説明

容易に交換可能な切断刃を有するラチェット式手工具

プラスチック管もしくは管材、ゴムホースなどをきれいに素早く切断するのに特に適した携帯型手動の切断工具(10)が提供される。工具は、追加の工具を使用せずに、切断工具に容易に手動で取り外し可能で、交換可能な刃(20)を有する。刃は工具内に摺入されて、最初の動作または装着位置までわずかに回転される。このとき、刃枢動ピン(46)は工具内に摺入されて、刃に設けられた孔(66)内を貫通され得る。ラチェット式駆動機構(140)は可動ハンドル(16)と刃とを相互接続して、ハンドルの操作時に刃を切断位置の方に徐々に駆動させる。物品の切断時に、刃は、例えば、工具のハンドル(12、16)を広げることですぐに退避位置まで戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月14日出願の米国特許非仮出願番号第11/818,406号の利益および優先権を主張するものであり、この内容全体はあらゆる点から参照により本明細書内に組み込まれる。
【0002】
本出願は、切断装置の技術に関し、より詳細には、プラスチック製のパイプや管材、ゴム製ホース、または他の同様の非金属製の材料などの円形断面を有するワークを含むワークを切断するための手工具および切断刃に関する。好適な実施形態は、手でプラスチック管を切断するためのラチェット式管材用カッタ装置およびそのための切断刃に関して説明されるが、実施形態は、切断、クリッピング、またはその他の形で関連ワークに力を印加するためのさまざまな手動および動力装置の広い範囲を含む他の分野に適用できることは理解されたい。
【背景技術】
【0003】
これまで、例えば、スケジュール40PVCの管材のような商業用水道システムおよび家庭用水道システムで使用される特質のプラスチック管材を切断するためのさまざまな管材用カッタが提供されてきた。このようなカッタは、Aubriotによる米国特許第6,513,245号明細書およびKingによる米国特許第6,658,738号明細書内に記載の鋏式カッタを含むものであった。この鋏式カッタは、切断される管がカッタの受け台の部分で支持され、受け台と切断刃との間に置かれた管を切断するために切断刃が固定枢動軸を中心として変位可能なカッタである。Kingの特許では、枢動軸はさまざまな直径の管の切断に適合するように調節可能である。
【0004】
ハンドルを強く握る動作が必要である鋏式カッタは、切断動作を達成するのに、特に、大きな直径の管材の切断の場合に、使用者側で過度の労力が必要となる。この点で、1つにはこれらのツールは、ユーザが切断負荷をかけるのにハンドルを強く握りながら管とカッタとを反対方向に遥動または回転しなければならない。さらに、最初に大きい直径の管を切断するのに、手のひらが小さい使用者は管の最初の切断を行うのに必要な閉じる力をハンドルにかけるのが困難であり、切断を始めるのに両手でハンドルを握らなければならないことが多い。
【0005】
従来の利用できる別のタイプの管材用カッタは、切断される管を支持する受け台と、ラチェット機構を使用して断続的に受け台の方向に変位される枢動切断ジョーまたは切断刃とを含む。このようなカッタの一例は、Babbによる米国特許第4,368,577号に示されている工具である。この工具は、切断刃がハウジング内に収容されている退避位置から切断刃が固定アンビルと協働して切断される物品を切断する切断位置まで徐々にまたは段階的に回転可能な切断刃を有する工具である。ラチェット駆動部は、可動のハンドルと切断刃とを相互接続して、ハンドルを操作して切断刃を切断位置の方向に徐々にラチェット駆動するようにする。爪は、刃によって噛合されたときに切断される物品の弾力性により引き起こされる切断刃の開咬を防ぐ。刃は対象物を切断後、爪を係止する操作をした親指を離すことにより退避位置まで戻される。例えば、Tanakaによる米国特許第4,312,127号およびAndersonによる米国特許第4,674,184号で示されたような他のラチェットカッタもさらに提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなラチェット式切断手工具に設けられたラチェット機構により、断続的な切断のたびにカッタのハンドルの互いのストロークがより小さくなり、このことにより、手のひらの大きくない使用者でもカッタを操作することができる。しかしながら、カッタは構造的に、特にカッタ刃を取り付けるために使用される機構に関しては幾分複雑である。さらに、これらの先行技術の装置では、刃の取り外しや交換などのメンテナンスがユーザにとっては面倒である。具体的には、上述したラチェットカッタは、カッタ刃を取り外しおよび交換するために、まず部分的に分解されなければならない。これらの工具の使用者は、これが迅速にできない、または簡単な工程でないことがわかっている。よくてもラチェットカッタの中には、刃止めネジ/ピンを取り外すことや、刃バネを刃との接続状態から外すことが必要なものもある。典型的には、刃止めネジ/ピンはネジボルトおよびナットを配位してなり、刃に対して負荷を加えるためにさらに付勢し、係止するワッシャおよびバネを含むことが多い。さらに、バネは刃に引っ掛けられることが多い、またはそれ以外で特別な接続部を使用して刃に固定されることが多く、典型的には、刃を戻った位置または退避位置で予め負荷を加えるために、緊張状態で保持される。したがって、刃の交換やその他の点検をする際に、バネはまず何らかの手段で引き伸ばされて、その後、刃と接続されなければならない。典型的には、特に、現場で刃の交換が必要である場合には、これもまた容易な工程ではない。さらに、工具は、典型的なラチェット式管材用カッタの切断刃を交換するのに十分な時間とかなりの専門的な知識を伴うことが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願により、特に上述したタイプのプラスチック管材のための改良型のラチェット式管材用カッタが提供される。このラチェット式管材用カッタは、手動で容易に且つ追加の工具を必要とせずに交換可能なカッタ刃を含む。この点で、具体的には、手動の切断工具は、第1の端部の第1のハンドグリップ部と反対側の第2端部のワーク受け台部とを画定する第1のハンドル部材を特徴とする。ピン部材は、選択的に第1のハンドル部材上で坦持される。第2のハンドル部材は、第1の端部に第2のハンドグリップ部を画定し、その第2の端部で第1のハンドル部材と枢動可能に接続される。刃のスリーブ部材は第1のハンドル部材上で担持され、第1のハンドル部材に対する第1の位置の方に付勢される。駆動爪は第2のハンドル部材上で担持され、カッタ刃はピン部材上で担持される。カッタ刃は、外縁部を画定する平らな本体部材と、外縁部の切断部によって画定される切断縁部と、外縁部の歯状部により画定される複数の離間した歯であって、切断工具の駆動爪と選択的に噛合する構成の複数の歯と、外縁部のスロット部により画定されるスロットであって、カッタ刃が第1のハンドル部材に差し込まれるときに刃のスリーブ部材を選択的に受承する構成のスロット部と、本体部材上のアタッチメント部であって、カッタ刃を切断工具と枢動可能に接続するために選択的にピン部材と結合する構成のアタッチメント部とを含む。
【0008】
本出願の別の態様により、特に本明細書内で示されたタイプのラチェット式切断工具で使用する改良型のカッタ刃が提供される。本出願のこの態様では、切断刃は、手動で容易にスナップ係止ピンの取り外しや差し込みをすることで、また刃を動作位置まで摺動させることで、切断刃が切断工具から容易に取り外しや差し込みができる形状である。それにより、刃の交換は、追加の関連する工具を必要とせずにユーザにより行うことができる。この点で、より具体的には、刃は、外縁部を画定する平らな本体部材と、外縁部の切断部によって画定される切断縁部と、外縁部の歯状部により画定される複数の離間した歯であって、切断工具の駆動爪と選択的に噛合する構成の複数の歯と、外縁部のスロット部により画定されるスロットであって、カッタ刃が第1のハンドル部材に組み込まれたときに選択的に刃のスリーブ部材を受承する構成のスロット部と、本体部材上のアタッチメント部であって、カッタ刃を切断工具と枢動可能に接続するために選択的にピン部材と結合する構成のアタッチメント部とを特徴とする。
【0009】
したがって、容易に交換可能で追加の工具の必要のない切断刃を有する改良型のラチェット管材用カッタを提供することが本出願の重要な目的である。
【0010】
別の目的は、上述した特徴のラチェット式管材用カッタで使用する改良型の切断刃を提供することである。
【0011】
本発明のラチェット式管材用カッタおよびそのカッタ用の刃の他の目的、利点、および利益は、以下の好適な実施形態の詳細な説明を読み、理解すれば、当業者には明らかになる。
【0012】
図面は、本発明の実施形態の単なる例示目的であって、本発明を限定するものと解釈するものではない。本発明は、添付の請求項により規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】好適な実施形態に従うラチェット式管材用カッタの斜視図である。
【図2】本出願に従う図1に示されたラチェット式管材用カッタの分解斜視図である。
【図3】図1および図2のラチェット式管材用カッタのカッタ刃の平面図である。
【図4】図1および図2のラチェット式管材用カッタの刃枢動ピンの斜視図である。
【図5】図1および図2のラチェット式管材用カッタの刃スリーブの斜視図である。
【図6a】追加の工具を使用せずに新しい切断刃をカッタに差し込むステップを示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図6b】追加の工具を使用せずに新しい切断刃をカッタに差し込むステップを示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図6c】追加の工具を使用せずに新しい切断刃をカッタに差し込むステップを示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図6d】追加の工具を使用せずに新しい切断刃をカッタに差し込むステップを示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図6e】追加の工具を使用せずに新しい切断刃をカッタに差し込むステップを示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図7a】ラチェット式切断動作時の駆動掛止爪の運動を示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図7b】ラチェット式切断動作時の駆動掛止爪の運動を示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図7c】ラチェット式切断動作時の駆動掛止爪の運動を示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【図7d】ラチェット式切断動作時の駆動掛止爪の運動を示す、本発明のラチェット式切断工具の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さらに詳細に図面を参照する。図面の説明は、単に本発明の好適な実施形態を例示するものであり、本発明を限定するものではない。図1は、本発明のラチェット式管材用カッタ装置10の全開位置における斜視図であり、図2は、その好適な種々の部品と本発明の工具内における好適な配置とを示す分解斜視図である。
【0015】
図面で示されるように、ラチェット式管材カッタ10の好適な形態は、ハンドル軸14上で第2の細長部材16と枢動可能に取り付けられた第1の細長部材12と、刃軸22上で枢動可能に取り付けられたカッタ刃20とを備える。図示された好適な実施形態では、第1の細長部材12は、ハンドルの半部12aおよび12bによって画定され、その各々が第1の端部24a、24bとそれに反対側の第2の端部26a、26bをそれぞれ有する。第1の端部24a、24bは、対応する円弧状受け台部18a、18bが設けられ、ラチェット式カッタが組み立てられたときに切断される管または他のワークを支持するための受け台領域18となる。図では受け台部が示されているが、ワークは切断時に、さらに、アンビル状保持部、ストラップ、付着部材、平面部もしくは傾斜部のような他の形態、またはその他の手段を使用して定位置で保持されてもよいことは理解されたい。第1の細長部材12の第2の端部26a、26bは、第1のハンドル部28a、28bが設けられ、これらは合わさって、ラチェット式切断工具10の使用時に、工具10を把持するために使用される第1のハンドルを形成する。
【0016】
さらに、図示された好適な実施形態のラチェット式切断工具10は、ハンドル半部12a、12bの各々に設けられた対向ピン支承部36(図2では一方のみ見える)で受承される両側に第1の端部32および第2の端部34を有するピン30によって、第1の細長部材12と枢動可能に接続された第2の細長部材16を含む。このことで、第2の細長部材16および枢動ピン30は、組み立てられたハンドル半部12aと12bとの間に捕捉される。全体的に見て、第2の細長部材16は、第1および第2の端部40、42を含み、第1の端部40はハンドル軸上で第1の細長部材12と枢動可能に取り付けられ、第2の自由端部42は工具の第2のハンドル部44を画定する。第2のハンドル部44は、第1のハンドル部28と補合する構成であり、一緒になって本発明のラチェット式工具10を手で把持し、操作するのに有用なものとなる。
【0017】
第1の細長部材12の中央よりの位置には、カッタ刃受承部90が位置決めされる。カッタ刃受承部90は、以下で詳細に説明されるように、レンチやネジ回しなどの追加の工具を使用しなくても、容易に手動でカッタ刃の取り外しや交換ができるように、第1および第2の細長部材12、16に対するカッタ刃20の運動を受承して案内するためのものである。刃は差し込み時に、ハンドル半部12aと12bとの間に形成される隙間19に摺入され、その後、刃を工具内の動作位置に位置決めする固定の刃位置決めピン92を中心としてわずかに回転される。手動自己係止式の枢動ピン46は、ハンドル半部12a、12bに差し込まれ、刃に形成されている孔を貫通する。ピン46は、工具の使用時に刃を定位置に保持する。さらに、第2の細長部材16の第1の端部40よりの位置には、カッタ刃ラチェット機構140が設けられる。カッタ刃ラチェット機構140は、カッタ刃が実質的に第1の細長部材12内に収容されている退避位置からカッタ刃が固定アンビルまたは受け台部18a、18bと協働して切断される物品を切断する伸長位置または切断位置まで徐々にまたは段階的にカッタ刃20の回転可能な運動を案内するためのものである。カッタ刃ラチェット機構140については、以下でより詳細に説明する。
【0018】
ラチェット式切断工具10はさらに、図示された実施形態では、カッタ刃20内の刃ピン開口部66まで延びる刃枢動ピン46によって、第1の細長部材12上に枢動可能に取り付けられたカッタ刃20を含む。刃枢動ピン46は、図2の分解図では本発明の工具内の好適な配置で示され、図4では拡大斜視図で示されている。一般的には、刃枢動ピン46は両側に第1および第2の端部48、50を有する。刃枢動ピン46の第1の端部48は、第1の細長部材12aによって画定されるピン支承部45で選択的に受承される。さらに、第1の端部48は、ピンが親指などで容易に工具内に押し込まれるようにするためのローレット加工の平らな上部と、刃20の交換のために工具10からピン46を引き抜くためにピン46が指を使って容易に把持されるようにするための輪郭付き肩部を含む、ローレット加工の輪郭付き把持頭部49を画定する。引き抜くためには、まず第2の端部50を押すなどしてピンを軽く外して頭部49を浮かせて、下側の輪郭付きの部分に指が届きやすくするのが最も便利である。
【0019】
選択的に十分に差し込まれたときの動作位置で、ピン46の第2の端部50は、他方の細長部材12b内に画定される通路54まで延びる。このようにして、カッタ刃20は、ハンドル軸14とほぼ並行に並んだ刃軸22上の刃枢動ピン46上で担持され、刃枢動ピン46を中心として可動である。刃枢動ピン46は、好ましくはピンの第2の端部50上で担持される1つ以上の戻り止めボール51によって、動作位置の定位置で保持される。図示された実施形態では、ピン46の第2の端部50上で1個の戻り止めボール51がピンの長さに沿った位置で担持され、ピン46の把持頭部49が第1の細長部材12aに十分に着座したときに戻り止めボール51は通路54を超えた位置になる。この位置では、戻り止めボール51は通路54近くで反対方向に向かって外側に広がり、これにより選択的にピン46を動作位置で係止する。さらに、当業者は、カッタ刃20はピン46に取り付けられたときに、ハンドル軸14およびカッタ刃軸22の各々に垂直に延びる面で枢動可能に可動であることは理解されたい。さらに、刃枢動ピン46は、第1の細長部材12aとの接続部から、ピンを手で引き抜くことで選択的に取り外し可能であり、それによりカッタ刃20を工具10から取り外すことができる。
【0020】
具体的に図3では、一実施形態のカッタ刃20が第1および第2の細長部材12、16から取り外された状態で示されている。一般的には、刃は好ましくは外縁部62と刃のピン開口部66を画定する内縁部64とを有する本体部材60を含む。好適な実施形態によれば、本体部材60は一般に環状の平面構造を画定する。図示されるように、内縁部64によって画定される刃ピン開口部66は円形である。しかしながら、外縁部62は遠回しの形(circuitous)をしており、それにより関連ワークを切断し、カッタ刃20を容易に、また追加の工具を必要とせずに工具から取り外して交換できるようにする形状を画定する。縁部62により形成される形状の中で、スロット部68は外縁部の一部にある対向壁面70、72間にスロット69を画定する。スロット部68は、切断刃20を工具に差し込むときに選択的に刃スリーブ104(図6e)を受承する構成である。刃スリーブ104は、以下でより詳細に説明するように、工具の使用時にスロット部68内で担持される。
【0021】
歯状部74は、本体部材60の外縁部62によってスロット部68に隣接して画定される。歯状部74は、本発明の工具の第2の細長部材16上に担持された駆動爪142、掛止爪144(図7aから7d)を噛合させる構成の複数の離間した歯75を画定する。工具のハンドルの操作時に、駆動掛止爪はカッタ刃20の歯状部74と協働して、徐々に刃を切断位置に向かって駆動させる。
【0022】
続いて図3を参照すると、さらに、カッタ刃20の本体部材60は、外縁部62の一部に形成される鋭利な切断縁部78を含む切断部76を画定する。図示された実施形態では、切断部76は線形であるが、略線形縁部、傾斜形状、曲線縁部、鋸歯状縁部など所望の他の形状や構造が使用されてもよい。
【0023】
最後に、図3では、本体部材60の外縁部62によって切欠部80が画定される。切欠部80は、外縁部62によって画定される切り欠き81を含む。切り欠き81は、第1の細長部材12の第1および第2の半部12a、12b間で坦持される刃位置決めピン92(図6a)を係合するように構成されている。カッタ刃20を工具10内に取り込むときに、容易に手動でカッタ刃を工具本体内に摺入させるために、刃は最初、切り欠き81と刃位置決めピン92との係合によって工具本体に対して位置決めされ、刃スリーブ104に対してスロット部68を位置決めする。
【0024】
図3、図5および図6aから図6eでは、好ましいカッタ刃受承器具90およびカッタ刃20を管材用カッタ10内に摺動可能に装着する方法について説明する。管材カッタからのカッタ刃の取り外しは、単に刃枢動ピン46を引き抜いて、工具本体から刃20を抜き出すことで行われることは理解されたい。刃は、位置決めピンに対して刃を押し付ける小さいバネの力によって開口した装着位置で保持される。しかしながら、刃枢動ピンが取り外された後、刃は手でつかんで引き抜いて取り外される。バネの予負荷の張力を克服するのに、わずかな力が必要である。しかしながら、いずれにしても、好適な実施形態では、カッタ刃は追加の工具もしくは特殊な工程の必要もなく、または操作者に過度の負担をかけずに、容易に点検可能である。
【0025】
図6aは、カッタ刃20の最初の装着位置を示す図である。図6eは、カッタ刃20が完全に着座し、ピン留めされた位置で、受け台部18に配置された関連ワークを切断準備の状態を示す図である。図6bから図6dは、管材用カッタ10に対するカッタ刃20の第1、第2、第3の中間の装着位置を示す図である。図6aから図6eでは、簡略化のために第1および第2の細長部材12、16の始部のみが部分切り取り図の形で示されていることを理解されたい。
【0026】
最初に、図6aでは、カッタ刃20が最初の装着位置で示されており、このとき、本体部材60の切欠部80は第1の細長部材12内で受承されている。より詳細には、切欠部80により画定される切り欠き81は、カッタ刃受承部90の刃位置決めピン92に着座した位置にある。図示された刃の位置では、カッタ刃受承部90の残りの部分は露出した状態で、第1の細長部材12a内に形成された弓状のJ字型の溝94を含む。溝94は、図6aで見られるような形状になる。溝94は、第1および第2の端部96、98を有する。これらの端部は、図示されているように、それぞれ略線形および略円形の構造である。取付ポスト100は、溝94の第1の端部96で溝94の基部から延びる。取付ポスト100は、刃バネ102の固定端部と接続する構成である。好ましくは、刃バネ102は溝94内に完全に収容されるように寸法付けられ、そのようなサイズを有する。ポスト100およびバネ102の配置が図示されているが、工具ハンドル12に対して刃104を付勢する他の手段、例えば、ねじりバネまたは他の機構もしくは手段も同様に使用できる。
【0027】
溝94の第2の円形端部98は、刃スリーブ104の自由端部106を受承するように構成されている。刃スリーブは、説明や考察を容易にするために工具10とは別個に図5の拡大斜視図で示されている。刃スリーブ104の第2の端部108は、ピン支承部45の円形の隆起ハブ部47を貫通受承するための円形開口部110を画定する。このように、刃スリーブ104はハブ部47上で坦持され、刃軸22と一致する中心の弧を描くように回転可能である。刃スリーブ104の自由端部106は、溝94の第2の端部98により画定される円弧エリアと一致する円弧内を移動する。その好適な形態では、刃スリーブ104は、刃バネ102を使用して溝94の第1の端部96の方に付勢される。より詳細には、上述したように、刃バネ102の第1の端部が取付ポスト100と接続されている。さらに、刃バネ102の第2の端部は、刃スリーブ104の自由端部106と接続されている。刃バネ102は、図6aに示されているように、刃スリーブ104をわずかな緊張位置まで付勢するのに使用されるが、刃スリーブを第1の端部96まで移動させ、図6aの最初の予負荷位置まで戻すために刃スリーブを付勢する他の形態、例えば、磁気手段、ねじりバネ、レバーなどが使用されてもよいことは理解されたい。
【0028】
図6aに示されたカッタ刃20の最初の装着位置では、刃が弧120状に刃位置決めピン92を中心として回転し、それによりカッタ刃の下方部が図6bの第1の中間の装着位置で示されるように第1の細長部材12内を摺動可能に移動できるようになる。図6bでは、カッタ刃20は図6aに対して前進した回転位置で示されている。このとき、本体部材60のスロット部68は、刃ピン開口部112近くに位置決めされる。刃枢動ピン46が刃ピン開口部112から取り外されて、カッタ刃20はさらに弧120状に回転して前進し、この際にスロット60の壁表面72と刃スリーブ104のタブ部とが接触する。図6cに示されるように、刃スリーブ104の溝94に対する最初の予負荷位置および取付ポスト100の配置により、刃スリーブ104のタブ部107は本体部材60により画定されるスロット部68のスロット69内で容易に受承可能になる。
【0029】
次に、カッタ刃20はさらに細長部材12内を図6dに示された第3の中間の装着位置まで前進する。図示されるように、カッタ刃20はさらに、刃ピン開口部66がカッタ刃受承部90の刃ピン開口部112と位置合わせされるまで取付ポスト92を中心として回転する。この時点で、カッタ刃20および刃スリーブ104の両方が刃枢動ピン46を手動で第1および第2の細長部材12a、12bに差し込むのに最適な位置に配向されて、図6eに示されるような完全な着座位置でカッタ刃20を工具本体と回転可能に結合する。概して、図6cおよび図6dで示される位置間の刃スロット面72と刃スリーブ104との嵌合が、刃20を刃係止ピン20および工具10に対して予負荷することは理解されたい。図6dで示される位置では、刃20は刃スリーブ104を使用して刃に作用するバネ102の力によって定位置で保持される。
【0030】
カッタ刃をカッタ本体に差し込む上述の工程は、図6aから図6eで見られるような停止コマの図で示されるような段階的な工程ではなく、手動でスムーズに一連の動作で容易に行われることは理解されたい。これらの図は、組み付けおよび取り外し工程を説明するためだけのものであり、本出願を限定するものではない。基本的に、刃は、基本的に位置合わせ指標の働きをする刃位置決めピン92とほぼ直線経路で工具本体に差し込まれることができる。好適な実施形態では上述の回転が生じるが、その回転が生じるのはごくわずかであり、単に説明のために、これらの好適な実施形態を示す図では若干誇張されて回転が示されているが、これは本出願を限定するものではない。
【0031】
図7aから図7dを参照すると、動作時、カッタ刃20は退避位置(図6eおよび図7a)にあり、ハンドル部28、44が開口して(図1で示すように)、切断される物品は受け台位置18に配置される。使用者は、第1の細長部材12により画定されるハンドル部28を手のひらが押さえ付けるように、また第2の細長部材16により画定される可動ハンドル部44を指が把持するように片手でカッタ工具10を手に取る。
【0032】
刃20が物品(図示せず)と噛合すると、使用者は次に可動ハンドル44を固定ハンドル28の方に強く握って、ハンドル組立部を閉じる。このことで、次に、カッタ刃ラチェット機構140の駆動爪142がカッタ刃20の本体部材60の歯状部74と噛合する。図面に示されるように、好ましくはカッタ刃ラチェット機構140は、駆動爪142、掛止爪144、およびカッタ刃20の歯状部74で画定される複数の鋸状歯75を含む。好適な形態では、駆動爪142および掛止爪144は、第2の細長部材16の第1の端部40により形成される、または第1の端部40から延びる各々のピン146、148上で回転可能に担持される。駆動爪142は、好ましくはねじりバネ143(図2)を使用して、工具ハンドル16の一部と噛合して、図7aで示される位置で保持される。そのために、駆動爪142は、図7aから図7bで見られるように右側にのみ回転可能であり、さらに、これらの図面の完全な前進位置にある。同様に、掛止爪144は、停止係止ねじりバネ145(図2)により付勢され、定位置で保持される。
【0033】
使用者がハンドル部を互いに強く握ると、駆動爪142の第1の端部150は、図7bで示されるような方法で、歯状部74の第1の歯75と噛合するようにして弧状に前進する。使用者がさらにハンドルを強く握り続けると、駆動爪142はカッタ刃20を退避位置から切断位置まで一瞬回転させる。この増分移動は、図7cに示されている。掛止爪144は、図7dで示されるように第2の歯と噛合するように位置決めされるので、ハンドルが開き始めるとき、また駆動爪42がラチェット歯との噛合から外れるときに、刃20は刃バネ102によって退避位置の方向に動かされるようにその退避位置まで無理に戻されるのが妨げられることが理解される。したがって、使用者が再びハンドルを握ると(すなわち、閉じると)、駆動爪142は別のラチェット歯と噛合して、さらに刃20を切断位置まで割り出し送りする(すなわち、増分移動させる)。刃20を開き、退避位置まで戻すのが望まれるときは、使用者はハンドル部28、44を単に把持して広げ、図7aに示されるように駆動爪142および掛止爪144の両方を本体部材60の歯状部74との噛合から外す。この位置では、刃バネ102は刃スリーブ104を溝94の第2の端部108の方に促し、それにより刃を退避位置に移動させる。
【0034】
例示的な実施形態は、好適な実施形態に関して説明してきた。当然、前述の詳細な説明を読んで理解すれば、変更および変形が考えられる。例示的な実施形態は、添付の請求項またはその等価物の範囲内にあれば、全てのそのような変更や変形を含むものと解釈できるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部に第1のハンドグリップ部およびそれに反対側の第2の端部にワーク受け台部を画定する第1のハンドル部材と、
第1のハンドル部材上で選択的に担持されるピン部材と、
第1の端部に第2のハンドグリップ部を画定し、第2の端部で第1のハンドル部材と枢動可能に接続された第2のハンドル部材と、
第1のハンドル部材上で担持され、第1のハンドル部材に対する第1の位置の方に付勢される刃スリーブ部材と、
第2のハンドル部材上で担持される駆動爪と、
カッタ刃とを備えるラチェット式切断工具であって、該カッタ刃が
外縁部を画定する平らな本体部材と、
外縁部の切断部により画定される切断縁部と、
外縁部の歯状部により画定される複数の離間した歯であって、切断工具の駆動爪と選択的に噛合する構成の複数の歯と、
外縁部のスロット部により画定されるスロットであって、スロット部がカッタ刃が第1のハンドル部材に組み込まれるときに刃スリーブ部材を選択的に受承する構成のスロットと、
本体部材上のアタッチメント部であって、カッタ刃と切断工具との間の相対的な回転運動を支承するピン部材と選択的に結合する構成のアタッチメント部とを含む、ラチェット式切断工具。
【請求項2】
前記カッタ刃の本体部材が、環状で前記外縁部に対して内縁部を画定し、
前記アタッチメント部が、前記内縁部により画定される前記カッタ刃の本体部材の孔であり、
前記孔が、前記ピン部材を選択的に貫通受承する構成である、請求項1に記載のラチェット式切断工具。
【請求項3】
第1のハンドル部材上の位置決めピン部材をさらに含み、前記カッタ刃がさらに、
外縁部の切欠部により画定される切り欠きであって、カッタ刃をラチェット式切断工具に装着するときに、位置決めピン部材を中心として第1の弧状にカッタ刃を回転させるために第1のハンドル部材上の位置決めピン部材と係合する構成の切り欠きを含む、請求項1に記載のラチェット式切断工具。
【請求項4】
前記カッタ刃のスロット部が本体部材の前記外縁部上で前記切欠部近くに配置され、それにより、カッタ刃のラチェット式切断工具への前記装着時に、前記位置決めピン部材と当接する前記切り欠きを使用して、カッタ刃が前記第1の弧状に回転されると前記スロットが刃スリーブと相互接触される、請求項3に記載のラチェット式切断工具。
【請求項5】
前記刃スリーブ部材が、カッタ刃のラチェット式切断工具への前記装着時に、カッタ刃が前記第1の弧状に回転されるとき前記スロットと前記刃スリーブ部材との前記相互接触により、前記第1の位置から離れる前記付勢力に対する向きに動かされる、請求項4に記載のラチェット式切断工具。
【請求項6】
装着位置の前記第1の弧状の終端で、前記カッタ刃が前記位置決めピン部材と前記刃スリーブ部材との間で保持される、請求項5に記載のラチェット式切断工具。
【請求項7】
前記刃スリーブ部材の自由端部を前記第1のハンドル部材と接続するバネ部材であって、刃スリーブ部材を第1のハンドル部材に対して前記第1の位置の方に付勢する前記付勢力を提供するバネ部材をさらに含む、請求項6に記載のラチェット式切断工具。
【請求項8】
前記カッタ刃が、刃スリーブ部材と前記スロットとの前記相互接触により切り欠きを位置決めピン部材に押し付ける前記バネ部材の前記付勢力により前記装着位置で保持される、請求項7に記載のラチェット式切断工具。
【請求項9】
前記カッタ刃のアタッチメント部が、前記切欠部に対して予め選択された位置に配置され、それにより切断刃が前記装着位置にあるときにアタッチメント部がラチェット式切断工具のピン部材近くの位置に位置決めされる、請求項8に記載のラチェット式切断工具。
【請求項10】
前記カッタ刃の本体部材が、環状で前記外縁部に対して内縁部を画定し、
前記カッタ刃の前記アタッチメント部が、前記内縁部により画定される本体部材の孔であり、
前記孔が、前記ピン部材を貫通受承してラチェット式切断工具に対してカッタ刃を位置決めする構成である、請求項5に記載のラチェット式切断工具。
【請求項11】
ピン部材を前記第1のハンドル部材と選択的に取り付けるためのピン部材の第1の端部にある保持部材と、
第2のハンドル部材上で担持され、カッタ刃の前記複数の歯と選択的に噛合させるように位置決めされる掛止爪であって、掛止爪と前記駆動爪とが共同してカッタ刃と第2のハンドル部材とを相互接続するラチェット式駆動機構を形成して、第1および第2のハンドル部材の相対的な操作時に徐々にカッタ刃を前記ワーク受け台部に向かって駆動させるような掛止爪とをさらに含む、請求項10に記載のラチェット式切断工具。
【請求項12】
第1の端部に第1のハンドグリップ部および反対側の第2の端部にワーク受け台部を画定する第1のハンドル部材と、第1のハンドル部材上で選択的に担持されるピン部材と、第1の端部に第2のハンドグリップ部を画定し、第2の端部で第1のハンドル部材と枢動可能に接続された第2のハンドル部材と、第1のハンドル部材上で担持され、第1のハンドル部材に対する第1の位置の方に付勢される刃スリーブ部材と、第2のハンドル部材上で担持される駆動爪とを含む、関連切断工具に取り外し可能に取り付けられるカッタ刃であって、該カッタ刃が
外縁部を画定する平らな本体部材と、
外縁部の切断部により画定される切断縁部と、
外縁部の歯状部により画定される複数の離間した歯であって、切断工具の駆動爪と選択的に噛合する構成の複数の歯と、
外縁部のスロット部により画定されるスロットであって、スロット部がカッタ刃が第1のハンドル部材に差し込まれるときに刃スリーブ部材を選択的に受承する構成のスロットと、
本体部材上のアタッチメント部であって、カッタ刃と切断工具との間の相対的な回転運動を支承するピン部材と選択的に結合する構成のアタッチメント部とを備える、カッタ刃。
【請求項13】
本体部材が、環状で前記外縁部に対して内縁部を画定する、
請求項12に記載のカッタ刃。
【請求項14】
前記アタッチメント部が、前記内縁部により画定される本体部材の孔である、
請求項13に記載のカッタ刃。
【請求項15】
外縁部の切欠部により画定される切り欠きであって、カッタ刃の関連切断工具への装着時に、位置決めピン部材を中心として第1の弧状にカッタ刃を回転させるために関連する第1のハンドル部材上の位置決めピン部材と係合する構成の切り欠きをさらに含む、請求項12に記載のカッタ刃。
【請求項16】
スロット部が本体部材の前記外縁部上で前記切欠部近くに配置され、それにより、カッタ刃の関連切断工具への前記装着時に、前記位置決めピン部材と当接する前記切り欠きを使用して、カッタ刃が前記第1の弧状に回転されるとき前記スロットが刃スリーブと相互接触される、請求項15に記載のカッタ刃。
【請求項17】
アタッチメント部が、前記切欠部に対して予め選択された位置に配置され、それによりカッタ刃の関連切断工具への前記装着時に、カッタ刃が前記第1の弧の終端まで回転されるとアタッチメント部が関連切断工具のピン部材近くの位置に位置決めされる、請求項16に記載のカッタ刃。
【請求項18】
本体部材が、環状で前記外縁部に対して内縁部を画定し、
前記アタッチメント部が、前記内縁部により画定される本体部材の孔であり、
前記孔が、前記ピン部材を貫通受承して関連切断工具に対してカッタ刃を位置決めする構成である、請求項17に記載のカッタ刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【公表番号】特表2010−528813(P2010−528813A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512232(P2010−512232)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/063565
【国際公開番号】WO2008/154109
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500510010)エマーソン エレクトリック カンパニー (73)
【Fターム(参考)】