説明

密封容器の製造方法、容器密封システム及び蓋溶接機

【課題】本発明の目的は、密封容器の製造方法において、溶着予定箇所を溶着するために供給すべきレーザー照射エネルギーを低減し、必要最小限とすることと、周囲の温度が変化しても溶着予定箇所を安定して溶着することによって、内容物の漏れ、開蓋、一部白濁等の密封容器の品質低下を抑えることである。さらに、内容物の劣化や変質等の品質低下を抑えつつ、容器の密封を図ることである。
【解決手段】本発明の密封容器の製造方法は、レーザー溶接法によって、内容物を充填した容器胴体と該容器胴体の口部に装着された蓋とを溶着して気密状態とした密封容器の製造方法において、前記容器胴体の口部に予熱された前記蓋を載せた状態で、前記容器胴体をレーザー照射領域に入れる配置工程と、前記蓋と前記容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して、前記蓋と前記容器胴体とを溶着し、容器の密封を行なう溶着工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶接法によって、内容物を充填した容器胴体とその容器胴体の口部に装着された蓋とを溶着する技術、特に、少ないレーザー照射エネルギーにて溶着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
密封容器、例えば飲料用容器には、壜、缶、プラスチック容器等の各種容器が知られている。近年、その良ハンドリング性等の利便性の観点から缶やプラスチック容器が広く用いられるようになってきている。また、これらの容器の密封には、容器胴体に蓋を取り付ける方法が広く行われている。
【0003】
例えば、缶における蓋の取り付けは、容器胴体の端部と蓋の端部とを重ねてフランジ構造を形成し、機械的に重畳させる巻き締めにより行われる。この巻締工程は金属部材の機械的変形を利用した工程のため、蓋は一般に容器胴体よりも厚い部材からなり、中身密封用にスチレンブタジエンラバーやポリ塩化ビニルなどのポリマー材を備えている。このようにポリマー材が必要であり、また、蓋を厚肉とすることから、金属材の使用量が多くなってしまう。
【0004】
また、プラスチック容器では巻締工程を実施することが困難であり、巻き締めをして密封するプラスチック容器は流通していない。プラスチック容器において、最も流通している容器はPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルである。PETボトルにおいては、ボトル口部にキャップをねじ込む方式が密封方式として使用されている。しかし、このキャップが容器全体の中で大きなコストアップ要因となっている。さらにキャップは主としてPP(ポリプロピレン)製のため、リサイクルの障害となっている。
【0005】
使用する材料が少なく、簡易な構造でキャップやシール部材等の蓋を取り付けることができる方法として、容器胴体に蓋を熱溶着する方法が缶及びプラスチック容器のいずれにおいても検討されている。熱溶着する方法のうち特にレーザー溶接法は、他の熱溶着する方法のプロセスとは異なり、溶着予定箇所への熱供給を非接触で、かつ精密に領域を限定できる点に特徴があり、このメリットを飲料・食品容器に応用した場合、高品質でかつ高速な密封を期待することができる。
【0006】
ところで、溶接するに際して予熱しておく技術が開示されている。例えば、薄板の溶接すべき縁をその溶接に先立って、収束したレーザー光線により予熱することを特徴とする方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、レーザー発振器が発生するレーザー光線を用いて、被加工素材を加工するレーザー加工装置において、被加工素材のレーザー光線照射部を予熱する予熱装置を設けたことを特徴とするレーザー加工装置が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平8−229689号公報
【特許文献2】特開昭59−35890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レーザー溶接法をはじめとする熱溶着を行なう場合、溶着予定箇所の温度により供給すべき熱量が異なるため、例えば製造開始前の試験確認により、供給する熱量を調整する作業が行われる。しかし、レーザー溶接法では高速な工程が実施可能であるため、例えば試験確認後の周囲の温度変化により供給すべきレーザー照射エネルギーが変化して溶着不良が生じた際に、それから供給する熱量を調整したのでは生じる不良容器が多くなりすぎる懸念がある。
【0009】
室温の容器又は冷えた内容物によって低い温度となっている容器の溶着予定箇所を溶着するためには、溶着させるためだけのレーザー照射エネルギーの他に溶着温度に近づくように単に昇温させるためのレーザー照射エネルギーを供給する必要がありコストがかかる。低温から昇温させて溶着させるためには、特に飲料容器の高速製造ラインのような場合には、エネルギー密度の高いレーザー光の照射が可能な高出力型のレーザー照射装置を使用する必要がある。
【0010】
そこで溶着温度に事前に近づけておくために、特許文献1又は2のような溶着予定箇所を予熱しておく技術を、レーザー溶接法による密封容器の製造に適用することで、前述した溶着予定箇所に供給すべきレーザー照射エネルギーが周囲の温度変化により変化する問題及び溶着温度まで近づくように単に昇温させるためのレーザー照射エネルギーを供給する必要がある問題を解決できる可能性がある。しかし、飲料・食品容器等の容器を密封する場合、容器胴体を加熱して溶着予定箇所を予熱しておくことが容易であるが、予熱する際に内容物まで加熱してしまうと、内容物によっては、内容物の劣化や変質等の品質低下を生じる懸念がある。
【0011】
そこで本発明は、このような問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、密封容器の製造方法において、溶着予定箇所を溶着するために供給すべきレーザー照射エネルギーを低減し、必要最小限とすることである。また、周囲の温度が変化しても溶着予定箇所を安定して溶着することによって、内容物の漏れ、開蓋、一部白濁等の密封容器の品質低下を抑えることである。さらに、内容物の劣化や変質等の品質低下を抑えつつ、容器の密封を図ることである。
【0012】
また、本発明の目的は、容器密封システムにおいて、蓋の予熱のための特別なラインを設けることなく、簡易に効率よく蓋を予熱された状態とすることである。
【0013】
また、本発明の目的は、蓋溶接機において、レーザー溶接する直前の未密封状態の容器について、簡易に効率よく蓋を加熱し、蓋を予熱された状態とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、レーザー光を照射して容器胴体と蓋を溶着する際に蓋を予熱された状態としておくことで上述した課題を解決することができることを見出して、本発明を完成させた。即ち、本発明の密封容器の製造方法は、レーザー溶接法によって、内容物を充填した容器胴体と該容器胴体の口部に装着された蓋とを溶着して気密状態とした密封容器の製造方法において、前記容器胴体の口部に予熱された前記蓋を載せた状態で、前記容器胴体をレーザー照射領域に入れる配置工程と、前記蓋と前記容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して、前記蓋と前記容器胴体とを溶着し、容器の密封を行なう溶着工程を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記容器胴体の口部に前記蓋を載せる蓋装着工程の前に、前記蓋を加熱して該蓋を予熱された状態とする予熱工程を有することが好ましい。十分な数の予熱された蓋を容易に準備しておくことができ、密封容器の溶着効率を低下させることがない。また、蓋を容器胴体とは別場所で加熱するため、内容物の劣化や変質等の品質低下を極めて少なくすることができる。
【0016】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記容器胴体の口部に前記蓋を載せる蓋装着工程の後に、前記容器胴体の口部に前記蓋を載せた状態で、前記蓋を加熱して該蓋を予熱された状態とする予熱工程を有することが好ましい。十分な数の予熱された蓋を容易に準備しておくことができ、密封容器の溶着効率を低下させることがない。また、予熱された蓋の温度変化が起きないうちに、蓋と容器胴体とを正確に溶着することができ、溶着のばらつきをさらに小さくできる。
【0017】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記予熱工程において、電熱線、温風、熱水、蒸気又は赤外線ランプにより、前記蓋を加熱することが好ましい。蓋の予熱を安価な器具で容易に行なうことができる。また、比較的高価なレーザー照射によるエネルギー供給を他の安価な熱源からのエネルギー供給に代替することで、容器密封システム全体を安価に構成することができる。
【0018】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記密封容器は、前記蓋又は前記容器胴体のいずれか一方又は両方がポリエチレンテレフタレートからなる容器であるか、或いは、少なくとも前記蓋と前記容器胴体との密着箇所に溶着材としてポリエチレンテレフタレートからなるシートが挟まれている容器であり、前記溶着工程の前に、前記蓋を50〜65℃に予熱された状態とし、前記溶着工程において、ポリエチレンテレフタレートからなる前記蓋又は前記容器胴体のいずれか一方又は両方を前記溶着予定箇所において溶融固化することにより容器の密封を行なうか、或いは、ポリエチレンテレフタレートからなる前記シートを前記溶着予定箇所において溶融固化することにより容器の密封を行なうことが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの溶融温度よりやや低い温度まで予熱するのではなく、ガラス転移温度よりやや低い温度にて予熱することで、ポリエチレンテレフタレートの熱収縮や結晶化を生じることなくレーザー溶接することができ、レーザー照射エネルギーの低減のみを達成できる。その結果、ポリエチレンテレフタレートを用いたときにおいて、内容物の漏れ、開蓋、一部白濁等の品質低下を少なくすることができる。
【0019】
本発明に係る容器密封システムは、蓋を容器胴体の口部に載せて未密封状態の容器とする蓋装着機と、該蓋装着機に前記蓋を単列で順次供給する蓋供給機と、前記蓋装着機まで前記容器胴体を順次搬送する第一搬送機と、前記未密封状態の容器の蓋と容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して前記未密封状態の容器を密封する蓋溶接機と、前記未密封状態の容器を前記蓋装着機から前記蓋溶接機まで単列で順次搬送する第二搬送機と、を有する容器密封システムにおいて、前記容器胴体の口部に載せる前の隣り合う前記蓋を複数個同時に加熱するか、隣り合う前記未密封状態の容器の蓋を複数個同時に加熱するかの、どちらか一方又は両方の蓋予熱機構を設けたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る蓋溶接機は、蓋を容器胴体の口部に載せた未密封状態の容器の前記蓋と前記容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射するレーザー照射手段と、該レーザー照射手段まで前記未密封状態の容器を単列で順次移動させる移動手段と、該移動手段による前記未密封状態の容器の移動途中に、隣り合う複数個の前記未密封状態の容器の各蓋をそれぞれ押さえる蓋固定手段とを有し、該蓋固定手段のうち少なくとも前記蓋を押さえる押当部品が、発熱体であるか或いは被加熱体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の密封容器の製造方法において、溶着予定箇所を溶着するために供給すべきレーザー照射エネルギーを低減し、必要最小限とすることができる。また、周囲の温度が変化しても溶着予定箇所を安定して溶着することによって、内容物の漏れ、開蓋、一部白濁等の密封容器の品質低下を抑えることができる。さらに、内容物の劣化や変質等の品質低下を抑えつつ、容器の密封を図ることができる。
【0022】
また、本発明の容器密封システムにおいて、蓋の予熱のための特別なラインを設けることなく、簡易に効率よく蓋を予熱された状態とすることができる。
【0023】
また、本発明の蓋溶接機において、レーザー溶接する直前の未密封状態の容器について、簡易に効率よく蓋を加熱し、蓋を予熱された状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。なお、同一部材・同一部位には同一符号を付した。
【0025】
本実施形態に係る密封容器の製造方法は、レーザー溶接法によって、内容物を充填した容器胴体と容器胴体の口部に装着された蓋とを溶着して気密状態とした密封容器の製造方法において、容器胴体の口部に予熱された蓋を載せた状態で、容器胴体をレーザー照射領域に入れる配置工程と、蓋と容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して、蓋と容器胴体とを溶着し、容器の密封を行なう溶着工程を有する。ここで本実施形態に係る密封容器の製造方法は、これら2つの工程の他、蓋を洗浄する洗浄工程、容器胴体の内部を洗浄する洗浄工程、容器胴体に内容物を充填する充填工程、内容物が充填済みで蓋が載せられていない容器胴体の搬送工程、蓋が載せられていない容器胴体の口部近くまで蓋を搬送する蓋供給工程、搬送された蓋を容器胴体の口部に蓋を載せる蓋装着工程、蓋が載せられた容器胴体の搬送工程、溶着工程の後に密封容器を搬出する容器搬出工程、密封不良を検査する不良品検査工程又は密封容器にラベルを付すラベリング工程をそれぞれ有していても良い。
【0026】
さらに、本実施形態に係る密封容器の製造方法は、蓋を加熱して蓋を予熱された状態とする予熱工程を有していても良い。予熱工程は、配置工程の前であればどのタイミングで実施しても良く、例えば蓋装着工程の前又は蓋装着工程の後である。即ち、本実施形態に係る密封容器の製造方法は、例えば、容器胴体の口部に蓋を載せる蓋装着工程の前に、蓋を加熱して蓋を予熱された状態とする予熱工程を有するか、或いは、容器胴体の口部に蓋を載せる蓋装着工程の後に、容器胴体の口部に蓋を載せた状態で、蓋を加熱して蓋を予熱された状態とする予熱工程を有していても良い。また、本実施形態に係る密封容器の製造方法は、蓋装着工程の前及び蓋装着工程の後の両方に予熱工程を有していても良い。
【0027】
先ず、予熱工程を、蓋装着工程の前に実施する形態について説明する。図1に本実施形態に係る容器密封システムの一形態を示した。図1は、本実施形態に係る容器密封システムの第一形態を示す概略図である。図1に示すように、第一形態に係る容器密封システム600は、蓋83を容器胴体81の口部89に載せて未密封状態の容器85とする蓋装着機64と、蓋装着機64に蓋83を単列で順次供給する蓋供給機63と、蓋装着機64まで容器胴体81を順次搬送する第一搬送機62と、未密封状態の容器85の蓋83と容器胴体81との溶着予定箇所84に対してレーザー光73aを照射して未密封状態の容器85を密封する蓋溶接機66と、未密封状態の容器85を蓋装着機64から蓋溶接機66まで単列で順次搬送する第二搬送機65と、を有する容器密封システムにおいて、容器胴体81の口部89に載せる前の隣り合う蓋83を複数個同時に加熱する蓋予熱機構α1を設けている。なお、第一形態に係る容器密封システム600では、さらに、容器胴体の内部や蓋を洗浄する洗浄機(不図示)、容器胴体81に内容物90を充填する充填機61、密封された容器を搬出する搬出機(不図示)、溶着不良を検査する不良品検査機(不図示)、容器にラベルを付すラベル貼付機(不図示)を設けても良い。
【0028】
また、図2に本実施形態に係る密封容器の製造方法の一形態を示した。図2は、本実施形態に係る密封容器の製造方法の第一形態を示す工程図である。なお、第一形態に係る密封容器の製造方法は、例えば図1に示した第一形態の容器密封システム600で行われる。第一形態に係る密封容器の製造方法では、蓋装着工程S3の前に予熱工程S8を実施する。以下、図2に示した第一形態の密封容器の製造方法を、図1及び図2を参照しながら、工程を追って説明する。
【0029】
まず、充填工程S1において、例えば充填機61を使用する。充填機61は、ターンテーブル(不図示)を有する。ターンテーブル上に空の容器胴体81が載せられて、ターンテーブルを一回りする間に内容物90が充填される。内容物90は、例えば飲料等の液体若しくは固液混合体、又は食品である。内容物90が飲料である場合、その充填方式は、無菌充填方式や常温充填方式であっても、ホット充填方式であっても良い。内容物90が常温である場合又は冷却されている場合は、容器胴体81の温度は内容物90の温度(例えば30℃以下)に近いため、蓋83を予熱することによって供給すべきレーザー照射エネルギーを低減する効果が大きい。内容物90を充填するスピードは、容器の容量によって違いが有るものの、例えば飲料の場合500〜2000容器/分である。
【0030】
次に、蓋が載せられていない容器胴体の搬送工程S10において、内容物90の充填された容器胴体81は、例えばコンベアである第一搬送機62により、蓋装着機64まで順次搬送される。
【0031】
次に、蓋供給工程S2において、例えば図1に示した蓋供給機63を使用する。蓋供給機63は、例えばコンベアである蓋搬送手段63aと蓋供給手段63bとを有する。蓋供給手段63bは、蓋83を1つずつ保持し、円軌道上を移動する複数の蓋保持具(不図示)を有する。そして、蓋供給工程S2において、蓋搬送手段63aは、蓋供給手段63bの1つの蓋保持具につき一個の蓋83を単列で順次供給する。そして、蓋供給手段63bの蓋保持具は、保持した蓋83を1つの容器胴体81につき1個ずつ、容器胴体81の口部89の近くまで単列で順次搬送する。この時、蓋供給手段63bの蓋保持具が移動する円軌道、即ち蓋83が搬送されるラインと、第一搬送機62による容器胴体81が搬送されるライン62aとを一定時間同期した状態とする。なお、蓋供給工程S2においては、まだ容器胴体81の口部89に蓋83を載せていない。また、このとき、内容物90が発泡している場合には泡切りを行い、炭酸ガスパージ若しくは窒素ガスパージを行なう。
【0032】
また、第一形態に係る密封容器の製造方法では、蓋供給工程S2において、予熱工程S8を実施する。予熱工程S8において、蓋予熱機構α1を使用する。蓋予熱機構α1は、容器密封システム600において、容器胴体81の口部89に載せられる前の単列で順次搬送される隣り合う蓋83を複数個同時に加熱する加熱手段を有する。例えば、蓋予熱機構α1は、蓋供給機63の蓋搬送手段63aであるコンベア上を単列で順次搬送される隣り合う蓋83を複数個同時に加熱するか、或いは蓋供給機63の蓋供給手段63bの保持具に保持されて単列で順次搬送される隣り合う蓋83を複数個同時に加熱する。これにより、蓋83の予熱のための特別なラインを設けることなく、簡易に効率よく蓋83を予熱された状態とすることができる。即ち、搬送される蓋83をライン上で簡易に効率よく予熱された状態とすることができる。なお、コンベアを複数列に分列させてそれぞれのラインで順次搬送される蓋83について隣り合う蓋83を複数個同時に加熱して、蓋83を予熱された状態としても良い。蓋83を予熱された状態とするための時間を長く取ることができる。
【0033】
予熱工程S8において、電熱線、温風、熱水、蒸気又は赤外線ランプにより、蓋83を加熱することが好ましい。蓋の予熱を安価な器具で容易に行なうことができる。また、比較的高価なレーザー照射によるエネルギー供給を他の安価な熱源からのエネルギー供給に代替することで、容器密封システム全体を安価に構成することができる。例えば、電熱線、温風又は赤外線によりコンベア又は蓋保持具を加熱し、そのコンベア又は蓋保持具からの熱伝導により、単列で順次搬送される隣り合う蓋83を複数個同時に接触式で加熱し、蓋83を予熱された状態とする。蓋83はコンベア上又は蓋保持具内に一定時間存在するため、接触式により蓋83を十分に加熱して予熱された状態とすることができる。或いは、赤外線ランプ若しくは電熱線から放出される赤外線又は温風を、単列で順次搬送される蓋83にあてて、その隣り合う蓋83を複数個同時に非接触式で加熱し、蓋83を予熱された状態とする。また、接触式と非接触式を併用して蓋83を加熱しても良い。例えば、赤外線を蓋83に照射して蓋83を加熱すると同時に、その赤外線でコンベア又は蓋保持具を加熱し、そのコンベア又は蓋保持具からの熱伝導により蓋83を加熱する。蓋予熱機構α1は、赤外線を用いる場合は反射板を、温風を用いる場合はフードを備えることが好ましい。蓋83又はコンベア等の加熱する的に集中して赤外線又は温風を当てることができる。また、蓋83を蓋保持具内に搬送する際に、熱水や蒸気の領域を通過させることで、蓋83を予熱された状態とすることができる。
【0034】
また、容器胴体81の口部89に載せる直前の蓋83を加熱することが好ましく、例えば蓋供給手段63bの蓋保持具により搬送される蓋83を加熱することが好ましい。蓋83を予熱された状態としてからレーザー溶接により蓋83と容器胴体81とを溶着するまでの時間が短くなるため、蓋83と容器胴体81とを溶着する前における、予熱された蓋83の温度低下を少なく抑えることができる。
【0035】
さらに、蓋予熱機構α1は、周囲の温度が変化しても、蓋83を常に一定の温度に予熱された状態で供給するために、加熱強度の調整手段を有することが好ましい。
【0036】
蓋供給工程S2において、予熱工程S8を実施することで、十分な数の予熱された蓋83を容易に準備しておくことができる。また、蓋83を容器胴体81とは別場所で加熱するため、蓋83のみの加熱が可能であり内容物90の劣化や変質等の品質低下を極めて少なくすることができる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る密封容器について説明する。図3(a)に本実施形態に係る第1形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器100は、口部9を有する容器胴体1が、口部9を密閉する蓋3によって密封された密封容器であって、容器胴体1と蓋3との溶着予定箇所4を有する。
【0038】
図3(b)に本実施形態に係る第2形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器200は、口部19を有する容器胴体11が、口部19を密閉する蓋13によって密封された密封容器であって、容器胴体11と蓋13との溶着予定箇所14を有する。密封容器100は開封時にストローが挿しやすい形状であり、密封容器200はボトル形状である。また、密封容器100は溶着予定箇所4の面積を大きく取れるので耐圧強度を大きくすることができる。
【0039】
図3(c)に本実施形態に係る第3形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器300は、蓋23の端部に開蓋のためのつまみ27を設け、容器胴体21と蓋23との溶着予定箇所24を有する。容器胴体21から口部29に至るまで、截頭円錐状とすることで、飲みやすい飲み口としている。また、蓋23を小型化でき、蓋材料の使用量を低減できる。
【0040】
図3(d)に本実施形態に係る第4形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器400は、容器胴体31の側面に、容器胴体31と蓋33との溶着予定箇所34を有する。そのため、レーザー溶接後に溶着予定箇所34は溶着箇所になるが、この溶着箇所には、内圧によって、当該側面の面方向であって蓋33の開封方向(図3(d)の矢印A方向)の剪断応力が加わる。密封容器400では溶着予定箇所34を容器胴体31の側面に設けたため、溶着面積を大きくできるので、蓋33と容器胴体31との単位面積あたりの接着力が弱くても、高い剪断強度が得られる。そのため、比較的弱い接着による容易な開蓋性と高い耐圧性を兼ね備えることができる。なお、溶接予定箇所34は、口部39に向かってわずかに先細りのテーパー状になっても良く又はわずかな突起部を設けても良い(不図示)。溶接予定箇所34をこのような形状にすることで、容器胴体31と蓋33との溶接時の密着性を確保しやすくなる。
【0041】
容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、プラスチック材料の溶融固化により容器が密封されるものであれば、いかなる素材から形成されていても良いが、容器胴体に充填される液体によっても制限を受ける。例えば飲料用容器であれば、液体の品質保持の観点から、容器胴体に充填される液体に対して不活性であることが必要である。さらに酸素等のガスバリア性を備えていることが好ましい。また炭酸飲料を充填する場合には耐圧性を有する素材から形成されていることが必要である。このような観点から容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、アルミニウム又はスチール等の金属材料或いはプラスチック材料から形成されていることが好ましい。また、容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、リサイクル性の観点から同一素材で形成することが好ましい。特にプラスチック材料から形成することが好ましく、高温まで加熱しなくてもレーザー溶接が可能である。プラスチック材料製の密封容器とすれば、従来のPETボトルと比較して、充填速度と輸送効率が向上すると共に容器のリサイクル性が向上する。このとき、プラスチック容器は透光性を有するため、金属缶と異なって容器胴体に充填される液体を目視することができる。さらに、缶構造と比較すると巻締できない形状であっても密封化でき、巻締する場合よりも小さな蓋を用いて密封化できる。
【0042】
例えば、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33との材料の組み合わせとしては、(1)プラスチック材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋、(2)金属材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋、(3)プラスチック材料製の容器胴体と金属材料製の蓋又は(4)金属材料製の容器胴体と金属材料製の蓋であって容器胴体と蓋との間にプラスチック樹脂シート(不図示)を挟み込んだものがある。(1)、(2)、(3)では、溶着予定箇所4,14,24,34において、プラスチック材料製の容器胴体1,11,21,31又は蓋3,13,23,33のいずれか一方又は両方が溶融固化することで、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33とが接合される。(4)では、溶着予定箇所4,14,24,34において、プラスチック樹脂シートが溶融固化することで、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33とが接合される。
【0043】
プラスチック樹脂シートを必ずしも必要としない(1)、(2)、(3)においても、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33との間にプラスチック樹脂シートを挟み込んでも良い。この場合は、溶着予定箇所4,14,24,34において、主としてプラスチック樹脂シートが溶融固化することで、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33とが接合される。なお、プラスチック樹脂シートを挟み込む前記いずれの場合においても、その代わりにプラスチック樹脂を含有したシール剤を塗布しても良い。シール剤を用いると、プラスチック材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋とを溶着させた場合より溶着強度が低下することが多いが、その一方で容易な開蓋性を得ることができる。
【0044】
溶着予定箇所4,14,24,34において溶融固化させる容器胴体1,11,21,31又は蓋3,13,23,33を形成するプラスチック樹脂は、熱可塑性樹脂であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマ樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。なお、容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33をプラスチック材料製とする場合、その内表面若しくは外表面或いはその両面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜、Si含有DLC膜、ポリマーライクカーボン膜、SiOx膜、金属薄膜等のガスバリア性薄膜をコーティングしたものを用いても良い。飲料用プラスチック容器の場合、ガスバリア性が高いほうが好ましいからである。さらに、ガスバリア性薄膜がレーザーを吸収する場合にはレーザーの受光部が発熱する。したがって、レーザー光を吸収しない透明樹脂で容器を形成したとしても、ガスバリア性薄膜を成膜することで、別途、吸収部を設けなくてもレーザー溶接効率が良い。
【0045】
溶融固化のために挟み込むシートを形成するプラスチック樹脂は、熱可塑性樹脂であり、溶接方法によって適宜選択されるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマ樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂である。この中で、金属材料製の容器胴体と金属材料製の蓋の何れか一方又は両方を使用する場合は、PETが金属と密着性が良いので特に好ましい。
【0046】
図2の予熱工程S8において、プラスチック材料製の蓋又は金属材料製の蓋のいずれにおいても、その予熱温度は、蓋83又は容器胴体81或いは蓋83と容器胴体81との間に挟まれる溶着材のプラスチック材料が熱劣化しない温度とし、例えばガラス転移温度よりやや低い温度とすることが好ましい。
【0047】
例えば、第一形態に係る密封容器の製造方法では、密封容器86は、蓋83又は容器胴体81のいずれか一方又は両方がポリエチレンテレフタレートからなる容器であるか、或いは、少なくとも蓋83と容器胴体81との密着箇所に溶着材としてポリエチレンテレフタレートからなるシートが挟まれている容器である場合、溶着工程S5の前に、蓋83を50〜65℃に予熱された状態とすることが好ましい。そして、溶着工程S5において、ポリエチレンテレフタレートからなる蓋83又は容器胴体81のいずれか一方又は両方を溶着予定箇所84において溶融固化することにより容器の密封を行なうか、或いは、ポリエチレンテレフタレートからなる前記シートを溶着予定箇所84において溶融固化することにより容器の密封を行なう。プラスチック材料を使用する場合、材料の熱収縮や結晶化を生じないように予熱を行なうことで、製品の品質を好ましい状態に保ちつつレーザー溶接することができ、結果として、レーザー照射エネルギーの低減のみを達成できる。例えばポリエチレンテレフタレートを用いた場合、270℃前後であるポリエチレンテレフタレートの溶融温度よりやや低い温度まで予熱するのではなく、ガラス転移温度よりやや低い温度にて予熱することで、漏れや開蓋、一部白濁等の品質低下を少なくできる。
【0048】
次に、蓋装着工程S3において、蓋装着機64を使用する。蓋装着機64は、例えば蓋供給機63の蓋供給手段63bの蓋保持具と一体化されており、押当部品を有する。そして、蓋装着工程S3において、蓋装着機64が一体化された蓋保持具により蓋83が搬送されるラインと、第一搬送機62により容器胴体81が搬送されるライン62aとが一定時間同期した状態で、蓋装着機64の押当部品によって、蓋83を容器胴体81に載せる。このとき、加熱されていない容器胴体81の口部89に予熱された蓋83が載せられることになる。ここで、蓋83がレーザー光73aの照射前にずれたり、或いは落ちたりしないように、容器胴体81と蓋83が密着するように押さえつけておくことが好ましい。蓋供給工程S2と蓋装着工程S3は略同時に行なう例を示したが、蓋供給工程S2と蓋装着工程S3を順に行っても良い。
【0049】
蓋供給工程S2において蓋予熱工程S8を実施することについて前述したが、蓋装着工程S3において、蓋予熱工程S8を実施しても良い。例えば、蓋保持具と一体化された蓋装着機64を発熱した状態或いは加熱された状態とし、その蓋保持具と一体化された蓋装着機64からの熱伝導により、容器胴体81の口部89に載せられる前の蓋83を加熱して、蓋83を予熱された状態としても良い。蓋装着工程S3において、蓋83が搬送されるラインと容器胴体81が搬送されるライン62aとが一定時間同期した状態、即ち蓋83と蓋保持具と一体化された蓋装着機64とが一定時間接触した状態となるため、蓋83を十分加熱することができる。蓋83が接触している部分からの熱伝導により蓋83を加熱する方法であり、容器胴体81を直接加熱する方法ではないため、内容物90の劣化や変質等の品質劣化を生じないようにすることができる。
【0050】
次に、蓋が載せられた容器胴体の搬送工程S11において、例えば、第一搬送機62、コンベアである第二搬送機65及び蓋溶接機66を使用する。図1に示した第一形態の容器密封システム600では、第一搬送機62と第二搬送機65とが、個別のコンベアである場合を図示したが、一体化した一台のコンベアであっても良い。また、第一搬送機62及び第二搬送機65により形成される搬送ラインを3台以上のコンベアに分けて形成しても良い。蓋溶接機66は、移動手段であるターンテーブル75とレーザー照射領域76を有する。蓋装着工程S3において容器胴体81の口部89に蓋83を載せた後、蓋83が載せられた容器胴体81を、第一搬送機62によって第二搬送機65まで搬送し、次に第二搬送機65によって蓋溶接機66まで搬送する。次に、蓋溶接機66内において、ターンテーブル75によって容器胴体81を蓋溶接機66内に存在するレーザー照射領域76の近くまで搬送する。
【0051】
次に、配置工程S4において、蓋が載せられた容器胴体の搬送工程S11に引き続き、蓋溶接機66を使用する。配置工程S4は、容器胴体81の口部89に予熱された蓋83を載せた状態で、容器胴体81をレーザー照射領域76に入れる工程である。図1に示すように、蓋溶接機66は、例えば、蓋83を容器胴体81の口部89に載せた未密封状態の容器85の蓋83と容器胴体81との溶着予定箇所84に対してレーザー光73aを照射するレーザー照射手段73と、レーザー照射手段73まで未密封状態の容器85を単列で順次移動させる移動手段であるターンテーブル75と、移動手段であるターンテーブル75による未密封状態の容器85の移動途中に、隣り合う複数個の未密封状態の容器85の各蓋83をそれぞれ押さえる蓋固定手段72とを有する。蓋固定手段72は容器胴体81の口部に載せられた蓋83を押さえる押当部品を有する。図4に、第一形態に係る容器密封システムの蓋溶接機の上面図を示した。図4に示すように、押当部品はターンテーブル75に配置される容器胴体81の上方に、少なくともその容器胴体81の数だけ設置される。ターンテーブル75の上には複数個の容器胴体81が載せられており、蓋固定手段72により、その複数個の容器胴体81の口部にそれぞれ載せられた蓋83を押さえる。ターンテーブル75の回転運動78により容器胴体81をレーザー照射領域76に導入する。レーザー照射領域76において、蓋83と容器胴体81との溶着予定箇所84に対してレーザー光73aの照射が可能な状態となる。なお、レーザー照射領域76に入れる工程が配置工程S4であり、レーザー照射領域76に入れる前におけるターンテーブル75による容器胴体81の搬送は前述した蓋が載せられた容器胴体の搬送工程S11である。
【0052】
次に、溶着工程S5において、配置工程S4と同様に、蓋溶接機66を使用する。蓋溶接機66のレーザー照射手段73は、例えば図4に示すように、ターンテーブル75の回転軸に設置されたレーザー発振部品73bと光ファイバー等の光接続部品73cを有する。光接続部品73cは一端がレーザー発振部品73bに接続され、他端が容器胴体81と蓋83との溶着予定箇所84に向けられている。レーザー照射手段73により、溶着予定箇所84に対してレーザー光73aを照射して、容器胴体81と蓋83とを溶着し、容器を密封する。このとき、溶着予定箇所84は溶着箇所となる。なお、このときターンテーブル75の回転運動78により、容器胴体81の搬送も行なう。
【0053】
また、レーザー溶接法により溶着を行なう場合、供給すべきレーザー照射エネルギーは、溶着温度に近づくように昇温させるためのレーザー照射エネルギーと溶着させるためのレーザー照射エネルギーを合わせたものとなる。そのため、所望の接着強度を得るために供給すべきレーザー照射エネルギーは、レーザー照射前の溶着予定箇所84の温度により異なる。第一形態に係る密封容器の製造方法では、蓋83を予熱された状態として、溶着温度に近づくように昇温させるために必要なレーザー照射エネルギーを低減することで、供給すべきレーザー照射エネルギーを低減し、必要最低限とすることができる。また、周囲の温度変化により溶着予定箇所84の温度が変化した場合、供給すべきレーザー照射エネルギーが変化して溶着不良が生じる可能性がある。しかし、第一形態の密封容器の製造方法では、予熱工程S8を実施することによって、常に一定温度に予熱された蓋83を容易に供給することができるため、周囲の温度変化による供給すべきレーザー照射エネルギーの変化を少なく抑えられる。したがって、周囲の温度が変化しても、最小限のレーザー照射エネルギーの調整で、溶着予定箇所84を安定して溶着することができる。その結果、内容物90の漏れ、開蓋、一部白濁等の密封容器の品質低下を抑えることができる。
【0054】
レーザー光73aはスポット状、線状、領域状若しくはリング状に照射することが例示される。レーザー照射手段73と溶着予定箇所84との位置関係によって適宜、レーザー照射形状が選択される。このとき、レーザー強度はレーザー出力をモニタリングすることによって監視することが好ましい。また、レーザー光73aのレーザー照射位置は、CCDカメラ等の画像センサー、光感受センサー若しくは赤外線センサー等の温度センサーによって、画像、発光若しくは発熱をモニタリングして監視することが好ましい。プラスチックの溶接は、光感受センサー若しくは温度センサーによって発光若しくは発熱をモニタリングすることによって監視することが好ましい。
【0055】
レーザー照射手段73に組み込まれるレーザー発振素子は、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー等のガスレーザー、YAGレーザーが、例示され、レーザー溶接を行なう容器胴体及び蓋の材質、蓋の予熱温度、レーザー照射移動速度、照射スポット形状等の各種パラメーターによって適宜選択する。プラスチック材料製の蓋とプラスチック材料製の容器胴体とを溶着する場合或いはプラスチック材料製の蓋と金属材料製の容器胴体とを溶着する場合は、レーザー照射エネルギーを1mmあたり0.5〜2.1Jとすることが好ましい。供給エネルギーが小さければ密封ができず、大きければ溶着強度が大きくなりすぎ、容器内圧が過剰に上昇した際に使用者に危険が生じる。金属材料製の蓋とプラスチック材料製の容器胴体とを溶着する場合或いはプラスチック材料製の溶着材を挟んでの金属材料製の蓋と金属材料製の容器胴体とを溶着する場合も、同様の理由から、レーザー照射エネルギーを1mmあたり17〜26Jとすることが好ましい。なお、金属材料製の蓋はレーザー光を透過しないため、プラスチック材料製の蓋を使用した場合と比較して供給するレーザー照射エネルギーは大きい。
【0056】
レーザー光73aの照射を開始する前に、溶着予定箇所84に対応する容器胴体81又は蓋83の表面に、或いは溶着予定箇所84に対応するプラスチック樹脂シートの表面又は内部に、レーザー光73aの吸収部を設ける工程を設けることが好ましい。また、内容物90を容器胴体81に充填する前に吸収部を印刷しておいても良い。ここで、吸収部はレーザー光73aの波長を吸収する金属材料、セラミック、或いは有機顔料や無機顔料等の吸収物質(塗料)を溶着予定箇所84に付着させて着色させるなどいかなる方法で形成しても良い。塗料は、PETの溶融温度で影響を受けない塗料を使用することが好ましい。吸収部を設けることで、レーザー光73aの吸収率が高くなり、小さなエネルギーでレーザー溶接することが可能となる。レーザー光73aに対する吸収部の吸収程度によって、レーザー光73aの波長、レーザーパワー、レーザー走査速度を調整することが好ましい。吸収部を設ける工程は、レーザー光73aの照射を開始する前であればいつでも良く、充填工程S1以前、充填工程S1、蓋供給工程S2、蓋装着工程S3、配置工程S4又は蓋溶着工程S5のいずれかの間に設けても良い。
【0057】
レーザー光73aを照射している際に、容器胴体81及び蓋83は自転テーブル74によって自転方向74aに自転しても良い。レーザー光73aの照射部分(不図示)が溶着予定箇所84に沿って移動し、1周を終えることによってレーザー光73aの照射が終了する。溶接速度は接合しようとする形状や材質などによるが、例えば、8〜100cm/秒である。このとき、レーザー溶接によって溶着箇所を正確にコントロールできる。
【0058】
レーザー照射手段73がレーザー発生器回転手段(不図示)によって、容器胴体81及び蓋83を中心として回転しても良い。レーザー光73aの照射部分が溶着予定箇所84に沿って移動し、レーザー照射手段73aがレーザー発生器回転手段によって1周を終えると、レーザー光73aの照射を終了する。溶接速度は接合しようとする形状や材質などによるが、例えば、8〜100cm/秒である。このとき、レーザー溶接によって溶着箇所を正確にコントロールできる。
【0059】
溶着予定箇所84に2周以上レーザー光を照射しても良い。このとき、レーザー光73aの照射部分が移動して又はレーザー発生器回転手段により移動されて規定の周を終えると、レーザー光73aの照射を終了する。さらに2個以上のレーザー光73aの照射部分を設置し、それぞれを1周させることにより、2以上の循環線状のレーザー溶接を行なっても良い。
【0060】
次に、容器搬出工程S6において、容器搬出機69により、レーザー溶接を終えて密封された密封容器86をターンテーブル75から降ろして、蓋溶接機66から搬出する。
【0061】
次に、不良品検査工程S7において、不良容器排除機68により、密封不良の容器が排除される。密封不良の判断は、上記モニタリングの結果と共に画像検査機(不図示)の外観検査結果を基に行なうことが好ましい。
【0062】
次に、予熱工程を蓋装着工程の後に実施する形態について説明する。図5に本実施形態に係る容器密封システムの一形態を示した。図5は、本実施形態に係る容器密封システムの第二形態を示す概略図である。図5に示すように、第二形態に係る容器密封システム700は、蓋83を容器胴体81の口部89に載せて未密封状態の容器85とする蓋装着機64と、蓋装着機64に蓋83を単列で順次供給する蓋供給機63と、蓋装着機64まで容器胴体81を順次搬送する第一搬送機62と、未密封状態の容器85の蓋83と容器胴体81との溶着予定箇所84に対してレーザー光73aを照射して未密封状態の容器85を密封する蓋溶接機67と、未密封状態の容器85を蓋装着機64から蓋溶接機67まで単列で順次搬送する第二搬送機65と、を有する容器密封システム700において、隣り合う未密封状態の容器85の蓋83を複数個同時に加熱する蓋予熱機構α2を設けている。図5では、蓋予熱機構α2によって蓋83が加熱されている複数の未密封状態の容器85のうち一つの未密封状態の容器85だけ示している。図1に示した第一形態に係る容器密封システム600と図5に示した第二形態に係る容器密封システム700とでは、蓋予熱機構が異なる。即ち、第一形態に係る容器密封システム600では、蓋供給機63に蓋予熱機構α1を併設しており、容器胴体81の口部89に載せる前の隣り合う蓋83を加熱し、一方第二形態に係る容器密封システム700では、蓋予熱機構α2が蓋固定手段を兼ねており、隣り合う未密封状態の容器85の蓋83を加熱する。
【0063】
次に、図6に、本実施形態に係る密封容器の製造方法の一形態を示した。図6は、本実施形態に係る密封容器の製造方法の第二形態を示す工程図である。図2に示した第一形態に係る密封容器の製造方法と図6に示した第二形態に係る密封容器の製造方法とでは、予熱工程を行なうタイミングが異なる以外は同じ構成を有する。即ち、第一形態に係る密封容器の製造方法では蓋装着工程S3の前に予熱工程S8を実施するが、第二形態に係る密封容器の製造方法では蓋装着工程S3の後に予熱工程S8を実施する。以下、図5及び図6を参照しながら、工程を追って説明する。
【0064】
充填工程S1、蓋供給工程S2及び蓋装着工程S3は、図2に示した第一形態に係る密封容器の製造方法と同様に実施する。なお、第二形態に係る密封容器の製造方法では、蓋供給工程S2において予熱工程は実施しない。
【0065】
次に、蓋が載せられた容器胴体の搬送工程S11において、図2に示した第一形態に係る密封容器の製造方法と同様に、第一搬送機62、第二搬送機65及び蓋溶接機67を使用し、蓋装着工程S3において蓋83が載せられた容器胴体81を蓋溶接機67内に存在するレーザー照射領域76の近くまで搬送する。図5に示した第二形態の容器密封システム700では、第一搬送機62と第二搬送機65とが、個別のコンベアである場合を図示したが、一体化した一台のコンベアであっても良い。また、第一搬送機62及び第二搬送機65により形成される搬送ラインを3台以上のコンベアに分けて形成しても良い。
【0066】
第二形態に係る容器密封システム700では、蓋装着機64が蓋予熱機構の役割を果たしても良い。蓋装着機64を発熱した又は加熱された状態とする。そしてその蓋装着機64により蓋83を容器胴体81の口部89に載せた後に、蓋装着機64によりそのまま蓋83を押さえ続け、所定時間経過後に蓋装着機64を蓋83から離す。これにより、蓋83の装着後に蓋装着機64を蓋83から離すまでの間に蓋83を加熱し、蓋83を予熱された状態とすることができる。このとき、接触式で蓋83を加熱することにより、実質的に蓋83のみを加熱することができるため、内容物90の温度上昇が抑えられ、内容物90の劣化や変質等の品質不良を生じることがない。
【0067】
また、第二形態に係る容器密封システム700では、第二搬送機65に蓋予熱機構(不図示)を設ける形態であっても良い。例えば、第二搬送機65によって搬送される未密封状態の容器85と赤外線ランプ又は温風発生手段との間に遮蔽板を設けて、未密封状態の容器85の口部89に赤外線又は温風を当たるようにする。これにより、未密封状態の容器85の蓋83を加熱して、蓋83を予熱された状態とすることができる。この時、容器胴体81は遮蔽板で覆われているため、内容物90の温度上昇が抑えられ、内容物90の劣化や変質等の品質不良を生じることがない。
【0068】
第二形態に係る密封容器の製造方法では、蓋83が載せられた容器胴体81の搬送工程S11のうち、蓋溶接機67で容器胴体81を搬送する際に予熱工程S8を実施する。蓋溶接機67の蓋固定手段が蓋予熱機構α2を兼ねており、その蓋固定手段である蓋予熱機構α2によって蓋83を加熱する。蓋溶接機67は、蓋83を容器胴体81の口部89に載せた未密封状態の容器85の蓋83と容器胴体81との溶着予定箇所84に対してレーザー光を照射するレーザー照射手段73と、レーザー照射手段73まで未密封状態の容器85を単列で順次移動させる移動手段であるターンテーブル75と、移動手段であるターンテーブル75による未密封状態の容器85の移動途中に、隣り合う複数個の未密封状態の容器85の蓋83をそれぞれ押さえる蓋固定手段である蓋予熱機構α2とを有し、蓋固定手段である蓋予熱機構α2のうち少なくとも蓋83を押さえる押当部品が、発熱体であるか或いは被加熱体である。例えば、押当部品は、押当部品が電熱線を備える場合は発熱体となり、押当部品が赤外線ランプ等の発熱体により加熱される場合は被加熱体となる。即ち、蓋予熱機構α2は、容器密封システム700において、単列で順次搬送される隣り合う未密封状態の容器85の蓋83を複数個同時に加熱する加熱手段を有する。図7に、第二形態に係る容器密封システムの蓋溶接機の上面図を示した。図7に示すように、蓋固定手段である蓋予熱機構α2で、移動手段であるターンテーブル75による未密封状態の容器85の移動途中に、隣り合う複数個の未密封状態の容器85の蓋83をそれぞれ押さえる。そして、発熱した又は加熱された押当部品からの熱伝導により、その押当部品が押さえている蓋83を加熱して、蓋83を予熱された状態とする。これにより、レーザー溶接する直前の未密封状態の容器85について、簡易に効率よく蓋83を加熱し、蓋83を予熱された状態とすることができる。また、接触式で蓋83を加熱することにより、実質的に蓋83のみを加熱することができるため、内容物の温度上昇が抑えられ、内容物の劣化や変質等の品質不良を生じることがない。
【0069】
次に、配置工程S4、溶着工程S5、容器搬出工程S6及び不良品検査工程S7を、図2に示した第一形態に係る密封容器の製造方法と同様に実施する。
【0070】
本実施形態の容器密封システムは、第一形態又は第二形態に限定されない。また、本実施形態の容器密封システムは、第一形態及び第二形態を併設した形態であっても良い。即ち、本実施形態の容器密封システムは、容器胴体の口部に載せる前の隣り合う蓋を複数個同時に加熱する蓋予熱機構と隣り合う未密封状態の容器の蓋を複数個同時に加熱する蓋予熱機構の両方を設けた形態であっても良い。
【実施例】
【0071】
蓋の予熱の有無によるレーザー照射と密封性との関係を調べるため、表1に示した、蓋を温風で予熱した後に容器胴体に蓋を設置した条件(実施例、サンプルNo.2,3,4)、容器胴体に蓋を設置した後に蓋を予熱した条件(実施例、サンプルNo.7)、蓋を予熱しない条件(比較例、サンプルNo.1,5)及び容器胴体に蓋を設置した後に蓋と容器胴体を両方予熱した条件(比較例、サンプルNo.6)で各10個の密封容器をレーザー溶接し、密封性試験を実施した。なお、いずれの容器胴体も、図3(d)に示した密封容器のように、容器胴体の側面の溶着予定箇所で容器胴体と蓋とを溶接した。なお、蓋と密着させるための突起部を設けた容器胴体を使用したため、その突起部と蓋との接触箇所が溶着予定箇所となった。
【0072】
[密封容器の作製(PET製の蓋−PETボトル胴体)]
サンプルNo.1,2,3,4では、専用に作製したPETボトル胴体及びPET製の蓋を使用した。また、蓋とボトル胴体との溶着予定箇所の蓋側に、市販の808nmの吸光度が約60%の黒色インクを塗布した。サンプルNo.1では蓋を予熱せず、蓋温度は15℃であった。サンプルNo.2,3,4では、蓋温度を30℃、50℃、60℃に予熱した。そして、容器を自転させながら、容器の側面から溶着予定箇所に向けた0.8J/mmのレーザー照射によって溶接を行い、密封容器を作製した。
【0073】
[密封容器の作製(PET製の蓋−スチール缶胴体)]
サンプルNo.5,6,7では、市販の200mlスチール缶胴体と専用に製作したPET製の蓋を使用した。また、蓋と缶胴体との溶着予定箇所の蓋側に、熱可塑性のシール剤(90℃以上で粘着性発現)を塗布した。サンプルNo.5では蓋を予熱せず、蓋温度は15℃であった。サンプルNo.6では、蓋を缶胴体の口部に載せた後、蓋と缶胴体の全体を温風で加熱して蓋を60℃に予熱した。サンプルNo.7では、蓋を缶胴体の口部に載せた後、蓋を温風で加熱して蓋を60℃に予熱した。そして、容器を自転させながら、容器の側面から溶着予定箇所に向けた0.8J/mmのレーザー照射によって溶接を行い、密封容器を作製した。
【0074】
[密封性試験]
作製した密封容器の底に孔を設け、その孔から0.15MPaの圧縮空気を注入し、蓋のシール性が維持されるか否かで密封性の有無を評価した。各10個のサンプルのうちシール性が全て維持された場合を密封性ありとし、各10個のサンプルのうち1個でもシール性が維持されなかった場合を密封性なしとした。
【0075】
【表1】

【0076】
PETボトル胴体にPET製の蓋を使用したサンプルNo.1,2,3,4のいずれも密封性があった。
【0077】
スチール缶胴体にPET製の蓋を使用し、予熱しないサンプル5は密封性がなかった。一方、予熱したサンプルNo.6,7は密封性があった。
【0078】
サンプルNo.2,3,4は蓋のみの加熱であり、ライン上での実施が容易であった。
【0079】
密封性のある容器は、蓋と容器の全体を加熱しなくてもサンプルNo.7のように蓋を加熱することで得られた。蓋と容器の全体ではなく蓋を加熱する方法であれば、内容物を充填した場合に、内容物の品質劣化も防げる。
【0080】
次に、予熱温度と溶着箇所の剪断強度との関係を調べるため、引張試験を実施した。図3(d)に示したような密封容器では、内圧によって、溶着箇所に、容器側面の面方向であって蓋の開封方向(図3(d)の矢印A方向)の剪断応力が加わるため、溶着箇所の剪断強度が高い場合に密封性が高いと考えられる。従って、予熱温度と溶着箇所の剪断強度との関係から、密封容器における予熱温度と密封性との関係を判断できる。
【0081】
2枚のPETシート(PETシートI、PETシートII)を使用し、引張試験用の溶接シートを作製した。
(サンプルa)
PETボトル胴体の口部に、直径27mm厚さ1mmのPET板を、口部の端部とPET板の表面が重なるように置いた。次に、そのPET板の上に、幅20mm厚さ0.35mmの短冊形のPETシートIIを、PET板の表面とPETシートIIの表面が重なるように置いた。なお、PETシートIIは、PETボトル胴体に相当する。次に、幅20mm厚さ0.35mmの短冊形のPETシートIの表面に、黒色インクを幅1mm長さ10mmで直線状に塗布した。次に、このPETシートIを、先のPETシートIIの上に、PETシートIIの表面とPETシートIの黒色インクが塗布された側の表面とが重なるように置いた。なお、PETシートIは、PET製の蓋に相当する。次に、PETボトル胴体の上方からPET板全体を包含する領域に向けた0.8J/mmのレーザー照射によって溶接を行い、サンプルaの溶接シートを作製した。ここで、黒色インクを塗布した場所が溶着箇所となった。
(サンプルb)
インクを塗布したPETシートIをPETシートIIの上に置く前に、温風で加熱して30℃に予熱した以外はサンプルaと同様の方法でサンプルbの溶接シートを作製した。
(サンプルc)
PETシートIを予熱する温度を、30℃から50℃に変更した以外は、サンプルbと同様の方法でサンプルcの溶接シートを作製した。
(サンプルd)
PETシートIを予熱する温度を、30℃から60℃に変更した以外は、サンプルbと同様の方法でサンプルdの溶接シートを作製した。
【0082】
また、PETシートIとスチール缶片を使用し、引張試験用の溶接シートを作製した。
(サンプルe)
PETシートIIを幅10mmの短冊形のスチール缶片に変更し、黒色インクをシール剤に変更した以外はサンプルаと同様の方法でサンプルeの溶接シートを作製した。ここで、シール剤を塗布した場所が溶着箇所となった。なお、スチール缶片は、スチール缶胴体に相当する。
(サンプルf)
シール剤を塗布したPETシートIをスチール缶片の上に置いた後に、上方からPETシートIに温風を当てて、PETシートIを加熱して60℃に予熱した以外はサンプルeと同様の方法でサンプルfの溶接シートを作製した。
【0083】
[引張試験]
作製した溶接シートについて、島津製作所製オートグラフAG−10kNDで引張試験を行った。溶接シートの一方であるPETシートIと他方であるPETシートII又はスチール缶片を、シートの主面上で、黒色インク又はシール剤を塗布した直線ラインに対して垂直方向に互いに反対方向に引っ張り、剪断強度を測定し、予熱が有意に機能するか検証した。
【0084】
【表2】

【0085】
PETシートIを予熱した状態で溶接シートを作製したサンプルb,c,dの剪断強度は、PETシートIを予熱しないで溶接シートを作製したサンプルaの剪断強度と比較して高かった。また、剪断強度は、サンプルb,c,dの順に高くした予熱温度に対応して、サンプルb,c,dの順に高くなった。
【0086】
サンプルb,c,dでは、予熱したことよって、予熱しない場合と比較して、供給したレーザー照射エネルギーのうち、溶着させるために使用されたレーザー照射エネルギーの割合が増えたため、剪断強度が高まったと考えられる。
【0087】
サンプルeでは、PETシートIとスチール缶片との溶着が観察されなかったか、又は容易に分離するサンプルが発生し、事実上剪断強度が得られなかった。一方、サンプルfでは、PETシートIとスチール缶片との溶着が認められ、予熱しない場合と比較して、予熱に対応した剪断強度が得られた。
【0088】
サンプルfでは、予熱したことによって、予熱しなかった場合よりも、レーザー照射を受けた箇所の到達温度が高く、結果としてシール剤による接着に十分な温度を得られたため、PETシートIとスチール缶片との間で剪断強度が得られたと考えられる。
【0089】
密封容器の作製においても、蓋を予熱することによって、予熱しない場合と比較して溶着箇所の剪断強度を高め、密封容器の密封性を向上させることができると考えられる。また蓋を予熱をすることによって、より少ないレーザー照射エネルギーで、溶着箇所が所定の剪断強度を有する密封容器、即ち所定の密封性を有する密封容器とすることができるため、容器密封システム全体を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施形態に係る容器密封システムの第一形態を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る密封容器の製造方法の第一形態を示す工程図である。
【図3】本実施形態に係る各密封容器の一部縦断面概略図である。
【図4】第一形態に係る容器密封システムの蓋溶接機の上面図である。
【図5】本実施形態に係る容器密封システムの第二形態を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る密封容器の製造方法の第二形態を示す工程図である。
【図7】第二形態に係る容器密封システムの蓋溶接機の上面図である。
【符号の説明】
【0091】
1,11,21,31,81 容器胴体
3,13,23,33,83 蓋
4,14,24,34,84 溶着予定箇所
9,19,29,39,89 口部
27 つまみ
61 充填機
62 第一搬送機
62a 容器胴体81が搬送されるライン
63 蓋供給機
63a 蓋搬送手段
63b 蓋供給手段
64 蓋装着機
65 第二搬送機
66,67 蓋溶接機
68 不良容器排除機
69 容器搬出機
72 蓋固定手段
73 レーザー照射手段
73a レーザー光
73b レーザー発振部品
73c 光接続部品
74 自転テーブル
74a 自転方向
75 ターンテーブル
76 レーザー照射領域
77 予熱領域
78 回転運動
84 溶着予定箇所
85 未密封状態の容器
86,100,200,300,400 密封容器
90 内容物
600,700 容器密封システム
α1,α2 蓋予熱機構
S1 充填工程
S2 蓋供給工程
S3 蓋装着工程
S4 配置工程
S5 溶着工程
S6 容器搬出工程
S7 不良品検査工程
S8 予熱工程
S10 蓋が載せられていない容器胴体の搬送工程
S11 蓋が載せられた容器胴体の搬送工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー溶接法によって、内容物を充填した容器胴体と該容器胴体の口部に装着された蓋とを溶着して気密状態とした密封容器の製造方法において、
前記容器胴体の口部に予熱された前記蓋を載せた状態で、前記容器胴体をレーザー照射領域に入れる配置工程と、
前記蓋と前記容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して、前記蓋と前記容器胴体とを溶着し、容器の密封を行なう溶着工程を有することを特徴とする密封容器の製造方法。
【請求項2】
前記容器胴体の口部に前記蓋を載せる蓋装着工程の前に、前記蓋を加熱して該蓋を予熱された状態とする予熱工程を有することを特徴とする請求項1に記載の密封容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器胴体の口部に前記蓋を載せる蓋装着工程の後に、前記容器胴体の口部に前記蓋を載せた状態で、前記蓋を加熱して該蓋を予熱された状態とする予熱工程を有することを特徴とする請求項1に記載の密封容器の製造方法。
【請求項4】
前記予熱工程において、電熱線、温風、熱水、蒸気又は赤外線ランプにより、前記蓋を加熱することを特徴とする請求項2又は3に記載の密封容器の製造方法。
【請求項5】
前記密封容器は、前記蓋又は前記容器胴体のいずれか一方又は両方がポリエチレンテレフタレートからなる容器であるか、或いは、少なくとも前記蓋と前記容器胴体との密着箇所に溶着材としてポリエチレンテレフタレートからなるシートが挟まれている容器であり、
前記溶着工程の前に、前記蓋を50〜65℃に予熱された状態とし、
前記溶着工程において、ポリエチレンテレフタレートからなる前記蓋又は前記容器胴体のいずれか一方又は両方を前記溶着予定箇所において溶融固化することにより容器の密封を行なうか、或いは、ポリエチレンテレフタレートからなる前記シートを前記溶着予定箇所において溶融固化することにより容器の密封を行なうことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の密封容器の製造方法。
【請求項6】
蓋を容器胴体の口部に載せて未密封状態の容器とする蓋装着機と、
該蓋装着機に前記蓋を単列で順次供給する蓋供給機と、
前記蓋装着機まで前記容器胴体を順次搬送する第一搬送機と、
前記未密封状態の容器の蓋と容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射して前記未密封状態の容器を密封する蓋溶接機と、
前記未密封状態の容器を前記蓋装着機から前記蓋溶接機まで単列で順次搬送する第二搬送機と、を有する容器密封システムにおいて、
前記容器胴体の口部に載せる前の隣り合う前記蓋を複数個同時に加熱するか、隣り合う前記未密封状態の容器の蓋を複数個同時に加熱するかの、どちらか一方又は両方の蓋予熱機構を設けたことを特徴とする容器密封システム。
【請求項7】
蓋を容器胴体の口部に載せた未密封状態の容器の前記蓋と前記容器胴体との溶着予定箇所に対してレーザー光を照射するレーザー照射手段と、
該レーザー照射手段まで前記未密封状態の容器を単列で順次移動させる移動手段と、
該移動手段による前記未密封状態の容器の移動途中に、隣り合う複数個の前記未密封状態の容器の各蓋をそれぞれ押さえる蓋固定手段とを有し、
該蓋固定手段のうち少なくとも前記蓋を押さえる押当部品が、発熱体であるか或いは被加熱体であることを特徴とする蓋溶接機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261665(P2007−261665A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92201(P2006−92201)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】