説明

容量マノメータおよび自動ドリフト補正に関する方法

マノメータについて出力値のドリフト予測を行う、ソフトウェア実施態様を含む、システム、方法、および、装置を開示する。以前のゼロ調整イベントに関連する履歴(例えば、タイムスタンプ)に基づいて、点検、交換、および/またはゼロ調整イベントが必要となると予測または判断したときに、容量マノメータにまたは容量マノメータに関して、信号またはその他の指示を供給することができる。以前に記録したタイムスタンプを、適した関数の曲線に当てはめて、マノメータに対する今後の保守、較正、および/または交換イベントを計算または予測することができる。このような信号または指示は、画面上の指示として生成することができ、更に、ディジタル通信リンクまたはシステムを通じて、マノメータの質問時に入手可能にすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力変換器に関し、更に特定すれば、自動ドリフト補正を備えた容量型マノメータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力変換器は、無数の用途において採用されている。このような変換器の1つに容量マノメータがあり、これは気体、蒸気、またはその他の流体の非常に正確で精度の高い測定値を供給する。用途には、精密圧力測定ならびに高精密気体および蒸気配給システムが含まれ、これらは多くの産業用応用分野、例えば、ウエハおよびチップ製作用半導体産業において、非常に重要になっているが、他の応用分野も周知である。このような流体配給システムは、通例、気体および蒸気の流量を規制および/または監視するために、質量流量コントローラ(MFC)および質量流量検査機構(MFV)のようなデバイスも含むが、これらに限定されるのではない。
【0003】
容量マノメータは、通例、電極構造を形成するまたは含む可撓性ダイアフラムと、ダイアフラムから離間されその間に容量を確立する固定電極構造とを用いる。ダイアフラムの一方側における、ダイアフラムの反対側における圧力に対する変動がダイアフラムを撓ませるので、ダイアフラムの電極構造と固定電極構造間の容量は、この差圧の関数として変動する。通常、ダイアフラムの一方側における気体または蒸気が測定対象圧力であり、ダイアフラムの反対側にある気体または蒸気は既知の基準圧力、大気圧または何らかの固定の高圧力または低圧力(真空)となっているので、ダイアフラムの測定側における圧力は、容量測定値の関数として決定することができる。
【0004】
容量マノメータを用いて圧力を測定し、ダイアフラムが撓んで容量変化が生ずるとき、ダイアフラムの測定側における圧力が、基準側と同じ圧力(「ゼロ状態」)に戻り、計器が「ゼロ」読み取り値を示すと考えられる。しかしながら、時間の経過と共に、種々の理由のために、マノメータがゼロ状態に戻るときに読み取り値がゼロからドリフトする。このため、マノメータの読み取り値は、ゼロ状態に対して読み取り値をゼロに戻すために、適時ゼロにして較正しなければならない。先行技術の容量マノメータでは、マノメータのゼロ調整を行う(例えば、そのゼロ読み取り値を較正させる)必要があるか否かの判断は、通例、時間に関する基準、例えば、6カ月毎に、あるいは型通りに、例えば、予防用保守サイクル(PM)毎に決定するか、または全く行っていなかった。マノメータのゼロ調整を行う頻度の選択は、通例、操作者またはユーザ(例えば、半導体プロセス・エンジニア)の裁量に任されていた。このような決定は、通例、人による以前のドリフトの検査に基づいていた。
【0005】
先行技術の容量マノメータに対する蓄積ドリフトの記録はいずれも、慣例的なゼロ調整の間に手作業でこのようなドリフトを測定することによって行っているのが通例である。次いで、ゼロ調整頻度に関して、即ち、マノメータがその製品寿命に達したか否か、ユーザによる判断を下す必要がある。
【0006】
実際には、ユーザは、時間がないこと、および/または関与する要因が複雑であることを含む種々の理由により、このような判断を行わないのが通例である。代わりに、ユーザは、関係するプロセス・ツールまたはシステム上における警報に反応してゼロ調整するか、またはマノメータがもはやゼロ調整できない(調節不可)ことに気付いたときに交換するというのが通例である。いずれの場合でも、マノメータの交換またはゼロ調整は、予期しない機器障害の問題(ツールまたはシステムの不稼動時間)の原因となる。このような予定にない保守または交換は、慣例的な保守予定以外で扱わなければならず、ツールまたはシステム全体の効率的な使用に関してコスト高となる。
【0007】
このように、ユーザはゼロ調整の頻度について先験的な判断を下さなければならなかった。マノメータが再較正のような慣例的な保守を必要とするか否かの判断は、一般には行われていなかった。また、マノメータの累積ゼロ変化の記録はいずれも、手作業で、不便なプロセスで行われている。実際、ユーザはツールまたはシステムの警報があったときでなければ、いつ問題が存在するかわからないのが一般である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、高精密流体配給システムに用いられるような、容量マノメータがゼロ調整、保守、および/または交換を必要とするときを予測および/または指示し、自動的にシステムを較正して可能なときにドリフトを補正することによって、先行技術について認められた限界に取り組むシステム、方法、および装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、ゼロ調整イベント、点検、または交換を行うべきときに信号を供給するか、またはその他の方法で指示する、圧力変換器(例えば、容量マノメータ)に有用な、ソフトウェア実施態様を含む、システム、方法、および装置を対象とする。このような予測は、個々のマノメータの以前のゼロ調整イベントに関連する履歴(例えば、記録したタイムスタンプ)に基づくことができる。ゼロ調整、保守、または交換についての信号/指示を、アラームまたは画面上の指示として発生することができ、更に、イーサネット(登録商標)接続のような、通信リンクまたはシステムを通じた、マノメータの質問時に入手可能とすることもできる。
【0010】
一実施形態では、マノメータのゼロ読み取り値の内因的ドリフトまたはプロセス関連ドリフトに基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するように構成および用意した容量マノメータを提供することができる。このような容量マノメータは、第1ポートおよび第2ポートを有するセンサ筐体またはカプセルと、センサ・カプセルの中に配置したダイアフラムとを含むことができる。ダイアフラム、例えば、可撓性金属ディスクは、2つの側を有し、ダイアフラムの2つの側におけるそれぞれの圧力間の圧力差に応答して、センサ・カプセル内において移動するように構成および用意されている。センサ・カプセル内部において、ダイアフラムの一方側に隣接して、電極構造を位置付けることができる。ダイアフラムと電極構造との間における容量を測定し、測定したゼロ圧力に対応するゼロ出力読み取り値を生成するように構成および用意されている電子回路を設けてもよい。電子回路は、更に、(i)マノメータのゼロ出力読み取り調節に対応する2又は3個以上のタイム・スタンプを記録し、(ii)2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するように構成および用意されている。マノメータは、アラーム、ディジタル出力、および/またはアナログ出力を生成するように構成および用意することができる。マノメータは、記録したドリフト・データの外挿補間によって、2又は3個以上のタイム・スタンプに基づいて、指定されたドリフト量を超過するマノメータのゼロ読み取り値を予測するように構成および用意することができる。
【0011】
更に別の実施形態では、マノメータの内因的ドリフトに基づいて、容量マノメータのゼロ読み取りのドリフト値を予測する方法を提供する。このような方法は、2回以上容量マノメータのゼロ調整を行うステップと、マノメータのゼロ調整を行う毎に、ゼロ・オフセット値にタイム・スタンプを付けて記録するステップとを含む。2又は3個以上のゼロ・オフセット値を記録することができる。2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測することができる。ドリフト値の予測は、2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、マノメータのゼロ調整を行う必要性を判断することを含むことができる。ドリフト値の予測は、ゼロ出力読み取り値が指定の閾値を超過したと判断すること、および/またはマノメータを交換または点検する必要性を判断することを含むことができる。
【0012】
更に別の実施形態では、1又は複数のプロセス関連ドリフト値に基づいて、容量マノメータのゼロ読み取りのドリフト値を予測する方法を提供する。このような方法は、複数のプロセス圧力を、容量マノメータを用いて測定するステップを含むことができる。各プロセス圧力は、複数のプロセスの内の1つと関連付けることができる。複数のプロセスの各々について経過時間を判定し、複数のドリフト率を計算し、各ドリフト率は、複数のプロセスの1つに対応し、複数のドリフト率に基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測する。複数のプロセスの各々について経過時間を判定するには、複数のタイム・スタンプを記録することを含むことができる。複数のタイム・スタンプを記録するには、プロセス毎に1対以上のタイム・スタンプを記録することを含むことができる。タイム・スタンプの各対は、プロセス開始タイム・スタンプとプロセス終了タイム・スタンプとを含むことができる。マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するには、複数のドリフト率に数学的関数を当てはめることを含むことができる。本明細書にはある種の実施形態について記載するが、その他の実施形態や態様も、本開示に含まれる説明および図面に本来備わっており、これらによって支持されることは、当業者には認められよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の態様は、以下の説明を添付図面と合わせて読むことにより一層深く理解することができる。図面は、本質的に限定的ではなく例示的に見なすものとする。図面は、必ずしも同一拡縮率ではなく、逆に、開示の原理には強調が行われている。図面において、
【図1】図1は、本発明のある種の実施形態にしたがって構成し配置した容量マノメータの一実施形態の簡略断面図である。
【図2】図2は、本発明のある種の実施形態にしたがって設計した典型的な容量マノメータの電気構成部品の簡略部分的模式図および部分的ブロック図である。
【図3】図3は、本発明のある種の実施形態にしたがって構成および用意した容量マノメータの別の実施形態の簡略断面図である。
【図4】図4は、本開示の実施形態の一例にしたがって、容量マノメータの動作時間に付随する2又は3個以上のタイム・スタンプに基づいて、容量マノメータの内因的ゼロ・ドリフトを予測する方法の一好適実施形態のステップを示すフロー・チャートである。
【図5】図5は、本開示の更に別の実施形態にしたがって、容量マノメータによって測定した1又は複数の特定プロセスに付随するタイム・スタンプに基づいて、容量マノメータのプロセス関係ゼロ・ドリフトを予測する方法の一好適実施形態のステップを示すフロー・チャートである。
【0014】
尚、図面に示す実施形態は例示であり、図示するこれらの変形や、本明細書において記載するその他の実施形態も、本開示の範囲に該当するものと見なし、その範囲内で実用化できることは、当業者には言うまでもないであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の態様は、容量マノメータのゼロ調整(例えば、ゼロ読み取り値較正)、保守、または交換の必要性を判断または予測するのに有用なシステム、方法、および装置を対象とする。実施形態例は、本開示によるコンピュータ実行可能コード、例えば、適したアルゴリズム(群)を有するソフトウェアまたはファームウェアを含むことができる。
【0016】
図1は、自動ドリフト補正を含むように構成することができる一種の容量マノメータ100を示す。マノメータ100は、筐体102と、この筐体の中に配置されている可撓性ダイアフラム104とを含む。ダイアフラムは、測定室106と基準室108(図1では、2つの部分を108a、108bで示す)を規定するように筐体を分割し、2つの室が異なる圧力で流体を保持できるようになっている。ダイアフラム104は、可撓性膜、ディスク、またはプレートを含み、差圧を受けると撓む。即ち、異なる圧力がダイアフラムの対向する両側にかかると、差圧によって生ずる力の差によって、ダイアフラムが撓むことになる。また、筐体102は入口測定ポート110も含む。これは、測定室106に流体を導入させるように構成および用意されている。入口基準ポート112は、流体または真空を基準室108に導入させるように構成および用意されており、したがって、室106に対してダイアフラム104の逆側にある。通常、基準室に導入する流体/真空は、既知の圧力、例えば、1気圧、あるいは高圧力または低(真空)圧力である。ダイアフラム104の両側は、互いに密封されているので、いずれの差圧も精度高く測定することができる。図示のように、測定対象流体の流れを変えるため、および/または異物から保護するために、筐体102内の測定側にバッフル114があってもよい。
【0017】
図1および図2を参照すると、少なくとも1つの電極構造116が筐体102の中に設けられている。電極構造116は、測定室106および基準室108における圧力には関係なく、固定位置に留まる。種々の電極構造が知られているが、図示の実施形態では、電極構造116は、中央電極120および環状電極122を指示するために、絶縁材料の指示部118を含む。環状電極122は、好ましくは、中央電極120と同心円状である。ダイアフラム104は、通例、キャパシタ構造の一方側を形成する構造を規定するまたは含むように作成され、一方キャパシタ構造の他方側は、電極構造によって形成される。電極構造116は、ダイアフラム104に対して予め選択した距離のところに固定的に支持されており、電極構造とダイアフラムとの間における容量測定により、基準室内における圧力に対する測定室内における圧力の測定値が得られる。更に正確には、図1および図2に示す実施形態では、中央電極120とダイアフラム104との間における容量(キャパシタの記号124で示す)と環状電極122とダイアフラム104との間における容量(キャパシタ126で示す)との差から、測定室106と基準室、例えば、108bとの間における圧力差の非常に精度が高い測定値が得られる。つまり、差圧に応答しての筐体102内部にあるダイアフラム104の撓みが、ダイアフラム104と電極120および122の各々との間における容量を変化させる。
【0018】
また、マノメータ100は、電子基板/回路140も含み、これはライン142および144ならびにシステム接地に接続されている。ライン142および144は、それぞれ、中央電極120および環状電極122に電気的に接続されている。電子基板/回路140は、好ましくは、測定信号出力や、以下で説明するその他の出力信号を供給する測定回路を含むように作成し構成する。
【0019】
図2を参照すると、電子基板/回路140の一例が示されている。ダイアフラム104は、202において示すように、システム接地に接続されている。図示の測定システムは、ブリッジ回路204、駆動回路206、基準信号発生器208、および信号調整回路210を含む。中央電極118と接地との間の電圧、環状電極と接地との間の電圧は、それぞれ、ライン142および144ならびにシステム接地を通じて、ブリッジ回路204の対向側に印加される。図示の実施形態では、駆動回路206はブリッジ回路204を駆動するように構成および用意されている正弦波発振器を含む。信号調整回路210(例えば、バッファ、信号倍率調整、および信号増幅構成部品を含む)は、ブリッジ回路204からの出力を調整し、更に別のデータ信号を供給するために用いることもできる。また、図示の測定回路200は、基準値を格納し、基準出力信号を信号調整回路210に供給するように構成および用意されている基準信号発生器208も含む。センサ電極容量(中央電極と一方のダイアフラムとの容量と、環状電極と他方のダイアフラムとの容量との間)の不均衡により、測定回路204に差出力が生じる。信号調整回路210は、これを調整し増幅する。信号調整回路210は、ダイアフラムの撓み量に対応する出力信号212を生成する。一方、ダイアフラムの撓み量は、ダイアフラムに加えられる差圧の尺度となる。
【0020】
加えて、測定室106および基準室108における圧力が等しい場合、電子ブロック/回路140の出力212は、測定したゼロ差圧に対応して、ゼロ出力読み取り値となるはずである。電子ブロック/回路140は、更に、プロセッサ214およびメモリ216を含むように構成および用意されている。プロセッサ214およびメモリ216を設けることによって、マノメータ100のゼロ調整イベントに付随するタイム・スタンプ(例えば、一意の時間識別子)の記録に対処することができる。また、マノメータ100は、電力を電子回路140に供給するように構成および用意されている電源(図示せず)も含むことができる。また、ディスプレイ(例えば、グラフィカル・ユーザ・インターフェース[GUI]、LED、またはLCDリードアウト(readout)等)215も、タイム・スタンプ情報を含む、マノメータの動作に付随する情報を表示するように構成および用意することができる。加えて、出力212は、ネットワークまたは通信リンク218を通じて制御または監視システム220に送信することができる。
【0021】
電子ブロック/回路140は、好ましくは、所望のゼロ読み取り値(例えば、基準室における基準圧力に等しい)に対して格納した基準値((図2において208で示す)基準信号発生器によって供給する)を含む。また、電子ブロック/回路140は、好ましくは、マノメータの較正曲線スパンを調節するための、調整ねじ150で表したスパン・ポテンショメータ、およびマノメータの較正曲線の線形性を調節するように構成および用意されている、調節ねじ152で表した、線形性ポテンショメータも含む。加えて、電子ブロック/回路140は、好ましくは、マノメータのゼロ読み取り出力値を所望の値に調節するように構成および用意されている、調節ねじ154で表した、1又は複数のゼロ・ポテンショメータも含む。実施形態例では、これらの調節機能は、ディジタル的に実行し格納することができる。
【0022】
また、マノメータ100には、電子ブロック/回路140の一部として、タイム・スタンプを付けたゼロ・オフセット値のログを読み取り収集するために1又は複数の構成素子を設けることが好ましい。一方、このゼロ・オフセット値は、マノメータ100のゼロ調整を行う毎に、収集することができる。ゼロ・オフセットは、最後のゼロ調整イベントまたは初期設定(construction)以降にゼロ圧力読み取り値(マノメータによって示される)が移動即ちドリフトした量に対応することができる。プロセッサ214ならびにソフトウェア・コードおよび/またはファームウェアを用いてこれを遂行することができる。このようなコードは、例えば、電子ブロック/回路140に付随するまたはその一部をなす電気的消去可能プログラマブル・リード・オンリ・メモリ(EEPROM)または「フラッシュ」メモリのような適したメモリに格納またはロードすることができる。ソフトウェアまたはファームウェアは、連続データを用いて、オフセット・データを数学的モデル/関数に当てはめることによって、例えば、線形外挿補間または曲線当てはめによって、次のゼロ調整および/または交換イベントをいつ行うべきかについての予測を行うことができる。このようなソフトウェアまたはファームウェア・コードを含む構成要素は、適した通信リンク、例えば、イーサネット(登録商標)接続等を通じてマノメータ100と共に用いるために、マノメータ100から離れた場所で実行すること、または格納することもできる。
【0023】
マノメータのゼロ出力読み取り調節に対応する2又は3個以上のタイム・スタンプを記録することにより、電子ブロック/回路140は、記録したゼロ・オフセット値に基づいて、例えば、曲線/関数を記録オフセット・データに当てはめることによって、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するように動作することができる。実施形態例では、電子ブロック/回路140は、通信リンクからマノメータ外部の制御システムにコンピュータ読み取り可能命令を受信するように構成および用意されているディジタル制御ユニットとして動作することができる。
【0024】
実施形態例では、1対ではなく、1つだけの読み取り値を用いることができる。ゼロ点ずれのようなイベントは、電源投入前またはその最中に発生することもあり、次の読み取りを待たずに、マノメータを直ちにサービスから取り除かなければならないことを示す。あるいは、マノメータに長時間ある圧力(例えば、ゼロ)にある場合、そのような期間中には2つよりも多いタイム・スタンプを取り込む/付けることもできる。
【0025】
図3を参照すると、本開示による温度制御容量マノメータ300の実施形態の一例が更に示されている。マノメータ300は、図1に示したものと同様であり、同じ参照文字を適用することができ、更に、筐体302内における温度を規制および/または制御するように構成および用意されている定温度オーブンまたは加熱エレメント304も含む。調節ねじ150、152、および154を露見させるために、マノメータ300の一部を除去して示す。調節ツール310(例えば、スクリュードライバ)を用いて、必要に応じて、調節ねじを回すことができる。これらの調節は、付随するディジタル電子回路(図示せず)によっても遂行/実行することができる。
【0026】
先に注記したように、日常的に容量マノメータのゼロ調節を行い(ゼロ読み取り値を較正し)、正しく動作していることを確認することが役立つこともあり得る。即ち、ある動作期間較正曲線を不変のままにしておくと、ゼロ点(したがって、曲線全体)がずれてしまっていたために、ゼロ出力(ゼロ圧力)に対応する読み取り値が間違っていることもあり得る。通例、マノメータ、特に、定圧力範囲に合わせて設計したマノメータは、例えば、負方向に内因的なゼロ・ドリフト/ずれを呈し、プロファイル(ドリフト率)は、ユニット毎にばらつきがある。開示を限定することなく、このようなドリフト率は、通例、1日当たり0および−1E−4mTの範囲であると考えられる。加えて、半導体プロセスの中には、特に、エッチングおよび堆積プロセスでは、プロセス材料がセンサ・ダイアフラム上に堆積されて行き、センサの内因的ドリフトに加えて、ゼロ点ずれまたはゼロ・ドリフトを生ずる可能性もある。あるエッチング・プロセスに対する典型的な高い値は、1日当たり0.1mTから1mTの範囲であるが、これは代表的(そして、限定ではない)範囲である。
【0027】
好ましくは、ユーザは、一般に、内因的ゼロ・ドリフトおよびプロセス関連ゼロ・ドリフトの双方に、同じルーチン・ゼロ調整方法を用いる。デバイスは、マノメータの分解能限度未満の圧力まで低下させ、デバイスの出力、例えば、電圧は、ゼロ圧力を反映するように調節する。例えば、0Vに調節する。プロセス関連ドリフトが更に厳しい状況では、通常、ゼロ調整をもっと頻繁に行う必要がある。本開示にしたがって設計したマノメータは、種々の方法、即ち、図4および図5を参照して以下で説明する方法にしたがって、内因的またはプロセス関連のいずれの種類であっても、ドリフト値を予測するために用いることができる。
【0028】
図4は、マノメータの動作時間に付随する2又は3個以上のタイム・スタンプに基づいて、容量マノメータのゼロ読み取りドリフト、例えば、内因的ドリフトを予測する方法400を示す。この方法は、2回以上容量マノメータのゼロ調整を行うステップ402と、マノメータのゼロ調整を行う毎にタイム・スタンプが付いたゼロ・オフセット値を記録して、2又は3個以上のゼロ・オフセット値を記録するステップ404とを含むことができる。マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値は、ステップ406において、2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて予測することができる。
【0029】
引き続き図4を参照すると、ドリフト値の予測は、2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいてマノメータのゼロ調整を行う必要性を決定または予測するステップ408を含むことができる。ドリフト値の予測は、ゼロ出力読み取り値が、予測した時点において、指定された閾値を超過することを判定するステップ410を含むことができる。次いで、プロセスはステップ412に進み、予測したドリフトに基づいて、マノメータを交換する(または点検する)必要性を判定する。
【0030】
ステップ414は、マノメータの出力のゼロ調整を行う機能に備えるものであり、数学的関数を2又は3個以上のオフセット値に当てはめ、この数学的関数に基づいて、今後のゼロ・ドリフトを外挿補間することを含むことができる。数学的関数の当てはめは、直線関数、多項式関数、および/または指数関数、あるいはその他の適した関数を当てはめることを含むことができる。統計的/再帰分析を、ステップ414における関数/曲線当てはめに用いることができる。指定の閾値は、所定値とすることができる。更に、指定の閾値は、ユーザがイーサネット(登録商標)接続またはその他の適した通信リンクを通じて供給するというような、ユーザがプログラムした値とすることもできる。
【0031】
更に、方法400は、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測に応答して、ゼロ調整すること、保守を行うこと、またはマノメータを交換することを含むことができる。ゼロ調整は、ゼロ圧力、またはいずれかの既知の圧力において行うことができる。更に、ゼロ調整は、いずれの時点でも、そしていずれの静的または動的圧力においてでも、先に計算したドリフト率を用いて行うことができる。また、方法400はマノメータの出力におけるマノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を、図2に示した制御システム220のような制御システムに、通信リンクによって送ることを含むこともできる。制御システムは、好ましくは、マノメータの動作を制御するように構成および用意する。マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測は、マノメータの電子コントローラがコンピュータ読み取り可能命令を実行することを含むことができる。方法400は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを用いて、例えば、図2のディスプレイ216を通じてというように、マノメータの動作を制御することを含むことができる。
【0032】
累積ドリフトを解消するためにマノメータの出力のゼロ調整に関する命令は、様々なものが可能である。例えば、累積ドリフトが2又は3個以上の連続する測定値にまたがって発見され、1日当たりDmilliTorr(mT)のドリフト率に等しいと仮定し、更に精度仕様が読み取り値のA%であると仮定すると、可能な判断時点は、ゼロ・ドリフトが既知の閾値に達したときであると言うことができ、その場合、マノメータのゼロ調整を行わなければならない。別の可能性は、ゼロ・ドリフトのために、全目盛り幅のR%のところにある出力が要求精度仕様を外れてずれてしまい、したがってマノメータのゼロ調整を再度行うべきときに、マノメータのゼロ調整を再度行うことである。
【0033】
少なくとも1つの実施形態例では、ゼロ調整の必要性を予測または決定するステップ408は、以下の式にしたがって、次のゼロ調整イベントまでの時間を決定することを含むことができる。
【0034】
【数1】



【0035】
ここで、Aは、精度仕様(読み取り値の%)、Fは圧力読み取り値の最大目盛りであり、Dは記録したドリフト(圧力単位/時間)であり、Rは動作圧力のマノメータの最大目盛り圧力に対する比率であり、Tは次のゼロ調整イベントまでの時間である。式1においては一例として線形外挿補間を用いるが、前述のように、更に別の実施形態例では、ドリフト・プロファイルが時間または圧力に対して非線形である場合、適した曲線当てはめアルゴリズム/技法を利用することもできる。
【0036】
計算した値Tを用いて、マノメータのソフトウェアまたは電子回路を起動し、信号をマノメータGUIおよび/またはツール・ソフトウェアに、例えば、予測日(例えば、「ツール/ユーザは日付Xまでにゼロ調整ルーチンを実行しなければならない」)として送ることができる。
【0037】
同様に、日常的保守に関して、決定を導出することもできる。例えば、マノメータの全容認可能/許容ドリフト=最大目盛りの20%。上の式1は、記録したドリフト・データと共に、ゼロ調整ができなくなるとき、つまり日常的保守のためにサービス・ステーションに返送するときを予測するために用いることができる。
例1−内因的ドリフト
ある種の用途では、マノメータは、当該マノメータの動作時間に対応するそのゼロ読み取り値に対する内因的ドリフトを有することを特徴とすることができる。このような「内因的」ゼロ・ドリフトは、本開示による実施形態によって対処し予測することができる。
【0038】
例えば、読み取り値の精度が0.5%以内であり、内因的ドリフト率が1日当たり7E−4mTであるMKS 628 100mTマノメータ(本譲受人が販売する)を用いると、式1にしたがって、10mTにおけるゼロ調整イベント間で許容されるドリフトは、100mTの10%の0.5%=5E−2mTとなる。したがって、予測される日数は、5E−2/7E−4の値、即ち、約71日となる。
【0039】
マノメータの内在的ドリフトを特定し、観察した内因的ドリフトを用いて、例えば、図4に示した方法によって得られるように、ゼロからの今後のドリフトを予測することに加えて、またはそれに代えて、マノメータの異なる動作期間(例えば、プロセス時間対非プロセス時間)の間に起こるドリフトを区別し、内在的ドリフトと対立するものとして、プロセス関連ドリフトを別個に計算するという視点に立つことも有用となることがある。多くの場合、圧力対プロセス・データをダウンロードした後に、測定圧力の知識だけで、変換器自体におけるアルゴリズムによってプロセスを特定することができる。あるいは、プロセス識別を外部から供給することもできる。
【0040】
ある種の実施形態または用途では、電力を供給するときに(例えば、変換器が動作中であるための)1つの内因的ドリフト率があり、電源がオフのとき(例えば、変換器が保管されているとき)に別の内因的ドリフト率がある場合もある。内因的ドリフト率を有効に応用するためには、電源が入っているか否かには関わらず総時間を用いる必要がある場合もある。これに対する解決策の1つは、変換器に、システムが起動したときにはいつでもシステム時間を質問させ、その内部時間記録を真の時間と同期させ、総経過時間を給電経過時間から分離することであろう。電力投入時には、電力を切ったか否かには関わらず、双方の種類の内因的ドリフト・データを一層正確に計算することができる。実施形態は、この目的のために、例えば、しかるべき適したバッテリによって給電するマノメータ自体において、リアル・タイム・クロックを利用することができる。
【0041】
図5は、全体的に500で示す、マノメータによって測定した複数のプロセスの内1又は複数の特定したプロセスに付随するタイム・スタンプに基づいて、容量マノメータのプロセス関連ゼロ・ドリフトを予測する方法のステップの一例を示す。ゼロ・ドリフトをもたらす条件の全て、殆ど、または大部分に寄与するものと特定された1又は複数のプロセスの流体/気体圧力を測定するのにマノメータが費やした経過時間を決定することによって、ゼロ・ドリフトの予測を非常に高精度に行うことができる。方法500は、マノメータをプロセス条件に露出した時間および非プロセス条件に露出した時間、例えば、マノメータのゼロ較正に比較的有害な条件、および比較的無害な条件の知識から、ゼロ調整イベント、日常的保守イベント、および/またはマノメータ交換の必要性(requirement or need)を予測するために用いることができる。方法500は、複数の測定したドリフト率に基づいて、マノメータのゼロ調整を行う必要性、点検する必要性、および/または交換する必要性を判断することを含むことができる。ドリフト値の予測は、ゼロ出力読み取り値が、指定の閾値を超過することを含むことができ、指定の閾値は、予め決めておくこと、および/またはユーザがプログラムすることができる。
【0042】
方法500は、複数のプロセス圧力を、容量マノメータによって測定するステップ502を含むことができ、各プロセス圧力には、複数のプロセスまたはプロセス・ステップの1又は2と関連がある。ステップ504において、複数のタイム・スタンプを記録することができる。ステップ506において、例えば、記録したタイム・スタンプに基づいて、複数のプロセスの各々について経過時間を計算または判定することができる。ステップ508において、複数のドリフト率を計算することができ、各々、複数のプロセスの1つに対応する。ステップ510において、複数のドリフト率に基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測することができる。ステップ512において、複数のドリフト率と関連のあるデータに、数学的モデルまたは関数を当てはめることができる。
【0043】
前述のように、記録するステップ504は、複数のタイム・スタンプを発生し記録することを含み、次いで、ステップ506において、複数のプロセスの各々の経過時間を判定するために、タイム・スタンプをステップ506において利用することができる。複数のタイム・スタンプの記録は、プロセス毎に1対のタイム・スタンプを記録することを含むことができる。タイム・スタンプの各対は、プロセス開始タイム・スタンプおよびプロセス終了タイム・スタンプを含むことができる。マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測は、数学的関数を複数のドリフト率に当てはめること(512)を含むことができる。数学的関数512の当てはめは、直線関数、多項式関数、および/または指数関数、あるいはその他の適した関数であればいずれでも当てはめることを含むことができる。ステップ512において統計的/回帰分析を利用することができる。
【0044】
方法500の実施形態例は、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測することを含むことができる。この方法は、更に、複数のドリフト率の1又は複数の時間積分を計算して、1又は複数のドリフト値を求めることを含むことができる。また、予測したドリフト率は、514において変換器のゼロ点を補正するために用いることができる。
【0045】
方法500にしたがって計算したマノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値は、図2の制御システム220のような制御システムに、適したネットワークまたは通信リンク、例えば、リンク218によって送ることもできる。このような制御システムは、マノメータの動作を制御するように構成および用意することができる。また、方法500によってマノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測する際、コンピュータ読み取り可能命令を実行するマノメータ電子コントローラの動作を含むこともできる。実施形態例では、図2のディスプレイ216を通じてというようにして、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを用いて、マノメータの動作を制御することができる。
【0046】
方法500のような方法では、プロセス露出経過時間と、非プロセス露出経過時間との関係を判断することが好ましい。例えば、ユーザ/操作者は、前もって、プロセス圧力測定に1又は複数の枠を定めておき、マノメータは、異なる動作モードに関する情報を、日付スタンプを付けて記録する。例えば、1−Torr最大目盛り(FS)のマノメータであれば、50mT(ドリフトRP1があるプロセス1)、および300mT(ドリフトRP2があるプロセス2)のプロセス測定に用いることができる。ユーザは、マノメータと通信することによって(例えば、パーソナル・コンピュータ、およびディスプレイ216を通じてというようにして、画面上GUIによって)、これらの対象圧力帯域を特定する。
【0047】
前述の例を続けると、次に、マノメータは、日付のスタンプが付いた情報によって、重要であるとして特定された圧力帯域内でマノメータを用いていた時間(プロセス露出時間T1、T2、...等)、およびこれらの圧力帯域外においてマノメータを用いていた時間(非プロセス露出時間T0)を記録することができる。総ドリフトD(mT)は、(T0×RPO)+(T1×RP1)×(T2×RP2)×等によって求めることができる。この情報を編集することにより、個々のドリフト率係数を異なるプロセス毎に計算し、フィードバックして、例えば、曲線当てはめおよび外挿補間によるドリフト予測の目的に用いることができる。
【0048】
簡素さを求めるには、ユーザが各プロセスを別個に設定し、個々のゼロ・ドリフト係数を測定することもできる。このような実施形態では、累積ゼロ・ドリフトを直接参照せずに、一定のプロセス特定帯域内においてマノメータを用いる時間についての知識のみからドリフトを予測し、したがってゼロ調整の周期性を予測することも可能である。
【0049】
以下の例は、本開示の実施形態例によるゼロ調整イベント予測を示す。
例2−プロセス関連ドリフト
ある種の用途では、マノメータは、1又は複数の特定的なプロセスに対してはマノメータの動作時間に対応するゼロ・ドリフトを有し、他のプロセスではそれを有さないことによって特徴付けることができる。このような「プロセス関連」ゼロ・ドリフトは、本開示による実施形態によって対処し予測することができる。
【0050】
読み取り精度が0.5%、内因的ドリフト率が1日当たり0.1mTであるMKS628 100mTマノメータ(本譲受人が販売する)について、式1によれば、ゼロ調整イベント間で10mTにおける許容ドリフトは、100mTの10%の0.5%=5E−2mTとなる。したがって、予測日数は、5E−2/0.1、即ち、約0.5日となる。
【0051】
本開示による実施形態例では、本開示の譲受人から商業的に入手可能な、イーサネット(登録商標)対応のBaratron(登録商標)容量マノメータ、例えば、型番627C e-Baratron(登録商標)(Baratronは、本譲受人の登録商標である)マノメータは、ゼロ調整イベントに付随するタイム・スタンプ・データを追跡し処理するための修正/プログラミングと共に用いることができる。イーサネット(登録商標)対応のe-Baratron(登録商標)マノメータは、特に、実施形態例において望ましいと考えられる。何故なら、これらは、ホスト・システムから分解したり除去することなく、局所的診断またはネットワーク診断のために、イーサネット(登録商標)・ハブやその他のデバイスとネットワークを形成する可能性を提供することができるからである。
【0052】
MKS社のイーサネット(登録商標)装備e-Baratron(登録商標)マノメータは、いずれのWindows(登録商標)系PCとでも通信することを可能にする、埋め込みインターネット・ブラウザ・ソフトウェアを含む。イーサネット(登録商標)・ポートは標準的なアナログ通信と並列に動作するので、処理の間にリアル・タイムでデバイスを診断することができる。これは、自分自身のシステム分析およびトラブルシューティングを行うユーザにとって、大きな利点である。イーサネット(登録商標)・ネットワーキングを用いないユーザにとっても、e-Baratron(登録商標)マノメータは外部LEDも有し、デバイスのステータスに対して素早い直観的な指針を与える。更に別の実施形態例では、i-Baratron(登録商標)ディジタル容量マノメータを利用することもできる。これは、本開示の譲受人が市販する製品である。このようなマノメータには、Open DeviceNetのVendor Association(ODVA:オープン・デバイス・ネットの納入業者連合)準拠のDeviceNet(商標)通信プロトコル、またはその他の適したプロトコルのインターフェースを提供することができる。
【0053】
このようなe-Baratron(登録商標)および/またはi-Baratron(登録商標)マノメータによって得られる特徴および利点には、次の項目が含まれる。高精度および再現性。標準的製品ラインに、既存のネットワーク・プロセス・ツールおよび最新世代のネットワーク・プロセス・ツールにおいて用いるためのアナログ通信およびイーサネット(登録商標)通信双方が含まれる。イーサネット(登録商標)通信は、リアル・タイムであり、アナログ通信と並列に実行することができ、デバイスやプロセスの現場診断が可能となり、ケーブルの切断は全く必要ない。埋め込みインターネット・ウェブ・ブラウザは、いずれのWindows(登録商標)系PCとでも通信することができる。デバイスまたはプロセスに用いることができる完全な1組の診断ルーチンを備えた、直観的グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)。即時デバイス・ステータス情報に合わせた、理解しやすい外部インディケータ。1,000から0.02Torrまでの最大目盛り圧力範囲。他の加熱式アナログBaratron(登録商標)容量マノメータおよびいくつかの競合製品とのピン対ピンの互換性。CEに準拠し、SEMI S2-93安全指針の該当する規定に対して検査済みである。
【0054】
したがって、本開示の実施形態は、いつ次のゼロ調整をマノメータにすべきか、そして保守または交換すべきか、ユーザおよび/または半導体ツール/システムに通知するように構成および用意されている容量マノメータの使用について規定することができる。本開示による方法、および/または装置(コンピュータ実行可能命令を含むソフトウェアおよび/またはファームウェアを含むことができる)は、ゼロ調整方法に関する判断プロセスを自動化するために用いることができる。マノメータは、ユーザがゼロ調整手順を実行しておくべき期限となる日付を示す。本開示によって、マノメータを役務から外すべきときを予測することが可能となり、したがって、予定にないダウンタイムを防止することができる。
【0055】
本開示による実施形態は、例えば、半導体プロセス・ツール上に設置した容量マノメータのゼロ調整を自動的に、操作者の介入なしに、行うことを可能にすることができる。マノメータが供給する信号によって、ツール・ソフトウェアは、ユーザに不便を感じさせることなく自動ゼロ調整イベントの予定を組むことが可能になる。このため、こうしなければ許容量および/または閾値を超えてドリフトしたマノメータのゼロ読み取りによって生じていたはずの、ツールまたはシステム上における不必要な/誤った警報の回数を減少させるのに役立つことができる。
【0056】
以上、本明細書においてはある種の実施形態について説明したが、本開示の方法、システム、および装置は、その主旨から逸脱することなく、他の特定的形態においても具体化できることは、当業者には言うまでもないであろう。
【0057】
例えば、気体配給システムに対する容量マノメータの使用について概略的に説明したが、このようなマノメータは、他の適した構成/用途においても利用できることは、当業者には理解できよう。例えば、本開示による容量マノメータは、質量流量コントローラ(MFC)または質量流量検査機構(MVF)のような、測定システム/構成要素の精度を検証するために用いられる上昇率(ROR:rate of rise)流量検査機構の一部であってもよい。
【0058】
したがって、本明細書において記載した実施形態は、あらゆる観点において、本開示の限定ではなく、例示として見なすこととする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量マノメータであって、
第1ポートと第2ポートとを有するセンサ・カプセルと、
前記センサ・カプセルの中に配置されたダイアフラムであって、2つの側を有し、当該ダイアフラムの2つの側におけるそれぞれの圧力間の圧力差に応答して、前記センサ・カプセル内において移動するように構成および用意されている、ダイアフラムと、
前記ダイアフラムの一方側に隣接して、前記センサ・カプセルの中に配置された電極構造と、
前記ダイアフラムと前記電極構造との間における容量を測定するように、更に測定したゼロ圧力に対応するゼロ出力読み取り値を生成するように構成および用意されている電子回路であって、更に、(i)前記マノメータのゼロ出力読み取り調節に対応する2又は3個以上のタイム・スタンプを記録し、(ii)前記2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するように構成および用意されている、電子回路と、
を備えている、容量マノメータ。
【請求項2】
請求項1記載のマノメータにおいて、ディジタル出力を生成するように構成および用意されている、マノメータ。
【請求項3】
請求項1記載のマノメータにおいて、アナログ出力を生成するように構成および用意されている、マノメータ。
【請求項4】
請求項1記載のマノメータにおいて、前記2つの以上のタイム・スタンプに基づいて、指定されたドリフト量を超過するマノメータ・ゼロ読み取り値を予測するように構成および用意されている、マノメータ。
【請求項5】
請求項1記載のマノメータにおいて、前記第1ポートは、プロセス・ツールに対する流体結合のための測定ポートであり、前記第2ポートは真空またはその他の圧力源に対する結合のための基準ポートである、マノメータ。
【請求項6】
請求項5記載のマノメータにおいて、前記真空源は、前記センサ・カプセルに結合されたゲッタ・ポンプを含む、マノメータ。
【請求項7】
請求項1記載のマノメータにおいて、前記第1ポートは、半導体プロセス・ツールに接続されている、マノメータ。
【請求項8】
請求項5記載のマノメータにおいて、前記電極構造は、外側環状電極と、該環状電極の中に配置された内側電極とを備えており、前記環状電極に第1電気接続部が結合され、前記内部電極に第2電極接続部が結合されている、マノメータ。
【請求項9】
請求項8記載のマノメータにおいて、前記電子回路が前記第1および第2電極接続部に接続されている、マノメータ。
【請求項10】
請求項9記載のマノメータにおいて、前記電子回路は、前記第1および第2電気接続部に接続されている電気ブリッジ回路と、前記ブリッジに接続され、該ブリッジ回路を駆動するように構成および用意されている発振器とを含む、マノメータ。
【請求項11】
請求項9記載のマノメータにおいて、前記電子ブロックは、更に、所望のゼロ読み取り値に対して格納した基準値と、前記ブリッジ回路からの差信号を受け取るように構成および用意されているバッファとを含み、前記バッファは、前記ブリッジ回路が生成する差出力信号を倍率調整および増幅するように構成および用意されている、マノメータ。
【請求項12】
請求項9記載のマノメータであって、更に、当該マノメータがゼロ調整または交換を必要とすることを予測時点において指示する出力信号を生成するように構成および用意されている、ディジタル制御ユニットを備えている、マノメータ。
【請求項13】
請求項9記載のマノメータであって、更に、2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、前記圧力出力信号を補正して予測ゼロ・ドリフトを求めるように構成および用意されているディジタル制御ユニットを備えている、マノメータ。
【請求項14】
請求項12記載のマノメータであって、更に、当該マノメータのゼロ出力読み取り調節に対応する2又は3個以上のタイム・スタンプを記録し、(ii)前記2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するコンピュータ読み取り可能命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を備えている、マノメータ。
【請求項15】
請求項12記載のマノメータにおいて、前記ディジタル制御ユニットは、前記マノメータ外部の制御システムへの通信リンクからコンピュータ読み取り可能命令を受信するように構成および用意されている、マノメータ。
【請求項16】
請求項15記載のマノメータにおいて、前記制御システムはグラフィカル・ユーザ・インターフェースである、マノメータ。
【請求項17】
請求項11記載のマノメータにおいて、前記電子ブロックは、前記マノメータの較正曲線スパンを調節するように構成および用意されているスパン・ポテンショメータを含む、マノメータ。
【請求項18】
請求項9記載のマノメータにおいて、前記電子ブロックは、前記マノメータの較正曲線の線形性を調節するように構成および用意されている線形性ポテンショメータを含む、マノメータ。
【請求項19】
請求項9記載のマノメータにおいて、前記電子ブロックは、前記マノメータのゼロ読み取り出力値を所望の値に調節するように構成および用意されている1又は複数のゼロ・ポテンショメータを含む、マノメータ。
【請求項20】
請求項5記載のマノメータにおいて、前記センサ・カプセルは、Inconel(登録商標)またはIncoloy(登録商標)を含む、マノメータ。
【請求項21】
請求項9記載のマノメータであって、更に、電力を前記電子ブロックに供給するように構成および用意されている電源を備えている、マノメータ。
【請求項22】
請求項1記載のマノメータであって、更に、当該マノメータの動作に付随する情報を表示するように構成および用意されているディスプレイを備えている、マノメータ。
【請求項23】
請求項1記載のマノメータであって、更に、前記センサ・カプセルの近傍内に、該センサ・カプセル内の温度を所望の温度に維持するための温度規制熱源を備えている、マノメータ。
【請求項24】
請求項5記載のマノメータにおいて、前記ダイアフラムは金属を含む、マノメータ。
【請求項25】
請求項21記載のマノメータにおいて、前記金属は、Inconel(登録商標)またはIncoloy(登録商標)を含む、マノメータ。
【請求項26】
容量マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測する方法であって、
2回以上容量マノメータのゼロ調整を行うステップと、
マノメータのゼロ調整を行う毎に、タイム・スタンプを付けたゼロ・オフセット値を記録し、2又は3個以上のゼロ・オフセット値を記録するステップと、
前記2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップと、
を備えている、方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、ドリフト値を予測するステップは、前記2又は3個以上のゼロ・オフセット値に基づいて、前記マノメータのゼロ調整を行う必要性を判断することを含む、方法。
【請求項28】
請求項26記載の方法において、ドリフト値を予測するステップは、前記ゼロ出力読み取り値が、指定された閾値を超過すると判定することを含む、方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、更に、前記マノメータを交換する必要性を判断するステップを備えている、方法。
【請求項30】
請求項26記載の方法において、ゼロ調整の必要性を予測するステップは、数学的関数を前記2又は3個以上のオフセット値に当てはめるステップを含む、方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、数学的関数に当てはめるステップは、直線関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、数学的関数に当てはめるステップは、多項式関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項33】
請求項30記載の方法において、数学的関数に当てはめるステップは、指数関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項34】
請求項28記載の方法において、前記指定された閾値は、所定値である、方法。
【請求項35】
請求項28記載の方法において、前記指定された閾値は、ユーザがプログラムした値である、方法。
【請求項36】
請求項26記載の方法において、ゼロ調整の必要性を予測するステップは、
【数2】

にしたがって、次のゼロ調整イベントまでの時間を決定することを含み、Aは、精度仕様(読み取り値の%)、Fは最大目盛り圧力読み取り値、Dは記録されているドリフト(圧力単位/時間)、Rは動作圧力のマノメータ最大目盛り圧力に対する比率、およびTは次のゼロ調整イベントまでの時間である、方法。
【請求項37】
請求項26記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測に応答して、前記マノメータのゼロ読み取り出力値を所望の値に調節するステップを備えている、方法。
【請求項38】
請求項26記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測に応答して、前記マノメータを所望の値に戻すステップを備えている、方法。
【請求項39】
請求項26記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を、通信リンクによって制御システムに送るステップを備えており、前記制御システムは、前記マノメータの動作を制御するように構成および用意されている、方法。
【請求項40】
請求項26記載の方法において、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップは、マノメータの電子コントローラがコンピュータ読み取り可能命令を実行することを含む、方法。
【請求項41】
請求項39記載の方法であって、更に、前記マノメータの動作を制御するために、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを用いるステップを含む、方法。
【請求項42】
容量マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測する方法であって、
容量マノメータを用いて複数のプロセス圧力を測定するステップであって、各プロセス圧力が複数のプロセスの内の1つと関連がある、ステップと、
前記複数のプロセスの各々について、経過時間を判定するステップと、
各々前記複数のプロセスの1つに対応する、複数のドリフト率を計算するステップと、
前記複数の読み取り率に基づいて、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップと、
を備えている、方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、前記複数のプロセスの各々について経過時間を判定するステップは、複数のタイム・スタンプを記録するステップを含む、方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法において、複数のタイム・スタンプを記録するステップは、プロセス毎に1対のタイム・スタンプを記録することを含む、方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、タイム・スタンプの各対は、プロセス開始タイム・スタンプとプロセス終了タイム・スタンプとを含む、方法。
【請求項46】
請求項42記載の方法において、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップは、前記複数のドリフト率に数学的関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項47】
請求項42記載の方法において、マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップは、1又は複数のドリフト値を生成するために、前記複数のドリフト率の1又は複数の時間積分を計算することを含む、方法。
【請求項48】
請求項42記載の方法であって、更に、前記複数のドリフト率に基づいて、前記マノメータのゼロ調整を行う必要性を判断するステップを備えている、方法。
【請求項49】
請求項42記載の方法において、ドリフト値を予測するステップは、前記ゼロ出力読み取り値が、指定されている閾値を超過することを、予測時点で判断することを含む、方法。
【請求項50】
請求項42記載の方法であって、更に、前記マノメータを交換する必要性を判断するステップを備えている、方法。
【請求項51】
請求項42記載の方法において、ゼロ調整の必要性を予測するステップは、前記1又は複数のドリフト値に数学的関数を当てはめるステップを含む、方法。
【請求項52】
請求項51記載の方法において、数学的関数を当てはめるステップは、直線関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項53】
請求項51記載の方法において、数学的関数を当てはめるステップは、多項式関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項54】
請求項51記載の方法において、数学的関数を当てはめるステップは、指数関数を当てはめることを含む、方法。
【請求項55】
請求項49記載の方法において、前記指定された閾値は、所定値である、方法。
【請求項56】
請求項49記載の方法において、前記指定された閾値は、ユーザがプログラムした値である、方法。
【請求項57】
請求項42記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測に応答して、前記マノメータのゼロ読み取り出力値を所望の値に調節するステップを備えている、方法。
【請求項58】
請求項42記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値の予測に応答して、前記マノメータを所望の値に戻すステップを備えている、方法。
【請求項59】
請求項42記載の方法であって、更に、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を、通信リンクによって制御システムに送るステップを備えており、前記制御システムは、前記マノメータの動作を制御するように構成および用意されている、方法。
【請求項60】
請求項42記載の方法において、前記マノメータのゼロ出力読み取りのドリフト値を予測するステップは、マノメータの電子コントローラがコンピュータ読み取り可能命令を実行することを含む、方法。
【請求項61】
請求項59記載の方法であって、更に、前記マノメータの動作を制御するために、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを用いるステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−525324(P2010−525324A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504169(P2010−504169)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/059986
【国際公開番号】WO2008/130867
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】