説明

容器装着用笛

【課題】常時持ち運ぶことが可能であり、災害時等において、多数の機能を発揮することにより、人命救助に役立つ容器装着用笛を提供する。
【解決手段】蓋部10が、左右の二方向に突き出た笛部11A,11Bと、容器部20に装着される胴部11Cとを備える。各笛部11A,11Bの先端に、吹口12を設ける。笛部11A,11Bの内部には、それぞれ共鳴部13を形成し、外部に開口した歌口14を備えることにより、吹口12から息を吹き込むと、特定の周波数の音が鳴る構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平常時及び被災時等における飲料水の確保とともに、人命救助に役立つ容器装着用笛に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地震等の大規模災害が、極めて高い確率で予想されており、いつ起きるかが判らない災害に対して、十分に備えておくことは重要である。このような、災害に遭遇した際に、ライフラインの確保として最重要項目に、「水」の確保がある。この水については、あらかじめ備蓄しておくことが考えられるが、容器としては、ポリタンクや大きなペットボトルとすることが一般的であり、保管場所も自宅や会社等ということになる。
【0003】
また、緊急時に役に立つ道具として、懐中電灯、ラジオ等を備えておくことが行われている。このような道具には、種々のものが考えられる。例えば、笛は、単に玩具、楽器、雑貨、装飾品、美術品として使用されているが、喚起を促す音を発生させることができるため、自らが住宅の下敷きになったり、身動きできず、声を出せないような状況において、救助隊に対する要請を可能とする道具として利用できる(特許文献1参照)。この笛に、コンパス、ルーペ、信号用ミラー、温度計等の防災用品の機能を併せ持つ製品も存在する。
【0004】
さらに、家族や自らが所属する団体に対する所在情報の伝達手段の確保が必要となる。これは、例えば、携帯電話等を所持しており、一般の携帯電話システムが有効に機能していれば、可能となる。
【特許文献1】特開2006−259216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水の確保については、ポリタンクや2リットル程度のペットボトルを常に携帯することは、事実上不可能であるため、たまたま備蓄場所にいた場合でなければ、使用できない。
【0006】
また、各種の道具も、それぞれを常時持ち歩く必然性は低い。複数の機能が一体となった製品であっても、普段は使用する可能性がないので、結局、持ち歩かなくなってしまう。さらに、携帯電話による連絡も、携帯電話のシステムが有効に機能しなくなった場合には使用できず、多くの災害時には、通話が殺到して使用できない状態に陥る。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、常時持ち運ぶことが可能であり、災害時等において、多数の機能を発揮することにより、人命救助に役立つ容器装着用笛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、容器に着脱可能な蓋部に、複数の笛部が設けられ、前記複数の笛部は、異なる周波数の音を発するように設定されていることを特徴とする。
【0009】
以上のような本発明では、容器を平常時の水分補給用として持ち歩くことは自然であり、その容器の蓋部に笛部を設けているので、予期せぬ災害時にも、笛の機能を有効に発揮できる。特に、複数の笛部は異なる周波数の音を発することができるので、災害時に何かの下敷きになったり、身動きできなくなった場合に、密閉の度合いや救助側の状況にかかわらず、外部に通知できる可能性が高くなる。
【0010】
本発明の他の態様は、前記複数の笛部は、少なくとも一つが人間の可聴域の音を発するように設定され、少なくとも一つが人間の可聴域を超えた音を発するように設定されていることを特徴とする。
以上のような態様では、救助者にも、救助犬にも注意を喚起することができ、救出の可能性が高まる。
【0011】
本発明の他の態様は、前記複数の笛部は、蓋部の外周側へ突出していることを特徴とする。
以上のような態様では、笛部が外周側に突き出ているので、掴んだときに力を入れやすく、怪我人や握力の弱まった人でも、蓋部の開閉を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の他の態様は、液体を収容可能な容器を備え、前記容器の側面には、目盛りが形成されていることを特徴とする。
以上のような態様では、目盛りによって、液体の残量が目視可能となるので、計画的に消費できる。
【0013】
本発明の他の態様は、液体を収容可能な容器を備え、前記容器の内面には、光触媒若しくは銀が付着されていることを特徴とする。
以上のような態様では、細菌繁殖阻止に有効な成分によって、容器内に収容される液体の安全性が確保される。
【0014】
本発明の他の態様は、液体を収容可能な容器を備え、前記容器の一部に、鏡面部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、鏡面部によって、外部からの光を反射させることにより、光により所在を知らせることができる。
【0015】
本発明の他の態様は、液体を収容可能な容器を備え、前記容器の一部には、ICタグ若しくはICチップが設けられていることを特徴とする。
以上のような態様では、ICタグ若しくはICチップに記憶された情報によって、所持者を特定できるとともに、GPSを活用して、位置特定が可能となる。
【0016】
本発明の他の態様は、液体を収容可能な容器を備え、前記容器の口は、二重構造となっていることを特徴とする。
以上のような態様では、口を二重構造とすることにより、水を一挙に消費し難く、唾液が入り難くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、常時持ち運ぶことが可能であり、災害時等において、多数の機能を発揮することにより、人命救助に役立つ容器装着用笛を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態は、主に、被災時や遭難時等の非常時の一時対応において、その機能を発揮することを目的とした防災用品である。
【0019】
[構成]
まず、本実施形態の構成を説明する。すなわち、本実施形態は、図1に示すように、蓋部10と容器部20とによって構成されている。
【0020】
[蓋部の構成]
蓋部10は、図2に示すように、左右の二方向に突き出た笛部11A,11Bと、容器部20に装着される胴部11Cとを備えている。この蓋部10は、衝撃に対して耐久性を有する素材、例えば、ポリカーボネート等で形成されている。但し、本発明は、この材質には限定されない。
【0021】
各笛部11A,11Bの先端には、吹口12が設けられている。そして、笛部11A,11Bの内部には、それぞれ共鳴部13が形成されており、外部に開口した歌口14を備えることにより、吹口12から息を吹き込むと、特定の周波数の音が鳴る構造となっている。
【0022】
このような笛部11A,11Bは、非常時において、多くの他者に対する注意喚起と救助依頼を可能とするために、特定の音域に調整された周波数域の音を発するように設定されている。一方の笛部11Aから発する音は、救助活動に従事する人々が感知できるように構成されている(例えば、20Hz〜20000Hz程度の可聴域)。
【0023】
他方の笛部11Bから発する音は、人間の聴覚では感知しないが、非常時の捜索活動に従事する犬などの動物に感知できるように構成されている。40〜47000Hz程度が犬の可聴域であり、例えば、30000Hz程度に設定することが考えられる。なお、人間に感知できる音に設定する場合にも、周波数によって、所持者の特徴、グループ等が選別できるように、製品によって微妙に周波数を変えた構造としてもよい。具体的には、年齢に応じて異なるレベルの周波数を用いることで、被災者の年齢特定が可能となる。
【0024】
そして、二方向に突き出た笛部11A,11Bは、これを掴んで回転させることができるので、力を加え易く、容易に開け閉めできる構造となっている。また、突き出た笛部11A,11Bには、ひもなどが掛け易い構造となっている。
【0025】
さらに、胴部11Cは、その円筒状の内壁に、後述する容器部20の口部21に設けられたねじ山22に係合するねじ部15が形成されている。なお、胴部11Cの側壁は、根元部分に行くに従い太く形成され、回転応力に対しても変形し難い丈夫な構造となっている。
【0026】
[容器部の構成]
次に、容器部20は、例えば、内部に水を収容可能なポリカーボネート製の透明容器である。但し、本発明は、この材質には限定されない。容器部20の上部には、水を出し入れするための口部21が設けられている。この口部21の外周には、ねじ山22が形成されており、上記のように、胴部11Cのねじ部15が係合することによって、密閉可能に構成されている。
【0027】
この容器部20の側面には、図1に示すように、目盛23が付されており、水の残量が目視可能な構造となっている。そして、容器部20の内面には、酸化チタン、銀等が付着されている。
【0028】
また、容器部20の側面の一部は、鏡面仕上部24となっている。この鏡面仕上部24は、一定面積毎に角度が付けられており、外部からの光を、幾つかの違った方向に反射させる構造となっている。容器部20の下部は、内容物の水の純水度を利用して、ルーペとなる構造である。
【0029】
さらに、容器部20の底面には、ICタグ25等が内蔵され、区画密閉されている。このICタグ25は、リーダライタ等により、外部から情報を読み書き可能に構成されており、所持者に関する情報を記憶しておくことができる。
【0030】
さらに、容器部20の口部21の先端部分は、二重構造となっている。すなわち、口部21の先端は、口径が狭くなっており、その外周に着脱自在なリング部25が設けられている。このように、口部21の口径が狭くなっていることにより、一挙に水が垂れ落ちない構造となっている。また、図3に示すように、口部21とリング部25との間には、所持者が水を飲む際に、唾液等が流れて外部に落ちるように、隙間26が形成されている。
【0031】
[作用効果]
以上のような本実施形態の作用効果は、以下の通りである。
[平常時の使用]
平常時には、容器部20に水を入れて、蓋部10により密封したものを持ち歩くことにより、水筒として機能する。容器部20の大きさを、持ち運びに適したものとすれば、常時携帯することに不都合はなく、水分補給用として自然に使用できる。なお、普段、何時でも簡単に持ち運びできるように、左右に突き出た笛部11A,11Bに、ひも等をかけてもよい。
【0032】
[災害時等の笛としての使用]
本実施形態の所持者が、災害時や遭難時に何かの下敷きになったり、身動きできなくなった場合、以下のような理由から、救出される可能性が高まる。すなわち、救助活動は、人間と動物が一体になって行われることが多い。本実施形態の笛部11Aは、人の可聴域の音が出て、笛部11Bは、救助犬等の動物への喚起が可能な音が出る。
【0033】
従って、人間への注意喚起とともに、音が外部に伝わり難い密閉された環境であっても、人体以上に嗅覚・聴覚の発達した動物への注意喚起が可能となり、非常時に有効な伝達手段となる。このため、捜索している人間にも、動物にも所在を知らせることができ、救出の可能性が高まる。
【0034】
[災害時等の水筒としての使用]
上記のように、動けなくなった被災者や遭難者であっても、水分補給さえ滞らなければ、相当時間耐えられることは、数多くの研究で実証済みである。本実施形態は、上記の笛部11A,11Bに加えて、これをキャップとする水入りの容器部20を備えているので、救助を待つ時間の補給水が得られる。
【0035】
また、笛部11A,11Bは、左右に突き出した形状となっているので、怪我人や握力の弱まった人でも力を入れ易く、蓋部10の開閉を容易に行うことができる。なお、蓋部10の回転に対し、胴部11Cの根元部分の曲げモーメントは当然大きくなるが、根元部分に近くなるに従い幅広となっているため、応力に対し変形し難い。
【0036】
また、容器部20の側面には目盛23が付されているので、既に飲用した分と、残量とが容易に把握できる。このため、ある程度節約しながら、計画的に消費することが可能となる。なお、容器部20の下部は、水が収容されることにより、図1に示すように、ルーペとしても機能する。
【0037】
容器部20の内面には、光触媒や銀など、細菌繁殖阻止に有効な成分の物質が付着している。このため、万一の細菌混入に際しても、水の安全性確保が有効に働く。特に、酸化チタン等の光触媒作用を有する物質によれば、太陽光や蛍光灯などの光源によって、有機物が分解されるので、雑菌などによる汚染を防止できる。
【0038】
また、従来は、ミラーを単に付加的に取り付けた構造の笛もあった。しかし、本実施形態では、容器部20の側面に、構成材料自体を鏡面加工した鏡面仕上部24を有している。このため、特に別部材を付加することなく、反射光による発信効果を得ることができる。つまり、ミラーが脱落したり割れたりすることがなく、太陽光等を反射させて、光による信号を発することができる。特に、一定面積毎に角度が付けられているので、幾つかの違った方向に対し、同時に信号を送ることができる。このため、救助者が被災者の意図しない方向にいたとしても、これに知らせることができる。
【0039】
また、容器部20の底部に設けられたICタグ25に記録された情報を、救助者が持つリーダライタで読み取ることにより、所持者の特定に役立つ。これを、災害時用のシステムにおいて管理することにより、家族等へ安否を通知できる可能性が高まる。そして、リーダライタ側のシステムにより、GPSを利用することにより、所持者の位置特定も可能となる。
【0040】
また、容器部20の先端部分は、従来の単一口径ではなく、二重構造となっているとともに、内側の口径が狭くなっている。このため、一挙に水を消費してしまったり、誤って漏水したりすることを防止できる。また、所持者の口は、リング部25に触れ、唾液等は隙間26から外部に落ちるので、衛生的である。さらに、リング部25は、取り外し可能であるため、リング部25及び容器部20内の洗浄に便利である。
【0041】
[他の実施形態]
本発明は上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、図4に示すように、口部21に捩じ込まれるリング部25の内径を狭めることにより、上記の実施形態と同様の効果が得られるようにしてもよい。かかる場合には、リング部25を取り外せば、口部21の口径は広がるので、内部の洗浄はし易くなる。
【0042】
また、笛部の吹口、共鳴部、歌口等の大きさ、材質及びその厚み等により、周波数は変化させることができるので、比較的容易に加工できる素材を用いて、周波数を所持者の好みで調節できる構成としてもよい。歌口周囲の角度を可変とすることにより、周波数を調節できる構成としてもよい。なお、笛部の数は、2つよりも多くすることが可能であり、それぞれの周波数の設定は自由である。
【0043】
また、上記の実施形態では、左右にそれぞれ別の周波数の笛部を設けていた。しかし、一方に複数の周波数の音が出せる笛部を構成してもよい。例えば、一つの突出した部分に、並列に二つの笛部が構成されており、吹口を吹くと、同時に2種類の周波数の音が出せる構造とすることも可能である。このように、一回の呼笛によって、複数の周波数の音が出せるようにすれば、人間にも動物にも、同時に注意を喚起することができる。なお、笛部を構成する突出した部分は一つでも、複数でもよい。さらに、笛部が存在すればよく、突出した部分は必ずしも設けなくてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、ICタグを内蔵していたが、電源、出力、アンテナ等が確保されたICチップを内蔵させることにより、単独でGPS機能が得られるように構成してもよい。また、鏡面仕上げは、シートの貼付、特殊インクによる印刷等によって行うこともできる。
【0045】
また、蓋部は、単独で持ち歩いても、複数の周波数を出す笛として使用することができる。さらに、蓋部に、海水、河川、湖沼、水溜り、泥水等の劣悪な状況の水であっても浄化が可能な筒状の浄水器を設け、浄水をストローのようにして吸い上げることができる口を形成することにより、飲料水を確保できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す外観斜視図。
【図2】図1の実施形態の上部構造を示す縦断面図。
【図3】図1の実施形態の口部の構造を示す拡大縦断面図。
【図4】本発明の他の実施形態の上部構造を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0047】
10…蓋部
11A,11B…笛部
11C…胴部
12…吹口
13…共鳴部
14…歌口
15…ねじ部
20…容器部
21…口部
22…ねじ山
23…目盛
24…鏡面仕上部
25…リング部
26…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に着脱可能な蓋部に、複数の笛部が設けられ、
前記複数の笛部は、異なる周波数の音を発するように設定されていることを特徴とする容器装着用笛。
【請求項2】
前記複数の笛部は、少なくとも一つが人間の可聴域の音を発するように設定され、少なくとも一つが人間の可聴域を超えた音を発するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の容器装着用笛。
【請求項3】
前記複数の笛部は、蓋部の外周側へ突出していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の容器装着用笛。
【請求項4】
液体を収容可能な容器を備え、
前記容器の側面には、目盛りが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器装着用笛。
【請求項5】
液体を収容可能な容器を備え、
前記容器の内面には、光触媒若しくは銀が付着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器装着用笛。
【請求項6】
液体を収容可能な容器を備え、
前記容器の一部に、鏡面部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器装着用笛。
【請求項7】
液体を収容可能な容器を備え、
前記容器の一部には、ICタグ若しくはICチップが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器装着用笛。
【請求項8】
液体を収容可能な容器を備え、
前記容器の口は、二重構造となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器装着用笛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−268305(P2008−268305A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107609(P2007−107609)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(500161443)株式会社環境向学 (8)
【Fターム(参考)】