説明

容積式液体取扱装置を用いて、潤滑剤をブレンドする方法

少量の高粘度潤滑剤成分を精度良く分配するには、潤滑剤ブレンドを形成するためのチューブレス容積式液体取扱装置を用いる。潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のためのテーパの付いた先端を有する低空隙容積の容積式ピペットおよび潤滑剤ブレンド容器を提供する工程、潤滑剤添加剤リザーバからピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程、ピペットを、潤滑剤添加剤リザーバから潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程、潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の潤滑剤成分を、ピペットから排出する工程、ピペットを、潤滑剤ブレンド容器から、添加剤リザーバまで戻す工程およびこれらの工程を各添加潤滑剤成分について繰り返す工程が含まれる。この方法は、高処理量実験試験環境に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤ブレンド分野に関する。特に、高粘度添加剤を潤滑剤に精度良くブレンドする改良された方法に関する。更に、本発明は、容積式ピペットを用いて、少量の高粘度潤滑剤成分を精度良く分配する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、通常、数種類の成分の混合物である。ブレンドされた潤滑剤の大部分は、鉱油や合成基油であり、典型的に、合計容積の80パーセント以上を占めている。潤滑剤の残りは、様々な添加剤からなっており、酸化防止、耐摩耗、消泡等といった属性を改良する性能を与える。粘度調整剤として知られている添加剤を更に添加して、潤滑剤を増粘し、潤滑剤の温度属性に対する粘度を改良することもある。粘度調整剤は、比較的高分子量ポリマー分子でできており、極めて粘性である。基油の粘度はこれよりはるかに低い。従って、潤滑剤ブレンド装置および方法には、通常、広い粘度範囲に及ぶ分配成分が必要とされる。
【0003】
実験室でブレンドを作製するには、一般的に、液体潤滑剤成分を、ブレンド容器へ、ピペットを用いて移す。標準的なピペットは、空気置換により、即ち、ピペット内部のガス圧を制御することにより操作される。真空を印加して、液体をピペットへ引き、圧力を印加して、ピペットから液体を吐出する。多くの場合、較正済みのピペットを用いると、精度良くブレンドできる。しかしながら、高粘度の液体、例えば、粘度調整剤をピペットで計量して移すと、いくつかの原因により、誤差が生じる。空気またはガス圧を用いて、液体をピペットから吐出すると、ガス圧および液体の粘度によって、異なる量の液体が移動することとなる。粘性のある液体は、印加されたガス圧に対して大きな抵抗を示し、ガス圧縮によって、ピペットから吐出されるのが望ましい量より少ない量の液体しか吐出されない可能性がある。更に、ポリマー粘度調整剤は、ピペット内側の先端近くで、繊維状の残渣を形成して、受け皿に分配される液体が減少する。これらの問題は、高い精度が必要とされる少量の実験用ブレンドを作製しようとするときは特に重大である。少量のブレンドは、僅か数ミリグラムの合計質量しか有していないからである。精度良いブレンドには、個々の成分容積を、マイクロリットルの精度で測定し、成分質量を、ミリグラム以上の精度で測定する必要がある。
【0004】
空気置換ピペットで更に制限されることとしては、ポンプまたは真空システムに接続する必要があることである。手動操作ピペットの場合には、一般的に、ゴム球が用いられる。しかしながら、ロボット液体取扱システムにおいては、一般的に、管が、各ピペットに接続される。多くの場合、システム液体も用いて、ポンプ動作がピペット先端に伝わるのを補助し、空隙を用いて、システム液体を、移動する液体から分離する(空気と液体の置換の組み合わせ)。多くのピペットを用いるとき、これは極めて煩雑である。例えば、多くのブレンド成分を用いている場合、各成分は、ピペットを続けて洗浄するのを避けるために、それぞれにピペットを必要とする。空気置換または空気/液体置換ピペットの組み合わせでは、各ピペットをポンプに接続しなければならず、実際的ではない。或いは、1つのピペットを用いると、異なる成分を用いる度にピペットを繰り返し洗浄する必要がある。システム液体を用いる場合には、システム液体と潤滑剤添加剤間のクロスコンタミネーションの可能性もある。
【0005】
高粘度潤滑剤成分は、高分子量ポリマーから誘導されることが多い。このように、高粘度潤滑剤成分は、高剪断条件に晒されると、劣化する恐れがある。高粘度潤滑剤が、高圧で、小さなオリフィスから押し出されると、高剪断となり、分子結合が永久破断する恐れがある。従って、高粘度潤滑剤成分をピペットで取るとき、それらをピペットへ投入するとき、また、それらをピペットから排出するときは、比較的低剪断速度を維持するのが望ましい。場合によっては、高粘度成分を加熱することにより、ブレンドプロセスを改良して、粘度を下げることがある。成分を加熱する必要性は最小にするのが望ましい。潤滑剤成分は、高温で劣化するためである。
【0006】
潤滑剤をブレンドする先行技術に関連する上述した問題を解決する、高粘度添加剤を潤滑剤に精度良くブレンドする改良された方法が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,172,892号明細書
【特許文献2】米国特許第3,2145,707号明細書
【特許文献3】米国特許第3,219,666号明細書
【特許文献4】米国特許第3,316,177号明細書
【特許文献5】米国特許第3,341,542号明細書
【特許文献6】米国特許第3,444,170号明細書
【特許文献7】米国特許第3,454,607号明細書
【特許文献8】米国特許第3,541,012号明細書
【特許文献9】米国特許第3,630,904号明細書
【特許文献10】米国特許第3,632,511号明細書
【特許文献11】米国特許第3,787,374号明細書
【特許文献12】米国特許第4,234,435号明細書
【特許文献13】米国特許第3,036,003号明細書
【特許文献14】米国特許第3,200,107号明細書
【特許文献15】米国特許第3,254,025号明細書
【特許文献16】米国特許第3,275,554号明細書
【特許文献17】米国特許第3,438,757号明細書
【特許文献18】米国特許第3,454,555号明細書
【特許文献19】米国特許第3,565,804号明細書
【特許文献20】米国特許第3,413,347号明細書
【特許文献21】米国特許第3,697,574号明細書
【特許文献22】米国特許第3,725,277号明細書
【特許文献23】米国特許第3,725,480号明細書
【特許文献24】米国特許第3,726,882号明細書
【特許文献25】米国特許第4,454,059号明細書
【特許文献26】米国特許第3,329,658号明細書
【特許文献27】米国特許第3,449,250号明細書
【特許文献28】米国特許第3,519,565号明細書
【特許文献29】米国特許第3,666,730号明細書
【特許文献30】米国特許第3,687,849号明細書
【特許文献31】米国特許第3,702,300号明細書
【特許文献32】米国特許第4,100,082号明細書
【特許文献33】米国特許第5,705,458号明細書
【特許文献34】欧州特許第471 071号明細書
【特許文献35】米国特許第3,087,936号明細書
【特許文献36】米国特許第3,172,892号明細書
【特許文献37】米国特許第3,219,666号明細書
【特許文献38】米国特許第3,272,746号明細書
【特許文献39】米国特許第3,322,670号明細書
【特許文献40】米国特許第3,652,616号明細書
【特許文献41】米国特許第3,948,800号明細書
【特許文献42】カナダ特許第1,094,044号明細書
【特許文献43】米国特許第4,426,305号明細書
【特許文献44】米国特許第4,767,551号明細書
【特許文献45】米国特許第3,703,536号明細書
【特許文献46】米国特許第3,704,308号明細書
【特許文献47】米国特許第3,751,365号明細書
【特許文献48】米国特許第3,756,953号明細書
【特許文献49】米国特許第3,798,165号明細書
【特許文献50】米国特許第3,803,039号明細書
【特許文献51】米国特許第3,755,433号明細書
【特許文献52】米国特許第3,822,209号明細書
【特許文献53】米国特許第5,084,19号明細書
【特許文献54】米国特許第1,815,022号明細書
【特許文献55】米国特許第2,015,748号明細書
【特許文献56】米国特許第2,191,498号明細書
【特許文献57】米国特許第2,387,501号明細書
【特許文献58】米国特許第2,655,479号明細書
【特許文献59】米国特許第2,666,746号明細書
【特許文献60】米国特許第2,721,877号明細書
【特許文献61】米国特許第2,721,878号明細書
【特許文献62】米国特許第3,250,715号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
潤滑剤ブレンドのための容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤をブレンドする方法により、潤滑剤をブレンドする先行技術の方法での問題の多くが解決されることを見出した。
【0009】
一実施形態において、本発明は、高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより精度良くブレンドして、潤滑剤ブレンドを形成する有利な方法であって、潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペットおよび1つ以上の潤滑剤ブレンド容器を提供する工程と、潤滑剤添加剤リザーバから低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、潤滑剤添加剤リザーバから1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程と、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の潤滑剤成分を、低空隙容積の容積式ピペットから排出する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、添加剤リザーバまで戻す工程と、投入、移動、排出および戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返して、添加剤が適切に分配された潤滑剤を形成する工程とを含む方法を提供する。容積式ピペットおよび潤滑剤リザーバを加熱すると、より効率的な液体の移動が可能となる。
【0010】
他の実施形態において、本発明は、高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより精度良くブレンドして、潤滑剤ブレンドを形成する有利な方法であって、潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペット、潤滑剤添加剤リザーバのための加熱手段、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器の質量を秤量するための秤および以下の工程を調整および制御するためのコンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラに結合されたロボット手段を提供する工程と、高粘度の1つ以上の潤滑剤成分を、約110℃未満の温度まで加熱する工程と、潤滑剤添加剤リザーバから低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、潤滑剤添加剤リザーバから1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程と、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の潤滑剤成分を、低空隙容積の容積式ピペットから排出する工程と、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ排出された各潤滑剤成分の質量を、秤により秤量し制御する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、添加剤リザーバまで戻す工程と、投入、移動、排出、秤量および戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返す工程とを含む方法を提供する。
【0011】
更に他の実施形態において、本発明は、高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより精度良くブレンドして、潤滑剤ブレンドを形成する有利な方法であって、潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペット、潤滑剤添加剤リザーバのための加熱手段、容積が10ミリリットル未満の1つ以上の潤滑剤ブレンド容器、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器の質量を秤量するための秤および以下の工程を調整および制御するための1つ以上の潤滑剤ブレンドレシピによりプログラムされたコンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラに結合されたサポートブリッジに接続されたロボットアームを提供する工程と、100℃で約500センチポアズを超える粘度の1つ以上の潤滑剤成分を、約110℃未満の温度まで加熱する工程と、潤滑剤添加剤リザーバから低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、潤滑剤添加剤リザーバから1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程と、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の潤滑剤成分を、低空隙容積の容積式ピペットから約1×10−1未満の剪断速度で排出する工程と、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ排出された各潤滑剤成分の質量を、秤により秤量し制御する工程と、低空隙容積の容積式ピペットを、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、添加剤リザーバまで戻す工程と、投入、移動、排出、秤量および戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返す工程とを含む方法を提供する。
【0012】
数多くの利点は、本明細書に開示された容積式液体取扱装置を用いて、潤滑剤添加剤をブレンドする有利な方法およびその使用/用途により得られる。
【0013】
例えば、本開示の例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、高粘度の添加剤を潤滑剤へ分配する精度を改良する。
【0014】
本開示の更なる例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、高処理量実験型の環境で用いられる少量の潤滑剤ブレンドを精度良く生成する方法を提供する。
【0015】
本開示の更なる例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、剪断により成分を劣化することなく、高粘度の潤滑剤成分を分配する。
【0016】
本開示の更なる例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、放出の際に、ピペット先端の繊維状の残渣を減らす。
【0017】
本開示の更なる例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、小容積の高粘度潤滑剤成分をより迅速に分配する手段を提供する。
【0018】
本開示の他の例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、潤滑剤添加剤の加熱を最小にして、放出前の分解および退色を少なくする。
【0019】
本開示の他の例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、潤滑剤へ分配される潤滑剤添加剤の密度をリアルタイムで測定する手段を提供する。
【0020】
本開示の更に他の例示の実施形態において、容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、潤滑剤へ分配される潤滑剤添加剤の質量をリアルタイムで測定する手段を提供する。
【0021】
本開示の容積式液体取扱装置を用いて潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法およびその有利な用途および/または使用のこれらおよびその他の利点、特徴および属性は、特に、以下の詳細な説明を、添付の図面と組み合わせて読むと明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、容積式ピペットを用いて、高粘度潤滑剤成分をブレンドする方法に関する。本発明の高粘度潤滑剤成分をブレンドする方法は、先行技術とは区別され、容積式ピペットを用いて、少量の高粘度潤滑剤添加剤を潤滑剤処方に精度良く計量することが開示されている。本発明の開示された方法の利点としては、特に、改良された分配精度、分配中の低剪断速度、低温での分配、分配後の装置先端の残渣添加剤が少ないこと、分配中に密度および質量をリアルタイムでモニターできることが挙げられる。
【0023】
容積濃度に従って作製されたブレンドは、通常、空気置換ピペットまたは空気/液体置換液体取扱システムを用いて作製される。空気置換ピペットにおいて、空気源は、ピペットの端部に取り付けられており、吸引されて、流体がピペットへ引かれる。ピペットを、受け皿に配置して、ガスを与えて、液体を受け皿へ排出する。組み合わせの空気/液体置換液体取扱システムにおいて、吸引は、ポンプによりなされ、動作が、システム液体およびシステム液体と移動する液体との間の空隙を通って伝わる。異なるピペットを、各潤滑剤成分に用いることができる。或いは、コンタミネーションおよび誤差をなくすために、異なる潤滑剤ブレンド成分への露出間に洗浄できるのであれば、単一のピペットを用いてもよい。
【0024】
ある用途、例えば、実験用途においては、非常に少量の潤滑剤ブレンドを作製するのが望ましい。少量のブレンドだと、高価な添加剤の試験実験を少量で行え、試験に少量しか必要ないときは廃棄物を最小にすることができる。少量の潤滑剤ブレンドの大きなアレイを即時に作製するのが望ましいこともある。このようにして、潤滑剤ブレンド組成物は、様々な潤滑剤スクリーニング手順で即時に評価することができる。小さな試験サンプルの大きなアレイを即時に作製し、それらを即時に評価するプロセスは、高処理量実験(HTE)として知られている。
【0025】
潤滑剤は、典型的に、異なる分子量および粘度の数種の成分からブレンドされる。高粘度潤滑剤成分を用いて、潤滑剤ブレンドの粘度測定特性が修正されることがある。これらの粘度調整剤は、典型的に、高分子量ポリマーで構成されている。従来の方法で空気置換ピペットを用いるとき、少量のブレンドへとブレンドされた高粘度潤滑剤成分の容積を精度良く測定するのは特に難しい。これには2つの因子がある。1つ目の因子は、粘性液体の、印加されたガス圧に対する抵抗が著しく、ガス圧縮によって、ピペットから排出される液体が予想されるよりも少ないことである。2つ目の因子は、高粘度潤滑剤成分は、典型的にポリマーであるため、先端近傍で、ピペット内側に繊維状の残渣を形成する傾向があることである。従って、ピペットから排出されたよりも少ない液体しか受け皿にはなく、ブレンドの誤差へとつながる。これら2つの因子により導かれる誤差は、少量のブレンドを作製するときは深刻である。
【0026】
多くの場合、高粘度潤滑剤成分は、低粘度液体のように取り扱える範囲まで粘度を低減するのに十分な温度まで加熱した後にブレンドされる。或いは、低粘度の溶剤により希釈してもよい。このようにして、標準の空気置換ピペットにより、容易にピペットで取ることができ、精度良く分配できるようになる。しかしながら、高温のために、高粘度潤滑剤成分が退色したり、劣化したりする可能性がある。従って、加熱を最小にしてブレンドするのが望ましい。
【0027】
他の問題は、高粘度潤滑剤成分が、高剪断流動状態で劣化する恐れがあることである。剪断劣化は、かかる添加剤が、ピペットの出口開口部等の小さなオリフィスを通して加圧されるときに生じる。高粘度潤滑剤成分は、高分子量ポリマーで構成されていることが多い。これらのポリマーを小さな開口部から押し出すと、化学結合が破断するほど剪断速度および剪断応力が高く、分子量および潤滑剤ブレンドの高分子量に付随した利点が減じる。
【0028】
本発明の目的は、高粘度潤滑剤成分を劣化することなく、実験室で作製された高粘度潤滑剤成分を含有する少量の潤滑剤ブレンドの精度を改良することである。数種の成分を含有する潤滑剤ブレンドの作製においては、ブレンドの各成分の濃度を精度良くモニターする必要がある。ブレンドの容積が比較的大きいときは、個々の成分の濃度を測定するのはそれほど複雑ではない。典型的に、ブレンドは、各成分の重量または各成分の容積により濃度を制御することにより作製される。
【0029】
本発明の更なる目的は、高粘度潤滑剤成分を含む少量の潤滑剤ブレンドを精度良く製造する方法を提供することである。これらの少量の潤滑剤ブレンドの合計容量は、好ましくは、100ミリリットル未満、より好ましくは、25ミリリットル未満、更に好ましくは、10ミリリットル未満である。
【0030】
本発明は、高粘度成分を含有する少量の潤滑剤ブレンドの精度を、容積式ピペット(「PDP」とも呼ばれる)と定義される、シャフトのついたピストンを先端まで移動することにより動作するピペットを用いることにより改良できる、という知見に関する。かかるピペットは、典型的に、歯車駆動で、十分な圧力を生成して、ピペットバレルにある液体を全て確実に排出する。PDPは、ピストンが、液体粘度に関わらず、一定容積の液体を置換するため、ブレンド精度を改良する。しかしながら、ピストンは液体に高圧を生成する恐れがある。少量のブレンドを作製するのに必要な、小さなオリフィスのピペットを用いるときは特に該当する。小さなオリフィスのピペットを用いて、高粘度の潤滑剤成分を分配するときは、剪断速度および剪断応力は、潤滑剤成分を劣化させないようなものとしなければならない。剪断速度および剪断応力は、オリフィスを通る流速に比例するため、潤滑剤の劣化を最小にするためには、特定の閾値の剪断速度より低く、流速を保持することが重要である。オリフィスを流れる高粘度成分の流速は、5×10−1未満、好ましくは1×10−1未満、より好ましくは1×10−1未満、更に好ましくは1×10−1未満の剪断速度を保持するように制御されるべきである。
【0031】
チューブレス容積式ピペットを用いて、潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法は、高粘度潤滑剤成分または添加剤を分配するのに特に好適である。高粘度の潤滑剤成分または添加剤は、100℃で100センチポアズを超える粘度の液体と定義される。本発明の方法は、100℃で500センチポアズを超える粘度の潤滑剤成分または添加剤を分配するのに特に好適であり、更に、100℃で1000センチポアズを超える粘度の潤滑剤成分または添加剤を分配するのに特に好適である。
【0032】
潤滑剤添加剤
潤滑剤添加剤または成分としては、これらに限られるものではないが、摩擦調整剤、分散剤、洗剤、流動点降下剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィン、耐摩耗/極圧剤、酸化防止剤、乳化破壊剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤、耐食防止剤、消泡剤、これらの潤滑剤添加剤の混合物を含有するパッケージ、例えば、分散剤、洗剤、耐摩耗/極圧剤、酸化防止剤、乳化破壊剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤、耐食防止剤、消泡剤および流動点降下剤の混合物が挙げられる。高粘度潤滑剤としては、これらに限られるものではないが、粘度調整剤、流動点降下剤、分散剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィンおよびこれら高粘度潤滑剤の1つ以上を含有する添加剤パッケージが挙げられる。容積式液体取扱装置方法を用いて、潤滑剤添加剤をブレンドする開示された方法によって、潤滑剤ブレンド内の高粘度潤滑剤成分の化学的、熱的または物理的劣化を最小にして、ブレンドすることも可能となる。
【0033】
粘度調整剤
粘度調整剤(VI向上剤および粘度指数向上剤としても知られている)は、潤滑剤に、高温および低温操作性を与える。これらの添加剤は、高温で高い粘度を、低温で許容される粘度を与える。
【0034】
好適な粘度指数向上剤としては、高分子量(ポリマー)炭化水素、ポリエステルおよび粘度指数向上剤と分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,000,000、より典型的には約20,000〜500,000、更に典型的には約50,000〜200,000である。
【0035】
好適な粘度指数向上剤としては、メタクリレート、ブタジエン、オレフィンまたはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーが例示される。ポリイソブチレンが、一般的に用いられる粘度指数向上剤である。その他の好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(例えば、様々な鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、処方の中には、流動点降下剤として作用するものもある。その他の好適な粘度指数向上剤としては、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、スチレンおよびイソプレンの水素化ブロックコポリマーおよびポリアクリレート(例えば、様々な鎖長のアクリレートのコポリマー)が挙げられる。具体例としては、分子量50,000〜200,000のオレフィンコポリマーおよび水素化スチレン−イソプレンコポリマーが挙げられる。
【0036】
粘度調整剤は、受け取った状態を基本として、約1〜25重量%の量で用いる。粘度調整剤は、通常、担体または希釈油で希釈されて供給され、メーカーから受け取った添加剤濃縮物中、約5〜50重量%の活性成分を構成するため、処方に用いる粘度調整剤の量は、約0.02〜約3.0重量%の活性成分、好ましくは約0.3〜2.5重量%の活性成分の範囲で表現することもできる。オレフィンコポリマーおよび水素化スチレン−イソプレンコポリマー粘度調整剤については、活性成分は、メーカーからの添加剤濃縮物中、約5〜15重量%の範囲であり、処方に用いられる粘度調整剤の量は、約0.20〜1.9重量%の活性成分、好ましくは約0.3〜1.5重量%の活性成分の範囲でも表すことができる。
【0037】
分散剤
エンジン動作中、油不溶性酸化副生成物が生成される。分散剤によって、これらの副生成物は溶液中で保持され、金属表面への堆積が減じる。分散剤は、実際、無灰でも灰形成であってもよい。好ましくは、分散剤は、無灰である。いわゆる無灰の分散剤は、燃焼の際に実質的に灰を形成しない有機材料である。例えば、非金属含有またはホウ酸金属を含まない分散剤は無灰と考えられる。これとは対照的に、上述した金属含有洗剤は、燃焼の際に、灰を形成する。
【0038】
好適な分散剤は、典型的に、比較的高分子量の炭化水素鎖に付加した極性基を有する。極性基は、典型的に、窒素、酸素またはリンの少なくとも1つの元素を含む。典型的な炭化水素鎖は、50〜400個の炭素原子を含有する。
【0039】
化学的に、多くの分散剤は、フェネート、スルホネート、硫化フェネート、サリチレート、ナフテネート、ステアレート、カーバメート、チオカーバメート、リン誘導体の特性を示す。分散剤の特に有用な部類は、アルケニルコハク酸誘導体で、典型的には、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常、置換無水コハク酸のポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応により生成される。油中で溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、通常、ポリイソブチレン基である。この種の分散剤の多くの例は、商業的に周知であり文献にある。かかる分散剤について記載してあり、その全内容が参照により援用される例示の米国特許は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11および特許文献12である。その他の種類の分散剤は、同じく、その全内容が参照により援用される特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33である。分散剤の更なる説明は、例えば、同じく、その全内容が参照により援用される特許文献34にある。
【0040】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物は、普及している分散剤である。特に、炭化水素置換基中に少なくとも50個の炭素原子を好ましくは有する炭化水素置換コハク酸化合物の少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応により調製されたコハク酸イミド、コハク酸エステルまたはコハク酸エステルアミドが特に有用である。
【0041】
コハク酸イミドは、アルケニル無水コハク酸とアミン間の縮合反応により形成される。モル比は、ポリアミンに応じて異なる。例えば、アルケニル無水コハク酸対TEPAのモル比は、約1:1〜約5:1まで変わる。代表例は、その全内容が参照により援用される特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41および特許文献42に示されている。
【0042】
コハク酸エステルは、アルケニル無水コハク酸とアルコールまたはポリオール間の縮合反応により形成される。モル比は、用いるアルコールまたはポリオールに応じて異なる。例えば、アルケニル無水コハク酸とペンタエリスリトールの縮合生成物が、有用な分散剤である。
【0043】
コハク酸エステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミン間の縮合反応により形成される。例えば、好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリアルケニルポリアミン、例えば、ポリエチレンポリアミンが挙げられる。一例としては、プロポキシル化へキサメチレンジアミンがある。代表例は、その全内容が参照により援用される特許文献43に示されている。
【0044】
前段落で用いるアルケニル無水コハク酸の分子量は、一般的に、800〜2,500の範囲である。上記の生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、カルボン酸、例えば、オレイン酸、ホウ素化合物、例えば、ホウ酸エステルまたは高ホウ酸分散剤等の様々な試薬により後反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり、約0.1〜約5モルのホウ素でホウ酸を入れることができる。
【0045】
マンニッヒ塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒドおよびアミンの反応から調製される。参照により援用される特許文献44を参照のこと。プロセス酸および触媒、例えば、オレイン酸およびスルホン酸を、反応混合物の一部とすることもできる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。代表例はまた、その全内容が参照により援用される特許文献21、特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献48、特許文献49および特許文献50に示されている。
【0046】
本発明に有用な典型的に高分子量の脂肪酸変性マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族またはHN(R)基含有反応物質から調製することができる。
【0047】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物としては、ポリプロピレンフェノール、ポリブチルフェノールおよびその他ポリアルキルフェノールが例示される。これらのポリアルキルフェノールは、BF等のアルキル化触媒の存在下、高分子量ポリプロピレン、ポリブチレンおよびその他ポリアルキレン化合物によるアルキル化により得られ、平均600〜100,000分子量のフェノールのベンゼン環にアルキル置換基が与えられる。
【0048】
HN(R)基含有反応物質としては、アルキレンポリアミン、主に、ポリエチレンポリアミンが例示される。マンニッヒ縮合生成物の調製に用いるのに好適な少なくとも1つのHN(R)基を含有するその他の代表的な有機化合物は周知であり、モノ−およびジ−アミノアルカンおよびそれらの置換類似体、例えば、エチルアミンおよびジエタノールアミン、芳香族ジアミン、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、複素環式アミン、例えば、モルホリン、ピロール、ピロリドン、イミダゾール、イミダゾリジンおよびピペリジン、メラミンおよびそれらの置換類似体が挙げられる。
【0049】
アルキレンポリアミド反応物質としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、デカエチレンウンデカミンおよびアルキレンポリアミンに対応する窒素含量を有するアミンである、上述のHN−(Z−NH−)H(式中、Zは二価のエチレン、nは1〜10)の混合物が例示される。プロピレンジアミンおよびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサアミン等の対応のプロピレンポリアミンもまた好適な反応物質である。アルキレンポリアミンは、通常、アンモニアとジハロアルカン、例えば、ジクロロアルカンとの反応により得られる。このように、2〜11モルのアンモニアと、2〜6個の炭素原子と異なる炭素に塩素を有するジクロロアルカン1〜10モルの反応から得られたアルキレンポリアミンは、好適なアルキレンポリアミン反応物質である。
【0050】
本発明に有用な高分子生成物の調製に有用なアルデヒド反応物質としては、脂肪族アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドおよびホルマリンも)、アセトアルデヒドおよびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)が挙げられる。ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成反応物質が好ましい。
【0051】
ヒドロカルビル置換アミン無灰分散剤添加剤は、参照により本明細書に援用される特許文献16、特許文献17、特許文献19、特許文献51、特許文献52および特許文献53に開示されている。
【0052】
好ましい分散剤としては、モノコハク酸イミド、ビス−コハク酸イミドおよび/またはモノ−およびビス−コハク酸イミドからの誘導体をはじめとするホウ素を含有する、およびホウ素を含有しないコハク酸イミドが挙げられる。ヒドロカルビルコハク酸イミドは、Mnが約500〜約5000のポリイソブチレン、またはかかるヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。その他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合マンニッヒ付加物、それらのキャップド誘導体およびその他関連化合物が挙げられる。かかる添加剤は、約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%の量で用いられる。
【0053】
流動点降下剤
従来の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られている)を、必要に応じて本発明の組成物に添加してもよい。これらの流動点降下剤を本発明の潤滑組成物に添加して、流体が流れたり、注がれたりすることのできる最低温度を下げる。好適な流動点降下剤としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、アリルビニルエーテルが例示される。参照により本明細書に援用される特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61および特許文献62には、有用な流動点降下剤および/またはその調製方法が記載されている。かかる添加剤は、約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で用いる。
【0054】
典型的な添加剤量
潤滑油組成物が、上述した1つ以上の添加剤を含有するときは、添加剤は、その目的とする機能を実行するのに十分な量で、組成物にブレンドされる。本発明に有用なかかる添加剤の例示の量を以下の表1に示す。多くの添加剤は、メーカーから発送されて、特定量の基油溶剤と共に処方中で用いられることに留意されたい。従って、以下の表の重量、および本開示で参照するその他の量は、特に断りのない限り、活性成分(即ち、成分の非溶剤部分)の量に関係している。後述する重量パーセンテージは、潤滑油組成物の総重量を基準にしている。
【0055】
【表1】

【0056】
市販の添加物パッケージには、通常、これに限られるものではないが、1つ以上の洗剤、分散剤、摩擦低減剤、酸化防止剤、耐食防止剤および耐摩耗性添加剤が含まれる。
【0057】
限定されない例示のエンジン油処方は、70〜90重量%の基油、4〜10重量%のVI向上剤、4〜10重量%の分散液、1〜3重量%の耐摩耗/極圧剤、0.2〜2重量%の酸化防止剤、1〜4%の洗剤、それぞれ0.01〜0.1重量%の乳化破壊剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤および消泡剤、0.1〜0.5重量%の流動点降下剤を含有する。場合によっては、これらの添加剤のいくつかは、添加剤サプライヤにより一緒にパッケージされる。これらの添加剤において、VI改善剤および分散剤は、高粘度成分(低剪断条件下で、13,000〜17000センチポアズ)である。約90℃まで加熱すると、これら2つの成分の粘度は、低剪断条件下で、約500〜約2000センチポアズの粘度まで減じるが、それでも、従来の液体取扱装置で取り扱うのは難しい。
【0058】
多くのPDPは、ピストンまたはプランジャを有しており、バレル内側をスライドする。その先端は、鋭点へとテーパがついている。この先端は、高度のブレンド精度が望ましい場合には、非常に細かくすることができる。ピストンがバレルへとプレスされて、ある容積の液体が排出されるとき、ピストンとバレルが、互いに適合しない場合には、全ての液体が排出されない。ピストンとバレルとの間に空隙があるためである。更に、空気がピストンと液体との間に捕捉される。低空隙容積の容積式ピペット(「LVVPDP」とも呼ばれる)は、ピペットバレルと分配先端またはニードルに適合する形状およびサイズのピストンまたはプランジャを有するピペットである。これが、プランジャまたはピストンと、ピペットバレルおよび分配先端/ニードルの内側との間の空隙を最小にする。LVVPDPでは、空隙容積は、1ミリリットル未満、好ましくは0.5ミリリットル未満、より好ましくは0.05ミリリットル未満、更に好ましくは0.5マイクロリットル、実質的にゼロで、ピストンと液体との間に捕捉された液体または空気の量を最小にする。或いは、LVVPDPは、プランジャにより充填される分配先端またはニードルの%容積によって定義してもよい。LVVPDPのこの変形定義については、プランジャにより充填される分配先端またはニードルの容積が少なくとも70%のものは、先端またはニードルの合計容積の30%以下の先端またはニードル空隙容積となる。より好ましくは、LVVPDPは、プランジャにより充填される分配先端またはニードルの容積が少なくとも90%のものであり、先端またはニードルの合計容積の10%以下の先端またはニードル空隙容積となる。更に好ましくは、LVVPDPは、プランジャにより充填される分配先端またはニードルの容積が少なくとも98%のものであり、先端またはニードルの合計容積の2%以下の先端またはニードル空隙容積となる。
【0059】
低空隙の容積式ピペットの2つの代表的なタイプを図1および2に示す。LVVPDPの成分は、プラスチック、ガラスまたは金属でできている。ポリプロピレンが好ましいプラスチックである。図1は、本発明で用いる低空隙容積の容積式ピペット10の一実施形態である。LVVPDP10は、使い捨てまたは使い捨てでないシリンジ状インジェクタである。使い捨てでない装置は再利用されるが、使い捨ての装置は、1回の使用が意図されている。多くの用途において、ピペットは同じ成分について何回も用いられる。LVVPDP10は、バレル11、バレル11に嵌められたプランジャ12、プランジャ12のためのアクチュエータ13および分配先端またはニードル14を含む。分配先端またはニードル14は、テーパのついたデザインを有するのが好ましい。高粘度潤滑剤は、プランジャ12の下のバレル11の容積の先端またはニードル14まで充填される。アクチュエータ13は、手動による手段か、またはロボット的な手段のいずれかにより、上下に動かされる。図1の一方の(a)の図は、上または充填位置にあるプランジャ12を示し、図1の他方の(b)の図は、下または分配位置にあるプランジャを示す。図1の図(b)にはまた、プランジャ12とバレル11との間の密な適合も示されており、プランジャを完全に動作したときの空隙が最小になっている。
【0060】
図2は、本発明に用いる低空隙容積の容積式ピペット15の他の例示の実施形態である。LVVPDP15は、バレル16、バレル16に嵌められたプランジャ17、プランジャ17のためのアクチュエータ18および分配先端またはニードル19を含む。バレル16、プランジャ17および先端またはニードル19は、変形形態のものであり、プランジャ17、バレル16の内側、分配先端またはニードル19間の空隙容積を最小にするものである。これによって、プランジャ12を完全に動作したときの空隙容積が最小になる。図2の一方の(a)の図は、上または充填位置にあるプランジャ17を示し、図2の他方の(b)の図は、下または分配位置にあるプランジャを示す。
【0061】
LVVPDPを用いて、潤滑剤添加剤を分配する利点は、個々のピペットを各個々の添加剤に用いられることである。空気置換または液体/空気置換ピペットの場合には、各ピペットには個々のポンプが必要である。これは、多くのピペットを用いるときは煩わしいシステムになる。LVVPDPにはポンプは必要ないため、装置の複雑さやコンタミネーションの可能性が解消される。従って、LVVPDPを用いると、全体の潤滑剤ブレンドシステムが単純化される。
【0062】
図3は、潤滑剤添加剤リザーバ20における低空隙容積の容積式ピペットの例示の図を示す。この場合、LVVPDP10は、潤滑剤(図示せず)を含有する添加剤リザーバ22に挿入されている。添加剤リザーバ22は、加熱ブロック24に囲まれており、高粘度の潤滑剤成分(図示せず)を加熱して、その粘度を下げることができる。VI向上剤、流動点降下剤、分散剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィンおよびその他高粘度潤滑剤成分は、典型的に、約70℃〜約100℃まで加熱されて、LVVPDP10への投入および排出のために、その粘度を減じる。1つ以上のこれらの高粘度潤滑剤成分を含有する添加剤パッケージは、典型的に、約40℃〜約60℃まで加熱されて、LVVPDP10への投入および排出のために、その粘度を減じる。
【0063】
図4は、添加剤リザーバ30のアレイの例示の図である。各添加剤リザーバ22は、加熱ブロック24に囲まれている。各添加剤リザーバ22は、異なる高粘度の潤滑剤添加剤(図示せず)と、それぞれ専用のLVVPDP10を含んでおり、潤滑剤添加剤のクロスコンタミネーションに関連した問題が解消されている。潤滑剤添加剤の種類および数に応じて、1つから多数の加熱ブロック24がある。加熱ブロック24はまた、1つから多数の添加剤リザーバ30を制御する。加熱ブロック24は、添加剤の種類に応じて、室温から約100℃の温度に制御される。
【0064】
図5は、LVVPDPの使用に基づいた、潤滑剤ブレンドステーション40の例示の図である。本発明のこの実施形態においては、ロボット的手段を用いて、LVVPDP10の移動、潤滑剤添加剤リザーバ22からの潤滑剤成分の投入、および行先ブレンド容器52への潤滑剤の排出が制御されている。例示のこれに限定されるものではないロボット的手段としては、図5に示すように、サポートブリッジ44に接続されたロボットアーム42が挙げられる。ロボットアーム42を用いて、LVVPDPソースアレイ46においてそれぞれの添加剤リザーバ22からLVVPDP10を選択し、LVVPDP10を、LVVPDP行先アレイ48に搬送する。
【0065】
ソースアレイ46はまた、1つ以上の加熱ブロック24も含んでおり、粘度を下げるために、高粘度添加剤を予熱する。例えば、図5において、1つは90℃、2つめは50℃、3つめは室温の3つの加熱ゾーン24がある。行先アレイ48には、高粘度添加剤を分配するための一連の行先ブレンド容器52が含まれる。行先アレイ48はまた、秤54も含んでおり、秤53に配置された行先ブレンド容器へ堆積する潤滑剤添加剤の量を秤量する。ロボットアーム42は、LVVPDP10を、秤54の上部に配置された行先ブレンド容器53の上に配置して、添加剤をブレンド容器53へ注入する。ロボットアーム42は、任意で、同じLVVPDP10から、1つ以上の他の行先ブレンド容器52へ添加剤を注入してもよい。ロボットアーム42は、LVVPDP10を、ソースアレイ46の元の添加剤リザーバ22まで戻す。添加剤は、各添加剤リザーバ22において一定のままであるため、使用の度に、LVVPDP10のラインと先端を洗浄する必要はない。各添加剤リザーバ22および/または行先ブレンド52容器はまた、隔壁(図示せず)を有していて、LVVPDP10のニードルまたは先端をコーティングする粘性添加剤の量を減じてもよい。
【0066】
ロボットアーム42およびサポートブリッジ44は、コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラ(図示せず)により制御されて、ソースアレイ46および行先アレイ48に対する移動を制御して、LVVPDP10をピックアップして戻す。コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラ(図示せず)により制御されたロボットアーム42を用いて、ソースアレイ46で各添加剤リザーバ22からLVVPDP10へ吸引された添加剤の量、および行先アレイ48で各行先ブレンド容器52へ分配された添加剤の量を制御する。コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラは、添加剤リザーバ22に含まれる全ての添加剤についての情報を含む。この情報には、これらに限られるものではないが、粘度や密度等の物理的特性が含まれる。コンピュータはまた、ブレンドレシピのリストも有し、ブレンドレシピにおける各添加剤の濃度を含む。コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラはまた、行先ブレンド容器53へ分配される各添加剤成分の重量を制御するための秤に対するフィードバック制御機構も有している。コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラは、分配される特定の潤滑剤添加剤の重量に対する、LVVPDP10のバレル11におけるプランジャ12およびニードル14のストロークのための較正ルーチンを含む。較正ルーチンおよびフィードバック制御機構によって、本発明の潤滑剤ブレンドステーション40が、より迅速かつ精度良く潤滑剤添加剤成分を、秤54に配置された行先ブレンド容器53へ分配できる。
【0067】
コンピュータによって、LVVPDP10が、添加剤リザーバ22から、ある容積の高粘度潤滑剤成分を引いて、行先ブレンド容器53へ堆積するため、2つ以上の測定がなされる。コンピュータは、LVVPDP10によって引かれる高粘度潤滑剤成分の容積をモニターする。更に、行先ブレンド容器53に堆積した高粘度潤滑剤成分の質量を、行先ブレンド容器53の下に据え付けた秤54により測定する。潤滑剤の行先ブレンド容器は、容積が100ミリリットル未満に対応し、好ましくは、少量の潤滑剤ブレンドの製造については、容積が10ミリリットル未満に対応する。
【0068】
ソースアレイ46の各添加剤リザーバ22に関連するLVVPDP10はまた、使い捨てタイプのピペットであってもよい。この場合、ロボットアーム42は、使い捨てLVVPDP10をピックアップし、所望の添加剤に応じて、適切な添加剤リザーバ22へ移動し、使い捨てLVVPDP10に添加剤を充填し、行先ブレンド容器52(秤の上)に移動し、潤滑剤添加剤をブレンド容器52に注入する。行先ブレンド容器53はまた、注入時に、秤54に据え付けて、分配されている潤滑剤添加剤の重量をリアルタイムで測定する。添加剤が、必要な行先ブレンド容器52の全てに添加されたら、使い捨てLVVPDP10は、廃棄される。
【0069】
本発明の容積式技術は、それでも、高粘度潤滑剤添加剤を取り扱うのに加熱が必要である。しかしながら、高粘度潤滑剤成分のより精度の良いブレンドを可能とするのに、LVVPDPを用いると、高粘度ブレンド成分を過剰に加熱することなく、より精度良くブレンドされる。高粘度ブレンド成分または添加剤の温度は、110℃未満、好ましくは91℃未満、より好ましくは51℃未満としなければならない。
【0070】
本発明の高粘度潤滑剤ブレンド成分および方法により作製された潤滑剤ブレンドの精度は、ブレンド容器に分配される重量および容積を同時に測定することにより、更に改良される。これは、LVVPDPによりピペットで取られた容積を、計算された容積と比較し、測定された質量を乗算して、高粘度成分の密度をコンピュータにストアすることにより行われる。容積および質量測定が、誤差を超えて一致しない場合には、コンピュータによりその状況が記録される。
【0071】
本発明の他の例示の実施形態において、高密度潤滑剤成分の密度は、精度良く測定され、同時に、コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを介して、潤滑剤ブレンドが作製される。これは、各高粘度潤滑剤成分についてコンピュータによりなされる容積および質量測定を用いることによりなされる。
【0072】
本発明の更に他の例示の実施形態において、高粘度潤滑剤成分の密度は、高粘度潤滑剤成分の温度を変え、容積および質量を測定することにより、様々な温度範囲にわたって、測定される。質量を容積により除算することにより、密度は、コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラで計算される。
【0073】
本発明の更に他の実施形態において、ある高粘度潤滑剤成分の同一性が、上述したように測定された密度を、コンピュータデータベースにストアされた予測密度と比較することにより確認される。両者の密度が、ある許容度内で一致する場合には、高粘度潤滑剤成分の同一性は正しいことが分かる。密度がこの許容度外の場合には、誤った高密度潤滑剤成分を用いたか、或いは、その密度が指定外のいずれかである。
【0074】
ある量の潤滑剤添加剤を分配する精度は、大きなLVVPDP、または小さなLVVPDPによる従来のピペットの組み合わせを用いることにより更に改良することができる。大きなLVVPDPまたは従来のピペットを用いて、90〜99%の目的とする量が分配され、添加された実際の量は、残部により決まる。コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラが、小さなLVVPDPにより添加すべき残りの量を計算する。自動フィードバックルーチンを用いて、LVVPDPおよび従来のピペットから潤滑剤添加物を分配するのを更に改良することができる。
【0075】
本発明の高粘度添加剤を分配するためのLVVPDPを含む潤滑剤ブレンドステーションは、ブレンド量が比較的小さい実験室用途に好適である。本発明の高粘度添加剤を分配するためのLVVPDPを含む潤滑剤ブレンドステーションはまた、高処理量実験(HTE)タイプの用途にも好適である。これらの用途は、本発明の潤滑剤ブレンドステーションが利用される、潤滑剤および潤滑剤添加剤をブレンドするためのその他の用途の範囲を限定するものではない。
【0076】
出願人らは、当然予測される開示された主題のすべての実施形態および用途を開示しようとしてきた。しかしながら、等価物となる予測されない僅かの修正が可能である。本発明を、具体的な例示の実施形態と共に説明してきたが、多くの変形、修正および変更は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、前述の記載を考慮に入れると、当業者には明白であろう。従って、本開示には、上記の詳細な説明のかかる変形、修正および変更の全てが包含されるものとする。
【0077】
以下の実施例は、その範囲を限定することなく、本発明およびその利点を示すものである。
【実施例】
【0078】
実施例1
3つの潤滑剤添加剤を、10μlのギルソンマイクロマン(Gilson Microman)低空隙容積の容積式ピペット(タイプCP10)を用いて分配した。結果を、空気/液体置換に基づくテカン(Tecan)液体取扱装置を用いて得られたものと比較する。用いた添加剤の説明および代表的な特性を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
低空隙の容積式ピペットギルソンマイクロマン(Gilson Microman)M10は、室温で良好な結果を与えたが、テカン(Tecan)RSP100液体取扱システムは、同じ成分を室温で取り扱うことはできなかったことが分かった。マイクロマン(Microman)M10を用いて得られた結果を表3に示す。比較として、テカン(Tecan)液体取扱システムからのデータを表4に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
実施例2
マイクロマン(Microman)M100(100μl)低空隙の容積式ピペットはまた、テカン(Tecan)RSP100液体取扱システムと比べて、室温で良好な分配精度を与えた。マイクロマン(Microman)M10を用いて得られた結果を表5に示す。比較として、テカン(Tecan)液体取扱システムからのデータを表6に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
実施例3
パラトーン(Paratone)8011を室温、50℃および90℃で、2.5mlジェンコンスサイエンティフィック(Jencons Scientific)ピペット(488−008)を修正あり、および修正なしで用いて分配した。かみそりの刃を用いて、ピペット先端を切断して、先端端部近くの空隙を除去した。修正により、ピペットの空隙を減じる。修正によって、室温および50℃での分配精度の改良につながることが分かった。しかしながら、90℃では、利点は観察されなかった。データを表7に示す。
【0087】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の低空隙容積の容積式ピペットの例示の図である。
【図2】本発明の低空隙容積の容積式ピペットの変形の例示の図である。
【図3】潤滑剤添加剤リザーバにおける低空隙容積の容積式ピペットの例示の図である。
【図4】添加剤リザーバのアレイの例示の図である。
【図5】容積式ピペットの使用に基づく、潤滑剤ブレンドステーションの例示の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより分配して、潤滑剤ブレンドを形成する方法であって、
潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペットおよび1つ以上の潤滑剤ブレンド容器を提供する工程;
前記潤滑剤添加剤リザーバから前記低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記潤滑剤添加剤リザーバから前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程;
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の前記潤滑剤成分を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、前記添加剤リザーバまで戻す工程;および
前記投入、前記移動、前記排出および前記戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返す工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器の質量を測るための秤を提供する工程;および
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ排出される各潤滑剤成分の実際の質量を、前記秤により制御する工程
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の高粘度潤滑剤成分を、前記投入工程の前に、110℃未満の温度まで加熱する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の高粘度潤滑剤成分を、前記投入工程の前に、91℃未満の温度まで加熱する工程を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の高粘度潤滑剤成分を、前記投入工程の前に、51℃未満の温度まで加熱する工程を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記投入工程が、5×10−1未満の剪断速度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投入工程が、1×10−1未満の剪断速度で行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投入工程が、1×10−1未満の剪断速度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記投入工程が、1×10−1未満の剪断速度で行われることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記低空隙容積の容積式ピペットを制御するためのコンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラに結合したロボット手段を提供する工程;および
前記投入、前記移動、前記排出、前記戻すおよび前記繰り返す工程を自動化するためのコンピュータまたはプログラム可能なコントローラに結合された前記ロボット手段を用いる工程
を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを用いて、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の容積を測定することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の密度に、前記潤滑剤成分の排出容積を乗算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算質量を測定することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記計算質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算密度を測定することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、実際の質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の実際の密度を測定することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の前記実際の密度と前記計算密度を比較し、その差が指定したオフセット内か判断することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の同一性を確認することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラが、1つ以上の潤滑剤ブレンドレシピによりプログラムされていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ロボット手段が、サポートブリッジに接続されたロボットアームを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記潤滑剤成分が、基油、VI向上剤、分散剤、洗剤、流動点降下剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィン、耐摩耗/極圧剤、酸化防止剤、乳化破壊剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤、耐食防止剤、消泡剤およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記潤滑剤成分の粘度が、100℃で500センチポアズを超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記潤滑剤成分の粘度が、100℃で1000センチポアズを超えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記潤滑剤添加剤リザーバが、隔壁によりカバーされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記潤滑剤ブレンド容器の容積が、100ミリリットル未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑剤ブレンド容器の容積が、10ミリリットル未満であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、使い捨てであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
高処理量実験型用途に用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記低空隙容積の容積式ピペットの空隙容積が、1ミリリットル未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記低空隙容積の容積式ピペットの空隙容積が、0.5ミリリットル未満であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記低空隙容積の容積式ピペットの空隙容積が、0.05ミリリットル未満であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記低空隙容積の容積式ピペットの空隙容積が、0.5マイクロリットル未満であることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記低空隙容積の容積式ピペットの空隙容積が、実質的にないことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、テーパのついた先端を有しており、前記テーパのついた先端の合計容積の30%未満の空隙容積を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、テーパのついた先端を有しており、前記テーパのついた先端の合計容積の10%未満の空隙容積を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、テーパのついた先端を有しており、前記テーパのついた先端の合計容積の2%未満の空隙容積を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
小さな低空隙容積の容積式ピペットを用いて、大きな低空隙容積の容積式ピペットまたは従来のピペットと組み合わせて、分配精度を改善する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項35】
高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより分配して、潤滑剤ブレンドを形成する方法であって、
潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペット、前記潤滑剤添加剤リザーバのための加熱手段、1つ以上の潤滑剤ブレンド容器、前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器の質量を秤量するための秤および以下の工程を調整および制御するためのコンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラに結合されたロボット手段を提供する工程;
高粘度の1つ以上の潤滑剤成分を、110℃未満の温度まで加熱する工程;
前記潤滑剤添加剤リザーバから前記低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記潤滑剤添加剤リザーバから前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程;
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の前記潤滑剤成分を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出する工程;
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ排出された各潤滑剤成分の実際の質量を、前記秤により秤量し制御する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、前記添加剤リザーバまで戻す工程;および
前記投入、前記移動、前記排出、前記秤量および前記戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返す工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記潤滑剤成分が、基油、VI向上剤、分散剤、洗剤、流動点降下剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィン、耐摩耗/極圧剤、酸化防止剤、乳化破壊剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤、耐食防止剤、消泡剤およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記高粘度の1つ以上の潤滑剤成分が、VI向上剤、分散剤、流動点降下剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィンおよび前記高粘度の1つ以上の潤滑剤成分を含む添加剤パッケージからなる群から選択されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投入工程が、1×10−1未満の剪断速度で行われることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを用いて、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の容積を測定することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の密度に、前記潤滑剤成分の排出容積を乗算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算質量を測定することを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記計算質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算密度を測定することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、実際の質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の実際の密度を測定することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の前記実際の密度と前記計算密度を比較し、その差が指定したオフセット内か判断することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の同一性を確認することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラが、1つ以上の潤滑剤ブレンドレシピによりプログラムされていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記ロボット手段が、サポートブリッジに接続されたロボットアームを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項46】
高処理量実験型用途に用いられることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、テーパのついた先端を有しており、前記テーパのついた先端の合計容積の30%未満の空隙容積を備えていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項48】
高粘度潤滑剤成分を、チューブレス容積式ピペットにより分配して、潤滑剤ブレンドを形成する方法であって、
潤滑剤添加剤リザーバ内に含まれる各潤滑剤成分のための低空隙容積の容積式ピペット、前記潤滑剤添加剤リザーバのための加熱手段、容積が10ミリリットル未満の1つ以上の潤滑剤ブレンド容器、前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器の質量を秤量するための秤および以下の工程を調整および制御するための1つ以上の潤滑剤ブレンドレシピを備えたコンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラに結合されたサポートブリッジに接続されたロボットアームを提供する工程;
100℃で500センチポアズを超える粘度の1つ以上の潤滑剤成分を、110℃未満の温度まで加熱する工程;
前記潤滑剤添加剤リザーバから前記低空隙容積の容積式ピペットに、投入容積の潤滑剤成分を投入する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記潤滑剤添加剤リザーバから前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器まで移動する工程;
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ、排出容積の前記潤滑剤成分を、前記低空隙容積の容積式ピペットから1×10−1未満の剪断速度で排出する工程;
前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器へ排出された各潤滑剤成分の実際の質量を、前記秤により秤量し制御する工程;
前記低空隙容積の容積式ピペットを、前記1つ以上の潤滑剤ブレンド容器から、前記添加剤リザーバまで戻す工程;および
前記投入、前記移動、前記排出、前記秤量および前記戻す工程を、各添加潤滑剤成分について繰り返す工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
100℃で500センチポアズを超える粘度の前記1つ以上の潤滑剤成分が、VI向上剤、分散剤、流動点降下剤、ポリイソブチレン、高分子量ポリアルファオレフィンおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを用いて、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の容積を測定することを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の密度に、前記潤滑剤成分の排出容積を乗算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算質量を測定することを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の計算密度を測定することを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、実際の質量を、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の前記容積で除算することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の実際の密度を測定することを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記コンピュータまたはプログラム可能な論理コントローラを更に用いて、前記潤滑剤成分の前記実際の密度と前記計算密度を比較し、その差が指定したオフセット内か判断することにより、前記低空隙容積の容積式ピペットから排出された前記潤滑剤成分の同一性を確認することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記低空隙容積の容積式ピペットが、テーパのついた先端を有しており、前記テーパのついた先端の合計容積の30%未満の空隙容積を備えていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項56】
高処理量実験型用途に用いられることを特徴とする請求項48に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−541527(P2009−541527A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516485(P2009−516485)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/010700
【国際公開番号】WO2008/002349
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】