容量性脱イオンおよび電気化学的精製、並びに電極の再生のための方法および装置
【課題】容量性脱イオンおよび電気化学的精製ならびに電極の再生のための電気化学セルを提供する。
【解決手段】二つの末端電極35,36が、セル30の夫々の末端に一つ、末端プレート31,32に隣接して設けられる。絶縁層33が、末端プレート31,32とこれに隣接した末端電極35,36との間に挿入される。夫々の末端電極35,36は、高い比表面積および吸着能を有する導電性材料の単一のシートを含む。導電性材料のシートは炭素エアロゲル複合体で形成される。セル30は更に、二つの末端電極35,36の間で相互に同距離だけ離間した、同一である複数の両面中間電極37〜43を含む。電解質がセルに導入されると、それは電極に限定され、且つ電極の表面に対して平行な蛇行開放チャンネル65〜71を通って流れる。
【解決手段】二つの末端電極35,36が、セル30の夫々の末端に一つ、末端プレート31,32に隣接して設けられる。絶縁層33が、末端プレート31,32とこれに隣接した末端電極35,36との間に挿入される。夫々の末端電極35,36は、高い比表面積および吸着能を有する導電性材料の単一のシートを含む。導電性材料のシートは炭素エアロゲル複合体で形成される。セル30は更に、二つの末端電極35,36の間で相互に同距離だけ離間した、同一である複数の両面中間電極37〜43を含む。電解質がセルに導入されると、それは電極に限定され、且つ電極の表面に対して平行な蛇行開放チャンネル65〜71を通って流れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、流体および他の水性プロセス流から、イオン類、汚染物および不純物を除去するための電気化学的分離方法および装置、並びに除去されたイオンを再生の際に溶液中に戻すための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質からのイオン類および不純物の除去は、これまで、一般的にはイオン交換、逆浸透、電気透析、電着および濾過を含む種々の従来プロセスを用いて達成されてきた。他の方法も提案され、従来の分離プロセスに伴う問題と取り組まれてきた。しかしながら、これらの提案された方法は完全に満足できるものではなく、全般的な商業的成功に適合し、または完全に受け入れられるようなものではなかった。このような提案されたイオン分離方法の一つは、多孔質炭素電極の大きな表面でのイオンの周期的な吸着および脱着に基づいて水を脱塩するためのプロセスである。
【0003】
従来のイオン交換プロセスでは、再生プロセスにより、廃棄のための処理を行わなければならない大量の腐食性二次廃棄物が発生する。現存の再生プロセスは、典型的にはカラムをイオンで飽和させた後に、濃縮された酸溶液、塩基溶液または塩溶液をカラムを通してポンピングすることにより行われる。これら機械操作の保守手段は、脱イオンプロセスの周期的な中断を伴うと共に、著しい二次廃棄物を生じる。イオン交換体の再生からもたらされる二次廃棄物には、汚染された酸、塩基および/または塩と共に、典型的には使用された陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂が含まれている。
【0004】
幾つかの場合には、放射性の二次廃棄物が極めて有害であり、深刻な環境問題を起こす可能性がある。例えば、プルトニウム処理の際に、樹脂およびHNO3の溶液はPuO2++および他の放射性アイソトープで汚染されるに至る。採掘された資源の二次廃棄物を処分する高価で且つ増大しつつあるコストを考慮すれば、二次廃棄物の量を減少させ、或る場合には無くすことについて、未だ満たされていない顕著な必要性が存在している。
【0005】
もう一つの例は、電気メッキおよび金属仕上げ工業におけるような、工業的目的でのイオン交換プロセスの使用である。この工業が現在直面している主要なジレンマは、電気メッキプロセスからもたらされる汚染されたリンス溶液を処分するための困難性、費用問題、および環境上の重要性に関するものである。汚染されたリンス溶液のための典型的な処理法方は、イオン交換プロセスである。
【0006】
イオン交換に伴う問題を提示する他のプロセスの例には、住宅用水の軟化および核燃料および化石燃料プラント用のボイラー水の処理が含まれる。このような水の軟化装置は、該システムによって製造された飲料水中に比較的高濃度の塩化ナトリウム溶液をもたらす。従って、再生の際、導入された過剰の塩化ナトリウムを除去するために、逆浸透フィルターのような追加の脱塩装置が必要とされる。
【0007】
従って、一定の応用において、二次廃棄物を完全に除去できなくても、これを有意に減少させる、脱塩および再生のための新しい方法および装置について、甚大かつ増大する必要性が存在している。この新規な方法および装置は、無機もしくは有機の何れかのイオンまたは双極子をも、イオン導電性溶媒(水、有機溶媒または無機溶媒)から分離できるものでなければならない。例えば、リチウム電池および他のエネルギー保存機器に用いるための、炭酸ポリプロピレンのような有機溶媒を精製するプロセスを使用できるものでなければならない。更に、蟻酸イオンまたは酢酸イオンようなイオンを水流から除去するためのプロセスを使用できなければならない。
【0008】
この新規な方法および装置は、電力および化石電力プラントの夫々のボイラー水の処理、半導体プロセス用の高純度水の製造、農業灌漑水からの有毒および危険なイオンの除去、並びに海水の脱塩を含むの種々の用途において制限なく適用可能でなければならない。
従来の逆浸透システムにおいて、水は強制的に、電解質からイオンおよび不純物を分離するためのフィルターとして働く膜に通される。逆浸透システムは、膜を通して水を移動させるためにかなりのエネルギーを必要とする。水の流れが膜を通過すると、膜を横切る顕著な圧力低下が生じる。この圧力低下は、該プロセスによる殆どのエネルギー消費の原因である。また、膜は経時的に劣化するので、費用がかかり且つ面倒な保守作業のためにシステムを閉鎖することが必要になる。
【0009】
従って、著しい圧力低下を起こさず、顕著なエネルギー経費を必要とせず、または膜を取り替えるためにサービスの中断を必要としない、逆浸透システムの代替えとなる、脱イオンおよびイオン再生のための新規な方法および装置に関する必要性が存在している。
【0010】
イェンセン(Jensen)に付与された米国特許第3,883,412 号には、水を脱塩する方法が記載されている。多孔性炭素電極の広大な表面におけるイオンの周期的な吸着および脱着に基づく水の脱塩プロセスに関する他のイオン分離方法が、「水の脱塩のための電極吸着プロセス」と題するアラン・エム・ジョンソン等による塩水研究開発庁の進捗報告第516 号、1970年3月、合衆国内務省PB 200 056(U.S.Department of the Interior PB 200 056)[内務省報告(Department Interior Report)]に記載され、更にはジェイ・ニューマン他による「多孔性炭素電極による脱塩」と題する論文(ニューマン論文:J.Electrochem.Soc.:Electrochemical Technology,March 1971,pp.510-517)に記載されている。また、これに匹敵するプロセスが、NTIS研究開発進行報告OSW-PR-188号、ダニー・ディー・コーデル他、「炭素電極を用いた水の電気化学的脱ミネラル化」、1966年5月に記載されている。
【0011】
上記の内務省報告およびニューマン論文は、活性炭素電極を用いた脱塩の電気吸着現象のための研究結果を概説し、また容量モデルでの可能なイオン吸着調節の理論について議論している。図1に示したこのモデル脱塩システム10は、図2に更に示すように、陽極および陰極の交互のスタックを含んでおり、これは導電性のスクリーン(または篩)に接触した炭素粉末または粒子のベッドから形成されている。夫々のセル12は、複数のカソードスクリーン16を挟んだ複数のアノードスクリーン14を含んでおり、夫々のアノードスクリーン14は、前処理された炭素粉末の第一および第二のベッド18,20によって、隣接するカソードスクリーン16から分離されている。これらの二つの炭素粉末ベッド18および20は、セパレータ21によって分離されており、セル12のアノードおよびカソードを形成している。運転においては、原料水が、電極スクリーン14,16の表面に対して垂直に、セル12の軸方向に沿って流され、システム10によって廃液および生成物に分離される。
【0012】
しかしながら、このモデルシステム10には次のような幾つかの欠点がある。
1.炭素粉末ベッド18および20は電極として用いられており、「固定化」されていない。
2.原料水は、これら電極スクリーン14および16、並びにセパレータ21を通して軸方向に流れなければならず、これによって著しい圧力低下および大きなエネルギー消費が起こる。
3.炭素ベッド電極18および20は極めて厚く、これを横切って大きなポテンシャル低下が発生し、これは運転の際の低い除去効率および高いエネルギー消費として現れる。
4.炭素粒子は「タッチする」、即ち、隣接する粒子は相互に接触するのではあるが、これらは密接かつ完全に電気的に結合するわけではない。従って、実質的な電気抵抗が発生し、これはプロセスの非効率性に著しく寄与する。エネルギーは浪費され、電極の表面積が効率的に利用されない。
5.炭素電極18および20は比較的低い比表面積を有している。
6.炭素粉末ベッド電極18および20は、サイクル使用に伴って迅速に劣化するので、継続的な保守および熟練者による管理が必要とされる。
7.モデルシステム10は、一つの特別の応用、即ち海水の脱塩のために設計されており、他の応用に適用可能とは思えない。
エネルギーを保存する用途のために、種々の多孔質炭素電極(炭素エアロゲル電極を含む)に基づく多くのスーパー蓄電器(supercapacitor)が開発されており、下記の文献に例示されている:
・「二重層電気蓄電器」、日本電気株式会社、日本特許出願第91-303689 号、05211111
・「電気二重層蓄電器」、松下電器産業株式会社、日本特許出願第83-89451号、59214215
・1993 年5月16-21 日にハワイ州ホノルル市で開催された第183 回電気化学学会会議で提出された、タブチ・ジェイ、キビ・ワイ、サイトウ・ティー、オチ・エイ、「活性化炭素の電気化学的性質/新規な密封充電式バッテリーおよびスーパー蓄電器のための炭素複合体」1
・「電気二重層蓄電器、炭化発泡フェノール樹脂からなる多孔質極性電極の使用」、三井石油化学工業、日本特許出願第3,141,629号
・デルニック・エフ・エム、インゲルゾル・ディー、フィルジッヒ・ディー、「炭素発泡電極の二重層蓄電器」、SAND-93-2681、サンディア・ナショナル・ラボラトリー、二重層蓄電器および同様のエネルギー保存システムに関する国際セミナー報告、1993年12月6-8日・メイヤーズ・エス・ティー、ペカーラ・アール・ダブリュー、カシュミッテル・ジェイ・エル、「エアロ蓄電器:電気化学二重層エネルギー保存装置」、電気化学会誌、140 巻(2)第446-451 頁(1993年2月)
・カシュミッテル等に付与された米国特許第5,260,855号
【0013】
これらのエネルギー保存装置は、電解質流および殆どの必要な膜が、電極を物理的に分離するように設計されている。ウエスリング等が米国特許第4,806,212 号に記載したように、電気分解セルのための他の電極材料、例えば活性化炭素粉末および適切なポリマーバインダの複合体が開発されている。このような材料は、極めて大きな比表面積(600 m2/gm)を有する活性化炭素粉末から作られたにもかかわらず、表面の大きな部分はバインダによって塞がれている 従って、イオン交換カラムの再生に伴う二次廃棄物を完全には除去できないとしても、これを顕著に減少する能力に加えて、プロセス流の顕著な圧力低下を生じず、また著しいエネルギー経費を必要としない、脱イオンおよび再生のための新規な方法および装置に対する未だ満たされない重要な必要性が存在している。
【0014】
更に、この装置に用いられる夫々の電極は、構造的に安定で、多孔性で且つモノリシックな固体で作成されたものでなければならない。このようなモノリシック電極は、処理すべき流体の流れに乗って運ばれることにより容易に喪失されてはならず、また繰り返し使用することによって迅速に劣化してはならない。これらの電極は、非常に大きな比表面積を有していなければならない。それらは比較的薄く、最小限の運転エネルギーしか必要とせず、且つ高い除去効率を有していなければならない。この新規な方法および装置は高度に効率的でなければならず、また種々の用途(海水の脱塩を含むが、これに限定されるものではない)に使用するために適用可能でなければならない。
【0015】
容量性脱イオンおよび再生のための方法および装置に使用するために、炭素系材料よりも中毒および劣化を起こし難い、新しい種類の電気吸着媒体を提供することは非常に望ましいであろう。
【0016】
電気吸着媒体を電解質および化学再生剤に継続的に直接露出させることは、電極を更に劣化させることになるであろう。従って、電気吸着媒体を電解質および化学再生剤の損傷作用から保護し、化学再生剤を必要としない新しい分離プロセスが必要とされている。
イオン交換クロマトグラフィーは、交換物質に対する溶質イオンの異なった親和性に基づいたイオン分離を含む分析方法である。これは、イオン交換物質が固層をなしている液層/固層技術である。イオン交換分離において、固層またはカラムは通常、細かく粉砕されたイオン交換物質を充填したベッドである。移動層は、バッファ、中性塩または有機溶媒のような一以上の添加物を含んだ、水のような溶媒である。
【0017】
イオン交換クロマトグラフィーにおいて、イオン交換抑止カラムは定期的に再生されなければならない。これは時間を要する操作であり、ストリッパーカラムを再生している間は当該装置を使用することができない。再生の頻度を最小限にするために、分離カラムに対する抑止カラムの容量比はできるだけ小さく維持しなければならず、典型的には1:1である。これによって、必要とされるイオン交換物質の費用は実質的に2倍になる。
【0018】
ロス・ジュニアに対して付与された米国特許第4,672,042 号には、イオンクロマトグラフィーシステム一例が記載されている。二つの分離交換カラム、即ち、陰イオン交換カラムおよび陽イオン交換カラムが必要とされ、これによってイオン交換または必要なパッキング材料の費用が倍増する。固体のイオン交換カラムパッキングが使用され、これはクロマトグラフィーの適用を制限し、また単一の中空カラムに比較して、運転に著しく高いエネルギーを必要とする。
【0019】
固層のための適切なイオン交換組成を選択するために幾つかの試みがなされてきた。例えば、バレット等に付与された米国特許第5,324,752 号、ヘリングに付与された米国特許第4,675,385 号、ミズノ等に付与された米国特許第5,294,336 号、シラサワに付与された米国特許第4,859,342 号、ブラッドショウ等に付与された米国特許第4,952,321 号および第4,959,153 号が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、これらの装置および方法は特定の用途のために特別に設計されており、一つのクロマトグラフを種々の用途に一般的に使用することはできない。加えて、これら従来の装置は複数のカラムの使用を必要とする。
【0021】
従って、陰イオンおよび陽イオン型の同時クロマトグラフィーに一つのカラムを使用する、融通の利くクロマトグラフおよび運転方法についての重要かつ未だ満たされていない必要性が存在している。この新しいクロマトグラフは、分析すべき種の溶出時間を制御しなければならず、全体の製造、運転および保守のコストを低減するものでなければならず、化学的再生ではなく電気的再生を使用するものでなければならず、また陰イオンおよび陽イオンの両者について同じカラム(またはセルのスタック)を使用するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一つの態様において、この分離プロセスまたは分離装置は、容量性脱イオン(CDI)と称する、水の脱イオンおよび廃水処理のために用いられる。従来のイオン交換プロセスとは異なり、システムの再生のためには酸、塩基または塩溶液を問わず化学薬品は必要とされず、その代わりに電気が用いられる。
【0023】
陰イオンや陽イオン、電気双極子および/または懸濁粒子を含んだ処理すべき電解質の流れは、電気化学的容量性脱イオンセルのスタックを通して流れる。これらのセルは、格別に高い比表面積(例えば400-1000m2/gm)を有する多くの炭素エアロゲル電極を含んでいる。セルを分極させることによって、非還元性で且つ非酸化性のイオンは流体の流れから静電的に除去され、該電極の表面に形成された電気二重層に保持される。幾つかの金属陽イオンは電着によって除去される。電気二重層はまた、電極の方に移動して電極にトラップされる。小さな懸濁粒子は電気泳動によって除去される。従って、該セルから出る流体の流れは精製される。
【0024】
本発明のCDIプロセスにおいては、エネルギーが静電気学的に消費されて塩および他の不純物が流体から除去される。その結果、エネルギー効率は従来のプロセスよりも桁違いに大きい。更に、容量性脱イオンセルにおける圧力低下は、モノリシックな微孔性固体(即ち電極)の平行表面の間のチャンネル流によって検出される。従って、逆浸透プロセスで透過性膜を通して水を強制的に通すために必要とされる圧力低下と比較すると、この圧力低下は微々たるものに過ぎない。
【0025】
CDI分離システムの一つの特徴は、電極の分離のために、高価なイオン交換膜を必要としないことである。電極対の全てのアノードおよびカソードは、並列に接続される。このシステムはモジュール式であり、該システムの容量は、多くの電極対を含むようにセルを拡大することによって、所望の如何なるレベルにでも増大させることができる。
【0026】
本発明の幾つかの利点には次のことが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
1.圧力勾配によって水を強制的に膜に通し、或いはパックされたベッドを通して流体が流れる従来のプロセスとは異なり、CDI分離方法およびシステムでは、膜またはパックされたベッドのような何らかの多孔質媒体を通して電解質が流れる必要はない。本発明のシステムにおいて、電解質は二つの隣接する平坦な電極(これらは幾何学的に平行である)の間に形成された開放チャンネルの中を流れる。結局、圧力低下は従来のプロセスよりも遥かに小さい。流体の流れは、これらの開放チャンネルを通しての重力供給であってもよく、またはポンプを用いることもできる。
【0028】
2.CDIシステムは膜を必要としない。このような膜は厄介で且つ費用がかかり、過剰圧を加えると破裂し、容量性セルの内部抵抗を増大し、またシステムのエネルギー効率を低下させる。
【0029】
3.CDIシステムにおける電極は固定化された吸着媒体、例えばモノリシック炭素エアロゲルで構成されており、流体の流れに随伴することはない。従って、随伴および腐食による材質の劣化は、従来のパックされた炭素カラムにおけるよりも顕著に少ない。
【0030】
4.本発明のシステムおよび方法は、本質的に且つ非常にエネルギー効率がよい。例えば、蒸発法および逆浸透法では塩から水が除去されるのに対して、本発明のシステムでは水から塩が除去されるので、消費されるエネルギーは少ない。
【0031】
5.本発明のシステムおよび方法は、炭素エアロゲルの薄いシートにおいて優れたポテンシャル分布を呈する。殆どの炭素エアロゲルは、電気吸着が非常に効率的であるようなポテンシャルに維持される。
【0032】
本発明の上記のおよび更なる特徴ならびに利点は、容量性脱イオンおよび電気化学的精製ならびに電極の再生のための、電気的に再生可能な新規な電気化学セルによって実現される。このセルには、二つの末端プレート(セルの各末端に一つ)、並びにこれら末端プレートに隣接してセルの各末端に一つ配置された二つの末端電極が含まれている。夫々の末端プレートと隣接の末端電極との間には、絶縁層が介在されている。
【0033】
夫々の末端電極には、高い比表面積および吸着能を有する電気吸着媒体が含まれている。好ましい態様において、電気吸着媒体は炭素エアロゲル複合体で形成される。当該セルには更に、二つの末端電極の間に配置された一以上の中間電極が含まれている。電解質がセル内に流入すると、それは電極によって定義された、電極表面に対して実質的に平行な、連続的で且つ開かれた蛇行したチャンネルを通して流れる。セルを分極させることにより、イオンは電解質から除去されて、電極の炭素エアロゲル表面に形成された電気二重層に保持される。除去されたイオンによりセルが飽和されたとき、該セルは電気的に再生されるので、二次廃棄物は顕著に減少される。
【0034】
[好ましい実施形態の説明]
図3は電気化学セル30を示しており、これは一般に、反対側に離間して設けられた二つの末端プレート31,32(セル30の夫々の末端に一つ)と、これら末端プレート31,32に夫々隣接した、一般には同一の二つの片面末端電極35,36(セル30の夫々の末端に一つ)とを含んでいる。上記の末端プレート31と末端電極35との間には、絶縁層33が挿入されている。同様に、末端プレート32と末端電極36との間には、絶縁層34が挿入されている。夫々の片面電極35,36には、導電性エポキシバインダまたは他の適切なバインダでチタンシートの片面に接合された、炭素エアロゲル複合体の単一シートが含まれている。
【0035】
二つの末端電極35,36の間において、複数の、一般には同一の両面中間電極37〜43は、相互に等距離だけ離間され分離されている。夫々の両面電極(例えば37)には、導電性エポキシ樹脂を用いてチタンシートの両側に結合された、炭素エアロゲル複合体の二枚のシートが含まれている。図3は7つの両面中間電極37〜43だけが図示されているが、その代わりに、異なった数の中間電極を用いることもできる。例えば、セル30の容量は、全アノード(カソード)面積がほぼ2.7 ×108cm2になるように、少なくとも192個の中間電極に適合させることがきる。結局、このシステムは無制限の電極対を含むように拡張できるであろう。
【0036】
末端電極35,36および中間電極37〜43は、一般には同様の設計、構造および組成を有している。しかし、夫々の末端電極は、導電性エポキシバインダまたは他の適切なバインダでチタンシートの片面に接合された炭素エアロゲル複合体の一枚のシートのみを含んでいるのに対して、夫々の中間電極は、導電性エポキシ樹脂を用いてチタンシートの両側に結合された、炭素エアロゲル複合体の二枚のシートが含まれている。炭素エアロゲル複合体の代わりに、多孔質かつモノリシックな他の導電性材料を用いることができる。
【0037】
図4Aは、末端電極35を示しており、これには一般的に平坦で、薄く、矩形で、耐腐食性の金属(即ち、チタン)シートからなる構造支持体40が含まれている。タブ42Aは、D.C.電源(図示せず)の適切な極に接続するために、この構造支持体40の一つの側部から延出している。比面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料(即ち、炭素エアロゲル複合体)の薄いシート44が、構造支持体40の表面に結合されており、これはカソードまたはアノードの何れかであり得る。構造支持体40には更に、末端電極35を通して電解質を通過させるための、一連の、一般的には同一の孔47が含まれている。
【0038】
好ましくは、比表面積の大きい材料の薄層44は、炭素織布を炭素エアロゲル中に浸漬することによって形成された複合材料で構成されており、そのため薄層44は炭素エアロゲル複合電極44とも称される。この炭素エアロゲル複合体電極44の新たな用途は、主に、炭素エアロゲル材料のナノメータレベルの独特の開いた微細気泡構造(連続した多孔性、超微細な孔径、および莫大な表面積を含む)に依存している。この炭素エアロゲル複合体材料は、ヨゼフ・ワング(Joseph Wang)等による「炭素エアロゲル複合体電極」と題する論文(Anal. Chem.1993,vol.65,p.p.2330-2303)、およびジェームス・エル・カシュミッテル等による「炭素発泡体に基づくスーパー蓄電器)と題する米国特許第5,260,855 号で詳細に説明されている。多孔質炭素発泡体を製造するための他の方法は、メイヤー等に付与された米国特許第5,358,802 号に記載されている。
【0039】
炭素エアロゲルは、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの重縮合(僅かに塩基性の媒質中)と、これに続く超臨界乾燥および熱分解(不活性雰囲気中)によって合成される。この製造プロセスによって、高い多孔性、大きな表面積(400-1000m2/g)、超微細気泡/孔サイズ(50nm未満)を有し、また10nmの特徴的な直径の相互に連結されたコロイド状粒子または繊維鎖の固体マトリックスを有する独特な開気泡の炭素発泡体がもたらされる。エアロゲルの多孔性および表面積は、孔サイズおよび粒子サイズをナノメータスケールで調製しながら広範囲に制御することができる。この炭素エアロゲルは更に、低密度および超微細な気泡サイズを提供する。
【0040】
炭素エアロゲル複合体電極44の使用によって、従来の装置に対する顕著な改良が提供される。何故なら、これら従来の装置では、電極を横切るポテンシャル勾配のために、比表面積の一部のみがイオンの除去に有効であるに過ぎず、残りの面積は有効でないからである。炭素エアロゲル複合体の薄いシートを用いると、エアロゲル中の望ましいポテンシャル分布によって、実質的にはこれらモノリシックな微細多孔質電極の全表面積がイオンの除去に有効となる。
【0041】
本発明の最良の形態では、炭素エアロゲル複合体の薄いシートを電極として利用するが、その代わりに、炭素エアロゲル粒子のベッドを用いて電極を形成することもできる。このような炭素エアロゲル粒子のベッドは、従来の炭素粉末のベッドよりも遥かに高い比表面積および吸着能を有し、従って、これは容量性脱イオンのための優れた電極である。
【0042】
図3において、末端電極35,36および隣接する中間電極37〜43は、ゴムガスケット50〜56のような絶縁材料の薄いシートによって分離されている。夫々のガスケットは、隣接する炭素エアロゲル複合体電極44を収容するための大きな正方形の孔を中央部に有している。図4A,Bに示すように、構造支持体40には複数の周辺孔48が含まれている。セル30が組み立てられると、周辺孔48は、絶縁層33,34およびゴムガスケット50〜56における対応した孔と整列し、複数のネジ付きロッド58,59がこれら整列した孔を通して挿入され、ナット60〜63のような従来の手段によって緊密に締め付けられる。非圧縮性で且つ絶縁性の中空円筒状スペーサまたは圧縮リング50Aを、ゴムガスケット50〜56の周辺孔の中に挿入し、隣接する電極の間隔を制御するために用いることができる。更なるシール力を提供するために、複数の圧縮スリーブ64A,64Bを加えることができる。 図3では二つのネジ付きロッド58,59のみが示されているが、この特別の例においては、セル30を耐リーク性の状態で締め付けるために、8本のネジ付きロッドが用いられている。これら8本のロッドは、構造支持体40の8つの周辺孔48、並びにゴムガスケット50〜56における中空円筒状スペーサ50を嵌合した対応の周辺孔に螺合するように設計されている(図4)。
【0043】
セル30が組み立てられると、末端電極および中間電極35〜43の間に、複数のチャンバ65〜71が形成される。これらのチャンバ65〜71は、中間電極37〜43の構造支持体における複数の孔73〜79を通して、相互に流体連通するように適応されている。これらの孔73〜79は整列されておらず、また孔またはスリットの何れであってもよい。これらは、チャンバ65〜71の中を通る経路を通過し、流体が全ての露出された炭素エアロゲル複合体電極44を横切って強制的に流れるように位置付けされる。図3において、流体は先ず左から右へと流れ、次いで右から左へと順次流れる。
【0044】
運転に際しては、単に例示の目的で言えば、セル30のアノードおよびカソードは交互にずらして挿入される。この点に関して、末端電極35から出発して中間電極43で終わる他の全ての電極はアノードであり、他の残りの中間電極37,39,41,42および末端電極36はカソードである。このように、夫々の隣接した電極対(アノードおよびカソード)は、別々の容量性脱イオン/再生ユニットを形成する。
【0045】
処理すべき原料流体または電解質の流れは、末端プレート31の孔80、絶縁層33の一以上の孔82、および末端電極35の一以上の孔47を含む複数の重なった共軸的に抵抗性の、一般的には円形または矩形の開口部を通ってセル30に流入する。矢印Aで示すように、第一のチャンバ65を通って流れる流体の流れは、実質的に電極表面に対して平行である。第一の脱イオン/再生ユニットを分極させることによって、イオンは流体の流れから静電的に除去され、電極35および37の炭素エアロゲル表面に形成された電気二重層に保持される。これによって、流体の流れは少なくとも部分的には精製されるであろう。
【0046】
流体の流れは、次いで矢印Bで示すように、孔73を通って次のチャンバの中に流れる。ここでは、中間電極37および38によって形成される第二の脱イオン/再生ユニット81の分極によって更にイオンが除去され、流体の流れは更に精製される。この流体の流れは、矢印C〜Gに示すように、残りの脱イオン/再生ユニットを通って連続的に移動し、徐々に精製される。その後、矢印Hで示すように、精製された流体の流れは、末端電極36、絶縁層34、およびパックプレート32の複数の共軸的に整列された複数の孔90,91,92を通り、セル30から出る。
【0047】
セル30を出た流体の流れは、セル30によって汚染イオンが除去され、回収されているから、既に精製されている。セル30の新規な構成の一つの重要な特徴は、流体の流れが多孔性電極を通して流れず、むしろ圧力降下が比較的少なく且つポンピングのエネルギー消費が最小限であるような開放チャンネルの中を流れることである。セル30の運転に消費されるエネルギーは最小限である。この点において、流体の流れはセル30を通して流すため、必ずしもポンプにより加圧される必要はなく、所望とあらば重力を用いることができる。
【0048】
また、本発明の脱イオンプロセスが水の脱塩に用いられるとき、消費されるエネルギーは水から塩を除去するために必要とされるものである。これに対して、蒸発および逆浸透のような従来の脱塩プロセスでは、塩から水を除去するためにエネルギーが消費される。その結果、本発明のプロセスは、従来のプロセスよりも桁違いに高いエネルギー効率を有している。
【0049】
更に、容量性脱イオンセル30における圧力降下は、逆浸透に必要とされるものに比較すれば微々たるものに過ぎない。また、従来の脱イオンプロセスとは反対に、電極は非常に大きく且つ固定された比表面積および高い除去効率を有しており、また炭素エアロゲル粒子は流体の流れに随伴されない。
【0050】
CDIセル30が除去されたイオンで飽和され、容量性ユニットが完全に充電されると、そのような状態に到達したので、セル30はもはや再生させるべきであることをセンサー(図示せず)が指示する。従来の化学的再生プロセスとは対照的に、本発明の再生プロセスは電気的に行われ、従って二次廃棄物は放出されない。本発明の再生プロセスは、電源供給を中断し、アノードとカソードとを接続し、全ての電極35〜43を放電させ、水または他の適切な溶液の適切な流体を、原料流体の脱イオンに関連して上述したのと同じ経路に沿って、セル30の中を流すことにより行われる。その結果、容量性ユニットは放電されて、先に除去されたイオンはセル30が完全に再生されるまで、流体の流れの中に放出される。その時点で再生プロセスを停止させ、脱イオンプロセスを再開させる。脱イオン−再生プロセルのタイミング制御は、手動または自動で行うことができる。
【0051】
セル30の全体の形状および寸法は、CDIシステムの使用および応用の形式によって決定される。好ましい態様において、末端プレート31および32は同一であり、矩形で、316ステンレス鋼または他の適切な耐腐食性合金製である。
【0052】
末端プレートは、電極とは異なって分極されない。しかし、他の形状を用いることは可能であり、例えばセル30が円筒状であるときは、末端プレート31および32は円形であり、またセル30が錐体形であれば、末端プレート31、32の一方は他方のプレートよりも小さく、その間の電極の大きさは一方のプレートから他方のプレート近づくにつれて段階的に増大する。
【0053】
絶縁層33および34並びに50〜56は、好ましくは弾性で、圧縮性で、絶縁性で且つ非浸出性の材料でできている。特別な用途のためには、例えば、テフロン(登録商標)、ビトン(Viton)、ネオプレンおよび同様の材料が適切である。
しかしながら、他の適切な材料を用いることができる。末端電極35,36の構造支持体40(図4A,4B)および中間電極37〜43は、好ましくはチタン製であり、或いはコーティングされた耐食性の鉄/クロム/ニッケル系合金のような適切な材料の群から選択することができる。適切なコーティングには、金、白金、イリジウム、白金−イリジウム合金または他の耐食性材料が含まれる。
【0054】
一つの例において、バックプレートは同様の大きさで、矩形で且つ次の寸法を有している。即ち、長さ 8.38cm;幅 7.87cm:厚さ 0.16cmである。しかし、その代わりに、他の大きさを使用することができる。電極との電気的接続に用いられるタブ42Aは、構造支持体40から一体に延出しており、一般には矩形形状であるが必ずしも矩形である必要はない。上記の例において、タブ42Aは次の寸法を有している。即ち、長さ 1.78cm;幅 2.03cm :厚さ0.16cm である。
【0055】
図4Aおよび4Bに示すように、構造支持体40には、複数(この例では8個)の周辺孔48が含まれており、電極35〜43を整列させるために、この孔を通してネジ付きロッド58,59が通される。幾つかの長い孔47が、エアロゲル炭素複合体44のシートの片側に沿い且つ隣接して、外側に一緒に整列して示されている。これらの孔47の寸法は、最小限の圧力降下で、炭素エアロゲル複合体シートを横切って流体を均一に分布させるように設定される。これら孔47の数、位置および寸法は、セル30の使用および適用の所望の形式に従って変化させることができる。
【0056】
炭素エアロゲル複合電極44は、正方形の形状を有するものとして示されており、また構造支持体40に対して比較的中央に位置するように示されている。この例においては、炭素エアロゲル複合体電極44は、6.86cmの側部寸法、23.5298cm2の突出部面積、約0.0127cmの厚さを有している。当該電極44はまた、円形、矩形または三角形であってもよい。
【0057】
電極44は、好ましくは炭素エアロゲル複合体で作成されるが、電極として機能する充分な導電性および耐食性(化学的安定性)を有するものであれば、如何なるモノリシック多孔性固体でも代わりに用いることができる。このような代替え材料には、典型的には燃料電池に用いられる多孔性炭素電極、網状のガラス状炭素発泡体、粉末冶金によって製造された多孔質金属電極、パックされた粉末カラム(即ち、炭素粉末、炭化タングステン粉末、酸化錫および酸化イリジウムを含むガラス状導電性酸化物)、これらのおよび他の材料の混合物、Pt、Ir、SnO2のような電気触媒、並びにフォトリソグラフィー、電子成形、物理的気相成長(蒸着、スパッタリング等)を含む微細加工技術によって製造される多孔質電極、何れかのタイプの導電性スポンジ等が含まれる。
【0058】
また、電極44は、内務省報告及びニューマン論文に記載された従来のパックされた炭素ベッドよりも顕著に大きな比表面積を有する、パックされた炭素エアロゲル粒子のベッドとして製造することもできるであろう。この設計は、イオンの電気吸着、有機物の吸着および微細粒子捕捉の能力を大幅に高める利点を提供するが、多孔性媒質を通して流すことを必要とする。
【0059】
図3に示した例において、チャンバ65〜71は約300mlの容積を有し、これは再生に必要とされる最小限の可能な液体容量に対応している。他の態様において、チャンバ65〜71は、再生に必要とされる最小限の液体を更に低減できるように、異なった容量を有することができる。
【0060】
図5は、容量性脱イオン−再生システム111の第一の実施例を示しており、これには一般に、一つまたは一連の(直列の)電気化学的セル30(図3)と、電気回路112と、流体回路114とが含まれており、この流体回路114は電気回路112の制御の下に、セル30を通る流体の流れを制御する。
【0061】
電気回路112には、隣接する電極対35〜43(図3)を横切って一定のD.C.電圧を与える、電圧制御されたD.C.電源117が含まれている。抵抗負荷120及びスイッチ121が、電源117の陽極端子および陰極端子122A,122Bを夫々横切って並列に接続されており、単一の電気化学的セル30を放電または再生するために使用される。
【0062】
電気回路112は更に、再生を開始するためのトリガー装置のような制御システムを含んでいる。この制御システムは、オンライン導電セル、イオン選択性電極、pH電極、ポーラログラフィーセンサー、インピーダンスセンサー、光沢的透過セル、光散乱センサーを利用している。このオンライン制御システムによってトリガーされ得る部品には、電源、バルブ及びポンプが含まれる。
【0063】
差動増幅器126は、分流抵抗器118を横切って接続されており、更にアナログ/デジタル変換器127およびコンピュータ128に接続されている。この分流抵抗器118は、モニター及び制御のために、電源117からセル30へと流れる電流を測定するために用いられる。作動増幅器126は、分流抵抗器118を横切る電圧を、アナログ/デジタル変換器およびコンピュータ126によってモニター可能なレベルにまで増幅する。もう一つの作動増幅器125は、分流抵抗器118を介して、電源117の端子122A,122Bを横切って接続されており、アナログ/デジタル変換器127を保護するために、電源117とアナログ/デジタル変換器127との間のバッファとして動作する。
【0064】
作動増幅器125は、セル30の端子を横切って接続されており、セル30とA/D変換器127との間のバッファとして働く。動作において、セル30は電解質を脱イオンするために用いられるから、スイッチ121は開かれる。再生プロセスを開始させるためには、放電電流の経路を与えるために、電源117をオフまたは切断し、スイッチ121を閉じる。
【0065】
アナログ/デジタル変換器127は、夫々のトランスジューサ131,132,133を通り、熱電対134、導電性プローブ135およびpHセンサー136のような複数のセンサー類を介して流体回路114の入口流に接続される。熱電対134は、電解質の過熱を防止するために入口流の温度のモニターを可能にし、更に導電性プローブ135の較正を可能にする。導電性プローブ135は、入口流の導電性をモニターするオンラインセンサーである。pHセンサーは入口流のpHレベルを測定する。トランスジューサ131,132,133は、熱電対134、導電性プローブ135およびpHセンサー136の測定値を、アナログ/デジタル変換器127によって読み取り可能で且つ比較可能な電圧に変換する。流速計154は、入口流の流速を測定する。
【0066】
流体回路114には、セル30で処理すべき原料流体を収容するための供給および再循環タンク150が含まれている。この供給および再循環タンク150に保存された流体は、原料流体の連続的な流入によって置き換えることができる。
【0067】
バルブ151は、供給および再循環タンク150とポンプ152との間に流体的に接続される。ポンプ152の速度は、セル30への入口流の流速を制御するように使用される。出口流は、二つのバルブ156,157を介して、精製流体を保存するための生成物タンク160および供給再循環タンク15に夫々接続され、接続される。バルブ156および157は、動作のモードを選択するために用いられる:バッチモードまたは完全な再循環;連続モードまたは一回モード。
【0068】
入口流と同様に、アナログ/デジタル変換器127は、三つのトランスジューサ141,142,143、熱電対144、導電性プローブ145およびpHセンサー146を介して、流体回路114の出口流にも接続されている。連続モードの運転において、脱イオンされるべき原料流体または電解質は、最初に供給および再循環タンク150の中に保存され、バルブ157が閉じられる。ポンプ152が活性化されて、供給再循環タンク150からセル30へと流体がポンピングされ、セル30では流体の脱イオンおよび精製が行われる。精製された流出物は、次いで開かれたバルブ156を介して生成物タンク160へと送られる。或る種の適用においては、望ましいレベルの精製を得るために、流体を2回以上再循環させることが望ましいであろう。その場合、流体の流れをセル30を通して再循環させるために、バルブ156は閉じられ、バルブ157は開かれる。
【0069】
セル30が飽和したとき、脱イオンプロセスは自動的に中断され、再生プロセスが開始される。この目的のために電源117は切断され、再生タンク(図示せず)はポンプ152およびセル30と流体的に接続される。再生タンクには、適切な再生溶液(比較的少量のみが必要とされ、供給流、例えば原料水と同じ組成を有している)が含まれている。この再生溶液はセル30に通され、再生プロセスは、除去されたイオンを再生溶液の中に戻すことによって起きる。
【0070】
結局、電極は有機汚染物で飽和されることとなり、化学的および電気化学的に再生された酸化物(Ag(II)、Co(III)、Fe(III)、オゾン、過酸化水素および種々の漂白剤を含むが、これに限定されない)の溶液を電気化学的セル30に通すことによって、炭素複合電極44または他の多孔性モノリシック電極を洗浄および再生することが可能である。
【0071】
図12〜図14は、図5の容量性脱イオン−再生システム111を用いた実験的タイミングチャートを示している。
【0072】
図6には、100μmhoのNaCl溶液の脱イオンおよび再生のために用いられた、図5の容量性脱イオン−再生システム111の運転を示す三つの重なったタイミングチャートA,B,Cが含まれている。チャートAは電解質の導電性を表しており、二つの曲線(一つは入口流の導電性を示し、他の曲線は出口流の導電性を示す)が含まれている。チャートBは、セル30を通して流れる電流を表している。チャートCはセル30を横切る電圧を表している。Tは脱イオン−再生サイクルを表している。図7は、何れも図3に示したセル30に類似した少なくとも二つの並列な電気化学セル30Aおよび30Bを用いた、容量性脱イオン−再生システム175の第二の実施例を示している。図8A,B,Cは、100μmhoのNaCl溶液を用いた、容量性脱イオンシステム175の運転例を示している。該システム175の主要な利点の一つは、その連続的な脱イオンおよび再生運転を維持できる能力である。当該システム175は、一般にはシステム111と類似しているが、二つのセル30Aおよび30Bを用い、一つのセル30Aまたは30Bが脱イオンされるときは、他方のセルは脱イオンプロセスのための準備である再生を行う。従って、システム175の運転は、サイクリックで且つ連続的である。セル30Aおよび30Bの夫々一つのために、各サイクルには二つの半サイクルが含まれる。セル30Aおよび30Bのサイクルが本質的に180#ずれるように、第一の半サイクルは脱イオンプロセスであり、第二の半サイクルは再生プロセスである。
【0073】
システム175には、これらセルの運転を選択するために、両セル30Aおよび30Bを横切って接続された、電源およびスイッチ装置176が含まれている。システム175の好ましい実施例においては、流体の流れを脱イオンするための運転中の一つのセルが含まれる一方、他方のセルは同時に再生されているけれども、両セル30Aおよび30Bは同時に同じプロセス、即ち、脱イオンまたは再生を行うこともできる。
【0074】
コントローラ178は、セル30Aおよび30Bへの流体の流れおよびこれらセルからの流体の流れを制御するために、複数の流入および流出バルブ179,180a,180b,180c,181a,181b,181cおよび182を調節する。アナログ/デジタル変換器185は、システム175の流体回路に沿って配置された、複数の導電性およびイオン特異的センサー187,188からの測定信号を変換し、対応するデジタル信号をコンピュータ190へ送信し、該コンピュータはコントローラ178、電源およびスイッチ装置176を制御してシステム175全体の運転を制御する。二つのセンサー187,188のみが示されているが、他のセンサーをも組み込んで、追加のフィードバックデータをコンピュータ190に提供することもできる。
【0075】
図8A,B,Cは、図7の容量性脱イオン−再生システム175の運転を示す三つのタイミングチャートである。この場合、一方のセルの再生の際に放出される電力は、他方のセルでの脱イオンのためには全く用いられない。図8Aは、セル30Aおよび30Bから流れる流出物の導電性(μmho)vs 時間(秒)を示している。図8Bは、夫々のセル30Aおよび30Bを通して流れる電流(アンペア)を示している。図8Cは、夫々のセル30Aおよび30Bを横切って印加される電圧(ボルト)を示している。水性(水ベースの)の流れの場合、0.6 から1.2 ボルトの大きさを有する電圧パルスで最適の特性が得られる。低い電圧は電極の容量を減少させる一方、著しく高い電圧は、電気分解およびこれに関連した電極からのガス発生を生じる。図8A,B,Cにおいて、実線はセル30Aの挙動に関連しており、仮想線または破線はセルBの挙動に関連している。
【0076】
図8Cにおいて、実線は、セル30Aに印加される約1.2 ボルトの安定状態を有する一連の方形電圧パルス191,192,193を示している。一方、破線は、セル30Bに印加される約1.2 ボルトの安定状態を有する一連の方形電圧パルス194,195を示している。しかし、異なった電圧を印加してもよいことを理解しなければならない。特に、水性の流れの場合、好ましい電圧範囲は0.6 〜1.2 ボルトの範囲である。セル30Aおよび30Bに印加される電圧パルスは、位相が180#ずれている。
【0077】
図8Cの電圧パルス191は、図8Bの電流曲線197および図8Aの導電性曲線198で示されるように、セル30Aでの脱イオンプロセスを進行させる。
【0078】
図8Cの電圧パルス191がセル30Aを横切って印加される間、図8Bの電流曲線199および図8Aの導電性曲線200に示されるように、セル30Bのアノードおよびカソードは外部負荷を介して一緒に接続され、セル30Bは再生される。
【0079】
その後、図8Bの電流曲線201および図8Aの導電性曲線202によって示されるように、電圧パルス164がセル30Bを横切って印加され、脱イオンプロセスが進行する。電圧パルス194がセル30Bを横切って印加される間に、図8Bの電流曲線203および図8Aの導電性曲線204に示されるように、セル30Aのアノードおよびカソードは外部負荷を介して一緒に接続されて、セル30Aが再生される。
【0080】
上記の脱イオン−再生サイクルでは、セル30A,30Bの一方が飽和するときに他のセルは殆ど完全に再生され、脱イオンプロセスを進行できる状態になるから、システム175を中断することなく連続的に運転することが可能である。
【0081】
その結果、システム175の出口では、精製された流体が連続して流出する。システム175の運転は、原子力発電所プラントにおいて、ボイラー水から汚染物を除去するために特に魅力的であろう。
【0082】
システム175の運転を簡単に要約すれば、脱イオンプロセスに際して、対応するセル(30A,30Bの何れか)は、それを形成する電極対を容量的に充填させることにより、そこを通過する流体の流れからイオンを除去する。脱イオンプロセスの開始時において、セルは完全に放電されており、脱イオンプロセスの終了時には、セルは完全に充電されている。引き続いて、再生プロセスの間に、対応のセル(30Aまたは30Bの何れか)はそれを形成する電極対を容量的に放電することにより、そこを通過する流体の流れの中にイオンを付与し、当該流れの中のイオン濃度を著しく増大させる。再生プロセスの開始時においてセルは完全に充電されており、再生プロセス終了時点でセルは完全に放電されている。
【0083】
図9は、本発明の他の特徴、即ち、高いエネルギー効率またはエネルギー節減モードを示している。この特別な運転モードにおいて、セル30A,30Bを横切るポテンシャルを示すためにタイミングチャートが用いられている。そこでは、実線がセル30Aの挙動に関連しているの対して、破線はセル30Bの挙動に関連している。時間t0から出発して、セル30Bは完全に充電され、再生すべき状態になる。一方、セル30Aは完全に放電され、脱イオンプロセスを開始すべき状態になる。
【0084】
セル30Bを電源176から切断し、電源176をセル30Aに接続することは可能であるが、ここではエネルギーを節約し、一定の適用ではシステム175を運転するために必要とされるエネルギーのかなりの部分を節約することが可能である。本発明に従えば、時間t0においてセル30A,30Bを接続することにより、曲線210に示すようにセル30Bがセル30Aを介して放電され、また曲線211に示すようにセル30Aが充電されるようにすることができる。セル30Bに保存された電気エネルギーは、セル30Aでの脱イオンに際して、セル30Aの電力として用いられる。
【0085】
平衡電圧、即ち、時間t1での約0.6 ボルトに到達したら、直ちにセル30Aを電源176に接続して、曲線212に示すように充電プロセスを完結させることができる。同時に、曲線213によって示されるように、セル30Bは外部負荷を介して完全に放電される。その結果、セル30Aを充電するために必要とされるエネルギーのかなりの部分はセル30Bによって発生され、残りのエネルギーが電源176によって供給される。
【0086】
その後、時間t2においてセル30Aは完全に充電され、再生すべき状態になる一方、セル30Bは完全に放電されて脱イオンプロセスを開始すべき状態になる。
【0087】
次いで、セル30Aおよび30Bを接続することにより、曲線214に示すように、セル30Aはセル30Bを介して放電される一方、曲線215に示すようにセル30Bは充電される。
【0088】
時間t3で平衡電圧に到達したら、直ちにセル30Bを電源176に接続して、曲線216に示すように充電プロセスを完結させ、また曲線217によって示されるように、セル30Bは外部負荷を介して完全に放電させることができる。
【0089】
その結果、セル30Bを充電するために必要とされるエネルギーのかなりの部分はセル30Aによって発生され、残りのエネルギーが電源176によって供給される。
【0090】
図10は、脱イオン−再生システム220の第三の実施例を示しており、これにはシステム175(図7)に類似したシステム222,224,226のマトリックスが含まれており、これらは直列に接続されている。夫々のシステムには、接続され且つシステム175に関して説明したようにして動作する、少なくとも一対のセルが含まれている。従って、システム222はセル(1,1)および(1,2)を含んでおり、システム224はセル(2,1)および(2,2)を含んでおり、システム226はセル(n,1)および(n,2)を含んでいる。
【0091】
夫々のシステム222,224,226は、図7に示した電源およびスイッチシステム176に類似した、電源およびスイッチシステム176A,176B,176Cを含んでいる。
【0092】
運転において、セル対222の一つのセル(1,1)は脱イオンプロセスを行い、他のセル(1,2)は再生される。夫々に二つのセルが含まれる三つのシステム222,224,226のみが示されているが、異なった組み合わせのシステムまたはセルを選択することもできる。
【0093】
システム220の一つの新しい応用は、段階的かつ選択的な脱イオンおよび再生を特徴とするものである。夫々のシステム(222,224,226)が流れ込んだ流体の流れから異なったイオンを除去するようにさせることにより、流れ込んだ流体を選択的に脱イオンするために、夫々のシステム(222,224,226)を横切って、異なったポテンシャル(V1,V2,Vn)が印加される。
【0094】
こうして、この特別の例では、V1<V2<Vnとすることによって、システム222はCu++のような還元可能な陽イオンを除去することができ;システム224はPb++のような還元可能な陽イオンを除去することができ;またシステム226はNa+,K+、Cs+、Cl-のような非還元性および非酸化性のイオン、またはそのイオン状態のまま残る他の同様なイオンを除去することができる。
【0095】
図11A,Bは、電気化学的セル250およびその一部を表している。セル250は、それぞれ図5および図7の容量性脱イオン−再生システム117および175の一部として使用するために採用することができる。このセル250には、多孔質のセパレータまたは膜255によって分離された複数の電極253,254が含まれている。このセパレータ255は二つの隣接した電極253,254の間にサンドイッチされており、その間に開放チャンネルを形成し、定義することを可能にする。電極253,254は、上記のセル30,30Aおよび30Bの電極と同様である。この電極253,254およびセパレータ255は一緒に螺旋状に巻かれており、電解質は、電極253,254の間に形成された開放チャンネルの中を最小の抵抗で流れて、セル250から出ていく。二つの電極253,254および一つのセパレータ255を含むものとしてセル250を説明したが、追加の電極およびセパレータを用いることもできる。
【0096】
図15および図16は、ここに説明するセルおよびシステムに用いるための、他の二面電極300を示している。説明の目的で二面電極のみを詳細に説明するが、同一若しくは類似の概念を用いて一面電極を設計することもできる。
【0097】
電極300は、一般的には図4Aの電極35と類似した機能を有している。電極300には、実質的に平坦で、薄く、耐食性で、矩形の構造支持部材302が含まれており、これは誘電体の基板またはシート303を具備している。一つの実施例において、より高価な図4Aの金属製(即ちチタン製)の構造支持体40を置き換えるために、支持部材302は、印刷回路基板技術を用いて製造される。従って、支持部材302は、誘電体板303の少なくとも一部を薄い金属層または金属フィルムでメタライズしたエポキシ板でもよい。他の実施例において、誘電体板303はガラス繊維エポキシ板を含んでいる。
【0098】
金属層304は、チタンのような何れかの適切な金属で構成することができ、また誘電体板303の表面への金属のスパッタリング、並びに誘電体板303の表面への金属フィルムまたは金属層304の化学的気相成長CVD)を含む別の製造プロセスによって形成することもできる。誘電体板303の反対側の面は、金属層306で同様にメタライズされる。
【0099】
タブ308は、D.C.電源の一つの極に接続されるために、金属層304の一つの側から一体的に延出している。タブ308が特定の用途に必要とされる構造的剛性を欠いているならば、誘電体板302をタブ308の下に延設して、必要な機械的支持を与えることができる。同様にして、反対側の金属層から別のタブ310を同様に一体的に延出させ、D.C.電源の他の極に接続させることができる。二つのタブ308,310は、同じ極性をもつこともできるであろう。
【0100】
比面積が高く、多孔性で、導電性のモノリシック材料(例えば炭素エアロゲル複合体)の薄いシート314が、金属層304の表面に結合される。導電性シート314は、図4Aのシート44と比較して実質的に同じである。他の薄い導電性シート316は、導電性シート314のそれと類似した組成を有しており、反対側の金属シート306に結合されている。
【0101】
構造支持部材302は更に、電極300を通る電解質に流路を与えるための、一般的には同じ一連の孔320および周辺の孔322を含んでおり、これらの孔は図4Aの孔47および周辺孔48と同様である。
【0102】
図17は、ケース352および該ケースの中に閉じ込められたセル355を含んだ、カートリッジ350を示している。セル355には、相互に平行に配置された複数の電極357,358,359が含まれている。三つの電極のみが示されているが、異なった数の電極を選択してもよい。
【0103】
一つの実施例において、電極357,359は片面電極であるのに対して、中間電極358は両面電極である。電極357,358,359は、一般的には図15,16の電極300と同じ設計、構造および組成である。他の実施例において、電極357,358,359は、構造支持部材302を含んでいない。比表面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料は単独で電極として用いてもよく、また隣接した電極、例えば357,358がその間のチャンネル若しくは隙間を定義するように、誘電体スペーサまたはケース352の中の溝によって所定の距離だけ離間して維持されてもよい。これらの実施例において、電極357,358,359は、ケース352から取り出すことができ、またケース352内に戻してセルまたはカートリッジ350を形成することができる、セル355のような一以上の一体的なセルを形成してもよい。
【0104】
使用に際し、セル355はケース352の中に固定して置かれ、D.C.電源に接続される。流体の流れは、重力の下で、流入および流出とラベルした矢印で示すように、電極357,358,359の間のチャンネル360の中に自由に入り込む。カートリッジ350の基本的な運転については、セル30に関して上記で説明した通りである。ポンプ(図示せず)を使用してもよい。セル355は三つの平坦な電極357,358,359を有するものとして示されているが、異なった形状の他の電極を用いてもよい。例えば、電極357,358,359は、ケース352の中に蛇行した流れを生じるように配置してもよい(図3)。
【0105】
カートリッジ350によって提供される一つの利点は、セル355または全体のカートリッジ350が、保守または他の目的のために容易に取り替えることができる点である。加えて、カートリッジ350は如何なる所望の大きさとすることもできる。更に、カートリッジ350の寸法は、図15の構造支持体302を省略することによって低減することができる。
【0106】
図18,19は、二つの他の電極400,401を示している。電極400には、一般に平坦で、矩形で、中心に孔がある周辺支持部材402が含まれている。同様に、電極401は一般に、平坦で、矩形で、中心に孔がある周辺支持部材404を含んでいる。二つの電極400,401は、誘電体セパレータ406によって、所定の離間距離に維持される。二つの電極400,401だけが接続されてセルを形成しているが、二つ以上の電極を組み合わせてセルを形成することもできる。
【0107】
支持部材402,404は一般に、組成および構造において類似している。支持部材402は、チタンのような導電性材料でできており、その一つの側から、D.C.電源の極に接続するためのタブ409へと一体に延出している。支持体402は、メタライズしたエポキシ板で形成することができる。先に説明したように、セルを組み立てるための複数の周辺孔410が、支持部材402に形成されている。
【0108】
電極400には更に、周辺支持部材402に囲まれた中央開口部に嵌合して充填された、詰め替えカートリッジ415が含まれている。一般に、カートリッジ415は矩形であるが、他の形状を用いてもよい。カートリッジ415は、粉末冶金で製造された多孔質スポンジ417を含む詰め替え部材を具備していてもよい。スポンジ417は、チタン、白金または他の適切な金属で製造することができる。好ましい実施例において、スポンジ417はレゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲルで含浸された網目状のガラス状炭素(RVC)によって製造することができる。スポンジ417の上部および下部は、炭素エアロゲル複合体のように比表面積が大きく、多孔質で、導電性モノリシック材料の二つの薄いシート419,420で被覆されている。スポンジ417はまた、或る量のパックされた粒状炭素、炭素エアロゲルまたは金属であってもよい。また、バックミンスターフラーレンまたは「バッキーボール(Bucky Ball)」も、中央開口部を充填するために使用することができる。
【0109】
導電性シート419,420は、例えば接着剤によって、上側および下側のスポンジの実質的に全表面に結合させればよい。導電性シート419,420は、D.C.電源の対応する極と電気的に確実に接続されるように、電気的および物理的に支持部材402に接続される。
【0110】
電極401は、構造および組成において電極400と一般に類似しており、二つの導電性シート423,425で被覆された詰め替えカートリッジ422を含んでいる。運転において、電極400はD.C.電源の一方の極に接続され、電極401は他方の極に接続される。流体の流れは、重力の下で自由に、または最小限の圧力下において、流入および流出とラベルした矢印で示すように、電極400,401の間に定義されたチャンネル430を通して流される。少なくとも二つの電極400,401で形成されたセルまたはカートリッジの基本的な動作は、セル30に関連して上記で既に説明した通りである。
【0111】
図20は、他のカートリッジまたはセル450を示していおり、これにはD.C.電源の反対側の極に接続される、少なくとも二つの実質的に同様な電極452,454が含まれている。電極452,454は、誘電体セパレータ456によって、所定の離間距離に保持される。セパレータ456については任意であるが、電極452,454は電気的に接続されない。
【0112】
電極452は多孔質であり、一般には矩形である。電極452は、電極452の活性表面積を増大するために、何らかのスポンジ状、フォーム状、または多孔性の材料で製造すればよい。例えば、金属スポンジ、炭素エアロゲル若しくは同様の比表面積の大きい導電性のモノリシック物質で含浸された網状ガラス状炭素(RVC)が挙げられる。異なる電極は、異なる化合物で含浸すればよい。
【0113】
使用において、セル450はD.C.電源に接続され、流体の流れは重力の下で自由に、または最小限の圧力下において、「流入」および「流出」とラベルした矢印で示すように、電極452,454を通して流される。セル450の基本的な動作は、セル30と同様である。流体の流れは、電極452および454の大きな孔を通して流れる。炭素エアロゲルは、炭素発泡体の表面を被覆するのに用いられる。
【0114】
化学的再生には、HCl、HNO3、H2SO4,HSのような強酸の使用が含まれるので、これらの強酸は、炭素エアロゲル電極の表面に堆積された固体金属を溶解し、また他のタイプのスケール形成を除去する。或いは、化学的再生には、電極を再生するために、種々のタイプのスケールおよび不純物を溶解できる強塩基の使用が含まれ得る。
【0115】
一つの実施例においては、重い有機汚染物を溶解するために重い有機溶媒が用いられ、続いてオゾン、過酸化水素、フェントン試薬、銀(II)、コバルト(III)鉄(III)またはパーオキシジサルフェート(S2O8-2)のような強い化学酸化剤が用いられる。これらの酸化剤は、電極の表面に化学吸着した有機汚染物の非常に薄い層を酸化することができ、これによって電極を再生する。従って、本発明の重要な側面は、炭素電極が化学的に耐性であり、再生可能なことである。更に、電極ポテンシャルの周期的な反転によって、該電極は非常に効率的に再生されるであろう。電極の再生は、該電極およびセルの実効寿命を延長させ、保守および運転コストを低下させるであろう。周期的な電圧の反転は、供給流をセルに通しながら、または化学的再生剤(酸、塩基など)をセルに通しながら、行うことができる。
【0116】
本発明に従えば、本発明の容量性脱イオンおよび再生のためのシステム、セルおよび方法において、新しい種類の電気吸着媒体を使用することができる。これらの電気吸着媒体は、炭素エアロゲル、網状のガラス状炭素発泡体および炭素粉末を含む炭素系材料よりも、毒および劣化に対する感受性が低い。これら吸着媒体には多くの炭化金属が含まれ、これらは粉末、粒子、発泡体、スポンジ、溶射または粉末冶金によって製造された多孔質固体、スパッタ薄膜、または他のプロセスによって形成された形態であってよい。
【0117】
これらのカーバイドには、TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、MO2C、Cr3C2、Ta2C、並びに高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約17μohm-cm〜1,200 μohm-cmの範囲の抵抗をもった類似の炭化物が含まれる。
【0118】
図21は、本発明の容量性セルおよびシステムでの使用に適合したセル460を示している。セル460は、エネルギー保存用の電解質蓄電器や、電気自動車の負荷の均等化といった、幾つかの他の用途に用いることができる。
【0119】
セル460は主に、D.C.電源に接続された二つの外部導電性プレート462,463で形成されている。上記の群ならびに活性炭素粉末およびガラス状金属粉末から選択された、粉末または顆粒状の電気吸着媒体の二つのベッド465,466が、二つの多孔性もしくは導電性膜468,469によって、その対応するプレート465,466に対して保持されている。
【0120】
チャンネル470は、膜468,469の間の中央に形成され、その中を通る流体の自由な流れを保証する。セル460の動作原理は、上記で説明した容量性脱イオンセルの動作原理と同様である。
【0121】
図22は、電気化学的に再生されたイオン交換において使用するための、他のセル475を示している。セル475には、二つの複合電極476,477が含まれており、その間に中央チャンネル478が定義されている。セル475はまた、ここに開示した容量性脱イオンシステムおよびセルと共に用いるために、変更することができる。例えば、複合電極476,477は、セル30(図3)に用いるために容易に変更することができる。更に、中央チャンネル478は直線的な平面チャンネルとして示されているが、例えば蛇行経路のように、種々の形状および設計を採用することができる。
【0122】
電極476はカソードであり、電極477はアノードである。電極476は、外側の導電性プレート480、電気吸着ベッド482およびポリマーコーティング483を含んでいる。導電性プレート480は、D.C.電源の負極に接続される。導電性プレート480は、適切な構造支持部材、例えば誘電体のボード、基板またはシートで置き換えることができる。
【0123】
ベッド482は電気吸着媒体で形成されており、プレート480に結合されている。或いは、コーティング483によって、ベッド482をプレート480に対して保持してもよい。ベッド482は、上記の何れかの電気吸着媒体で形成すればよく、これには高比表面積で、多孔質で、導電性のモノリシック材料(例えば炭素エアロゲル複合体)、多孔質金属(例えばチタンまたは白金)、カラム粉末のパック、レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲルに含浸した網状のガラス状炭素(RVC)、並びに粉末、粒子、発泡体、スポンジまたは多孔質固体の形の金属カーバイド(例えばTiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、MO2C、Cr3C2、Ta2C)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
ベッド482を適切な陽イオン交換樹脂で被覆して、コーティング483を形成する。例えば、ベッド482をナフィオン(Nafion)の溶液中で浸漬コートする。このナフィオン溶液はベッド482を浸潤し、乾燥すると、ベッド482の活性表面領域をコートする。陽イオン交換樹脂は、スルホネート(−SO3-)、ホスホネート(−PO32-)および/またはカルボキシレート(−COO-)のような負に帯電した官能基を有するポリマーの群から選択すればよい。無機陽イオン交換樹脂も用いることができる。コーティング483の厚さは、セル475が用いられる具体的な用途によって決定される。
【0125】
電極477には、外側の導電性プレート485、電気吸着ベッド487およびポリマーコーティング489が含まれている。導電性プレート485はD.C.電源の負極に接続され、また設計および構造は一般に導電性プレート480に類似している。ベッド487はまた、組成および構造においてベッド482に類似している。ベッド487を適切な陰イオン交換樹脂で被覆して、コーティング489を形成する。陰イオン交換樹脂は、四級(−NR3)、三級(−NR2)および/または二級(−NR)アミンのような、正に帯電した官能基を有するポリマーの群から選択すればよい。無機陰イオン交換体を用いてもよい。コーティング483の厚さは、セル475を用いる特定の応用によって決定される。使用に際し、放射性核種、重金属および無機塩の混合物を含む水性溶液が、セル475の中央チャンネル487を通して流される。放射性核種および重金属は、従来のイオン交換体として同様の選択性で流れから除去される。しかし、セル475の再生には電気だけが用いられるから、従来のイオン交換とは異なり、再生のための化学薬品は必要とされない。
【0126】
セル475の分極に際して、プロトン(H+)は、コーティング483から、陽イオン交換樹脂コーティング483とベッド482との間の界面490へと移動し、界面490に形成された電気二重層に保持される。このプロトン移動は、流れの中の陽イオンを吸着するために、コーティング483上の活性部位をフリーにする。陽イオン(M+およびN+、例えばNa+)は、陽イオン交換樹脂コーティング483の中に移動して、その中の活性部位に保持される。同時に、水酸イオン(OH-)が、コーティング489から、陰イオン交換樹脂コーティング489とベッド487との間の界面492へ移動し、界面492に形成された電気二重層に保持される。この水酸イオンの移動は、流れの中の陰イオンを吸着するためにコーティング489上の活性部位をフリーにする。陰イオン(X-およびY-、例えばCl-、NO3-、SO4-2、またはCO3-2)は、陰イオン交換樹脂コーティング489の中に移動し、その中の活性部位に保持される。
【0127】
導電性プレート480および485を短絡させる等により、セル475を放電(即ち、再生)するに際して、樹脂コーティング483,489は再生され、プロトンおよび水酸イオンは界面490および492から夫々放出される。これらのプロトンおよび水酸イオンは、陽イオンおよび陰イオン(M+,N+およびX-,Y-)を、水のような、供給流と同じ組成を有する再生溶液中に追い出す。
【0128】
従って、本発明のイオン化および再生セル475および使用方法は、化学的再生剤に対する依存を、完全に排除しないまでも最小限にするものである。セル475は、船舶および発電プラント、化石火力および原子力発電プラントのボイラー水の脱イオン化、混合した有害な廃棄物の処理、地域的および工業的用水の軟水化、血液透析を含む体液の分析および処理、並びに幾つかの他の用途に用いることができる。
【0129】
セル475はまた、コーティングとして用いたイオン交換樹脂に対して同じ選択性が知られているような、流体または水溶液中の陽イオンおよび陰イオンの選択的な同時分離を可能にする。この例示において、この溶液は陰イオンX-,Y-並びに陽イオンM+,N+を含んでいる。溶液が中央チャンネル478を通って流れ始めると、或る陰イオンおよび陽イオン、即ち、X-およびM+が電極477および476の基端部切片494を夫々飽和させる。この基端部切片494における樹脂コーティング489および483が飽和されたとき、残りの陰イオンおよび陽イオン、即ちY-およびN+が、電極477および476の先端部切片495を飽和し始める。イオン交換樹脂、従って電気化学的に再生されたイオン交換(ERIE)プロセスのイオン選択性は、種々の溶解イオンと逆に帯電した官能基との間の相対的なクーロン引力によって定まる。この引力は、イオンおよび官能基の両者の大きさ、コンフィギュレーションおよび電荷によって決定される。
【0130】
こうして、この容量性脱イオンシステムおよび方法は、他の技術を凌ぐ重要な改良および利点を提供する。例えば、イオン交換と異なり、システムの再生のために酸、塩基または塩の溶液は必要とされない。再生は、セルを放電することによって達成される。従って、二次廃棄物は発生しない。膜または高圧ポンプは必要とされないから、本発明のシステムは、電気透析および逆浸透を凌駕する運転上の利点を提供する。競争関係にある技術よりもエネルギー的に効率的であり、また熱プロセスよりも実質的にエネルギー効率が高い。
【0131】
本発明のシステムはまた、半塩水(800〜3200ppm)の処理に用いることができる。これは、特に海岸の共同体にとって非常に有用である。半塩水の処理のための競合技術は、電気透析および逆浸透である。これらのプロセスは、夫々約7.7 Wh/galおよび約5.3 〜8.5 Wh/galのエネルギーを消費する。本発明のシステムは遥かにエネルギー効率が高く、エネルギー回収、セルの形状および運転に応じて、1Wh/gal未満、可能であれば0.2 〜0.4 Wh/galのエネルギーを必要とするに過ぎない。
【0132】
このシステムは、費用が高くしかも問題の多い膜を排除している。炭素エアロゲルCDIシステムは、家庭用水の軟化、蒸気および電力発生のためのボイラー水の脱イオン、並びに工業用超純水製造のために使用できるであろう。イオン交換の工業的応用は、1ポンドの陽イオン交換樹脂の再生のために100 ポンドの酸を必要とし、或いは1ポンドの陰イオン交換樹脂の再生のために100 ポンドの塩基を必要とするであろう。炭素エアロゲルCDIシステムは電気的再生を用い、これによって化学再生剤の必要性および付随する廃棄物を排除する。
【0133】
本発明のシステムは、イオン交換樹脂、イオン交換膜および電極を必要とする連続的脱イオンよりも、単純で且つエネルギー的に効率的である。炭素エアロゲルCDIシステムは、炭素エアロゲル電極のみを必要とする。連続脱イオンに用いられるポリマーイオン交換樹脂媒体は、スケールおよび汚染の除去の際の化学的攻撃に対して感受性である。炭素エアロゲルは化学的攻撃に対して抵抗性である。
【0134】
炭素エアロゲルCDIシステムは、活性炭素のベッドよりも優れている。ジョンソンに付与された米国特許第3,755,135 号に記載の、電気脱ミネラルとして公知の他の電気化学的プロセスは、流体が通過する活性炭素のパックされたベッドを電極として用いる。しかし、このようなパックされたベッドの使用に付随する問題によって、実行可能な商業的製品の開発が妨げられた。これらの問題には、運転中に電気吸着能が不可逆的に喪失されること、このような流通ベッドでの使用に適した活性炭素の比表面積が比較的小さいこと、ベッドを横切って電気ポテンシャルが降下すること、ベッドを横切って水力学的圧力降下が生じること、流体の流れの中に炭素粉末が随伴されることによるベッドの侵食、および多孔性電極セパレータが必要であることが含まれる。例示すれば、モノリシック炭素エアロゲル電極を有する炭素エアロゲルCDIシステムは、活性炭素をパックしたフロースルー型ベッドを有するCDIシステムを凌ぐ利点を提供する。炭素エアロゲル電極の電気吸着能における僅かな低下は、周期的なポテンシャル反転によって殆ど完全に回復する。従って、システムの能力を高レベルに維持できる。
【0135】
炭素エアロゲル比表面積(600 〜1000m2/gm)は、フロースルー型のパックされたベッドでの使用に適した活性炭素粉末のそれ(230 m2/gm、または200 〜300m2/gm)よりも顕著に大きいから、匹敵する量の活性炭素粉末に吸着される量よりも著しく大量の塩を、炭素エアロゲル上に電気吸着することができる[A.M.Johnson,J.Newman,J.Electrochem.Soc.118,3(1971)510-517]。
【0136】
384対の炭素エアロゲル電極(768 個の電極)および2.4×106ft2 (2.2 ×109cm2)の全活性表面積を有するCDIプロセスにおいては、薄い炭素エアロゲルシートに生じるポテンシャル降下は、比較的深い活性炭素ベッドにおけるよりも小さいことが実験的に示されている。結局、炭素エアロゲルの単位表面積上には、匹敵する活性炭素の単位表面積上に比較して、より多くのイオンを電気吸着することができる。深いパックされた炭素ベッドにおいては、電気吸着がもはや非常に効率的ではないレベルにまでポテンシャルが降下する可能性がある。エアロゲルの形で炭素を固定化することにより、多孔性膜セパレータを必要としないシステムを構築することが可能となる。活性炭素粉末とは異なり、炭素エアロゲルのモノリシックシートは、流体の流れの中に随伴されない。水は、隣接するアノードおよびカソードの間の開放チャンネルを通過し、約30psiの適度な圧力降下のみを受ける。対照的に、匹敵する表面積をもった活性炭素のパックされたベッドを通過する流れは、≧1000psiの著しく大きい圧力降下を受ける。
【0137】
CDIシステムは、単純なモジラー・プレート・アンド・フレームのセル構造を有している。連続的な脱イオンおよび電気脱ミネラルに必要な電気化学セルは、粒状イオン交換樹脂および活性炭素、イオン交換膜、電極セパレータおよび電極の必要性によって複雑化される。本発明のDCIシステムは、単純な両面の平坦電極を必要とする。両面電極は、電流コレクタおよび構造支持体として働くチタンプレートの両側に、二枚の炭素エアロゲル複合体シートを接着することによって製造される。接着には、導電性銀エポキシペーストを用いることができる。一つの実施例において、炭素エアロゲル複合体は、2.9-4.9 ×106ft2/lb(600 〜1000m2/gm)の極めて高い比表面積を有している。夫々のシートは、2.7in ×2.7in ×0.005in(6.86cm×6086cm×0.0125cm)であり、略3,014 ft2(2.8 ×106cm2)の全活性表面を有している。二つのオリフィスが炭素エアロゲル電極の一側部に沿って位置しており、水を電極ギャップへ入れる。孔のパターンは、チタンプレートの周縁に位置しており、セルのスタックを一緒に保持する12本のネジ付きロッドを収容するようになっている。これらの部品の容量性脱イオンセルへの組み立ては非常に単純である。電極およびヘッダを、ネジ付きロッドによって整列させる。0.02in(0.05cm)の電極分離が、ネジ付きロッドに対して同心円的な円筒状ナイロンスペーサ及びゴム圧縮シールによって維持される。偶数の電極はカソードとして機能する一方、奇数の電極はアノードとして機能する。夫々の電極のオリフィスは、スタックの一方の側から他方の側へと交互に変化するから、流体が流れる経路は蛇行する。実験的な容量性脱イオンセルの構成には、略2.4 ×106ft2(2.2 ×109cm2)のカソード(アノード)全活性表面積をもった348 対の炭素エアロゲル電極が含まれている。しかし、このシステムはスタックを横切る如何なる所望の濃度勾配、並びに如何なる流速にも適合するように拡張することができる。容量および濃度のスケールアップおよびスケールダウンも、容易に達成することができる。
【0138】
本発明のDCIシステムは、炭素エアロゲルのような、容易に製造でき且つ商業的に入手可能な材料を用いる。この材料のモノリシックシートは、レゾルシノール/ホルムアルデヒド溶液を多孔質炭素紙の中に浸潤させ、その湿潤紙を密封容器内のガラスプレート間でキュアさせ、次いで不活性雰囲気中で炭化することによって製造することができる。この製造プロセスによって、多孔性度が高く、比表面積が大きく(600-1000m2/g)、気泡および孔の寸法が超微細(≦50nm)で、10nmの特徴的な直径をもった相互連結されたコロイド状粒子(繊維鎖)で構成された固体マトリックスの、独特な開気泡の炭素フォームがもたらされる。エアロゲルの多孔性度および表面積は広範囲に亘って制御できる一方、孔および粒子の寸法はナノメータスケールで調節できる。
【0139】
本発明の容量性脱イオンシステムでは、炭素エアロゲルのような、化学的攻撃に対して抵抗性をもった材料が用いられる。脱塩に用いるプロセス装置において、付着物およびスケールの形成は不可避である。回復のためには、攻撃的な化学的処理が必要とされる。従って、本発明の容量性脱イオンシステムは、このような化学的処理に耐え得る材料で構成するのが望ましいであろう。炭素エアロゲルは、スケール形成を抑制するために現在用いられている、HClのような化学薬品の多くに対して比較的耐性である。ポリマー膜および樹脂とは異なり、この材料は有機溶媒による溶解に対しても耐性を有している。塩素のような酸化剤はポリアミド逆浸透膜を攻撃するが、炭素エアロゲルシステムではさほどの問題にはみえない。同様の問題は、電気透析および連続脱イオンにおいても遭遇する。
【0140】
本発明の容量性脱イオンシステムは、完全自動化ポテンシャルスイング運転モードを有している。電気脱ミネラルプロセスは、エネルギー回収のないバッチモードで運転された。容量性脱イオンは、二つの炭素エアロゲル電極を並列に運転することによって、例えば、連続的流れの生成物水を製造することができる。一つのスタックは、他方が電気的に再生されている間に精製を行う。この運転モードは「ポテンシャルスイング」と呼ばれ、エネルギーの回収をも可能にする。例えば、一方の電極スタックの放電(再生)の際に放出されるエネルギーは、他方のスタックの充電(脱イオン)のために用いることができる。このような同期運転は、ユーザフレンドリーな自動化を必要とする。
【0141】
本発明の一つの例示的応用には、放射性の水を精製するための脱イオンシステムの設計および製造が含まれる。例えば、本発明によるシステムの一実施例は、金属ナトリウム残渣で被覆された燃料アセンブリの洗浄によって発生した廃水の精製のために使用できるであろう。夫々のアセンブリを洗浄する際に現在発生している500 ガロンの廃水は、略200 ppmのナトリウム、痕跡量の他の金属、濾過によって除去できる痕跡量の幾つかのの非金属、および痕跡量の放射性成分(主に燃料クラッディングの腐食生成物)を含んでいる。水をリサイクルできるためには、B等級の水純度(即ち、20ミクロシーメンス/cm)が達成されなければならない。
【0142】
図23は、種々の陰イオンおよび陽イオンを含む種々の流体および/または水溶液の分析、処理および加工に用いることができる、電気吸着イオンクロマトグラフ(EIC)500を示している。キャリアタンク510およびキャリア(例えば脱イオンされた水)を引き出すためのポンプ515は、クロマトグラフ500に接続されており、該クロマトグラフにはカラム501、検出器または導電性センサ511、およびコンピュータシステム512が含まれている。検出器511の出力側溶液は、流出水タンク514の中に回収される。
【0143】
陰イオン交換樹脂のカラムで陰イオンを分析し、陽イオン交換樹脂のカラムで陽イオンを分析する従来のイオンクロマトグラフィーとは異なり、EIC500は、一つまたは一連の電気化学セル502,504,506を含み得る単一のカラム501の中で、陰イオンおよび陽イオンの両者を同時に分析することができる。カラム501は、パッキング材料を有する従来のイオン交換カラムを置き換える。更に、イオン交換樹脂のカラムまたはキャリアを変えることによって選択性が操作される従来のイオンクロマトグラフと比較した場合、EIC500の選択性は、アノードとセル502〜506との間のポテンシャルを変更することによって容易に変化させることができる。
【0144】
使用に際して、サンプルは、キャリアタンク510からのキャリアの流れの中に注入され、単一または一連のセル502〜506を通される。夫々のセルには、一般的に一対の多孔性電極、即ち、アノードおよびカソードが含まれている。
【0145】
これらのセルは、本発明に従って構成されたアノードおよび/またはカソードを有している。これらの電極は分極され、イオンは流体の流れから多孔性電極の表面へ引きつけられるが、そこでイオンは電気二重層に保持される。
【0146】
陽イオンおよび陰イオンの夫々の種は、多孔性電極に対する異なった親和性を有しており、またセル502〜506の中での特徴的な流出時間を有している。
【0147】
この流出時間は、イオンを同定するための基礎として用いることができる。交換かラム501の出口には、カラム501を出るイオンを検出するための導電性センサ511または他のタイプの検出器が用いられる。イオンの濃度は、導電性/時間(濃度/時間)ピークの下の面積に比例している。図26は、三つの異なったイオン種A,B,Cについての、三つの導電性/時間(濃度/時間)ピークを例示している。
【0148】
アナログ/デジタル変換器を備えたコンピュータシステム512は検出器511に接続されてデータを処理し、レポートを発生させる。
【0149】
図24および図25は、単一のセル502を例示している。一定の適用において、カラム501は単一の長いセルを含んでいる。セル502には一般に、中空の末端が開放された容器520が含まれており、これは流入、流れおよび流出の矢印の方向にサンプルの流れを通過させる。図25において、容器520は矩形の断面を有しているが、容器520の断面は、図27に示したように他の形状を有していてもよい。
【0150】
比表面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料(例えば、炭素エアロゲル複合体)の薄いシート524が、セル502の一方の側の内表面に結合されている。一つの実施例において、シート524は導電性エポキシペーストを用いてセル502に接着されている。導電性シート524は、その組成において、実質的に図4Aに示したシート44と同じである。シート524はまた、セル502の残りの三つの側部にも結合させてもよい。シート524は、図22に記載したのと同様のコーティング(図示せず)で被覆してもよい。シート524は、電極を形成するために、D.C.電源の一方の極に接続される。別の薄い導電性シート526は、導電性シート524と同様の組成を有しており、反対側またはセル502のもう一つの側部に結合される。シート526は、電極を形成するために、D.C電源の他方の極に接続される。
【0151】
容器520およびシート524,526は、サンプルが流れるセル502内の中央チャンネル530を限定する。一つの実施例において、必要とされるサンプルの量を最小限にするために、チャンネル530は非常に狭い。この例において、チャンネル530は直線である。しかし、図28および図29に示すように、チャンネル530は他の形状、例えば蛇行した経路を有することができる。セル502の一般的な動作原理については、容量性脱イオンセルおよびシステムに関連して、上記で既に説明した。キャリアおよび分析または処理すべきサンプルを含むサンプル流が第一のセル502aを通過するとき、アノード524およびカソード526を横切って電圧が印加され、これによってサンプル中の種々のイオンは異なった速度で流出する。その結果、イオン種は分離される。
【0152】
図26は、三つのイオン種A,BおよびCを示している。イオン種Cは、イオン種AおよびBよりも大きな範囲で電極524,526と相互作用し、従って種Cは種AおよびBよりも大幅に遅延する。イオン種と電極524,526との間の相互作用の程度は、吸着または電気吸着の等温線(isotherm)で記述され、また平衡定数「K」で定量されるが、これは電極材料や、イオンを吸着してこれと相互作用するのに利用できる使用可能な電極表面積を変化させて、イオン種の移動時間を制御することによって制御できる。本発明のクロマトグラフ500の顕著な利点は、イオン種と電極524,526との間の相互作用が静電気的クーロン引力であり、化学的相互作用ではないことである。相互作用の程度および流出時間は、アノードとカソードとの間の電圧を単純に変化させることによって制御することができる。従来のイオンクロマトグラフィーでは、相互作用の程度を変更するためにはカラムを変えなければならない。
【0153】
更に、本発明のクロマトグラフ500は、陰イオンおよび陽イオンの同時クロマトグラフィーのために、単一のカラム501を使用することを可能にする。従来のクロマトグラフィーでは、異なったカラムを使用することが必要とされる。
【0154】
加えて、この新しいクロマトグラフ500では、サンプルの流れがチャンネル530に沿って自由に流れるから、損傷を伴うことなく、生物学的な細胞、分子および他の物質を分離し、処理するために使用することができる。クロマトグラフ500は、分析すべき様々な種の流出時間を制御することができる。また単一のカラム501の中で陰イオンおよび陽イオンの分離処理を組み合わせて実施できるため、製造、運転および保守の全体のコストを低減することができる。
【0155】
他の実施例において、電極524,526を横切る電圧勾配が変化されて、電圧は調節され、パルス化され、または所望のパターンにプログラムされる。その結果、分析される種の流出時間は、該種の導電性/時間グラフの間の重なりが最小限になるように変化させることができる。即ち、種の溶出時間を変化させることによって、検出器511での様々なピーク間の分離を増大し、種の区別および分析を容易にすることができる。
【0156】
更に別の実施例においては、検出器511に加えて、イオン選択電極がセル506の一部として用いられる。このイオン選択電極は、特定のイオンに対して優先的に感受性であり、種々の形態のポーラログラフィー、サイクリックボルタンメトリー、X線蛍光、並びにUV、可視、振動、赤外のような分光計に由来する電気化学セルで形成されてもよい。
図27は、セル502の線25−25に沿った断面図であり、セル502の他の例を示している。この例において、セル502は一般に円筒形状であり、一般に円形の断面を有している。電極524,526の組成と同じ組成を有する四つの電極540〜543が、容器545の内面に結合されており、四つの適切な絶縁分割器546〜549によって分離されている。これら電極540〜543の夫々は、電源の対応した極に接続されている。図示のように、電極540,541はアノードとして作用し、電極542,543はカソードとして作用する。一つの電極対(例えば540,542)を横切る電圧勾配は、他の電極対(例えば541,543)を横切る電圧勾配とは異なってもよい。円筒形状は、高圧運転が必要とされる場合に有利であろう。
【0157】
図28および図29は、セル502と同じ原理に従って動作するが、内部チャンネルの形状の点で異なるカラムセル600を図示している。中央チャンネル530(図24)は直線的であるのに対して、セル600は、サンプルが流れる蛇行したチャンネル601を限定している。チャンネル601は、狭いけれども可能な限り長く作られており、必要とされるサンプルの量を最小限にするために、スペースの小さい長い経路が与えられている。
【0158】
セル600には一般に、二つの反対側に配置された実質的に平坦なプレートまたは基板603,605が含まれており、これらプレートは所定の厚さの絶縁層606によって分離されている。第一のプレート603は蛇行した溝607を含み、また第二のプレート605は同様の蛇行した溝608を含んでいて、二つのプレート603,605を一緒に連結したときに、溝607,608および絶縁層606の一部は蛇行流路を限定したチャンネル601を形成する。チャンネル601は、サンプル流のための一つの入口610及び一つの出口611を有している。
【0159】
薄い導電性シート616は、導電性シート524(図24)と同様の組成を有しており、溝607の内面に結合されている。同様の導電性シート617が、溝608の内面に結合されている。これらの導電性シート616,617は、D.C.電源の極に接続される。
【0160】
特にクロマトグラフカラムに関してここに開示される教示は、電気化学的増強器または濃縮器を設計するために用いることもできる。電気化学的増強器は、イオンクロマトグラフィー、イオン選択電極作動パルスポーラログラフィーのような種々の分析技術の何れかを用いた引き続く測定のために、希釈イオン溶液を濃縮するために用いられる装置である。
【0161】
図30に示した増強器650には、一般に、クロマトグラフについて上述したセルに類似のセルが含まれている。多孔性のアノード及びカソードは、容量性の充電相の間に、比較的希薄な溶液652からイオンを除去する。イオンは、負荷された電解(セル電圧勾配)の力の下で希薄溶液から除去され、電極の表面に形成された電気二重層に保持される。その後、容量性の放電または再生相の間に、イオンはより濃縮された溶液654中に回収される。容量性の充電相および放電相は、CDIシステム、セルおよび方法に関して上記で述べた通りである。
【0162】
特定の分析技術の検出限界未満のレベルで希薄溶液中に存在する種については、それらが検出可能になるレベルまで濃縮することができる。イオンが放射性であれば、それは多孔性電極上に集積したときに測定することができる。同様に、電極上に集積する重金属または同様の物質をモニターするために、X線蛍光を用いることができる。電極上または濃縮溶液中に集積する放射性物質の放射線をモニターするために、ガンマ線検出器655を用いることができる。分析器具または測定器具660は、増強器650の出力側で流出溶液に接続されており、更に集積したデータを処理して増強器650の動作を制御するコンピュータ665、希薄溶液652を増強器650の中に抜き取るポンプ667、増強器650から分析機器660への流出溶液の流れを制御するバルブ668、および増強器650によりイオンが除去または脱イオンされた溶液を保存するタンク680への流出物の流れを制御するバルブ669に接続されている。
【0163】
図31,32は、フォトリソグラフィーによって作製された単一のモノリシックな薄膜電極700を示している。電極700は、非常に高い比表面積を有しており、上記種々の電極を置き換えることができる。例えば、電極700は電極44(図4A)、電極253,254(図11B)、電極314(図15)、電極357(図17)、電極419,420(図19)、電極465,466(図21)、ベッド482,487(図22)、シート524,526(図24)、電極540−543(図27)およびシート616,617(図29)を置き換えることができる。
【0164】
電極700は、何れかの導電性金属、例えばチタン、銅、白金、タングステン、イリジウム、ニッケルまたは銀でできた薄い平坦な多孔質のシート、スクリーンまたは膜701として示されている。金属は、処理される溶液に対して耐食性であるように選択される。従来のフォトリソグラフィーを用いて、膜701の表面に非常に微細な孔の列702〜705が形成されている。四つの孔702〜705だけが示されているが、もっと多くの孔を膜701の全表面に亘って形成してもよい。膜701の表面積を増大するように孔の数を最適化するのが望ましいであろう。一つの例において、一つの孔の直径は約0.1 μであり、また膜701は1cm2当たり約1010個の密度を有するであろう。膜701が約25ミクロンの厚さを有し、また孔702〜705が膜701の厚さの殆どを貫通するとすれば、膜701の容量的比表面積は、約64m2/cm3であろう。もし、電極が10枚の膜のスタックを含むとすれば、電極の容量的非表面積は約640m2/cm3であり、炭素エアロゲル電極のそれに匹敵するものである。
【0165】
単一の膜701からなる電極700において、孔702〜705は膜701を貫通してもしなくてもよい。膜701は薄い平坦なスクリーンとして示してあるが、種々の構造を取ることもできる。孔702〜705は、円形の断面を有する円筒形、正方形、または如何なる所望の形状であってもよい。或いは、孔702〜705は相互に連結した溝にエッチングしてもよい。
【0166】
図33は、一般に同一の膜716〜722のスタックを含む他の電極715を示しており、これにはスペーサ725〜730のスタックが交互に挿入されている。膜716〜722は多孔質であり、膜701(図31)と同様の構造を有している。膜716〜722のスタックを通して溶液を浸潤させるために、一つの孔734で示すように、孔は膜716〜722の全体の深さに亘って広がっている。スペーサ725〜730は薄く多孔性で、金属製または非金属製の何れであってもよい。一つの実施例において、スペーサ725〜730は濾紙からなっている。
【0167】
電極715の容量比表面積が炭素エアロゲル電極のそれに近づくように、電極715を形成する膜の数を選択することが可能であり、また一定の応用においては、炭素エアロゲル電極を置換することも可能である。本発明の電極設計の更なる利点は、構成膜の数を増大または減少させることによって、電極の望ましい容量比表面積を正確に調節することが可能なことである。図31〜図33に記載した膜はまた、グラフィックシートとも称される。
【0168】
図34は、ティーバッグ電極と呼ばれる、電極750の更に別の実施例を示している。電極750には、伝導性材料753を含み且つ拘束する閉じた誘電体多孔性バッグ752が含まれている。導電性材料753は導電性粉末、特に、ここに列挙した導電体の何れか一つ、例えば炭素エアロゲルであってよい。導電体またはワイヤ754は、導電性材料753に接触してバッグ752の内部に延出している。使用時には、ワイヤ754はD.C.電源の一つの極に接続される。
【0169】
使用に際し、一つのティーバッグ電極750は、処理または分析すべき流体750を収容した容器755の中に落下される。この最も基本的な例において、電極750は正に帯電してアノードとして作用するのに対して、容器755は負に帯電してカソードとして作用する。種々のCDIシステムおよびセルに関連して上述したように、電極750はバッグ750の内側の流体756に含まれる陰イオンを電気吸着する。
【0170】
所望のイオン濃度に到達したら、バッグ752を流体756から除去して処理する。一つの例においては、濃縮されたイオンは有害であり、バッグ752は処分される。他の例においては、バッグ752の中に捕捉された濃縮イオンは、放出され、分析および処理することができる。従って、電極750は幾つかの用途を有しており、該用途には容量性脱イオンおよびイオン濃縮が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
同じ極性の二以上のティーバッグ電極もまた、反対極性を有する容器と共に使用することができる。この容器は電気的に中性であってもよく、また幾つかのティーバッグ電極750,760はアノードとして作用する一方、他のティーバッグ電極762,764はカソードとして作用する。この特別の例示において、アノードおよびカソードは相互介在されている。しかし、アノードおよびカソードは種々の異なった配列で配置することができる。例えば、アノードは外側の円形パターンで配置する一方、カソードについては同軸の内側円形パターンで配置することができる。他の例において、容器は負に帯電されてもよく、後者の例で説明した同軸的な円形パターンでカソードとして用いられる。また、他のパターンを選択してもよい。多くの応用において、アノードおよびカソードの数は同じであるが、この数が等しいことは常に必要とされるものではない。
【0172】
図35は、流体をサンプリングするための容器またはパイプの中の流体の流れの中に置かれた一対のティーバッグ電極750,762を図示している。このサンプリングは、電極750,762を横切る制御された電圧の印加によって、所定のまたはプログラムされた時間間隔で周期的に行うことができる。
【0173】
図36は、電気透析セル800を示しており、これにはカソード805とアノード807の中間に配置された二極性電極802が含まれている。二極性電極802には、導電性バリア811の一方の側に配置された二つの膜、スクリーン、プレート等808,810が含まれている。膜808、810は、上記で述べた材料、例えば炭素エアロゲルまたは多孔性炭素に類似した、何れかの高比表面積材料であり得る。二極性電極802は中央分割体として作用して、カソード区画814およびアノード区画815を定義する。
【0174】
使用において、電流は、アノード807からアノード区画815、二極性電極802およびカソード区画814を通って、カソード805へと流れる。例示だけの目的でいえば、流体、即ち、セル800によって処理されるべき溶液または電解質は、塩または海水(NaCl+H2O)である。溶液は、破線で示した矢印の方向に、カソード区画814からアノード区画815へと流れる。
【0175】
カソード区画814内においては、カソード805での電極反応は水素(H2)の発生であるのに対して、塩素イオン(Cl-)は二極性電極802の方に集積して膜808により電気吸着される。これによって、水酸化ナトリウム(NaOH)のアルカリ溶液がもたらされ、次いでこれはアノード区画815へと流れ、そこでナトリウムイオン(Na+)は二極性電極802の方に集積し、フィルム810によって電気吸着される。アノード807での電極反応は酸素(O2)の発生である。流出溶液は精製され、脱塩された水(H2O)である。
【0176】
セル800の重要な利点は、塩、即ち、NaClまたは種々の放射性塩を溶液から除去し、二極性電極802の中に固定または保存できることである。一つの実施例において、二極性電極802は除去して処分すればよい。他の実施例においては、二極性電極802は別の場所に取り外して再生することができる。更に別の実施例においては、導電性バリア811が取り外され、陽イオン(即ちナトリウムイオン;Na+)および陰イオン(即ち塩素イオン;Cl-)が、塩(即ち水酸化ナトリウム;NaOH)を形成し、これは多孔性フィルム808,810上に沈殿し、次いで除去され、処分されるか或いは更に処理される。
【0177】
上記のような適用は、特に、放射性廃棄物の処理において重要である。例えば、CsCl(137Cs)のような放射性塩は、炭素エアロゲル膜808,810の上に沈殿させればよい。次いで、これらの膜808,810をクラッシュすることにより、或いは炭素を酸化して二酸化炭素を形成することによって、これら膜の容積を顕著に減少させることができる。
【0178】
図37は、移動電極852を用いた容量性脱イオンシステム850の模式図である。容量性脱イオンシステム850は、一般に、アノードセル853とカソードセル854との間を移動する移動電極852を含んでいる。移動電極852には、ワイヤ、シート、流動ビーズのような導電体857が含まれており、これは複数のホイール858〜863に支持され、動かされる。アノードセル853には容器870が含まれており、これは移動電極852の導電体に対して正のポテンシャルに保持されている。カソードセル854には容器872が含まれており、これは導電体857に対して負のポテンシャルに保持されている。一例として、アノード容器870と移動導電体857との間のポテンシャル差は約1.2 ボルトである一方、カソード容器872と移動導電体857との間のポテンシャル差は約1.2 ボルトである。
【0179】
この特別の例において、アノードセル853には、処理すべき溶液または流体880が含まれている。しかしながら、他の応用において、この溶液はカソードセル854に含まれていてもよい。運転において、電流は容器870〜流体880を通して導電体857へと流れる。結局、溶液中の正に帯電したイオンは導電体857へと移動し、その上に電気吸着される。これらイオンは導電体857に沿ってカソードセル854へと運ばれる。そこでは、電気吸着された陽イオンが負に帯電した容器872の方に引かれて、導電体857から溶液881の中へと放出される。
【0180】
CDIシステム850の一つの利点は、移動電極852の必要とされる実際の表面積が比較的高いことは必要とされないこと、即ち、炭素エアロゲルのように高くなくてもよいことである。移動電極852を移動させる速度を増大させることによって、単位時間当たりに溶液880が遭遇する表面積を増大させることが可能である。その結果、多孔性度の高い電極を用いずに、CDIのようなプロセスを行うことが可能である。
〔商業的応用〕
本発明によるセルおよびシステムを用いることによって、体液および水流を含む流体から、以下のおよび他の不純物およびイオンを除去し、またセルを実質的に再生することが可能である。
【0181】
1.非酸化性の有機および無機陰イオン。無機陰イオンには、OH-、Cl-、I-、F-、NO3-、SO42-、HCO3-、CO32-、H2PO4-、HPO42-、およびPO43-が含まれる。この場合、運転のメカニズムは静電気的二重層の充電である。この目的のためには、ガス発生を回避するために、電極を横切る最終ポテンシャルを溶媒の電気分解に必要とされるよりも低く維持するのが望ましい。最適なポテンシャルは、正規の水素電極(NHE)に対して1.0 〜1.2 ボルトの範囲である。一般に、水処理について推奨されるポテンシャルの範囲は、0.6 〜1.2 ボルトにある。
2.Li+,Na+、K+、Cs+、Mg++、Ca++のような非還元性陽イオン。ここでも、運転のメカニズムは電気二重相の充電である。
3.Cu++、Fe++、Pb++、Zn++、Cd++のような還元性陽イオン。この場合、運転メカニズムは電着である。
4.還元性陰イオン。
5.バクテリア、ウイルス、酸化物粒子、泥、埃等のようなコロイド粒子。この場合、運転のメカニズムは電気泳動である。
6.炭素複合電極44への有機分子の化学吸着。この吸着プロセスは、比較的不可逆的であろう。この場合の再生には、吸着された有機物(即ち、PCB)を破壊する目的で、強力な酸化剤の使用が含まれるであろう。
【0182】
特に、本発明のシステムおよびセルは何れかの金属の電着を可能にし、この金属には銀、金、白金、イリジウム、ロジウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、血液のような体液からの汚染物の除去を可能にする。これらの汚染物は、有機および無機のイオンから、ウイルスを含む微小粒子までに亘っている。
【0183】
本発明の分離プロセスおよびシステムには、下記の事項を含む幾つかの重要な応用が含まれる。
【0184】
1.酸、塩基または他の同様の二次廃棄物を発生することなく、種々のイオンを廃水から除去すること。この応用は、放射性核種が関与する場合に特に重要であり、ここでは低レベルの放射性無機物質を除去するために、本発明の容量性脱イオンプロセスが用いられるであろう。
2.原子力発電所および火力発電所におけるボイラー水の処理。このような処理は、点食、応力腐食割れ、および熱移転表面のスケール付着を防止するために不可欠である。このようなプロセスは、電力が容易に入手でき、またスペースが限られることによりイオン交換樹脂の再生に必要な化学薬品の在庫が制限される場所、特に原子力船および原子力潜水艦については魅力的である。
3.半導体を処理するための高純度水の製造。他の化学的不純物を添加することなく導電性をなくすことに加えて、このシステムは電気泳動によって小さな懸濁している固体を除去することができる。更に、有機不純物は炭素に吸着される。
4.家庭用の電気駆動の水軟化器。CDIシステムは、塩化ナトリウムの導入なしで家庭用飲料水を軟化させ、また再生のために塩の添加を必要としないであろう。
5.農業用灌漑水からの塩の除去。
6.海水の脱塩。
【0185】
本発明のCDIシステムを用いることによって、以下の物理化学的プロセスにより、流体の流れから有機および無機の汚染物および不純物を除去することが可能となった。この物理化学的プロセスは、水または何れか他の誘電体溶媒からの、有機イオンまたは無機イオンの可逆的な静電気的除去;他の何れかの吸着プロセス(ポテンシャル下での金属体積、化学吸着および物理吸着を含むが、これに限定されない)による、有機または無機イオンの可逆的もしくは不可逆的な除去;電着(電気化学的還元または電気化学的酸化が含まれ得る)による、有機若しくは無機の何れかの不純物の除去;小さな懸濁固体(コロイドを含むが、これに限定されない)の、電極表面における電着およびトラップである。誘導された電気双極子は、印加された電界によって、強制的に電極表面へ向かわせられる。
【0186】
CDIシステムおよびプロセスのより特殊な応用には、ガススクラビングカラムを補助するために容量性脱イオンが用いられる何れかの適用が含まれる;例えば、CO2がガス流から水流の中へ除去されると、これはHCO3- およびCO32-へと変換される。これらのイオンは、容量性脱イオンによってスクラビング溶液から除去できるであろう。このような応用には、印加される負荷の均一化を補助するための、容量性脱イオン器の何れかの大スケールの並列使用が含まれる。何故なら、本発明は同時にエネルギー保存装置として働くこともできるからである。他の応用には、容量性脱イオンおよびイオンクロマトグラフィーの原理を組み合わせた分析器具、並びに炭素エアロゲル電極(モノリシックまたは粉末ベッド)上でのイオン吸着に基づくクロマトグラフィー装置が含まれる。
【0187】
本発明のクロマトグラフは種々の適用を有しており、その中には次のものが含まれる。1.アミノ酸、ペプチド、タンパクおよび関連化合物の分離。2.糖鎖(炭水化物)および糖鎖誘導体の分離。3.脂肪酸および芳香族酸のような種々の有機酸の分析。4.脂肪族アミン、複素環アミンおよび芳香族アミンの分離。5.核酸および成分の分離。6.プリンおよびピリミジン塩基、並びにモノ−、ジ−およびトリ−リン酸ヌクレオチドのような、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび塩基の分離。7.複合および非複合形態のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の分析。8.ある種の希土類元素の分離。9.塩化物、臭化物およびヨウ化物のようなハロゲン化物の分離。10.複合ポリリン酸塩混合物、および低濃度のリン陰イオン、チオリン酸塩、イミドリン酸塩を含む混合物のような、オキシリン陰イオン(phosphorous osyanion)の分離。11.血液中のヘモグロビンからのAIC成分の分離。ミズノに付与された米国特許第5,294,336 号を参照されたい。12.生物学的因子からのヒト血漿共凝固因子VIIIの分離および単離。ヘリングに付与された米国特許第4,675,385 号を参照されたい。13.ヘモグロビンの分析。ヤスダ等に付与された米国特許第5,358,639 号を参照されたい。14.血液中の種々の成分の単離(HIVが含まれるが、これに限定されない)。
【0188】
増強器は、例えば、環境保護法に適合することを証明するために、血液および他の体液、並びに有機塩および無機塩の水溶液を含む種々の流体の分析に用いることができ、また印刷回路基板の製造に用いられるメッキ浴を制御するために使用することができる。
以上述べた本発明の実施例の説明は、例示および説明のために与えられたものである。これらの記載は他の態様を排除するのもではなく、本発明をこれらの記載そのものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】従来技術の脱塩装置の概略図である。
【図2】図1のモデル脱塩システムに用いられたセルを拡大して模式的に示す等尺大の正面図である。
【図3】電気化学的セルの模式的拡大断面図である。
【図4A】図3の電気化学的セル用に適合された、容量性電極を大きく拡大して示す平面図である。
【図4B】図4Aの容量性電極に関連して用いられるゴムガスケットを、大きく拡大して示す展開図である。
【図5】容量性脱イオンの第一の態様(図3に示す一つの電気化学セルを用いた再生システム)を示すブロックダイアグラムである。
【図6】容量性脱イオン(図5の再生システム)の操作を示す三つの重なったタイミングチャートである。
【図7】容量性脱イオンの第二の態様、即ち、二つの平行な電気化学セル(夫々は、図3のように多くの電極のスタックで形成されている)を用いた再生システムを示すブロック図である。
【図8A】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図8B】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図8C】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図9】図7に示したシステムのエネルギー節約モードを示すタイミングチャートである。
【図10】脱イオン(再生システム)の第三の態様を示すブロック図である。
【図11A】電気化学セルの他の態様の模式的等尺図である。
【図11B】電気化学セルの他の態様の部分拡大図である。
【図12】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図13】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図14】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図15】他の電極を大きく拡大して示す平面図である。
【図16】図15の電極の拡大側面図である。
【図17】カートリッジを模式的に示す、等尺大の部分断面図である。
【図18】他の電極の平面図である。
【図19】図18の電極の線19−19に沿った横断面図である。
【図20】更に別のカートリッジまたはセルの横断面図である。
【図21】電気的吸着媒体で形成したセルの側面図である。
【図22】電気化学的に再生されたイオン交換プロセスにおいて用いるための、複合電極を含んだ他のセルの横断面図である。
【図23】電気吸着イオンクロマトグラフの第一の態様を示すブロック図である。
【図24】図23のクロマトグラフに用いられるセルの、長手方向の横断面図である。
【図25】図24のセルの第一の態様の、線25−25に沿った断面図である。
【図26】図23のクロマトグラフによって分離された三つの種A,BおよびCの溶出を示す、導電性一時間のグラフである。
【図27】図24のセルの第二の態様を、線25−25に沿って示す断面図である。
【図28】クロマトグラフに用いるセルの他の態様を示す切り欠き平面図である。
【図29】図28のセルの線29−29に沿った断面図である。
【図30】増強装置のブロック図である。
【図31】フォトリソグラフィーで作成された単一のモノリシック薄膜電極の等尺図である。
【図32】図31の電極700の、線32−32に沿った断面図である。
【図33】他の電極の側面図である。
【図34】ティーバッグ電極の模式図である。
【図35】容器内の流体の流れの中に配置された、図34の一対のティーバッグ電極を示している。
【図36】電気泳動セルの模式的断面図である。
【図37】可動性電極を用いた容量性脱イオンシステムの模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、流体および他の水性プロセス流から、イオン類、汚染物および不純物を除去するための電気化学的分離方法および装置、並びに除去されたイオンを再生の際に溶液中に戻すための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質からのイオン類および不純物の除去は、これまで、一般的にはイオン交換、逆浸透、電気透析、電着および濾過を含む種々の従来プロセスを用いて達成されてきた。他の方法も提案され、従来の分離プロセスに伴う問題と取り組まれてきた。しかしながら、これらの提案された方法は完全に満足できるものではなく、全般的な商業的成功に適合し、または完全に受け入れられるようなものではなかった。このような提案されたイオン分離方法の一つは、多孔質炭素電極の大きな表面でのイオンの周期的な吸着および脱着に基づいて水を脱塩するためのプロセスである。
【0003】
従来のイオン交換プロセスでは、再生プロセスにより、廃棄のための処理を行わなければならない大量の腐食性二次廃棄物が発生する。現存の再生プロセスは、典型的にはカラムをイオンで飽和させた後に、濃縮された酸溶液、塩基溶液または塩溶液をカラムを通してポンピングすることにより行われる。これら機械操作の保守手段は、脱イオンプロセスの周期的な中断を伴うと共に、著しい二次廃棄物を生じる。イオン交換体の再生からもたらされる二次廃棄物には、汚染された酸、塩基および/または塩と共に、典型的には使用された陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂が含まれている。
【0004】
幾つかの場合には、放射性の二次廃棄物が極めて有害であり、深刻な環境問題を起こす可能性がある。例えば、プルトニウム処理の際に、樹脂およびHNO3の溶液はPuO2++および他の放射性アイソトープで汚染されるに至る。採掘された資源の二次廃棄物を処分する高価で且つ増大しつつあるコストを考慮すれば、二次廃棄物の量を減少させ、或る場合には無くすことについて、未だ満たされていない顕著な必要性が存在している。
【0005】
もう一つの例は、電気メッキおよび金属仕上げ工業におけるような、工業的目的でのイオン交換プロセスの使用である。この工業が現在直面している主要なジレンマは、電気メッキプロセスからもたらされる汚染されたリンス溶液を処分するための困難性、費用問題、および環境上の重要性に関するものである。汚染されたリンス溶液のための典型的な処理法方は、イオン交換プロセスである。
【0006】
イオン交換に伴う問題を提示する他のプロセスの例には、住宅用水の軟化および核燃料および化石燃料プラント用のボイラー水の処理が含まれる。このような水の軟化装置は、該システムによって製造された飲料水中に比較的高濃度の塩化ナトリウム溶液をもたらす。従って、再生の際、導入された過剰の塩化ナトリウムを除去するために、逆浸透フィルターのような追加の脱塩装置が必要とされる。
【0007】
従って、一定の応用において、二次廃棄物を完全に除去できなくても、これを有意に減少させる、脱塩および再生のための新しい方法および装置について、甚大かつ増大する必要性が存在している。この新規な方法および装置は、無機もしくは有機の何れかのイオンまたは双極子をも、イオン導電性溶媒(水、有機溶媒または無機溶媒)から分離できるものでなければならない。例えば、リチウム電池および他のエネルギー保存機器に用いるための、炭酸ポリプロピレンのような有機溶媒を精製するプロセスを使用できるものでなければならない。更に、蟻酸イオンまたは酢酸イオンようなイオンを水流から除去するためのプロセスを使用できなければならない。
【0008】
この新規な方法および装置は、電力および化石電力プラントの夫々のボイラー水の処理、半導体プロセス用の高純度水の製造、農業灌漑水からの有毒および危険なイオンの除去、並びに海水の脱塩を含むの種々の用途において制限なく適用可能でなければならない。
従来の逆浸透システムにおいて、水は強制的に、電解質からイオンおよび不純物を分離するためのフィルターとして働く膜に通される。逆浸透システムは、膜を通して水を移動させるためにかなりのエネルギーを必要とする。水の流れが膜を通過すると、膜を横切る顕著な圧力低下が生じる。この圧力低下は、該プロセスによる殆どのエネルギー消費の原因である。また、膜は経時的に劣化するので、費用がかかり且つ面倒な保守作業のためにシステムを閉鎖することが必要になる。
【0009】
従って、著しい圧力低下を起こさず、顕著なエネルギー経費を必要とせず、または膜を取り替えるためにサービスの中断を必要としない、逆浸透システムの代替えとなる、脱イオンおよびイオン再生のための新規な方法および装置に関する必要性が存在している。
【0010】
イェンセン(Jensen)に付与された米国特許第3,883,412 号には、水を脱塩する方法が記載されている。多孔性炭素電極の広大な表面におけるイオンの周期的な吸着および脱着に基づく水の脱塩プロセスに関する他のイオン分離方法が、「水の脱塩のための電極吸着プロセス」と題するアラン・エム・ジョンソン等による塩水研究開発庁の進捗報告第516 号、1970年3月、合衆国内務省PB 200 056(U.S.Department of the Interior PB 200 056)[内務省報告(Department Interior Report)]に記載され、更にはジェイ・ニューマン他による「多孔性炭素電極による脱塩」と題する論文(ニューマン論文:J.Electrochem.Soc.:Electrochemical Technology,March 1971,pp.510-517)に記載されている。また、これに匹敵するプロセスが、NTIS研究開発進行報告OSW-PR-188号、ダニー・ディー・コーデル他、「炭素電極を用いた水の電気化学的脱ミネラル化」、1966年5月に記載されている。
【0011】
上記の内務省報告およびニューマン論文は、活性炭素電極を用いた脱塩の電気吸着現象のための研究結果を概説し、また容量モデルでの可能なイオン吸着調節の理論について議論している。図1に示したこのモデル脱塩システム10は、図2に更に示すように、陽極および陰極の交互のスタックを含んでおり、これは導電性のスクリーン(または篩)に接触した炭素粉末または粒子のベッドから形成されている。夫々のセル12は、複数のカソードスクリーン16を挟んだ複数のアノードスクリーン14を含んでおり、夫々のアノードスクリーン14は、前処理された炭素粉末の第一および第二のベッド18,20によって、隣接するカソードスクリーン16から分離されている。これらの二つの炭素粉末ベッド18および20は、セパレータ21によって分離されており、セル12のアノードおよびカソードを形成している。運転においては、原料水が、電極スクリーン14,16の表面に対して垂直に、セル12の軸方向に沿って流され、システム10によって廃液および生成物に分離される。
【0012】
しかしながら、このモデルシステム10には次のような幾つかの欠点がある。
1.炭素粉末ベッド18および20は電極として用いられており、「固定化」されていない。
2.原料水は、これら電極スクリーン14および16、並びにセパレータ21を通して軸方向に流れなければならず、これによって著しい圧力低下および大きなエネルギー消費が起こる。
3.炭素ベッド電極18および20は極めて厚く、これを横切って大きなポテンシャル低下が発生し、これは運転の際の低い除去効率および高いエネルギー消費として現れる。
4.炭素粒子は「タッチする」、即ち、隣接する粒子は相互に接触するのではあるが、これらは密接かつ完全に電気的に結合するわけではない。従って、実質的な電気抵抗が発生し、これはプロセスの非効率性に著しく寄与する。エネルギーは浪費され、電極の表面積が効率的に利用されない。
5.炭素電極18および20は比較的低い比表面積を有している。
6.炭素粉末ベッド電極18および20は、サイクル使用に伴って迅速に劣化するので、継続的な保守および熟練者による管理が必要とされる。
7.モデルシステム10は、一つの特別の応用、即ち海水の脱塩のために設計されており、他の応用に適用可能とは思えない。
エネルギーを保存する用途のために、種々の多孔質炭素電極(炭素エアロゲル電極を含む)に基づく多くのスーパー蓄電器(supercapacitor)が開発されており、下記の文献に例示されている:
・「二重層電気蓄電器」、日本電気株式会社、日本特許出願第91-303689 号、05211111
・「電気二重層蓄電器」、松下電器産業株式会社、日本特許出願第83-89451号、59214215
・1993 年5月16-21 日にハワイ州ホノルル市で開催された第183 回電気化学学会会議で提出された、タブチ・ジェイ、キビ・ワイ、サイトウ・ティー、オチ・エイ、「活性化炭素の電気化学的性質/新規な密封充電式バッテリーおよびスーパー蓄電器のための炭素複合体」1
・「電気二重層蓄電器、炭化発泡フェノール樹脂からなる多孔質極性電極の使用」、三井石油化学工業、日本特許出願第3,141,629号
・デルニック・エフ・エム、インゲルゾル・ディー、フィルジッヒ・ディー、「炭素発泡電極の二重層蓄電器」、SAND-93-2681、サンディア・ナショナル・ラボラトリー、二重層蓄電器および同様のエネルギー保存システムに関する国際セミナー報告、1993年12月6-8日・メイヤーズ・エス・ティー、ペカーラ・アール・ダブリュー、カシュミッテル・ジェイ・エル、「エアロ蓄電器:電気化学二重層エネルギー保存装置」、電気化学会誌、140 巻(2)第446-451 頁(1993年2月)
・カシュミッテル等に付与された米国特許第5,260,855号
【0013】
これらのエネルギー保存装置は、電解質流および殆どの必要な膜が、電極を物理的に分離するように設計されている。ウエスリング等が米国特許第4,806,212 号に記載したように、電気分解セルのための他の電極材料、例えば活性化炭素粉末および適切なポリマーバインダの複合体が開発されている。このような材料は、極めて大きな比表面積(600 m2/gm)を有する活性化炭素粉末から作られたにもかかわらず、表面の大きな部分はバインダによって塞がれている 従って、イオン交換カラムの再生に伴う二次廃棄物を完全には除去できないとしても、これを顕著に減少する能力に加えて、プロセス流の顕著な圧力低下を生じず、また著しいエネルギー経費を必要としない、脱イオンおよび再生のための新規な方法および装置に対する未だ満たされない重要な必要性が存在している。
【0014】
更に、この装置に用いられる夫々の電極は、構造的に安定で、多孔性で且つモノリシックな固体で作成されたものでなければならない。このようなモノリシック電極は、処理すべき流体の流れに乗って運ばれることにより容易に喪失されてはならず、また繰り返し使用することによって迅速に劣化してはならない。これらの電極は、非常に大きな比表面積を有していなければならない。それらは比較的薄く、最小限の運転エネルギーしか必要とせず、且つ高い除去効率を有していなければならない。この新規な方法および装置は高度に効率的でなければならず、また種々の用途(海水の脱塩を含むが、これに限定されるものではない)に使用するために適用可能でなければならない。
【0015】
容量性脱イオンおよび再生のための方法および装置に使用するために、炭素系材料よりも中毒および劣化を起こし難い、新しい種類の電気吸着媒体を提供することは非常に望ましいであろう。
【0016】
電気吸着媒体を電解質および化学再生剤に継続的に直接露出させることは、電極を更に劣化させることになるであろう。従って、電気吸着媒体を電解質および化学再生剤の損傷作用から保護し、化学再生剤を必要としない新しい分離プロセスが必要とされている。
イオン交換クロマトグラフィーは、交換物質に対する溶質イオンの異なった親和性に基づいたイオン分離を含む分析方法である。これは、イオン交換物質が固層をなしている液層/固層技術である。イオン交換分離において、固層またはカラムは通常、細かく粉砕されたイオン交換物質を充填したベッドである。移動層は、バッファ、中性塩または有機溶媒のような一以上の添加物を含んだ、水のような溶媒である。
【0017】
イオン交換クロマトグラフィーにおいて、イオン交換抑止カラムは定期的に再生されなければならない。これは時間を要する操作であり、ストリッパーカラムを再生している間は当該装置を使用することができない。再生の頻度を最小限にするために、分離カラムに対する抑止カラムの容量比はできるだけ小さく維持しなければならず、典型的には1:1である。これによって、必要とされるイオン交換物質の費用は実質的に2倍になる。
【0018】
ロス・ジュニアに対して付与された米国特許第4,672,042 号には、イオンクロマトグラフィーシステム一例が記載されている。二つの分離交換カラム、即ち、陰イオン交換カラムおよび陽イオン交換カラムが必要とされ、これによってイオン交換または必要なパッキング材料の費用が倍増する。固体のイオン交換カラムパッキングが使用され、これはクロマトグラフィーの適用を制限し、また単一の中空カラムに比較して、運転に著しく高いエネルギーを必要とする。
【0019】
固層のための適切なイオン交換組成を選択するために幾つかの試みがなされてきた。例えば、バレット等に付与された米国特許第5,324,752 号、ヘリングに付与された米国特許第4,675,385 号、ミズノ等に付与された米国特許第5,294,336 号、シラサワに付与された米国特許第4,859,342 号、ブラッドショウ等に付与された米国特許第4,952,321 号および第4,959,153 号が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、これらの装置および方法は特定の用途のために特別に設計されており、一つのクロマトグラフを種々の用途に一般的に使用することはできない。加えて、これら従来の装置は複数のカラムの使用を必要とする。
【0021】
従って、陰イオンおよび陽イオン型の同時クロマトグラフィーに一つのカラムを使用する、融通の利くクロマトグラフおよび運転方法についての重要かつ未だ満たされていない必要性が存在している。この新しいクロマトグラフは、分析すべき種の溶出時間を制御しなければならず、全体の製造、運転および保守のコストを低減するものでなければならず、化学的再生ではなく電気的再生を使用するものでなければならず、また陰イオンおよび陽イオンの両者について同じカラム(またはセルのスタック)を使用するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一つの態様において、この分離プロセスまたは分離装置は、容量性脱イオン(CDI)と称する、水の脱イオンおよび廃水処理のために用いられる。従来のイオン交換プロセスとは異なり、システムの再生のためには酸、塩基または塩溶液を問わず化学薬品は必要とされず、その代わりに電気が用いられる。
【0023】
陰イオンや陽イオン、電気双極子および/または懸濁粒子を含んだ処理すべき電解質の流れは、電気化学的容量性脱イオンセルのスタックを通して流れる。これらのセルは、格別に高い比表面積(例えば400-1000m2/gm)を有する多くの炭素エアロゲル電極を含んでいる。セルを分極させることによって、非還元性で且つ非酸化性のイオンは流体の流れから静電的に除去され、該電極の表面に形成された電気二重層に保持される。幾つかの金属陽イオンは電着によって除去される。電気二重層はまた、電極の方に移動して電極にトラップされる。小さな懸濁粒子は電気泳動によって除去される。従って、該セルから出る流体の流れは精製される。
【0024】
本発明のCDIプロセスにおいては、エネルギーが静電気学的に消費されて塩および他の不純物が流体から除去される。その結果、エネルギー効率は従来のプロセスよりも桁違いに大きい。更に、容量性脱イオンセルにおける圧力低下は、モノリシックな微孔性固体(即ち電極)の平行表面の間のチャンネル流によって検出される。従って、逆浸透プロセスで透過性膜を通して水を強制的に通すために必要とされる圧力低下と比較すると、この圧力低下は微々たるものに過ぎない。
【0025】
CDI分離システムの一つの特徴は、電極の分離のために、高価なイオン交換膜を必要としないことである。電極対の全てのアノードおよびカソードは、並列に接続される。このシステムはモジュール式であり、該システムの容量は、多くの電極対を含むようにセルを拡大することによって、所望の如何なるレベルにでも増大させることができる。
【0026】
本発明の幾つかの利点には次のことが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
1.圧力勾配によって水を強制的に膜に通し、或いはパックされたベッドを通して流体が流れる従来のプロセスとは異なり、CDI分離方法およびシステムでは、膜またはパックされたベッドのような何らかの多孔質媒体を通して電解質が流れる必要はない。本発明のシステムにおいて、電解質は二つの隣接する平坦な電極(これらは幾何学的に平行である)の間に形成された開放チャンネルの中を流れる。結局、圧力低下は従来のプロセスよりも遥かに小さい。流体の流れは、これらの開放チャンネルを通しての重力供給であってもよく、またはポンプを用いることもできる。
【0028】
2.CDIシステムは膜を必要としない。このような膜は厄介で且つ費用がかかり、過剰圧を加えると破裂し、容量性セルの内部抵抗を増大し、またシステムのエネルギー効率を低下させる。
【0029】
3.CDIシステムにおける電極は固定化された吸着媒体、例えばモノリシック炭素エアロゲルで構成されており、流体の流れに随伴することはない。従って、随伴および腐食による材質の劣化は、従来のパックされた炭素カラムにおけるよりも顕著に少ない。
【0030】
4.本発明のシステムおよび方法は、本質的に且つ非常にエネルギー効率がよい。例えば、蒸発法および逆浸透法では塩から水が除去されるのに対して、本発明のシステムでは水から塩が除去されるので、消費されるエネルギーは少ない。
【0031】
5.本発明のシステムおよび方法は、炭素エアロゲルの薄いシートにおいて優れたポテンシャル分布を呈する。殆どの炭素エアロゲルは、電気吸着が非常に効率的であるようなポテンシャルに維持される。
【0032】
本発明の上記のおよび更なる特徴ならびに利点は、容量性脱イオンおよび電気化学的精製ならびに電極の再生のための、電気的に再生可能な新規な電気化学セルによって実現される。このセルには、二つの末端プレート(セルの各末端に一つ)、並びにこれら末端プレートに隣接してセルの各末端に一つ配置された二つの末端電極が含まれている。夫々の末端プレートと隣接の末端電極との間には、絶縁層が介在されている。
【0033】
夫々の末端電極には、高い比表面積および吸着能を有する電気吸着媒体が含まれている。好ましい態様において、電気吸着媒体は炭素エアロゲル複合体で形成される。当該セルには更に、二つの末端電極の間に配置された一以上の中間電極が含まれている。電解質がセル内に流入すると、それは電極によって定義された、電極表面に対して実質的に平行な、連続的で且つ開かれた蛇行したチャンネルを通して流れる。セルを分極させることにより、イオンは電解質から除去されて、電極の炭素エアロゲル表面に形成された電気二重層に保持される。除去されたイオンによりセルが飽和されたとき、該セルは電気的に再生されるので、二次廃棄物は顕著に減少される。
【0034】
[好ましい実施形態の説明]
図3は電気化学セル30を示しており、これは一般に、反対側に離間して設けられた二つの末端プレート31,32(セル30の夫々の末端に一つ)と、これら末端プレート31,32に夫々隣接した、一般には同一の二つの片面末端電極35,36(セル30の夫々の末端に一つ)とを含んでいる。上記の末端プレート31と末端電極35との間には、絶縁層33が挿入されている。同様に、末端プレート32と末端電極36との間には、絶縁層34が挿入されている。夫々の片面電極35,36には、導電性エポキシバインダまたは他の適切なバインダでチタンシートの片面に接合された、炭素エアロゲル複合体の単一シートが含まれている。
【0035】
二つの末端電極35,36の間において、複数の、一般には同一の両面中間電極37〜43は、相互に等距離だけ離間され分離されている。夫々の両面電極(例えば37)には、導電性エポキシ樹脂を用いてチタンシートの両側に結合された、炭素エアロゲル複合体の二枚のシートが含まれている。図3は7つの両面中間電極37〜43だけが図示されているが、その代わりに、異なった数の中間電極を用いることもできる。例えば、セル30の容量は、全アノード(カソード)面積がほぼ2.7 ×108cm2になるように、少なくとも192個の中間電極に適合させることがきる。結局、このシステムは無制限の電極対を含むように拡張できるであろう。
【0036】
末端電極35,36および中間電極37〜43は、一般には同様の設計、構造および組成を有している。しかし、夫々の末端電極は、導電性エポキシバインダまたは他の適切なバインダでチタンシートの片面に接合された炭素エアロゲル複合体の一枚のシートのみを含んでいるのに対して、夫々の中間電極は、導電性エポキシ樹脂を用いてチタンシートの両側に結合された、炭素エアロゲル複合体の二枚のシートが含まれている。炭素エアロゲル複合体の代わりに、多孔質かつモノリシックな他の導電性材料を用いることができる。
【0037】
図4Aは、末端電極35を示しており、これには一般的に平坦で、薄く、矩形で、耐腐食性の金属(即ち、チタン)シートからなる構造支持体40が含まれている。タブ42Aは、D.C.電源(図示せず)の適切な極に接続するために、この構造支持体40の一つの側部から延出している。比面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料(即ち、炭素エアロゲル複合体)の薄いシート44が、構造支持体40の表面に結合されており、これはカソードまたはアノードの何れかであり得る。構造支持体40には更に、末端電極35を通して電解質を通過させるための、一連の、一般的には同一の孔47が含まれている。
【0038】
好ましくは、比表面積の大きい材料の薄層44は、炭素織布を炭素エアロゲル中に浸漬することによって形成された複合材料で構成されており、そのため薄層44は炭素エアロゲル複合電極44とも称される。この炭素エアロゲル複合体電極44の新たな用途は、主に、炭素エアロゲル材料のナノメータレベルの独特の開いた微細気泡構造(連続した多孔性、超微細な孔径、および莫大な表面積を含む)に依存している。この炭素エアロゲル複合体材料は、ヨゼフ・ワング(Joseph Wang)等による「炭素エアロゲル複合体電極」と題する論文(Anal. Chem.1993,vol.65,p.p.2330-2303)、およびジェームス・エル・カシュミッテル等による「炭素発泡体に基づくスーパー蓄電器)と題する米国特許第5,260,855 号で詳細に説明されている。多孔質炭素発泡体を製造するための他の方法は、メイヤー等に付与された米国特許第5,358,802 号に記載されている。
【0039】
炭素エアロゲルは、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの重縮合(僅かに塩基性の媒質中)と、これに続く超臨界乾燥および熱分解(不活性雰囲気中)によって合成される。この製造プロセスによって、高い多孔性、大きな表面積(400-1000m2/g)、超微細気泡/孔サイズ(50nm未満)を有し、また10nmの特徴的な直径の相互に連結されたコロイド状粒子または繊維鎖の固体マトリックスを有する独特な開気泡の炭素発泡体がもたらされる。エアロゲルの多孔性および表面積は、孔サイズおよび粒子サイズをナノメータスケールで調製しながら広範囲に制御することができる。この炭素エアロゲルは更に、低密度および超微細な気泡サイズを提供する。
【0040】
炭素エアロゲル複合体電極44の使用によって、従来の装置に対する顕著な改良が提供される。何故なら、これら従来の装置では、電極を横切るポテンシャル勾配のために、比表面積の一部のみがイオンの除去に有効であるに過ぎず、残りの面積は有効でないからである。炭素エアロゲル複合体の薄いシートを用いると、エアロゲル中の望ましいポテンシャル分布によって、実質的にはこれらモノリシックな微細多孔質電極の全表面積がイオンの除去に有効となる。
【0041】
本発明の最良の形態では、炭素エアロゲル複合体の薄いシートを電極として利用するが、その代わりに、炭素エアロゲル粒子のベッドを用いて電極を形成することもできる。このような炭素エアロゲル粒子のベッドは、従来の炭素粉末のベッドよりも遥かに高い比表面積および吸着能を有し、従って、これは容量性脱イオンのための優れた電極である。
【0042】
図3において、末端電極35,36および隣接する中間電極37〜43は、ゴムガスケット50〜56のような絶縁材料の薄いシートによって分離されている。夫々のガスケットは、隣接する炭素エアロゲル複合体電極44を収容するための大きな正方形の孔を中央部に有している。図4A,Bに示すように、構造支持体40には複数の周辺孔48が含まれている。セル30が組み立てられると、周辺孔48は、絶縁層33,34およびゴムガスケット50〜56における対応した孔と整列し、複数のネジ付きロッド58,59がこれら整列した孔を通して挿入され、ナット60〜63のような従来の手段によって緊密に締め付けられる。非圧縮性で且つ絶縁性の中空円筒状スペーサまたは圧縮リング50Aを、ゴムガスケット50〜56の周辺孔の中に挿入し、隣接する電極の間隔を制御するために用いることができる。更なるシール力を提供するために、複数の圧縮スリーブ64A,64Bを加えることができる。 図3では二つのネジ付きロッド58,59のみが示されているが、この特別の例においては、セル30を耐リーク性の状態で締め付けるために、8本のネジ付きロッドが用いられている。これら8本のロッドは、構造支持体40の8つの周辺孔48、並びにゴムガスケット50〜56における中空円筒状スペーサ50を嵌合した対応の周辺孔に螺合するように設計されている(図4)。
【0043】
セル30が組み立てられると、末端電極および中間電極35〜43の間に、複数のチャンバ65〜71が形成される。これらのチャンバ65〜71は、中間電極37〜43の構造支持体における複数の孔73〜79を通して、相互に流体連通するように適応されている。これらの孔73〜79は整列されておらず、また孔またはスリットの何れであってもよい。これらは、チャンバ65〜71の中を通る経路を通過し、流体が全ての露出された炭素エアロゲル複合体電極44を横切って強制的に流れるように位置付けされる。図3において、流体は先ず左から右へと流れ、次いで右から左へと順次流れる。
【0044】
運転に際しては、単に例示の目的で言えば、セル30のアノードおよびカソードは交互にずらして挿入される。この点に関して、末端電極35から出発して中間電極43で終わる他の全ての電極はアノードであり、他の残りの中間電極37,39,41,42および末端電極36はカソードである。このように、夫々の隣接した電極対(アノードおよびカソード)は、別々の容量性脱イオン/再生ユニットを形成する。
【0045】
処理すべき原料流体または電解質の流れは、末端プレート31の孔80、絶縁層33の一以上の孔82、および末端電極35の一以上の孔47を含む複数の重なった共軸的に抵抗性の、一般的には円形または矩形の開口部を通ってセル30に流入する。矢印Aで示すように、第一のチャンバ65を通って流れる流体の流れは、実質的に電極表面に対して平行である。第一の脱イオン/再生ユニットを分極させることによって、イオンは流体の流れから静電的に除去され、電極35および37の炭素エアロゲル表面に形成された電気二重層に保持される。これによって、流体の流れは少なくとも部分的には精製されるであろう。
【0046】
流体の流れは、次いで矢印Bで示すように、孔73を通って次のチャンバの中に流れる。ここでは、中間電極37および38によって形成される第二の脱イオン/再生ユニット81の分極によって更にイオンが除去され、流体の流れは更に精製される。この流体の流れは、矢印C〜Gに示すように、残りの脱イオン/再生ユニットを通って連続的に移動し、徐々に精製される。その後、矢印Hで示すように、精製された流体の流れは、末端電極36、絶縁層34、およびパックプレート32の複数の共軸的に整列された複数の孔90,91,92を通り、セル30から出る。
【0047】
セル30を出た流体の流れは、セル30によって汚染イオンが除去され、回収されているから、既に精製されている。セル30の新規な構成の一つの重要な特徴は、流体の流れが多孔性電極を通して流れず、むしろ圧力降下が比較的少なく且つポンピングのエネルギー消費が最小限であるような開放チャンネルの中を流れることである。セル30の運転に消費されるエネルギーは最小限である。この点において、流体の流れはセル30を通して流すため、必ずしもポンプにより加圧される必要はなく、所望とあらば重力を用いることができる。
【0048】
また、本発明の脱イオンプロセスが水の脱塩に用いられるとき、消費されるエネルギーは水から塩を除去するために必要とされるものである。これに対して、蒸発および逆浸透のような従来の脱塩プロセスでは、塩から水を除去するためにエネルギーが消費される。その結果、本発明のプロセスは、従来のプロセスよりも桁違いに高いエネルギー効率を有している。
【0049】
更に、容量性脱イオンセル30における圧力降下は、逆浸透に必要とされるものに比較すれば微々たるものに過ぎない。また、従来の脱イオンプロセスとは反対に、電極は非常に大きく且つ固定された比表面積および高い除去効率を有しており、また炭素エアロゲル粒子は流体の流れに随伴されない。
【0050】
CDIセル30が除去されたイオンで飽和され、容量性ユニットが完全に充電されると、そのような状態に到達したので、セル30はもはや再生させるべきであることをセンサー(図示せず)が指示する。従来の化学的再生プロセスとは対照的に、本発明の再生プロセスは電気的に行われ、従って二次廃棄物は放出されない。本発明の再生プロセスは、電源供給を中断し、アノードとカソードとを接続し、全ての電極35〜43を放電させ、水または他の適切な溶液の適切な流体を、原料流体の脱イオンに関連して上述したのと同じ経路に沿って、セル30の中を流すことにより行われる。その結果、容量性ユニットは放電されて、先に除去されたイオンはセル30が完全に再生されるまで、流体の流れの中に放出される。その時点で再生プロセスを停止させ、脱イオンプロセスを再開させる。脱イオン−再生プロセルのタイミング制御は、手動または自動で行うことができる。
【0051】
セル30の全体の形状および寸法は、CDIシステムの使用および応用の形式によって決定される。好ましい態様において、末端プレート31および32は同一であり、矩形で、316ステンレス鋼または他の適切な耐腐食性合金製である。
【0052】
末端プレートは、電極とは異なって分極されない。しかし、他の形状を用いることは可能であり、例えばセル30が円筒状であるときは、末端プレート31および32は円形であり、またセル30が錐体形であれば、末端プレート31、32の一方は他方のプレートよりも小さく、その間の電極の大きさは一方のプレートから他方のプレート近づくにつれて段階的に増大する。
【0053】
絶縁層33および34並びに50〜56は、好ましくは弾性で、圧縮性で、絶縁性で且つ非浸出性の材料でできている。特別な用途のためには、例えば、テフロン(登録商標)、ビトン(Viton)、ネオプレンおよび同様の材料が適切である。
しかしながら、他の適切な材料を用いることができる。末端電極35,36の構造支持体40(図4A,4B)および中間電極37〜43は、好ましくはチタン製であり、或いはコーティングされた耐食性の鉄/クロム/ニッケル系合金のような適切な材料の群から選択することができる。適切なコーティングには、金、白金、イリジウム、白金−イリジウム合金または他の耐食性材料が含まれる。
【0054】
一つの例において、バックプレートは同様の大きさで、矩形で且つ次の寸法を有している。即ち、長さ 8.38cm;幅 7.87cm:厚さ 0.16cmである。しかし、その代わりに、他の大きさを使用することができる。電極との電気的接続に用いられるタブ42Aは、構造支持体40から一体に延出しており、一般には矩形形状であるが必ずしも矩形である必要はない。上記の例において、タブ42Aは次の寸法を有している。即ち、長さ 1.78cm;幅 2.03cm :厚さ0.16cm である。
【0055】
図4Aおよび4Bに示すように、構造支持体40には、複数(この例では8個)の周辺孔48が含まれており、電極35〜43を整列させるために、この孔を通してネジ付きロッド58,59が通される。幾つかの長い孔47が、エアロゲル炭素複合体44のシートの片側に沿い且つ隣接して、外側に一緒に整列して示されている。これらの孔47の寸法は、最小限の圧力降下で、炭素エアロゲル複合体シートを横切って流体を均一に分布させるように設定される。これら孔47の数、位置および寸法は、セル30の使用および適用の所望の形式に従って変化させることができる。
【0056】
炭素エアロゲル複合電極44は、正方形の形状を有するものとして示されており、また構造支持体40に対して比較的中央に位置するように示されている。この例においては、炭素エアロゲル複合体電極44は、6.86cmの側部寸法、23.5298cm2の突出部面積、約0.0127cmの厚さを有している。当該電極44はまた、円形、矩形または三角形であってもよい。
【0057】
電極44は、好ましくは炭素エアロゲル複合体で作成されるが、電極として機能する充分な導電性および耐食性(化学的安定性)を有するものであれば、如何なるモノリシック多孔性固体でも代わりに用いることができる。このような代替え材料には、典型的には燃料電池に用いられる多孔性炭素電極、網状のガラス状炭素発泡体、粉末冶金によって製造された多孔質金属電極、パックされた粉末カラム(即ち、炭素粉末、炭化タングステン粉末、酸化錫および酸化イリジウムを含むガラス状導電性酸化物)、これらのおよび他の材料の混合物、Pt、Ir、SnO2のような電気触媒、並びにフォトリソグラフィー、電子成形、物理的気相成長(蒸着、スパッタリング等)を含む微細加工技術によって製造される多孔質電極、何れかのタイプの導電性スポンジ等が含まれる。
【0058】
また、電極44は、内務省報告及びニューマン論文に記載された従来のパックされた炭素ベッドよりも顕著に大きな比表面積を有する、パックされた炭素エアロゲル粒子のベッドとして製造することもできるであろう。この設計は、イオンの電気吸着、有機物の吸着および微細粒子捕捉の能力を大幅に高める利点を提供するが、多孔性媒質を通して流すことを必要とする。
【0059】
図3に示した例において、チャンバ65〜71は約300mlの容積を有し、これは再生に必要とされる最小限の可能な液体容量に対応している。他の態様において、チャンバ65〜71は、再生に必要とされる最小限の液体を更に低減できるように、異なった容量を有することができる。
【0060】
図5は、容量性脱イオン−再生システム111の第一の実施例を示しており、これには一般に、一つまたは一連の(直列の)電気化学的セル30(図3)と、電気回路112と、流体回路114とが含まれており、この流体回路114は電気回路112の制御の下に、セル30を通る流体の流れを制御する。
【0061】
電気回路112には、隣接する電極対35〜43(図3)を横切って一定のD.C.電圧を与える、電圧制御されたD.C.電源117が含まれている。抵抗負荷120及びスイッチ121が、電源117の陽極端子および陰極端子122A,122Bを夫々横切って並列に接続されており、単一の電気化学的セル30を放電または再生するために使用される。
【0062】
電気回路112は更に、再生を開始するためのトリガー装置のような制御システムを含んでいる。この制御システムは、オンライン導電セル、イオン選択性電極、pH電極、ポーラログラフィーセンサー、インピーダンスセンサー、光沢的透過セル、光散乱センサーを利用している。このオンライン制御システムによってトリガーされ得る部品には、電源、バルブ及びポンプが含まれる。
【0063】
差動増幅器126は、分流抵抗器118を横切って接続されており、更にアナログ/デジタル変換器127およびコンピュータ128に接続されている。この分流抵抗器118は、モニター及び制御のために、電源117からセル30へと流れる電流を測定するために用いられる。作動増幅器126は、分流抵抗器118を横切る電圧を、アナログ/デジタル変換器およびコンピュータ126によってモニター可能なレベルにまで増幅する。もう一つの作動増幅器125は、分流抵抗器118を介して、電源117の端子122A,122Bを横切って接続されており、アナログ/デジタル変換器127を保護するために、電源117とアナログ/デジタル変換器127との間のバッファとして動作する。
【0064】
作動増幅器125は、セル30の端子を横切って接続されており、セル30とA/D変換器127との間のバッファとして働く。動作において、セル30は電解質を脱イオンするために用いられるから、スイッチ121は開かれる。再生プロセスを開始させるためには、放電電流の経路を与えるために、電源117をオフまたは切断し、スイッチ121を閉じる。
【0065】
アナログ/デジタル変換器127は、夫々のトランスジューサ131,132,133を通り、熱電対134、導電性プローブ135およびpHセンサー136のような複数のセンサー類を介して流体回路114の入口流に接続される。熱電対134は、電解質の過熱を防止するために入口流の温度のモニターを可能にし、更に導電性プローブ135の較正を可能にする。導電性プローブ135は、入口流の導電性をモニターするオンラインセンサーである。pHセンサーは入口流のpHレベルを測定する。トランスジューサ131,132,133は、熱電対134、導電性プローブ135およびpHセンサー136の測定値を、アナログ/デジタル変換器127によって読み取り可能で且つ比較可能な電圧に変換する。流速計154は、入口流の流速を測定する。
【0066】
流体回路114には、セル30で処理すべき原料流体を収容するための供給および再循環タンク150が含まれている。この供給および再循環タンク150に保存された流体は、原料流体の連続的な流入によって置き換えることができる。
【0067】
バルブ151は、供給および再循環タンク150とポンプ152との間に流体的に接続される。ポンプ152の速度は、セル30への入口流の流速を制御するように使用される。出口流は、二つのバルブ156,157を介して、精製流体を保存するための生成物タンク160および供給再循環タンク15に夫々接続され、接続される。バルブ156および157は、動作のモードを選択するために用いられる:バッチモードまたは完全な再循環;連続モードまたは一回モード。
【0068】
入口流と同様に、アナログ/デジタル変換器127は、三つのトランスジューサ141,142,143、熱電対144、導電性プローブ145およびpHセンサー146を介して、流体回路114の出口流にも接続されている。連続モードの運転において、脱イオンされるべき原料流体または電解質は、最初に供給および再循環タンク150の中に保存され、バルブ157が閉じられる。ポンプ152が活性化されて、供給再循環タンク150からセル30へと流体がポンピングされ、セル30では流体の脱イオンおよび精製が行われる。精製された流出物は、次いで開かれたバルブ156を介して生成物タンク160へと送られる。或る種の適用においては、望ましいレベルの精製を得るために、流体を2回以上再循環させることが望ましいであろう。その場合、流体の流れをセル30を通して再循環させるために、バルブ156は閉じられ、バルブ157は開かれる。
【0069】
セル30が飽和したとき、脱イオンプロセスは自動的に中断され、再生プロセスが開始される。この目的のために電源117は切断され、再生タンク(図示せず)はポンプ152およびセル30と流体的に接続される。再生タンクには、適切な再生溶液(比較的少量のみが必要とされ、供給流、例えば原料水と同じ組成を有している)が含まれている。この再生溶液はセル30に通され、再生プロセスは、除去されたイオンを再生溶液の中に戻すことによって起きる。
【0070】
結局、電極は有機汚染物で飽和されることとなり、化学的および電気化学的に再生された酸化物(Ag(II)、Co(III)、Fe(III)、オゾン、過酸化水素および種々の漂白剤を含むが、これに限定されない)の溶液を電気化学的セル30に通すことによって、炭素複合電極44または他の多孔性モノリシック電極を洗浄および再生することが可能である。
【0071】
図12〜図14は、図5の容量性脱イオン−再生システム111を用いた実験的タイミングチャートを示している。
【0072】
図6には、100μmhoのNaCl溶液の脱イオンおよび再生のために用いられた、図5の容量性脱イオン−再生システム111の運転を示す三つの重なったタイミングチャートA,B,Cが含まれている。チャートAは電解質の導電性を表しており、二つの曲線(一つは入口流の導電性を示し、他の曲線は出口流の導電性を示す)が含まれている。チャートBは、セル30を通して流れる電流を表している。チャートCはセル30を横切る電圧を表している。Tは脱イオン−再生サイクルを表している。図7は、何れも図3に示したセル30に類似した少なくとも二つの並列な電気化学セル30Aおよび30Bを用いた、容量性脱イオン−再生システム175の第二の実施例を示している。図8A,B,Cは、100μmhoのNaCl溶液を用いた、容量性脱イオンシステム175の運転例を示している。該システム175の主要な利点の一つは、その連続的な脱イオンおよび再生運転を維持できる能力である。当該システム175は、一般にはシステム111と類似しているが、二つのセル30Aおよび30Bを用い、一つのセル30Aまたは30Bが脱イオンされるときは、他方のセルは脱イオンプロセスのための準備である再生を行う。従って、システム175の運転は、サイクリックで且つ連続的である。セル30Aおよび30Bの夫々一つのために、各サイクルには二つの半サイクルが含まれる。セル30Aおよび30Bのサイクルが本質的に180#ずれるように、第一の半サイクルは脱イオンプロセスであり、第二の半サイクルは再生プロセスである。
【0073】
システム175には、これらセルの運転を選択するために、両セル30Aおよび30Bを横切って接続された、電源およびスイッチ装置176が含まれている。システム175の好ましい実施例においては、流体の流れを脱イオンするための運転中の一つのセルが含まれる一方、他方のセルは同時に再生されているけれども、両セル30Aおよび30Bは同時に同じプロセス、即ち、脱イオンまたは再生を行うこともできる。
【0074】
コントローラ178は、セル30Aおよび30Bへの流体の流れおよびこれらセルからの流体の流れを制御するために、複数の流入および流出バルブ179,180a,180b,180c,181a,181b,181cおよび182を調節する。アナログ/デジタル変換器185は、システム175の流体回路に沿って配置された、複数の導電性およびイオン特異的センサー187,188からの測定信号を変換し、対応するデジタル信号をコンピュータ190へ送信し、該コンピュータはコントローラ178、電源およびスイッチ装置176を制御してシステム175全体の運転を制御する。二つのセンサー187,188のみが示されているが、他のセンサーをも組み込んで、追加のフィードバックデータをコンピュータ190に提供することもできる。
【0075】
図8A,B,Cは、図7の容量性脱イオン−再生システム175の運転を示す三つのタイミングチャートである。この場合、一方のセルの再生の際に放出される電力は、他方のセルでの脱イオンのためには全く用いられない。図8Aは、セル30Aおよび30Bから流れる流出物の導電性(μmho)vs 時間(秒)を示している。図8Bは、夫々のセル30Aおよび30Bを通して流れる電流(アンペア)を示している。図8Cは、夫々のセル30Aおよび30Bを横切って印加される電圧(ボルト)を示している。水性(水ベースの)の流れの場合、0.6 から1.2 ボルトの大きさを有する電圧パルスで最適の特性が得られる。低い電圧は電極の容量を減少させる一方、著しく高い電圧は、電気分解およびこれに関連した電極からのガス発生を生じる。図8A,B,Cにおいて、実線はセル30Aの挙動に関連しており、仮想線または破線はセルBの挙動に関連している。
【0076】
図8Cにおいて、実線は、セル30Aに印加される約1.2 ボルトの安定状態を有する一連の方形電圧パルス191,192,193を示している。一方、破線は、セル30Bに印加される約1.2 ボルトの安定状態を有する一連の方形電圧パルス194,195を示している。しかし、異なった電圧を印加してもよいことを理解しなければならない。特に、水性の流れの場合、好ましい電圧範囲は0.6 〜1.2 ボルトの範囲である。セル30Aおよび30Bに印加される電圧パルスは、位相が180#ずれている。
【0077】
図8Cの電圧パルス191は、図8Bの電流曲線197および図8Aの導電性曲線198で示されるように、セル30Aでの脱イオンプロセスを進行させる。
【0078】
図8Cの電圧パルス191がセル30Aを横切って印加される間、図8Bの電流曲線199および図8Aの導電性曲線200に示されるように、セル30Bのアノードおよびカソードは外部負荷を介して一緒に接続され、セル30Bは再生される。
【0079】
その後、図8Bの電流曲線201および図8Aの導電性曲線202によって示されるように、電圧パルス164がセル30Bを横切って印加され、脱イオンプロセスが進行する。電圧パルス194がセル30Bを横切って印加される間に、図8Bの電流曲線203および図8Aの導電性曲線204に示されるように、セル30Aのアノードおよびカソードは外部負荷を介して一緒に接続されて、セル30Aが再生される。
【0080】
上記の脱イオン−再生サイクルでは、セル30A,30Bの一方が飽和するときに他のセルは殆ど完全に再生され、脱イオンプロセスを進行できる状態になるから、システム175を中断することなく連続的に運転することが可能である。
【0081】
その結果、システム175の出口では、精製された流体が連続して流出する。システム175の運転は、原子力発電所プラントにおいて、ボイラー水から汚染物を除去するために特に魅力的であろう。
【0082】
システム175の運転を簡単に要約すれば、脱イオンプロセスに際して、対応するセル(30A,30Bの何れか)は、それを形成する電極対を容量的に充填させることにより、そこを通過する流体の流れからイオンを除去する。脱イオンプロセスの開始時において、セルは完全に放電されており、脱イオンプロセスの終了時には、セルは完全に充電されている。引き続いて、再生プロセスの間に、対応のセル(30Aまたは30Bの何れか)はそれを形成する電極対を容量的に放電することにより、そこを通過する流体の流れの中にイオンを付与し、当該流れの中のイオン濃度を著しく増大させる。再生プロセスの開始時においてセルは完全に充電されており、再生プロセス終了時点でセルは完全に放電されている。
【0083】
図9は、本発明の他の特徴、即ち、高いエネルギー効率またはエネルギー節減モードを示している。この特別な運転モードにおいて、セル30A,30Bを横切るポテンシャルを示すためにタイミングチャートが用いられている。そこでは、実線がセル30Aの挙動に関連しているの対して、破線はセル30Bの挙動に関連している。時間t0から出発して、セル30Bは完全に充電され、再生すべき状態になる。一方、セル30Aは完全に放電され、脱イオンプロセスを開始すべき状態になる。
【0084】
セル30Bを電源176から切断し、電源176をセル30Aに接続することは可能であるが、ここではエネルギーを節約し、一定の適用ではシステム175を運転するために必要とされるエネルギーのかなりの部分を節約することが可能である。本発明に従えば、時間t0においてセル30A,30Bを接続することにより、曲線210に示すようにセル30Bがセル30Aを介して放電され、また曲線211に示すようにセル30Aが充電されるようにすることができる。セル30Bに保存された電気エネルギーは、セル30Aでの脱イオンに際して、セル30Aの電力として用いられる。
【0085】
平衡電圧、即ち、時間t1での約0.6 ボルトに到達したら、直ちにセル30Aを電源176に接続して、曲線212に示すように充電プロセスを完結させることができる。同時に、曲線213によって示されるように、セル30Bは外部負荷を介して完全に放電される。その結果、セル30Aを充電するために必要とされるエネルギーのかなりの部分はセル30Bによって発生され、残りのエネルギーが電源176によって供給される。
【0086】
その後、時間t2においてセル30Aは完全に充電され、再生すべき状態になる一方、セル30Bは完全に放電されて脱イオンプロセスを開始すべき状態になる。
【0087】
次いで、セル30Aおよび30Bを接続することにより、曲線214に示すように、セル30Aはセル30Bを介して放電される一方、曲線215に示すようにセル30Bは充電される。
【0088】
時間t3で平衡電圧に到達したら、直ちにセル30Bを電源176に接続して、曲線216に示すように充電プロセスを完結させ、また曲線217によって示されるように、セル30Bは外部負荷を介して完全に放電させることができる。
【0089】
その結果、セル30Bを充電するために必要とされるエネルギーのかなりの部分はセル30Aによって発生され、残りのエネルギーが電源176によって供給される。
【0090】
図10は、脱イオン−再生システム220の第三の実施例を示しており、これにはシステム175(図7)に類似したシステム222,224,226のマトリックスが含まれており、これらは直列に接続されている。夫々のシステムには、接続され且つシステム175に関して説明したようにして動作する、少なくとも一対のセルが含まれている。従って、システム222はセル(1,1)および(1,2)を含んでおり、システム224はセル(2,1)および(2,2)を含んでおり、システム226はセル(n,1)および(n,2)を含んでいる。
【0091】
夫々のシステム222,224,226は、図7に示した電源およびスイッチシステム176に類似した、電源およびスイッチシステム176A,176B,176Cを含んでいる。
【0092】
運転において、セル対222の一つのセル(1,1)は脱イオンプロセスを行い、他のセル(1,2)は再生される。夫々に二つのセルが含まれる三つのシステム222,224,226のみが示されているが、異なった組み合わせのシステムまたはセルを選択することもできる。
【0093】
システム220の一つの新しい応用は、段階的かつ選択的な脱イオンおよび再生を特徴とするものである。夫々のシステム(222,224,226)が流れ込んだ流体の流れから異なったイオンを除去するようにさせることにより、流れ込んだ流体を選択的に脱イオンするために、夫々のシステム(222,224,226)を横切って、異なったポテンシャル(V1,V2,Vn)が印加される。
【0094】
こうして、この特別の例では、V1<V2<Vnとすることによって、システム222はCu++のような還元可能な陽イオンを除去することができ;システム224はPb++のような還元可能な陽イオンを除去することができ;またシステム226はNa+,K+、Cs+、Cl-のような非還元性および非酸化性のイオン、またはそのイオン状態のまま残る他の同様なイオンを除去することができる。
【0095】
図11A,Bは、電気化学的セル250およびその一部を表している。セル250は、それぞれ図5および図7の容量性脱イオン−再生システム117および175の一部として使用するために採用することができる。このセル250には、多孔質のセパレータまたは膜255によって分離された複数の電極253,254が含まれている。このセパレータ255は二つの隣接した電極253,254の間にサンドイッチされており、その間に開放チャンネルを形成し、定義することを可能にする。電極253,254は、上記のセル30,30Aおよび30Bの電極と同様である。この電極253,254およびセパレータ255は一緒に螺旋状に巻かれており、電解質は、電極253,254の間に形成された開放チャンネルの中を最小の抵抗で流れて、セル250から出ていく。二つの電極253,254および一つのセパレータ255を含むものとしてセル250を説明したが、追加の電極およびセパレータを用いることもできる。
【0096】
図15および図16は、ここに説明するセルおよびシステムに用いるための、他の二面電極300を示している。説明の目的で二面電極のみを詳細に説明するが、同一若しくは類似の概念を用いて一面電極を設計することもできる。
【0097】
電極300は、一般的には図4Aの電極35と類似した機能を有している。電極300には、実質的に平坦で、薄く、耐食性で、矩形の構造支持部材302が含まれており、これは誘電体の基板またはシート303を具備している。一つの実施例において、より高価な図4Aの金属製(即ちチタン製)の構造支持体40を置き換えるために、支持部材302は、印刷回路基板技術を用いて製造される。従って、支持部材302は、誘電体板303の少なくとも一部を薄い金属層または金属フィルムでメタライズしたエポキシ板でもよい。他の実施例において、誘電体板303はガラス繊維エポキシ板を含んでいる。
【0098】
金属層304は、チタンのような何れかの適切な金属で構成することができ、また誘電体板303の表面への金属のスパッタリング、並びに誘電体板303の表面への金属フィルムまたは金属層304の化学的気相成長CVD)を含む別の製造プロセスによって形成することもできる。誘電体板303の反対側の面は、金属層306で同様にメタライズされる。
【0099】
タブ308は、D.C.電源の一つの極に接続されるために、金属層304の一つの側から一体的に延出している。タブ308が特定の用途に必要とされる構造的剛性を欠いているならば、誘電体板302をタブ308の下に延設して、必要な機械的支持を与えることができる。同様にして、反対側の金属層から別のタブ310を同様に一体的に延出させ、D.C.電源の他の極に接続させることができる。二つのタブ308,310は、同じ極性をもつこともできるであろう。
【0100】
比面積が高く、多孔性で、導電性のモノリシック材料(例えば炭素エアロゲル複合体)の薄いシート314が、金属層304の表面に結合される。導電性シート314は、図4Aのシート44と比較して実質的に同じである。他の薄い導電性シート316は、導電性シート314のそれと類似した組成を有しており、反対側の金属シート306に結合されている。
【0101】
構造支持部材302は更に、電極300を通る電解質に流路を与えるための、一般的には同じ一連の孔320および周辺の孔322を含んでおり、これらの孔は図4Aの孔47および周辺孔48と同様である。
【0102】
図17は、ケース352および該ケースの中に閉じ込められたセル355を含んだ、カートリッジ350を示している。セル355には、相互に平行に配置された複数の電極357,358,359が含まれている。三つの電極のみが示されているが、異なった数の電極を選択してもよい。
【0103】
一つの実施例において、電極357,359は片面電極であるのに対して、中間電極358は両面電極である。電極357,358,359は、一般的には図15,16の電極300と同じ設計、構造および組成である。他の実施例において、電極357,358,359は、構造支持部材302を含んでいない。比表面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料は単独で電極として用いてもよく、また隣接した電極、例えば357,358がその間のチャンネル若しくは隙間を定義するように、誘電体スペーサまたはケース352の中の溝によって所定の距離だけ離間して維持されてもよい。これらの実施例において、電極357,358,359は、ケース352から取り出すことができ、またケース352内に戻してセルまたはカートリッジ350を形成することができる、セル355のような一以上の一体的なセルを形成してもよい。
【0104】
使用に際し、セル355はケース352の中に固定して置かれ、D.C.電源に接続される。流体の流れは、重力の下で、流入および流出とラベルした矢印で示すように、電極357,358,359の間のチャンネル360の中に自由に入り込む。カートリッジ350の基本的な運転については、セル30に関して上記で説明した通りである。ポンプ(図示せず)を使用してもよい。セル355は三つの平坦な電極357,358,359を有するものとして示されているが、異なった形状の他の電極を用いてもよい。例えば、電極357,358,359は、ケース352の中に蛇行した流れを生じるように配置してもよい(図3)。
【0105】
カートリッジ350によって提供される一つの利点は、セル355または全体のカートリッジ350が、保守または他の目的のために容易に取り替えることができる点である。加えて、カートリッジ350は如何なる所望の大きさとすることもできる。更に、カートリッジ350の寸法は、図15の構造支持体302を省略することによって低減することができる。
【0106】
図18,19は、二つの他の電極400,401を示している。電極400には、一般に平坦で、矩形で、中心に孔がある周辺支持部材402が含まれている。同様に、電極401は一般に、平坦で、矩形で、中心に孔がある周辺支持部材404を含んでいる。二つの電極400,401は、誘電体セパレータ406によって、所定の離間距離に維持される。二つの電極400,401だけが接続されてセルを形成しているが、二つ以上の電極を組み合わせてセルを形成することもできる。
【0107】
支持部材402,404は一般に、組成および構造において類似している。支持部材402は、チタンのような導電性材料でできており、その一つの側から、D.C.電源の極に接続するためのタブ409へと一体に延出している。支持体402は、メタライズしたエポキシ板で形成することができる。先に説明したように、セルを組み立てるための複数の周辺孔410が、支持部材402に形成されている。
【0108】
電極400には更に、周辺支持部材402に囲まれた中央開口部に嵌合して充填された、詰め替えカートリッジ415が含まれている。一般に、カートリッジ415は矩形であるが、他の形状を用いてもよい。カートリッジ415は、粉末冶金で製造された多孔質スポンジ417を含む詰め替え部材を具備していてもよい。スポンジ417は、チタン、白金または他の適切な金属で製造することができる。好ましい実施例において、スポンジ417はレゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲルで含浸された網目状のガラス状炭素(RVC)によって製造することができる。スポンジ417の上部および下部は、炭素エアロゲル複合体のように比表面積が大きく、多孔質で、導電性モノリシック材料の二つの薄いシート419,420で被覆されている。スポンジ417はまた、或る量のパックされた粒状炭素、炭素エアロゲルまたは金属であってもよい。また、バックミンスターフラーレンまたは「バッキーボール(Bucky Ball)」も、中央開口部を充填するために使用することができる。
【0109】
導電性シート419,420は、例えば接着剤によって、上側および下側のスポンジの実質的に全表面に結合させればよい。導電性シート419,420は、D.C.電源の対応する極と電気的に確実に接続されるように、電気的および物理的に支持部材402に接続される。
【0110】
電極401は、構造および組成において電極400と一般に類似しており、二つの導電性シート423,425で被覆された詰め替えカートリッジ422を含んでいる。運転において、電極400はD.C.電源の一方の極に接続され、電極401は他方の極に接続される。流体の流れは、重力の下で自由に、または最小限の圧力下において、流入および流出とラベルした矢印で示すように、電極400,401の間に定義されたチャンネル430を通して流される。少なくとも二つの電極400,401で形成されたセルまたはカートリッジの基本的な動作は、セル30に関連して上記で既に説明した通りである。
【0111】
図20は、他のカートリッジまたはセル450を示していおり、これにはD.C.電源の反対側の極に接続される、少なくとも二つの実質的に同様な電極452,454が含まれている。電極452,454は、誘電体セパレータ456によって、所定の離間距離に保持される。セパレータ456については任意であるが、電極452,454は電気的に接続されない。
【0112】
電極452は多孔質であり、一般には矩形である。電極452は、電極452の活性表面積を増大するために、何らかのスポンジ状、フォーム状、または多孔性の材料で製造すればよい。例えば、金属スポンジ、炭素エアロゲル若しくは同様の比表面積の大きい導電性のモノリシック物質で含浸された網状ガラス状炭素(RVC)が挙げられる。異なる電極は、異なる化合物で含浸すればよい。
【0113】
使用において、セル450はD.C.電源に接続され、流体の流れは重力の下で自由に、または最小限の圧力下において、「流入」および「流出」とラベルした矢印で示すように、電極452,454を通して流される。セル450の基本的な動作は、セル30と同様である。流体の流れは、電極452および454の大きな孔を通して流れる。炭素エアロゲルは、炭素発泡体の表面を被覆するのに用いられる。
【0114】
化学的再生には、HCl、HNO3、H2SO4,HSのような強酸の使用が含まれるので、これらの強酸は、炭素エアロゲル電極の表面に堆積された固体金属を溶解し、また他のタイプのスケール形成を除去する。或いは、化学的再生には、電極を再生するために、種々のタイプのスケールおよび不純物を溶解できる強塩基の使用が含まれ得る。
【0115】
一つの実施例においては、重い有機汚染物を溶解するために重い有機溶媒が用いられ、続いてオゾン、過酸化水素、フェントン試薬、銀(II)、コバルト(III)鉄(III)またはパーオキシジサルフェート(S2O8-2)のような強い化学酸化剤が用いられる。これらの酸化剤は、電極の表面に化学吸着した有機汚染物の非常に薄い層を酸化することができ、これによって電極を再生する。従って、本発明の重要な側面は、炭素電極が化学的に耐性であり、再生可能なことである。更に、電極ポテンシャルの周期的な反転によって、該電極は非常に効率的に再生されるであろう。電極の再生は、該電極およびセルの実効寿命を延長させ、保守および運転コストを低下させるであろう。周期的な電圧の反転は、供給流をセルに通しながら、または化学的再生剤(酸、塩基など)をセルに通しながら、行うことができる。
【0116】
本発明に従えば、本発明の容量性脱イオンおよび再生のためのシステム、セルおよび方法において、新しい種類の電気吸着媒体を使用することができる。これらの電気吸着媒体は、炭素エアロゲル、網状のガラス状炭素発泡体および炭素粉末を含む炭素系材料よりも、毒および劣化に対する感受性が低い。これら吸着媒体には多くの炭化金属が含まれ、これらは粉末、粒子、発泡体、スポンジ、溶射または粉末冶金によって製造された多孔質固体、スパッタ薄膜、または他のプロセスによって形成された形態であってよい。
【0117】
これらのカーバイドには、TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、MO2C、Cr3C2、Ta2C、並びに高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約17μohm-cm〜1,200 μohm-cmの範囲の抵抗をもった類似の炭化物が含まれる。
【0118】
図21は、本発明の容量性セルおよびシステムでの使用に適合したセル460を示している。セル460は、エネルギー保存用の電解質蓄電器や、電気自動車の負荷の均等化といった、幾つかの他の用途に用いることができる。
【0119】
セル460は主に、D.C.電源に接続された二つの外部導電性プレート462,463で形成されている。上記の群ならびに活性炭素粉末およびガラス状金属粉末から選択された、粉末または顆粒状の電気吸着媒体の二つのベッド465,466が、二つの多孔性もしくは導電性膜468,469によって、その対応するプレート465,466に対して保持されている。
【0120】
チャンネル470は、膜468,469の間の中央に形成され、その中を通る流体の自由な流れを保証する。セル460の動作原理は、上記で説明した容量性脱イオンセルの動作原理と同様である。
【0121】
図22は、電気化学的に再生されたイオン交換において使用するための、他のセル475を示している。セル475には、二つの複合電極476,477が含まれており、その間に中央チャンネル478が定義されている。セル475はまた、ここに開示した容量性脱イオンシステムおよびセルと共に用いるために、変更することができる。例えば、複合電極476,477は、セル30(図3)に用いるために容易に変更することができる。更に、中央チャンネル478は直線的な平面チャンネルとして示されているが、例えば蛇行経路のように、種々の形状および設計を採用することができる。
【0122】
電極476はカソードであり、電極477はアノードである。電極476は、外側の導電性プレート480、電気吸着ベッド482およびポリマーコーティング483を含んでいる。導電性プレート480は、D.C.電源の負極に接続される。導電性プレート480は、適切な構造支持部材、例えば誘電体のボード、基板またはシートで置き換えることができる。
【0123】
ベッド482は電気吸着媒体で形成されており、プレート480に結合されている。或いは、コーティング483によって、ベッド482をプレート480に対して保持してもよい。ベッド482は、上記の何れかの電気吸着媒体で形成すればよく、これには高比表面積で、多孔質で、導電性のモノリシック材料(例えば炭素エアロゲル複合体)、多孔質金属(例えばチタンまたは白金)、カラム粉末のパック、レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲルに含浸した網状のガラス状炭素(RVC)、並びに粉末、粒子、発泡体、スポンジまたは多孔質固体の形の金属カーバイド(例えばTiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、MO2C、Cr3C2、Ta2C)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
ベッド482を適切な陽イオン交換樹脂で被覆して、コーティング483を形成する。例えば、ベッド482をナフィオン(Nafion)の溶液中で浸漬コートする。このナフィオン溶液はベッド482を浸潤し、乾燥すると、ベッド482の活性表面領域をコートする。陽イオン交換樹脂は、スルホネート(−SO3-)、ホスホネート(−PO32-)および/またはカルボキシレート(−COO-)のような負に帯電した官能基を有するポリマーの群から選択すればよい。無機陽イオン交換樹脂も用いることができる。コーティング483の厚さは、セル475が用いられる具体的な用途によって決定される。
【0125】
電極477には、外側の導電性プレート485、電気吸着ベッド487およびポリマーコーティング489が含まれている。導電性プレート485はD.C.電源の負極に接続され、また設計および構造は一般に導電性プレート480に類似している。ベッド487はまた、組成および構造においてベッド482に類似している。ベッド487を適切な陰イオン交換樹脂で被覆して、コーティング489を形成する。陰イオン交換樹脂は、四級(−NR3)、三級(−NR2)および/または二級(−NR)アミンのような、正に帯電した官能基を有するポリマーの群から選択すればよい。無機陰イオン交換体を用いてもよい。コーティング483の厚さは、セル475を用いる特定の応用によって決定される。使用に際し、放射性核種、重金属および無機塩の混合物を含む水性溶液が、セル475の中央チャンネル487を通して流される。放射性核種および重金属は、従来のイオン交換体として同様の選択性で流れから除去される。しかし、セル475の再生には電気だけが用いられるから、従来のイオン交換とは異なり、再生のための化学薬品は必要とされない。
【0126】
セル475の分極に際して、プロトン(H+)は、コーティング483から、陽イオン交換樹脂コーティング483とベッド482との間の界面490へと移動し、界面490に形成された電気二重層に保持される。このプロトン移動は、流れの中の陽イオンを吸着するために、コーティング483上の活性部位をフリーにする。陽イオン(M+およびN+、例えばNa+)は、陽イオン交換樹脂コーティング483の中に移動して、その中の活性部位に保持される。同時に、水酸イオン(OH-)が、コーティング489から、陰イオン交換樹脂コーティング489とベッド487との間の界面492へ移動し、界面492に形成された電気二重層に保持される。この水酸イオンの移動は、流れの中の陰イオンを吸着するためにコーティング489上の活性部位をフリーにする。陰イオン(X-およびY-、例えばCl-、NO3-、SO4-2、またはCO3-2)は、陰イオン交換樹脂コーティング489の中に移動し、その中の活性部位に保持される。
【0127】
導電性プレート480および485を短絡させる等により、セル475を放電(即ち、再生)するに際して、樹脂コーティング483,489は再生され、プロトンおよび水酸イオンは界面490および492から夫々放出される。これらのプロトンおよび水酸イオンは、陽イオンおよび陰イオン(M+,N+およびX-,Y-)を、水のような、供給流と同じ組成を有する再生溶液中に追い出す。
【0128】
従って、本発明のイオン化および再生セル475および使用方法は、化学的再生剤に対する依存を、完全に排除しないまでも最小限にするものである。セル475は、船舶および発電プラント、化石火力および原子力発電プラントのボイラー水の脱イオン化、混合した有害な廃棄物の処理、地域的および工業的用水の軟水化、血液透析を含む体液の分析および処理、並びに幾つかの他の用途に用いることができる。
【0129】
セル475はまた、コーティングとして用いたイオン交換樹脂に対して同じ選択性が知られているような、流体または水溶液中の陽イオンおよび陰イオンの選択的な同時分離を可能にする。この例示において、この溶液は陰イオンX-,Y-並びに陽イオンM+,N+を含んでいる。溶液が中央チャンネル478を通って流れ始めると、或る陰イオンおよび陽イオン、即ち、X-およびM+が電極477および476の基端部切片494を夫々飽和させる。この基端部切片494における樹脂コーティング489および483が飽和されたとき、残りの陰イオンおよび陽イオン、即ちY-およびN+が、電極477および476の先端部切片495を飽和し始める。イオン交換樹脂、従って電気化学的に再生されたイオン交換(ERIE)プロセスのイオン選択性は、種々の溶解イオンと逆に帯電した官能基との間の相対的なクーロン引力によって定まる。この引力は、イオンおよび官能基の両者の大きさ、コンフィギュレーションおよび電荷によって決定される。
【0130】
こうして、この容量性脱イオンシステムおよび方法は、他の技術を凌ぐ重要な改良および利点を提供する。例えば、イオン交換と異なり、システムの再生のために酸、塩基または塩の溶液は必要とされない。再生は、セルを放電することによって達成される。従って、二次廃棄物は発生しない。膜または高圧ポンプは必要とされないから、本発明のシステムは、電気透析および逆浸透を凌駕する運転上の利点を提供する。競争関係にある技術よりもエネルギー的に効率的であり、また熱プロセスよりも実質的にエネルギー効率が高い。
【0131】
本発明のシステムはまた、半塩水(800〜3200ppm)の処理に用いることができる。これは、特に海岸の共同体にとって非常に有用である。半塩水の処理のための競合技術は、電気透析および逆浸透である。これらのプロセスは、夫々約7.7 Wh/galおよび約5.3 〜8.5 Wh/galのエネルギーを消費する。本発明のシステムは遥かにエネルギー効率が高く、エネルギー回収、セルの形状および運転に応じて、1Wh/gal未満、可能であれば0.2 〜0.4 Wh/galのエネルギーを必要とするに過ぎない。
【0132】
このシステムは、費用が高くしかも問題の多い膜を排除している。炭素エアロゲルCDIシステムは、家庭用水の軟化、蒸気および電力発生のためのボイラー水の脱イオン、並びに工業用超純水製造のために使用できるであろう。イオン交換の工業的応用は、1ポンドの陽イオン交換樹脂の再生のために100 ポンドの酸を必要とし、或いは1ポンドの陰イオン交換樹脂の再生のために100 ポンドの塩基を必要とするであろう。炭素エアロゲルCDIシステムは電気的再生を用い、これによって化学再生剤の必要性および付随する廃棄物を排除する。
【0133】
本発明のシステムは、イオン交換樹脂、イオン交換膜および電極を必要とする連続的脱イオンよりも、単純で且つエネルギー的に効率的である。炭素エアロゲルCDIシステムは、炭素エアロゲル電極のみを必要とする。連続脱イオンに用いられるポリマーイオン交換樹脂媒体は、スケールおよび汚染の除去の際の化学的攻撃に対して感受性である。炭素エアロゲルは化学的攻撃に対して抵抗性である。
【0134】
炭素エアロゲルCDIシステムは、活性炭素のベッドよりも優れている。ジョンソンに付与された米国特許第3,755,135 号に記載の、電気脱ミネラルとして公知の他の電気化学的プロセスは、流体が通過する活性炭素のパックされたベッドを電極として用いる。しかし、このようなパックされたベッドの使用に付随する問題によって、実行可能な商業的製品の開発が妨げられた。これらの問題には、運転中に電気吸着能が不可逆的に喪失されること、このような流通ベッドでの使用に適した活性炭素の比表面積が比較的小さいこと、ベッドを横切って電気ポテンシャルが降下すること、ベッドを横切って水力学的圧力降下が生じること、流体の流れの中に炭素粉末が随伴されることによるベッドの侵食、および多孔性電極セパレータが必要であることが含まれる。例示すれば、モノリシック炭素エアロゲル電極を有する炭素エアロゲルCDIシステムは、活性炭素をパックしたフロースルー型ベッドを有するCDIシステムを凌ぐ利点を提供する。炭素エアロゲル電極の電気吸着能における僅かな低下は、周期的なポテンシャル反転によって殆ど完全に回復する。従って、システムの能力を高レベルに維持できる。
【0135】
炭素エアロゲル比表面積(600 〜1000m2/gm)は、フロースルー型のパックされたベッドでの使用に適した活性炭素粉末のそれ(230 m2/gm、または200 〜300m2/gm)よりも顕著に大きいから、匹敵する量の活性炭素粉末に吸着される量よりも著しく大量の塩を、炭素エアロゲル上に電気吸着することができる[A.M.Johnson,J.Newman,J.Electrochem.Soc.118,3(1971)510-517]。
【0136】
384対の炭素エアロゲル電極(768 個の電極)および2.4×106ft2 (2.2 ×109cm2)の全活性表面積を有するCDIプロセスにおいては、薄い炭素エアロゲルシートに生じるポテンシャル降下は、比較的深い活性炭素ベッドにおけるよりも小さいことが実験的に示されている。結局、炭素エアロゲルの単位表面積上には、匹敵する活性炭素の単位表面積上に比較して、より多くのイオンを電気吸着することができる。深いパックされた炭素ベッドにおいては、電気吸着がもはや非常に効率的ではないレベルにまでポテンシャルが降下する可能性がある。エアロゲルの形で炭素を固定化することにより、多孔性膜セパレータを必要としないシステムを構築することが可能となる。活性炭素粉末とは異なり、炭素エアロゲルのモノリシックシートは、流体の流れの中に随伴されない。水は、隣接するアノードおよびカソードの間の開放チャンネルを通過し、約30psiの適度な圧力降下のみを受ける。対照的に、匹敵する表面積をもった活性炭素のパックされたベッドを通過する流れは、≧1000psiの著しく大きい圧力降下を受ける。
【0137】
CDIシステムは、単純なモジラー・プレート・アンド・フレームのセル構造を有している。連続的な脱イオンおよび電気脱ミネラルに必要な電気化学セルは、粒状イオン交換樹脂および活性炭素、イオン交換膜、電極セパレータおよび電極の必要性によって複雑化される。本発明のDCIシステムは、単純な両面の平坦電極を必要とする。両面電極は、電流コレクタおよび構造支持体として働くチタンプレートの両側に、二枚の炭素エアロゲル複合体シートを接着することによって製造される。接着には、導電性銀エポキシペーストを用いることができる。一つの実施例において、炭素エアロゲル複合体は、2.9-4.9 ×106ft2/lb(600 〜1000m2/gm)の極めて高い比表面積を有している。夫々のシートは、2.7in ×2.7in ×0.005in(6.86cm×6086cm×0.0125cm)であり、略3,014 ft2(2.8 ×106cm2)の全活性表面を有している。二つのオリフィスが炭素エアロゲル電極の一側部に沿って位置しており、水を電極ギャップへ入れる。孔のパターンは、チタンプレートの周縁に位置しており、セルのスタックを一緒に保持する12本のネジ付きロッドを収容するようになっている。これらの部品の容量性脱イオンセルへの組み立ては非常に単純である。電極およびヘッダを、ネジ付きロッドによって整列させる。0.02in(0.05cm)の電極分離が、ネジ付きロッドに対して同心円的な円筒状ナイロンスペーサ及びゴム圧縮シールによって維持される。偶数の電極はカソードとして機能する一方、奇数の電極はアノードとして機能する。夫々の電極のオリフィスは、スタックの一方の側から他方の側へと交互に変化するから、流体が流れる経路は蛇行する。実験的な容量性脱イオンセルの構成には、略2.4 ×106ft2(2.2 ×109cm2)のカソード(アノード)全活性表面積をもった348 対の炭素エアロゲル電極が含まれている。しかし、このシステムはスタックを横切る如何なる所望の濃度勾配、並びに如何なる流速にも適合するように拡張することができる。容量および濃度のスケールアップおよびスケールダウンも、容易に達成することができる。
【0138】
本発明のDCIシステムは、炭素エアロゲルのような、容易に製造でき且つ商業的に入手可能な材料を用いる。この材料のモノリシックシートは、レゾルシノール/ホルムアルデヒド溶液を多孔質炭素紙の中に浸潤させ、その湿潤紙を密封容器内のガラスプレート間でキュアさせ、次いで不活性雰囲気中で炭化することによって製造することができる。この製造プロセスによって、多孔性度が高く、比表面積が大きく(600-1000m2/g)、気泡および孔の寸法が超微細(≦50nm)で、10nmの特徴的な直径をもった相互連結されたコロイド状粒子(繊維鎖)で構成された固体マトリックスの、独特な開気泡の炭素フォームがもたらされる。エアロゲルの多孔性度および表面積は広範囲に亘って制御できる一方、孔および粒子の寸法はナノメータスケールで調節できる。
【0139】
本発明の容量性脱イオンシステムでは、炭素エアロゲルのような、化学的攻撃に対して抵抗性をもった材料が用いられる。脱塩に用いるプロセス装置において、付着物およびスケールの形成は不可避である。回復のためには、攻撃的な化学的処理が必要とされる。従って、本発明の容量性脱イオンシステムは、このような化学的処理に耐え得る材料で構成するのが望ましいであろう。炭素エアロゲルは、スケール形成を抑制するために現在用いられている、HClのような化学薬品の多くに対して比較的耐性である。ポリマー膜および樹脂とは異なり、この材料は有機溶媒による溶解に対しても耐性を有している。塩素のような酸化剤はポリアミド逆浸透膜を攻撃するが、炭素エアロゲルシステムではさほどの問題にはみえない。同様の問題は、電気透析および連続脱イオンにおいても遭遇する。
【0140】
本発明の容量性脱イオンシステムは、完全自動化ポテンシャルスイング運転モードを有している。電気脱ミネラルプロセスは、エネルギー回収のないバッチモードで運転された。容量性脱イオンは、二つの炭素エアロゲル電極を並列に運転することによって、例えば、連続的流れの生成物水を製造することができる。一つのスタックは、他方が電気的に再生されている間に精製を行う。この運転モードは「ポテンシャルスイング」と呼ばれ、エネルギーの回収をも可能にする。例えば、一方の電極スタックの放電(再生)の際に放出されるエネルギーは、他方のスタックの充電(脱イオン)のために用いることができる。このような同期運転は、ユーザフレンドリーな自動化を必要とする。
【0141】
本発明の一つの例示的応用には、放射性の水を精製するための脱イオンシステムの設計および製造が含まれる。例えば、本発明によるシステムの一実施例は、金属ナトリウム残渣で被覆された燃料アセンブリの洗浄によって発生した廃水の精製のために使用できるであろう。夫々のアセンブリを洗浄する際に現在発生している500 ガロンの廃水は、略200 ppmのナトリウム、痕跡量の他の金属、濾過によって除去できる痕跡量の幾つかのの非金属、および痕跡量の放射性成分(主に燃料クラッディングの腐食生成物)を含んでいる。水をリサイクルできるためには、B等級の水純度(即ち、20ミクロシーメンス/cm)が達成されなければならない。
【0142】
図23は、種々の陰イオンおよび陽イオンを含む種々の流体および/または水溶液の分析、処理および加工に用いることができる、電気吸着イオンクロマトグラフ(EIC)500を示している。キャリアタンク510およびキャリア(例えば脱イオンされた水)を引き出すためのポンプ515は、クロマトグラフ500に接続されており、該クロマトグラフにはカラム501、検出器または導電性センサ511、およびコンピュータシステム512が含まれている。検出器511の出力側溶液は、流出水タンク514の中に回収される。
【0143】
陰イオン交換樹脂のカラムで陰イオンを分析し、陽イオン交換樹脂のカラムで陽イオンを分析する従来のイオンクロマトグラフィーとは異なり、EIC500は、一つまたは一連の電気化学セル502,504,506を含み得る単一のカラム501の中で、陰イオンおよび陽イオンの両者を同時に分析することができる。カラム501は、パッキング材料を有する従来のイオン交換カラムを置き換える。更に、イオン交換樹脂のカラムまたはキャリアを変えることによって選択性が操作される従来のイオンクロマトグラフと比較した場合、EIC500の選択性は、アノードとセル502〜506との間のポテンシャルを変更することによって容易に変化させることができる。
【0144】
使用に際して、サンプルは、キャリアタンク510からのキャリアの流れの中に注入され、単一または一連のセル502〜506を通される。夫々のセルには、一般的に一対の多孔性電極、即ち、アノードおよびカソードが含まれている。
【0145】
これらのセルは、本発明に従って構成されたアノードおよび/またはカソードを有している。これらの電極は分極され、イオンは流体の流れから多孔性電極の表面へ引きつけられるが、そこでイオンは電気二重層に保持される。
【0146】
陽イオンおよび陰イオンの夫々の種は、多孔性電極に対する異なった親和性を有しており、またセル502〜506の中での特徴的な流出時間を有している。
【0147】
この流出時間は、イオンを同定するための基礎として用いることができる。交換かラム501の出口には、カラム501を出るイオンを検出するための導電性センサ511または他のタイプの検出器が用いられる。イオンの濃度は、導電性/時間(濃度/時間)ピークの下の面積に比例している。図26は、三つの異なったイオン種A,B,Cについての、三つの導電性/時間(濃度/時間)ピークを例示している。
【0148】
アナログ/デジタル変換器を備えたコンピュータシステム512は検出器511に接続されてデータを処理し、レポートを発生させる。
【0149】
図24および図25は、単一のセル502を例示している。一定の適用において、カラム501は単一の長いセルを含んでいる。セル502には一般に、中空の末端が開放された容器520が含まれており、これは流入、流れおよび流出の矢印の方向にサンプルの流れを通過させる。図25において、容器520は矩形の断面を有しているが、容器520の断面は、図27に示したように他の形状を有していてもよい。
【0150】
比表面積が大きく、多孔性で、導電性のモノリシック材料(例えば、炭素エアロゲル複合体)の薄いシート524が、セル502の一方の側の内表面に結合されている。一つの実施例において、シート524は導電性エポキシペーストを用いてセル502に接着されている。導電性シート524は、その組成において、実質的に図4Aに示したシート44と同じである。シート524はまた、セル502の残りの三つの側部にも結合させてもよい。シート524は、図22に記載したのと同様のコーティング(図示せず)で被覆してもよい。シート524は、電極を形成するために、D.C.電源の一方の極に接続される。別の薄い導電性シート526は、導電性シート524と同様の組成を有しており、反対側またはセル502のもう一つの側部に結合される。シート526は、電極を形成するために、D.C電源の他方の極に接続される。
【0151】
容器520およびシート524,526は、サンプルが流れるセル502内の中央チャンネル530を限定する。一つの実施例において、必要とされるサンプルの量を最小限にするために、チャンネル530は非常に狭い。この例において、チャンネル530は直線である。しかし、図28および図29に示すように、チャンネル530は他の形状、例えば蛇行した経路を有することができる。セル502の一般的な動作原理については、容量性脱イオンセルおよびシステムに関連して、上記で既に説明した。キャリアおよび分析または処理すべきサンプルを含むサンプル流が第一のセル502aを通過するとき、アノード524およびカソード526を横切って電圧が印加され、これによってサンプル中の種々のイオンは異なった速度で流出する。その結果、イオン種は分離される。
【0152】
図26は、三つのイオン種A,BおよびCを示している。イオン種Cは、イオン種AおよびBよりも大きな範囲で電極524,526と相互作用し、従って種Cは種AおよびBよりも大幅に遅延する。イオン種と電極524,526との間の相互作用の程度は、吸着または電気吸着の等温線(isotherm)で記述され、また平衡定数「K」で定量されるが、これは電極材料や、イオンを吸着してこれと相互作用するのに利用できる使用可能な電極表面積を変化させて、イオン種の移動時間を制御することによって制御できる。本発明のクロマトグラフ500の顕著な利点は、イオン種と電極524,526との間の相互作用が静電気的クーロン引力であり、化学的相互作用ではないことである。相互作用の程度および流出時間は、アノードとカソードとの間の電圧を単純に変化させることによって制御することができる。従来のイオンクロマトグラフィーでは、相互作用の程度を変更するためにはカラムを変えなければならない。
【0153】
更に、本発明のクロマトグラフ500は、陰イオンおよび陽イオンの同時クロマトグラフィーのために、単一のカラム501を使用することを可能にする。従来のクロマトグラフィーでは、異なったカラムを使用することが必要とされる。
【0154】
加えて、この新しいクロマトグラフ500では、サンプルの流れがチャンネル530に沿って自由に流れるから、損傷を伴うことなく、生物学的な細胞、分子および他の物質を分離し、処理するために使用することができる。クロマトグラフ500は、分析すべき様々な種の流出時間を制御することができる。また単一のカラム501の中で陰イオンおよび陽イオンの分離処理を組み合わせて実施できるため、製造、運転および保守の全体のコストを低減することができる。
【0155】
他の実施例において、電極524,526を横切る電圧勾配が変化されて、電圧は調節され、パルス化され、または所望のパターンにプログラムされる。その結果、分析される種の流出時間は、該種の導電性/時間グラフの間の重なりが最小限になるように変化させることができる。即ち、種の溶出時間を変化させることによって、検出器511での様々なピーク間の分離を増大し、種の区別および分析を容易にすることができる。
【0156】
更に別の実施例においては、検出器511に加えて、イオン選択電極がセル506の一部として用いられる。このイオン選択電極は、特定のイオンに対して優先的に感受性であり、種々の形態のポーラログラフィー、サイクリックボルタンメトリー、X線蛍光、並びにUV、可視、振動、赤外のような分光計に由来する電気化学セルで形成されてもよい。
図27は、セル502の線25−25に沿った断面図であり、セル502の他の例を示している。この例において、セル502は一般に円筒形状であり、一般に円形の断面を有している。電極524,526の組成と同じ組成を有する四つの電極540〜543が、容器545の内面に結合されており、四つの適切な絶縁分割器546〜549によって分離されている。これら電極540〜543の夫々は、電源の対応した極に接続されている。図示のように、電極540,541はアノードとして作用し、電極542,543はカソードとして作用する。一つの電極対(例えば540,542)を横切る電圧勾配は、他の電極対(例えば541,543)を横切る電圧勾配とは異なってもよい。円筒形状は、高圧運転が必要とされる場合に有利であろう。
【0157】
図28および図29は、セル502と同じ原理に従って動作するが、内部チャンネルの形状の点で異なるカラムセル600を図示している。中央チャンネル530(図24)は直線的であるのに対して、セル600は、サンプルが流れる蛇行したチャンネル601を限定している。チャンネル601は、狭いけれども可能な限り長く作られており、必要とされるサンプルの量を最小限にするために、スペースの小さい長い経路が与えられている。
【0158】
セル600には一般に、二つの反対側に配置された実質的に平坦なプレートまたは基板603,605が含まれており、これらプレートは所定の厚さの絶縁層606によって分離されている。第一のプレート603は蛇行した溝607を含み、また第二のプレート605は同様の蛇行した溝608を含んでいて、二つのプレート603,605を一緒に連結したときに、溝607,608および絶縁層606の一部は蛇行流路を限定したチャンネル601を形成する。チャンネル601は、サンプル流のための一つの入口610及び一つの出口611を有している。
【0159】
薄い導電性シート616は、導電性シート524(図24)と同様の組成を有しており、溝607の内面に結合されている。同様の導電性シート617が、溝608の内面に結合されている。これらの導電性シート616,617は、D.C.電源の極に接続される。
【0160】
特にクロマトグラフカラムに関してここに開示される教示は、電気化学的増強器または濃縮器を設計するために用いることもできる。電気化学的増強器は、イオンクロマトグラフィー、イオン選択電極作動パルスポーラログラフィーのような種々の分析技術の何れかを用いた引き続く測定のために、希釈イオン溶液を濃縮するために用いられる装置である。
【0161】
図30に示した増強器650には、一般に、クロマトグラフについて上述したセルに類似のセルが含まれている。多孔性のアノード及びカソードは、容量性の充電相の間に、比較的希薄な溶液652からイオンを除去する。イオンは、負荷された電解(セル電圧勾配)の力の下で希薄溶液から除去され、電極の表面に形成された電気二重層に保持される。その後、容量性の放電または再生相の間に、イオンはより濃縮された溶液654中に回収される。容量性の充電相および放電相は、CDIシステム、セルおよび方法に関して上記で述べた通りである。
【0162】
特定の分析技術の検出限界未満のレベルで希薄溶液中に存在する種については、それらが検出可能になるレベルまで濃縮することができる。イオンが放射性であれば、それは多孔性電極上に集積したときに測定することができる。同様に、電極上に集積する重金属または同様の物質をモニターするために、X線蛍光を用いることができる。電極上または濃縮溶液中に集積する放射性物質の放射線をモニターするために、ガンマ線検出器655を用いることができる。分析器具または測定器具660は、増強器650の出力側で流出溶液に接続されており、更に集積したデータを処理して増強器650の動作を制御するコンピュータ665、希薄溶液652を増強器650の中に抜き取るポンプ667、増強器650から分析機器660への流出溶液の流れを制御するバルブ668、および増強器650によりイオンが除去または脱イオンされた溶液を保存するタンク680への流出物の流れを制御するバルブ669に接続されている。
【0163】
図31,32は、フォトリソグラフィーによって作製された単一のモノリシックな薄膜電極700を示している。電極700は、非常に高い比表面積を有しており、上記種々の電極を置き換えることができる。例えば、電極700は電極44(図4A)、電極253,254(図11B)、電極314(図15)、電極357(図17)、電極419,420(図19)、電極465,466(図21)、ベッド482,487(図22)、シート524,526(図24)、電極540−543(図27)およびシート616,617(図29)を置き換えることができる。
【0164】
電極700は、何れかの導電性金属、例えばチタン、銅、白金、タングステン、イリジウム、ニッケルまたは銀でできた薄い平坦な多孔質のシート、スクリーンまたは膜701として示されている。金属は、処理される溶液に対して耐食性であるように選択される。従来のフォトリソグラフィーを用いて、膜701の表面に非常に微細な孔の列702〜705が形成されている。四つの孔702〜705だけが示されているが、もっと多くの孔を膜701の全表面に亘って形成してもよい。膜701の表面積を増大するように孔の数を最適化するのが望ましいであろう。一つの例において、一つの孔の直径は約0.1 μであり、また膜701は1cm2当たり約1010個の密度を有するであろう。膜701が約25ミクロンの厚さを有し、また孔702〜705が膜701の厚さの殆どを貫通するとすれば、膜701の容量的比表面積は、約64m2/cm3であろう。もし、電極が10枚の膜のスタックを含むとすれば、電極の容量的非表面積は約640m2/cm3であり、炭素エアロゲル電極のそれに匹敵するものである。
【0165】
単一の膜701からなる電極700において、孔702〜705は膜701を貫通してもしなくてもよい。膜701は薄い平坦なスクリーンとして示してあるが、種々の構造を取ることもできる。孔702〜705は、円形の断面を有する円筒形、正方形、または如何なる所望の形状であってもよい。或いは、孔702〜705は相互に連結した溝にエッチングしてもよい。
【0166】
図33は、一般に同一の膜716〜722のスタックを含む他の電極715を示しており、これにはスペーサ725〜730のスタックが交互に挿入されている。膜716〜722は多孔質であり、膜701(図31)と同様の構造を有している。膜716〜722のスタックを通して溶液を浸潤させるために、一つの孔734で示すように、孔は膜716〜722の全体の深さに亘って広がっている。スペーサ725〜730は薄く多孔性で、金属製または非金属製の何れであってもよい。一つの実施例において、スペーサ725〜730は濾紙からなっている。
【0167】
電極715の容量比表面積が炭素エアロゲル電極のそれに近づくように、電極715を形成する膜の数を選択することが可能であり、また一定の応用においては、炭素エアロゲル電極を置換することも可能である。本発明の電極設計の更なる利点は、構成膜の数を増大または減少させることによって、電極の望ましい容量比表面積を正確に調節することが可能なことである。図31〜図33に記載した膜はまた、グラフィックシートとも称される。
【0168】
図34は、ティーバッグ電極と呼ばれる、電極750の更に別の実施例を示している。電極750には、伝導性材料753を含み且つ拘束する閉じた誘電体多孔性バッグ752が含まれている。導電性材料753は導電性粉末、特に、ここに列挙した導電体の何れか一つ、例えば炭素エアロゲルであってよい。導電体またはワイヤ754は、導電性材料753に接触してバッグ752の内部に延出している。使用時には、ワイヤ754はD.C.電源の一つの極に接続される。
【0169】
使用に際し、一つのティーバッグ電極750は、処理または分析すべき流体750を収容した容器755の中に落下される。この最も基本的な例において、電極750は正に帯電してアノードとして作用するのに対して、容器755は負に帯電してカソードとして作用する。種々のCDIシステムおよびセルに関連して上述したように、電極750はバッグ750の内側の流体756に含まれる陰イオンを電気吸着する。
【0170】
所望のイオン濃度に到達したら、バッグ752を流体756から除去して処理する。一つの例においては、濃縮されたイオンは有害であり、バッグ752は処分される。他の例においては、バッグ752の中に捕捉された濃縮イオンは、放出され、分析および処理することができる。従って、電極750は幾つかの用途を有しており、該用途には容量性脱イオンおよびイオン濃縮が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
同じ極性の二以上のティーバッグ電極もまた、反対極性を有する容器と共に使用することができる。この容器は電気的に中性であってもよく、また幾つかのティーバッグ電極750,760はアノードとして作用する一方、他のティーバッグ電極762,764はカソードとして作用する。この特別の例示において、アノードおよびカソードは相互介在されている。しかし、アノードおよびカソードは種々の異なった配列で配置することができる。例えば、アノードは外側の円形パターンで配置する一方、カソードについては同軸の内側円形パターンで配置することができる。他の例において、容器は負に帯電されてもよく、後者の例で説明した同軸的な円形パターンでカソードとして用いられる。また、他のパターンを選択してもよい。多くの応用において、アノードおよびカソードの数は同じであるが、この数が等しいことは常に必要とされるものではない。
【0172】
図35は、流体をサンプリングするための容器またはパイプの中の流体の流れの中に置かれた一対のティーバッグ電極750,762を図示している。このサンプリングは、電極750,762を横切る制御された電圧の印加によって、所定のまたはプログラムされた時間間隔で周期的に行うことができる。
【0173】
図36は、電気透析セル800を示しており、これにはカソード805とアノード807の中間に配置された二極性電極802が含まれている。二極性電極802には、導電性バリア811の一方の側に配置された二つの膜、スクリーン、プレート等808,810が含まれている。膜808、810は、上記で述べた材料、例えば炭素エアロゲルまたは多孔性炭素に類似した、何れかの高比表面積材料であり得る。二極性電極802は中央分割体として作用して、カソード区画814およびアノード区画815を定義する。
【0174】
使用において、電流は、アノード807からアノード区画815、二極性電極802およびカソード区画814を通って、カソード805へと流れる。例示だけの目的でいえば、流体、即ち、セル800によって処理されるべき溶液または電解質は、塩または海水(NaCl+H2O)である。溶液は、破線で示した矢印の方向に、カソード区画814からアノード区画815へと流れる。
【0175】
カソード区画814内においては、カソード805での電極反応は水素(H2)の発生であるのに対して、塩素イオン(Cl-)は二極性電極802の方に集積して膜808により電気吸着される。これによって、水酸化ナトリウム(NaOH)のアルカリ溶液がもたらされ、次いでこれはアノード区画815へと流れ、そこでナトリウムイオン(Na+)は二極性電極802の方に集積し、フィルム810によって電気吸着される。アノード807での電極反応は酸素(O2)の発生である。流出溶液は精製され、脱塩された水(H2O)である。
【0176】
セル800の重要な利点は、塩、即ち、NaClまたは種々の放射性塩を溶液から除去し、二極性電極802の中に固定または保存できることである。一つの実施例において、二極性電極802は除去して処分すればよい。他の実施例においては、二極性電極802は別の場所に取り外して再生することができる。更に別の実施例においては、導電性バリア811が取り外され、陽イオン(即ちナトリウムイオン;Na+)および陰イオン(即ち塩素イオン;Cl-)が、塩(即ち水酸化ナトリウム;NaOH)を形成し、これは多孔性フィルム808,810上に沈殿し、次いで除去され、処分されるか或いは更に処理される。
【0177】
上記のような適用は、特に、放射性廃棄物の処理において重要である。例えば、CsCl(137Cs)のような放射性塩は、炭素エアロゲル膜808,810の上に沈殿させればよい。次いで、これらの膜808,810をクラッシュすることにより、或いは炭素を酸化して二酸化炭素を形成することによって、これら膜の容積を顕著に減少させることができる。
【0178】
図37は、移動電極852を用いた容量性脱イオンシステム850の模式図である。容量性脱イオンシステム850は、一般に、アノードセル853とカソードセル854との間を移動する移動電極852を含んでいる。移動電極852には、ワイヤ、シート、流動ビーズのような導電体857が含まれており、これは複数のホイール858〜863に支持され、動かされる。アノードセル853には容器870が含まれており、これは移動電極852の導電体に対して正のポテンシャルに保持されている。カソードセル854には容器872が含まれており、これは導電体857に対して負のポテンシャルに保持されている。一例として、アノード容器870と移動導電体857との間のポテンシャル差は約1.2 ボルトである一方、カソード容器872と移動導電体857との間のポテンシャル差は約1.2 ボルトである。
【0179】
この特別の例において、アノードセル853には、処理すべき溶液または流体880が含まれている。しかしながら、他の応用において、この溶液はカソードセル854に含まれていてもよい。運転において、電流は容器870〜流体880を通して導電体857へと流れる。結局、溶液中の正に帯電したイオンは導電体857へと移動し、その上に電気吸着される。これらイオンは導電体857に沿ってカソードセル854へと運ばれる。そこでは、電気吸着された陽イオンが負に帯電した容器872の方に引かれて、導電体857から溶液881の中へと放出される。
【0180】
CDIシステム850の一つの利点は、移動電極852の必要とされる実際の表面積が比較的高いことは必要とされないこと、即ち、炭素エアロゲルのように高くなくてもよいことである。移動電極852を移動させる速度を増大させることによって、単位時間当たりに溶液880が遭遇する表面積を増大させることが可能である。その結果、多孔性度の高い電極を用いずに、CDIのようなプロセスを行うことが可能である。
〔商業的応用〕
本発明によるセルおよびシステムを用いることによって、体液および水流を含む流体から、以下のおよび他の不純物およびイオンを除去し、またセルを実質的に再生することが可能である。
【0181】
1.非酸化性の有機および無機陰イオン。無機陰イオンには、OH-、Cl-、I-、F-、NO3-、SO42-、HCO3-、CO32-、H2PO4-、HPO42-、およびPO43-が含まれる。この場合、運転のメカニズムは静電気的二重層の充電である。この目的のためには、ガス発生を回避するために、電極を横切る最終ポテンシャルを溶媒の電気分解に必要とされるよりも低く維持するのが望ましい。最適なポテンシャルは、正規の水素電極(NHE)に対して1.0 〜1.2 ボルトの範囲である。一般に、水処理について推奨されるポテンシャルの範囲は、0.6 〜1.2 ボルトにある。
2.Li+,Na+、K+、Cs+、Mg++、Ca++のような非還元性陽イオン。ここでも、運転のメカニズムは電気二重相の充電である。
3.Cu++、Fe++、Pb++、Zn++、Cd++のような還元性陽イオン。この場合、運転メカニズムは電着である。
4.還元性陰イオン。
5.バクテリア、ウイルス、酸化物粒子、泥、埃等のようなコロイド粒子。この場合、運転のメカニズムは電気泳動である。
6.炭素複合電極44への有機分子の化学吸着。この吸着プロセスは、比較的不可逆的であろう。この場合の再生には、吸着された有機物(即ち、PCB)を破壊する目的で、強力な酸化剤の使用が含まれるであろう。
【0182】
特に、本発明のシステムおよびセルは何れかの金属の電着を可能にし、この金属には銀、金、白金、イリジウム、ロジウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、血液のような体液からの汚染物の除去を可能にする。これらの汚染物は、有機および無機のイオンから、ウイルスを含む微小粒子までに亘っている。
【0183】
本発明の分離プロセスおよびシステムには、下記の事項を含む幾つかの重要な応用が含まれる。
【0184】
1.酸、塩基または他の同様の二次廃棄物を発生することなく、種々のイオンを廃水から除去すること。この応用は、放射性核種が関与する場合に特に重要であり、ここでは低レベルの放射性無機物質を除去するために、本発明の容量性脱イオンプロセスが用いられるであろう。
2.原子力発電所および火力発電所におけるボイラー水の処理。このような処理は、点食、応力腐食割れ、および熱移転表面のスケール付着を防止するために不可欠である。このようなプロセスは、電力が容易に入手でき、またスペースが限られることによりイオン交換樹脂の再生に必要な化学薬品の在庫が制限される場所、特に原子力船および原子力潜水艦については魅力的である。
3.半導体を処理するための高純度水の製造。他の化学的不純物を添加することなく導電性をなくすことに加えて、このシステムは電気泳動によって小さな懸濁している固体を除去することができる。更に、有機不純物は炭素に吸着される。
4.家庭用の電気駆動の水軟化器。CDIシステムは、塩化ナトリウムの導入なしで家庭用飲料水を軟化させ、また再生のために塩の添加を必要としないであろう。
5.農業用灌漑水からの塩の除去。
6.海水の脱塩。
【0185】
本発明のCDIシステムを用いることによって、以下の物理化学的プロセスにより、流体の流れから有機および無機の汚染物および不純物を除去することが可能となった。この物理化学的プロセスは、水または何れか他の誘電体溶媒からの、有機イオンまたは無機イオンの可逆的な静電気的除去;他の何れかの吸着プロセス(ポテンシャル下での金属体積、化学吸着および物理吸着を含むが、これに限定されない)による、有機または無機イオンの可逆的もしくは不可逆的な除去;電着(電気化学的還元または電気化学的酸化が含まれ得る)による、有機若しくは無機の何れかの不純物の除去;小さな懸濁固体(コロイドを含むが、これに限定されない)の、電極表面における電着およびトラップである。誘導された電気双極子は、印加された電界によって、強制的に電極表面へ向かわせられる。
【0186】
CDIシステムおよびプロセスのより特殊な応用には、ガススクラビングカラムを補助するために容量性脱イオンが用いられる何れかの適用が含まれる;例えば、CO2がガス流から水流の中へ除去されると、これはHCO3- およびCO32-へと変換される。これらのイオンは、容量性脱イオンによってスクラビング溶液から除去できるであろう。このような応用には、印加される負荷の均一化を補助するための、容量性脱イオン器の何れかの大スケールの並列使用が含まれる。何故なら、本発明は同時にエネルギー保存装置として働くこともできるからである。他の応用には、容量性脱イオンおよびイオンクロマトグラフィーの原理を組み合わせた分析器具、並びに炭素エアロゲル電極(モノリシックまたは粉末ベッド)上でのイオン吸着に基づくクロマトグラフィー装置が含まれる。
【0187】
本発明のクロマトグラフは種々の適用を有しており、その中には次のものが含まれる。1.アミノ酸、ペプチド、タンパクおよび関連化合物の分離。2.糖鎖(炭水化物)および糖鎖誘導体の分離。3.脂肪酸および芳香族酸のような種々の有機酸の分析。4.脂肪族アミン、複素環アミンおよび芳香族アミンの分離。5.核酸および成分の分離。6.プリンおよびピリミジン塩基、並びにモノ−、ジ−およびトリ−リン酸ヌクレオチドのような、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび塩基の分離。7.複合および非複合形態のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の分析。8.ある種の希土類元素の分離。9.塩化物、臭化物およびヨウ化物のようなハロゲン化物の分離。10.複合ポリリン酸塩混合物、および低濃度のリン陰イオン、チオリン酸塩、イミドリン酸塩を含む混合物のような、オキシリン陰イオン(phosphorous osyanion)の分離。11.血液中のヘモグロビンからのAIC成分の分離。ミズノに付与された米国特許第5,294,336 号を参照されたい。12.生物学的因子からのヒト血漿共凝固因子VIIIの分離および単離。ヘリングに付与された米国特許第4,675,385 号を参照されたい。13.ヘモグロビンの分析。ヤスダ等に付与された米国特許第5,358,639 号を参照されたい。14.血液中の種々の成分の単離(HIVが含まれるが、これに限定されない)。
【0188】
増強器は、例えば、環境保護法に適合することを証明するために、血液および他の体液、並びに有機塩および無機塩の水溶液を含む種々の流体の分析に用いることができ、また印刷回路基板の製造に用いられるメッキ浴を制御するために使用することができる。
以上述べた本発明の実施例の説明は、例示および説明のために与えられたものである。これらの記載は他の態様を排除するのもではなく、本発明をこれらの記載そのものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】従来技術の脱塩装置の概略図である。
【図2】図1のモデル脱塩システムに用いられたセルを拡大して模式的に示す等尺大の正面図である。
【図3】電気化学的セルの模式的拡大断面図である。
【図4A】図3の電気化学的セル用に適合された、容量性電極を大きく拡大して示す平面図である。
【図4B】図4Aの容量性電極に関連して用いられるゴムガスケットを、大きく拡大して示す展開図である。
【図5】容量性脱イオンの第一の態様(図3に示す一つの電気化学セルを用いた再生システム)を示すブロックダイアグラムである。
【図6】容量性脱イオン(図5の再生システム)の操作を示す三つの重なったタイミングチャートである。
【図7】容量性脱イオンの第二の態様、即ち、二つの平行な電気化学セル(夫々は、図3のように多くの電極のスタックで形成されている)を用いた再生システムを示すブロック図である。
【図8A】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図8B】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図8C】容量性脱イオン(図7の再生システム)の運転を示すタイミングチャートである。
【図9】図7に示したシステムのエネルギー節約モードを示すタイミングチャートである。
【図10】脱イオン(再生システム)の第三の態様を示すブロック図である。
【図11A】電気化学セルの他の態様の模式的等尺図である。
【図11B】電気化学セルの他の態様の部分拡大図である。
【図12】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図13】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図14】容量性脱イオン(図5の再生システム)を用いた実験的タイミングチャートを表している。
【図15】他の電極を大きく拡大して示す平面図である。
【図16】図15の電極の拡大側面図である。
【図17】カートリッジを模式的に示す、等尺大の部分断面図である。
【図18】他の電極の平面図である。
【図19】図18の電極の線19−19に沿った横断面図である。
【図20】更に別のカートリッジまたはセルの横断面図である。
【図21】電気的吸着媒体で形成したセルの側面図である。
【図22】電気化学的に再生されたイオン交換プロセスにおいて用いるための、複合電極を含んだ他のセルの横断面図である。
【図23】電気吸着イオンクロマトグラフの第一の態様を示すブロック図である。
【図24】図23のクロマトグラフに用いられるセルの、長手方向の横断面図である。
【図25】図24のセルの第一の態様の、線25−25に沿った断面図である。
【図26】図23のクロマトグラフによって分離された三つの種A,BおよびCの溶出を示す、導電性一時間のグラフである。
【図27】図24のセルの第二の態様を、線25−25に沿って示す断面図である。
【図28】クロマトグラフに用いるセルの他の態様を示す切り欠き平面図である。
【図29】図28のセルの線29−29に沿った断面図である。
【図30】増強装置のブロック図である。
【図31】フォトリソグラフィーで作成された単一のモノリシック薄膜電極の等尺図である。
【図32】図31の電極700の、線32−32に沿った断面図である。
【図33】他の電極の側面図である。
【図34】ティーバッグ電極の模式図である。
【図35】容器内の流体の流れの中に配置された、図34の一対のティーバッグ電極を示している。
【図36】電気泳動セルの模式的断面図である。
【図37】可動性電極を用いた容量性脱イオンシステムの模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セルであって、
2つの末端電極と、
互いにほぼ平行な関係に位置決めされ、且つ互いから離間されて互いに連通するようになった複数のチャンバを形成する一つ以上の両側付電極と、を有し、
電極は、電気吸着媒体を有し、且つ交互に配置された陽極及び陰極を形成し、
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に開放チャンネルが形成され、
電気吸着媒体は、炭素エアロゲル複合体;粒状炭素、炭素エアロゲル金属若しくはバックミンスターフラーレンの所定量をパックしたもの;TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、Mo2C、Cr3C2、Ta2Cから実質的になる群から選択された、高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約10μohm-cm〜2,000 μohm-cmの範囲の抵抗をもった炭化物または炭化物複合体;多孔性のチタン、白金または他の金属の所定量をパックしたもの;金属スポンジまたは金属フォーム;レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲル中に浸漬した網状のガラス状炭素(RVC);または前記スクリーンの容量比表面積を最適化するためにフォトリソグラフィーによって形成された一列の孔を含む多孔性の導電性スクリーンからなる群から選択される、容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セル。
【請求項2】
容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セルであって、
2つの末端電極と、
互いにほぼ平行な関係に位置決めされ、且つ複数のチャンバを形成する一つ以上の両側付電極と、を有し、
電極は、電気吸着媒体を有し、且つ交互に配置された陽極及び陰極を形成し、
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に開放チャンネルが形成され、
電気吸着媒体は、炭素エアロゲル複合体;粒状炭素、炭素エアロゲル金属若しくはバックミンスターフラーレンの所定量をパックしたもの;TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、Mo2C、Cr3C2、Ta2Cから実質的になる群から選択された、高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約10μohm-cm〜2,000 μohm-cmの範囲の抵抗をもった炭化物または炭化物複合体;多孔性のチタン、白金または他の金属の所定量をパックしたもの;金属スポンジまたは金属フォーム;レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲル中に浸漬した網状のガラス状炭素(RVC);または前記スクリーンの容量比表面積を最適化するためにフォトリソグラフィーによって形成された一列の孔を含む多孔性の導電性スクリーンからなる群から選択される、容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セル。
【請求項3】
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に形成された開放チャンネルは、該チャンネルが、隣接した電極間に形成されたチャンネルの各々内で共通の一般的な方向にセルの中の流体の流れを許すようなものである、請求項1又は2の電気化学セル。
【請求項4】
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に形成された開放チャンネルは、蛇行経路をたどる、請求項1又は2の電気化学セル。
【請求項1】
容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セルであって、
2つの末端電極と、
互いにほぼ平行な関係に位置決めされ、且つ互いから離間されて互いに連通するようになった複数のチャンバを形成する一つ以上の両側付電極と、を有し、
電極は、電気吸着媒体を有し、且つ交互に配置された陽極及び陰極を形成し、
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に開放チャンネルが形成され、
電気吸着媒体は、炭素エアロゲル複合体;粒状炭素、炭素エアロゲル金属若しくはバックミンスターフラーレンの所定量をパックしたもの;TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、Mo2C、Cr3C2、Ta2Cから実質的になる群から選択された、高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約10μohm-cm〜2,000 μohm-cmの範囲の抵抗をもった炭化物または炭化物複合体;多孔性のチタン、白金または他の金属の所定量をパックしたもの;金属スポンジまたは金属フォーム;レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲル中に浸漬した網状のガラス状炭素(RVC);または前記スクリーンの容量比表面積を最適化するためにフォトリソグラフィーによって形成された一列の孔を含む多孔性の導電性スクリーンからなる群から選択される、容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セル。
【請求項2】
容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セルであって、
2つの末端電極と、
互いにほぼ平行な関係に位置決めされ、且つ複数のチャンバを形成する一つ以上の両側付電極と、を有し、
電極は、電気吸着媒体を有し、且つ交互に配置された陽極及び陰極を形成し、
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に開放チャンネルが形成され、
電気吸着媒体は、炭素エアロゲル複合体;粒状炭素、炭素エアロゲル金属若しくはバックミンスターフラーレンの所定量をパックしたもの;TiC、ZrC、VC、NbC、TaC、UC、MoC、WC、Mo2C、Cr3C2、Ta2Cから実質的になる群から選択された、高温で安定で、化学的に耐性があり、高導電性で約10μohm-cm〜2,000 μohm-cmの範囲の抵抗をもった炭化物または炭化物複合体;多孔性のチタン、白金または他の金属の所定量をパックしたもの;金属スポンジまたは金属フォーム;レゾルシナール/ホルムアルデヒド炭素エアロゲル中に浸漬した網状のガラス状炭素(RVC);または前記スクリーンの容量比表面積を最適化するためにフォトリソグラフィーによって形成された一列の孔を含む多孔性の導電性スクリーンからなる群から選択される、容量性脱イオン装置に使用するための電気化学セル。
【請求項3】
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に形成された開放チャンネルは、該チャンネルが、隣接した電極間に形成されたチャンネルの各々内で共通の一般的な方向にセルの中の流体の流れを許すようなものである、請求項1又は2の電気化学セル。
【請求項4】
流体がセルの中を電極を横切って流れるようにするために、隣接した電極間に形成された開放チャンネルは、蛇行経路をたどる、請求項1又は2の電気化学セル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2008−178875(P2008−178875A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13997(P2008−13997)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【分割の表示】特願平8−501007の分割
【原出願日】平成7年5月19日(1995.5.19)
【出願人】(596054847)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【分割の表示】特願平8−501007の分割
【原出願日】平成7年5月19日(1995.5.19)
【出願人】(596054847)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】
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