説明

容器詰飲料

【課題】苦味、渋味が抑制された高カテキン含有飲料の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)
(A)非重合体カテキン類0.05〜0.6質量%
(B)穀物抽出物 可溶性固形物量として0.2〜1.1質量%
を含有する容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の非重合体カテキン類を含有し、かつ苦味、渋味が抑制され、かつ風味の良好な容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としてはコレステロール上昇抑制作用やアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。カテキン類のこのような生理効果を発現させるためには、成人一日あたり4〜5杯のお茶を飲むことが必要であることから、より簡便に大量のカテキン類を摂取するために、飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれている。この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物(例えば、特許文献3〜5参照)などを利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法がある。
【0003】
しかしながら、市販の緑茶抽出物の濃縮物をそのまま用いると、緑茶抽出物の濃縮物に含まれる成分が影響して渋味や苦味が強く、また喉越しが悪くなった。さらにカテキンによる生理効果を発現させる上で必要となる長期間の飲用には向かなかった。このように、高濃度カテキン配合飲料特有のカテキン由来の渋味を低減する飲料が望まれていた。
【0004】
高濃度カテキン含有飲料の苦味を抑制するためサイクロデキストリンを配合する技術(特許文献6〜8)等がある。
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】特開2002−142677号公報
【特許文献4】特開平8−298930号公報
【特許文献5】特開平8−109178号公報
【特許文献6】特開平3−168046号公報
【特許文献7】特開平10−4919号公報
【特許文献8】特開2002−238518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイクロデキストリンの添加により苦味を抑制するには多量のサイクロデキストリンの添加が必要になり、多量のサイクロデキストリンを添加すると、サイクロデキストリンによる異味が生じるという問題が生じる。
従って、本発明の目的は、茶以外の異味を生じることなく、高濃度カテキン含有容器詰飲料の苦味、渋味を抑制する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、種々の天然成分の配合による非重合体カテキン類の苦味、渋味に対する影響を検討してきたところ、穀物抽出物を一定量配合することにより、苦味、渋味が低減され、かつ風味の良好な飲料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B)
(A)非重合体カテキン類0.05〜0.6質量%
(B)穀物抽出物 可溶性固形物量として0.2〜1.1質量%
を含有する容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器詰飲料は、非重合体カテキン類を高濃度含有しているにもかかわらず、苦味、渋味が低減され、かつ風味が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で(A)非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称である。ここでいう非重合体カテキン類の濃度は、上記の8種の合計量に基づいて定義される。
【0010】
本発明の容器詰飲料中には、水に溶解状態にある(A)非重合体カテキン類を0.05〜0.6質量%、好ましくは0.07〜0.5質量%、さらに好ましくは0.08〜0.4質量%、最も好ましくは0.09〜0.3質量%含有する。非重合体カテキン類がこの範囲内であれば多量の非重合体カテキン類を容易に摂取し易く、非重合体カテキン類が効果的に体内に吸収されやすい。又、非重合体カテキン類含量が0.05重量%未満である場合、非重合体カテキン類の生理効果の発現が十分でなく。また、0.6重量%を超えると飲料の苦味が増加する。
【0011】
本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピカテキンからなるエピ体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、ガロカテキン及びカテキンからなる非エピ体がある。本発明の容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(D)非重合体カテキン類の非エピ体類の割合([(D)/(A)]×100)は20〜70質量%が好ましく、さらに30〜65質量%、特に40〜60質量%であることが保存安定性の観点から好ましい。
【0012】
本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなるガレート体と、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキンからなる非ガレート体がある。ガレート体は苦味が強いことから、本発明の容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(C)非重合体カテキン類のガレート体類の割合([(C)/(A)]×100)は10〜40質量%、さらに15〜38質量%、特に20〜35質量%であることが苦味抑制の観点から好ましい。
【0013】
本発明の容器詰飲料における(A)非重合体カテキン類と(E)カフェインとの含有質量比[(D)/(A)]は0〜0.16が好ましく、より好ましくは0.001〜0.15、さらに好ましくは0.01〜0.014、さらに好ましくは0.05〜0.13である。非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が高すぎると、飲料本来の外観を害し好ましくない。カフェインは、原料として用いる緑茶抽出物、香料、果汁及び他の成分中に天然で存在するカフェインであっても、新たに加えられたカフェインであってもよい。
【0014】
本発明における高濃度の非重合体カテキン類を有する容器詰飲料は、茶抽出物の濃縮物、特に緑茶抽出物の濃縮物を配合して非重合体カテキン類濃度を調整して得ることができる。具体的には、緑茶抽出物の濃縮物、あるいは当該緑茶抽出物の濃縮物に緑茶抽出液、半発酵茶抽出液又は発酵茶抽出液を配合したものが挙げられる。ここでいう緑茶抽出物の濃縮物とは、緑茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出した溶液から水分を一部除去し、場合によっては精製して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられる。また、緑茶抽出液とは濃縮や精製操作を行わない抽出液のことをいう。
【0015】
非重合体カテキン類を含有する緑茶抽出物の濃縮物としては市販の三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などから選択でき、またこれらを精製してもよい。精製の方法としては、例えば緑茶抽出物の濃縮物を水又は水とエタノールなどの有機溶媒の混合物に懸濁して生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法がある。あるいは茶葉から熱水もしくはエタノールなどの水溶性有機溶媒により抽出した抽出物を濃縮したものをさらに精製したもの、あるいは抽出物を直接精製したものを用いてもよい。
【0016】
本発明に用いる非重合体カテキン類は、緑茶抽出物又はその濃縮物をタンナーゼ処理により、ガレート体率を低下することができる。タンナーゼ処理は、緑茶抽出物の非重合体カテキン類に対してタンナーゼを0.5〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。タンナーゼ処理の温度は、酵素活性が得られる15〜40℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。タンナーゼ処理時のpHは、酵素活性が得られる4〜6が好ましく、さらに好ましくは4.5〜6であり、特に好ましくは5〜6である。
【0017】
本発明の容器詰飲料に配合される穀物抽出物の原料としては、玄米(水稲、陸稲等)、麦類(二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸大麦、小麦等)、豆類(大豆、黒大豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、ささげ、らっかせい、えんどう、りょくとう等)、雑穀(そば、とうもろこし、白ごま、黒ごま、はと麦、粟、稗、黍、キヌワ等)などの乾燥種子が使用できる。特に麦類、はと麦及び玄米から選ばれる1種又は2種以上を使用することがこのましい。これら穀物はそのまま穀物抽出物の原料として使用できる。特に焙煎したものが好ましい。
【0018】
これらの穀物抽出物は、前記穀物から水又は湯で抽出することにより得ることができる。またエタノール水溶液などを使用することもできる。穀物からの抽出方法及び装置は、ニーダ抽出機でもカラム型抽出機が使用できる。抽出効率の点でカラム型抽出機が好ましい。カラム型抽出機を用いた抽出方法としては、所定量の前記水溶液をタンクに入れて循環する回分方法、抽出用の前記水溶液をカラムの一方から他方に通液方向は上昇流又は下降流で1パス通液する連続方法が挙げられる。
【0019】
これらの穀物抽出物は飲料において、穀物抽出物由来の可溶性固形物量で0.2〜1.1質量%含有する。可溶性固形物量が小さい場合には苦味及び渋味抑制効果が十分でない。可溶性固形物量が高すぎると、風味が大きく変化してしまうとともに、容器詰飲料の製造時における加熱殺菌時において、緑茶抽出物の濃縮物と穀物抽出物との相互作用であると思われる不溶物が生成し、沈殿するので商品上好ましくない。好ましい可溶性固形物量は0.4〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜0.9質量%である。
【0020】
本発明の容器詰飲料では、風味及び保存安定性の観点でpHが5〜7の範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明の容器詰飲料ではさらにミネラルとしてナトリウム、カリウムを使用することができる。本発明に用いられるナトリウムとしては、アスコルビン酸ナトリウム、ナトリウム塩化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等及びそれらの混合物のような容易に入手しうるナトリウム塩を配合することができる。又、ナトリウムは加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。ナトリウム濃度が高くなるほど、飲料の変色する度合いが高くなる。又、ナトリウムを取りすぎると高血圧となるため過剰摂取は好ましくない。生理効果及び安定性の観点から、本発明の容器詰飲料中のナトリウム含有量は、0.001〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.4質量%、さらに好ましくは0.003〜0.2質量%である。
【0022】
本発明に用いられるカリウムとしては、茶抽出液に含有するカリウム以外の化合物を添加してその濃度を高めることができる。例えば、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁又は香料由来のものも含まれる。カリウム濃度は、ナトリウム濃度に比べて、長期間高温保存時での色調への影響が大きい。このように安定性の観点から、本発明の容器詰飲料中のカリウム含有量は、0.001〜0.2質量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.15質量%、さらに好ましくは0.003〜0.12質量%である。
【0023】
ここで、ナトリウム及びカリウムの合計濃度は、0.001〜0.5質量%が好ましく、この合計濃度がこの0.001質量%未満であると、飲む場面によっては味的に物足りなく感じる傾向があり、好ましくない。一方、0.5質量%を超えると、塩類自体の味が強く、長期間の飲用に好ましくない傾向がある。
【0024】
本発明の容器詰飲料ではさらにナトリウム、カリウム以外のミネラルを使用することができる。カルシウムの金属塩は、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、焼成カルシウム(うに殻焼成カルシウム、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム)等及びそれらの混合物のような容易に入手しうる塩を配合する。本発明の容器詰飲料で使用するカルシウム総量としては、1日所要量(米国RDI基準:US2005/0003068記載:U.S.Reference Daily Intake)の少なくとも10質量%以上である0.0012〜0.12質量%であることが好ましい。
【0025】
マグネシウムの金属塩は、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム等及びそれらの混合物のような容易に入手しうる塩を配合する。本発明の容器詰飲料で使用するマグネシウム総量としては、1日所要量(米国RDI基準)の少なくとも10質量%以上である0.00012〜0.006質量%であることが好ましい。
【0026】
亜鉛の金属塩は、亜鉛塩類、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等及びそれらの混合物のような容易に入手しうる塩を配合する。本発明で使用する亜鉛総量としては、1日所要量(米国RDI基準)の少なくとも10質量%以上である0.000048〜0.0024質量%であることが好ましい。
【0027】
鉄の金属塩は、塩化第二鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄液、硫酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄等及びそれらの混合物のような容易に入手しうる塩を配合する。本発明の容器詰飲料で使用する鉄総量としては、1日所要量(米国RDI基準)の少なくとも10質量%以上である0.00004〜0.002質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明の容器詰飲料には、ビタミンをさらに含有させることができる。好ましくは、ビタミンA、ビタミンB及びビタミンEが加えられる。またビタミンDのような他のビタミンを加えてもよい。ビタミンBとしてはイノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシ塩酸塩、シアノコバラミンから選ばれるビタミンB群があげられ、葉酸、ビオチンミネラルも本発明の飲料に用いることができる。これらのビタミンBは1日所要量(米国RDI基準)の少なくとも10質量%以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の容器詰飲料には、非重合体カテキン類の苦味を抑制させるためにサイクロデキストリンを併用することができる。サイクロデキストリンは、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリンが挙げられる。これらのサイクロデキストリンは、本発明の容器詰飲料中に好ましくは、0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.02〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.25質量%となるように添加する。
【0030】
このように本発明の容器詰飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0031】
本発明の容器詰飲料に使用できる容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0032】
また本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことも可能である。
【実施例】
【0033】
(非重合体カテキン類及びカフェインの測定)
メンブランフィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った(通常カテキン類の濃度は、質量/体積%(%[w/v])で表すが、実施例中の含有量は液量を掛けて質量で示した)。
【0034】
(飲料中の穀物抽出物由来の可溶性固形分)
飲料に配合する量の穀物から得られた抽出液量をAg、配合する飲料の総量をBgとしたとき、得られた抽出液を製品に含有される濃度まで希釈する。希釈濃度(%)は100×A/Bである。得られたサンプルを、糖度計(RX−5000α:アタゴ社製)にて20℃で測定した。可溶性固形分は、ショ糖換算での重量%で示される。
【0035】
(風味の評価)
製造した容器詰飲料の苦味、風味及び緑茶抽出物の精製物由来の製剤臭の評価は次の方法で行なった。3名の専門パネラーが官能評価を実施した。
(1)苦味の評価
硫酸キニーネ法(等価濃度試験法)による苦味の評価
硫酸キニーネ2水和物を表に記載の苦味強度に対応した濃度に調整する。評価サンプルを試飲した後、標準苦味溶液のどのサンプルと苦味の強さが等しいか判断する。参考文献:新版官能検査ハンドブック 日科技連官能検査委員会p448-449、Perception & Psychophysics,5,1696,347-351)
【0036】
【表1】

【0037】
(2)風味の評価
穀物風味:評価点
1:弱い
2:ちょうど良い
3:強い
【0038】
(3)緑茶抽出物の精製物由来の製剤臭低減の評価
緑茶抽出物の精製物由来の製剤臭:評価
問題あり:低減レベルが不十分
問題なし:低減できている
【0039】
(4)総合評価(加熱殺菌直後の不溶物の生成)
×:使用上問題があると思われる
○:使用上問題がない
【0040】
2)緑茶抽出物の精製物A
カテキン含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度1.1%;反応温度20℃、反応液のBrix20)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させる。得られたパウダーをエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)でカテキンを抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って得られたカテキン製剤。ガレート体率は30質量%。
【0041】
3)緑茶抽出物の精製物B
カテキン含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理を行わず、スプレードライ法によ
り噴霧乾燥させた。得られたパウダーからエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=
40:60)でカテキンを抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製
を行ってカテキン製剤水溶液(a)得られた。ガレート体率は52質量%。
【0042】
(実施例1)
2Lステンレスジョッキに90℃イオン交換水を穀物原料ブレンドAに対して20倍いれ、90±1℃に調整された温浴槽中で抽出湯温を90±1℃に維持した。続いて重曹及び穀物茶原料ブレンドAを調温された2Lステンレスジョッキに50g入れ、直後に攪拌翼にて30秒攪拌(250rpm)した。その後5分間隔で30秒攪拌し30分間抽出を行った。抽出終了後、ステンレスジョッキ内容物を20メッシュ及び80メッシュのふるいにて粗ろ過し、粗ろ過後25℃以下に氷温水浴にて冷却した。冷却後得られた抽出液を22号ろ紙にてろ過した。その得られた抽出液と緑茶抽出物の精製物A及びその他の副原料を配合し、イオン交換水にて全量を2500g希釈調合液とした。
得られた調合液を殺菌温度138℃、殺菌保持時間30秒相当の殺菌条件で殺菌し、86℃でPETボトルに充填し、キャッフ゜にて密閉した。その後流水にて冷却し、容器詰め飲料とした。
【0043】
(実施例2)
穀物原料ブレンドAの代わりに、穀物原料ブレンドBを使用した。それ以外は実施例1と同じ。
【0044】
(実施例3)
穀物原料ブレンドAの代わりに、穀物原料ブレンドCを使用した。それ以外は実施例1と同じ。
【0045】
(実施例4)
穀物原料ブレンドBをカラム型抽出機にて抽出した。カラム抽出機に75gの穀物茶原料ブレンドBを入れ、90±1℃に調温されたイオン交換水を投入し、10分間保持した。
その後、90±1℃に調温されたイオン交換水を、カラム抽出機上部から連続的にスプレーノズルを用い流量0.49L/分で投入し、同時にカラム抽出機下部より抽出液を抜き出し、1500gの抽出液を得た。得られた抽出液を25℃以下に氷温水浴にて冷却し、冷却後得られた抽出液を2号ろ紙にてろ過した。その得られた抽出液と緑茶抽出物の精製物A及びその他の副原料を配合し、イオン交換水にて全量を2500g希釈調合液とした。得られた調合液を殺菌温度138℃、殺菌保持時間30秒相当の殺菌条件で殺菌し、86℃でPETボトルに充填し、キャップにて密閉した。その後流水にて冷却し、容器詰め飲料とした。
【0046】
(比較例1)
穀物原料ブレンドAを使用しないで、それ以外は実施例1と同じ。
【0047】
(比較例2)
穀物原料ブレンドAの量を4.0%とした。それ以外は実施例1と同じ。
【0048】
(比較例3)
緑茶抽出物の精製物Aの代わりに、緑茶抽出物の精製物Bとした。それ以外は実施例1と同じ。
【0049】
(比較例4)
緑茶抽出物の精製物Aの量を9.30%とした。それ以外は実施例1と同じ。
【0050】
得られた飲料の風味を評価した結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2から明らかなように、硫酸キニーネを標準とした苦味の定量の結果、緑茶抽出物の精製物のみを配合した飲料に対して、穀物抽出物を一定量配合することにより、苦味、渋味が低減され、かつ風味の良好な飲料が得られることがわかった。
飲料中の穀物抽出物由来の可溶性固形分が過剰な場合、苦味の抑制効果及び製剤臭の低減効果は、発現されるが、加熱殺菌直後の不溶物の生成が生じ商品学上好ましくないことが示唆された(比較例2)。
用いる緑茶抽出物の精製物の非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体率[(C)/(A)]が過剰な場合、穀物抽出物を一定量配合しても苦味、渋味が低減されず、風味の良好な飲料が得られないことが示唆された(比較例3)。
用いる緑茶抽出物の精製物の非重合体カテキン類が過剰な場合、穀物抽出物を一定量配合しても苦味、渋味が低減されず、風味の良好な飲料が得られないことが示唆された(比較例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)
(A)非重合体カテキン類0.05〜0.6質量%
(B)穀物抽出物 可溶性固形物量として0.2〜1.1質量%
を含有する容器詰飲料。
【請求項2】
緑茶抽出物の濃縮物を配合したものである請求項1項記載の容器詰飲料。
【請求項3】
穀物抽出物が、麦類、はと麦及び玄米から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
(C)非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体率[(C)/(A)]が15〜40質量%である請求項1〜3記載の容器詰飲料。

【公開番号】特開2009−95266(P2009−95266A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268103(P2007−268103)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】