器11の外面及び内面と当接することによりシール性を確保することが可能である。
【0033】
この第2の実施形態に係るパイプの接続部20によれば以下の効果を奏する。なお、第1の実施形態における効果(4)は同等であり、それ以外の効果を記す。
(6)貫通孔12に対して配管用パイプ21に位置ズレがあっても、貫通孔12に挿通される配管用パイプ21の円筒部21cと貫通孔12との間に充分な隙間が設けられていることにより、円筒部21cを貫通孔12に干渉することなく挿通させ締結させることができる。
(7)配管用パイプ21及びナット部材22のフランジ部21b及び本体部22aは、Oリング15を介して容器11の外面及び内面と当接されているが、フランジ部21b及び本体部22aは配管用パイプ21及びナット部材22の位置ズレを考慮して充分大きく設定されていることにより、たとえ位置ズレがあってもフランジ部21bと容器11外面との間、及び本体部22aと容器11内面との間を確実にシールすることができ、冷却水の外部への漏れを防止できる。
(8)配管用パイプ21の円筒部21cを貫通孔12に対して容器11外側より挿通させ、フランジ部21bを容器11外側に配設させて、容器11内側よりナット部材22でナット部材22の内周面に形成された雌ネジ22bを配管用パイプ21に形成された雄ネジ21dに螺合させる構成なので、構成が簡単であり部品点数を削減可能である。
(9)締結後に温度変化等による膨張、収縮で位置ズレが生じても、フランジ部21bとOリング15との間で変位することで位置ズレを吸収できシール性を維持可能であると共に、容器11等への応力を低減可能である。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る容器に対するパイプの接続構造を図5〜図6に基づいて説明する。
この実施形態は、第1の実施形態における接続構造を電子部品装置の冷却器に適用したものであり、基本的な構成及び作用は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0035】
図5及び図6に示すように、電子部品装置の冷却器30は、ヒートシンク31と容器32とにより構成されている。
ヒートシンク31は、図示しない電子部品装置と接続されており、電子部品装置で発生した熱を放熱させる。ヒートシンク31はアルミニウム製の箱型の構造を有し、ヒートシンク31の側壁には2個の上部パイプ33がロウ付けされている。2個の上部パイプ33のうち一方は入水口に該当し、他方は出水口に該当する。
上部パイプ33は、円筒部33aとその一端にフランジ部33bとを有する筒状で金属製の部材であり、その端部の内周面には雌ネジ33cが形成されている。一方、他端はヒートシンク31にロウ付けされている。(図6参照)
【0036】
容器32は内側に冷却用の冷却水が貯溜されたアルミニウム製のケースであり、容器32の側壁32aは均一な厚みを有し、側壁32aの内面側と外面側とはフラットで平行な平面が形成されている。この側壁32aには容器32の内側と外側とを繋ぐ2個の貫通孔34が形成されている。また、各貫通孔34の近傍の側壁32aの内面側と外面側には、Oリング15を装着するための溝孔32bがそれぞれ形成されている。
容器32に形成された貫通孔34に容器32内側より挿通される下部パイプ35は、円筒部35aとその一端にフランジ部35bとを有する筒状で金属製の部材であり、他端側の端部の外周面には雄ネジ35cが形成されている。円筒部35aは容器32内側より貫通孔34に挿通されるが、円筒部35aの外径は貫通孔34の内径より小径とされて、円筒部35aと貫通孔34との間には隙間が形成されている。
【0037】
ここで、ヒートシンク31における2個の上部パイプ33間の距離をL1とし、容器32における2個の貫通孔34間の距離をL2とする。
上部パイプ33を貫通孔34に対し容器32外側よりOリング15を介して当接させ、容器32内側より貫通孔34に下部パイプ35を挿通させて、上部パイプ33を下部パイプ35で容器32に固定させる接続構造なので、距離L1=距離L2であるのが望ましい。
しかし、上部パイプ33間の距離L1は、上部パイプ33がロウ付けによるヒートシンク31への接合なので、寸法精度のバラツキが発生する。一方、容器32における貫通孔34間の距離L2は距離L1と比較して寸法精度のバラツキが少ない。
【0038】
図6では、距離L1が距離L2より大きく(L1>L2)なった場合の接続状態を示している。この場合には、図6における左側の上部パイプ33が貫通孔34の中心位置に固定(それぞれの中心軸線が重なる)されたとしても、右側の上部パイプ33はL1―L2=Δg1だけ、貫通孔34に対して右側に位置ズレした状態で固定される。
これは、下部パイプ35の円筒部35aと貫通孔34との間に充分な隙間が設けられているためであり、下部パイプ35の円筒部35aを上部パイプ33の位置ズレの方向に変位させて締結させることができることによる。
その他の作用効果については、第1の実施形態における作用効果と同等であり説明を省略する。
【0039】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1〜第3の実施形態では、シール部材をOリング15として説明したが、平板状のパッキンであっても良い。
○ 第1〜第3の実施形態では、Oリング15を容器11、32の内側と外側の両方に設けるとして説明したが、容器11、32の外側にのみ設けても良い。この場合、冷却水は容器11、32内側のフランジ部13b、35b又は、本体部22aから貫通孔12、34内部まで浸入することが考えられるが、容器11、32の外側のOリング15によってシール性を確保することができ、部品点数とコストを削減可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、冷却用の流体として水を用いるとして説明したが、空気でも良いし、その他の冷媒であっても良い。
○ Oリング15を装着するための溝孔11b、32bは容器11、32側に設けられているとして説明したが、フランジ部のみ、或いはフランジ部と容器の両方に設けても良い。この場合も、上記各実施形態と同様にシール性を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
P パイプ
10、20 パイプの接続部
11、32 容器
12、34 貫通孔
13、35 下部パイプ
13b、35b フランジ部
13c、35c 雄ネジ
14、33 上部パイプ
14b、33b フランジ部
14c、33c 雌ネジ
15 Oリング
21 配管用パイプ
21b フランジ部
21d 雄ネジ
22 ナット部材
22b 雌ネジ
Δg 位置ズレ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流体を入れる容器と、該容器に設けられた貫通孔と、該貫通孔に挿通されるパイプとを有する容器に対するパイプの接続構造であって、
該パイプに設けられ前記容器の外側に位置する第1フランジ部材と、
前記貫通孔と該貫通孔に挿通された前記パイプとの間にあって前記パイプが前記貫通孔に対して相対変位可能とする隙間と、
前記容器と前記第1フランジ部材との間に介在されるシール部材と、
前記パイプを前記第1フランジ部材及び前記シール部材を介して前記容器に対し締付け固定する締付け部材とを有することを特徴とする容器に対するパイプの接続構造。
【請求項2】
前記パイプは上部パイプと下部パイプとからなり、
前記上部パイプに前記第1フランジ部材が設けられるとともに前記上部パイプの少なくとも一部の内周面に雌ネジが形成され、
前記下部パイプは前記締付け部材と一体的に形成されるとともに前記容器の内側に位置する第2フランジ部材を有し、前記下部パイプの少なくとも一部の外周面に雄ネジが形成され、
前記雌ネジと前記雄ネジとが互いに螺合することで前記パイプは前記容器に対して締付け固定されることを特徴とする請求項1に記載の容器に対するパイプの接続構造。
【請求項3】
前記パイプは少なくとも一部の外周面に雄ネジが形成され、
前記締付け部材は内周面に雌ネジが形成されたナット部材であり、
前記雌ネジと前記雄ネジとが互いに螺合することで前記パイプは前記容器に対し締付け固定されることを特徴とする請求項1に記載の容器に対するパイプの接続構造。
【請求項4】
前記シール部材は、少なくとも前記容器の外側に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器に対するパイプの接続構造。
【請求項5】
前記シール部材がOリングであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器に対するパイプの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270871(P2010−270871A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124935(P2009−124935)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】