説明

容器

【課題】内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすこと。
【解決手段】内容物が収容される容器体と、ガスGを放出する放出孔10が形成された天板3aを有し、容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体3と、放出孔を覆うように天板上に重ねられ、外縁部が外周に沿って天板にシールされると共に、外縁部よりも径方向内側の領域が天板に部分的に接着された接着部15とそれ以外の非接着部16とに区分けされたシート体4と、を備え、シート体の外縁部には、部分的にシールが解かれた非シール部4aが形成されており、該非シール部と天板とで放出されたガスを流出させる流出口17を画成し、非接着部と天板とで、放出孔から放出されたガスを流出口に導く流通路20を画成した容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、液体状或いは固体状の食品や食材等の内容物を収納した容器を電子レンジ等で加熱した場合、内容物中の水分が蒸発してガス(水蒸気)が発生し、容器の内圧が高まってしまう。この内圧が所定圧以上になってしまうと、容器の蓋が外れる等の不都合が生じてしまう。そこで、内圧を容器外に適宜逃がすことができる容器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この容器は、容器本体に薄肉の薄膜部が形成されている。薄肉部には、スリットによって屈曲自在な複数の舌片が形成されている。そして、これら舌片が屈曲することで、容器内外が連通遮断されるようになっている。
この容器によれば、内圧が上昇して所定圧に達すると、複数の舌片が屈曲して容器内外が連通するようになっており、これにより容器内の圧力を逃がして内圧を低下させることが可能とされている。
なお、内圧が低下すると、複数の舌片が自身の復元力により元の状態に復帰し、容器内外の連通を遮断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3144711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の容器では、内圧が所定圧に達した時点で舌片が屈曲するので、内圧が急激に低下してしまうものであった。そのため、内圧が大きく変動してしまい、内圧の変動をできるだけ抑制しながら加熱を行うことが難しかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすことができる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る容器は、有底筒状に形成され、内部に内容物が収容される容器体と、ガスを放出する放出孔が形成された天板を有し、前記容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体と、前記放出孔を覆うように前記天板上に重ねられ、外縁部が外周に沿って天板にシールされると共に、外縁部よりも径方向内側の領域が天板に部分的に接着された接着部とそれ以外の非接着部とに区分けされたシート体と、を備え、前記シート体の外縁部には、部分的に前記シールが解かれた非シール部が形成されており、該非シール部と前記天板とで放出された前記ガスを流出させる流出口を画成し、前記非接着部と前記天板とで、前記放出孔から放出された前記ガスを前記流出口に導く流通路を画成することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る容器においては、加熱等によって内容物からガスが発生して容器内の圧力が高まると、この圧力の高まりによって放出孔を覆っているシート体が押し上げられる。そのため、放出孔からガスが放出され、天板とシート体との間に流れ込む。ここで、シート体は接着部を介して天板に部分的に接着されているが、接着されていない非接着部と天板とで流通路が画成されている。そのため、放出されたガスは、この流通路を流れながら流出口に導かれた後、該流出口より外部に排出される。これにより、容器内の圧力を容器外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。
【0009】
特に、シート体の非接着部と天板とで画成された狭い流通路を利用してガスを流すので、このガスは流動抵抗を受けてゆっくりと流出口から排出される。従って、従来と異なり、内圧が急激に低下することを抑制することができる。つまり、内圧の変動を抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。従って、容器内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物に与え難い。
【0010】
(2)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記流通路が、前記放出孔から放出された前記ガスの流動方向を少なくとも1回変化させながら前記流出口に導くことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る容器においては、流通路が放出孔から放出されたガスを流出口に導く際に、ガスの流動方向を少なくとも1回変化させるように形成されている。そのため、ガスは、流動方向が変わることで流動抵抗を受けるので、さらに速度が低下し、時間をかけてゆっくりと流出口から排出される。
従って、内圧が急激に低下することをより効果的に抑制することができ、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。
【0012】
(3)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記天板上における前記放出孔の開口周縁には、前記シート体を押し上げる環状の膨出部が形成され、前記シート体が、前記膨出部の周囲を囲む位置において前記天板上から浮き上がっていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る容器においては、放出孔を覆っているシート体が、膨出部によって押し上げられており、この押し上げによって膨出部の周囲を囲む位置において天板上から浮き上がっている。そのため、放出孔から放出されたガスは、シート体が浮き上がった隙間にスムーズに入り込み、そのまま流通路内に流れ易くなる。従って、流通路内にガスをスムーズに案内することができ、効率良く圧力を容器外に逃がし易くなる。
【0014】
(4)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記放出孔が、前記天板の略中心に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る容器においては、天板の略中心に放出孔が形成されているので、該放出孔と流出口との距離を十分に確保することができると共に、流出口をシート体の外縁部のどこに形成しようとも、両者の間に流通路を形成し易くなり、流通路の設計の自由度を向上することができる。
【0016】
(5)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記流出口が、前記シート体の外周に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る容器においては、流出口が複数形成されているので、複数の流出口からガスを均等に効率良く排出することができる。従って、内圧が急激に高まった場合であっても、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る容器によれば、内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすことができる。従って、容器内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物に与え難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る容器の実施形態を示す半縦断面図である。
【図2】図1に示す容器を上方から見た図である。
【図3】図1に示す領域Aを拡大した図である。
【図4】本発明に係る容器の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る容器の実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の容器1は、図1及び図2に示すように、内容物Wが収容される容器体2と、この容器体2に着脱自在に被着された蓋体3と、この蓋体3の天板3a上に重ねられたシート体4と、を備えている。
【0021】
なお、図1は、容器1の側面図(上側断面図)である。図2は、図1に示す容器1を上方から見た図である。但し、図2においては、シート体4を透過した状態で図示している。また、容器体2及び蓋体3の中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oといい、この中心軸Oに直交する方向を径方向、中心軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、中心軸Oに沿って蓋体3側を上側とし、容器体2の底部2a側を下側とする。また、内容物Wの一例として、図1では液体状の食品や食材等を想定して図示している。
【0022】
容器体2は、上部が開口した有底筒状に形成されており、底部2aと胴部2bとで構成されている。なお、本実施形態の胴部2bは、断面円形状に形成されている。胴部2bの上端部には、径方向外方に延在する環状のフランジ部2cが連設されている。
なお、この容器体2は、図示しない金型を利用した各種の成形方法、例えば、射出成形、熱成形(シート成形)や圧縮成形等、を利用して形成されたものである。
【0023】
蓋体3は、容器体2の開口部を覆って内容物Wを封止する部材であり、天板3aと周壁部3bとで構成されている。
天板3aは、その外縁部が容器体2のフランジ部2cに重なるサイズに形成された平面視円形状の部材であり、外縁部に沿って下側に延在するように周壁部3bが形成されている。この周壁部3bの内周面には、径方向内方に向かって突出した環状の係合凸部3cが形成されている。そして、この係合凸部3cがフランジ部2cに係合することで、蓋体3は容器体2の開口部に着脱自在に被着されるようになっている。
【0024】
なお、この蓋体3は、容器体2と同様に、射出成形、熱成形(シート成形)や圧縮成形等、種々の方法によって成形できるが、後述する接着部15やシール部(シール)は成形後の後加工によって容易に形成されるため、蓋体成形時の金型を変更する必要がなく、従来と同じ金型で容易に作製することができる。
【0025】
天板3aの中心には、容器1内で発生したガスGを放出して天板3aとシート体4との間に流す放出孔10が天板3aを貫通するように形成されている。また、この天板3a上には、図3に示すように、放出孔10の開口周縁に沿って上方に膨出した環状の膨出部11が形成されている。なお、図3は、図1に示す領域Aの拡大図である。
【0026】
シート体4は、図1及び図2に示すように、可撓性(伸縮性)を有する破れ難い材料から形成された平面視円形状の薄いシート(フィルム)であり、放出孔10を覆うように天板3a上に重ねられている。この際、シート体4は、外縁部が外周に沿って天板3aに接着されることでシールがなされている(図2の矢印Sで示す領域)と共に、外縁部より径方向内側の領域が天板3aに部分的に接着された接着部15と、それ以外の非接着部16とに区分けされている。
なお、シールや接着部15による接着は、熱圧着や接着剤等の各種の方法を利用すれば良い。
【0027】
ところで、シート体4の外縁部の一部は、シールが解かれた状態の非シール部4aとなっている。本実施形態では、中心軸Oを挟んで向かい合う2箇所の位置でシールが解かれている。そして、この非シール部4aと天板3aとで、放出孔10から放出されたガスGを外部に流出させる流出口17を画成している。つまり、本実施形態では、流出口17が2つ画成されている。
【0028】
また、本実施形態の接着部15は、周方向に延びる円弧状とされ、周方向及び径方向にそれぞれ規則的に並んだ状態となっている。そして、接着されていないシート体4の非接着部16と天板3aとで、放出孔10から放出されたガスGを流出口17に導く流通路20を画成している。
よって、本実施形態の流通路20によれば、放出孔10から放出されたガスGを、径方向外方に流動させた後、周方向に流動させ、その後再度径方向外方に流動させた後、周方向に流動させ…といったように、ガスGの流動方向を複雑に変化させながら流出口17に導くことができるように設計されている。
【0029】
また、シート体4は、図3に示すように、天板3a上に形成された膨出部11によって中央部分が押し上げられた状態となっており、膨出部11の周囲を囲む位置において天板3a上から浮き上がっている。つまり、膨出部11の周囲には、天板3aとシート体4との間に隙間Hが確保されている。
【0030】
次に、上述した容器1を電子レンジ等で加熱した場合について説明する。
この場合には、まず図1に示すように加熱によって内容物Wから水蒸気等のガスGが発生し、容器1内の内圧が高まり始める。すると、この圧力の高まりによって放出孔10を覆っているシート体4が押し上げられる。そのため、放出孔10からガスGが放出され、天板3aとシート体4との間に流れ込む。そして、このガスGは、図2に示すように、シート体4の非接着部16と天板3aとで画成された流通路20に沿って流れながら流出口17に導かれた後、該流出口17より外部に排出される。
これにより、容器1内の圧力を容器1外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。
【0031】
特に、本実施形態の流通路20は、シート体4の非接着部16と天板3aとで画成された狭い流通路であるので、ガスGは流動抵抗を受けてゆっくりと流出口17から排出される。従って、従来と異なり、内圧が急激に低下することを抑制することができる。つまり、内圧の変動を抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができる。
しかも、流通路20は、流出口17にガスGを導く際に、ガスGの流動方向を複雑に変化させながら流出口17に導くように形成されている。つまり、ガスGは、放出孔10から放出された後、径方向外方に流動し、その後周方向に流動し、その後再度径方向外方に流動し、といったように、径方向外方向への流動と周方向への流動とを順次繰り返しながら向きを変え、流出口17に導かれるようになっている。
そのため、ガスGは、方向が変わることで流動抵抗を受けるので、さらに速度が低下し、時間をかけてゆっくりと流出口17から排出される。よって、内圧の変動をできるだけ抑制しながら、圧力を容器1外に逃がすことができる。
【0032】
このように、本実施形態の容器1によれば、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができ、容器1内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物Wに与え難い。
【0033】
また、放出孔10を覆っているシート体4が膨出部11によって押し上げられており、この押し上げによって膨出部11の周囲を囲む位置において天板3aから浮き上がっている。そのため、放出孔10から放出されたガスGが、シート体4が浮き上がった隙間Hに入り込み、そのまま流通路20に流れ易くなる。従って、流通路20内にガスGをスムーズに案内することができ、効率良く圧力を容器1外に逃がし易くなる。
【0034】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、容器体2を断面円形状としたが、有底筒状であれば、断面楕円形状や断面角形状にしても構わない。この際、容器体2の形状に合わせて蓋体3の形状を適宜変更すれば良い。
【0036】
また、上記実施形態では、容器体2のフランジ部2cに蓋体3の係合凸部3cを係合させることで、容器体2の開口部に蓋体3を着脱自在に被着させた構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、蓋体3を容器体2に螺合させることで着脱自在に被着させる構成としても構わない。
【0037】
また、上記実施形態では、放出孔10を天板3aの中心に形成したが、放出孔10の位置は中心に限られず、天板3aのどの位置に形成しても構わない。また、放出孔10の数は、1つに限定されるものではなく、複数個形成しても構わない。
但し、放出孔10を1つ形成する場合には、上述したように天板3aの中心に放出孔10を形成することが好ましい。こうすることで、放出孔10と流出口17との距離を十分に確保することができると共に、流出口17をシート体4の外縁部のどこに形成しようとも、両者の間に流通路20を形成し易くなり、流通路20の設計の自由度を向上することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、流出口17を2つ形成したが、1つでも構わないし、3つ以上の複数個形成しても構わない。但し、複数個形成する場合には、流出口17の数が多いほどシート体4のシール性が劣るので、4つ程度が好ましい。
【0039】
また、シート体4を部分的に接着させる際、ガスGの流動方向を少なくとも1回変化させながら流出口17に導くように流通路20が形成されることが好ましい。
例えば、図4に示すように、シート体4の半分側に一方の流出口17に繋がる一方の流通路20が形成され、シート体4の残りの半分側に他方の流出口17に繋がる他方の流通路20が形成され、両流通路20がそれぞれガスGの流動方向を径方向外方向と周方向とに順次繰り返しながら変化させるように、シート体4を部分的に接着しても構わない。
この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。なお、図4においてはシート体4を透過した状態で図示している。
【符号の説明】
【0040】
G…ガス
W…内容物
1…容器
2…容器体
3…蓋体
3a…天板
4…シート体
4a…非シール部
10…放出孔
11…膨出部
16…非接着部
17…流出口
20…流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され、内部に内容物が収容される容器体と、
ガスを放出する放出孔が形成された天板を有し、前記容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体と、
前記放出孔を覆うように前記天板上に重ねられ、外縁部が外周に沿って天板にシールされると共に、外縁部よりも径方向内側の領域が天板に部分的に接着された接着部とそれ以外の非接着部とに区分けされたシート体と、を備え、
前記シート体の外縁部には、部分的に前記シールが解かれた非シール部が形成されており、該非シール部と前記天板とで放出された前記ガスを流出させる流出口を画成し、
前記非接着部と前記天板とで、前記放出孔から放出された前記ガスを前記流出口に導く流通路を画成することを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記流通路は、前記放出孔から放出された前記ガスの流動方向を少なくとも1回変化させながら前記流出口に導くことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器において、
前記天板上における前記放出孔の開口周縁には、前記シート体を押し上げる環状の膨出部が形成され、
前記シート体は、前記膨出部の周囲を囲む位置において前記天板上から浮き上がっていることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の容器において、
前記放出孔は、前記天板の略中心に形成されていることを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の容器において、
前記流出口は、前記シート体の外周に沿って複数形成されていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−93576(P2011−93576A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250446(P2009−250446)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】